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投資詐欺にだまされないための必要最低限の金融知識

 うその投資話を持ちかけ、愛知県の男性などから6000万円余りをだまし取ったとして、千葉市の会社の会長らが逮捕されたと、NHKなどが報じた。警察によると、この会社は全国の1万数千人から450億円余りを集めていたことから、実態の解明を進めることにしているそうである。

 この手の金融に絡んだ詐欺事件は繰り返し起きている。この要因としては日本人の金融リテラシーが足りないからとの意見もあるが、金融そのものに関心のない人も多いとみられ、そのために時間やお金も掛けられないとの現状もあるかもしれない。

 日々の株価や為替の動向には多少関心はあっても、たとえば金利の動きとか日銀の金融政策あたりになると、それに関心を持つ人は極端に少ない気がする。現在の日銀の金融政策は何と呼ばれるのかという問いに正確に答えられる人はどのくらいいるであろうか。答えは「長短金利操作付き量的・質的緩和」であるが、それがいったい何であるのかを正確に理解している人もそれほど多くはないのではなかろうか。私もその効果については理解はしていないが。

 我々に高度な金融教育が本当に必要なのかどうかはわからない。ただし、大事なお金を守るためには、このような詐欺に遭わないための必要最低限度の知識は必要であろう。

 お金の運用にはハイリスク・ハイリターンという言葉がある。高い収益を求めるためには、より高いリスクを覚悟する必要がある。つまり大きな損失も覚悟の上で、投資等を行わないと大きな利益を得るチャンスは得られない。

 あたり前だろうと言われるかもしれないが、このことをしっかり頭に入れておけば、投資詐欺などに遭うことはない。高いリスクに晒されずに、得られる安定したリターンはどのぐらいなのか、それは例えば、国債の利回りであり、預貯金の利子となる。

 それらが日銀の金融政策や物価の低迷であまりに低くなってしまっているから、より高い収益を期待してしまうというのはわからなくもない。しかし、少なくとも国債などの利回りより、高い利回りが提示されているものについては、リスクがあることを念頭に置く必要がある。しかも、そのリスクの内容(投資先や発行体のリスクなど)をしっかり把握できていなければ、それに投資すべきではないと考えておく必要がある。

 念のため、現在は10年国債の利回りあたりまでマイナスとなっているが、個人向け国債は0.05%の最低保証利子があり、0.05%あたりを基準に考えてほしい。

 何も投資商品を全否定するつもりはない。投資信託など含めて、その運用リスクをある程度把握できているのであれば、損失の危険もあることを念頭に投資すべきなのである。

 儲け話には裏があるのはいついかなる時もそうである。今回の詐欺グループのような口車に乗っかって、この人であれば社会に貢献しながら利益も得てくれると思い込むのは勝手であるが、それがどれだけ難しいものであるのかは、お金を運用してみるとわかる。もしリスクとリターンの関係を試したいのであれば、現物株などを購入してみると良いかもしれない。金融商品で安定的に儲けるのは容易ではない。それはプロであっても同様である。


# by nihonkokusai | 2019-02-15 09:58 | 投資

キャッシュレス化の拡大を睨んだSuicaの改革への期待と問題点

 「JR東日本の深沢祐二社長は6日までに産経新聞のインタビューに応じ、同社が展開する交通系ICカード「SUICA(スイカ)」で、現状よりも導入費用を大幅に軽減する簡易版の新システムを早ければ来年度中にも導入する方針を明らかにした。」(2月6日付産経新聞)。

 簡易版の新システムとは何か。SuicaはnanacoやWAONなどスーパー系の電子カードやEdy、iDなどと同様にソニーが開発した通信技術FeliCa(フェリカ)を採用している。さらにSUICAは首都圏の混雑する改札でも瞬時に機能できるよう、高度な技術が使われている。

 SUICAのカードそのものにも一定の情報が蓄積されているが、そのデータを改札で読み書きする端末の機能が高度なものとなっている。そこである程度蓄積されたデータが中央のコンピュータで処理される。つまり直接、SUICAのカードと中央のコンピュータが繋がっているわけではなく、いわゆる分散型のシステムとなっている。これによって高速な処理を可能とするとともに、大規模な障害発生を防いでいる。実際にSUICAで大規模障害が発生し、使えなくなったといったことはあまり聞いたことがない。

