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東日本大震災の際の日銀の対応を振り返る

 2011年3月11日の14時46分頃に発生した東日本大震災の際に、日銀はどのような行動を起こしていたのか。日銀のサイトにアップされていた「東日本大震災におけるわが国決済システム・金融機関の対応」、「決済システムレポート2010-2011」、「2010年度の金融市場調節」などを参考に追ってみたい。

 マグニチュード9.0の地震と、その後の大規模な津波により甚大な被害が東北地方を中心に生じたが、最も気になる決済システムに関しては、日銀ネットや各民間決済システムは正常に稼働し、資金決済・証券決済は予定通り終了していた。日銀のシステムセンター所在地でも震度5弱を記録したが、日銀ネットの運行に支障はなく安定的な稼働が維持されたそうである。

 これについて日銀の資料(決済システムレポート)でも「決済システムや金融機関は、震災発生後も全体として安定的に業務を継続し、金融インフラとしての正常な機能を維持した。」とある。

 金融機関では、一時多くの営業店舗を閉鎖せざるをえず、各地の手形交換所も、施設の損壊や参加金融機関店舗の被災から、休業を余儀なくされるところが目立った。都心部でも一部金融機関の施設・設備等に影響が出ていたようである。

 日銀は地震発生直後(15時)に、総裁を本部長とする災害対策本部を設置した。大きな災害時には預金者による預金の引出しが増加する傾向があるため、日銀は金融機関と連携し、その対応を行った。被災直後の 12 日(土)、13 日(日)には、青森、仙台、福島の各支店や盛岡事務所において、金融機関への現金供給を継続した。

 日銀本店でも、12日に臨時に窓口を開け、硬貨を中心に現金を金融機関に供給した。首都圏では地震発生当日の 11日夜から 12日の朝にかけて、帰宅困難者を中心に、コンビニエンスストアや商店で飲食物や日用品が大量に購入された結果、一部に硬貨の不足が懸念されたことに対応したものだそうである。

 また、津波の被害が大きく水に浸かった現金の引換えや、火災で損傷した現金の引換え依頼も生じており、こうした損傷現金の引換えに応じる体制も整えた。1923年9月1日(土)に発生した関東大震災によって日銀も被災したが、週明け3日には営業を再開し、焼損した紙幣の引換に応じるなどしていた。

 さらに金融上の特別措置として、預金証書、通帳を紛失した場合でも預金者であることを確認して払戻しに応じること、届出の印鑑がない場合には拇印で応じること、災害時における手形の不渡処分について配慮すること、汚れた紙幣の引換えに応じること、有価証券喪失の場合の発行手続きについて協力する等の対応も行われた。

 「今回の大震災では、一時、海外を中心に、わが国証券市場や決済インフラに関する根拠のない噂が一部に聞かれた」とあり、これに対応するため、日銀は、震災発生直後から、ホームページ等を通じて、日本銀行の業務継続状況や、決済システムや金融機関の対応について、正確かつ迅速に情報を発信することに努めたとある。関東大震災でのデマ等が大きな問題となったが、今回の震災では、根拠のない噂や情報不足に起因する不安心理は回避されていたようである。

 「短期金融市場、外国為替市場および証券市場では、災害時に市場参加者間のネットワークを維持するための取組み(市場レベルBCP)が行われている。具体的には全国銀行協会、東京外国為替市場委員会および日本証券業協会が事務局となって、あらかじめ専用ウェブサイトを設け、災害時に情報収集や市場慣行変更の推奨等を行える仕組みを整備している。今回の大震災では、参加者は専用ウェブサイトを通じて、取引・決済の可否などの業務状況につき情報を共有した。この結果、主要な取引・決済システムや市場参加者は正常な稼働を続けていることが確認されたため、市場慣行変更の推奨等を行うには至らなかった。」(決済システムレポート)

 14日の金融市場では、震災の影響が十分に把握できないもとで、先行きの不確実性が強く意識されたことに対応し、日銀は9時1分(過去最大規模の7兆円)、10時30分(5兆円)、12時50分(3兆円)の3回に分けて、総額15兆円の即日資金供給オペを実施した。また、先日付オペについても、7月15日を最後にオファーを停止していた国債買現先オペを再開するなど、総額6.8兆円の資金供給オペを実施している。

