消費者物価(除く生鮮食品)の前年比に関しては、「(足下が)概ねゼロ%となっており、先行きは当面、ゼロ%近傍で推移するとの見方で一致した」としている。物価安定の目途としている1%まではまだ距離がある。
「一人の委員は、消費者物価(除く食料およびエネルギー)の前年比マイナス幅が引き続き大きめとなっている点が気がかりであると述べた。」
消費者物価指数の総合から「食料(酒類を除く)及びエネルギー」を除く総合指数を、「米国型コア」指数、または「コアコア」指数と呼んでいるが、2月の消費者物価指数では総合が前年同月比は0.3%の上昇、コア指数が同0.1%の上昇となっていたのに対し、コアコア指数は0.6%の下落となっていた。
これを見る限り委員の中には、消費者物価指数の上昇に対して、やや懐疑的な見方をしている委員がいるとみられる。
「複数の委員は、消費者物価について、前年比が上昇した品目の比率から下落した品目の比率を差し引いた計数や刈込平均値が上昇基調にある点などに言及しつつ、緩やかながら 基調的に物価が上昇に向かっているとの認識を示した。」
ここで気をつけたいのは「複数の委員」となっている点である。そのように見てはいない委員がいるということになるが、このあたりは27日に発表される展望レポートの数値である程度明らかになる。
そして一人の委員から下記のような発言もあった。
「円高修正や株価の持ち直しがみられる状況下において、前回会合で明確化された政策姿勢への理解を市場に一段と浸透させることを通じて、企業の設備投資需要等を顕在化させることが望ましく、そうした観点から、前回会合に続き長期国債を対象として、資産買入等の基金を増額することが適当との見解を述べた。」
これは3月の会合で、資産買入等の基金の残高を増額する旨の議案を提出した宮尾委員の発言と思われる。この発言内容を見る限り、4月9日・10日の会合では、なぜ同様の議案を宮尾委員が提出しなかったのか疑問である。3月時点に比べて、4月の会合時点のほうが円高株安となっていたはずである。
宮尾委員は議長提案には賛成票を投じたことで、3月の会合では、全員一致での現状維持となった。現状維持とした理由としては、「2月に増額した基金による金融資産買入れ等を着実に進め、その効果の波及を確認していくことが適当」との考えによるものとみられる。その意味では4月27日に追加緩和を行う必要はなさそうにも見える。
また、累次の資産買入等の基金の増額によって国債買入規模が拡大していることについて、何人かの委員から次のような注意も発せられている。
「日本銀行が財政ファイナンスを行っているという疑念を生じさせることを通じて市場の不安定化につながることのないよう、こうした国債買入れの目的を引き続きしっかりと説明し続けていくことが重要」
4月27日にもし追加緩和が決定されるとすれば、それは5兆円か10兆円の資産買入等の基金の増額が決定される可能性がある。国債の買入増となれば、その買入の期間の延長とともに、買い入れる国債の期間も1年から2年ではなく5年あたりへの延長となることも予想される。
現在のところ国債市場では、日銀が財政ファイナンスを行っているという認識はないが、日銀券ルールに縛られない、つまり歯止めのない基金での国債買入増額は、財政ファイナンスを行っているという疑念を今後生じさせるリスクを伴うものとなろう。つまり、物価安定の目途に届かないからといって、追加緩和が迫られた結果、今後、複数回に渡り基金による国債買入を増額させるようなことになれば、あらたなリスクが顕在化する恐れがある。このあたり、どのような判断を下すのか、27日の決定会合に注目したい。
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