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1万円廃止論と金融におけるビッグデータの活用の限界

 1万円廃止論がある。ユーロやインド高額紙幣を廃止するところがあれば、スイスなど日本の1万円以上の額面を有する高額紙幣を発行している国もある。1万円札廃止論には費用削減のため、マネーロンダリングや脱税対策のためとの主張がある。また、キャッシュレス化を進めることでのビックデータの活用なども意識したものとみられる。

 日本では1万円札の発行残高が膨れあがっており、その多くはタンス預金と呼ばれるように、自宅等に保管されているとされる。これは犯罪目的というよりも、あまりの金利の低さ、そして匿名性が意識されてのものと思われる。もし1万円札を廃止すれば、タンス預金となっているものが違う資産に交換されようが、これは戦後の預金封鎖、新円切り換え時と同様の混乱をもたらす懸念があり、あまり現実的ではない。

 むしろ日銀の金融政策で利子を消滅させてしまったことで、その利子を復活させることにより、タンス預金を減少させることができよう。しかし、いまの日銀の金融政策における体制だけでなく、ここにきてのファンダメンタルズを考慮すれば、これも現状は現実的ではない。

 それでは日本のキャッシュレス化が、1万円札の流通量の多さによって阻害されているのかといえば、経産省がキャッシュレス決済の比率引き上げにはクレジットカードやQRゴートを使った決済など小額決済が念頭に置かれているとみられ、分けて考える必要がある。

 キャッシュレス化を通じた金融の流れのデータは、ある意味宝の山となろう。アマゾンや楽天、交通系カードを含めた電子カードの取引内容によって消費者の行動など分析は可能となろう。しかし、そのような小口の消費における決済データは民間を利用するのはある程度、容認されたとしても、本来の金融取引のデータを何かしら別の用途に使うということは果たして現実的なのであろうか。

 我々の金融取引におけるデータ、それはつまり銀行の口座の取引内容などを何かしら別の用途に利用するといったことは可能なのかということになる。むろんこれは金融機関にとって守秘義務が課せられることで利用することは本来できないというか、やってほしくはないものとなる。小額決済の取引データはさておき、金融という大きなインフラの中身のデータについては現金取引であろうが電子取引であろうが、それをほかの目的に利用するということには限界があろう。


# by nihonkokusai | 2019-03-27 15:44 | キャッシュレス

ここにきての世界的な長期金利低下のきっかけとなった経済指標のPMIとは何か

 22日発表のドイツの3月の製造業PMI速報値が約6年半ぶりの水準に落ち込み、3月のユーロ圏の総合PMI速報値も予想を下回り、22日のドイツの10年債利回りは2016年10月以来となるマイナスとなった。

 米国のPMIの製造業指数も1年9か月ぶりの水準に低下したことから、22日の米債は買い進まれ、一時2.41%に低下し、3か月物TBの利回りを約11年半ぶりに下回ったことで長短金利が逆転した。結局、米10年債利回りは2.44%と前日の2.53%から大きく低下した。

 これは22日の欧米の市場動向を牛さん、熊さんが解説したものをまとめたものだが、今回は今回、市場が注目していた「PMI」という経済指標をあらためて解説してみたい。

 PMI(Purchasing Managers’Index)とは、「購買担当者景気指数」とも呼ばれ、製造業やサービス業の購買担当者を調査対象にした、企業の景況感を示す景気指標のひとつ。購買担当者に、生産や新規受注、受注残、雇用、価格、購買数量などをアンケート調査し、結果に一定のウエートを掛けて指数化したもの。なかでも製造業の購買担当者は、製品の需要動向や取引先の動向などを見極めて仕入れを行うため、製造業PMIは今後の景気動向を占う「先行指標」とされている(大和証券のサイトより引用)。

 米国のPMIは全米供給管理協会であるISM(Institute for Supply Management)が公表している米国の製造業の業況感を捉える景気指標である。これはそもそものPMI指数の元祖ともいうべきISM製造業景気指数とISM非製造業景気指数のことである。ISMは米国に4万人以上の会員を持つ非営利の供給管理組織であり、この指数は米国の18業種での数百社の代表者の調査に基づいて計算されている。

