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ドイツ、イタリア、北朝鮮と米国のリスクの行方とそれによる金融市場への影響

 ここにきて金融市場に影響を与えかねないイベントが立て続けに起きている。そのひとつがドイツのドイツ連邦議会の第2党の社会民主党でのメルケル首相率いる政党と連立政権を組むかどうかについて党員投票であった。結果次第ではメルケル政権の存続の危機となり、ドイツばかりかユーロそのものの存続にも影響を与えかねない状況にあった。

 むしろそのような危機意識も手伝ってか党員投票の結果は賛成多数で連立が承認された。これにより、メルケル首相の4期目の政権が発足することになり、ひとまずこちらの危機は避けられた。

 4日に実施されたイタリアの総選挙もユーロの存続に影響しかねないものとなっていた。その結果は大方の予想通り、上下両院ともにどの陣営も過半数を取れずハングパーラメントの状態となった。ただし、中道右派連合が上下院ともに4割程度の議席を取って第1勢力となり、今後の連立交渉の軸になる見通しとなっている。同連合の一角で欧州連合(EU)懐疑派である極右「同盟」と、ポピュリズム政党の「五つ星運動」が議席を大きく伸ばし、今後の連立政権の軸となる可能性が高い。

 ただし、今回の選挙ではユーロ離脱などが争点となっていたわけではないことで、ユーロ体制を揺さぶることはなさそうである。ただし、連立そのものがどうなるのかが不透明であり、これまでの政策が大きく修正されるのか。移民問題はどうなるのか。金融絡みではイタリアの銀行の不良債権問題はどうなるのかあたりに注意する必要はある。

 そして、韓国と北朝鮮が来月、文在寅大統領と金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談を開くことで合意したとのニュースが飛び込んできた。北朝鮮問題が新たな展開を迎えたともいえる。ひとまず北朝鮮の地政学的リスクは表面上は後退するかにみえるが、予断は許さない。

 北朝鮮問題には当然ながら米国も大きく絡むわけだが、その米国ではトランプ政権で経済政策の司令塔だった国家経済会議のトップ、コーン委員長が辞任すると発表された。コーン委員長は、トランプ大統領が表明している鉄鋼製品などに高い関税を課す異例の輸入制限措置に反対していたと伝えられていた。

 大規模な税制改革で主導的な役割を果たしたとされるコーン委員長であったが、その辞任によって、今後の米国の経済政策の運営に対して不透明感が強まることになる。さらにその辞任の原因となったとみられる鉄鋼とアルミニウムに追加関税を課す方針についても、中国などの出方次第では貿易摩擦を強めかねない。

 金融市場では順調な世界景気の拡大を背景に米国市場などは過去最高値を更新し続ける状況が続いていたが、2月に入り大きな調整が入った。やっとその調整も落ち着いたかにみえたところに、今後の動向を不透明にさせるようないイベントも発生してきており、引き続き波乱含みの展開となる可能性がある。


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# by nihonkokusai | 2018-03-08 09:32 | 国際情勢 | Comments(0)

日銀副総裁で注目すべきは若田部氏ではなく雨宮氏

 5日に衆院議院運営委員会において日銀副総裁候補者の所信聴取が行われた。この際に注目されていたのは、リフレ派代表の若田部氏のほうであったようだが、本来注目すべきは若田部氏ではなく、現在の日銀の金融政策を作ってきたとされる雨宮氏のほうである。

 ただし、個人的にも若田部氏のコメントがどのようなものであるのかという興味はあった。

 若田部氏は「時期尚早な政策変更で、デフレに後戻りするリスクを避けなければいけない」と述べ、金利目標の早期引き上げなど緩和縮小方向への政策変更をけん制した(ロイター)。

 若田部氏は「金融政策に限界はない」とし、日銀が買うことの出来る国債は、考え方によってはまだ6割残っている」と指摘している。

 それなのに何故、日銀は雨宮氏を中心に「長短金利操作付き」に修正して、量から金利に政策目標をスイッチさせて現実の買入量を縮小するという手段に出たのか。このあたりの考え方の違いが、今後どう変化してくるのかも注目点となる。

