欧州の信用危機の発端となったギリシャだが、ここにきてユーロ離脱という最悪の事態が現実味を帯びだした。ギリシャのパパデモス前首相がダウ・ジョーンズ通信のインタビューで、ギリシャがユーロ圏から離脱するリスクは現実味がある、と述べたと伝わり、のちにそれは否定されたが、その後、ギリシャ離脱に備えユーロ圏各国が対応策準備へ、との報道も出た。ベルギー財務相が、ギリシャのユーロ離脱に備えた危機管理計画が策定されていると明らかにしているとも報じられた。
6月17日の選挙結果次第では、ギリシャのユーロ離脱の可能性があり、それに備えた動きがあることが表面化した。このような備えは当然必要ながら、それが公然と報じられるほど、ギリシャを巡る問題は深刻化しているようである。
オーストリア財務相が「ギリシャがユーロから離脱するにはEUから脱退する必要がある」との認識が示されていたように、ユーロ圏だけでなくEUからの離脱の可能性もある。そうなれば、盤石であったはずのヨーロッパの壮大な試みに対して、ギリシャがアキレス腱となり、崩れ去る懸念もある。
そういえばJPモルガンの巨額損失問題では、損失を出したのはギリシャ出身のアキレス氏だそうだが、こちらも盤石なリスク管理をしていたはずの銀行で、アキレス氏がまさにアキレス腱となったようである。
それはさておき、ロイターによると、ユーロ圏諸国が検討すべき要素をまとめた文書の中で、ギリシャがユーロ圏の離脱に踏み切った場合、ギリシャの痛みを和らげるため、欧州連合と国際通貨基金は最大500億ユーロの資金援助を行う可能性があるとしていたようである。
ユーロ圏離脱はギリシャ政府に甚大なコストをもたらす。それはギリシャ国民に降りかかることになるが、もちろんユーロ圏諸国の負担も非常に大きなものとなる。だからこそ、市場ではギリシャのユーロ離脱の懸念だけでも、敏感に反応し、リスクオフの動きを強める格好となっている。
ユーロの中でのギリシャは、当初からアキレス腱とみられていたようだが、政治的な配慮などからある程度、ギリシャの財政については目をつぶっていた節がある。ギリシャのユーロ参加審査の際、実際にはユーロ参加のためのマーストリヒト基準を満たしていなかったことが明らかになっていた。さらに2009年の政権交代後に改訂された財政収支GDP比の数値が大幅に下方修正されたことをきっかけに、ギリシャに対する不信が強まり、ギリシャ・ショックが起きている。これは見方によれば、起こるべきして起きたこととも言えるのかもしれない。
6月17日のギリシャの選挙に向けて、ユーロのアキレス腱となっていたギリシャがどのような選択をし、それをユーロ圏の他の諸国がどのように解釈してくるのか。まさに大きな正念場を迎えつつある。
*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***
「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。
BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」
講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp