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米長期金利は低迷し、3%台回復は遠のくのか

 米労働省が6日に発表した6月の雇用統計では、非農業雇用者数が前月比21.3万人増と予想の19.5万人増を上回った。失業率は18年ぶりの低水準である前月の3.8%から4.0%に上昇したが、雇用環境の改善により、多くの人が職を探し始めたことが要因となった。1時間当たりの賃金は前月から0.2%上昇と5月の0.3%から伸びがやや鈍化した。

 6日に米政府は340億ドル規模の中国製品に対する追加関税を予定通り発動し、中国商務省はその直後に声明を発表し、直ちに対抗せざるを得ないと表明し同額相当の米製品に関税を課すことを示唆した。

 貿易戦争が拡大してきたわけだが、6日の米国株式市場はこれについては比較的冷静に反応したようである。これはすでに予定されていたことで株価にはある程度織り込まれていたためとみられる。市場は予想されていたことについては、噂で売って事実で買い戻すような動きを示す。今後注意すべきは、市場の予想を超えて貿易戦争が拡大するようなことであるが、これについては予想も難しい。

 6日の米国債券市場では、米雇用統計を受けての米景気拡大が意識されての株高を嫌気したものの、賃金の伸び率鈍化により、インフレ拡大の懸念が後退したことで、むしろ買われて米10年債利回りは2.82%と前日の2.83%から小幅低下していた。

 米10年債利回りの推移をみると、5月半ばに一時3%台に乗せてから、その後低下して現在は2.8%台にいる。米長期金利の低下の要因としては、米国と中国など貿易相手国に対する関税の発動とそれに対する対抗措置による貿易摩擦拡大の懸念があった。また、イタリアでの五つ星運動と同盟による連立政権が発足も懸念材料とされた。

 6月13日のFOMCでは予想通り、政策金利を年1.50~1.75%から1.75~2.00%に引き上げられた。また、今年の利上げ回数の見通しは、これまでの3回から計4回となった。しかし、これによる米長期金利への影響も限定的であった。

 米商務省が6月29日に発表した5月の個人消費支出(PCE)価格指数で、FRBの物価の目安としている、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年同月2.0%の上昇となり、6年ぶりにFRBの物価目標である2%を達成した。しかし、これに対しての米長期金利の反応も限られていた。

 さらに物価に影響を与える原油価格もあらためて上昇しつつあり、7月に入りWTI先物8月限は一時75ドル台に上昇した。しかし、これによる米債への影響もいまのところ限定的となっていた。

 トランプ政権がさらにいろいろと仕掛けてくる可能性もあり、先行きが不透明な分、米長期金利の戻りが抑制されている面はあるかもしれないが、それにしても米長期金利の戻りは鈍く、それはドル円の上値も重くさせている。

 もう少し様子を見る必要はあるものの、米長期金利の低迷はいつまで続くのか。3%への戻りは今後、かなり厳しくなるのか。もし米長期金利がこのままの状態が続き、FRBの利上げが継続すると、さらに米国の長短金利のスプレッドは縮小することになる。


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# by nihonkokusai | 2018-07-10 09:38 | 債券市場 | Comments(0)

日本のキャッシュレス化に必要なのは、仮想通貨などではなくデビット決済の普及か

 ビットコインなど仮想通貨が出現し、ネット上で生み出された仮想通貨が法定通貨に置き換わり、これにより日本でもキャッシュレス社会が到来するのではとの見方が出ていた。しかし、仮想通貨の価格が乱高下したことにより通貨としての機能が疑問視された上に、巨額の不正流出事件などもあり、それが法定通貨に置き換わる可能性はないとみた方が良い。

 ケネス・S・ロゴフの「現金の呪い」などから、日本でも高額紙幣を廃止すべきとの声も出ていた。Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせたFintechという造語も生み出され、日本の高額紙幣廃止議論にIT技術を絡めて、キャッシュレス化を進めるべき議論と仮想通貨への期待が混ざり合い、日本でどのようにしてキャッシュレス化を進めるべきかという議論が置き去りにされてしまった感がある。

