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平時に非常時の緩和を続けたツケが回ってくる懸念

  12月19日、20日に開催された日銀の金融政策決定会合における主な意見が公表された。12月に入り、米国株式市場を中心に東京株式市場を含めて、世界的に株価が調整局面となっていた。この背景には世界的な景気の減速懸念があったが、日銀は足元の景気動向や今後についてどのような認識となっているのかを、この「主な意見」から探ってみたい。

 経済情勢に関しては、さすがに慎重な見方がでてきている。「わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している」との発言は黒田総裁のものとみられる。「先行きも緩やかな拡大を続けるとのメインシナリオは維持されている」との発言が続き、7~9月期の実質GDPのマイナス成長については、一時的なものとみているが、「米中間の通商問題をはじめ世界経済の不確実性が高まる中、先行きの下振れリスクは強まっている」との声が出ている。

 「景気の先行きについては、米中貿易摩擦を背景に慎重な見方が増えているため楽観視はできない」との意見もある反面、海外経済について総じてみれば着実な成長を続けると考えられるとの意見もある。

 「経済に対するリスクは下方に強まっている」との意見が何人かから出ている。特に中国経済の先行きに関して減退を示している可能性があるとの指摘があった。米国経済よりも中国経済の動向の方が注視されているようにも思われる。

 これに対しての金融政策に関する議論では、7月の金融政策決定会合で決定した金融市場調節や資産の買入れをより弾力的に運営することによる成果などが意見として出されていたが、「政策の効果と副作用を慎重に点検しつつ、現行の金融緩和を続けることが肝要である」との意見に集約されているようにも思われる。

 ただし、「7月の枠組み強化に沿って、長期金利が一時的にマイナスになることも許容すべきである」との意見もあった。実際に10年債利回りは28日にマイナスとなっていた。

 「この状況で、金利を元に戻すようなオペレーションを行えば、むしろ金融を現状より引き締めることになってしまう」との意見も出ている。このあたりが日銀にとっては悩ましいところとなろう。

 米国の株式市場が調整局面入りし、ここにきて乱高下してきている。この背景には米国のトランプ大統領の言動も大きいというか、ポピュリズム政策の負の側面が大きくなっていることが挙げられる。金融緩和の後退が主因との見方もあるが、FRBの正常化は今年に入ってから始まったわけではない。

 今後については景気の減速感が強まることも予想され、株式市場や外為市場の動向次第では、日銀に対して金融緩和への期待感が強まる可能性がある。しかし、日銀は数字上は際限なく金融緩和は可能であるとしているものの、その副作用など考慮するとすでに緩和余地はほとんど残されていない。平時なのに非常時の緩和を続けたツケが回ってくる懸念が今後強まることも予想されるのである。


# by nihonkokusai | 2018-12-29 09:43 | 日銀 | Comments(0)

今度はダウ平均が過去最大の上げ幅に、乱高下の背景にプログラム売買

 26日のニューヨーク株式市場でダウ平均は1086ドル高と過去最大の上げ幅となった。しかし、特にサプライズ的な買い材料が出ていたわけではない。

 米マスターカードが26日まとめた決済状況調査によると2018年の米年末商戦の売上高成長率が6年ぶりの伸び率になった。これを受けて国内消費の強さが再確認されたとの見方もあったが、たしかにきっかけにはなってもダウ平均を1000ドルも押し上げる材料とはいえない。

 原油先物が急反発したことで石油関連株が買われた面もあったが、その原油先物が買われた要因に米国株式市場の急上昇が指摘されていた。米債は売られていたことからも、リスク回避の巻き戻し的な動きが出ていたともいえる。

 何故、これほどまでの反発をみせたのか。今回の米国株式市場を主体とする株価の調整の大きな要因にトランプ大統領の言動を受けての不安心理があった。トランプ大統領はここにきての株価下落の犯人はFRBのパウエル議長だと決めつけて非難しており、パウエル議長の解任観測も不安を煽った。

 これについては26日に米経済諮問委員会(CEA)のケビン・ハセット委員長はFRBのパウエル議長が解任されることはないと述べていたことで、これも不安心理をやや改善させた可能性がある。

