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三重野日銀総裁当時の日銀の金融政策

 平成の鬼平とも呼ばれた三重野元日銀総裁が亡くなった。三重野氏は1989年12月に第26代日本銀行総裁に就任したが、まさにこの1989年末の大納会に、日経平均株価は史上最高値の3万8915円を付けていたのである。このあと1994年12月の任期満了となるまで、バブル崩壊による対応に追われることになる。

 1989年5月に日銀は公定歩合を3.25%に、10月には3.75%に引き上げたことで、完全に金融引締め政策に転じていた。この日銀による公定歩合の度重なる引き上げを受け、債券相場は1989年にはすでに伸び悩みの状態となっていたが、1990年に入ると債券に加え、株式や円のトリプル安でのスタートとなった。

 1990年3月20日に日銀は第四次の公定歩合引き上げを実施し、これは1.0%という大幅引き上げとなり、公定歩合は年率5.25%にまで引き上げられた。その後、株式は一時的に戻したものの、原油価格の急騰などからインフレ懸念が一段と高まり再び下落した。この原油価格の高騰の原因となったのは、8月2日のイラク軍によるクウェート侵攻である。株の下落にもかかわらず、物価上昇を気にしてか、日銀は8月30日に公定歩合を0.5%引き上げて年6.0%とするという第五次公定歩合の引き上げを実施。これを受けて債券先物は急落し、9月27日には債券先物市場開設以来の安値となる87円8銭まで下落し、長期金利も8%台に上昇、株価も大きく下落し、10月1日に日経平均は2万円を割り込んだのである。

 このような度重なる金融引き締めを行ったことで、三重野総裁は「平成の鬼平」ともいわれたのである。これにより三重野総裁はバブル経済を崩壊させ、失われた10年を起こした張本人とされたが、バブル時の引き締めのタイミングそのものが遅れたことも問題であったように思われる。このあたり金融政策の舵取りの難しさも露見した。結果として、1990年に入ってからの引き締めは株や債券の下落ピッチを早め、バブル崩壊を加速させる結果となったことも確かであった。

 1991年はバブル崩壊の実態が本格的に表面化し始めた年となる。1月16日に典型的なバブル企業の倒産と言われたナナトミの倒産があり、25日にはイトマンの河村社長が解任された。8月には女相場師で有名であった大阪ミナミの料亭の女将が逮捕されも大手証券の損失補てんが発覚し投資家の株式離れが進む。

 日銀は1991年6月に短期金利の低め誘導を行い、7月1日には公定歩合を6.0%から5.5%に引き下げ、さらに11月14日、12月30日と続けて公定歩合を引き下げて4.5%とするなど、金融緩和に向けて方向転換したものの、これによる効果は限られた。

 1992年1月に地価税が導入され、土地神話は完全に打ち砕かれた。3月末に公共事業の施行推進など、緊急経済対策が決定し、公定歩合も3.75%に引き下げられ、7月にも0.5%の追加引き下げが実施された。8月には総合経済対策が策定され、公共事業投資の拡大などを主体とした事業規模は10.7兆円までに達したのである。

 バブル崩壊後の景気回復が思わしくなく、加えて米国による内需拡大要請もあり、1993年4月に宮沢首相は事業規模13兆円の景気対策を実施。この年は円高に加え冷夏ということもあり消費も停滞した。国会での政治的混乱から6月には宮沢内閣に対して不信任が決議され、総選挙が実施された。選挙の結果、8月6日に38年ぶりの非自民政権である細川内閣が誕生した。

 細川内閣の経済運営にも失望感が広がり、株価の下落は続く。9月に6.2兆円の「緊急経済対策」を実施。また、金融緩和もさらに進められ、日銀は公定歩合の第7次引き下げを実施し公定歩合は1.75%にまで引き下げらた。また、補正予算が組まれ、約15兆円の「総合経済対策」が、1993年2月に実施された。これには所得税減税など5.8兆円も盛り込まれた。

 三重野総裁当時の金融政策は公定歩合操作が中心であった。しかし、1995年3月の日銀による短期金利低め誘導以来、コールレートを操作目標にしている。

 1991年以降債券相場は、上昇トレンドが続くことになる。日銀が金融緩和に舵を取り、バブル崩壊とそれによる金融システム不安の強まりにより、安全資産としての国債に資金が集まり、1990年に8%台をつけていた長期金利は1998年に1%を割り込むことになる。


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# by nihonkokusai | 2012-04-23 08:13 | 日銀