 そもそも高額紙幣廃止議論とキャッシュレス化は特に日本では議論の本質が異なる。犯罪防止のために日本で高額紙幣を廃止すべきという議論はロゴフ氏の著書にもあったが、あまりに日本の現金利用が多いのは犯罪に使われているに違いないとの認識が前提にあったように思う。これについては税金等に絡んでまったくないとは言い切れないが、たとえば日本円が巨額のマネーロンダリングに利用されているようなことは考えづらい。

 ここですべき議論は、日本が海外に比べて特に小額取引のキャッシュレス化が遅れているように見えるが、それは何故なのかという点ではなかろうか。そもそもキャッシュレス化は店舗側を含めて使う人達に利便性はあるのかと言う議論から始めなければならないと思う。

 なぜ日本で現金利用比率が高いのかについては、日本円への信頼度の高さ、ATMなどを使った利便性の高さ、偽札の少なさ、治安の良さなど挙げられているが、日銀を中心に現金を使える高度のインフラが整備されているためである。

 中国などが現金を飛び越えてスマホ決済の普及が拡大したのは、自国通貨の使いにくさがむしろ背景にあった。一般電話の普及が遅れていたところが、家庭電話でなく携帯電話が一気に普及したようなものである。

 それでは日本でもキャッシュレス化は必要なのかと問われれば、費用の問題も含めて必要だと思われる。ただし、キャッシュレス化の浸透については国ごとに理由も異なる事は確かである。それでは何が日本でのキャッシュレス化を阻んでいるのか。ここに面白い事例がある。オランダである。ユーロ圏ではスウェーデンなどの北欧に次いでキャッシュレス化が進んでいる。

 オランダも日本と同様にデビット決済の普及が進んでいなかった。ちなみにデビット決済とは自分の銀行口座に紐付けされたカードなどで、口座の資金を店舗での支払いに充てることができるものである。

 オランダではデビット決済を普及させるため、銀行間の提携が図られ、さらに特に店舗側で、現金利用よりもデビット決済の方が費用が軽減できることを中央銀行での議論などを通じて広めた。これらをきっかけに急速にデビット決済の普及が進み、それがオランダでのキャッシュレス化普及の原動力となった。

 日銀はレポートで日本においてデビットカードの利用が広まっていない理由として次のような説明をしていた。

 「米国では銀行業界が、大量の小切手処理に伴うコスト削減の観点から、小切手を代替するデビットカードの普及に努めたのに対し、日本ではもともと小口決済において小切手の利用が普及していなかったことや、クレジットカードの発行に伴う審査が諸外国に比べ厳しくなく、比較的多くの人々がクレジットカードを持てること、さらには、このようなクレジットカードが利用される際、一回払いが選択される場合が多く、機能的にはもともとデビットカードに類似した使われ方がなされていることなどが挙げられる。」(日銀レポートより)

 たしかにこのような理由もあろうが、そもそもデビット決済に馴染みがないことも大きい。中国やスウェーデン、さらに韓国のキャッシュレス化をみても、そのキーとなっているのがデビット決済を主体とした銀行と紐付けされた決済となっている。日本でスマホ決済を主体としてキャッシュレス化を浸透させるためには、デビット決済のような銀行と紐付けされた決済が必要になる。

 そのためにはオランダの事例のように銀行間の提携と、店舗側に対してデビット決済が費用面などで有利なことを認識してもらうこと、その有利さを出すためには多種多様の方式ではなく、単一の決済方式に集約することなどが求められるのではなかろうか。

 スマホ決済などの利用については、その利用状況そのものが利用価値の大きな情報データとなりうることで、このあたりも注意しながら、政府や中央銀行などが先導役となり、進めて行く必要もあるのではなかろうか。


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# by nihonkokusai | 2018-07-09 15:40 | 金融 | Comments(0)

物価が低迷している謎を解き明かせるのか

 日銀は7月30、31日に開催される金融政策決定会合で、物価動向を再検証する。雨宮副総裁は朝日新聞のインタビューで、「もう一度物価が上がりにくい理由、物価観の形成の仕方などを点検する。物価動向について何が起きているのかをきちんと詰める」と語っていた。今回は検証ではなく点検という位置づけである。