 ISM製造業景気指数は、米供給管理協会が製造業約350社の購買担当役員にアンケート調査を実施し、1か月前と比較して、「良い」「同じ」「悪い」の三者択一の回答を元に、季節調整を加えた景気動向指数を作成している。1931年から続いている伝統的な経済指標でもある。

 これに対し、金融情報サービス会社のマークイット(Markit)が集計している米国のPMIの製造業指数も存在しており、22日に発表された米国のPMIはこちらの指標であった。

 そして、ユーロ圏製造業PMI(購買担当者指数) も、やはりマークイットが集計する景気指数となっていた。

 そして、日本では日経日本製造業購買担当者指数(PMI)が発表されている。

 中国では中国メディアの財新と英調査会社IHSマークイットが製造業購買担当者景気指数(PMI)を発表している。

 いずれのPMIも「50」を景況感の分岐点としており、これを下回れば景況感が悪く、これを上回れば景況感が良いとされている。


# by nihonkokusai | 2019-03-26 10:46 | 景気物価動向

昨年12月末の投資家別の国債保有額

 日銀は3月19日に資金循環統計(2018年10~12月期速報値)を発表した。これによると個人の金融資産は昨年12月末時点で約1830兆円となり、6月末の約1859兆円からは減少した。これはリーマン・ショックがあった2008年末以来、10年ぶりの前年末比減となったようである。個人の金融資産の内訳は、現金・預金が前年比で1.6%増の約984兆円となっていたのに対し、株式等が同15.3%減の約175兆円、投資信託は12.4%減の約67兆円となっていた。欧州や中国を主体とした世界経済の先行き減速懸念などによる年末にかけての株価の下落が影響したとみられる。

 この資金循環統計を基に国債(短期債除く)の保有者別の内訳を算出してみた。

 残高トップの日銀の国債保有残高は466兆1179億円、46.0%のシェアとなった。前期比(速報値)からは11兆4829億円の増加となる。

 残高2位の保険・年金基金は238兆1289億円(23.5%)、5兆3437億円増。

 残高3位は預金取扱機関(都銀や地銀など)で152兆9809億円(15.1%)、1兆2855億円減。

 残高4位が海外投資家で64兆7628億円(6.4%)、5兆6526億円増。

 残高5位が公的年金の45兆5028億円(4.5%)、1996億円増。

 残高6位が家計の12兆9637億円(1.3%)、1057億円増。

 その他が32兆6420億円(3.2%)、3兆2297億円減となっていた。

 2018年9月末に比べ国債(短期債除く)の残高は18兆2693億円増の1013兆990億円となった。昨年の6月末に短期債を除いた国債残高が1000兆円に迫ったが1000兆円を超えることはなかった。手元の数字ではあるが、短期債を除いた国債残高がこの資金循環統計からはじめて1000兆円を超えてきた(こちらの国債残高は時価ベース)。

 9月末に比べて大きく増加したのは、国債を大量に買い入れている日銀で、シェアは4割を上回っている。今回、前期比で減少したのは預金取扱機関(都銀や地銀など)。

 短期債を含めた国債全体の数字でみると残高は約1111兆円となり、日銀が約478兆円で43.0%のシェアとなっていた。海外勢の残高は約134兆円と短期債を含めると国債全体の12.1%のシェアとなっていた。


# by nihonkokusai | 2019-03-25 09:44 | 国債

米国では長短金利が逆転、ドイツの長期金利はマイナスに、日本の長期金利も低下、何が起きているのか

 20日のFOMCにおいて、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25~2.50%に据え置くことを全会一致で決定した。FOMCメンバーの政策金利見通し分布(ドット・チャート)では、年内の利上げ回数はゼロとなり、年内の利上げ観測が後退した。パウエル議長は記者会見で、「資産縮小は5月から減速し、9月には完全に停止する」と発言した。具体的には5月から縮小ペースを減速し、保有国債の毎月の縮小ぺースは最大300億ドルから最大150億ドルに半減させる。

