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中国の習近平国家主席の発言で貿易摩擦懸念は、ひとまず後退

 中国の習近平国家主席は10日、中国海南省で開催中の博鰲(ボアオ)アジアフォーラムで演説し、「開放の新たな段階」を約束した。 演説は新政策をほとんど提示しなかったものの、輸入促進や製造業の外資保有制限緩和、知的財産権の保護拡大に向けた提案を確認ないし膨らませた。

 トランプ大統領はツイッターで、「関税や自動車障壁に関する中国の習主席の丁重な言葉に深く感謝する」と述べ、「知的財産と技術移転に関する見識」にも謝意を示し、「われわれは共に大きく前進する」と記した。(以上、ブルームバーグの記事より引用)。

 トランプ政権は3月23日に米通商拡大法232条に基づき、鉄鋼・アルミニウム製品の輸入制限を発動した。国内の鉄鋼・アルミ産業の衰退が「国家の安全保障上の脅威になる」として、一部の例外国を除き、鉄鋼は25%、アルミは10%の追加関税を課す。また、3月22日に1974年通商法301条に基づく対中制裁措置の発動を決定し、これにより情報通信機器や機械など約1300品目を対象に25%の関税を課すことになる。

 これに対して中国は4月4日に米国からの輸入品約500億ドル相当に25%の追加関税を課す計画を発表した。対象には大豆や自動車、化学品、航空機などが含まれた。米国のトランプ政権が打ち出した関税措置への対抗策といえる。

 これに対してトランプ大統領は5日に声明文を公表し、中国の不当な報復を踏まえて、1000億ドルの対中追加関税の検討を通商代表部(USTR)に指示したことを明らかにした。自分で仕掛けておきながら、やられたらやり返す、まさに貿易戦争を仕掛ける気なのかと市場は危惧した。

 このため10日の中国の習近平国家主席による発言が注目されていた。場合によると中国も態度をさらに硬化させて、貿易戦争がエスカレートするのではとの危惧も出て当然の状況となっていた。

 しかし、今回の中国の習近平国家主席の演説では、対抗措置といったものは出されず、新たな施策は出なかったものの、米国に配慮したような格好となっていた。

 トランプ大統領は演説等ではなくツイッターを利用して威嚇のような発言を繰り返すことで、市場はその真意が読み取れずにいた。ただし、以前にムニューシン財務長官が米政権が中国との間で建設的な対話をしていると発言するなど、米中の政府間で水面下の協議が進展しているのではとの観測もあった。

 貿易戦争がエスカレートして困るのは中国ばかりでなく、多少なり米国にも影響を与えかねない。それ以上に金融市場の混乱そのものが景気に悪影響を及ぼす懸念もある。当然ながら、ここにきての米国株式市場の動向などはトランプ政権も気に掛けていたのではないかと思われる。

 今回の中国の習近平国家主席の発言を見る限り、中国としても妥協点を探るような動きとなっているのではなかろうか。トランプ大統領の真意は読み取れないが、中間選挙を睨んで、公約は守っており、それによって米景気は上向いていることをアピールする狙いがあるとみられる。そのあたりも中国には見透かされている可能性もある。トランプ大統領が習近平国家主席の発言に、すばやく好意的な対応をみせたのも中国側の出方をある程度、読んでいた可能性がある。


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# by nihonkokusai | 2018-04-12 09:46 | 国際情勢 | Comments(0)

セブンイレブンが独自のスマホ決済を導入するそうだが

 コンビニ最大手のセブンーイレブンが、スマートフォンで支払いができる独自の決済サービスを来年春をめどに導入することになったそうである(NHK)。

 スマホを使った独自の決済サービスには、たとえば「Google Pay」、「Apple Pay」、「楽天ペイ」、「LINE Pay」、「モバイルSuica」などがある。しかし、現状ではスマホを使っての決済は特に日本ではそれほど普及してはいない。