 このインタビューで雨宮副総裁は、物価の伸び悩みは先進国に共通するとし、「『アマゾン・エフェクト』と呼ばれるネット販売の物価引き下げ効果」などを理由に挙げた。日本では人手不足でも賃上げは非正規雇用が中心で、正規雇用では雇用安定を重視する傾向が強いとも指摘。「労働需給の引き締まりが賃金上昇に及ぶのに時間がかかる」と述べていた。

 日銀はアマゾンなどのインターネット通販の拡大に伴って、消費者物価指数(除く生鮮食品、エネルギー)の伸び率が0.1~0.2%程度押し下げられるとする試算結果を公表している。ネット通販との競合度が高いとみられる日用品や衣類には、0.3%程度の押し下げ効果があるとの結果も出している。

 日経新聞の記事によるとドラッグストアーが医薬品だけでなく食品でも安値をけん引していることで、消費者物価指数を0.1%ほど押し下げているとの試算も出ていた。

 企業業績が上向いているにも関わらず、それが賃上げには回りづらくなっていることも確かで、例えば日銀が27日に発表した資金循環統計(速報)によると、2017年度の民間企業(金融を除く)の資金余剰が27兆6672億円となり、2016年度から10兆円あまり増え、7年ぶりの高水準となった(日経新聞)。

 世界経済の拡大基調が寄与して国内企業の業績も伸びてはいるものの、余剰資金は賃上げや設備投資には向かわず、今後のリスクも意識してか内部にため込まれている。日本企業は自力で収益を上げているというよりも、欧米を主体とする景気拡大という他力によって、業績が向上していることもいえることで、無理に勝負に出ることはせずに、国内でのポール回しに徹しているようにもみえる。

 これらの状況を打破するために、果たして日銀の異次元緩和はどれだけ有効なのか。そして、グローバルスタンダードとされる物価目標の2%という数字は適切なのかも本来であれば、再検証する必要はないのか。

 日銀が2013年4月に異次元緩和を決定してからの物価の動向も検証する必要があろう。日銀の緩和策が強力に物価に働きかけるのであれば、他の要因によってそれが阻害されることは考えづらい。2014年4月の消費増税が物価低迷の要因と指摘する声も出ているが、これについても検証してほしいところではある。


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# by nihonkokusai | 2018-07-08 15:07 | 景気物価動向 | Comments(0)

日銀の異次元緩和は神の領域を侵したものなのか

 日銀の原田泰審議委員は石川県での金融経済懇談会における挨拶で、金融政策に対する批判への若干の反論として次のように説明を行っていた。

 「その中で、QQEはインパール作戦のようなもので、一刻も早く撤退すべきだという方もいます。インパール作戦とは、1944年3月から7月初旬まで展開された、ビルマから進軍してインド北東部の都市インパール攻略を目指した作戦のことです。これは莫大な犠牲を出して惨憺たる失敗に終わり、無謀な作戦の代名詞としてしばしば引用されています。途中食糧はなく、餓死者を続出し、敵戦闘機に襲撃され、マラリアに罹病し、参加人員10万人のうち戦死者3万人、戦傷および戦病のため後送されたもの2万、残存兵力5万のうち半分以上も病人という状況に陥り、日本軍は壊滅的打撃を受けました。しかし、QQEはほとんどの経済指標を改善させているのです。QQEを日本軍のインパール作戦と比べるのは比喩のつかい方として誤りだと思います。」

 若干の反論としているが、インパール作戦の説明が若干ではない。それはさておき、QQEはほとんどの経済指標を改善させているのです、との説明を具体的にほしいところ。QQEがどのような経路を通じて日本の景気に良い影響を与えているのか。肝心の物価目標が達成されていないのに、そこを経由せずに景気に好影響を与えたのは何故なのか。日銀が行うべきは物価を安定させて景気拡大に寄与することであれば、物価は2%という数字に固執せずにインパール作戦とまで比喩された非常時の異次元緩和は、景気の回復を確認すれば、修正しても良いということになるのではないのか。

 そして、QQEに対する認知的不協和については次のように原田委員は述べていた。

 「QQEで経済は良くならないという自分の強い認識に対し、現実に経済が改善しているという事実を突き付けられたとき、その事実を否定、または、今は良くても将来必ず悪化すると主張して、不快感を軽減しようとするわけです。」

