円LIBORのスワップ取引額は1日当たり6兆円規模にのぼり、このうち6割程度の取引を手掛ける日系の金融機関の利用を期待しているそうである。それだけ問題化されているLIBORは、日本のスワップ市場にも大きな影響を与えていたということにもなる。
金融商品については毎日売買される価格が主に取り上げられているが、実はその売買が円滑に行われるためには、決済と呼ばれる証券等と金銭の受け渡しがスムーズに行われる必要がある。
売買約定が成立してから決済が行われるまでの一連の流れとして、現在は売買、清算、決済の三段階に区分できる。これらのうち、売買機能を担う主体を市場、清算機能を担う主体を清算機関、決済機能を担う主体が決済機関と呼ばれる。
日本における金融商品の「取引所」市場の有価証券の売買については、すべて「日本証券クリアリング機構」が清算業務を行っている。昔は各証券取引所で行われた売買については、それぞれの市場で清算業務が行われていたが、2003年1月14日から、市場横断的な統一清算機関である日本証券クリアリング機構により一元的に清算業務が行われるようになった。また、東証における先物・オプション取引についても、2004年2月2日から日本証券クリアリング機構により清算業務が行われている。つまり債券先物の清算業務は日本証券クリアリング機構で行われている(東京証券取引所のサイトより一部引用)。
清算機関は、売買の相手側に代わり、証券の受渡し、資金(決済代金)の受払いについて債務の引受けを行い、決済履行を保証する主体であり、決済の相手方として、決済機関に対し証券や資金の振替指図を行う(日本証券クリアリング機構のサイトより)。つまり、売買の売り手買い手にとり、清算機構が間に入ることで確実な決済が保証され、決済上の相手方リスクを軽減させられる。さらにネッティングにより決済量を大幅に減少させることができるのである。
ちなみに、店頭取引が主体となっている日本国債の現物取引に関しては、2005年5月からは日本国債清算機関(JGBCC)の業務が開始された。これが創設される以前は、清算がないまま各当事者が相互に日銀ネット上で決済を行なっていた。しかし、清算機関が創設されたことにより、参加者同士の取引に関わる決済は、原則として日本国債清算機関に集約され、清算を経て決済を行うことが可能となった。
今回の東証のスワップに関する清算業務においては、取引を行っている金融機関や機関投資家が、取引額に応じて証拠金や手数料を東証グループに支払う格好となる。これは取引所に上場されている金融派生商品と同様の手続きとなる。
リーマン・ショック等を経て金融派生商品取引に清算機関の利用を義務付ける動きが強まり、日本では11月から段階的に清算機関の利用が義務付けられるそうである。東証は昨年7月に、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の清算・決済業務を始めているが、今後は取り扱う対象も徐々に広げる見込みのようである。来年初には、円建ての東京銀行間取引金利(TIBOR)も対象に加えるほか、再来年には米ドルなど海外通貨建ての金利スワップ取引も対象になる(日経新聞より)。
ちなみに証券取引での最終的な資金の決済は1988年に稼働した日銀ネットを通じて行われている。金融機関同士が行う資金取引の決済や国債など証券取引の代金の決済や、民間決済システムの最終的な決済には、日銀の当座預金での振替が利用されている。
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