 これを受けて20日の米債は買い進まれ、2.5%台に低下し、21日には一時2.5%割れとなった。22日には3月の米製造業PMI速報値が予想を下回ったことや、ドイツの10年債利回りがマイナスとなったことなどから、米10年債利回りは2.41%まで低下した。これに対して、短期の金利の代表ともいえる3か月物の米財務省証券(TB)の利回りは、FRBの政策金利に影響を受けやすいことで2.45%近辺と高止まりしていたことで、それを10年債利回りが下回った。つまり2007年以降初めてとなる米長短金利の逆転が生じた。

 長期金利が短期金利の水準を下回ることは「逆イールド」とも呼ばれ、過去に逆イールドが生じた際は景気減速期が多かった経験もあってか、22日の米国株式市場はこれも嫌気されて、ダウ平均は460ドル安と大きく下落した。

 英国を除く欧州連合(EU)首脳27カ国は21日、英国のEU離脱の延期を巡り協議した。英下院が3月最終週に予定する採決で、メイ政権とEUが合意した離脱案を可決できなかった場合、4月12日まで離脱を延期したうえで、英国に長期延長に応じるか「合意なき離脱」を選ぶかを決断するよう求めた(22日付日経新聞電子版)。

 EU首脳らは離脱日が目前に迫っても、離脱方針を巡って分断する英政治の混迷に態度を硬化させているとされる。フランスのマクロン大統領は、英国議会が離脱案を否決すれば、延期を認めることはできず、「合意なき離脱になる」との認識を示した。

 英国の合意なき離脱も懸念されて、欧州の国債も総じて買い進まれ、ドイツの10年債利回りはゼロ%近くに低下していた。さらに22日に発表されたドイツの3月の製造業PMI速報値が好不況の分かれ目となる50を3か月連続で下回ったこともあって、22日のドイツの10年債利回りは2016年10月以来となるマイナスとなった。

 22日に発表された日本の2月の消費者物価指数は、日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合が前年同月比プラス0.7%と1月のプラス0.8%から上昇幅が縮小された。

 22日の日本の債券市場では、10年債利回りがマイナス0.060%まで低下し、2016年11月9日以来の水準で取引を開始した。その後マイナス0.075%まで低下した。ちなみに2016年6月に日本の10年債利回りはマイナス0.2%台まで低下していた。

 日銀の物価目標達成は見通せず、欧米の長期金利は低下その要因ともなっているFRBの正常化路線の停止見通しとその背景となっている欧米を含めた世界的な景気減速への懸念、そして英国のブレグジットを巡る懸念の強まり、加えて米中の通商交渉の行方も見通せず、リスク回避の動きも相まって、日米欧の長期金利は低下したといえる。

 今後は事態に大きな改善がみられるなり、世界的な景気減速観測が後退するといったことがなければ、日本の10年債利回りはひとまずマイナス0.1%あたりを伺うことが予想される。


# by nihonkokusai | 2019-03-23 09:56 | 債券市場

現状では日銀の金融政策の変更は困難、副作用が顕在化する前に修正も必要に

 1月22、23日に開催された日銀の金融政策決定会合の議事要旨が20日に公表された。今回はこのなかの「当面の金融政策運営に関する議論を確認してみたい。

 『一人の委員は、「現在の金融緩和を粘り強く続ける」という情報発信は、日本銀行の緩和的な政策スタンスを示すうえで重要であるが、同時に、金融市場において、当面は政策変更がないという予想が過度に固定化されてしまうことを防ぐ工夫も必要であると指摘した。』

 政策変更がないという予想が過度に固定化されてしまう理由は、物価目標が達成される見込みはないものの、その目標を下ろすようなことはしたくない。そうであれば、過度の金融緩和を続けるほかはない。さらに追加緩和を模索するにしても、数字上は量を増やすなり、金利を下げることは可能ながら、現実的には量を増やすにも、金利を引き下げるにもすでに限界に近い。副作用を考慮すると動くに動けないというのが現実と思われる。そうなると「工夫」に頼らざるを得ないということであろうか。

 『別のある委員は、物価安定目標への到達が遠ざかっている現状を踏まえると、何か大きな危機が起きるまでは行動しないという態度は望ましくなく、むしろ、状況の変化に対しては、追加緩和を含めて迅速、柔軟かつ断固たる対応を取る姿勢を強調するとともに、一部で指摘されている緩和限界論に反論していく必要があると述べた。』

