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金利なき世界は健全といえるのか

 シェアハウスへの不適切な融資を巡る問題で、スルガ銀行の第三者委員会が調査報告書をまとめた。審査資料の改ざんなど様々な不正に、支店長を含む多数の行員が関与、借り手の預金残高を改ざんして自己資金があるように装い、融資条件をクリアさせるなど悪質な手口が目立っていた(読売新聞)。

 銀行など金融機関にとって、本来その収益源となるのが金利である。しかし、日本の金利はデフレ脱却というか2%の物価目標を達成しなければならないとの政府の意向を受けた日銀による異次元の金融緩和策で押しつぶされている。短期金利とともに市場で流通している中期債の利回りもマイナスとなっている。長期金利も0.1%程度に抑え込まれてしまっている。

 金融機関が金利で稼げないとなれば、よりリスクのある資産で運用するか、手数料収入を得るため投資信託の販売などを積極化する必要がある。本来であれば、融資などについてもかなり慎重であり、その運用も本来手堅いはずの銀行などの金融機関が、その収益を求めてかなりリスクのある運用や、結果として顧客にリスクを負わせるかたちでの収益増を求め、なかにはスルガ銀行のように違法な取引にも手を出す事例まで出てきてしまっている。

 銀行などが販売する投資信託で、顧客である個人がなかなか利益を挙げられないという事例も目立つようである。これは昔の証券会社が行っていたような途中売却と新規買入で回転させて手数料を得るようなこともあるのではなかろうか。個人向け国債についても、解約できない期間を過ぎると売却が目立つとされる。これも新規買入の際の募集手数料目当てではないかと勘ぐられてもいたしかたない。

 金利がない、もしくは金利がマイナスの状況下においては、金融機関が無理な営業をせざるを得なくなることはある意味、致し方ない面もあるかもしれない。しかし、決してこれは健全な姿とはいえない。個人にとっての、貯蓄から投資への動きへの阻害要因ともなりかねない。

 個人にとってもほとんど金利が付かない世界のなかで、より高い金利を求めるあまり、リスク商品に手を出して、収益どころか損失が発生している事例も多かろう。

 金利なき世界いの大元の原因が日銀の政策だけにあるわけではない。しかし、ファンダメンタルズなどとは乖離し、我々が本来得られるはずの、金融機関にとっては利ざやとなるはずの金利を無理矢理潰して、それが金融機関に、いや我々にも負担をしいていることは確かではなかろうか。それでいったい、政府債務リスクを覆い隠す以外のもので、何が得られているというのであろうか。


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# by nihonkokusai | 2018-09-11 09:57 | 日銀 | Comments(0)

目にも止まらないスピードの取引(HFT)による株式市場や債券市場への影響とその限界

 株価指数先物30周年記念シンポジウムにおける日銀の黒田総裁の基調講演において、HFTに関しての指摘があった。日銀のサイトにアップされた黒田総裁の講演要旨から見てみたい。

 「東京証券取引所の株式市場においては、2010年1月に稼働したアローヘッドと呼ばれる新取引システムにより、1000分の1秒という、人間の能力ではとても追い付かないスピードで注文処理を行うことが可能となりました。こうした技術革新を背景に、自動化されたアルゴリズムに従って、きわめて高速・高頻度で小口売買を繰り返す取引、いわゆるHFT(High Frequency Trading)を行うプレイヤーのプレゼンスが高まっています。」(日銀のサイトの講演要旨より)

 はっきり言って私は目に見えないようなスピードで先物が取引されることには反対である。金融市場は人と人が競い合って価格を形成すべきものと思っている。しかし、そんなことは言えなくなっているのがご時世であり、すでにHFTのシェアは米国では5割程度、欧州は4割程度に達しているとされる。東京証券取引所の株式市場において、コロケーションエリアからの約定件数は4割程度を占めているとされる。

 ちなみに、債券先物の場合は現物債の取引が外部から見づらく、業者間取引も取引所では日本相互証券で行っていることで、裁定取引なども難しく、さらにかなりドメスティックな市場であるため、HFTは入りづらいとされていた、しかし近年、債券先物でも頻繁に取引されるようになってきたそうである。

