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日米欧の中銀の追加緩和期待がすべて国債買入というのは何故なのか

 現在、市場が期待しているFRBやECBの追加緩和策は、両者ともに国債買入である。さらに、円高等の進行などで日銀が追加緩和に動くとすれば、その選択肢として可能性の高いものは基金の増額であり、その対象となるのは国債が中心となろう。また、いずれBOEも追加緩和に動く可能性もあり、それは資産購入プログラムの拡大となり、つまりFRB、ECB、BOJ、BOEともに国債の買入となる。

 しかし、それぞれの国債買入の目的は異なっている。31日のジャクソンホールでのバーナンキFRB議長の講演内容からも確認できるように、もしFRBがQE3を実施するとしたら、その目的は労働市場の改善となる。

 それに対しECBの場合はユーロ圏におけるリスク回避が目的であり、中央銀行がイタリアやスペインの国債(期間3年あたりまでの中短期債?)を買い入れることで、国債需給に影響を与え、国債利回りの上昇を抑制し、市場に漂うリスクを回避することが目的となる。

 イングランド銀行の場合は、量的緩和策であり景気の下支えが目的となる。また、日銀にとっての基金の増額は、円高株安等の動きを抑制し、景気や物価に働きかけることでデフレの払拭がその目的となろう。

 それぞれ目的は異なるものの、手段は国債買入となってしまうあたり、他に効果的な手段が見当たらないことをうかがわせる。

 もし熱が出たら、その原因はなんであれ、医者は抗生物質を患者に与えることが多い。抗生物質で熱は緩和されるかもしれないが、根本的な解決策にはならない。しかし、軽い病気であればあとは寝ているだけで、直るケースも多いであろう。国債買入は万能薬のようであるが、使い方によってはその効き目が出なくなることもある。

 抗生物質についても大量使用するとその効果がなくなると言われるように、国債買入というある意味特効薬についても、大量にしかも何度も使用するとその効果はなくなるばかりか、その副作用の影響も出る恐れがある。

 このあたりは、FOMCの議事要旨にも示されており、参加者からは現状ではその国債買入プログラムの有効性について疑問視する声もあり、経済活動への影響は一時的なものかもしれないと指摘する参加者もいた。 さらに何人かの参加者からは、米国債やMBSの市場機能を阻害するのではとの懸念が示された。いずれFRBのバランスシートを正常化させる際に詐害要因になるとの懸念も示され、数人の参加者からは中期的なインフレ期待を引き上げてしまうのではないかとの懸念も示された。

 また、ECBによるユーロ加盟国短期債の購入については、「市場ストレスを軽減し、国債の流動性リスクを緩和することができるであろうが、財政破綻リスクの高まりを原因とする金利上昇を抑制することはできない」(岩田一政氏のレポート「ユーロ危機:最後の貸し手と政府債務破綻処理」より)との見方もある。

 日銀による量的緩和策時代の分析もいろいろと出ていたが、金融機関にとり資金調達コストを抑制し、資金繰り不安を払拭したとの結果が得られる一方、総需要・物価への直接的な押し上げ効果は限定的との実証結果が多くみられた(日銀「量的緩和政策の効果:実証研究のサーベイ」より)。

 米国のQEについては、市場への影響は出ていたことは確かではあるが、実体経済への効果については見方が分かれている。バーナンキ議長はそれなりに効果はあるとの認識のようであるが、これは他に有効かつ可能な手段が見当たらないため、そのようにアピールせざるを得ない面もあるのではないかとも考えられる。

 政策金利に引き下げ余地がなくなり、伝統的手段が使えなくなった際の非伝統的手段は、その目的はさておき、中心となるのは結果として国債買入とならざるを得ない。しかし、何度も使えば当然その効果はなくなる。また、政策金利の上げ下げ以上に、いずれその副作用が出てくる恐れがある。短期的な治療薬として有効なものであっても、あくまでこれは市場のマインドに影響を及ぼすなどして、症状を一時的に抑えるものでしかない。雇用の促進や財政破綻リスク、景気の回復、デフレの解消、いずれの病気に対する中央銀行の処方箋が同じということそのものが、金融政策には限界があることを示しているように思われる。


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# by nihonkokusai | 2012-09-04 12:26 | 国債

ECB総裁とドイツ連銀総裁の決戦は木曜日

 「ドラギ対バイトマン」というと、まるで怪獣映画のようなタイトルになってしまうが、この映画(?)には前作があり、そのタイトルは「トリシェ対ウェーバー」であった。

 ECBのトリシェ前総裁の後任には当初、ドイツ出身者が就任するであろうことが暗黙の了解のようになっており、ドイツ連邦銀行(ブンデスバンク)のウェーバー総裁(当時)が最有力視されていた。しかし、そのウェーバー総裁は、「個人的な理由」で2011年4月末にドイツ連銀総裁を辞任した。