 異次元緩和と呼ばれるように、当初からやり過ぎていたものをさらに強化した上で、それでも効果なく、量から金利に戻してマイナス化したことで、金融機関の経営を圧迫させ、金融そのものに悪影響を与えている可能性がある。そのなかでどのような追加緩和手段があるというのか。その追加緩和手段があったとして、金融市場の動揺を一時的に抑えられたとしても、物価目標達成にどれだけ寄与できるというのか具体的に示してほしい。まずは物価目標を柔軟化させて、金融政策そのものもフレキシブルなものに戻すことが必要なのではなかろうか。

 『これに対し、ある委員は、不確実性の高い状況のもとで急いで政策を変更することは、かえって金融不均衡の蓄積や実体経済の振幅拡大に繋がるリスクもあるため、十分に情報を収集・分析したうえで、その時々の状況に応じて適切に対応していくことが大事であるとの認識を示した。』

 このあたりが冷静な判断といえるであろう。なにも緩和すればすべて良しというものではない。

 「この間、複数の委員は、海外経済の下振れリスクが顕在化し、経済・物価情勢が大きく悪化するような場合には、政府との政策連携も一段と重要になるとの見解を述べた。」

 それとなく金融政策から財政政策に比重を移したらどうかとも読めなくもない。しかし、財政政策も効果うんぬん以前に、膨大な債務を抱えている以上、信認毀損にも繋がりかねないことで、慎重に行う必要はある。まさかとは思うが、MMT(Modern Monetary Theory、現代金融理論)と呼ばれる理論が持ち出されるようなことはないと思いたいが。

 金融緩和の効果についての議論では、多くの委員は、今後とも、強力な金融政策を続けていくためには、政策の効果と副作用をバランスよく考慮していくことが重要であるが、現時点では、金融緩和の効果が副作用を上回っているという認識を示したとある。

 副作用はじわりじわりと広がってきている。それが顕著に現れたときには取り返しがつかなくなる恐れがある。もし金融緩和の効果が副作用を上回っているという認識であるのであれば、いまのうちに修正を施して、危機を未然に防ぐことも必要なのではなかろうか。


# by nihonkokusai | 2019-03-22 10:49 | 日銀

QRコード決済における統一規格の動き

 19日付けの日経新聞によると、経済産業省と産学官が立ち上げたキャッシュレス推進協議会が29日にもQRコード決済の統一規格を発表するそうである。

 ここにきてQRコードの決済方式が乱立している。LINE Pay、PayPay、楽天ペイ、Origamiなどに加えて、みずほ銀行は2019年3月にJコインペイを開始する予定で、7月ごろにファミマペイ、セブンペイとコンビニ系、またヨドバシカメラもヨドペイを開始するとの観測も出ている。

 現在、日本の事業者が行っている上記のQRコード決済では、どのように数字を発行するかの決まりはない。QRコード決済とは、店舗か顧客が提示するQRコードに12桁前後の数字などの情報が埋め込まれており、それを読みとることで支払いが完了する。異なる事業者が顧客に対して同じ番号のQRコードを発行していれば、誤請求が起きる危険性が発生する。

 クレジットカードなどでは、決済事業者ごとに他社と重複しない番号を割り当てた上で、事業者は利用者ごとに下何桁かの数字を加えた番号を決める形式となっている。

 クレジットカードの番号は、ISO/IEC 7812という国際規格に定められた規則に基づいて決められている。先頭の6桁の番号はプレフィックスと呼ばれ、カードの属性を表している。つまり最初の6桁でカードの種類を区別や分類ができる。これはIIN (Issuer Identifier Number、発行者識別番号)、またはBIN (Bank Identification Number、銀行識別番号) であり、クレジットカードを発行した企業や団体が識別可能となる番号となっている。そして、7桁目から最終2桁目までは、個別の口座番号が割り振られている。

 JCBなどの国際ブランドのカードを発行している事業者はすでに割り振られた番号を持っているが、新規参入の事業者は手数料を支払って新たに番号を発行してもらう必要がある。システムにかかる費用を安価に抑えてこれを実現してきた日本の事業者は、クレジットカードと同等の仕組みを求められることに反発していた。(日経新聞)。

