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個人向け国債の売り上げが好調な理由とは

 2月28日に財務省で開催された国の債務管理の在り方に関する懇談会の議事要旨に次のような発言が記述されていた。

 「個人向け国債の売り上げが好調なのは、現在、銀行にとって預金がコストとなっており、預金から個人国債に振り替える動きが出ていることによるもの。金利水準が戻れば、個人国債の売り上げも元に戻るのではないか。」

 銀行にとって預金がコストとなっているというのは、日銀のマイナス金利政策により、残存が9年近くまでの国債利回りがマイナスとなっているためである。預金者にはマイナス金利を課すことは控えられているなか、国債の利回りは残存9年近くまでマイナスとなっており、資金運用がかなり難しくなっている。

 個人の資金を預金ではなく個人向け国債の購入に振り向ければ、販売する金融機関には手数料が支払われる。昨年4月発行分からこの個人向け国債の手数料が引き下げられ、固定3年で額面100円あたり20銭、固定5年で額面100円あたり30銭、変動10年で額面100円あたり40銭となった。これは購入者負担ではなく、販売額に応じて金融機関に財務省が支払う手数料である。手数料が引き下げられても10年変動では40銭もある(50銭からの引き下げ)。

 この手数料の引き下げもあり、販売する金融機関は手数料引き下げ前の昨年3月に個人向け国債のキャンペーンを張り、販売額は全体で9315億円となった、翌4月発行分は2030億円に落ち込んだが、7月には3000億円台を回復し、2018年に入ってからは毎月3000億円を超す販売が続いている。これは預金から個人向け国債に振り向ける動きもないとはいえないが、個人による個人向け国債へのニーズが強いことも要因と思われる。

 個人向け国債には0.05%という最低保証利回りがついている。日銀のマイナス金利政策などの影響もあり、この0.05%がいつの間にか銀行などの預金金利を上回ったことで、利回りとして魅力化したのである。

 日銀は現在、長短金利操作付き量的・質的金融緩和策という政策を行っている。これは短期の金利をマイナスに誘導するとともに、長期金利もゼロ%近辺に誘導するというもので、これまでのオペの動向などから長期金利は0.11%以下に抑えようとするものである。

 日銀の黒田総裁の続投も決まり、日銀は現在の金融緩和政策を物価目標達成まで進めるつもりのようである。日銀の政策に変化が出ない限りは、わずかな金利ではあるものの、個人向け国債の優位性は維持され、販売する金融機関にとっても手数料が得られることにより、個人向け国債の販売好調は継続すると思われる。

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# by nihonkokusai | 2018-03-19 14:38 | 国債 | Comments(0)

戦国時代に使われていた大量のコインが見つかる

 埼玉県埋蔵文化財調査事業団は9日、蓮田市の「新井堀の内遺跡」にある、戦国時代の武士の館跡で、15世紀前半の常滑焼の大甕に入った大量の埋蔵銭が出土したと発表した。中国から輸入された銅銭が約26万枚入っている可能性があり、一つの甕に納められた量としては国内最大級の埋蔵銭となる可能性がある。確認できただけでも19種類あり、永楽通宝が多かった(日経、毎日、NHKなどの記事より引用)。

 当時の貨幣の貯蓄法としては、もちろん銀行などはなかったことから、このようなかたちで貯蔵されていた。しかし、それにしても大量のタンス預金となるが、伝承によるとこの館跡の戦国時代の主は岩付城主・太田資正の家臣・野口多門とされている。

 岩付城主・太田資正はその後、北条氏に通じた嫡男に岩槻城を奪われ、常陸の佐竹義重を頼って客将となり、片野城を与えられたとされている。片野城は比較的我が家からも近いところで、どこか親近感を覚える。果たして家臣の野口多門はどちらに付いたのかはわからないが、それにしては大量の資金を保有していたようである。

 当時の日本国内で通用する通貨は室町幕府が発行したものではなかった。銅銭の中でも明の永楽帝の時代の1411年から作られた永楽通宝(永楽銭)が、室町時代中期に大量に輸入されており、それが国内の通貨として主に使われていた。

