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景気の減速感を示唆する日銀短観

 4月1日の朝、日銀短観が発表された。テレビなどのメディアでは新元号の発表を控えて扱いが小さいが、今回の日銀短観の内容は注意すべきものとなっていた。

 最も注目される大企業・製造業の企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、プラス12となった。前回2018年12月調査のプラス19に比べて7ポイントの悪化となった。悪化は2四半期ぶり。7ポイントの悪化は12年12月の9ポイントの悪化以来となる。先行きについてはプラス8と、さらに4ポイントの悪化を見込んでいる。

 製造業の中堅企業のDIはプラス7と前回のプラス17から10ポイントもの悪化となり、先行きはプラス3と4ポイントの悪化を見込む。

 製造業の中小企業のDIはプラス6と前回の14ポイントから8ポイントの悪化となり、先行きはマイナス2と8ポイントの悪化となりマイナスに転ずるとの見込みとなった。

 ちなみに業況判断DIとは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値となる。

 非製造業をみてみると、大企業は足元プラス21とプラス3の悪化、先行きは1ポイントの悪化を見込む。中堅企業は足元プラス18と1ポイントの改善、先行きは6ポイントの悪化を見込む。中小企業は足元プラス12と1ポイントの改善、先行きは7ポイントの悪化を見込む。

 2019年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業・製造業で1ドル108円87銭としている。ドル円の4月1日の10時過ぎ現在のドル円は110円後半となっており、まだ若干の余裕はあるものの、想定レートを割り込む可能性もありうるか。

 日経平均と日銀短観のヘッドラインとなっている大企業・製造業DIは、トレンド変換時などが一致することも多い。しかし、今回については日経平均株価は昨年12月に目先の底を打って回復基調になっている。しかし、短観をみるとすでにピークアウトしたことがうかがえる。

 欧州や中国の景気減速は明らかであり、米国も減速感を強めるのか。米中の通商交渉の行方についての期待感も強いが、仮に関税競争が収まったとしても、それで景気が回復してくるのか、さらにFRBやECBが正常化にブレーキを掛けたことで景気が改善するのか、このあたりも不透明というか過剰なに期待も禁物のように思われる。しかし、景気が悪化することまでは、まだ予想できないないことも確かであろう。

 株価の反発基調がトレンドとして正しかったのか、それとも短観の示すトレンドが正しいのか。次回の短観発表時あたりまでには、ある程度明らかになってくるとみられるが、いまのところどちらが正しいのかは見極めづらい。


# by nihonkokusai | 2019-04-02 09:47 | 景気物価動向

債券市場の平成の30年間を振り返る

 平成元年は1989年。この年に消費税導入され、年末に日経平均は38915円の過去最高値を記録した。つまりここからバブル崩壊が始まり、物価は低迷し金利も低下基調となる。  

 1990年に東京証券取引所に先物オプションが上場される。1991年に10年債入札結果が即日発表となる。1994年に国債資金同時受渡システム(国債DVPシステム)の稼働を開始。1995年に日銀は短期市場金利の誘導を重要な金融政策運営手段と明確に位置付けた。1996年には国債取引(割引短期国債を除く)の決済方式を5・10日決済からT+7のローリング決済へ移行。1997年には消費税を5%に引き上げ。国債取引の決済方式をT+3に。

 1998年に金融政策決定会合が開始。そして改正日本銀行法施行。金融システム不安などから長期金利が初の1%割れに。ムーディーズは日本国債をAaaからAa1に引き下げた。年末には運用部ショックと呼ばれる債券市場の急落が発生。これに対処するため1999年に日銀はゼロ金利政策を開始。同年に政府短期証券(FB)と割引短期国債(TB)1年物の公募入札開始。30年利付国債の発行が開始された。

 2000年に5年利付国債発行、15年変動利付国債の公募入札が開始。日銀はゼロ金利政策を解除。国債市場懇談会の開催が開始。

 2001年に日銀により即時グロス決済(RTGS)化開始。日銀は公定歩合をロンバート化した。さらに無担保翌日物コールレートから日銀当座預金残高に操作目標を変更(量的緩和政策)。2002年には10年国債入札で初の札割れが発生。

 2003年には国債ペーパレス化、ストリップス債の導入、国債バイバック、個人向け国債発行などがスタート。2004年に国債WI(入札前取引)、物価連動国債の発行が開始。国債市場特別参加者制度がスタート。