 波乱要因のトランプ大統領本人がイラクを電撃訪問していたことで、鬼の居ぬ間の買い戻し的な動きであった可能性すらある。

 注意すべきはこの値動きの大きさは、いわゆるアルゴリズム取引とも呼ばれているコンピューターシステムを使ったプログラム売買による影響も大きい。HFTと呼ばれる高頻度取引も値動きを大きくさせている要因といえる。今回もこのような取引が買い戻しの動きを加速させた可能性がある。

 これによって米国株式市場を中心とした調整局面が終了するのかどうかはわからない。今回の調整の要因ともなったトランプ大統領の姿勢が大きく変わることは考えづらい上に、今後の景気還俗への懸念も解消されることも考えづらい。

 今回のニューヨーク株式市場の乱高下は、当面価格変動リスクそのものが大きくなることを示すものではなかろうか。年末年始の金融市場が大荒れとなる可能性も出てきた。


# by nihonkokusai | 2018-12-28 10:03 | 金融 | Comments(0)

10年債利回りが再びゼロ%に

 21日から24日にかけて米国株式市場は大幅続落となり、25日の日経平均株価は1000円を超す大幅な下げとなった。米債も買い進まれた。これを受けて25日の債券市場では10年債利回りが一時2017年9月11日以来のゼロ%をつけた。

 米10年債利回りは11月初旬に3.2%台に上昇していたが、その後はじりじりと低下し、2.7%台となっている。リスク回避の動きとともに、米長期金利の低下もあり、ドル円も11月末の114円台からここにきて110円台に下落してきた。

 25日に10年債利回りはゼロ%をつけたものの、この日の日本相互証券での現物債の売買高は3000億円台と少なかった。積極的な買いが入ったというよりも、打診買いのような動きになっていた。

 25日の債券先物も買われたものの、中心限月の3月限の日中高値は152円66銭までとなり、19日につけた152円84銭には届かなかった。25日は商いそのものも低迷しており、19日に6兆円を超す売買があったのに、25日は1.6兆円程度しかなかった。

 この動きが示しているのは、19日あたりまでの仕掛け的な動きがやや異常であったということではなかろうか。債券先物の中心限月の移行のタイミングを見計らって、チーペストの品薄感などもあり、先物主導の踏み上げ相場を仕掛けていたとみられる。

 債券先物の動向や動いた時間帯を見る限り、この仕掛け的な動きは海外勢であったとみられる。特に債券先物はナイトセッションでの出来高が増加するなどしていた。しかし、この動きは19日につけた152円84銭でピークアウトした。

 19日にFRBは追加利上げを決定した。もしかするとこのFOMCまでの仕掛け的な動きであったのかもしれない。米債もこの間に上昇しており、米債と円債先物を同時に仕掛けていた可能性もある。

 25日の東京時間での債券先物の出来高は薄く、さらにこの日のナイトセッションはクリスマスということもあるが、わずか397枚だけとなっていた。

 これによって仕掛けていた海外勢が完全に手を引いたといえるのかどうかはわからない。しかし、10年債利回りのマイナス化は特に国内の市場参加者は望んでいないことも確かであり、ここからの買い仕掛けもやりづらい。それでも株式市場や米債などの動向如何ではリスク回避の動きもともない、円債がさらに買い進まれる可能性もないとはいえない。


# by nihonkokusai | 2018-12-27 10:08 | 債券市場 | Comments(0)

トランプ・ショックで株価が急落

 12月25日のクリスマスの日経平均はあっさりと2万円を割り込み、大きく下落した。ドル円は110円台前半に下落しており、リスク回避の動きを強めた格好となった。米国のダウ平均も日本の日経平均もそれぞれ年初来の安値を更新した。

 この米国を主体とした世界的な株安の背景は何か。24日の原油先物市場ではWTI先物が42ドル台に下落しており、これからもわかるように世界的な景気減速の懸念が背景にあることは確かであろう。しかし、特に米国株式市場での地合を悪化させているのはトランプ大統領そのものと言えよう。

 トランプ大統領はここにきての株価下落の犯人はFRBのパウエル議長だと決めつけて非難している。米国大統領がFRB議長を解任するにはかなりハードルが高いものの、解任手段を検討しているとされている。

 しかし、少なくともFRBによる12月の利上げまでは市場もかなり織り込んでおり、利上げによるサプライズで株価が下落したわけではない。むしろ、FRB議長を解任しようとしている大統領の姿勢そのものが不安視されている。