 黒田総裁は市場流動性の向上などHFTの利点を述べるとともに、次のようにも述べている。

 「一方、アルゴリズムが想定しないような急激なショックが生じた場合において、HFTは市場流動性の供給を不安定化させ、むしろボラティリティの拡大を助長するとの見方があるのも事実です。さらに、アルゴリズムのヒューマンエラーなどをきっかけに、合理性を欠いた取引が大量に実行されてしまうリスクを懸念する声も聞かれます。」(日銀のサイトの講演要旨より)

 今回は株価指数先物の講演であるものの、HFTについては債券先物も同様のことが言える。その上でそれでは、7月31日の債券先物が日銀の金融政策決定会合の結果を受けて大きく債券先物が反発したのは何故なのか。翌日から再び下げたのは何故だったのか。

 31日の債券先物の動きはHFTのように思えた。これはAIが決定会合の声明文のタイトル「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」と政策金利のフォワードガイダンスも導入したことで、追加緩和と勘違いしたためではなかったのか。しかし、実は柔軟化であったとの見方で再び売られたとしたら、アルゴリズムが想定できなかった事例とはなるまいか。

 AIがどれだけ進化しようとも、集団で形成される市場心理の移り変わりまで読み込んで、的確な取引が出来るようになるとは思えない。金融市場では将棋のように勝ち負けがはっきりするものではない。市場参加者が何をみているのかで材料が買わり、材料の比重も常に変化し、その結果として市場価格が乱高下する。年末の日経平均やドル円の居所を当てたとしても、そこに至る過程まで見通せるわけではない。つまりAIを使おうが市場で勝てるとは限らない。いち早くニュースを捉え、わずかなスピードの優位性で利益を獲得することは技術的に可能でも、そのニュースが市場でどのように理解されるのかまで予測することも難しい。


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# by nihonkokusai | 2018-09-10 10:12 | 金融 | Comments(0)

災害時に弱いキャッシュレス社会、現金が重要に。セイコーマートの事例より

 我が家の近くにセイコーマートがある。セイコーマートは顧客満足度で毎年1位を取っているとされる北海道を拠点とするコンビニエンスストアチェーンである。道内を中心に約1100店を展開。茨城では84店、埼玉では9店が営業している。その茨城のうちのひとつの店舗に6日に昼食を買いに出かけたところ、レジに手書きの張り紙があった。

 これは交通系のICカードなど電子マネーなどでの決済に加え、公共料金の支払い、ゆうパックの受付が出来ない状態となっていることを知らせるものであった。

 この日の早朝3時に北海道で震度7の地震が発生していた。セイコーマートは北海道が拠点であり、これは地震とそれによる停電の影響と思われた。

 実際に朝日新聞がこれについて取材していたようで、セイコーマートの関東事業本部は取材に対し、「本社のホストコンピューターがダウンしたのが原因。お客さまには、しばらく不便をおかけすることになり、申し訳ない」と話したそうである。

 ただし、このセイコーマート、地震とそれによる停電にもかかわらず北海道では奮闘していたことがツイッターなどで紹介されていた。

 道内のほとんどの地区で停電が発生し、食料品店なども休業をせざるを得ない状況が続いている中、セイコーマートの多くが営業していたのである。しかも普通のガソリン車のシガーソケットから給電するなどして、停電中も温かい食事を提供していたとか。会社側が普段から非常電源キットを各店舗に配布し、今回はそれを使い従業員の車などから電源を取ったとも報じられ、災害時の対応を準備していたようである。

 このようなセイコーマートの営業努力にもかかわらず、電子マネーの利用については道内だけでなく関東地方の支店でもできなかった。ただし、セイコーマートのレジについてはオフラインでも使用可能で、災害時にも使えるものであったようである。

 レジはオフラインでも使えるというのは非常に大きい。東日本大震災の際、私も食料品を確保するため、かろうじて営業していた近くのコンビニ(この際はセイコーマートではない)に行ったのだが、レジが使えず手作業で決済を行っていた。営業してくれていたことには感謝だが、大混雑のなかの手作業で、かなり時間が掛かってしまっていた。

 この際にも当然ながらクレジットカードや電子マネーなどは使えない。これらは電気の問題だけでなく、ネットワークにアクセスできないと使い物にならないためである。これに対して現金についてはネットワークで確認する必要はないため、このような緊急時においても使うことができる。