 2005年にペイオフ全面解禁。日銀、地域経済報告(さくらレポ―ト)の公表開始。国債清算機関の業務開始。

 2006年に日銀は量的緩和政策を解除。2007年にパリバショック発生、40年国債発行開始。2008年にリーマンショック。2009年に日銀による残存期間による区分別の国債買入れ実施。2010年にギリシャ・ショックによる欧州の信用不安が発生。2012年に国債取引の決済期間がT+3からT+2に短縮された。

 2013年日銀は2%の物価目標の導入を決定。さらに量的・質的金融緩和を導入。2014年に日銀は量的・質的緩和の拡大を決定。2016年に日銀はマイナス金利付き量的・質的緩和の導入決定。日本の長期金利が初のマイナスに。長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定。

 2018年に国債取引の決済方式はT+1となった。


# by nihonkokusai | 2019-04-01 09:59

日米欧の長期金利はどこまで低下するのか

 ECBのドラギ総裁は、必要なら利上げをさらに遅らせる用意があると述べたことに加え、マイナス金利の副作用を和らげる措置を検討する方針を示した。これはつまり金融緩和策を継続させるための措置とも受け取られ、27日のドイツの10年債利回りはマイナス0.08%に低下した。このドイツの10年債利回りの低下もあって、27日の米10年債利回りも2.3%台まで低下した。そして、日本の10年債利回りも28日にマイナス0.1%に低下した。まるでドイツと日本の長期金利が競い合うように低下している。

 米国の10年債利回りは10月に3.2%台まで上昇したあと低下基調となった。米10年債利回りのチャートからは、上昇トレンドが崩れた格好となった。チャートから見ての次の節目は2.05%あたり、つまり2%が大きな壁となることが予想される。現状は上昇トレンドのスタート地点ともいえる2016年7月の1.3%台あたりまで低下することは考えづらいが、ないとも言えない。

 すでにドイツの10年債利回りはマイナス0.1%に接近している。これは2016年9月あたり以来の水準となっている。ちなみにドイツの10年債利回りは2016年7月にマイナス0.18%あたりまで低下した。

 日本の10年債利回りは、2016年9月の長短金利操作付き量的・質的緩和の際に設定されたとされる長期金利のレンジ±0.1%の下限に到達した。ただし日銀は昨年7月に長期金利の許容範囲を拡大させ、±0.2%としている。これにより、マイナス0.1%は通過点との見方もできる。しかし、来年度の国債発行の減額に合わせる格好で国債買入の金額なりを修正してくる可能性はありうるか。

 チャートからみると日本の10年債利回りはマイナス0.1%という心理的な壁を突破するとなれば、2016年7月28日につけたマイナス0.29%あたりが次の節目となる。もし日本の10年債利回りがマイナス0.2%を下回ってきた際に日銀は動くのか、動くとすれば何をしてくるのか、それを市場が試しにくることも環境次第ではありうるか。


# by nihonkokusai | 2019-03-30 11:10 | 債券市場

ECBのドラギ総裁は利上げをいったん封印か

 ECBのドラギ総裁はフランクフルトで開かれた会議において、必要ならば利上げをさらに遅らせる用意があると述べた。ECBは3月の理事会で、想定する利上げ時期を今年の夏以降から来年に先延ばししている。

 今回の発言はECBは利上げをいったん封印することによって、現在の緩和効果を維持させることを狙ったものとみられる。ただし、さらなる緩和を示唆したわけではない。

 さらにドラギ総裁は、「必要ならばマイナス金利の副作用を緩和しつつ、それが経済にもたらす好ましい影響を維持できる措置を検討する必要がある。とはいっても、銀行の低い収益力は、マイナス金利の避けられない代償ではない」とも語った(ブルームバーク)。

 日本でも2016年に導入された日銀のマイナス金利政策に対して。金融業界から批判的な意見が出てきた。その結果、長期金利とのスプレッドをつけることも意識されての長短金利操作付き量的・質的緩和というかたちで調整を行っていた。

 ドラギ総裁は銀行の低い収益力は、マイナス金利の避けられない代償ではないと言うが、マイナス金利が銀行の収益力を削いでいることは確かであろう。ただし、ドラギ総裁はマイナス金利の副作用に対する具体的な軽減策を示したわけではない。手っ取り早いのはマイナス金利をやめることだが、日銀同様にそれはいろいろあって無理ということなのであろうか。