 以前も指摘したが、これはむしろ次のように言い換えられるのではなかろうか。

 「QQEで物価が上がるという自分の強い認識に対し、現実に物価が低迷しているという事実を突き付けられたとき、その事実を否定、または、今は低迷していても将来必ず上がると主張して、不快感を軽減しようとするわけです」

 さらに原田委員は次のようにも述べていた。

 「金融緩和政策の手段そのものを否定しようという心理もあるように思います。大胆な金融緩和は危険であり、そのような手段を取るべきではないというのです。人間は、太古からこのような感情をいだいていたのかもしれません。神話は、神に挑戦した人間たちの悲劇を繰り返し描いています。バベルの塔、太陽に近づいたイカロス、土で作られ、命を与えられたゴーレムが破滅を導いた神話です。QQEに反対する人々は、QQEも神の領域を侵すものだと言いたいのかもしれません。」

 日銀が2013年4月以降に行っている政策は、これまでの緩和策が慎重すぎるため、禁じ手とされた実質的な財政ファイナンスを行うことによって物価を上昇させようとするものともいえる。財政法で禁じられたものを行うにあたっては、日銀が禁忌を犯したとの見方はできる。しかし、それを例えるのにバベルの塔、イカロス、ゴーレムを持ち出すというのもなかなか大胆である。

 「また、歌舞伎の雷神不動北山桜(なるかみふどうきたやまざくら)には、朝廷が、邪悪な心を持った早雲(はやくも)王子を皇位から遠ざけるため、鳴神(なるかみ)上人に寺院建立を約束に、本来は女子として生まれるはずの子を超人的な力―変成男子(へんじょうなんし)の行法―により世継ぎの皇子として誕生させたという話があります。ところが、朝廷は、上人は自然の摂理を侵したとして、寺院建立の約束を反故にしてしまいます。しかし、QQEは自然の摂理を侵すような方策でしょうか。」

 QQEは自然の摂理を侵すような方策かどうかはさておき、財政ファイナンスやマネタイゼーションを何故、各国は禁じているのかは過去の歴史をみれば明らかとなる。ただし、神話の時代に遡るほどのものではない。

 「ローマに税金を払うべきか否かを問われたイエスは、銀貨に皇帝の肖像が彫られていることを人々に確認させた後に、「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返せ」と言われました。貨幣に関わる金融政策は、神のものではなく人間のものです。人間のものであれば、理論と事実に基づく議論を避けるべきではありません。」

 貨幣に関わる金融政策は、神のものではなく人間のものであることには異論はない。人間のものであれば、理論と事実に基づく議論を避けるべきではないことも全くもって同意である。そうであれば、神の領域を侵すとまで比喩された異次元緩和を行うことで、理論的には物価は上がると主張されていた方々に対しては、なぜ物価は上がらないという事実が起きているのかを改めて問うてみたい。


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# by nihonkokusai | 2018-07-07 08:05 | 日銀 | Comments(0)

中国でのスマホ決済事情からみた日本のキャッシュレス化に必要なこと

 中国では支付宝(アリペイ)などスマホ決済を手掛ける事業者に対し、利用者が前払いしたお金のすべてを、中国人民銀行(中央銀行)に預けるよう義務づけると4日の日経新聞が報じた。アリババ集団とスマホ決済市場を二分する騰訊控股(テンセント)の両社にとって影響は避けられない見通しとなった。

 これは何が問題となっているのか。アリババ集団のAlipay(支付宝)とテンセントのWeChat Pay(財付通)が中国でのスマホ決済の2強とされる。中国でのスマホ決済の普及はこの両社が競って拡がった面もあるが、それぞれ銀行ではない。それではどのような形式で両社は決済を行っているのか。

 アリババは電子商取引サイトなどを通じて多数のユーザーを獲得し、中国版のLINEとされるメッセンジャーサービスのWeChatも中国で高いシェアを誇っていたが、こちらもネットを通じた電子商取引を行っていた。

 2002年に金融企業「銀聯」が設立されたが、これは中国の銀行カード産業の発展を目的としている。クレジットカードというよりも多くはデビットカードとして発行されている。銀聯は店舗に銀聯カードが使えるように、POS連動可能なカード読取機を貸し出し、カードは急速に普及することになる。これにより中国でのキャッシュレス化が進むわけだが、中国政府はさらに第三者決済機関に精算業務への参入を認可することになる。