 日銀は今回の北海道での地震に際に、「北海道胆振地方中東部を震源とする地震にかかる災害に対する金融上の措置について」というペーパーを発表し、金融機関(銀行、信用金庫、信用組合等)への要請として、預金証書、通帳を紛失した場合でも、災害被災者の被災状況等を踏まえた確認方法をもって預金者であることを確認して払戻しに応ずることとした。もちろんこの払い出しとは、必要となる現金のことである。

 日本ではなかなかキャッシュレス化が進まないとされるが、それは日本人が現金好きだからという面もあるかもしれないが、何かあったときに頼れるのが「現金」ということを、これまでの震災などの経験で学んでいたことも大きいのではなかろうか。

 セイコーマートが停電にもかかわらず通常営業が可能であったのは、非常電源キットの準備などとともに、本社のホストコンピューターがダウンしても、オフラインでも使えるレジを使っていたことも大きいのではなかろうか。

 キャッシュレス社会という現金を持たない生活も良いかもしれない。しかし、災害時のリスクを考えれば一定の現金を保有せざるを得ないこと、営業店舗にあっては電気がなくても営業は可能となるような仕組みを、特に地震などの災害の多い我が国においては必要なのではないかと思った。


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# by nihonkokusai | 2018-09-08 08:05 | 金融 | Comments(0)

日銀は実質的に長期ゾーンの国債買入を減額、市場はこれを織り込み済み

 日銀は6日、10時10分に国債買入をオファーした。対象は5年超10年以下、オファー額は4500億円。前回の一回あたりのオファー額の4000億円から500億円増額した。月額ベースに引き直すと8月は同年限の買入は6回あり、総額2兆4000億円となっていた。これに対し9月は買入予定が5回であり、途中で金額の変更がなければ、4500億円5回の2兆2500億円となることで、実施的に月額ベースで1500億円の減額となる。

 日銀が8月31日の夕方に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」では、いくつか前回から修正ポイントがあった。

 「日本銀行は、長期国債等の買入れについて、弾力的に実施することとしており、当面、以下のとおり運営することとしました(2018年9月3日より適用)。」

 今回は「弾力的に実施することとしており」という表現が入ってきているのである。7月の決定会合でも、「弾力的な買入れを実施する」との表現があった。念のため「弾力的」という単語の意味を確認したところ、状況に応じて柔軟に対応する」とあった。

 9月の国債買入の回数を中期と長期ゾーンについて、8月までの6回から5回に減らしたのは何故か。9月は三連休が2回あり、日銀の決定会合も予定されており、国債買入のスケジュールがかなりタイトになるためというのが表向きの理由と思われる。しかし、ここには「弾力化」つまり「柔軟化」の意味合いも込められていたのではなかろうか。

 それでは今回の日銀の国債買入による「弾力化」の目的とは何か。日銀はこれまでのように長期金利を完全に抑え込む姿勢から、多少なり変動できるように幅を拡大させてきた。この目的のひとつに債券市場の機能回復が挙げられる。

 日本取引所グループのサイトのデータによると8月の国債先物の取引代金は前年同月比49.4%増の134兆円となった。取引金額は8月としては2007年以来11年ぶりの水準だとか(日経新聞電子版)。

 ただし、盛り上がったのは一時的であり、その後再び債券市場の値動きは小さくなり、債券先物の日中値幅が過去最低の3銭となったり、10年債カレントの出合いのない日も出てきた。

 それでも国債買入の弾力化などにより、少しでも債券市場に動きが出るようにと今回の国債買入での修正が行われたのではないかと思われる。

 実質的な買入減額はステルステーパリングとも呼ばれているが、これはすでにGDP規模にまで膨らんでしまった日銀の資産規模に対する警戒も含まれていよう。物価目標達成は見通せず、このまま巨額の買入を続けていくと、債券市場の機能低下などの副作用の蓄積とともに出口政策がより困難になる。そのためには少しでも買入ペースをダウンさせる必要がある。出口戦略もなく突っ走しれば何が待ち構えていたかは歴史が証明している。