4月23日から国債の決済がT+2に移行

 国債取引の決済期間は4月23日(月)の約定分から現行のT+3からT+2に短縮される。つまり、売買約定日から起算して原則3営業日目の日に受渡し・決済を行うことになる。

 国債の決済については関係者以外はあまり意識されていないかもしれないが、国債の売買にあたっては当然ながらその資金の受け渡しは大変重要なものであり、今回のT+2への決済機関の短縮についても、時間をかけて準備されてきた。

 ちなみにT+2のTとは「Trade date」のことで証券の売買が成約された日、つまり約定日を意味する。慣行上、T+1は「ティ・プラスいち」、T+3は「ティ・プラスさん」といった呼び方をしている。

 国債の決済に関しては、1995年時点ですでにアメリカ、イギリスなどは約定日から起算して2営業日目(T+1)、つまり翌日決済を行っていた。日本でも1996年9月19日の売買分より、約定日から起算して8営業日目(T+7)に決済を行うローリング決済に移行し、1997年4月21日売買分からは約定日から起算して4営業日目(T+3)に決済を行うことになった。そして、2012年4月23日約定分からは3営業日目(T+2)に決済を行う予定である。1日短縮するのに15年の月日を要したことになる。

 これは、すでに日本では証券と資金の振替が同時に行われる決済方式であるDVP決済が1994年に導入され、2001年からは国債決済にRTGS(即時グロス決済)が導入され、さらに2005年5月からは日本国債清算機関の業務が開始されるなど、現在のT+3でもシステマティックリスクなどの国債の決済に対してのリスクはかなり軽減されていたためでもある。

 しかし、それでも国債など金融商品の決済期間の短縮は、未決済残高を減少させ、結果として決済リスクを削減するための有力な手段となる。たとえば急激な相場変動が起きた際にも決済不履行などの事故が生じる決済リスクを軽減させられる。このため、T+2への移行が準備されたものと思われる。

 現状ではT+2への移行について、特に大きな障害が発生することは考えづらい。事前準備も進められており、レポ市場などでは1日減る分、忙しくなる可能性はあるものの、大きな混乱が起きることは考えづらい。

 ちなみに、国債の決済は1988年に稼働した日銀ネットを通じて行われている。金融機関同士が行う資金取引の決済や国債など証券取引の代金の決済や、民間決済システムの最終的な決済に、日銀の当座預金での振替が利用されている。日銀が金融機関との間で行っているオペレーションや貸出し、国庫金の受払い、国債の発行・償還に伴う資金の受払いなどについても、日銀の当座預金を介して決済が行われている。


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# by nihonkokusai | 2012-04-20 14:24 | 債券市場

インフレ目標政策を認めた西村日銀副総裁

 4月18日の岡山県での日銀の西村副総裁の講演のタイトルは、そのものズバリ「わが国経済のデフレ脱却に向けて」と、2月14日のバレンタイン緩和を実際にどのように捉えたら良いのかを理解してもらおうとの内容となっていた。今回はこの興味深い講演内容について見てみたい。

 西村副総裁は2月14日に日銀の行った政策対応は3つあるとし、ひとつは「中長期的な物価安定の目途」の導入、もうひとつは、資産買入等の基金を10兆円規模の増額、そしてもうひとつ、強力な金融緩和を継続する「時間軸」(コミットメント)を明確化したことを指摘している。

 ここでキーになるのは、最後の「時間軸」(コミットメント)の明確化であろう。これについて西村副総裁は次のようなコメントをしている。

 「1%をピンポイントで明示しつつ、目指すという表現を用いて能動的に政策対応を進めていく姿勢を明確にしています。また、条件が充たされるまで継続を約束する政策として、実質的なゼロ金利政策に加えて金融資産の買入れ等を明記しています。」

 ここで注意すべきは「能動的な政策対応」と「実質的なゼロ金利政策に加えて金融資産の買入れ等を明記」であろう。能動的との表現により、明らかにこれまでの政策から大きく変化させてきたことが伺えるとともに、そのゴールに向かうための政策手段には、「金融資産の買入れ等」が使われるであろうことが示唆されている。

 そして西村副総裁は、2月の決定を受け、日銀の政策目標、政策運営ロジック、政策スタンスは変わったのかとの問いに答えを示した。

 物価の安定に対する基本的考え方は、「中長期的な物価安定の目途」の導入で変わった訳ではないとしている。ところが、これまでの理解では、物価の安定の実現を目指して(日銀が)能動的に行動している感じが伝わり難いといった問題を西村氏は指摘している。確かにそれは伝わってはいなかったと思うが、これは数値に縛られかねないインフレ・ターゲットの導入と捉えられないようにしていた日銀の姿勢も影響していたと思われる。