 これを受けてアリババ集団のAlipayとテンセントのWeChat Payが店舗での決済業務に進出することができるようになった。しかも銀行と紐付けすることによって登録したカードの口座から即座に引き落とすことが可能となった。さらにプリペイドカードのようにアプリ内に事前にチャージした金額から支払うことが可能となったのである。今回、問題となったのが後者のチャージである。

 アリババやテンセントは、前払い金を預かっても利用者への利息はゼロである一方、滞留資金を銀行に預けるなどして金利収入を得ていた。アリババなどが受け取っている金利は市場推定で1%台半ばとされる。滞留資金は現時点で5000億元(約8兆3000億円強)規模にのぼり、年換算で1000億円超の金利収入を得ている計算となる。これが2019年以降、この利息収入はほぼゼロになる見込み(前述の日経新聞の記事より)。

 AlipayやWeChat Payを利用する際に、店舗側が支払う手数料は原則ゼロとされているようである。これは滞留資金による利息収入などにより利益を挙げていたためとみられ、今回の措置によりこのビジネスモデルが崩れる可能性がある。

 ちなみに日本ですでに行われているスマホ決済については、決済に関しては主にクレジットカードが使われている。これでは精算から決済に至るまで数社が絡むことになり、費用負担も大きくなり、店舗側の負担も大きくなってしまうことになる。日本でのキャッシュレス化を普及させるにはスマホ決済が鍵となりそうだが、それには店舗側の費用負担の軽減も課題となる。

 スウェーデンのスマホ決済のSWISHは携帯電話の電話番号とBank IDと呼ばれる番号を利用することにより銀行と紐づけされることによって決済が可能となる。今後の日本でのスマホ決済の普及については、この銀行との紐付けがひとつのポイントとなるのではなかろうか。ただし、銀行と紐付けされることについては、どうして日本ではデビットカードの普及が進まなかったのかということも検討課題となりそうである。


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# by nihonkokusai | 2018-07-06 09:50 | 金融 | Comments(0)

住宅ローンは変動型にすべきか固定型にすべきか、それは日銀次第!?

 住宅ローンを変動型金利で借りる人が急速に増えていると3日に日経新聞が伝えた。住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)によるアンケート調査によると、変動型の割合が固定型を5年ぶりに上回ったそうである。

 このアンケート調査によると、変動型金利で借りている人の割合は、10年前は2~3割だったが、その後2011~2012年度に5割を上回った。しかし、日銀が異次元緩和に踏み込んだ2013年4月以降は物価上昇に伴う将来の利上げを警戒する心理が働き、固定型の金利で借りる人が増えた(日経新聞)。ところがここにきて再び変動型が増加してきた。それは何故なのか。

 お金を借りる際に固定金利タイプにするか、変動金利タイプにするのか。特に住宅ローンのように長期間にわたり、個人にとっては巨額の資金を借り入れる際には、なかなか悩ましいところとなる。これは資金を貸すと言う点で裏返しとなるものの、個人向け国債を購入する際に5年や3年の固定金利タイプにするのか、10年の変動タイプにするのかという選択と似たところがある。

 原則論で言えば金利が低いときには、将来の金利上昇に備えて固定タイプで借りるということになる。しかし、住宅ローンを借りるタイミングを金利の動向に合わせてというのは難しいため、ローンを組んで住宅を建てるタイミングでの将来の金利動向を予測しての選択となる。

 変動型金利で借りている人の割合が10年前は2~3割だったが、その後2011~2012年度に5割を上回った。これは世界的な経済金融危機が影響したためか。リーマン・ショックや欧州の信用不安を受け、欧米の中央銀行や日銀も含め、強力な金融緩和政策を推し進めることになった。日本の長期金利は低下し1%を割り込み、日銀の政策金利はほぼゼロ%近くに低下した。住宅ローンの変動タイプは主に短期金利に連動することから、固定金利より変動金利の金利の低さとともに、金融不安が簡単には解消しないとの見方も変動タイプを選択させたのではないかと思われる。