 これに対してムニューシン財務長官はパウエルFRB議長の解任を否定した上で、米銀大手6行のトップと相次ぎ電話で会談し、市場の流動性について確認したされる。さらに米財務省はFRBや米証券取引委員会(SEC)などの代表者と金融市場を巡る大統領作業部会(PWG)を24日に開くと公表した(日経新聞電子版)。

 この大統領作業部会そのものは1987年の株価暴落後に発足した会議であり、この動きはむしろ市場の不安を煽るような格好となった。

 さらに株価下落に苛立ちを示すトランプ米大統領は、ムニューシン財務長官の解任を検討しているもようと、関係者の話としてブルームバーグが伝えた。確かにトランプ大統領のお怒りの矛先が、ムニューシン財務長官にも向けられる可能性は否定できない。

 今回の株価下落の要因は景気減速懸念であったとしても、それを加速させたのはトランプ大統領そのものの言動といえよう。マティス国防長官が退任を表明したことや、トランプ大統領が要求するメキシコ国境の壁建設費用を巡る対立による政府機関の一部閉鎖、さらには米中の貿易摩擦が再燃する懸念等々、ほとんどがトランプ大統領が蒔いた種に対して、市場が不安を募らせた結果の株安などのリスク回避の動きといえる。

 もし今後、ムニューシン財務長官やパウエルFRB議長が解任されるような事態になると、市場はリスク回避の動きをさらに加速させかねない。このことにさすがにトランプ大統領も気がついたのか、25日にホワイトハウスで記者団からパウエル議長について問われた際に、当局の利上げペースは速過ぎるとしながらも、信頼しているのは確かだとも発言し、解任と言う言葉は出てこなかった。ムニューシン財務長官に対しても信頼を置いていることを示した。しかし、あくまで株価を気にしての発言とみられ、これが本音ではない可能性も当然ある。メキシコ国境の壁建設費用を巡る対立については解消のメドはたっていない。年末年始に向けて市場があらためて大荒れとなる可能性もありうるか。


# by nihonkokusai | 2018-12-26 10:16 | 投資 | Comments(0)

9月末の投資家別の国債保有額

 日銀は12月21日に資金循環統計(7~9月期速報値)を発表した。これによると個人の金融資産は9月末時点で約1859兆円となり、6月末の約1848兆円からは増加した。個人の金融資産の内訳は、現金・預金が前年比で1.9%増の約968兆円となった。株式等が同8.4%増の約209兆円、投資信託は0.8%増の約74兆円となっていた。

 この資金循環統計を基に国債(短期債除く)の保有者別の内訳を算出してみた。

 残高トップの日銀の国債保有残高は454兆6350億円、45.7%のシェアとなった。前期比(速報値)からは8兆7003億円の増加となる。他のセクターは家計を除いて国債の保有額を削減させていた。

 残高2位の保険・年金基金は232兆7852億円(23.4%)、4兆4616億円減。

 残高3位は預金取扱機関(都銀や地銀など)で154兆2664億円(15.5%)、4兆5727億円減。

 残高4位が海外投資家で59兆1102億円(5.9%)、2兆3474億円減。

 残高5位が公的年金の45兆3032億円(4.6%)、6552億円減。

 残高6位が家計の12兆8580億円(1.3%)、2430億円増。

 その他が35兆8717億円(3.6%)、1兆8292億円減となっていた。

 2018年6月末に比べ国債(短期債除く)の残高は4兆9228億円減の994兆8297億円となった。6月末は短期債を除いた国債残高が1000兆円に迫ったが、今回は減少していたことで1000兆円を超えることはなかった(ちなみにこちらの国債残高は時価ベース)。

 6月末に比べて大きく増加したのは、国債を大量に買い入れている日銀で、シェアは4割を上回っている。今回、前期比で大きく減少したのは預金取扱機関(都銀や地銀など)と保険・年金で、海外も減少させていた。

 短期債を含めた国債全体の数字でみると残高は約1092兆円となり、日銀が約469兆円で43.0%のシェアとなっていた。海外勢の残高は約126兆円と短期債を含めると国債全体の11.6%のシェアとなっていた。


# by nihonkokusai | 2018-12-22 09:37 | 国債 | Comments(0)

FRBの利上げ停止の可能性も

 FRBは19日のFOMCで政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25~2.50%のレンジへ0.25%引き上げた。この利上げそのものは予想通り。市場は今後の利上げペースがどうなるのかを注目していた。