 しかし、1月のFRBによる政策変更にも背中を押される格好で、日銀は実質的なインフ目標導入を明確化させた。これについて、西村副総裁は「弾力的なインフレ目標と呼んでも、私には違和感はありません」として、日銀がインフレ目標政策に変更したことを認めている。

 これは「経済・物価に関するメイン・シナリオの実現をより確かなものとする観点から、日本銀行の政策意図を一層はっきりと伝える必要性が意識されたこと、また、そのような対応を取らない場合に目途の達成の遅れにもつながりかねないこと」が懸念されたことによると西村副総裁は指摘した、

 しかし、なぜこれまでにそのような議論はあまりなされず、今年に入り急に盛り上がってきたのか。そのあたりはFRBの動向、政治との絡みなどがあるとみられ、その理由としてはわかりにくさも感じる部分でもあった。

 ただし、西村副総裁は「理解から目途に替わったことで、2つの柱による政策運営まで変更された訳ではありません」とも、念のため釘を刺している。さらに副総裁は「追加緩和の可能性は高まったのか」というところにまで言及しており、かなり市場に配慮というか、27日の会合前にそんな発言しても良いのかという部分にも踏み込んでいた。

 日銀として今後も必要に応じて追加的な手段を講じていく姿勢にあることを示し、追加緩和の可能性をまず示唆するとともに、下記のような発言もあった。

 「日本経済の現状は、前向きの動きがみえてきたとは言え、世界経済を中心に不確実性は依然として大きいと考えています。また、2月と3月の政策変更が、経済・物価に関する人々の中長期的な期待にどのような影響が及ぶのかについても、無視できない不確実性があります。今後、こうしたリスク要因を十分に考慮に入れながら、しっかりと先行きの経済物価動向を点検し、適切な政策運営に努めて参りたいと思います。」

 はっきりとは示されているわけではないが(あたりまえか)、これを読む限り4月27日の追加緩和の可能性は極めて高いと思われる。不確実性という表現が2度出てくるが、少なくとも物価が急上昇するような不確実性は現状は考えられず、世界経済の低迷や2月のバレンタイン緩和効果による円高調整も一服してしまっている中、不確実性を意識するのならば、市場の期待の強まりに答える格好で、追加緩和に踏み切らざるを得ないものと考えられるのである。


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# by nihonkokusai | 2012-04-20 08:04 | 日銀

金融政策におけるコミットメントとは何か

 「コミットメント」はすでに日本語化しているが、その意味として、三省堂辞書サイトによると、「責任をもって関わること、責任をもって関わることを明言すること、責任を伴う約束をさします。」とある。

 2月14日のバレンタイン緩和で、日銀は実質的なインフレ目標、もしくはインフレ・ターゲット政策を導入した。これについて、日銀の白川総裁は、「物価上昇率を引き上げるという要素を内に秘めた能動的な政策だ」と説明し、宮尾日銀審議委員は講演で、デフレ脱却に向けた「強いコミットメント」と説明した。さらに18日の講演で西村副総裁は、強力な金融緩和を継続する「時間軸」(コミットメント)を明確化したとしている。

 FRBも1月25日に物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くことを決定したが、これについてバーナンキ議長は記者会見で、新たに公表を開始した政策金利の予想パスは、あくまで予想に過ぎず、コミットメントでない点を再三強調していた。

 FRBや日銀による政策変更は、実質的なインフレ目標の括りとして捉えられようが、その数値には法的な拘束力などがあるわけではない。あくまでECBの「物価安定の量的定義」や日銀の「物価安定の理解」の発展型とも言えよう。

 特にバーナンキ議長は、FRB議長就任前は代表的なインフレ・ターゲット論者であり、デフレ対策として日銀に「ケチャップでも何でもいいから無限に買え」と提言したとの逸話でも知られる。しかし、1月25日のFRBの政策は以前の持論とは一線を画すため、コミットメントでない点を強調したものと思われる。これはFRBの目標が物価安定だけでなく雇用の安定にもあるためとの見方もあるが、コミットメントを強めると、金融政策における柔軟性が失われることを避けるためと思われる。