 しかし、端末が高性能なあまり、金額も高くなってしまうため、大量の乗り降りがない駅では採算を考えると導入が難しくなる。このため、都市圏以外ではJR東日本の駅でSUICAの端末が導入されていない駅もある。

 このため「クラウド技術を使い、端末側で情報を持たないシステムにすることで、導入する際のコストを引き下げる」(深沢祐二社長)という「簡易版」を導入することで、管内全域での導入を図るとか。

 また、地方のバスなど地域交通事業者向けに、運賃支払い用のICカードにスイカ決済の機能を搭載する「地域連携ICカード」の開発を表明している(産経新聞)。

 この簡易版が一般店舗やタクシーなどでも利用できるのかは、記事では触れていないものの、鉄道以外での利用が広がる可能性もあるか。

 ただし、鉄道での利用についても、首都圏ではSUICAとPASMOの相互利用はできても、他の「Kitaca」、「TOICA」、「ICOCA、」、「SUGOCA」、「PASMO」、「manaca」、「PiTaPa」、「はやかけん」、「nimoca」などの相互利用は現在できない。これは路線の組み合わせが複雑すぎることで、システムの構築がなかなか難しいことが要因となっているようである。ただし、こちらも「地域連携ICカード」として発行の動きもある。


# by nihonkokusai | 2019-02-14 10:12 | キャッシュレス

日銀は国債買入を減額、来年度の国債発行額の減額を睨んだ動きか

 12日の日銀による国債買入で、残存10年超25年以下の買入額をこれまでの2000億円から1800億円に減額した。残存25年超は500億円のまま据え置かれた。

 いずれ減額はあるだろうとの予想はあったが、このタイミングというのはややサプライズとなった。これによる債券市場への影響は限定的とみられる。12日の債券先物は16銭安の152円67銭の安値引けとなったが、値動きを見る限り、これは円安による株高などの影響とともに、ここにきて買い進まれていたことによる反動という側面が大きかったとみている。

 日銀の金融政策は現在、量から従来の金利に戻しているが、金融政策決定会合における公表文では下記の表現を残している。

 「買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」

 しかし、80兆円という数字そのものは有名無実化しており、「弾力的な買入れを実施する」ということが重視されている。

 財務省の来年度の国債発行計画では2年、5年、10年、20年の国債発行額をそれぞれ1.2兆円ずつ減額する予定となっている。これに合わせて日銀は国債の買入額も需給バランスを睨んで減額する方向で検討しているとみられ、今回の減額もその一環か。

 ここにきて長期金利が低下していたことも減額がしやすい状況になっていた。8日に10年債利回りはマイナス0.035%に低下し、超長期と呼ばれる20年債、30年債、40年債の国債利回りも大きく低下していた。

 債券相場の過熱感を冷やすというより、このタイミングでの200億円程度の減額は、債券市場を取り巻く地合が良かったこともあり、市場参加者にさほど動揺を与えないとの読みも働いたのではなかろうか。

 最近の国債利回りの低下は、欧州や中国などを主体とした世界的な景気減速が背景となっている。FRBは利上げを停止した可能性があり、ECBも年内利上げは難しくなりつつある。このような環境下、日銀としてはある程度の緩和の修正も睨んでいた可能性があったが、それも難しくなりつつある。今回の量の調整はあくまで国債の需給を睨んだもので、そういった調整の一環ではない。しかし、本来であれば、金融機関の収益を圧迫し景気への悪影響ともなりうるマイナス金利の撤廃など模索すべきと考えるが、いまの政治を含めた情勢下ではなかなか困難な状況にある。


# by nihonkokusai | 2019-02-13 09:48 | 国債

PayPayは本日より第二弾100億円キャンペーンを開始、日本でのキャッシュレス決済の行方

 PayPayはモバイル決済サービス「PayPay」の支払額の最大20%をPayPayの残高として還元する「第2弾100億円キャンペーン」を2月12日から5月31日まで行うと発表した。銀行口座を登録するなどしてPayPayの残高で支払う場合、還元率が20%になる。Yahoo! JAPANカードの場合は19%、その他のクレジットカードの場合は10%。いずれも還元額の上限は1回当たり1000円にする。キャンペーン期間中に還元を受けられる総額は5万円まで。

 第一弾と比較して、還元額の上限や還元を受けられる総額に制限を加えることにより、一度に高額商品を購入して還元を受けるのではなく、小額利用の頻度を上げることで還元を得られるような仕組みとなっている。