 それでは日銀としては長期金利の上昇の後押しをしているのかといえば、たしかに買入の実質減額はそのように見える。しかし、極端に狭いレンジ内に抑え込む必要性がなくなり、ある程度のテーパリングが必要となれば、多少の長期金利の動きは容認する構えなのではないかと思われる。ただし、米国債などの動向にも影響を受けることで、日銀の動きだけで長期金利の動きがすべて決まるわけでもない(はず)。長期金利の動きにもう少し幅を持たせたいととの意味合いも大きいのではないかと思われる。

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# by nihonkokusai | 2018-09-07 10:05 | 日銀 | Comments(0)

日銀は国債買入を実施的に減額、注目は本日の長期ゾーンの国債買入額

 9月4日の日銀による国債買入オペレーションにおいて、中期ゾーンの買い入れ予定額は1年超3年以下を前回から500億円増額の3000億円、3年超5年以下を500億円増額の3500億円とした。それぞれ500億円増額した格好ながら、8月31日の夕方に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」で明らかにされたように、カレンダースケジュールの都合もあってか買入の回数を8月の6回から5回に減少させていたことによる増額であった。

 「当面の長期国債等の買入れの運営について」で示された1年超3年以下の買入額は、2000~4000億円程度となり、8月の2000~3000程度から上限を1000億円増額した。市場参加者というか日銀もこの中央値を意識しているようで、8月の中央値が2500億円、9月の中央値が3000億円となり、増額もそれに沿ったものとなった。

 つまりこれにより、1年超3年以下の買入額は、8月は2500億円が6回(1兆5000億円)から、9月は3000億円が5回(1兆5000億円)となり、1年超3年以下の買入額は総額は不変となった。

 3年超5年以下についても、2500~4500億円程度と、8月の2500~3500億円程度からレンジの上限を1000億円増額した。中央値については8月の3000億円から3500億円となり、3年超5年以下についても中央値でのオファーとなった。

 これにより、3年超5年以下については8月が3000億円が6回(1兆8000億円)から3500億円が5回(1兆7500億円)となり、月額ベースでみれば500億円の減額となる。

 簡単な計算といえばそれまでだが、表面上は一回当たりの買入の増額となっているし、レンジも上限が引き上げられ、いかにも増額のように見えながらも、実質減額となる。ただし、500億円程度の減額という見方もできる。

 減額そのものは債券市場関係者はむしろ歓迎するであろう。これに対し、過去に日銀の国債買入減額に敏感に反応していた外為市場や、それをみて反応していた株式市場には、今回の実質減額はほとんど影響を与えなかった。

 それはさておき、日銀は中期ゾーンだけでなく、長期ゾーンの買入回数も9月は減らしている。9月5日に10年国債の入札があり、6日には長期ゾーン(5年超10年以下)の国債買入が予定されている。

 中期ゾーンに習えば、長期ゾーンの8月の買入レンジ3000~5000億円となり、中央値と買入額は4000億円となっていたところ、9月のレンジは3000~6000億円に修正されたことで中央値は4500億円となる。

 もし6日の買入額が4500億円と一回あたりの買入額を500億円増額するとなれば、月額換算で4000億円6回(2兆4000億円)が、4500億円5回(2兆2500億円)となり、こちらは1500億円の減額となる。さすがに1500億円の減額となれば、それなりに影響も出るかもしれないが、こちらの動向も要注目となる。ただし、債券市場では1500億円の減額もそれなりに織り込んではいる。


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# by nihonkokusai | 2018-09-06 08:07 | 日銀 | Comments(0)

金融市場のインフルエンサー

 このコラムでたぶん初めて「インフルエンサー」という言葉を取りあげたい。インフルエンザという言葉にも似た単語で個人的には、あまり好きではない用語であった(乃木坂46のファンからは怒られそうだが)。そもそもインフルエンサーとは何だ、という若者言葉を理解しない、したくない年寄りみたいな状態にいたのかもしれない。


 それはさておき、ネット時代になって、確かに誰かの発言や書き込みがひとつのきっかけとなって何かが流行するという現象は起きている。そもそもインフルエンサーという言葉は、ブログが全盛の時代に生まれたようで、カリスマブロガーと呼ばれる人達が何かを取りあげるとそれが爆発的に流行し、取りあげた人をインフルエンサーと呼んだ。


