日銀は「なお書き」変更の際に当預残引き下げ論議も強まっていたことから、それを打ち消すための姿勢制御を図っているように思われる。
その第一弾として、6月23日の武藤副総裁の大分県での講演におけるコメントがあげられる。これまで武藤副総裁のコメントは中立的なものが多かったにもかかわらず、この講演においては、「私どもの決定は、決して量的緩和政策の方針転換を企図したものではなく」と強調し、景気の見方においても「先行きの回復のテンポも緩やかなものにとどまる可能性」と慎重な見方を示している。記者会見においても、「展望レポートどおりに2006年度の消費者物価指数の前年比が小幅なプラスを実現したとしてもデフレ脱却とは言い切れない」ともコメントしている。
これをもって武藤副総裁がハト派に転向したとか、財務省や政府の意向を反映したコメントととるのは早計であるかと思う。むしろ総裁・副総裁は一枚岩とみるべきであると思われ、このコメントには福井総裁の意思も反映されているのではないかと思われる。つまり、なお書き修正を量的緩和解除に向けた動きであると現時点でとらわれてしまうことを警戒し、表面上の姿勢制御を図るためのものと思われる。
また第二段として、当預目標額の賛成派のひとりと見られている春審議委員の6月27日の旭川市における金融経済懇談会の挨拶の内容も軌道修正に見える、なお書き修正を「量的緩和政策を変更するものではない」と強調した上、「引下げがデフレ克服にマイナスの影響を及ぼすと受け止められる可能性などを慎重に見極めていきたい」と慎重姿勢を示した。ここで4月5日、6日の日銀金融政策決定会合議事要旨の中での下記コメントをみていただきたい。
「別の委員も、現行の当座預金残高目標の維持が難しくなる場合には、デフレ克服にマイナスの影響が生じないことを確認しながら、残高目標を減額することも一つの選択肢として考えられるとの認識を示した」
これが実は春委員のコメントではないかと以前に指摘したが、旭川市の挨拶内容にも通じるものがあり、その可能性が高いと思う。しかし、旭川市の挨拶ではこの議事要旨の内容からは微妙に修正をしており、これもやはり春委員のハト派への変更というよりも、日銀による表面上の軌道修正と捉えたい。
上記は私の憶測も入りこんでおり、事実と反するとのご指摘もあるかもしれない。しかし、福井総裁のまだ表面に出したくはない本音は、27日に発表された BISの年次報告の中での、「日銀の量的緩和は転機を迎え、出口に向けて市場とどう対応するかが重要になる」という部分にあると思われるのである。
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by nihonkokusai
| 2005-07-04 14:09
| 日銀