 QRコード決済の発達した中国でも結局は、不正利用を防ぐために、クレジットカードなど既存の決済事業者の意見が採用されて、高コストながらセキュリティーを重視する仕組みとなったそうである。

 ただし、統一したQRコードであれば、すべての事業者のQRコード決済が使えるわけではなく、加盟店がそれぞれの事業者と契約を結ぶ必要がある。これはクレジットカードも同様で、たとえば、この店ではVISAは使えるがJCBは使えないといったことと同様となる。

 今回の統一規格を事業者が採用する義務はまだない。費用負担を嫌がり採用しない事業者が出てくれば、規格の統一も骨抜きになる可能性があると、日経新聞は指摘している。

 中国も乱立していたQRコード決済が2つ程度のQRコード決済に絞られてきたことで使い勝手が向上したとみられる。日本ではまだQRコード決済の普及については過渡期にあるともいえる。


# by nihonkokusai | 2019-03-20 09:16 | キャッシュレス

日本のキャッシュレス決済比率は本当に20%程度なのか

 政府は「未来投資戦略 2017」にて、KPI(Key Performance Indicator:重要な評価指標)として2027年までにキャッシュレス決済比率を4割程度とすることを目指すとしている。

 4割程度という数字は、2016年の日本におけるキャッシュレス決済の比率が2割程度であったことで、その「2倍」を意識しているとみられる。

 キャッシュレス決済の比率が2割程度という元になっているデータは下記の経済産業省や日銀の資料に出てきている。

経済産業省「キャッシュレスの現状と推進」2017年8月

経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」2018年4月

日本銀行「キャッシュレス決済の現状」2018年9月

 上記の資料によると、2015年現在のキャッシュレス決済比率の各国比較をみると日本が18%、韓国が54%、中国が55%、米国が41%となっていた。

 上記の数字は、日本以外については、EUROMONITOR INTERNATIONAL年次レポート(クレジットカード、デビットカード、プリペイドカード(電子マネー含む)を含む。)による。

 日本については、内閣府「2015年度国民経済計算年報」民間最終消費支出によるもので、クレジットカードの決済については、2012年までは加盟クレジット会社へのアンケート調査結果を基にした推計値、平成25年以降は指定信用情報機関に登録されている実数値を使用。デビットカードについては、日本デビットカード推進協議会(J-debitのみ)。電子マネーについては日本銀行「電子マネー計数」と脚注にある。

 日本銀行「電子マネー計数」については、日銀のサイトの決済動向にデータが記載されている。

日本銀行 決済動向

 この電子マネーについては、下記のようになっている。

 プリペイド方式のうちIC型の電子マネーが対象。本調査は、調査対象先8社(具体的には、専業系:楽天Edy株式会社<楽天Edy>、鉄道会社などが発行する交通系:九州旅客鉄道株式会社<SUGOCA>、西日本旅客鉄道株式会社<ICOCA>、株式会社パスモ<PASMO>、東日本旅客鉄道株式会社<Suica>、北海道旅客鉄道株式会社<Kitaca>、小売流通企業が発行する流通系:イオン株式会社<WAON>、株式会社セブン・カードサービス<nanaco>)から提供されたデータを集計したもの。交通系については、乗車や乗車券購入に利用されたものは含めていない(日本銀行のサイトより)。

 日本のキャッシュレス決済比率が2割という数字は2015年現在のものであり、やや古い。それだけでなく、あくまで消費に関わる決済においてのカードや電子マネーの利用額となっている。交通系電子マネーに関しては、乗車や乗車券購入に利用されたものは含まれていない。

 これには銀行口座による口座振替分について含まれているのかは現状はわからないが、2018年11月9日付け日経新聞によると、金融庁が国内のキャッシュレス決済に関する独自の試算結果を明らかにし、これによると、3メガ銀行に給与振込口座を持つ会社員らのお金の流れをみると、クレジットカード代金などの口座振替や振り込みが54%を占め、現金の引き出しは45%にとどまることが分かったとしている。

 上記の金融庁の資産のほうが実態に近く、日本のキャッシュレス決済比率については、銀行振り込みや口座振替、交通系電子マネーによる乗車や乗車券購入などを含めた、もう少し広範囲の捉え方をすれば、2割という数字は小さすぎるようにも思われるのだが。