 NHKニュースでは「コンビニ最大手のセブンーイレブンで、スマホを使った決済が本格的に導入されることで、キャッシュレスの動きが加速しそう」と指摘していたが、またひとつ新たなスマホ決済が増えるだけのような気がする。これがnanacoカードのように使えるところが限られものであれば、幅広く普及することは考えづらい。すでにnanacoカードを保有している人が、スマホの決済に買えるインセンティブもあまりない。

 スマホの決済を日本で普及させるには、現金のようにいつでもどこでも手軽に使えるものでなければならない。日本での現金主義の背景はいろいろと指摘されているが、安全性や流動性、治安の良さなどに加えて、ATMで現金が引き出せる利便性なども影響している。

 日本人にはスマホで決済する事に対しての壁みたいなものも存在している面もあるのではなかろうか。クレジットカードの普及によってカードに対する信頼性は多くの人が持っているとみられ、小銭入れにはクレジットカードだけでなく、多種多様なカードが入っている。しかし、それをスマホのアプリに置き換える人はそれほど多くはないのではなかろうか。

 スマホ決済に対する信頼度を現金利用のように高め、普及を促すには、それを使っても安心であり、特定の場所ではなく、日本全国いたるところで使えるものにしなければならない。ポイントなども大事かもしれないが、それは上記のようなセブンーイレブンのサービスの利用などにまかせて、普及させるためのスマホ決済サービスは、ほぼ現金と同じ利用とすべきである。それには利用者とともに店舗などでの手数料もかなり抑える必要がある。日銀券の利用に対して日銀は特に手数料などは徴収はしていない(ATM利用の場合に手数料は発生するケースはあるが)。

 そうであれば、メガバンク主導のモバイル決済の規格統一のほうが期待は持てるように思われる。日本ではデビットカードの利用はあまり普及していない。これは少額取引は現金かプリペイドカード、高額取引はクレジットカードを利用することで、デビットカードの出る幕がなかったためとみられる。

 スマホで自分の口座の現金を直接利用して決済する方式で、利用できる箇所が少なくともクレジットカードが利用できるところ程度は存在し、決済に対する時間がクレジットカード程度かそれ以下で、店側としての費用負担も極めて低いとなれば、スマホでの決済が国内でも普及する可能性はある。ただし、その普及にはスマホでの決済への信用度を高める工夫も求められるかもしれない。



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# by nihonkokusai | 2018-04-11 09:59 | 金融 | Comments(0)

日銀法改正から20年、新日銀法の目的を再確認すべき

 1998年4月1日に日本銀行法の全文改正を内容とする日本銀行法(日銀法)が施行され、それから20年が経過した。日銀法の第一条と第二条には下記のように記されている。

第一条 日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。

第二条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。

 我々の持っているお札の表には赤い印章があるが、これは「日本銀行総裁」の印章で、「総裁之印」と篆書(てんしょ)という字体で書かれている。日銀券というお札は我々が安心して使えるように日銀総裁がその価値を保証していることになる。日銀はその日銀券(銀行券)を発行し、それが円滑に流動するようにさせることが大きな役割となっている。

 さらに物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念としている。この場合、物価の安定というのは、通貨価値を安定させることであり、通貨価値の大きな変動を抑えて、国民経済の発展を阻害しないようにさせることが目的となっている。

 ここではいくつか注意すべきことがある。通貨の価値については、あくまで対内的な価値であり、対外的な価値、つまり外為市場での円のドルやユーロに対する価値を安定させることが目的ではない。それは財務省の仕事となっている。

 もうひとつ、通貨価値を変動させることによって、国民経済の健全な発展を促すことは直接的な目的ではない。あくまで「資する」(ある物事に対し材料を与えて助けとする)ことであり、補助的なもので主導的なものとはなっていない。

 つまりは2%という物価目標を設定し、それを金融政策によって無理矢理達成させて、それによって景気を良くするという、現在の政策が本当に日銀法に書かれた理念にあっているのかは疑問である。

 2%が日本での適切な物価の安定すべき水準であるのかについても疑問が残る。その物価を金融政策が能動的に動かすべきなのか、そもそも金融政策で動かせるのかという疑問もある。無理矢理動かそうとして副作用はないのか。2%を金融政策で達成して本当に国民経済の健全な発展に資するのか。