 若田部氏の発言はこのくらいにして、日銀のエースと呼ばれている雨宮氏の発言を確認してみたい。

 雨宮氏は「日本経済は物価2%実現に向け着実に歩みを進めている」とする一方で、一つの政策だけで全ての目標が実現するわけではないと述べ、現行の金融政策の「効果と副作用の比較考量」が必要との認識を示した。

 雨宮氏は理事として2013年3月の量的・質的緩和政策を練り上げたとされる。それ以前にも2001年3月の量的緩和政策についても企画室企画第一課長として雨宮氏が大きく関わっていた。日銀法改正以降の日銀の金融政策には雨宮氏が随所に絡んでいたとされている。

 その雨宮氏は「不老不死の薬がない限り、世の中の現象、政策、やることすべては限界がある」と言明。「経済や物価という現象の複雑さ」を考えると、「単純にある政策だけで全てのことが実現できるわけではないと改めて認識している」と語った(ブルームバーグ)。

 これはある意味、「金融政策に限界はない」としたリフレ派の若田部氏への反論ともいえる。若田部氏にとってはその発言から、単純に金融政策だけで、全てのことが実現できるというイメージを持っているのではないかと思われるが、そんなことはないと、長きにわたり、日銀の金融政策を引っ張ってきた本人が説明している。

 雨宮氏は出口政策についても触れ、「経済物価状況に応じて、市場の安定を確保しながら金利を徐々に安定的に調整していくことは技術的には十分可能」と語った。政策手段や日銀の収益への影響は内部で検討しているとしながらも、公に議論するのは「時期尚早」と述べた(ブルームバーグ)。

 当然ながら出口について日銀は検討していよう。市場の安定を確保しながら金利を徐々に安定的に調整していけるのかが最重要課題となり、これまでのイールドカーブコントロールの状況等を確認しながら、調整は可能との認識かと思われる。ただし、公に議論するのは時期尚早とコメントしており、あくまで内部でシミュレーションが行われていると思われる。

 雨宮氏は質疑で、漢から元時代の中国の官名「諌議大夫」を引用し、天子に物言う役割を担い、「総裁を補佐しつつ、自分の意見を持って議論を活発化したい」と強調した(ブルームバーグ)。

 諌議大夫とは漢から元まで置かれた中国の官職のひとつで、政治の得失を論じ天子をいさめるのを任務とした。これまでも雨宮氏は総裁に物言う役割を長らく担ってきたと思われる。今回はさらに副総裁という立場で総裁を支えることになるが、副総裁という立場はこれまでのように黒子に徹するわけではない。副総裁に就任後、雨宮氏が今回のように公の場でどのような発言を行ってくるのか。今後の日銀の金融政策の行方を占う上でも、黒田総裁以上に関心を持って見ていく必要があるのではないかと個人的には思っている。


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# by nihonkokusai | 2018-03-07 09:42 | 日銀 | Comments(0)

債券先物が日銀総裁発言に過剰反応したのは、AIの判断ミス?

 日銀の黒田東彦総裁は3月2日に政府による次期日銀総裁の再任案が国会に提示されたことを受け、衆院議院運営委員会で所信の表明と質疑を行った。

 黒田総裁は再任された場合は「物価2%目標実現に向けた総仕上げに全力を尽くす」と強調し、「必要ならさらなる追加緩和も検討する」と明言した。

 「金融緩和や引き締めは、無限に続くわけではない」との発言もあったようだが、これは見方によれば、現在の異次元緩和策も永遠に続けるつもりはないとも取れる。当然と言えば当然の発言ではある。しかし、黒田総裁が当たり前のことを発言しても、市場はそれを緩和にブレーキを掛ける可能性もあるのかとの読みとなってしまう場合もある。

 市場参加者が最も関心のあるのが日銀の出口政策である。FRBやイングランド銀行は出口政策を進めつつあり、ECBも追随してくるとみられているなか、日銀は出口を封印しているかに見えるためである。