# by nihonkokusai | 2019-03-19 09:43 | キャッシュレス

独自通貨を持つ国はいくらでも借金できるとの理論は正しいのか

 MMT(Modern Monetary Theory、現代金融理論)と呼ばれる理論が注目を集めているそうである。

 MMTの提唱者の1人である、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授によると、ユーロという共通通貨があり、独自の通貨を持たないギリシャなどは、独自の判断で無制限の流動性供給を行うことはできない。それゆえデフォルトリスクがある。しかし、独自通貨を持つ米国のような国では、政府債務の増加がマクロ的な供給不足からインフレを起こすような場合でなければ、経済成長と雇用の増加が続いている限り、政府債務の増加自体は問題ないというのが、ケルトン教授の説明するMMTのコア部分だとか(3月8日のロイターの記事より)。

 この理論は米国だけでなく日本の状況も意識したものではなかろうか。日本の債務残高はすでにGDP比で200%を超えている。日銀は大胆な金融緩和策として大規模な国債の買入を実施しており、年間の国債発行額を買い入れるといった財政ファイナンスに近い政策を行っている。それにもかかわらず、物価は上がらず、長期金利も日銀の政策で低位に操作されている。

 これが永遠に続けられるとするのがケルトン教授の理論であろう。リーマン・ショックやギリシャ・ショックによって財政政策に限界が来て金融政策に比重が移り、金融政策も限界が見えたら今度は財政政策と、これはフリーランチ・セオリーの延長ともいえる。

 問題となっているのが、ケルトン教授は2016年の米国大統領選では、バーニー・サンダース上院議員の顧問を務めており、さらに昨年11月にニューヨーク州から連邦議会下院選に立候補し、女性として史上最年少の米下院議員となったアレクサンドリア・オカシオコルテス氏がMMTを支持したことである。

 これによってMMTに対して注目が集まり、FRBのパウエル議長は2月26日の議会証言で「自国通貨での借り入れが可能な国にとって赤字は問題でないという人もいるが、私は間違っていると思う」と明確に否定することになる。クルーグマン氏もMMTに対し「支離滅裂」と一蹴し、サマーズ氏もワシントン・ポストのコラムで新たな「ブードゥー経済学だ」と批判した(ロイター)。

 MMTの考え方が正しいとすれば無税国家が成立しうる。しかし、現在の日米の長期金利が低位安定しているのは、政府や中央銀行に対する信認があればこそである。その信認がいったん毀損すると市場は安定感を喪失することになる。信用は築くのはたいへんだが、いったん崩れると取り戻しがきかなくなる。ギリシャは自国通貨でなかったので危機が生じたのではなく、信認が毀損したために危機が起きたのである。

# by nihonkokusai | 2019-03-17 10:32 | アベノミクス

仮想通貨の呼び名を「暗号資産」に変更する理由

 政府は15日の閣議で、仮想通貨の交換業者や取引に関する規制強化策を盛り込んだ金融商品取引法と資金決済法の改正案を決定した。20か国・地域(G20)会議などで使われる国際標準に表現を統一し、仮想通貨の呼び名を「暗号資産」に変えるほか、サイバー攻撃による流出に備えて顧客に弁済するための原資を持つことを義務づける(15日付日経新聞電子版)。

 すでに、これまで仮想通貨と呼ばれていたものは、G20をはじめ国際会議で「暗号資産(crypto-assets)」という表現が主流になりつつあり、日本もそれに合わせて呼び方を変えることになる。

 円やドルなど法定通貨との混同を防ぐため明確に区別する必要性に加え、交換の容易性、価値の安定、保管の安全性などにおいて欠点も露出しており、通貨と呼ぶにはふさわしくないとの判断とみられる。

 仮想通貨はキャッシュレス化の旗頭的な存在ともいわれていたときがあったが、キャッシュレス化がすなわち仮想通貨ではない。既存の法定通貨に取って代わり、国に縛られずに資金の移動も可能となる未来の通貨といった認識もあったが、通貨にとって必要な信認そのものが得られることがなかった。