 日銀の異次元緩和からは4月3日で5年が経過した。これにより金融政策だけで能動的に物価が動かせないことを日銀は自ら証明したことになる。それは消費増税があろうがなかろうか関係はない。さらに消費者物価指数に影響を与える原油価格の動向、外為市場の動向、原油価格の動向、さらに天候もそうであり、いずれも日銀が金融政策で動かせるものではない。

 しかし、結果として物価目標は達成できないにも関わらず、日本国債を4割以上も日銀が保有することになってしまい、日本の債券市場は仮死状態に陥っている。これをもって副作用はないなどと果たして言えるのであろうか。


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# by nihonkokusai | 2018-04-10 09:53 | 日銀 | Comments(0)

4月9日から新執行部での体制がスタート、日銀の金融政策は変わるのか

 3月20日に雨宮正佳副総裁と若田部昌澄副総裁が就任した。4月8日に任期を迎える黒田東彦総裁は続投となり、4月9日から新執行部での体制がスタートした。雨宮理事の副総裁への就任により、空席となった理事ポストに内田真一名古屋支店長を昇格させる人事が4月1日付で発表されていた。内田理事は、国際局と国際関係統括を担当する一方、企画局・金融市場局、金融研究所は前田栄治理事が担うことになった。

 新体制となったとはいえ、雨宮副総裁は理事当時、日銀の大胆な金融政策の道筋を作った人物でもあり、それを補佐していたのが当時局長であった内田理事である。黒田総裁も続投ということで、日銀の金融政策についてはこれまでの姿勢を維持するというか、維持できるような調節を行ってくるものと予想される。

 企画担当となる前田理事は金融政策立案の責任者として、黒田総裁が率いる執行部を支えることになる。雨宮前理事の路線が継承されることになろうが、市場では日銀の出口戦略をかなり意識していることで、今後はどのようなかたちで出口戦略の道筋を示すことができるのかも注目されよう。

 波乱要因となりそうなのが、リフレ派とされる若田部副総裁の存在となるが、こちらも結果として岩田前副総裁と同様のスタンスになるのではないかと思われる。総裁と副総裁の執行部が一丸となって、物価目標の達成に向けて現在の長短金利操作付き量的・質的緩和を維持させていくスタイルを継続していくものと思われる。

 若田部副総裁がリフレ派としての持論を押し通す可能性もなくはない。とはいえ片岡審議委員のように現状の政策に異議を唱えることは、いまのところは考えづらいのではなかろうか。それでも最初の金融政策決定会合となる4月26、27日の結果については念のため注意する必要がある。

 現在の日銀の金融政策に大きな変化が生じるとなれば、その要因となりそうなのは安倍政権の動向と言える。目標とする物価については足元で前年比プラス1.0%となっているが、ここから2%まで上昇していくことは、原油価格の急騰等がなければかなり難しい。2%を絶対目標と置いている以上は、いまの金融政策そのものを動かすことは難しくなる。しかし、今秋の自民党総裁選の結果として、首相が変わるようなことになるとアベノミクスの柱でもあり、出口を封じ込めている格好となっている現在の日銀の金融政策の修正が迫られる可能性があるかもしれない


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# by nihonkokusai | 2018-04-09 10:19 | 日銀 | Comments(0)

米国が中国に追加関税?米国株式市場に対して火に油を注ぐトランプ大統領

 中国は4日に米国からの輸入品約500億ドル相当に25%の追加関税を課す計画を発表した。対象には大豆や自動車、化学品、航空機などが含まれた。米国のトランプ政権が打ち出した関税措置への対抗策といえる。

 これを受けて4日の米国株式市場は急落し、これに驚いたの米政府高官は中国を批判しつつも、交渉を通じて制裁発動を避ける可能性に言及した。国家経済会議(NEC)のクドロー委員長はテレビで「市場は過剰反応しないでほしい」と呼びかけ、今後数か月の交渉を通じて最終的に関税発動を見送る可能性は「ある」とまで指摘。ロス商務長官もテレビのインタビューで「米市場がこんなに驚くこと自体が驚きだ」と語った。