 ウェーバー総裁は、ECB理事会において、インフレを加速し中央銀行の政治的独立性を損なうとして加盟国の国債買い入れに強硬に反対しており、それがドイツ連銀総裁を辞任し、つまりは次期ECB総裁候補から降りた要因となった。歴史にもしもは無いが、ウェーバー総裁が辞任せずに、ECB総裁となっていたならば、ECBの政策は大きく変わっていた可能性がある。

 今年8月2日のECB政策理事会後のドラギ総裁の会見で、イタリアやスペイン国債の買い入れの準備を進めていることは表明したが、国債の買い支えの時期等や新たな政策の詳しい内容は明らかにされなかった。さらにドラギ総裁は、ドイツ連銀のバイトマン総裁一人が国債買入に反対したことを明らかにした。

 ドラギ総裁はワイオミング州ジャクソンホールに参加予定で、講演も予定されていたにも関わらず直前になってシンポジウムへの参加を取りやめた。その理由として、向こう数日に多忙を極めると予想されるためとECB報道官は語っていた。

 ECBが検討しているとされる短期国債主体としたスペインやイタリアの国債を買い上げるための非公表の利回りターゲット設定が完全に詰められていない可能性がある。ECBとEFSFとの役割分担、さらにEFSFが銀行免許を得て国債を購入するとの方式等もあるが、このあたりの対策を協議するためなのか、ドラギ総裁だけでなくECB理事もジャクソンホールには出席しなかった。

 ブンデスバンクのバイトマン総裁は、引き続き国債買入再開に反対の姿勢を示していることも影響し、最終的な落としどころをいまだ探っている可能性もある。このバイトマン総裁はジャクソンホールのシンポジウムに参加するようであるが、予定されていた3日の滞在を1日に短縮するようである。

 ECBが2011年8月に国債買い入れを再開した際には、バイトマン総裁やシュタルク専務理事ら4人が、債券買い入れに反対したとも伝わった。今回はいまのところバイトマン総裁のみが反対を表明している。ドイツのメルケル首相はECBの国債買入に対しては賛成しているようで、ドイツの元財務次官であったアスムセンECB理事も賛成に回るであろうとの見方が強い。ただし、アスムセン氏は、ウェーバー前ドイツ連銀総裁の影響を強く受けているとも言われている。

 さらに、9月12日のドイツの憲法裁判所が欧州安定化メカニズム(ESM)の合憲性をめぐる判断を確認しないことには国債買入を再開することはできず、もしECBが短期債の非公表の利回りターゲット設定による買入を行うにしても、9月6日には具体的な発表はできず指針を示すのみではないかとみられている。

 ウェーバー前ドイツ連銀総裁が加盟国の国債買い入れに強硬に反対し辞任していたことで、ECBの国債買い入れは薬物に似ており、政府が依存症に陥るリスクがあるとの認識を示したバイトマン総裁も辞任するのではないかとの観測も出ていた。実際にバイトマン総裁はECBの国債買入への反対を理由に何度か辞任を検討との報道もあった。しかし、反対を貫くために辞任せずにいるとの見方もある。

 これについては、9月6日の木曜日に開催されるECB政策理事会でいったいどのような決着が付くのか。イタリア出身のドラギ総裁もドイツ出身者以上にブンデスバンクの流れを引き継いでいる総裁とみられ、バイトマン総裁の指摘も理解しているはずである。中央銀行がそこまで首を突っ込むことには大きなリスクを伴うが、現在、ユーロ圏の危機を救えるのはECBとの認識もあろう。ドラギ対バイトマンという映画は、まさに現在のセントラルバンカーが抱える大きな矛盾を示す戦いであるようにも思われるのである。

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# by nihonkokusai | 2012-09-03 09:53 | 中央銀行

消費増税や歳出枠を定めても新規国債発行額は抑制できず

 野田首相は8月31日の閣僚懇談会で、歳出の大枠71兆円を2015年度まで継続する方針を決めたそうである。少子高齢化に伴う社会保障費の自然増が毎年度1兆円規模であることなどを考えれば、その分の歳出削減を目指すこととなり、このように歳出にギャップをかけることは重要だと思う。

 内閣府はこの閣議で経済財政の中長期試算を報告した。

「経済財政の中長期試算」
http://www.npu.go.jp/policy/policy01/pdf/20120831/20120831_naikakuhu.pdf


 2020年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字は15.4兆円と名目国内総生産(GDP)比で2.8%にとどまり、消費税率が10%になっても政府が国際公約として掲げる黒字化が達成できない見通しとなっている。