 キャッシュレス化の推進の理由として、現金はマネーロンダリングなど通じて犯罪にも使われるために必要との意見もあった。ところが、結果として仮想通貨の持つ不備をつかれ、北朝鮮が仮想通貨の630億円あまりを盗んでいたとの報告書も出ていた。むしろマネーロンダリングなどに使われやすいものであった。

 石でも貝でも紙でも金でも通貨として使うことはできることを歴史が証明している。しかし、それはあくまで使う人達の相互の信認があっての利用となる。ハイパーインフレが起きているベネズエラなどでは自国通貨への信認が失墜し、それよりは仮想通貨の方が相対的に安心とされるかもしれない。しかし、管理通貨制度がしっかりし、国や中央銀行への信認が得られている国の通貨は、やはり使いやすい。その通貨への信認が続く限りは、法定通貨による決済のキャッシュレス化は進められても、通貨そのものが仮想のものに取って代わるという事態は考えづらい。


# by nihonkokusai | 2019-03-16 10:09 | キャッシュレス

プレミアム「キャッシュレス」フライデーを始めるとか

 経済産業省とキャッシュレス推進協議会は13日にキャッシュレス決済の認知や利用を拡大するための施策を始めると発表した。3月29日の「プレミアムフライデー」に合わせて、プレミアム「キャッシュレス」フライデーと位置付け、キャッシュレス推進協議会に参加する各社が、「キャッシュレス決済」の周知・告知を店頭のポスターなどを通じて行うそうである。

 4月26日の「プレミアムフライデー」と4月27日からはじまる10連休を「キャッシュレスウィーク」と位置付け、各社が一斉にキャンペーンを実施するとか。キャンペーンの内容は、別途発表されるようである。

 そもそもプレミアムフライデーが浸透しているのかどうかも不透明なところ、その不透明なプレミアムフライデーを浸透させるためにもキャッシュレスを組ませてきたようである。

 経済産業省の永井武彦消費・流通政策課課長によると、現金決済インフラを維持するためにATM設置費用で4120億円、レジ締めの人件費で5000億円など、年間1兆6000億円を超えるコストが発生しているとか。キャンペーンを通じて、消費者にキャッシュレス決済のお得さを伝えるとともに、人手不足に悩む事業者の生産性向上につなげたい」とか(流通ニュースの記事より引用)。

 すでにPayPayなどが大規模なキャンペーンを行っているが、プレミアムフライデーの認知度の向上や大型連休に合わせて、経済産業省とキャッシュレス推進協議会があらたな仕掛けを行うようである。

 キャッシュレス推進協議会の福田好郎事務局長も「キャッシュレスという言葉は知られてきたが、実際に利用するところまで至らない人も多い。全国で一斉に積極的なキャンペーンを行うことで『やってみよう』と思わせることができれば」とコメントも紹介されていた(IT Media NEWS)。

 日本ではそれほどキャッシュレスの認知度は低いのであろうか。老若男女を問わず、財布のなかにはクレジットカードやコンビニ・スーパーなどで使える電子マネーカードが数枚は入っていると思われる。電車を使うためには定期などでも交通系カードを使い、駅の売店でも利用しているのではなかろうか。お年寄りも電車を使うときに切符を買うよりも交通系カードを使う機会が多いはず。

 給与所得者の給与、フリーランスの報酬、年金生活者の年金も銀行振り込みが中心のはず。その銀行口座からアマゾンなどでのネットストアーで買い物した代金がクレジット会社経由で引き落とされる。給与所得者は年金や健康保険の料金も自動的に支払っており、公共料金も引き落としで行っている人も多いはず。

 たしかに日本人の現金保有高は異常に高いとされている。消費財の購入の際の現金決済比率もそこそこ高い。災害時も意識して一定の現金保有をしていることも確かである。しかし、だからといってキャッシュレス決済が普及していないわけではない。

 災害時や停電時にも使える現金のありがたさ、現金の持つ匿名性なども知らずに意識されて、現金決済が残っている面もある。その現金決済を少しでもキャッシュレスに振り向けようとのキャンペーンのようではあるが、訪日観光客まで意識したものだとすれば、今後、日本でいったいどのようなキャッシュレス化を促進していきたいのかという具体的な姿も見えてこないのも事実である。


# by nihonkokusai | 2019-03-15 10:11
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
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