 米政府高官が火消しに走ったことも好感し、4日の米国株式市場は、急速に買い戻されてダウ平均は230ドル高で引けた。5日のダウ平均も240ドル高となっていた。

 これに気をよくしたのか、それとも金融市場の動向などはおかまいなしなのか、トランプ大統領は5日に声明文を公表し、「中国の不当な報復を踏まえて」1000億ドルの対中追加関税の検討を通商代表部(USTR)に指示したことを明らかにした。自分で仕掛けておきながら、やられたらやり返す、まさに貿易戦争を仕掛ける気なのか。

 中国との貿易戦争拡大となれば、こちらも米株の上昇に大きく貢献してきたボーイングやキャタピラーなど中国依存度の高い企業に対しても当然、影響が出てくる。

 さらにトランプ大統領はこれまでアマゾン・ドット・コムが米郵政公社(USPS)に非常に安い料金で商品を配送させているうえに、税金を十分に支払っていないとして、同社への攻撃を繰り返していた。これについては、ホワイトハウス内では規制など具体的な議論はされていないと報じられるなど、やはり米政府高官が火消しに走っていた。しかし、そんなことはおかまいなく、トランプ米大統領は5日、ネット通販大手アマゾン・ドット・コムを巡り真剣に政策を検討する考えを示した。

 フェースブックによる個人情報の流失問題などから、これまで米国市場の上げを先導してきたIT関連株が不安定な動きを見せてきているが、それもやっと収まってきたかと思われるタイミングで今回のアマゾンに対する発言も火に油を注ぐことになる。

 どうやらトランプ大統領は自国の株価を下落させたがっているようにしか見えないのであるが。ちなみに6日の米国株式市場では米中の貿易摩擦を警戒してダウ平均は572ドル安となっていた。


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# by nihonkokusai | 2018-04-07 09:35 | 金融 | Comments(0)

米国株式市場が乱高下した要因を探る

 金融市場の動きは波にも例えられる。漣が長期にわたり続くことがあり、それが突然変化して大波が襲い、しばし荒れ狂う波が押し寄せる。これはボラティリティという言葉でも表現される。ボラティリティとは金融資産の価格の変動の大きさを示すパラメータである。これが小さいと値動きが小さいことを示し、大きくなると荒れた値動きとなる。

 4月4日の米国株式市場はまさにボラティリティの大きな相場展開となった。中国は4日に米国からの輸入品約500億ドル相当に25%の追加関税を課す計画を発表した。対象には大豆や自動車、化学品、航空機などが含まれた。米国のトランプ政権が打ち出した関税措置への対抗策といえる。

 これが発表されたのは、米国株式市場が開く前であったが、24時間取引されているグローベックス(CMEグループが運営する24時間稼働の電子取引システム)で、米株先物が急落していた。また、商品取引で大豆が急落するなどしていたことで、市場が動揺を示していた。

 このため4日に米国株式市場が開始されると売りが殺到し、特に中国に関係する企業、たとえば中国の売上比率が高い航空機のボーイングなどが大きく売られ、ダウ平均は寄り付き直後に500ドル超下げる場面があった。

 これに驚いたのが米国政府であったようである。トランプ大統領は選挙公約もあり、異例の輸入制限措置を発動したものの、貿易戦争を起こす気はなく、水面下では中国と交渉していたとされている。しかし、中国の関税措置への対抗策をみて、とくに米国内の影響も大きい大豆なども含まれていたことに、市場は動揺を示した。

 このため米政府高官は中国を批判しつつも、交渉を通じて制裁発動を避ける可能性に言及した。国家経済会議(NEC)のクドロー委員長はテレビで「市場は過剰反応しないでほしい」と呼びかけ、今後数カ月の交渉を通じて最終的に関税発動を見送る可能性は「ある」とまで指摘した(日経新聞電子版)。

 ロス商務長官もテレビのインタビューで「米市場がこんなに驚くこと自体が驚きだ」と語ったようだが、米政権と市場との対話が進んでいなかったことのほうが驚きであったように思われる。