 しかし、それに対して日銀は、審議委員の発言であるものの「強いコミットメント」との説明もあり、FRBよりも踏み込んだインフレ目標策であるかに思われる。実際のところ1月25日のFOMCでは、事実上のゼロ金利政策を解除する時期を、これまで公表してきた来年の半ばから1年余り先延ばしするなどしたものの、具体的な追加緩和などは行わなかった。これに対して2月14日に日銀は、緩和強化をはかり、基金の増額も行い資産買入等の基金をこれまでの55兆円程度から65兆円程度に10兆円増額し、その増額対象は長期国債(期間1~2年)とすることも決定した。まさに日銀は態度で示した格好である。

 これを見てもFRBよりも日銀のほうが踏み込んだ姿勢をとっている。なればこそ、4月27日の金融政策決定会合で、追加緩和は避けられないのではとの見通しが強まっている。27日に発表される展望レポートでは、物価予測は上方修正される可能性があるようだが、1%には届かないのではないかとの観測も出ている(日経新聞)。能動的な金融政策、そしてコミットメントを意識すれば、追加緩和をせざるを得ない。コミットメントを強めると、市場は物価の数値だけで、追加緩和を期待するようになってしまう。これはいずれ金融政策を縛りかねないし、このあたり今後の市場との対話も難しくさせかねないのではなかろうか。


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# by nihonkokusai | 2012-04-19 09:54 | 日銀

中央銀行への過剰な依存を打破できるのか

 「金融市場における為替あるいは株価の動きは、経済に影響を与える 1つの要因です。しかし、この金融市場における価格形成については、日本銀行の金融政策だけでなく、様々な要因で変動するものです。従って、金融市場の変化と金融政策のスタンスを、いわば1対1で対応付けて考えることは、必ずしも適切ではないと思います。」

 これは4月10日の日銀金融政策決定会合後の会見における白川日銀総裁の発言の一部である。これは確かにそうではあるものの、市場の期待や注目が中央銀行の動向に集まってしまっちているときには、金融市場の変化に対して金融政策のスタンスは大きな影響を与えうる。それがまさにここにきての日欧米の市場の動きであるかと思われる。

 これまで最大のリスク要因は欧州の債務問題であったが、それが最も深刻であったのは、昨年11月から12月にかけてであった。その後、欧州のリスクは少しずつ緩和され、いわゆるテイル・リスクは後退した。それを後押ししたのが2月14日の日銀によるバレンタイン緩和であったが、その流れを止めてしまったのは3月に入ってのFEDによる追加緩和期待の後退がきっかけとなった。

 白川総裁も会見で、大きなリスクオンの流れの中で、日本銀行の金融緩和政策の効果もあったと思いますと発言し、それを認めている。いや、それが追加緩和の大きな狙いであった可能性も高い。

 「この数週間の変化でみると、このリスクオンの流れが、スペインの問題、イタリアの問題、あるいは米国の雇用統計の解釈を巡って、また少しリスクオフの流れ、モードになってきていると思います。」と総裁は指摘していたが、それよりもECBが南欧諸国の国債買入をとりあえず停止したことや、2回目の3年物の資金供給オペの実施で、いったん追加緩和が打ち止めになったことの影響も大きい。さらにFRBのQE3への市場の期待も強いが、それについてはバーナンキ議長も言質を与えず、このため市場ではFRBによる追加緩和への期待も不透明であることも、リスクオフの流れとなった要因となっているとみられる。もちろん3月に続き4月も追加緩和は見送った日銀の動向も影響していたとみられる。

 それだけ現在の日欧米の金融市場は中央銀行による追加緩和への期待を強めている、というよりもそれに依存しすぎているような状況にある。

 しかし、現実には白川総裁が次のように指摘しているように試行錯誤の状況にあるとともに、それによる将来の副作用などについても、当然ながら意識せざるを得ない。

「どの中央銀行も、金利はほぼゼロ、中央銀行のバランスシートは非常に拡大しています。バランスシートの中身を見ても、非伝統的で、従来であれば買っていなかったような 資産もたくさん買っています。そういう中で、どうやって中央銀行の使命を遂行していくかについて皆が努力をしている、」

 市場は過度な要求をするものの、視線が中銀の金融政策から離れてしまうと、今度は過剰反応はしなくなる。もちろん作為的に金融政策から目を背けさせるようなことは必要ないが、金融政策への依存度の高すぎるような状況からは脱却する必要もある。あくまで中銀の金融政策は時間稼ぎに過ぎない。その後は、「企業、金融機関、政府、日本銀行が、それぞれの役割や持ち場に則して、全力を尽くしていくことが大事」(白川総裁)であるはずであるが、どうも要求は中銀に集中してしまう事態をなんとか打破する必要もあり、このあたり政府の動向も大きなカギとなろう。

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# by nihonkokusai | 2012-04-16 10:06 | 日銀
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