 この出口政策についても国会議員から質問が出るとしても当然である。これに対して黒田総裁は、「2019年度ごろに物価が目標とする2%に達すれば、出口を検討、議論していくことは間違いない」と発言した。

 日銀は今年1月に発表した経済・物価情勢の展望、いわゆる展望レポートで、「2%程度に達する時期は、2019年度頃になる可能性が高い」としており、この展望のとおりに物価が2%に達していれば、出口を検討、議論するのは当然ともいえる。

 「物価2%が遠い現段階で出口政策を議論することは市場の混乱を招き、適切ではない」とも総裁はこの場で強調していた。あくまで「出口に差し掛かった段階で議論し、市場とのコミュニケーションを図っていくことになる」と述べていた。ただし、「出口の要素について常に考えをめぐらせているのは事実」とも発言した(ロイターの記事より一部引用)。

 この黒田総裁の発言についてブルームバーグは「黒田日銀総裁:19年度ごろに出口を検討していること間違いない」とのタイトルで記事を出した。このタイトルに2日の市場が過剰反応したようにも見えた。外為市場ではドル円が大きく下げていたが、債券先物も日中ながらも50銭以上下落したのである。

 ここにきて債券先物は日中の動きが10銭に満たないことも多く、50銭も動くというのは異常であった。現物債も売られ10年債利回りも0.040%から0.080%に上昇したが、債券先物に引っ張られた格好であり、何かが起きていたのは債券先物であったように思われる。

 今回の黒田総裁の発言に過剰に反応した要因のひとつとして、これまで頑なに出口についてあまり語らなかった黒田総裁が、物価目標を達成するという前提ながらも出口について言及した面も大きい。このため記事のタイトルが前提は抜けていたが、「19年度ごろに出口を検討していること間違いない」となったことで、この言葉に債券先物が反応した。

 これはコンピュータ使った自動取引、いわゆるHFT(High frequency trading)が反応したのではないかと思われる。特に債券市場で先物が先に動いたことからも、その可能性が高いように思われる。

 ただし、今回の黒田総裁の発言内容はこれまでの発言や金融政策の流れそのものと矛盾するものではなく、あくまで黒田総裁が出口という言葉を発したことが珍しいことであったに尽きる。特に政策変更など示唆したわけではなく、過剰反応といえよう。債券先物は翌営業日となる5日に買い戻され、下落前の水準近くまで戻していた。


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# by nihonkokusai | 2018-03-06 09:41 | 債券市場 | Comments(0)

メガバンク主導のモバイル決済の規格統一でキャッシュレス化が進むか

 三菱東京UFJ、三井住友、みずほのメガバンク3行が、スマートフォンなどで手軽に支払いができるQRコード決済で規格を統一し、連携する方針を固めたことがわかったと27日にNHKニュースが伝えた。

 スマートフォンのタッチ機能でカード決済を行うモバイル決済は、キャッシュレス化を推進する決済手段として注目されている。中国ではQRコードを使ったモバイル決済「アリペイ」などが急速に普及している。

 QRコードを使ったモバイル決済とは、アプリを利用してユーザーのスマホに表示されたバーコードを店舗の端末で読み取るか、店舗のQRコードをユーザーが読み取って金額を入力するシステムとなる。店が発行するQRコードをスマホで読み取れば、電子マネーや預金口座にあるお金から引き落とされる。

 これまでこれら銀行を含めて別々に開発されていたようだが、メガバンク3行が連携するとなれば、規格が乱立する事態を回避することも可能となる。

 スウェーデンでは、複数の有力銀行が共同で開発し、2012年に運営を開始されたスウィッシュを国民の半数以上が使っているとされる。これは携帯番号と銀行口座が紐付けされ、店での支払いや個人間のお金のやりとりが瞬時にできる。

 もし日本で各銀行がバラバラにモバイル決済を導入するとなれば、小売店側の対応も銀行毎に必要となってしまう。このためスウェーデンのように大手行などが共同で開発して単一のモバイル決済の仕組みを作れば、日本でもモバイル決済が急速に普及する可能性がある。