 4日の米国株式市場はこれら政府関係者による発言を受けて、急速に買い戻されてダウ平均は230ドル高で引けた。5日も続伸となっている。

 なぜこれほどまでに値動きが荒くなったのか。これには相場の地合が2月以降に変化し、市場参加者がかなり神経質となっており、その結果として日々のボラティリティが大きくなっていたことがひとつの要因となっている。また、アルゴと呼ばれるシステム系の売買が更に値動きを大きくしている側面もある。

 いずれにしてもこのような相場変動を抑えるためには、今回の関税の問題では米経済に与える影響等に配慮している姿勢をはっきり示し、透明度を高める必要もあろう。しかし、トランプ大統領によるつぶやきが市場を混乱させる要因ともなっていることで、市場の疑心暗鬼は当面続くことも予想される。


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# by nihonkokusai | 2018-04-06 07:47 | 金融 | Comments(0)

日銀の異次元緩和5周年、その間に何が起きて今後はどうするのか

 日銀は2013年4月4日の金融政策決定会合において「量的・質的金融緩和」の導入を決めた。それから5年が経過した。

 量的・質的金融緩和では、消費者物価指数(除く生鮮食料品)、いわゆるコアCPIの2%という物価目標に対しては2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するため、マネタリーベース(現金通貨と日銀の当座預金残高)および長期国債・ETF(上場投資信託)の保有額を2年間で2倍程度とし、長期国債の平均残存年数を現行の2倍以上にするなど、量・質ともに次元の違う金融緩和を行うとした。その中心となるのが大規模な国債の買入によるマネタリーベースの倍増であり、またイールドカーブ全体にわたって引き下げようというのが中間的な目標(総裁会見より)となっていた。

 リフレ的な政策を全面に打ち出した安倍政権によるアベノミクスは、その一本目の矢の仕上げとして日銀に大胆な金融緩和を要求し、それを自ら選んだ黒田日銀総裁が実行に移した(実際には当時の雨宮理事が主導したとみられる)。 いわゆる日銀理論をベースとした政策から金融政策のレジーム・チェンジ(体制転換)が行われ、リフレ政策をベースにした政策に転じることになった。

 この背景には安倍首相のブレーンとなった浜田宏一氏や本田悦朗氏らの影響が大きかったとみられる。2013年3月20日にはリフレ派筆頭ともいえる岩田規久男氏が日銀の副総裁に就任した。その後、原田泰氏や櫻井眞氏、片岡剛士氏などがリフレ派に推されて審議委員となった。今年3月20日からは岩田氏に変わって、やはりリフレ派の若田部昌澄氏が副総裁に就任している。

 それではこのリフレ派が押した政策がどのような結果をもたらしたのか。目標が物価である以上はその結果も当然、物価で確認する必要がある。目標そのものは途中で消費者物価指数の総合から生鮮食料品を除く総合(コア)へと修正されたが、コアCPIのピークは2014年4月のプラス1.5%となったが、2016年7月にはマイナス0.5%まで低下し、直近ではプラス1.0%となっている。2013年4月から2018年2月までのコアCPIの平均値はプラス0.4%となっていた。

 あれだけ大胆な金融緩和策を行っていながら、なぜ物価目標は達成されないのか。岩田前副総裁は、その要因として2014年4月の消費増税の影響を指摘しているが、消費増税がなかったならば物価目標は達成できていたのであろうか。物価目標は達成できずとも雇用は改善し景気も拡大しているため、予想通りの金融緩和の効果はあったとする見方もあるが、それはいったいどのような波及経路からそのような結果が導き出されるのか。

 ちなみに日銀は物価目標が達成できないことなどから2014年10月に量的・質的緩和の拡大を決定、2015年12月に金融緩和の補完措置を決定、2016年1月にマイナス金利付き量的・質的緩和の導入を決定、同年9月に長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定し、この際に物価目標は総合からコアに置き換え、金融政策の調整目標を量から金利に戻している。