 QRコード決済やICカードによる決済は、比較的少額での取引に使われることが多いとみられる。1万円を超すものはクレジットカードの利用が今後も多いのではなかろうか。

 PayPayによるキャンペーンなどはQRコード決済の認知度を広めることに寄与しよう。比較的若い世代でのQRコード決済の拡大も望めるものと考えられる。しかし、QRコード決済が日本国内で定着するのかといえば、まだハードルは高いと思われる。

 まったくキャッシュレス決済が行われていないのであれば、QRコード決済が一気に拡大する可能性はある。しかし、日本国内でのキャッシュレス決済は普通に行われている。通勤電車を利用している人は最低でも1枚は交通系の電子カードを保有していよう。スーパーやコンビニが発行する電子カードを持っている人も多いはずである。

 そこにQRコード決済が果たしてどこまで食い込めるのか。もし何かしらのQRコード決済のシェアが大きくなれば、使い勝手の良いものが一気に普及するかもしれない。ただし、高齢者などの電子カードによる決済の使用頻度が高くなっているように、スマートフォンでの決済について現状では高齢者の利用を見込みづらいことが難点となる。

 現在のところ、電子マネーなどのカードをたくさん持ち歩く必要はあるものの、これを統一しないとどうにも不便という状況にもない。それでもキャッシュレスが進んでいるとされる中国やスウェーデンなどと同様にある程度、統一された決済が望まれることも確かである。

 日本は地震などの自然災害も大きいことから、非常用も意識しての一定額の現金の保有は必要なものとなり、ある程度の現金決済は残るものと考えられる。



# by nihonkokusai | 2019-02-12 10:06 | キャッシュレス

2008年のリーマン・ショック後の日銀の対応

 日銀は1月29日に2008年7~12月の金融政策決定会合の議事録を公表した。特にリーマン・ショックを受けて、どのような議論が決定会合でなされ、どのような対策が講じられていったのか興味深い内容となっていた。

 サブプライムローン問題を契機に始まった金融混乱は、2008年秋以降、未曾有の世界的な金融経済危機へと発展していった。2008年9月15日のリーマン・ブラザーズの破綻をきっかけに、カウンターパーティ・リスクに対する市場参加者の警戒感が高まった。

 9月16、17日に開催された日銀の金融政策決定会合の議事録によると、中曽金融市場局長(当時)から、「全くフェーズが変わってしまったので」との発言があり、情勢が大きく変わったことで資料が差し替えられた様子が窺える。議事録では当時の差し迫った状況が見て取れるが、一部、固有名詞が空白となっている部分があり、国内銀行あたりの固有名詞はさすがに議事録でも伏せられていたようである。

 かなり危機的状況となっているなか、議事録を読むとなかなか踏み込んだ議論が行われていたことがわかる。決定会合がたまたまリーマン破綻直後ということで、その影響が大きなものであるのは理解されていても、その影響がどの程度あるのかが、まだ読み切れない段階での議論だけに、ある意味興味深い。

 16日にはFOMCも開催されており、全員一致で政策金利を2%に据え置く事を決定している。リーマン破綻による金融市場の混乱などから、利下げを期待する声もあったが、FRBは今回の金融市場の混乱に対しては大規模な資金供給で対処した。

 17日の日銀金融政策決定会合でも全員一致での現状維持が決定されていた。しかし、その後、事態はさらに悪化することになる。金融と実体経済間の負の相乗作用が強まり、景況感は急激に悪化。先進国経済だけでなく、これまで比較的堅調に推移してきた新興国経済にも影響が及び、その影響は世界各国に同時にかつ急速に広がるという異常事態となり、日本経済も大きな打撃を受けた。

 10月8日に欧米の中央銀行に加え一部新興国も含め、10の中央銀行が同時に0.5%の緊急利下げを実施したが、この利下げには日銀は加わっていなかった。

 実は10月6、7日に日銀の金融政策決定会合が開催されていた。この議事録を読む限りにおいて、8日の世界同時利下げを示唆するようなコメントはなかった。日銀は0.5%下げるとゼロ金利に戻ることになり、利下げをためらったとの見方もある。10月14日の臨時に開催された金融政策決定会合では利下げではなく新たな市場安定化策を決定した。しかし、10月31日の金融政策決定会合では、0.2%の利下げが提案され、4対4の可否同数となったため議長が決するという事態となったのである。