 当時の日本では貨幣経済が急速に発展していたにもかかわらず、幕府による鋳造は行なわれず、中国銭貨への需要が高まることになる。日本との貿易のために永楽通宝が鋳造されることになったのである。永楽通宝を中心とする明銭は当初、貨幣として受け入れられなかった。このため室町幕府は明銭の使用を奨励した撰銭禁止令を公布するなどしていた。

 銅銭の質的な劣化や、渡来銭を真似て鋳造され私鋳銭の流通も増大し、15世紀後半以降、銭貨をその質的優劣にしたがって良銭と悪銭に区分し、悪銭については受け取りを拒否したり、もしくは割り増しをつけて受け取るという「撰銭(えりぜに)」という行為が行われるようになっていた。

 ただし、永楽通宝そのものは質が良く、関東地方を中心とする東日本では、素材価値が安定的で形状や品質がほぼ一定していたことで基準銭貨として使われるようになっていた。今回の甕のなかの通貨に永楽通宝が多かったのはこのためと思われる。

 唐や宋の時代の古銭を貨幣として重視していた西日本では、明では貨幣としても通用していなかったことから永楽通宝はあまり使われなかった。しかし、16世紀半ばから次第に永楽通宝の地位が高まり、全国的に永楽通宝が基準貨幣として普及していった。

 そして、貨幣による経済の発展を強く意識した武将が織田信長であり、その旗印に貨幣(永楽通宝)の図柄を取り入れたのである。


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# by nihonkokusai | 2018-03-16 09:51 | 金融 | Comments(0)

戦国時代に使われていた大量のコインが見つかる

 埼玉県埋蔵文化財調査事業団は9日、蓮田市の「新井堀の内遺跡」にある、戦国時代の武士の館跡で、15世紀前半の常滑焼の大甕に入った大量の埋蔵銭が出土したと発表した。中国から輸入された銅銭が約26万枚入っている可能性があり、一つの甕に納められた量としては国内最大級の埋蔵銭となる可能性がある。確認できただけでも19種類あり、永楽通宝が多かった(日経、毎日、NHKなどの記事より引用)。

 当時の貨幣の貯蓄法としては、もちろん銀行などはなかったことから、このようなかたちで貯蔵されていた。しかし、それにしても大量のタンス預金となるが、伝承によるとこの館跡の戦国時代の主は岩付城主・太田資正の家臣・野口多門とされている。

 岩付城主・太田資正はその後、北条氏に通じた嫡男に岩槻城を奪われ、常陸の佐竹義重を頼って客将となり、片野城を与えられたとされている。片野城は比較的我が家からも近いところで、どこか親近感を覚える。果たして家臣の野口多門はどちらに付いたのかはわからないが、それにしては大量の資金を保有していたようである。

 当時の日本国内で通用する通貨は室町幕府が発行したものではなかった。銅銭の中でも明の永楽帝の時代の1411年から作られた永楽通宝(永楽銭)が、室町時代中期に大量に輸入されており、それが国内の通貨として主に使われていた。

 当時の日本では貨幣経済が急速に発展していたにもかかわらず、幕府による鋳造は行なわれず、中国銭貨への需要が高まることになる。日本との貿易のために永楽通宝が鋳造されることになったのである。永楽通宝を中心とする明銭は当初、貨幣として受け入れられなかった。このため室町幕府は明銭の使用を奨励した撰銭禁止令を公布するなどしていた。

 銅銭の質的な劣化や、渡来銭を真似て鋳造され私鋳銭の流通も増大し、15世紀後半以降、銭貨をその質的優劣にしたがって良銭と悪銭に区分し、悪銭については受け取りを拒否したり、もしくは割り増しをつけて受け取るという「撰銭(えりぜに)」という行為が行われるようになっていた。

 ただし、永楽通宝そのものは質が良く、関東地方を中心とする東日本では、素材価値が安定的で形状や品質がほぼ一定していたことで基準銭貨として使われるようになっていた。今回の甕のなかの通貨に永楽通宝が多かったのはこのためと思われる。

 唐や宋の時代の古銭を貨幣として重視していた西日本では、明では貨幣としても通用していなかったことから永楽通宝はあまり使われなかった。しかし、16世紀半ばから次第に永楽通宝の地位が高まり、全国的に永楽通宝が基準貨幣として普及していった。

 そして、貨幣による経済の発展を強く意識した武将が織田信長であり、その旗印に貨幣(永楽通宝)の図柄を取り入れたのである。


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# by nihonkokusai | 2018-03-16 09:51 | 金融 | Comments(0)