 そして、14日から15日にかけて開催予定の日銀の金融政策決定会合は、14日のみの開催とし当初13時からとしていた開始時間を12時に早めた。この日、日銀は追加緩和を決定し、資産買い入れ基金を総額5兆円から10兆円に拡充した。


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# by nihonkokusai | 2012-05-30 10:03 | 日銀

4月27日の追加緩和の理由

 2012年4月27日に日銀は資産買入等の基金を5兆円程度増額するという追加緩和策を決定した。資産買入等の基金を65兆円程度から70兆円程度に5兆円程度増額する。内訳としては、長期国債(残存1年以上3年以下)を10兆円程度増額し、期間6か月の固定金利式・共通担保供給オペは応札額が未達となるケースが発生しているため、これを5兆円程度減額する。そしてETFの買入を2千億円、J-REITの買入を百億円程度増額する。

 何故、このタイミングで追加緩和を行ったのか。それと緩和効果を引き出すために、いろいろと工夫もみられたが、このあたりのやりとりについて28日に発表された金融政策決定会合から探ってみたい。

 追加緩和の理由として、「依然として様々な不確実性があることを踏まえ、委員は、そうした見通しをより確かなものとするため」とある。不確実性は常に存在しており、追加緩和の理由としては少し弱い。しかし、市場や政府関係者からの追加緩和要求や、同時に発表された展望レポートとの兼ね合いなどがあったとも推測され、不確実性を理由としたのは致し方のないところか。

 今回の基金増額が国債主体となったことについて、「複数の委員は、日本銀行の国債買入額がきわめて多額となっていることを踏まえると、日本銀行の強力な金融緩和が財政ファイナンスと誤解されることのないよう、細心の注意を払う必要があると付け加えた」とある。基金による国債買入を含むと、今年末には日銀の保有する国債が、日銀券残高を上回る計算となり、このあたりも意識しての発言と思われる。現状、市場では日銀の国債買入について、財政ファイナンスと認識して懸念する見方は表面上は出ていない。

 資産買入等の基金の増額にあたって議長が、執行部に説明を求めている。執行部から、J-REITは少額ならば買入増額の余地はあるとし、長期国債については、買入額を大幅に増額し、かつ残存期間を1~2年程度に限定した場合 、円滑に買入れを進めていくうえで先々支障が生じる可能性がある。日銀の財務の健全性という観点からみると、ETFについては、価格変動リスクが大きい点に留意する必要があるとの指摘があった。

 これを踏まえて委員は議論を行ったとあるが、これは事前に検討されていたものと推定される。6か月物の固定金利オペにおいて応札額が未達となるケースも配慮され、固定金利オペを5兆円程度減額し 、長期国債の買入れに振り替えることが適当との認識を共有したとある。しかし、事前に市場参加者からこのような予想はほとんど出ておらず、このあたりは工夫がみられたとの認識であった。

 ここで用語の使い方について、少し注意したいのが「未達」と「札割れ」である。6か月物の固定金利オペについて日銀は「未達」と表現している。日経新聞などではこれを「札割れ」としているが、確かに目標額に対して達成しておらず、札割れが生じているのだが、ここでは少し使い分けも必要となる。つまりオペや入札で目標額に達してなくても、別なかたちで目標額がカバーされれば、それは「札割れ」と表現されることが多い。2002年9月の日本の10年国債入札で生じたものや、2011年11月のドイツ国債の入札で起きたのは、それぞれシ団や中央銀行が残りを一時的にカバーしたことで、政府は目標とした資金は調達できたため「札割れ」と表現された。これに対し目標額を完全に調達もしくは供給できない場合は、これと区別し「未達」との表現が使われる。今回、日銀も「札割れ」と表記しなかったのはその理由によると推測される。

 そして「2年までの金利がきわめて低い水準まで低下してきていることを踏まえると多額の長期国債や社債の買入れを円滑に進め、長めの金利に効果的に働きかけていくためには、買入対象年限を3年まで延ばすことが適当との考えで一致した」とあるが、年限を5年まで延ばすことを主張した委員はいなかったのであろうか。現在、利付国債は2年債の次は5年債が発行されており、現在3年債の発行は停止されている。新発債はそこそこ流動性はあるが、いったんポートフォリオに組み込まれたものは、新発債ほどの流動性はない。このあたりのことを配慮すると5年まで延長してはとの意見があったとしてもおかしくはなかったはずである。