# by nihonkokusai | 2019-02-11 15:14 | 日銀

欧州の景気低迷などから、株式市場はゴルディロックス相場(適温相場)が終焉か

 欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は7日、イタリアやドイツをはじめ域内主要国の経済成長率予想を軒並み下方修正した。今年のユーロ圏経済の成長率を1.3%の予想とし、昨年11月時点の1.9%の予想から下方修正した。また、2020年の成長率予想も1.6%と従来の1.7%から下方修正された(ブルームバーグの記事より)。

 イタリアでの政治上の問題やそれに絡んでの財政悪化、フランスではデモ隊による抗議運動が続いている。ここにきて今度はイタリアとフランスの関係が悪化しつつある。ドイツでは自動車産業が規制変更により回復が遅れているとされている。また米中の貿易摩擦も絡んでの中国の景気減速など外部要因による影響も出ているとみられる。

 欧州委員会は今年のユーロ圏のインフレ見通しも1.4%と従来の1.8%から引き下げた。欧州の中央銀行のECBは、夏以降の利上げの可能性を探っていたとみられるが、ユーロ圏の経済・物価動向が改善しない限り、年内の利上げは難しい。FRBの利上げ停止観測なども影響を与えそうである。

 7日に英国の中央銀行であるイングランド銀行は、金融政策を決めるMPCで政策金利を年0.75%で据え置くことを決定した。同時に公表した四半期インフレ報告では、2019~20年の経済成長見通しを下方修正した。

 英国ではEU離脱の行方が不透明となっていることで、これも英国経済の足かせとなっており、欧州の景気動向にも影響を与えているようである。

 これまで米国を中心として、ほどよい景気回復が続き、株式市場も景気が過熱も冷え込みもしない適度な状況にあるゴルディロックス相場と呼ばれる状態が続いていた。それが昨年あたりから変調を来すようになってきた。

 米中の貿易摩擦が中国の景気をさらに悪化させ、それが米国や欧州にも跳ね返ってきた。英国やフランス、イタリアでは国内で問題を抱えていたが、それがあらためて表面化してきた。ドイツもすでに盤石とはいえない。

 今後は世界的な景気の低迷が意識されるとみられ、株式市場では急落はなくても、反ゴルディロックス相場のような状況になる可能性がある。これは当然ながらも日本経済にも影響を与えるものと思われる。


# by nihonkokusai | 2019-02-09 10:35 | 国際情勢

昔も今も重要なのは鍵、キャッシュレス社会のキーにも

 カナダのデジタル通貨交換業者クアドリガCXは創業者のジェラルド・コットン最高経営責任者が昨年12月9日亡くなったことで、仮想通貨約1億9000万カナダ・ドル(約159億円)相当を引き出せない状態となっているそうである。

 クアドリガ運営で使用するラップトップや電子メールアドレス、メッセージシステムを暗号化し、資金と仮想通貨の扱いと会社の金融・会計面を全て創業者が1人で管理し、ハッキングを避けるため、仮想通貨の大半を「コールドウォレット」と呼ばれるオフライン管理に移していた。そのパスワードはおろか、会社の記録を一切見つけることができていないようである(以上、ブルームバーグの記事より)。

 以前は仮想通貨の流出が問題視されていたが、今度は鍵の保管の問題により、引き出せない事態となっているようである。

 もし日本の通貨を管理している日本銀行の金庫の鍵が、総裁一人で管理していたとすれば、同様の問題が起きかねないものの、当然ながらその管理運営はかなり厳重ながらも、不測の事態にも対処できようなものとなっていよう。

 仮想通貨の大きな弱点は、このような管理が費用面等も絡んで公的な機関に比べて厳重に出来ないことも挙げられよう。仮想通貨を売買するところは取引所とも称しているが、東京証券取引所などもかなり厳重な管理を行っており、やはり規模がそれほど大きくはない企業とはセキュリティー上に大きな違いがある。

 現在の鍵とは、ハードの鍵だけでなくソフト上の鍵のシェアが大きくなっている。我々も電子上の鍵となっているIDとパスワードをどう管理したら良いのかが、個人でも頭を悩ませるところとなる。

 クルマの鍵においても、取り扱いが楽なスマートキーであるが、このスマートキーが常に発している電波を盗んで、クルマを盗むといった事件も発生しているそうである。

 キャッシュレス決済においても当然ながら鍵が重要になる。電子マネーのSuicaの普及においても、障害に強い分散型であることから、システムカードの内容を書き換えられる暗号キーの取り扱いがひとつの問題となるとの指摘もあった。