物価は原油価格に左右されやすいと言う事例

 米労働省が13日に発表した今年2月の米国の消費者物価指数(CPI)は、季節調整済みで前月比0.2%の上昇となった。上昇率は前月の0.5%から鈍化したが、市場予測と一致した。前年同月比では2.2%の上昇となった。ガソリンや燃料価格の下落でエネルギー価格は前月比0.1%上昇にとどまった。食品価格は横ばい。全体から食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比で0.2%、前年同月比では1.8%上昇した(日経新聞電子版の記事より引用)。

 市場ではFRBによる年3回以上の利上げ観測も燻っており、その観測が今回のCPIの伸び率鈍化を受けてやや後退した。

 日銀の物価目標は消費者物価指数(除く生鮮)であるが、FRBの物価目標はPCEデフレーターであり、消費者物価指数ではない。それでも物価の指標としてCPIはFRBも当然ながら参考にしている。

 日本の消費者物価指数のコア指数は生鮮食料品を除いたものであるが、米国のコア指数は全体から食品とエネルギーを除いたものである。つまり日本のコア指数にはエネルギーが含まれている。それも除いたものはコアコア指数と呼ばれている。それだけ物価にはエネルギー価格の影響が大きいといえる。

 そこで手元にある米国の消費者物価指数(食品とエネルギーを含む全体)と原油先物のグラフを作ってみた。

 エネルギを含む消費者物価指数は原油価格の影響を受けやすいことは、2008年から2009年にかけてWTIが急騰後、急落した際の動きに米国の消費者物価指数が連動していたことからも明らかで、これは日本の消費者物価指数(除く生鮮)もほとんど同じような動きとなっていた。

 さらに2014年10月あたりからはWTIの下落によって、米消費者物価指数も前年比が落ち込み、2015年1月には一時前年比でマイナスとなっていた。当然ながら日本の消費者物価指数もこの原油価格の落ち込みに影響を受けて、2015年2月のコアCPIはゼロ%となっていた。

 日銀は2014年10月31日に量的・質的緩和の拡大を決定した。これは日本のコアCPIが2014年4月に前年比プラス1.5%をつけたあと、上昇幅が縮小してきたことで、サプライズ的に追加緩和策を実施したといえる。

 実はこの決定の少し前の10月4日の講演で、黒田総裁はコアCPIについて、しばらく1%台で推移した後、2%に向けて上昇するとの見通しを示し、1%を割り込むのではないかとの市場の見方を一蹴していた。しかし、それが難しくなる可能性が出てきたことで、追加緩和を決定した可能性がある。

 とはいっても原油価格の下落を日銀の金融政策で止めることはできない。このため、サプライズ緩和による円安効果を狙った可能性があったが、すでに円安に向かうエネルギーもそれほど蓄積されておらず、円安も一時的なものとなった。そうなると日銀の金融政策が物価に波及する経路がなくなることで、日本のコアCPIは再びマイナスに落ち込むことになった。いったい日銀の異次元緩和とは何であったのであろうか。


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# by nihonkokusai | 2018-03-15 09:44 | 景気物価動向 | Comments(0)

海外投資家の比率が高い日本国債先物取引

 3月12日に長期国債先物取引(債券先物取引)において、中心限月が3月限から6月限に実質的に交代した。債券先物取引において、取引している人達にとっては、日中の出来高が逆転したタイミングで中心限月が移行したとする。

 日本の債券先物取引は商いが中心限月に集中するという特徴がある。このため、ある限月の取引最終日が近づくと期近物から期先物に中心限月がバトンタッチする。そのタイミングが日中の取引が逆転したタイミングとなる。今回でいえば日中取引(ナイトセッションはいまのところ例外)において、6月限の取引量が3月限を上回った瞬間が中心限月移行となる。

 過去において取引高が再逆転した例はあったように記憶しているが、それはむしろ例外中の例外であり、通常はそのまま新たな限月の取引量が多くなる。ただし、取引所が中心限月移行と認識するのは、ナイトセッションを含めたトータルの出来高が逆転した翌営業日となっていることにも注意しておきたい。