 量的・質的緩和の拡大は円安効果を狙って単純に規模を拡大しただけだが、国債の買入の量には現実的な限界があり、2015年12月の補完措置で買入れの期間を延ばす修正を加え、量に限界があることで2016年1月にマイナス金利政策を行ったものの、金融機関等からの批判もあり、同年9月に長短金利操作付きとして批判をかわした上で、限界のある量から金利に調整目標を変更させて、当初に想定していたイールドカーブ全体にわたって引き下げることを前面に打ち出してきた。結果としてそれで物価は上がるのかという問題は残り、これだけの大胆な緩和策を打ち出して、その後始末はどうするのかというのも今後の大きな課題となってくる。


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# by nihonkokusai | 2018-04-05 09:26 | 日銀 | Comments(0)

今年度の国の予算と国債の発行計画を再確認

 3月28日に2018年度予算は政府案どおり成立した。昨年12月22日に出された2018年度予算政府案とそれにともなう2018年度の国債発行計画を再確認したい。

 2018年度予算案は一般会計の総額で97兆7128億円程度と、2017年度の当初予算を2581億円程度上回り、過去最大となった。歳入のうちの税収は59兆790億円、その他収入は4兆9416億円、公債金(新規国債発行で補われるもの)が33兆6922億円となる。歳出では国債費(国債の利払い償還)が23兆3020億円、一般歳出が58兆8958億円、地方交付税交付金等が15兆5150億円となっている。

 新規国債(建設国債と赤字国債)の発行額は33兆6922億円となり、昨年度当初予算からは6776億円の減額となり、三次補正後では1兆8624億円の減額となる。

 2018年度の国債総発行額は149兆8856億円となり、これは昨年度当初からは4兆778億円の減額、三次補正後でみると6兆2395億円の減額となる。新規国債が昨年度の当初から6776億円減額され、復興債が5582億円の減額、借換債は2兆8420億円減額される。

 国債総発行額の149兆8856億円のうち、入札等で発行されるカレンダーベースの国債発行額は134兆2000億円となる。昨年度当初に比べると7兆円の減額。発行総額とカレンダーベースの差額は個人向け国債発行や日銀乗り換え分となる。個人向け国債については0.05%という最低保証利回りが功を奏して人気化していることで、今年度は3兆3000億円の発行予定となっている。昨年度当初に比べ3000億円の増加。また日銀乗り換えは2兆5000億円と昨年度の3兆円から5000億円の減額となっている。日銀乗り換えとは、日銀が保有している国債が満期償還を迎えると、1年間に限って現金償還を延長し、現金の代わりに短期国債を発行し、それを日銀が引き受けるというもの。

 今年度の前倒債の発行限度額は55兆円(昨年度の56兆円から減額)。前倒債とは借換債の弾力的な発行などを可能にするため、会計年度を越えて発行される借換債のこと。このように限度額が決められているが、その範囲内で金融情勢などに応じた発行が可能となっている。これはいわば何かあったときのバッファーともいうべきもので、何かの事情で国債入札ができなくなった際にもこの範囲内で調整が利くことになる。

 カレンダーベースの年限別の国債発行額をみてると、40年債が今年度は4000億円6回と昨年度当初の5000億円6回から減額される。30年債は7000億円が12回と昨年度の8000億円12回から減額。20年債は1.0兆円12回と変わらず、10年債は2.2兆円が12回と昨年度の2.3兆円12回から減額され、5年債は2.0兆円12回と昨年度の2.2兆円12回から減額され、2年債は2.1兆円12回と昨年度の2.2兆円12回から減額される。1年物短期国債も都合2.2兆円減額となる。10年物物価連動国債は変化なし。日銀の大量の国債買入の影響を受けている市場に配慮して流動性供給入札は1.8兆円増額となる。

 これらはほぼ国債市場特別参加者会合などでの参加者からの意見を組み入れた格好となる。日銀による大量の国債買入が継続されるなか、国債発行額が減額されることにより、今年度の国債の需給はさらにタイトになることが予想される。


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# by nihonkokusai | 2018-04-04 09:59 | 国債 | Comments(0)