 日本では高額紙幣の廃止論議なども出ていたが、現金の使い勝手が良すぎる面もあって、キャッシュレス化は進んでいなかった。ただし、高額紙幣廃止云々ではなくモバイル決済を利用したキャッシュレス化に関しては、SuicaなどJRのカードやnanacoなどのコンビニのカードを使うことで、普及はしている。しかし、中国などに比べると普及が進んでいなかったのは銀行と紐付けされて、どこでも使える便利で統一されたシステムがなかったためともいえる。

 日本でも当然ながらスマートフォンの普及は進んでおり、電子決済も普及はしているが、決済方式がバラバラで、単一のシステムがない分、現金に置き換わるほどのものではなかった。しかし、そこに大手行が統一した支払いシステムを投じるとなれば、モバイル決済が急速に普及する可能性はある。日本人の現金主義がこれで大きく修正されることはないかもしれないが、今回のメガバンクの共同システムが誕生すれば、若い世代を中心にスマートフォン決済が主流になる時代が来るかもしれない。

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# by nihonkokusai | 2018-03-04 07:05 | 金融 | Comments(2)

米中貿易戦争が意識されて、株式市場が動揺

 米商務省は1月11日に米通商拡大法232条に基づき中国などからの鉄鋼製品の輸入が米国の安全保障に与える影響をまとめた調査報告書をトランプ大統領に提出していた。トランプ大統領は90日以内に輸入制限発動などの制裁措置を判断するとしていた(毎日新聞の記事より引用)。

 そして3月1日にトランプ大統領は、中国の過剰生産によって安く輸入されている鉄鋼製品が米国の安全保障の脅威になっているとして、25%の高い関税を課す異例の輸入制限措置の発動を来週にも正式に決める意向を明らかにした。アルミニウムにも10%の関税を課すとしている。対象国は明らかにされていないものの、中国だけでなく欧州や日本、韓国、ベトナムなども対象になる可能性がある。

 これは通商拡大法232条に基づくものとなるが、これまで米国の歴代の政権は自由な貿易を損ないかねないとして発動には慎重な対応をとってきており、実際に発動されたのは、法律ができて50年余りで1980年前後に政治的に鋭く対立したリビアとイランからの原油だけとなっている(NHKニュースより引用)。

 3月1日の米国株式市場では、この日に実施されたパウエルFRBの米上院での証言で、米景気が過熱する見通しは否定して、緩やかな利上げを進めると強調したことで、タカ派的な色彩がやや薄れたとの認識から米長期金利は低下し、米株は買われていた。しかし、トランプ大統領の発言により、米中の貿易戦争への懸念を強め、結局、ダウ平均は420ドル安となった(日経新聞の記事より一部引用)

 2月に入ってからの米国株式市場は調整局面となり、5日のダウ平均は1175ドル安となって過去最大の下げ幅を記録した。米国株式市場はここまで調整らしい調整はなく、じりじりと上昇しながら高値を更新してきたが、その反動が出たとみられる。ただし、相場はいったん動きだすと荒れた展開が続くことが多い。ボラティリティが低い状態が長らく続いていたこともあって、その反動も起きたといえる。ここにきて少し落ち着きも見えてきたかと思われたところにトランプ大統領によって、火に油が注がれた状態となってきた。

 今回の米株の下落は一時的な調整とみてはいるが、ここであらためてトランプ政権に対するリスクが意識されると、トレンドそのものが変化してくる可能性もあるため、今後のトランプ政権の動向とそれを見据えた米株やドルの動向、さらには米長期金利の動向には細心の注意も必要となってきそうである。


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# by nihonkokusai | 2018-03-03 09:03 | 国際情勢 | Comments(0)

日銀が28日に超長期国債の買入を減額した理由

 2月28日に日銀は中期ゾーンと超長期ゾーンの国債買入をオファーした。残存1年超3年以下は2500億円、3年超5年以下3300億円、10年超25年以下1900億円と、ここまでは前回と同じ金額のオファーであったが、25年超については700億円と前回の800億円から100億円減額した。