 これはネットに限らず、テレビなどもそうであろう。マツコ・デラックスが美味しいと言ったり、NHKの「あさイチ」で取りあげられたものが、翌日のスーパーで売り切れとなることも良くあった。


 しかし、ツイッターなどの匿名主体のSNSなどからは具体的な人名はわからないものの、ある人の発言や投稿がきっかけとなり、社会現象を生み出すようなことがある。


 たとえば、夏の甲子園での金足農高フィーバーも準決勝あたりから、一気に盛り上がったが、これはツイッターで吉田投手がスポーツ新聞の記事の紹介のようなかたちで取りあげられ、それがリツイートされて、一気に拡がったことによる影響が大きいとみている。翌日の朝のワイドショーで取りあげられていたのも、ほとんどツイッターで話題になったものであった。


 何かしら面白いことが起きて、それが社会現象化する際には、そのもとになる記事なり書き込みなりがあって、さらにそれを取りあげて拡散する人達がいて、社会現象化するのではなかろうか。もちろんトランプ大統領のように自らの権力があまりに大きく、自らの書き込みで社会を騒がせる人もなかにはいるが、これは例外といえるのではなかろうか。


 過去の社会現象を生じさせたような情報と言えば、マスコミ経由のものが多く、それにはタイムロスがあった。新聞であれば一日遅れとなり、テレビのニュースやワイドショーではある程度社会現象化してからの後追いとなる。いまでは、それらに先んじて面白い情報を拡散する手段としてSNSがある。その意味では、特定できない個人のインフルエンサーが暗躍しているともいえるのではなかろうか。


 株式市場では「提灯買い」という言葉が昔からある。これは提灯行列に付いていくという言葉から来ているとも言われ、何かしらの情報に先に飛び乗った人がいて、それがちょっとした価格の変動を起こし、それを見て我も我もと付いて行き、大相場となるような意味である。これはひとつ間違うと価格操作などに使われてしまうケースもある。しかし値動きをみて、何かおかしな動きをしているぞと感じて付いて行き、相場には何かしらあとから材料が出てくることもある。


 金融市場にも、情報感覚が研ぎ澄まされた(もしくは情報を掴んでいる)インフルエンサーがいて、それによるちょっとした価格変動を見て、何かを察知し動く察知能力に優れた別のインフルエンサーが存在しているように思われる。彼らの動きを見ながら(直接見ることはできないので値動きから)相場を張るということも必要だと、インフルエンサーになりきれなかった元ディーラーとしては思っている。


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# by nihonkokusai | 2018-09-05 09:54 | 金融 | Comments(0)

日銀は国債買入の回数を減少、その目的は何か

 日銀が8月31日の夕方に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」では、いくつか前回のものと異なるところがあった。

 前回の7月31日に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」は、本来であれば公表時間が夕方17時予定であったものの、当日の金融政策決定会合後に発表されたことで発表時間が繰り上げられた。これはどうしてなのか。

 7月31日の決定会合にて決定された金融政策の修正は、「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」というタイトルながら、実質的な柔軟化策を決定したものといえる。それを良く示すのが、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)のところの長期金利の項目で、前回と次のように変わっていた。

 6月会合「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。」

 7月会合「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし 、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」

 このように7月会合では「経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし」、「弾力的な買入れを実施する」としていた。

 ただし、引き締めスタンスに転じたわけではないことを示すためにも、17時ではなく決定会合後に、「当面の長期国債等の買入れの運営について」も公表し、すぐ日銀の国債買入スタンスに変化があるわけではないことを示した。

 そして、そのときに公表された「当面の長期国債等の買入れの運営について」の冒頭のコメントは次のようになっていた。

 「日本銀行は、長期国債等の買入れについて、当面、以下のとおり運営することとしました(2018年8月1日より適用)」

 これに対して、今回8月31日に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」の冒頭のコメントは次のようになっていた。

 「日本銀行は、長期国債等の買入れについて、弾力的に実施することとしており、当面、以下のとおり運営することとしました(2018年9月3日より適用)。」

 今回はそれとなく「弾力的に実施することとしており」という表現が入ってきているのである。弾力的だから上もあるかもしれないが、目的は下であろうと推測される。

 8月31日と7月31日の「当面の長期国債等の買入れの運営について」では、1年超5年以下の買入額のレンジの上限がそれぞれ1000億円引き上げられている。また、5年超10年以下も同様に上限が1000億円引き上げられた。