 さて、この債券先物取引だが、現在はどのような参加者がいるのであろうか。日本取引所グループのサイトのなかに、マーケット情報というものがあり、そのなかに投資部門別取引状況というものがある。ここで取引しているのは誰なのかが、おおよそわかる。

 年別のデータのなかから、2017年のものをみてみると投資部門別国債先物取引状況(自己・委託なし)では、証券会社が32.02%、銀行が12.16%、海外投資家が54.51%となっており、海外投資家のシェアが5割を超えている。

 さらに投資部門別取引状況(自己・委託別)でみると、自己が41.7%、委託が58.5%となっていた。さらに委託の内訳では、海外投資家が93.4%を占めていた。

 つまり債券先物の55%近くの取引は海外投資家からの委託によって占められていると言える。残りは国内の証券や銀行による自己といった区分けとなりそうである。

 それでは海外投資家の委託分とはどのようなものであるのか。これについては日経225先物などではHFT( High frequency trading)と呼ばれる高頻度取引がかなりの割合を占めているとされる。

 債券先物については値動きなどをみても、いまのところHFTの割合はそれほど高いとは思えないが、それでも3月2日に黒田日銀総裁の発言を受けて債券先物が60銭も動いたのはHFTという見方もできそうである。

 ただし、それでもまだHFT以外の海外投資家の割合が多いと思われ、ヘッジファンドなどによる商いもかなりのシェアを占めているようにも思える。そこにHFTもじわりじわりと債券先物に浸透しつつあるのかもしれない。


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# by nihonkokusai | 2018-03-14 09:25 | 債券市場 | Comments(0)

米雇用統計をきっかけに金融市場の地合いが好転か、日本は注意

 9日に発表された2月の米雇用統計で、非農業雇用者数は前月比31.3万人増と、20万人あたりとされた市場予想を大幅に上回った。失業率は4.1%と前月と同水準、平均時給は前年比2.6%%と伸びが鈍った。

 雇用は予想以上に拡大していたが、時給の伸びが抑制されていたことで、インフレ加速懸念が後退し、FRBによる緩やかな利上げ観測が強まり、これらを米国株式市場は好感した。9日のダウ平均は440ドル高と大幅に上昇し、ナスダックは132ポイント高となりこちらは1月26日に付けた過去最高値を久しぶりに更新した。12日にダウ平均は下落したが、ナスダックはしっかり。日足チャートをみるとダウ平均はまだダブルボトムを抜けてはいないが、ナスダックは綺麗に上昇トレンドを描くかたちになりつつある。

 今回の雇用統計を結果からも、3月20、21日のFOMCでの追加利上げの可能性は強まったというか、市場はほぼ確実視している。ただし、時給の伸び鈍化により年4回の利上げの可能性については幾分か後退したのではないかと思われる。

 9日の米債は雇用の予想以上の伸びから米10年債利回りは一時2.91%まで上昇したが、時給の伸び鈍化もあり押し目買いも入ったことで、結局、2.89%となっていた。12日には2.87%に低下している。

 米朝首脳会談の可能性も出てきたことにより、市場にとってひとつの懸念材料であった北朝鮮リスクが後退した。少なくとも軍事衝突の恐れはかなり後退したといえる。ドイツの政局不安は後退し、イタリアの政局については不透明化ながらもユーロという体制を脅かすほどのものになるとは思えない。

 これらのリスクの後退により、いわゆるリスクオンの相場が復活してくる可能性があり、米株は再度高値を更新し、米10年債利回りは緩やかながら上昇し3%を目指すことになり、原油先物も再度上昇基調となる可能性も出てきた。外為市場でも円高が修正される可能性がある。

 ただし、いまのところ金融市場では大きく材料視してはいないものの、森友問題が現政権を揺るがす懸念も出ている。今後の動向次第では金融市場が動揺を示す懸念もあるため注意しておきたい。


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# by nihonkokusai | 2018-03-13 09:46 | 投資 | Comments(0)

米雇用統計をきっかけに金融市場の地合いが好転か、日本は注意

 9日に発表された2月の米雇用統計で、非農業雇用者数は前月比31.3万人増と、20万人あたりとされた市場予想を大幅に上回った。失業率は4.1%と前月と同水準、平均時給は前年比2.6%%と伸びが鈍った。