 ただし、国と地方を合わせたプライマリーバランスの赤字幅は、2015年度16.1兆円、対名目GDP比で3.2%、2020年度に15.4兆円、同2.8%との見通しで、2010年度の名目国内総生産(GDP)対比での赤字半減という目標は達成するとの見込みのようである。

 これらの数字は2020年度までの平均成長率を名目で1%台半ば、実質1%強とする「慎重シナリオ」でみた場合となる。消費者物価指数上昇率は2012年度にプラスとなった後、超長期的には1%近傍で安定的に推移するとしている。

 2020年度の新規国債発行額にあたる財源不足は52.5兆円まで膨らむ見通しで、2012、2013年度は基礎年金の国庫負担分をつなぎ国債で賄うため46.8兆円、46.0兆円と、46兆円台になる。消費増税の実施後、2014年度は42兆円台に縮小するが、2016年度からは再び増加に転じる予想となっている(日経ネット版の記事を参照、経済財政の中長期試算で数値を確認できる)。

 新規国債の発行額となる歳出と税収等の差額については、消費増税の実施後は縮小するといっても42兆円規模であり、2012年度の46.8兆円(2.6兆円のつなぎ国債を含めた数値)よりは削減されるといっても40兆円規模が継続され、2020年度には50兆円台の見込みとなっている。

 これまでの日本の新規国債の発行額の推移を見てみると、1997年度は18.5兆円であった。1998年度に34兆円に急増し、2001年度には小泉首相が30兆円に抑えたものの、2002年度に35兆円に。2006年度、2007年度は30兆円割れとなったが、2008年度は再び増加し33兆円台に。2009年度に至っては金融危機等の影響から53.5兆円と50兆円を超えたが、当然ながら40兆円台といっても決して小さな数字ではない。

 消費増税が実施されても、この新規国債の発行額はそれほど抑制されず、「経済財政の中長期試算」によると、むしろ2020年度には52.5兆円と2011年度以来の50兆円超えが予想されている。これには歳出増とともに、国債残高が毎年積み上がっていくため、その分金利負担が増加し、利払い比と償還費を合わせた国債費が年々増加傾向になるとの予想になっていることも影響している。

 利払い費に絡んでは、「金利ボーナス」と呼ばれる利払い費用の抑制効果がなくなり、その分増加しやすい状況となっていることにも注意が必要である。金利ボーナスとは、過去の高い金利の国債が償還期を迎えると、その分は低い金利で借り換えることになり、その分の利払い負担が軽減される効果のことである。しかし、1990年代後半以降は長期金利の低位安定が長く続き、その抑制効果は次第になくなりつつあり、今後は国債残高の増加がそのまま利払い費に影響する状況となっている。

 超低金利が果たしてどこまで継続するのか予測は難しい。現在の超低金利が続いたとしても、利払い費の抑制には限界があるとともに、長期金利が上昇すれば、その分、国債費の増加に大きく影響してくることになる。

 消費増税が実施されても、プライマリーバランスはそれほど改善されず、さらに毎年度の新規国債の発行額も大きく減少することは想定できず、毎年度40兆円を超えるような発行規模が維持されてしまうことを認識しておく必要がある。

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# by nihonkokusai | 2012-09-02 11:56 | 国債

日本政府は戦後初の予算執行抑制を実施か

 8月29日に参議院で野田総理大臣に対する問責決議が可決されたことで、赤字国債の発行に必要な特例公債法案の今国会成立は絶望的となった。特例公債法案が審議未了のまま廃案となった場合には、政府は秋の臨時国会に再提出し、成立を目指すそうである(時事通信)。

 今年度予算のうち税収や税外収入は46.1兆円、これに建設国債5.9兆円を合わせれば、50.2兆円の財源は確保できるが(財政法第四条に基づいて発行される建設国債は予算が通れば発行できる)、歳入の4割強を占める赤字国債38.3兆円は特例公債法案が成立しなければ発行できない。

 資金のやり繰りのため財務省証券の発行をすればなんとかなるとの見方があるかもしれないが、国債発行はむやみに発行されないように法律に基づいており、確実な財源が見込まれない中での自転車操業のような財務省証券の発行は認められない。

 財務省によると公共事業などの建設国債発行対象を除いた9月末の支出見込み額は39.3兆円。これに例年の10月の平均的支出額約5兆円を加えると約45兆円に達するという。特例公債法案が成立しないとなれば、38.3兆円分の執行ができなくなる。このままでいけば10月中にほぼ財源が底をつく計算になる。もしそうなった場合には、支出を厳しく抑える必要がある。