 しかしその後、世界的なリスクの後退局面で、日銀は2013年4月に異次元緩和を決定し、物価を上げようとする姿勢を強めてきた。急激な円高調整と世界的なリスク後退のタイミングでもあったことで株価も大きく戻してきた。このタイミングでは、債券市場関係者はさておいて、一般には物価と金利の先高感が強まっていたとしてもおかしくはない。現実に消費者物価指数はプラスに転じるなどしたこともあり、このタイミングでは金利の低いうちに固定金利で借りようとの動きが強まったと思われる。

 しかし、日銀が結果として長短金利操作付き量的・質的緩和という各種合わせ技で金融緩和策を講じても物価はいっこうに上がらず、短期金利はマイナスとなり、これがいつまで続くのか検討がつかなくなっているのが現状となった、そうなると現在の日銀がそう簡単に政策金利を引き上げることはできないとの認識も強まる。将来の金利上昇の可能性はあるかもしれないが、当面は低い変動金利で借りていても問題はないのではとの認識も働いて、再び変動金利型が増えてきているのではなかろうか。

 日経新聞はもう一つの要因としてローンの借り換えが増えていることも指摘している。ローンの借り換えとなれば期間はさほど長くはなく、変動で借りても期間による金利上昇リスクは低いとの認識か。

 それでは現状、住宅ローンは固定で借りた方が良いのか、変動で借りた方が良いのか。これは日銀次第ということになる。いまの日銀が行っている金融政策は、長短金利操作付き量的・質的緩和であり、主な変動金利に影響を与える短期金利と、主な固定金利に影響を与える長期金利の両方を操作しているためである。

 いったい日銀はこの政策をいつまで続けるのか。それは政治の問題とも絡んでくることもあり、かなり不透明感も強く、現状は多少の微調整はあっても、金利を大きく引き上げることはできないとの見方が強い。それでも10年、20年先の金利まで見通せるわけではなく、将来的な金利上昇リスクを考慮すれば、固定の方が安心ではある。

 ちなみに私は個人向け国債について固定タイプと変動タイプのどちらが良いのかという選択について、それが発行された当初から、将来の長期金利の上昇を期待して変動タイプが良いと答えてきた。しかし、結果として長期金利の上昇は限られ、固定タイプの方が利息面では有利となったケースが多かったのではないかと思われる。つまり裏返すと、15年あたり前からみると住宅ローンは変動タイプで借りた方が良かったのではということになる。

 しかし、現状の長短金利差は、ローン金利なので短期のマイナスはありえないとして、0.1%少々となり、微々たる差である。将来長い目でみると、金利が上昇する可能性は十分ありうることを考慮すれば、固定タイプの方が安心であるとは思う。これも結局は日銀次第ということになるのだが。


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# by nihonkokusai | 2018-07-05 09:54 | 日銀 | Comments(0)

マネタリーベースの月末残が500兆円超え、さらに増やす意味はあるのか

 7月3日に日銀が発表した6月のマネタリーベースによると、6月の月末残のマネタリーベースが502兆9173億円と初めて500兆円を超えてきた。

 2013年4月に日銀は量的・質的緩和政策、いわゆる異次元緩和を決定した。この際にマネタリーベース・コントロールを採用し、マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍に拡大するなどして、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するとした。

 量的・質的緩和政策を決定した2013年4月末のマネタリーベースの月末残は155兆2803億円となっていた。その2年後の2015年4月末のマネタリーベースは305兆8771億円とほぼ2倍近くなっていた。消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)でみると、2013年4月が前年比マイナス0.4%、2015年4月が同ゼロ%となっていた。

 その後もマネタリーベースは増加し続けるものの、コアCPIは再び前年比マイナスとなった。2016年1月に日銀はマイナス金利付き量的・質的緩和を導入、同年9月に長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定した。

 マネタリーベースは2016年6月に400兆円を超えてきた。この月のコアCPIは前年比マイナス0.4%となった。

 そして2018年7月にマネタリーベースの月末残が500兆円超えてきた。コアCPIは2018年2月に前年比1.0%と一時1%台に乗せてきたものの、ここにきてプラス0.7%とやや低迷している。