日銀短観が景気や株価の目先のピークアウトを示す

 2日に発表された日銀短観ではヘッドラインとして注目される大企業製造業DIがプラス24となり、前回の2017年12月調査のプラス26から悪化した。悪化したのは8四半期ぶりとなる。先行きについてもプラス20とさらなる悪化を見込んでいる。

 大企業非製造業DIもプラス23と前回のプラス25から悪化し、先行きもプラス20とさらなる悪化を見込んでいる。

 素材業種を中心に原料高が押し下げ要因となったと指摘されている。

 過去の動きをみると、日銀短観の大企業製造業DIのトレンド変化と日経平均のトレンド変化が重なることが多い。

 今回の日銀短観の短観での悪化によって、大企業製造業DIがいったんピークアウトした格好となった。日経平均の動きをみると今年の1月23日を目先のピークとして、2月に入っての米国株式市場の大幅調整もあり、すでに目先のピークアウトを迎えている。

 これは米国株式市場の影響が大きく、外的要因によるものとみられていたが、今回の短観を見る限り、国内経済についてもこの期間中にいったんピークアウトしていたとの見方ができるかもしれない。そうなると日経平均が、なかなか戻り切れないのも企業の景況感の変化も影響している可能性がある。

 また、事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)が2018年度のドル円で109円66銭と、足元の106円近辺あたりからは円安に想定されていることも、不透明要因となっているのかもしれない。


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# by nihonkokusai | 2018-04-03 09:17 | 景気物価動向 | Comments(0)

消費者物価指数の前年比が上昇、その背景にあるものとは

 3月23日に発表された2月の全国消費者物価指数は総合で前年同月比プラス1.5%となった。そして、日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合(コア)では前年同月比プラス1.0%となり、14か月連続でのプラスとなるとともに、消費増税の影響を除いたベースで、2014年8月のプラス1.1%以来3年6か月ぶりの上昇率となった。

 生鮮食品を含む総合のプラス1.5%というのは消費増税の影響を除いたベースで2014年6月のプラス1.6%以来3年8か月ぶりの水準となった。こちらは生鮮食料品の一部、キャベツやミカン、マグロなどの高騰が背景となっていた。

 コア指数については電気代やガソリンなどエネルギー品目が引き続き押し上げた格好となった。

 ちなみに生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)は前年比プラス0.5%と、こちらもじわりじわりと前年比を拡大させている。

 この消費者物価指数の動きをみると、ここにきてやっと日銀の大胆な緩和策が奏功して物価が上がってきたようにみえなくもない。しかし、それには5年近くのラグが必要だということになるというのであろうか。

 現在の日銀は調節目標を量から金利に変えて、長短金利操作付き量的・質的緩和策を行っている。イールドカーブをコントロールというか、国債の利回りを抑えつける政策を行っているが、果たしてこれがどのような経路で物価上昇に働きかけているのであろうか。

 ここにきての日本の消費者物価指数の前年比が拡大してきた背景としては、生鮮食品を含む総合については生鮮食料品の高騰が大きく影響していた。そして、その生鮮食料品を除いたコア指数は、原油価格の回復が押し上げ要因となっている。

 生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)も前年比プラス0.5%となっているが、こちらも原油価格の上昇による石油製品に絡んだ値上げ等の影響もあるとみられ、世界的な景気拡大による息の長い景気の回復も少なからず影響はしていよう。その意味では日銀の金融緩和効果がまったくなかったわけではないかもしれないが、今回の消費者物価指数の上昇要因をみても、それが直接大きな影響を与えてはいるとは考えづらい。

 日銀は副総裁が入れ替わった事で新体制がスタートした。今後も現在の大胆な緩和策を物価目標達成まで継続するとしているが、これまでの異次元と呼ばれた緩和策とそれによる物価への影響についてもう一度、検証してみることも必要ではなかろうか。無理に出口に向かう必要はないかもしれないが、頑なに物価目標を達成しなければならないとの姿勢を微調整し、もう少し柔軟な政策にモデルチェンジすることも必要なのではなかろうかと思う。


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# by nihonkokusai | 2018-04-02 09:37 | 景気物価動向 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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