 このため政府は特例公債法案の成立まで、「予算執行を抑制する」方針を固め、来月、全国の地方自治体に支給する地方交付税およそ4兆円の減額や、政党交付金の支給を遅らせるほか、国立大学への交付金といった、いわゆる補助金を半減する方向で、調整を進めることになった。予算の執行抑制が実施されれば、戦後初めての異例の事態となる(NHK)。ただし、生活保護など社会保障や、国債の償還・利払い費などを含む国債費は対象外となる見通しのようである。

 地方交付税交付金の16.4兆円は4月と6月、9月、11月に分割して支払われているが、9月4日とみられていた4.1兆円の支払いの一部が先送りされる公算が大きいとされる(ロイター)。

 予算執行の抑制策については、安住淳財務相がその基本的な方針を31日に示す方向で調整が進んでいるそうである。

 米連邦債務の法定上限引き上げをめぐる協議も年中行事となってしまった感があるが、日本でもねじれ国会となる中、特例公債法案の行方は今年もまた綱渡りの状態となり、ついに戦後初の予算執行抑制の実施を招く結果となってしまうようである。

 特例公債法案が廃案となり、政府があらためて秋の臨時国会に再提出し、成立を目指すといっても、成立の目途が立っているわけではない。野党も選挙を意識して特例公債法案を人質にとる可能性がある。そうなると政府機関の一時封鎖(シャットダウン)等も意識され、国債市場にも影響を及ぼす懸念がある。格付け会社なども動きを見せる懸念もある。

 特例公債法案を政争の具にするには、あまりにリスクが大きいことを認識すべきだが、どうも与野党ともに、それよりも選挙の方が重要であるようである。国債市場は盤石との過信は禁物である。市場参加者のセンチメントが変わると、相場は激変する懸念がありうる。そのあたりも政治家の方々にはしっかり認識してほしいと思うのだが。


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# by nihonkokusai | 2012-08-31 09:32 | 財政

ドイツのESMの違憲判決とECBの新たな国債買入策の関係

 報道によると、ECBのドラギ総裁は、9月12日にドイツの憲法裁判所が恒久的な救済基金である欧州安定化メカニズム(ESM)の合憲性をめぐる判断を下した後に、ECBによる国債買い入れ計画の詳細を発表する見込みだと伝えられた(ブルームバーグ)。

 欧州金融安定ファシリティー(EFSF)に代わるESMはドイツで違憲性が問われたことから、7月に予定されていた本格稼働が遅れている。

 EFSFとは「European Financial Stability Facility」の略で、日本語では「欧州金融安定基金」とも呼ばれているものである。この欧州金融安定基金は、2010年5月のギリシャ危機を踏まえて、EU(欧州連合)の加盟国によって合意されたユーロ圏諸国の資金支援を目的とした基金である。ルクセンブルクに本部を置き、株式会社として登録されている。ただし、2013年6月までという期限が設けられ、その後は恒久的な危機対応の機関として、2013年に欧州版のIMFともいえるESM(欧州安定メカニズム、European Stability Mechanism)がEFSFの業務を引き継ぐ予定となっていた。

 ESMの発足には出資比率で9割の国の批准が必要となり、6月29日にドイツ連邦議会はEFSFの機能拡充案を賛成523票、反対85票で可決した。ところが、野党議員や学識経験者などが、他国を救うために税金を投入する権限は議会に与えられていないとして提訴した。ESMについて国内法に反するとして訴訟を起こしたのである。このため大統領の署名は見送られ、憲法裁判所が合憲か否か審議する事態となり、その発表は9月12日に持ち越されたのである。

 ただし、ユーロ危機が渦巻く中にあり、その影響の大きさから見て、違憲判決が下される可能性は低いとされる。しかし、ECBによる国債買い入れについては、この判決を確認したのちに正式に発表されるとみられる。

 これは前回のECBによる流通市場における国債買入(証券市場プログラム、SMP)と異なり、今回のECBによる新たな国債買入計画には明確な条件が付けられているためである。国債買入の対象となる国は、まずユーロ圏諸国に対しEFSF・ESMによる支援を要請し、その支援を受けるための財政再建等に取り組む必要がある。つまりECBによる国債買入を実施するには、対象となる国がEFSF・ESMによる支援を受けることが前提となる。

 このため9月6日のECB政策理事会では、国債買い入れ計画の詳細までは明らかにされないのではなかろうか。ESMが仮にドイツで違憲となれば、最大の出資国であるドイツによる出資が不透明となりかねず、このためECBは判決を確認した上で、もちろん合憲判決が前提だが、新たな国債買入策の詳細を発表するものと思われる。

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# by nihonkokusai | 2012-08-30 09:16 | 中央銀行
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