 ドットチャートと呼ばれる、FOMCメンバーが予想するFFレートの水準をドットの分布で表現したグラフによれば、2019年の利上げ見通しは前回予測の3回から、今回は2回となった。さらに中長期的に適切とみる政策金利の水準を2.75%と、9月時点の3.0%から引き下げた。

 しかし「いくらかのさらなる段階的な」(some further gradual)」利上げが必要になるとの認識も示しも、利上げ継続との姿勢を示した。

 ただし、FOMC声明文には「世界景気や市場動向を注視し、景気見通しへの影響を分析する」との表現が加わり、今後の景気減速への懸念とともに、株式市場の動向等にも注意する姿勢を示した。

 市場はこの程度のブレーキでは踏み込み不足と認識したようで、19日のダウ平均は351ドル安となった。いわゆるパウエルプットを市場は期待していたものとみられる。

 そもそも米利上げが米国株式市場の調整等の主因であったわけではない。米中間を巡る貿易戦争などが解決に向かわない限り、さらに世界的な景気減速観測が後退しない限り、市場の地合が大きくかわるとは思えない。金融政策だけが金融市場の決定要因ではない。しかし、市場が最終的に期待してしまうのは、中央銀行の金融政策となってしまっていることも確かである。

 19日の米10年債利回りは一時2.75%に低下した。株式市場の下落によるリスク回避の動きもあったかもしれないが、株式市場が踏み込み不足と認識したのであれば、米債は売られてもおかしくはない。それにもかかわらず2.75%という今回中長期的に適切とみる政策金利の水準まで低下したのは、FRBの利上げにブレーキが掛かるとの認識によるものではなかろうか。

 そもそも簡単に中長期的に適切とみる政策金利の水準を引き下げて良いものなのか。このあたり、厳密に数値を出すことができないものであり、これそのものがFRBの姿勢を示す数値ともいえるのではなかろうか。つまりこの引き下げにより、今後の利上げはかなり慎重に行うであろうことを示したともいえる。

 そうであれば来年の利上げについては、景気物価動向次第となるものの、今回でひとまず正常化に向けた利上げを停止する可能性もありうる。パウエル議長はこのあたり柔軟に対応してくる可能性があるのではなかろうか。


# by nihonkokusai | 2018-12-21 09:44 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBの利上げ停止の可能性も

 FRBは19日のFOMCで政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25~2.50%のレンジへ0.25%引き上げた。この利上げそのものは予想通り。市場は今後の利上げペースがどうなるのかを注目していた。

 ドットチャートと呼ばれる、FOMCメンバーが予想するFFレートの水準をドットの分布で表現したグラフによれば、2019年の利上げ見通しは前回予測の3回から、今回は2回となった。さらに中長期的に適切とみる政策金利の水準を2.75%と、9月時点の3.0%から引き下げた。

 しかし「いくらかのさらなる段階的な」(some further gradual)」利上げが必要になるとの認識も示しも、利上げ継続との姿勢を示した。

 ただし、FOMC声明文には「世界景気や市場動向を注視し、景気見通しへの影響を分析する」との表現が加わり、今後の景気減速への懸念とともに、株式市場の動向等にも注意する姿勢を示した。

 市場はこの程度のブレーキでは踏み込み不足と認識したようで、19日のダウ平均は351ドル安となった。いわゆるパウエルプットを市場は期待していたものとみられる。

 そもそも米利上げが米国株式市場の調整等の主因であったわけではない。米中間を巡る貿易戦争などが解決に向かわない限り、さらに世界的な景気減速観測が後退しない限り、市場の地合が大きくかわるとは思えない。金融政策だけが金融市場の決定要因ではない。しかし、市場が最終的に期待してしまうのは、中央銀行の金融政策となってしまっていることも確かである。

 19日の米10年債利回りは一時2.75%に低下した。株式市場の下落によるリスク回避の動きもあったかもしれないが、株式市場が踏み込み不足と認識したのであれば、米債は売られてもおかしくはない。それにもかかわらず2.75%という今回中長期的に適切とみる政策金利の水準まで低下したのは、FRBの利上げにブレーキが掛かるとの認識によるものではなかろうか。

 そもそも簡単に中長期的に適切とみる政策金利の水準を引き下げて良いものなのか。このあたり、厳密に数値を出すことができないものであり、これそのものがFRBの姿勢を示す数値ともいえるのではなかろうか。つまりこの引き下げにより、今後の利上げはかなり慎重に行うであろうことを示したともいえる。