 今年に入ってからの日銀による国債買入額の修正について、振り返ってみたい。

 1月9日の国債買入において日銀は残存10年超25年以下の買入額を1900億円と前回の2000億円から減額し、残存25年超も800億円と前回までの900億円から減額した。これは市況環境によるものというよりも、来年度の国債発行計画でこの超長期ゾーンも含めて発行額が減額されることもあり、日銀は少し早めに手を打ってきたとの見方もできた。減額そのものは想定内ではあってもタイミングがやや想定外となったことで外為市場が動意を示し、ドル円は113円近辺から112円台半ばに下落した。

 1月22、23日に開催された金融政策決定会合における主な意見では、「超長期国債の買入れ減額が金融政策の意図せざるシグナル効果を持ち得るのであれば是正すべきである」との意見が出ていた。これはリフレ派からの意見と思われるが、9日の外為市場の動きなどを意識した発言かとみられる。

 1月31日の国債買入において日銀は3年超5年以下について前回26日の3000億円から3300億円に300億円増額した。欧米の長期金利上昇を背景に日本の10年債利回りが0.1%に接近したことに加え、9日に超長期ゾーンを減額した際の影響を打ち消す意味もあった可能性もある。

 2月1日のFOMCでは利上げ加速の可能性を議論したとの観測に加え、米国債の発行増への懸念などから米10年債利回りは2.79%と2014年4月4日以来の水準に上昇した。イングランド銀行も利上げペースが速まるのではとの観測やユーロ圏の景気拡大によりECBの緩和縮小ペースが想定より速まるとの観測も出ていた。

 2月2日の東京市場では欧米の長期金利の上昇を受けて、10年債利回りが0.095%まで上昇し0.1%に接近した。これに対し日銀は国債買入で5年超10年以下を4500億円と400億円増額した上で、それとともに指し値オペも10年債のカレントで0.11%の水準でオファーした。これは利回り上昇を抑制するための一時的な措置とみられたが、その後5年超10年以下は4500億円のままとなっている。指し値オペだけでも良かったのではなかったろうかという気もしなくもない。

 2月に入り米株がやや高値波乱といえる動きとなり、米長期金利は一時2.95%と3%に接近後は2.9%近辺での推移が続いている。外為市場ではドル円は一時105円台をつけるなど円高も進んでいた。このような環境下、日銀は国債買入についてどのような修正をしてくるのか注目された。

 2月26日の5年超10年の4500億円の維持は外為市場など影響も考慮したものとみられる。本来であれば、ここは4100億円に戻したいとところではあった。

 しかし、28日に25年超を100億円減額した。これは何故なのか。債券相場が戻り基調となり、イールドカーブのフラット化が進んでていたことでの修正というのが理由となるかもしれない。しかし、一番期間の長いところの減額ということで日銀のイールドカーブコントロールの隠れた目的でもあるイールドカーブのスティープ化が意識されたのではなかろうか。市場では大手機関投資家の意向もあったとの観測も出ていた。

 ちなみに28日の夕方には「当面の長期国債等の買入れの運営について」、つまり3月分の日銀による国債買入スケジュールも発表された。長期国債については買い入れ金額、回数ともに1月末に発表された2月のスケジュールと同じであった。ただし国庫短期証券、つまり1年以下の国債については、「金融市場に対する影響を考慮しながら1回当たりのオファー金額を決定する」として、「当面、残高を概ね10兆円台後半から20兆円台前半とすることをめどとしつつ」とする文が削除されていた。これを見る限り淡々とステルステーパリングも進められているようにも見える。


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# by nihonkokusai | 2018-03-02 09:25 | 日銀 | Comments(0)

試されるパウエルFRB議長による市場との対話力

 米国の連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル新議長は27日の議会証言で、「年3回の利上げシナリオを提示した昨年12月に比べ、景気見通しは強まっている」と指摘した。停滞していた物価も「(2%の)目標に向かって上昇すると確信を深めている」とした(日経新聞の記事より)。

 バウエル議長が就任したのは2月5日である。この日の米国株式市場でダウ平均は1175ドル安となり過去最大の下げ幅を記録した。パウエル議長就任を嫌気した売りではなかったものの、パウエル新議長にとっては多難な船出となった格好である。