 その代わりに買入回数が、1年超5年以下と5年超10年以下が8月の6回から5回に減っているのである。これについては9月は3連休が2回あり、決定会合もあり、国債入札日を除く買入日が、かなりタイトになってしまうためとの見方もある。

 市場参加者がひとつの目処としている買入額のレンジを中央値を引き上げることによって、回数の減少分をある程度補うことを示したともいえる。

 しかし、レンジの上限を増やそうが、一回あたりの買入額がきちんとその分増加させるのかどうかは不透明で、オペの買入額次第では、これは実施的な買入弾力化・柔軟化の一環とみることもできるかもしれない。

 7月31日の債券先物はこれを受けて素直に下げた。今回の日銀の「当面の長期国債等の買入れの運営について」の一部修正は債券先物にとっては売り材料と認識されたのである。


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# by nihonkokusai | 2018-09-04 09:45 | 日銀 | Comments(0)

日銀の柔軟化にる長期金利の上昇は一時的で、その後低下してしまったのは何故なのか

 日銀は7月31日の金融政策決定会合で「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」を決定した。タイトルは一見すると、さらなる緩和策に踏み込んだように見えなくもない。政策金利のフォワードガイダンスも導入した。

 31日の債券市場ではこれを受けて、先物主体にショートカバーの動きを強め、債券先物は150円80銭まで上昇し、引けは25銭高の150円69銭となった。10年債利回りも0.090%から0.045%に低下した。

 日銀が金融政策の柔軟化を検討していることが、7月20日の夜11時頃に時事通信やロイターが報じ、債券市場はこれを受けて臨戦態勢に入っていた。30日に10年債利回りは後場に入り10年債利回りが0.110%に上昇。これに対し日銀は指し値オペをオファー。このときの応札額・落札額は1兆6403億円もあった。

 31日の債券相場の反発はこのショートカバーとの見方もあったが、それよりも債券先物にHFTと呼ばれるAIなどを使った仕掛け的な買いが入った可能性が高い。AIが勘違いして追加緩和のように解釈したのであろう。

 8月1日には31日の日銀の調整はやはり柔軟化であろうとの認識も強まり、あらためて10年債利回りの上限を試すような動きとなった。10年債利回りは0.120%に上昇した。また、日銀の国債補完供給(国債売現先)の状況などからみて、30日の指し値オペ1.6兆円はその多くは空売り(ショート)とみられた。

 このため2日の10年国債入札は大きなショートカバーも入ったはずであったが、入札結果そのものはやや低調となった。このため10年債利回りは0.145%まで上昇。14時に日銀は指し値オペではなく、通じよう形式の臨時の国債買入をオファーしてきた。これは長期金利の上昇ピッチの速さに対応したとみられるが、結局、この日につけた10年債利回りの0.145%が直近で最高値となった。市場では日銀はこの水準で上昇を止めたいのではとの見方も出ていたが、あくまで少しブレーキを掛けたかっただけと想われる。

 その後の債券相場は値を戻す展開となり、10年債利回りは0.1%近辺でのもみあいとなっていた。債券先物は150円台を回復し、じりじりと買い戻された。この債券先物の買い戻しの要因としては、米国債の利回りが低下していたことが要因としては大きかった。

 米中貿易摩擦の拡大懸念やトルコリラの下落により、リスク回避の動きが起きており、それによって米国債が買い進まれ、円債もジリ高基調となっていた。13日に日本の10年債利回りは0.1%を割り込み、17日には0.085%まで低下した。

 債券市場の商いは次第に低迷し、27日の債券先物の日中値幅は3銭と6月28日以来の過去最低値幅となった。日銀は7月31日の金融政策決定会合で長期金利の操作目標を拡大させたものの、結局、それ以前の動かない相場に戻ってしまった格好となった。

 日銀の柔軟化に対しての債券の反応は一時的なものとなっていた。今後は円債に売り材料が出た際にあらためて日銀の長期金利のレンジを探ることも予想されるものの、当面は膠着感を強めることが予想される。


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# by nihonkokusai | 2018-09-03 09:57 | Comments(0)