 雇用は予想以上に拡大していたが、時給の伸びが抑制されていたことで、インフレ加速懸念が後退し、FRBによる緩やかな利上げ観測が強まり、これらを米国株式市場は好感した。9日のダウ平均は440ドル高と大幅に上昇し、ナスダックは132ポイント高となりこちらは1月26日に付けた過去最高値を久しぶりに更新した。12日にダウ平均は下落したが、ナスダックはしっかり。日足チャートをみるとダウ平均はまだダブルボトムを抜けてはいないが、ナスダックは綺麗に上昇トレンドを描くかたちになりつつある。

 今回の雇用統計を結果からも、3月20、21日のFOMCでの追加利上げの可能性は強まったというか、市場はほぼ確実視している。ただし、時給の伸び鈍化により年4回の利上げの可能性については幾分か後退したのではないかと思われる。

 9日の米債は雇用の予想以上の伸びから米10年債利回りは一時2.91%まで上昇したが、時給の伸び鈍化もあり押し目買いも入ったことで、結局、2.89%となっていた。12日には2.87%に低下している。

 米朝首脳会談の可能性も出てきたことにより、市場にとってひとつの懸念材料であった北朝鮮リスクが後退した。少なくとも軍事衝突の恐れはかなり後退したといえる。ドイツの政局不安は後退し、イタリアの政局については不透明化ながらもユーロという体制を脅かすほどのものになるとは思えない。

 これらのリスクの後退により、いわゆるリスクオンの相場が復活してくる可能性があり、米株は再度高値を更新し、米10年債利回りは緩やかながら上昇し3%を目指すことになり、原油先物も再度上昇基調となる可能性も出てきた。外為市場でも円高が修正される可能性がある。

 ただし、いまのところ金融市場では大きく材料視してはいないものの、森友問題が現政権を揺るがす懸念も出ている。今後の動向次第では金融市場が動揺を示す懸念もあるため注意しておきたい。


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# by nihonkokusai | 2018-03-13 09:46 | 投資 | Comments(0)

AIは相場に勝てるのか

 3月2日に日本の債券市場が久しぶりに動きを見せた。日銀の大量の国債買入やイールドカーブコントロールによって国債の利回りは抑えつけられており、先物の日々の値動きは10銭に満たない日も多い。それにも関わらず2日の債券先物の値幅は60銭もあったのである。

 この日、日銀の黒田総裁は衆院議院運営委員会で所信の表明と質疑を行っていた。そのなかで「2019年度ごろに物価が目標とする2%に達すれば、出口を検討、議論していくことは間違いない」と発言した。

 債券先物はこの発言に反応したようである。現物債も売られ10年債利回りも0.040%から0.080%に上昇したが、債券先物に引っ張られた格好であり、何かが起きていたのは債券先物であった。

 黒田総裁は出口について言及すること自体、珍しいことではあったが、今回の発言はあくまで物価目標達成を前提にしたものであり、そうであれば出口を検討するのは当然のことであり、これで日本の債券市場の参加者が動揺することは考えづらい。

 ところが一部のベンダーが、この発言のフラッシュニュースのタイトルを「黒田日銀総裁:19年度ごろに出口を検討していること間違いない」としたことで、この英文の記事をみたのか、海外投資家が反応して売りを出したと思われる。国内投資家はこのタイトルを見ても債券先物を売らなければならないほどのものではないことはわかっていたはずである。

 この記事に反応したのは人間というより、コンピュータであった可能性が高いと思われる。日本の債券先物は値動きは鈍いものの、海外投資家による売買が盛んであり、株式の先物などで行われているコンピュータ使った自動取引、いわゆるHFT(High frequency trading)が債券先物にも入ってきている可能性がある。

 つまり発言者の重要性、発言の単語、使い方等が分析され、出口を封印していたとみられていた日銀が出口を模索していたとの結論に達してしまい、それをきっかけに債券先物に売りが持ち込まれたのではないかと思われる。

 債券先物は手口情報が公開されているわけではなく、絶対にHFTによる売りとは断言できないものの、あのタイミングで債券先物を売るのは他に考えづらい。

 これだけで判断するのもいけないかもしれないが、コンピュータを使ってのAI取引と言われるものが、こういった発言に反応してしまうとすれば、やはりスピードだけでは人間の判断力には勝てないのではなかろうか。このような事例を積み重ねれば精度は上がるかもしれないが、相場はやはり人が動かしている以上、複雑な人間心理まで読み込んで、機械が相場を張ることは困難ではないかと思う。自分が相場を張っていたときも、機械的な判断よりも直感に頼っていた。その直感をAIが果たして持てるのだろうか。