 そうであれば来年の利上げについては、景気物価動向次第となるものの、今回でひとまず正常化に向けた利上げを停止する可能性もありうる。パウエル議長はこのあたり柔軟に対応してくる可能性があるのではなかろうか。


# by nihonkokusai | 2018-12-21 09:44 | 中央銀行 | Comments(0)

そっと更新されていたアベノミクス

 先日、ツイッターで興味深いツイートがあった。首相官邸のアベノミクス「3本の矢」というページが更新されなくなっていたというのである。そのページを確認してみると、下記のようになっていた。

 「このページは現在更新しておりません。「日本再興戦略」改訂2014(成長戦略2014)の内容をわかりやすく解説したページです。最新の情報は、こちらをご覧ください。」

アベノミクス「3本の矢」

 この表現を見る限り、すでにアベノミクスは一定の役割を終えて、次のステージに移行しているかのような記述となっている。更新されなくなったアベノミクス「3本の矢」の成果については下記の表現があった。

 「すでに第1の矢と第2の矢は放たれ、アベノミクス効果もあって、株価、経済成長率、企業業績、雇用等、多くの経済指標は、著しい改善を見せています。また、アベノミクスの本丸となる「成長戦略」の施策が順次実行され、その効果も表れつつあります。」

 肝心の「物価」はどこに行ったのか。日銀による非常時対応というべき異次元緩和は2%という物価目標達成のために、政府の意向を組んで行われたものであった。2本目の経済政策についても具体的な成果は見えないなか、金融政策の異常さだけが際立っている。そしていつのまにか本丸が「成長戦略」になっていた。

 その異常な金融政策を行っても、目標とした物価上昇はなかったが、結果として株価、経済成長率、企業業績、雇用等が改善したと結論づけるのはおかしくはないか。仮にそうであったとして、その具体的な経路についての説明が求められよう。

 そして、「最新の情報は、こちらをご覧ください。」とのリンク先にあるのは、「アベノミクス 成長戦略で明るい日本に!」というページである。

 「平成30年6月15日、「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革に向けて、未来投資戦略2018を閣議決定しました。「未来投資戦略2018」では、IoT、ビッグデータ、AI、ロボッ トなどの第4次産業革命の技術革新を存分に取り込み、「Society 5.0」を本格的に実現するため、各種の施策の着実な実施を図りつつ、これまでの取組の再構築、新たな仕組みの導入を図ります。」

 どうやらこれが「アベノミクス改」であるようである。もし当初のアベノミクス「3本の矢」が期待された成果が得られ、このため次のステージに移行したというのであれば、日銀の異常な金融緩和政策をより柔軟化させても問題はないということであろうか。そうであれば、その副作用を早めに軽減させるために日銀が動いても政府は干渉しないということで良いのであろうか。


# by nihonkokusai | 2018-12-20 08:01 | アベノミクス | Comments(0)

仮想通貨の呼び名を「暗号資産」に改める。ビットコインは通貨ではない理由

 金融庁はビットコインなどインターネット上で取引される仮想通貨の呼び名を「暗号資産」に改める。日本円やドルなどの法定通貨と誤解される恐れがあるほか、20カ国・地域(G20)会議などの国際会議で暗号資産との表現が主流であるため日本でも統一する(18日付日本経済新聞)。

 この記事には有識者で構成する「仮想通貨交換業等に関する研究会」で報告書案を示したとあり、金融庁のサイトで確認したところ、「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第11回)の報告書の最後の方に次のような記述があった。

 「最近では、国際的な議論の場において、“crypto-asset”(「暗号資産」)との表現が用いられつつある。また、現行の資金決済法において、仮想通貨交換業者に対して、法定通貨との誤認防止のための顧客への説明義務を課しているが、なお「仮想通貨」の呼称は誤解を生みやすい、との指摘もある。こうした国際的な動向等を踏まえれば、法令上、「仮想通貨」の呼称を「暗号資産」に変更することが考えられる。」

「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第11回)の報告書

https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20181214-1.pdf

 ここで議論されそうなのは、そもそも通貨とは何かとの問題となる。貨幣は、石であったり貝であったり、金銀であったり、紙であったりするが、そもそもそこに存在すべきものは、それを使う人との間での「信用」となる。その信用を維持させるために、長きにわたる金融の歴史が存在する。その結果として、現在は政府から独立した中央銀行が発券機能を有するようになり、管理通貨制度が発達してきたのである。