 これを見るまでもなく、マネタリーベースを急激に増加させても消費者物価を押し上げる効果があるようには見えない。

 日銀は2016年9月に決定した長短金利操作付き量的・質的金融緩和により、操作目標を量から再び金利に戻している。これにより長期国債の買入ペースをやや落としてきてはいるものの、大量の国債などの買入は続けており、その結果としてマネタリーベースも増え続けている。

 大量の国債買入とマイナス金利政策により金融機関の収益を圧迫するばかりでなく、債券市場の機能も急激に低下しつつある。見えない副作用が蓄積されるなかで、マネタリーベースをここから更に増加させる意味があるのか。あらためて問う必要もあるのではなかろうか。


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# by nihonkokusai | 2018-07-04 09:33 | 日銀 | Comments(0)

米国は今頃になって物価目標を達成

 米商務省が29日に発表した5月の個人消費支出(PCE)価格指数は前年同月比で2.3%の上昇となり、2012年3月以来6年2か月ぶりの大幅な伸びとなった。

 そして米国の中央銀行であるFRBが物価の目安としている、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年同月2.0%の上昇となり、6年ぶりにFRBの物価目標である2%を達成した。

 2012年1月25日のFOMCの終了後に発表された「長期目標と政策戦略」という声明文において、FRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%とした。

 米商務省が発表している個人所得、個人消費支出(PCE)、PCEデフレーターは米国の経済指標の中にあって、注目されるもののひとつである。

 これらは米国の個人の所得と消費について調査した指標であるが、このうち個人所得とは、社会保険料を控除し実際に個人が受け取った所得となる。個人消費支出とは1か月間に実際に米国の個人が消費支出した金額について集計したものである。そして、名目個人消費支出(名目PCE)を実質個人消費支出(実質PCE)で割ったものが、個人消費支出(PCE)物価指数もしくはPCEデフレーターと呼ばれる。

 2012年1月にFRBが物価目標目安としてコアPCEデフレーターの2%という数字を置いた後、コアPCEデフレーターは同年3月に前年比2.0%と目標値をつけたが、その後は2%を下回る月が続き、2013年3月に前年比1.1%となった。そしてやっとここにきてFRBの物価の目安が達成されたということになる。

 目安とか目標という表現が混在しているが、これは日銀が掲げた物価目標とは異なり、おおよその目安といったもので、その分柔軟性があり、このため目標は達成していなくても、FRBは正常化を進めてきたと言えるのである。

 FRBは2014年にテーパリングを終了させて、2015年12月から利上げを開始した。FRBの金融政策の推移とコアPCEデフレーターの推移をみてもかならずしもリンクしていない。FRBが正常化路線を進めるほどに、世界的なリスクが後退し、景気は拡大、それによって物価も回復してきたとみた方が良いのではかろうか。

 これはFRBの金融政策の効果がない、と言っているわけではない。リーマン・ショックや欧州の信用リスクに対する金融市場のリスクを後退させるためには、FRBの大胆な緩和策がそれなりの効果があったことも確かである。

 ただし、2%という絶対的な物価目標を政府の意向により掲げさせられ、世界的なリスク後退局面期にも関わらず、異次元緩和を実施した中央銀行があったように思うが、こちらはいったい何をしたかったのであろうか。

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# by nihonkokusai | 2018-07-03 09:44 | 中央銀行 | Comments(0)

欧州や日本での炭酸ガス不足でビールやコーラ、ドライアイスへの供給に影響が

 地球温暖化により問題視されている炭酸ガス(CO2)であるが、欧州において供給不足が発生し、サッカー・ワールドカップ開催中という需要期にビールや炭酸飲料の供給に影響がでる可能性がでてきた。

 FTによると、食品に利用する炭酸ガスで、欧州最大の供給源の一つとなってきたのがアンモニアプラント。炭酸ガスの不足は、欧州北部各地にある少なくとも5つのガス生産会社が初夏の数カ月間、メンテナンスで工場を閉鎖しているためだとしている。

 CNNも欧州では全土で炭酸ガス不足が深刻化して、食品製造業を脅かしていると伝えた。欧州で複数の大手アンモニア工場がメンテナンスのために操業を停止したことから、炭酸ガスの不足につながったとしている。