 5日の米株の急落については、VIXなどの影響もあったとみられるが、ボラティリティの低い状態のままの上昇相場が長く続いた反動とみて良いかと思う。パウエル議長もこれについては特に問題はないとしている。しかし、米国株式市場の急落後の状況を見る限り、FRBの利上げの行方に関してこれまで以上に敏感になってきているようにも思える。

 27日のパウエル議長の議会証言の内容を受けて、ひとまず3月のFOMCでの利上げがほぼ確実視された。それに加えて、年4回の利上げについても可能性が強まったのとの見方も強くなりつつある。27日の米国市場では米10年債利回りは2.89%と前日の2.86%から上昇し、この長期金利の上昇もあって、昨日の米国株式市場は下落、ダウ平均は299ドル安、ナスダックは91ポイント安となった。また、28日には米10年債利回りは2.86%と前日の2.89%から低下したものの、ダウ平均は大幅続落となり380ドル安、ナスダックも57ポイント安となり、やや荒れ模様の展開となった。

 そして、これまで二回に一回となっていたFOMC後の議長会見について、日銀の金融政策決定会合後の総裁会見などと同様に、毎回行うのではとの観測が出ている。これまでのFRBの政策変更は、特に正常化を進める際には、議長会見のあるFOMCに限られていた。そうなると政策の変更は年4回に限られるとの見方もできてしまう。このため、FRBも毎回にすることで、少し政策変更タイミングの柔軟性を取りにきた可能性もある。毎回会見があったほうが、より市場との対話も進むメリットあると思われる。

 FRBはタカ派色が強まったとか、利上げについてはもしもの際の利下げのための糊代作りとの見方もある。しかし、2013年末からのテーパリング開始決定からの一連の動きは、正常化とも呼ばれるように、非常時の危機対応から脱することにあった。危機の後退にともない世界経済は拡大傾向となり、ファンダメンタルに即した金利環境の構築を目指しているともいえる。

 米国市場はこの新たな金利環境の行方を注目しはじめており、その結果として米長期金利は3%近くまで上昇してきている。パウエル議長は現在の環境が継続すれば、年末にむけて物価は上昇し2%の水準で安定するとしている。このため、ある程度の長期金利上昇は容認しているとみられ、長期金利を0.1%以下に無理矢理抑え込んでいる某中央銀行とは異なった姿勢とみられる。

 緩やかな金利上昇とそれを可能にさせる経済環境が続けば、株式市場も上昇基調が維持されるとみられ、これはドル高要因ともなる。しかし、トランプ政権がドル高を望んでいないことから、外為市場の動きが読みづらい状況となっている。利上げはかなり織り込んできてはいるものの、市場はやや神経質ともなっており、今後はパウエル議長による市場との対話力も試されるものと思われる。


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# by nihonkokusai | 2018-03-01 09:29 | 中央銀行 | Comments(0)

金利を異常に低くさせて何のメリットがあるのか

 いまさらではあるが、日本の金利は過去の歴史に例のないような低い状態にあることはご承知の通り。その原因は日銀による金融政策にある。むろん、物価が前年比マイナスといった状況下であれば、物価による金利への影響も考えられる。しかし、その物価は日銀が目標とする2%には届かないものの、前年比0.9%と1%近い水準にある。生鮮食料品の値上がりで1月の総合指数は前年比プラス1.4%に上昇している。

 それでも日銀の大量の国債買入とイールドカーブコントロールによって、長期金利は0.1%以下に抑えられている。これがいったい何の役に立っているのであろうか。

 中央銀行が大量に国債等の資産を買い入れれば、物価は上がるとしていた日銀の壮大な実験はうまくいってはいない。むしろ物価は上がらずとも景気そのものは拡大している。この景気拡大はアベノミクスというより、世界的な危機後退による景気拡大の恩恵を受けている。景気の緩やかな回復と物価が低位安定していることは、我々の生活にとってはそれほど悪い状況ではない。賃金の上昇ペースは鈍くとも、雇用はタイトとなっている。