 これについては、「期間3年以下の貸出の割合が高く、それに概ね対応する期間の金利に働きかけることが引き続き効果的と考えられる」との付言もあったのを見ても、事前に3年までの延長で問題ないとの認識が出来ていたのかもしれない。

 「本年中の長期国債の買入れペースがすでにきわめて大きな金額となっていることを考えると、長期国債5兆円分については 、2013年入り後、同年6月末を目途に買入れていくことが適当との認識を共有した。」

 このあたりの技術的なことが、あっさりと共有されたとも考えづらく、事前に検討されていた可能性が高い。また、2013年6月末を見据えた数字も示されたことで、現在の買入ペースを来年に入っても行うとすれば、あと5兆円程度の国債買入等も可能との見方も出来ることとなる。

 このあと、「消費者物価の前年比上昇率1%が見通せるまでは、機械的に基金の増額を続けていくという誤解が一部にみられることについて」の懸念も示されたが、これは2月14日のバレンタイン緩和により、「誤解」というより「期待」を生じさせて、それが為替市場や株式市場に影響を与えたとも言える。もし市場心理も意識しての金融政策となるのであれば、勝手な市場の解釈(?)について無理に誤解を解くこともないように思うのであるが。


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# by nihonkokusai | 2012-05-29 10:06 | 日銀

日本の債券の最大保有国は中国

 日銀が発表している国際収支統計の中に、「直接投資・証券投資等残高地域別統計」というものがあり、毎年5月か6月頃に前年末の数字が発表されている。5月22日に2011年末のデータが公開されており、日銀のサイトにアップされているZIPファイルを開くとこの数字が確認できる。

日銀のサイトにある国際収支統計 http://www.boj.or.jp/statistics/br/bop/index.htm/

 このうち証券投資等(負債)残高地域別統計の数字が海外からの証券投資(株式・債券)、さらに派生商品のそれぞれ残高が確認できる。今回はこのうち債券に絞り、日本の債券(そのほとんどは国債と推測される)の保有国を確認してみたい。

 現在、日本の債券の最大保有国は中国となっており、17兆9538億円の保有額となっている。内訳として中長期債が5兆6603億円、短期債が12兆2935億円となっている。保有する外貨準備の運用の多様化の一環として、日本の債券を保有しているとみられるが、中長期債の保有額は英国や米国に比較すれば小さい。英国はトータルで11兆4884億円、中長期債が8兆8948億円、短期債は2兆5936億円。さらに米国はトータルで10兆1153億円で、中長期債は6兆4807億円、短期債は3兆6346億円の保有となっている。

以下は主な日本の債券保有国。

国、日本の債券保有額、うち中長期債、短期債
中国、17兆9538億円、5兆6603億円、12兆2935億円
英国、11兆4884億円、8兆8948億円、2兆5936億円
米国、10兆1153億円、6兆4807億円、3兆6346億円
ルクセンブルグ、7兆2234億円、1兆3994億円、5兆8241億円
フランス、5兆2799億円、3184億円、4兆9615億円
シンガポール、4兆7653億円、2兆6709億円、2兆944億円
ベルギー、4兆1388億円、2兆4101億円、1兆7287億円
ケイマン諸島、3兆4486億円、2兆4590億円、9896億円
スイス、2兆6624億円、2兆3974億円、2650億円
タイ、2兆434億円、3262億円、1兆7172億円
サウジアラビア、1兆9153億円、1兆8985億円、168億円
カナダ、1兆4355億円、1兆645億円、3710億円
香港、1兆3820億円、5343億円、8477億円
アラブ首長国連邦、1兆3612億円、3871億円、9741億円

国際機関、5兆9310億円、5648億円、5兆3661億円

 海外諸国による日本の債券保有は全体91兆6391億円のうち、中国・英国・米国で40%以上を占めている。短期債を見ると大量に保有していたとみられる英国が少ないが、これは毎月の国際収支統計で公表されている対内外証券投資統計とは異なり、こちらの数字は英国経由で買われてもその資金元となっている国に数字がカウントされているためとみられる。