 いずれにしても特にキャッシュを扱うにあたっては、今も昔の鍵が重要なキーになっているようである。


# by nihonkokusai | 2019-02-08 10:09 | キャッシュレス

調査統計不正問題での政府統計への信頼回復は容易ではない

 国会での予算審議でも取りあげられている厚生労働省の毎月勤労統計での不正問題であるが、この問題で最も危惧すべきものは国の統計に対する信認の低下となろう。

 日本経済新聞社とテレビ東京による25~27日の世論調査で、政府統計の信頼性を聞いたところ「信用できない」が79%で「信用できる」は14%となっていたそうである。

 たとえば、中国が発表している統計では、政府からのバイアスが掛かっているのではとの疑惑もあり、それがどの程度信用できるのかという疑問符が付いていた。これに対して、日本政府の発表する統計の数字には、そのようなバイアスは掛かっておらず、正確性も高いと漠然と信じられていた。

 私は以前、金融市場に関わる統計に関する本を書いたことがある。すでに廃刊となってしまっているが「ネットで調べる経済指標」という本である。ここには厚生労働省の毎月勤労統計調査についても触れていた。

 「毎月勤労統計調査とは、賃金、労働時間及び雇用の変動を明らかにすることを目的に、厚生労働省が全国の常用労働者5人以上の事業所を対象として毎月実施しています。賃金(給与)や労働時間、出勤日数、労働者数などの動きを毎月調べている調査です。調査結果は、景気動向指数や月例経済報告などの景気判断の基礎資料として使われています。「マイキン統計」とも呼ばれているそうです。」(「ネットで調べる経済指標」より引用)

 つまり毎月勤労統計での不正となれば、景気動向指数や月例経済報告などの景気判断の基礎資料にも影響を与えることになる。そうなると政府の統計全般への信認問題に波及する可能性もある。毎月勤労統計での不正のようなことが他の統計でも行われていたのではないかと疑心暗鬼にもなりかねない。

 特に政府や日銀などが出している統計に対しては、当然ながら正確性が求められる。その正確性に疑問符が付くと、統計全般への信認失墜にも繋がりかねない。

 通貨の信認にしてもそうだが、いったん失われてしまうとそれを取り戻すことは容易ではない。今回の厚生労働省の毎月勤労統計での不正問題をきっかけとした政府の統計への信認を回復させるためには、かなり思い切った改革も必要となろう。


# by nihonkokusai | 2019-02-07 09:32 | 景気物価動向

2019年度の1万円札の発注量はどうして減少するのか

 日銀は2019年度に1万円札から千円札までの新札を30億枚発注する。1万円札は10億枚と過去最少の発注とし、18年度から2億枚減らす。日銀は4~5年に一度の頻度で1万円札を廃棄し、お札の品質を管理。お札の破損が減れば、新札の発注枚数も減る(4日付日経新聞)。

 1万円札などお札の発行残高は伸びているにもかかわらず、何故に1万円札の発注量が2018年度から2019年度にかけて2億枚も減少するのであろうか。

日銀「平成31年度の銀行券発注高」(過去の発注額の推移もあり)

 日経新聞の記事によると、キャッシュレス決済の普及やタンス預金の広がりを指摘している。キャッシュレス決済の普及により1万円札の利用頻度が減少すれば、確かにお札の破損する割合が減少することになろう。タンス預金の増加も利用頻度を減少させることになる。

 しかし、キャッシュレス決済がここにきて突然普及が広まったわけではない。電子カードの普及は1万円札というより小額のコインの利用頻度を減少させよう。クレジットカード決済の普及が広まったとしても、それほど急激に増加したというのも考えづらい。

 タンス預金については、2016年のマイナス金利政策によって預貯金につく金利がさらに限られ、それが2016年度あたりからの1万円札の利用頻度の要因となった可能性はある。つまり預金とせずに現金をそのまま手元に残す割合の増加である。ここにきて、タンス預金増加の動きが一巡したとの見方も出来るかもしれない。