 賃金といえば大手銀行のベースアップで労働組合によるベースアップ要求が見送りとなるようだが、金融機関の厳しい経営環境の原因は日銀による低金利政策にある。

 経団連の榊原会長は26日の記者会見で、「各業界の状況はさまざまであり、判断を尊重するが、これは特殊な状況の中での銀行の組合側の判断だと思う。全体として、日本経済は非常に好調で、多くの企業が史上最高益の更新を含めた増収増益となっているので、過去の実績を上回る賃上げの実現を期待している」と述べていた(NHK)。

 この日本経済は非常に好調な理由として、日銀による異次元緩和を中心としたアベノミクスを意識する人も多いかもしれないが、本当にそうであるのか。日銀が大量に国債を買い、イールドカーブを無理矢理抑え込めば、物価が上がらなくても、景気は回復するのか。その波及経路はどうなっているのか。

 日本企業は現在、債務まみれの状態にあるわけでなく、むしろ潤沢な資金を保有している企業も多い。我々国民もまた潤沢な資金を有していることは日銀の資金循環統計等からもあきらかである。つまり企業も個人も本来であれば、物価や景気動向に即した金利を得られてしかるべきなところ、それがゼロ近くになっている。つまり本来もらえるものがもらえていないことを我々はもっと認識すべきである。

 それで楽になっているのが政府である。膨大な債務リスクがこれによって顕在化せず、財政は拡張するばかりとなっている。本来であれば、債務危機への警報器である国債の価格発見機能も日銀によって機能停止とされている。このような状況で本当な良いのであろうか、我々はいま一度考えてみる必要があるのではなかろうか。


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# by nihonkokusai | 2018-02-28 09:20 | 日銀 | Comments(0)

年初からの円高ドル安の要因を探る

 ドル円の日足チャートをみると昨年の11月9日あたりと今年の1月10日あたりを起点にして相場の地合が変化していたように思われる。

 昨年の11月9日は日経平均が一時400円以上上昇していたが、株式相場のボラティリティーが上昇し、コンピュータープログラムを使ったシステム取引の参加者などから利益確定の売りが出たようで今度は急落し日経平均は300円を超す下落となり、高値からは800円を越す下げとなるなど高値波乱となった。この株価の変動も嫌気されたのか、ドル円も114円近辺から一時113円50銭割れとこちらも大きく変動した。

 日経平均の上昇基調は11月9日あたりでいったんピークアウトし、方向感に乏しい展開となる。これに対しドル円は下落トレンドとなり、一時111円割れとなった。11月24日に日銀は超長期ゾーンの国債買入を減額していた。しかし、11月末あたりから、再びドル円は切り返し、12月半ばあたりに113円台の後半まで上昇したが、ここが戻り高値となった。

 東京株式市場は昨年末の米株の上昇などを受けて、今年に入り大発会で日経平均は741円高の高値引けとなった。北朝鮮の金正恩委員長が韓国との対話に柔軟な姿勢を示唆し、平昌冬季五輪に選手団を派遣する可能性について検討する姿勢も示したことで、北朝鮮の地政学的リスクの後退なども材料視か。ただし、ただしドル円の動きは鈍く、112円半ばあたりでの動きになっていた。このあたりから、日経平均が上昇するとドル円も上昇するパターンに変化が生じている。

 1月9日に日銀は超長期の買入をさらに減額してきた。このため、指し値オペや買入増額への思惑、減額への懸念も出ていた。中国当局が米国債購入の縮小または停止を検討しているとの報道について、中国政府筋は11日、誤った情報に基づいている可能性があるとの見解を示した。

 1月10日あたりを起点にドル円は再び下落トレンド入りする。2月2日に日銀は指し値オペと国債買い入れを増額した。しかし、ドル円の戻りは限られ、2月16日には105円台半ばまで下落した。この間の日経平均は米株がしっかりしていたこともあり、26日に22000円台を回復している。ドル円も2月21日に107円台後半まで戻すが、107円台を維持できずにいる。