 欧州でのビールや炭酸飲料のメーカーにとって今回の炭酸ガス不足は、夏の暑さとワールドカップ開催で需要が急増する最悪のタイミングと重なった(CNN)。英国ではビール供給が割り当て制になっているとか。

 同じようなタイミングで、日本ではドライアイスの深刻な品不足が発生し、メーカーが大規模な出荷制限に動き出した。ドライアイスについては、原油を精製してガソリンなどを生産する過程で生じる炭酸ガスから製造している。29日の日経新聞によると、今年は製油所で小規模なものも含めて30件前後のトラブルが発生し、炭酸ガスの供給が減ったとされる。

 欧州と日本で、同じようなタイミングで、炭酸ガスの供給に支障がでたということなのであろうか。しかも、日本でのドライアイス不足も夏本番を迎え、宅配や食品業界への影響が懸念されている。ドライアイスは6月末からお盆にかけて需要の6割が集中するとされている。

 ドライアイスの供給が集中するのは一時期ということもあり、供給不足が値上げには結びついていないようだが、関係者からは今後は値上げのお願いもあり得るとの声もでているとか。

 ここにきて原油先物価格が再び上昇してきており、28日にWTI先物8月限は73.45ドルと2014年11月以来の高値をつけてきた。今後はガソリン価格の上昇も予想され、こちらは物価に直接影響を与える可能性がある。

 炭酸ガスの供給不足による物価や個人消費への直接的な影響はいまのところそれほど大きくはないかもしれないが、タイミングがやや悪いこともあり、このまま炭酸ガスの供給不足が続くとなれば、影響が拡がる恐れもあり、注意も必要か。


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# by nihonkokusai | 2018-07-01 18:16 | 景気物価動向 | Comments(0)

アマゾンが米国で医薬品事業に本格参入、新たな物価引き下げ要因(アマゾン・エフェクト)に

 アマゾン・ドット・コムは28日、処方薬のインターネット販売を手掛けるピルパックを買収すると発表した。これにより医薬品の販売に本格参入する。ピルパックは全米への医薬品配送を規制当局から許可されており、ネットで処方箋を受け付け、1回の服用分を小分けに包装して配送している。米小売り最大手のウォルマートもピルパック買収に関心を示していたが、アマゾンが競り勝ったようである。

 28日の米国株式市場では、これを受けて26日にダウ平均の構成銘柄に採用されたばかりのドラッグストアー大手、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスの株価が大きく下落し、この一銘柄だけで、ダウ平均を44ドルあまり押し下げた。買収によりアマゾンがハワイを除く49州で処方箋薬を販売できるようになることなどが警戒されたようである。

 ちなみに28日の米国株式市場では、ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースなどが買われ、アマゾンなどハイテク株にも押し目買いが入ったことからダウ平均は98ドル高となっていた。

 日銀の雨宮副総裁は朝日新聞の単独インタビューで、物価の伸び悩みは先進国に共通するとし、「アマゾン・エフェクト」と呼ばれるネット販売の物価引き下げ効果などを理由に挙げた。

 また日銀はアマゾンなどのインターネット通販の拡大に伴って、消費者物価指数(除く生鮮食品、エネルギー)の伸び率が0.1~0.2%程度押し下げられるとする試算結果を公表している。ネット通販との競合度が高いとみられる日用品や衣類には、0.3%程度の押し下げ効果があるとの結果も出している。

 そして日本でのドラッグストアーであるが、日経新聞の記事によると医薬品だけでなく食品でも安値をけん引していることで、消費者物価指数を0.1%ほど押し下げているとの試算が出ているそうである。

 日本でアマゾンが米医薬品事業に本格参入することはいまのところは考えづらい。しかし、可能性がまったくないわけではない。

 物価の押し下げ要因となっているドラッグストアーにとって、今度はアマゾンが脅威となり、アマゾン・エフェクトによって物価はさらに押し下げられるといった構図も生まれそうである。

 米国のトランプ政権は先月に薬価引き下げ計画を公表したものの、これまでに発言に見合った成果をほとんど挙げていない。しかし、それをトランプ大統領の宿敵とされるベゾス氏率いるアマゾンが実施しそうという皮肉な結果となりつつある。


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# by nihonkokusai | 2018-07-01 18:10 | 景気物価動向 | Comments(0)
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