 ただし、これは歴史の途中でのものとの認識もあろう。日本では明治時代の途中までは中央銀行など存在していなかった。それとは異なるシステムが歴史とともに構築されてきた。そうとなれば、ビットコインなど仮想通貨と呼ばれたものが、あらたな通貨として流通する可能性も当初は意識されたものと思われる。

 しかし、現代の金融システムはかなり高度化、複雑化している。通貨を巡るインフラ整備についても、かなりの労力と費用が投じられている。そうでなければ万全の通貨インフラは構築できない。そのための機能を果たしているのが中央銀行である。中央銀行は金融政策だけを行っているわけではない、というよりもそのほとんどの機能が通貨インフラのためにあるといっても過言ではなく、金融政策も通貨価値を安定させるためのものである。

 そこに管理者不在ともされる仮想通貨が出てきても、インフラの不備が仮想通貨そのものの信認を得られず、残念ながら通貨としては認められないという結論となってきている。

 さらに投機的な動きも出たことによって、安定させるべき価値が乱高下してしまったことも通貨としての役割を担うには無理がある。通貨には価値尺度という機能もあり、その機能も見いだせないこととなる。通貨の交換機能についても、紙幣などに比べてかなり使いづらい。当然ながら日本国中どこでもいつでも使えるわけではない。貨幣のもうひとつの役割、保存についても、仮想通貨の流出問題があり、やはり通貨としての機能に問題がある。

 いずれにしても、ビットコインなどは通貨と呼べるものでは決してない。その意味では「暗号資産」との呼び方の方が理に適っていよう。


# by nihonkokusai | 2018-12-19 09:47 | 金融 | Comments(0)

海外投資家が日本国債を大量に購入、その背景とは

 財務省が13日に発表した12月2日~12月8日の対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)によると、対内中長期債投資は1兆7175億円の買い越しとなった。買い越しは3週連続となり、2005年1月までさかのぼる財務省のデータによると、これは過去最高となるそうである(ロイターとブルムバーグの記事参照)。

 財務省の対外及び対内証券売買契約等の状況(週次・指定報告機関ベース)をあらためて確認すると、12月2日~12月8日は短期債も1兆9616億円買い越しており、短期債も加えると3兆6791億円もの買い越しとなっていた。

 日本の債券市場は10月下旬あたりから上昇基調となっているが、この背景にはこのような海外投資家による根強い買いとともに、米国債の上昇があった。さらに債券先物はナイトセッションの出来高も多くなっていることから、海外投資家は債券先物にも仕掛け的な買いを入れていたように思われる。

 海外投資家が中短期債を主体に日本国債を購入しているのは、ドル円ベーシススワップの上乗せ金利が拡大していたことが背景にあった。ドルを円に替えて投資すると上乗せ金利が発生し、多少のマイナス金利でも利ざやが稼げるという仕組みとなっている。

 これに対して日本国内の投資家にとっては、すでに10年近い金利がマイナスとなっていることで、10年未満の国債で満期資金運用するとマイナスの収益となってしまう。このため、日銀担保などの用途以外ではマイナス金利となっている中短期債には投資しづらい環境にある。

 かろうじてプラスの金利となっている10年を超える国債の利回りでも、ここにきての急速な利回り低下で、さらに運用しづらい環境となっている。しかし、海外投資家は上乗せ金利が発生する限りは、積極的な日本国債の購入が可能となっている。

 念のため、これは政治的な何かしらの意図を持った買いではないとみられる。日本国債を政治目的で大量に保有してもあまり意味をなさないように思われる。

 そもそも最も日本国債を保有しているのは日本銀行であることで、海外投資家による買い占めといったことは起こりえない。それでも日本国債の保有者はかなり偏りつつあることも確かである。

 日本銀行による国債の大量買入が永遠に続くことは考えづらい。実際に日銀は14日に残存5年超10年以下の国債買入額を減額するなど買入額を減少させつつある。来年度の国債発行額は20年以下が減額される見込みともなっているため、日銀はさらに減額させてくるとみられるものの、それでもその存在感は大きい。

 日銀の日本国債の大量買入と状況次第では売り方に回りかねない海外投資家の日本国債の保有額の増額は、今後の出口政策をさらに困難にさせかねない。


# by nihonkokusai | 2018-12-18 09:41 | 国債 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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