 ドル安の背景のひとつとして、米国の通貨政策もあろう。1月24日にムニューシン米財務長官はスイスのダボスで開かれている世界経済フォーラムで、明らかに弱いドルは我々にとって良い、と述べた。これに対してトランプ大統領はテレビのインタビューに答えるかたちで、「米国経済は非常に力強い。絶好調だ。それゆえドルはどんどん強くなるだろう。最終的に私は強いドルを好む」と答えた。

 トランプ大統領は自らの発言でムニューシン財務長官によるドル安容認発言を否定したが、ドラギECB総裁がユーロは誰かのコメントのせいで上昇した面もあると発言したり、IMFのラガルド専務理事がムニューシン財務長官に説明を求められたりしたとも伝えられていたが、何らかの力が働いてのトランプ大統領の発言であった可能性もある。

 結局、ムニューシン発言は米国の本音が出たのではないかとの思惑も手伝ってドルの上値を重くさせているとも考えられる。また、FRBの利上げペースも維持されるとみられ、米長期金利が一時2.95%まで上昇したものの、ドル円の戻りは鈍い。こちらも連動性を失っているが、これも米政権の意向などが意識されての動きなのか。

 いまのところ何故、ドル円が下落トレンド入りしているのか、具体的な材料は見えてこない。しかし、何かしらドル円の上値を重くさせている要因もあるはずである。平昌オリンピック後の北朝鮮による地政学的リスクの再燃なども意識されているのかもしれない。今後のドル円の動向にも要注目となりそうである。


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# by nihonkokusai | 2018-02-27 09:59 | 為替 | Comments(0)

2017年の米国債保有高、中国が前年比で1265億ドル増と大きく増加

 今年1月に中国当局が米国債の購入縮小もしくは停止を検討していると報じられたが、その後、中国当局が米国債購入の縮小または停止を検討しているとの報道について、誤った情報に基づいている可能性があるとの見解を示した。

 中国の米国債保有に何かしら動きがあったのか。米財務省が2月15日に公表した米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)を確認してみたい。

 これによると、昨年12月の国別の米国債保有高のトップは引き続き中国となっている。昨年12月時点の中国の米国債保有額は1兆1849億ドルとなり、11月比では83億ドル増加していた。年末ということで前年比と比較すると1265億ドルの増加となっていた。

 これに対して今回も2位となっていた日本は昨年12月の米国債保有額は1兆615億ドルとなり、前月比では226億ドルの減少となっていた。前年比では293億ドルの減少となる。

単位、10億ドル、()内は前年比増減

中国(China, Mainland)1084.9、+126.5

日本(Japan)1061.5、-29.3

アイルランド(Ireland)326.5、+38.3

ケイマン諸島(Cayman Islands )269.9、+6.2

ブラジル(Brazil)256.8、-2.4

英国(United Kingdom)250.0、+32.8

スイス(Switzerland)249.6、+19.6

ルクセンブルグ(Luxembourg )217.6、-6.7

香港(Hong Kong)194.7、+3.3

台湾(Taiwan)180.9、-8.4

 この数字を見る限り、中国が政策的に米国債保有額を減少させているとは言えない。2月7日に中国人民銀行が発表した今年1月末の外貨準備高は216億ドル増の3兆1600億ドルとなった。中国の外貨準備は12か月連続で増加しており、その結果、米国債の保有高が増加しているともいえそうである。

 昨年5月までは米国債保有高のトップは日本となっていたが、昨年6月に中国に逆転されて、その差が広がっている。米国債相場は今年の1月以降は下落トレンド(米長期金利は上昇)となっており、日本などはさらに保有額を減少させてきた可能性がある。

 米国の2018会計年度(2017年10月~2018年9月)と2019会計年度の歳出上限は合計3千億ドル程度引き上げられた。これにより米国の債券市場では米国の財政への懸念に加え、FRBの米国債保有額の減少も加わっての需給への懸念も出てきている。

 今後の中国や日本の米国債投資のスタンスが米長期金利の動向に影響を与える可能性もある。今のところ米長期金利が3%を大きく超えてくることは考えづらいが、サブシナリオのひとつとして考えておく必要があるのかもしれない。


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# by nihonkokusai | 2018-02-26 09:57 | Comments(0)
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