 これは景気の動向による影響を受けている可能性もあるのではなかろうか。ここにきての個人消費の低迷なども一因になっているのではなかろうか。


# by nihonkokusai | 2019-02-05 09:36 | 日銀

日銀の追加緩和の難しさ

 1月22、23日に開催された金融政策決定会合における主な意見が31日に公表された。最初の「金融経済情勢に関する意見」では、今後の景気に対する見方が割れていた。

 景気の拡大は続くとの楽観的な見方をしている委員と、世界経済を巡る不透明感や不確実性からリスクが生じているとの見方に分かれているように思われる。これは市場参加者も同様かとみられる。

 物価については、賃金・物価が緩やかに高まるという基本的なメカニズムは作動しているとの意見があったが、同日発表した展望レポートでは2019年度の物価見通しを引き下げている。また、ここにきて2018年の実質賃金が、修正するとマイナスではなかったかとの見方が出ている。

 「昨秋以降に原油価格が比較的大きく下落したため、物価は当面押し下げられると見込まれる」

 それはそうであるが、その押し下げも異次元緩和で何とかできるはずではなかったのか。それができずに、原油価格などに大きく左右されるのであれば、異次元緩和そのものを本来であれば見直すべきであると考える。

 「物価の上昇を遅らせてきた諸要因の解消に時間を要しているほか、予想物価上昇率は、想定以上に粘着的である可能性が高い。」

 物価の上昇を遅らせてきた諸要因とは何か。異次元緩和は諸要因によってあっさり効果がなくなるものであったのか。予想物価上昇率は、想定以上に粘着的である可能性が高いのではなく、日本の物価を2%という基準にあてはめることがそもそも問題ではなかったのか。

 「既往の原油価格下落や教育無償化といった特殊要因は、物価を一時的に下押しするとみられるが、中長期的には、実質所得の拡大を通じて物価の押し上げ要因となり得る。この点について明確な対外説明が必要である。」

 もし2018年の実質賃金が伸びていないとなれば、このあたりの説明についても疑問が残ることとなろう。

 金融政策運営に関する意見については、いつも通り「2%に向けたモメンタムは維持されていることから」とあるが、2015年4月以降でみれば、どこにそのようなモメンタムが存在しているというのであろうか。

 「息長く経済の好循環を支えて、「物価安定の目標」の実現に資するべく、現在の金融政策方針を継続すべきである。」

 息長く経済の好循環はブレーキが掛かった可能性がある。そして、日本での物価安定の目標の2%に何の意味があるというのか。現在の金融政策方針を継続すべきというが、現在の金融政策が非常時対応のものであり、それをさらに重装備したような格好となってしまっており、それを継続して何が得られるというのであろうか。むろんその重装備を外すような構えをみせるとマーケットが動意を示してしまうというリスクは存在する。

 「不確実性の高い経済・物価動向のもと、政策の効果と副作用のバランスを慎重に点検しつつ、不均衡を蓄積させない程度にプラスの需給ギャップを維持することで、緩やかな景気拡大を持続させることが重要である。」

 プラスの需給ギャップが金融政策で本当に生み出せるのかという疑問はあるが、この意見には総じて賛成である。

 「経済・物価の下方リスクが顕在化するならば、政策対応の準備をしておくべきである。現状、物価上昇率の目標値への到達が遠ざかっているのであるから、何か大きな危機が起きるまでは行動しない、という態度は望ましくない。むしろ、状況の変化に対しては、追加緩和を含めて迅速、柔軟かつ断固たる対応を取る姿勢が望ましい。」

 そもそも日銀の緩和余地を狭める無理矢理な政策を迫った人達が、身動きできなくなりつつある日銀に対して、もっと緩和しろというのは不自然極まりない。なぜ柔軟性を残せなかったのか。「追加緩和」がいかに難しい状況となってしまっているのか。まあ、それも理解はしてくれないのかもしれない。

 ちなみに追加緩和は確かに理論上は可能である。マイナス金利を深掘りしたり、長期金利のコントロール目標値をマイナスにしたりは、理屈上は可能である。また、政策目標を量に戻して、国債の買入を増加させたり、ETFの買入を増加させたりすることも数字の上からはできる。しかし、それで物価を上げられる保証はないというか、上げられまい。せいぜい株価の下落にブレーキを掛ける程度にしかならないであろうし、市場はさらにおかわりを要求しよう。このような連鎖が続くと、国内金融機関には大きな打撃となりうるし、日本発の金融危機が発生しかねないことも確かではなかろうか。


# by nihonkokusai | 2019-02-02 11:21 | 日銀
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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