 ついでに10年前の2001年の同じ資料を見ると、最大保有国は英国で14兆7142億円と突出して多く、次に米国の6兆1475億円、シンガポールの2兆4733億円が目立つ程度。このときの中国による日本の債券保有は9011億円にすぎなかった。


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# by nihonkokusai | 2012-05-28 09:21 | 国債

付利引き下げの可能性と市場との対話(白川日銀総裁会見より)

 2012年5月23日の金融政策決定会合の終了後に行われた白川日銀総裁の会見の内容が日銀のサイトで公表された。今回はこの中から気になったところをピックアップしてみたい。

 まず、5月16日に日本の2年債利回りが0.1%割れとなり、この日にオファーされた日銀の基金による国債買入(残存1年以上2年以下)で初の札割れが発生した要因のひとつともなった当座預金の付利水準の引下げに関して白川総裁は下記のように答えている。

 「当座預金の付利水準の引下げについては、日本銀行として金融緩和政策を行うことによる金利低下の効果と、他方で市場金利が低下し過ぎて短期金融市場における流動性が低下し、いざという時に市場参加者が資金調達を行おうとしてもなかなかできないという副作用があります。その双方を勘案した上で、現在の枠組み、つまり、0.1%の超過準備への付利金利と、0~0.1%程度の金利誘導目標という組合せのもとで、金融緩和効果が最大限発揮されると考えています。従って、それらの金利の更なる引下げは、デメリットが大きいという点で、現在の水準が実質的なゼロ金利だと考えています。」

 この表現から見る限り、日銀は付利水準の引下げを行う可能性は極めて低いものと思われる。実際に付利水準の引下げをしたとしても、実質的な緩和効果は極めて限定的であり、これをゼロとしてしまうと固定金利オペの応札等が減少し、短期金融市場における流動性低下も避けられない。このあたりのことを意識すれば、追加緩和としての付利水準の引下げは、日銀の選択肢には現状では入っていないと思われる。

 そして、こちらは外為市場などで少し材料視されたとみられる「強力な金融緩和を推進していく」という表現が今回の金融市場調節方針に関する公表文から消えたことについての質問があった。ちなみにこれを削除したことで、日銀が金融緩和に前向きの姿勢が中立に変わったのかとの思惑も市場では出ていたようである。

 これに対して総裁は、「日本銀行が中立的なスタンスになったということは全くありません。日本銀行の政策スタンスは、4月の展望レポート発表時の公表文に書いた通り、「強力な金融緩和を推進していく」ということで、全く変わっていません。」と答えている。

 しかし記者からは畳みかけるように、「最近、行内の人事異動が発表されましたが、これは政策姿勢と何ら関係ないという理解でよいかどうか、確認させて下さい。」との質問が出ていた。

 ちなみに日銀は5月11日に金融政策を立案する企画局の門間一夫局長が政策担当理事の理事に昇格し、政策担当理事の雨宮正佳氏が大阪支店長となり、後任の企画局長には内田真一氏が就任している。このタイミングでの異動は極めて異例とみられた。当然ながら、この人事異動により金融政策のスタイルが変化するのではとの観測は、特に記者の中では当然あったはずである。それがこの「強力な金融緩和を推進していく」との表現の削除に影響があったのではと思われても致し方はないところではなかったろうか。

 「これはしつこいようですが、全く関係ありません。日本銀行はオフィシャルな文章で「強力な金融緩和政策を推進する」と 2月に発表し、4月の文章にも書いています。ご質問は、「その文章を反故にする」ような趣旨に聞こえましたが、そうした意図は全くありません。そうした誤解がないように、皆さんの報道をよろしくお願いします。それから、人事と政策は全く関係ありません。」

 果たしてこれを額面どおり記者が受け取ったかどうかは定かではないが、政策そのものを決めるのは確かに決定会合での政策委員ではあるが、表明文などにはそれを作成する企画担当者が変われば、表現方法に変化があってもおかしくはない。市場はそれに対してやや過剰に反応した面もあるが、ここに日銀が何かしらの意図を秘めていると推測されてもやむを得ないものでもあったと思われる。このあたり、日銀が市場との対話を重視するのであれば、必要以上に憶測が出るようなことは避けるべきではなかったかと思われる。