 ドラギ総裁の発言を受けて、ドイツなどのユーロ圏の国債は買い進まれた。ここで注意すべきは、FRBもそうであるが、あくまで正常化に向けた動きにブレーキを掛けただけであるという点である。正常化ではなく異常化に向けていまだに突っ走っている日銀に、さらにアクセルを吹かせるべきではという意見は、どうなのであろうか。


# by nihonkokusai | 2019-03-29 09:53 | 中央銀行

債券先物の相場操縦でシティに課徴金が課せられる

 証券取引等監視委員会は25日、日本国債の先物取引で相場操縦をしたとして米金融大手シティグループに1億3337万円の課徴金納付を命じるよう金融庁に勧告する方針を固めたと日経新聞などが報じた。

 証券取引等監視委員会のサイトには「シティグループ・グローバル・マーケッツ・リミテッドによる長期国債先物に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について」がアップされており、ここに経緯等が詳しく記載されている。

「シティグループ・グローバル・マーケッツ・リミテッドによる長期国債先物に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について」

 昨年7月29日に証券取引等監視委員会は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社に対し、長期国債先物に係る相場操縦を行ったとして、2億1837万円の課徴金納付を命じるよう金融庁に勧告したと発表した。これが証券会社による長期国債先物を対象にした相場操縦は初めてとなる。また、デリバティブ(金融派生商品)に限ると、過去最大の課徴金となった。

 今回はこれに続くものとなる。上記の証券取引等監視委員会のサイトによると、2018年10月26日午後7時45分頃から同月27日午前1時11分頃までの間及び同月29日午後7時16分頃から同月30日午前1時2分頃までの間に行われたようである。

 手元のデータによると2018年10月26日と29日の長期国債先物のナイトセッションは1.1兆円の売買高があり、これはナイトセッションの売買高としてはかなり多く、値動きも10銭以上となっていた。そもそもナイトセッションは日中の取引に比べ参加者は少なく、売買高は通常は5000億円程度できれば多いほう。さらに何かしらの材料でもない限り10銭以上動くことはまれである。2018年10月26日と29日には特に大きな材料はなかったものの、26日の日中から出来高が膨らんでいたことも確かであった。

 私も長期国債先物(債券先物)のディーラーの経験が15年程度あったが、債券村と呼ばれるように日本の債券市場はプロの機関投資家同士が相場勘を競い合うような場所で、個人投資家などの入り混む余地は少ない。このため、債券先物での見せ玉など私がディーラー当時(17年前あたり)は日常茶飯事であった。この見せ玉に対しては、何をしているのだといつも思っていたものの、プロ同士の売買の場でもあるためなのか、それはやっても良いといった暗黙の了解があったようにも感じられた(個人の感想です)。

 とはいえ証券取引等監視委員会のサイトに詳しい経緯が示されているように、株式市場と同様の見せ玉については、相場操縦と見なされてもいたしかたない。そして、三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社にすでに課徴金が課せられた事例もわかっていたはずなので、今回の関係者は少し配慮がなさすぎた。ちなみに今回の相場操縦で得た利益は約275万円だったそうである。275万円を得るために見せ玉をして1億3000万円も会社が支払うというたいへん馬鹿らしい商いをしたといえる。

 もちろん日銀による異常な金融緩和政策によって国債市場が機能不全に陥っており、債券市場での収益チャンスは特にディーラーにとってはほとんど閉ざされてしまっているため、たいへんな状況にいることは理解できる。このため致し方なく見せ玉をしてしまったと言えなくもないかもしれない。ただし、私の個人的な意見を言わせてもらえば、見せ玉をしている人達はそれで楽しんでいるようにすら思えていた。今回も見せ玉やそれによる値動きで、HFTなども誘い込ませることで、多少なりの稼ぎを狙っていたのかもしれない。いずれにしてもそれは、いくら日銀のせいで相場が動かないとしても、やはりやってはいけないことである。あらたに課徴金が課されることがないよう今後、債券先物での見せ玉は極力、控えるべきであろう(そもそもやってはいけない)。


# by nihonkokusai | 2019-03-28 10:04 | 債券市場
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