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# by nihonkokusai | 2018-03-12 09:42 | 債券市場 | Comments(0)

サムライ債、ショーグン債、そしてカブキ債という不思議な名前の債券の正体とは

 野村総合研究所は、国内投資家向け外貨建て債券「カブキ債」を今月中旬にも起債すると日経新聞が伝えている。国内の発行体が国内公募で外貨建て債を発行するのは初めてで、「カブキ債」という名称は変幻自在という意味を込めており、主幹事の野村証券などと話し合って決めたそうである。

 日本政府や日本の企業が日本で発行する債券は国内債とも呼ばれるが、これに対して日本企業などが海外で発行する債券や、海外の政府や企業などが日本国内で発行する債券を「外債」と呼んでいる。今回の「カブキ債」のように何故か一般的に外債には呼称が付けられている。

 国際機関や外国の政府、法人が日本国内で発行する円貨建の債券は「円建て外債」と呼ばれるが「サムライ債」とも呼ばれる。

 海外の発行体が外貨建てで、しかも日本国内で発行するという「外貨建て外債」という債券もある。債券市場関係者はこれを「ショーグン債」と呼んでいる。

 日本と中国の金融当局は、日本企業が中国で人民元建ての債券、いわゆる「パンダ債」を発行できるようにすることで合意したと昨年12月に報じられた。

 オーストラリア市場において非居住者によって起債される豪ドル建債券はカンガルー債、英国内で非居住者によって起債されるポンド建て債券はブルドッグ債などと称されている。

 日経新聞によると今回の国内投資家向け外貨建て債券「カブキ債」については、発行体としては安価に外貨を調達できる市場をつくりたいとの思惑もあるとか。ただし、発行するためには新たに格付けを取得する必要があるほか、外国語で資料を作る必要がある。

 また、それを購入するであろう生損保など国内大手機関にとっては円金利があまりに低すぎることもあり、外債へのニーズは高い。国内企業が発行することで発行体の姿も見えやすいことで購入しやすい面もあるのではなかろうか。


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# by nihonkokusai | 2018-03-11 10:16 | 債券市場 | Comments(0)

米国の利上げペースは継続か

 米国の連邦準備制度理事会(FRB)が7日に発表した地区連銀経済報告(ベージュブック)によると、1月から2月にかけての米国経済は「全地区で緩やかに拡大した」と総括し、物価も「全地区で上昇した」と前回1月の報告より判断を引き上げた(日経新聞電子版)。

 ベージュブックでは米経済そのもの、そして物価、さらには雇用についても「緩やかに」拡大していることが示された。FRBにとってはいまのところ理想的な景気拡大となっており、これを見る限り今年も年3回としている利上げペースは維持されるよう。今年最初の利上げとなるのは3月20、21日に開催されるFOMCとみられる。

 2月にFRB議長に就任したパウエル氏にとって議長として初めて望むFOMCとなることもあり、無難に利上げを決定したいところであるのではなかろうか。

 ただし、トランプ政権で経済政策の司令塔だった国家経済会議のトップ、コーン委員長が辞任すると発表されるなど、米国の経済の先行きについてはやや不透明感を強めさせる出来事も起きている。

 コーン委員長は、トランプ大統領が表明している鉄鋼製品などに高い関税を課す異例の輸入制限措置に反対していたとされ、過去にもいろいろと対立していたとされるが、関税を巡る見方の相違が辞任のきっかけとみられる。

 ただし、ホワイトハウスはメキシコやカナダ、その他同盟国を課税対象から外す可能性にも言及し、貿易相手国に一律に関税を課すという強硬な政策は回避されるではないかとの観測も出ている。トランプ大統領が今週中に関税の詳細を発表するようである。

 米国市場が大きな動揺を示すようなことがない限りは、3月21日のFOMCで追加利上げが決定される可能性は高いと思われる。しかし、米株が再度、下落基調を強めるようなことがあると利上げそのものが先送りされる可能性もありうるか。


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# by nihonkokusai | 2018-03-09 10:01 | 中央銀行 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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