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# by nihonkokusai | 2012-05-27 09:43 | 日銀

首都圏で震災があった際の債券市場

 1923年9月1日に発生した関東大震災によって、東京株式取引所(現在の東京証券取引所)の建物が全焼し、10月27日から焼け跡の天幕内で株式の現物取引を開始したと東証のサイトにある「日本経済の発展を支えた東証の足跡」に記されている。

 日銀も被災したが、週明け3日には営業を再開し、焼損した紙幣の引換に応じるなどした。ただし、大蔵省印刷局も被災したため、紙幣不足が見込まれ、200円という高額紙幣を国債証書の用紙を用いて大阪で作られた。しかし、これは結局使われることはなかったそうである(日銀サイト「日本銀行 あの日の記録」より一部引用)。

 この震災によって、関東地方の企業は壊滅的な打撃を受け、損害を受けた企業は震災前に振り出した手形を決済することができず、それを抱えた市中銀行も資金繰りに支障をきたすようになった。政府はこのためモラトリアムを出して、9月中に支払期限を迎える金融債権のうち被災地域の企業・住民が債務者となっているものについては支払期限を1か月間猶予した。

 さらに9月29日に震災手形割引損失補償令が出され、震災地を支払地とする手形や震災地に営業所を有していた商工業者を債務者とする手形等(震災手形)については、特別に日本銀行による再割引、つまり、銀行がもっている震災手形を日本銀行に買い取らせた。これに伴い日本銀行が損害を受けた場合は政府が補償することになった。

 もし、関東大震災クラスの直下型地震が首都圏で発生した際には、どのような状況になるであろうか。東日本大震災の際には、支払期日に企業が手形の決済ができない場合も、「不渡り」として扱わないよう全国銀行協会が金融機関に要請した。また、被災者が預金通帳や印鑑を持っていなくても、免許証などで本人だと確認できる場合、預金の引き出しに応じるといった対応もなされた。

 しかし、首都圏には企業が集中しているばかりか、金融機関の本店も被災される可能性がある。もちろん大手金融機関などはバックアップシステムも整ってはいると思われるが、かなりの混乱は避けられないとみられる。

 また、金融取引の基幹システムといえる日銀ネットなどの日銀のシステムについても、機能停止になることはないと思われる。しかし、一時的にせよ停電等の発生により、ATMが使えなくなるケースも多くなるとともに、電子決済は難しくなるため、現金がより必要となることになるものと予想される。このあたりについては、日銀などを中心にいろいろな想定でシミュレーションも行われていると予想される。

 それでは債券市場はどうなってしまうであろうか。たとえ決済システムが生きていたとしても、債券相場そのものは当分の間は停止状態になるものと思われる。債券市場でのベンチマークとなっている長期国債先物を取引している東証は、被害状況によるが一時的にせよ売買を停止してくる可能性がある。また、現物債については日本相互証券の売買が止まってしまうと、現物国債の取引の目安がつかなくなる可能性がある。そもそも市場参加者が取引どころではなくなる可能性があり、むしろ震災前に約定したものの決済が問題視されるかもしれない。これについても現物債は4日目渡しから3日目渡しになったことで、以前に比べればそのリスクは1日分軽減されている。日銀ネット等の決済システムは機能しているとみられるが、日銀ネットを使わない決済分については、一部で支障が出てくる恐れもある。

 現在の国債の売買は東京中心で行われていることで、それを大阪などで代替で行われることも考えづらい。つまり首都機能がある程度回復されるまでは、日本の債券の売買は一時的に停止される可能性がある。もちろんこれはあくまで債券の約定や決済の動向予想であり、相場そのものは日本経済が壊滅的な影響を受けた段階で、海外市場などで大きな動きを見せることが考えられる。そして、さらに国債市場にとり問題になるのは、その後の復興費用とそれにともなう巨額の国債発行となろう。

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# by nihonkokusai | 2012-05-26 10:09 | 債券市場
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