新興国ショックにもご用心

 8月30日の欧米市場はリスク回避のような動きとなっていた。これはトランプ米大統領が中国からの輸入品2000億ドル相当への関税を来週に公聴会が終了し次第、発動したい考えだと伝えられ、これを受けて米中貿易摩擦の激化懸念が再び強まったこともある。

 それだけではなく、新興国通貨下落によるリスク回避の動きでもあった。

 アルゼンチン中央銀行は30日、主要政策金利を45%から60%に引き上げた。31%を超えているインフレ率を制御すると同時に、自国通貨の一段の下落に歯止めをかけたい考えだが、大幅な利上げにもかかわらずアルゼンチンペソはこの日の取引で、終値ベースで最安値を更新した(ロイター)。

 トルコの通貨リラの急落に端を発した「トルコショック」が他の新興国にも影響を与え、新興国の通貨安が加速している。ブラジルやインドの通貨も過去最安値の水準に下落しており、通貨安に伴う輸入物価の上昇を受けて、新興国の債券も売られ、利回りが上昇している。

 30日の米国株式市場は下落していたものの、ここにきてナスダックやS&P500が過去最高値を更新するなどしており、いまのところ金融市場でのリスク回避の動きは一時的なものに止まっている。31日は新興国通貨の下げが一服しており、過度な警戒感は後退したようにもみえるが、油断は許さない状況となりつつある。

 新興国の債務の大きさなども気掛かり材料となっている。トルコの対外債務の約20兆円が1年以内に返済期限という米銀試算も報じられている(ロイター)。

 米国株式市場の地合いに変化が生じるようなことがあると、新興国リスクが大きく表面化してくる可能性もありうる。これが世界的な危機となることは、いまのところ考えづらいものの、まったく無視できる状況でもない。


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# by nihonkokusai | 2018-09-02 13:36 | 国内情勢 | Comments(0)

再び過疎化が進む債券村

 8月27日の債券先物の日中値幅はわずかに3銭となってしまい、6月28日以来の過去最低値幅となってしまった。この日は月曜日ということもあったのかもしれない。それでもこの日の日経平均は200円を超す上昇となるなど、夏休みモードからは脱していたにもかかわらず、7月31日の日銀の政策微調整以前の相場に逆戻りしてしまった感がある。

 28日の債券先物の値幅は5銭。現物債は2年、5年、40年債カレントの出合いが日本相互証券で15時現在でなかった。

 29日の債券先物の値幅は4銭。高値150円45銭をつけたのは8時45分10秒、安値の150円41銭をつけたのは8時45分30秒だったそうで、寄付き後30秒でできたレンジが当日レンジとなってしまった。この日も現物債は2年、5年、40年債カレントの出合いが日本相互証券で15時現在でなかった。この日の10年債は7月4日以来のカレントの出合いなしとなった。この日、日本相互証券で出合ったカレントは20年債と30年債だけとなってしまった。

 日銀は7月31日の金融政策決定会合で、長期金利の操作目標をそれまでの±0.1%から±0.2%に引き上げたとされる。8月2日に10年債の利回りで0.145%まで上昇したタイミングで、日銀は指し値ではなく通常のオペながら予定にない臨時オペをオファーした。これを受けて10年債は売りづらくなるとともに、米債が買われていたこともあり、そこから利回りはむしろ低下した。

 しかし、買い方も次第に慎重となっていたこともあり、債券市場は再び膠着相場に戻ってしまった。日銀の大規模な国債買入は続いていることも国債の需給をタイトにさせており、それも膠着感を強める要因となっている。

 日銀は多少の柔軟化を決定したものの、タイトルを「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」にし、政策金利のフォワードガイダンスを導入するなど、緩和後退とは見せない工夫もしたが、それも一層売り方を慎重にさせている面もあろう。

 債券村の過疎化は日銀の長短金利操作付き量的質的緩和政策そのものの方針を大きく変えない限り、続く可能性がある。いったんシャッター街となってしまった駅前の復活は難しいように、過疎化してしまった債券村に人がいなくなってしまうリスクは継続する。ただし、その村が支えているはずの債券市場は世界第二位の規模を誇っているのだが。



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# by nihonkokusai | 2018-08-31 09:31 | 債券市場 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
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