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実感なき景気回復から、実感ある景気減速に

 「アップルが29日発表した2018年10~12月期決算は、売上高が前年同期比5%減の843億1000万ドル(約9兆2200億円)だった。主力商品である「iPhone」の中国販売が想定よりも落ち込み、9四半期ぶりに前年実績を割り込んだ。19年1~3月期も前年同期比で減収を予想しており、不振が長びく可能性が出てきた」(30日付日経新聞電子版)。

 iPhoneの中国における販売の低迷の要因としては、米中の貿易摩擦による影響も大きかったとみられる。しかし、スマートフォンとしては高額なiPhoneへのニーズそのものが後退していた可能性がある。

 中国国家統計局が21日に発表した2018年の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除いた実質で前年比6.6%増となり、天安門事件の影響で経済が落ち込んだ1990年の3.9%増以来、28年ぶりの低水準となっていた。この景気減速もあっての高額なiPhoneへの買い控えが起きていたのではなかろうか。

 画像処理半導体エヌビディアは2018年11月~19年1月の売上高を2割下方修正していた。こちらには仮想通貨バブルはじけたことも要因として指摘されているが、サーバーなどへの投資そのものが手控えられていることも要因とされている。

 半導体景気が失速したことによって、韓国の2018年のGDPも3年ぶりの減速となり、2012年以来、6年ぶりの低水準となった。ハイテク投資の落ち込みは日本経済にも少なからず影響をもたらすことが予想される。

 iPhoneの地域別の売り上げでは中国で27%も減ったが、日本でも5%減少していた。今後は日本で端末と通話料金の分離が進むとされ、通話料金が下がれば、端末の実質負担が大きくなる可能性がある。そうなると10万円もの携帯を2年おきに乗り換えるといったインセンティブは低下してくる可能性がある。景気が後退してくればなおのことになるのではなかろうか。

 半導体などのハイテク需要は個人向けだけではなく、法人企業向けも大きいが、こちらも景気動向に大きく左右される。米中の貿易摩擦が景気減速要因となっているとは思うが、その影響だけでなく、世界経済そのものが減速傾向にあるとみていた方が良いのではなかろうか。実態なき景気回復から、実態のある景気減速に移ってくる可能性も意識しておく必要がありそうである。


by nihonkokusai | 2019-01-31 10:03 | 景気物価動向 | Comments(0)

高齢者のキャッシュレス決済が拡大しているのは何故なのか

 29日の日経新聞に興味深い記事が掲載されていた。「電子マネー、高齢者に拡大」というタイトルの記事で、高齢者の間でキャッシュレス決済が予想外に広がっていると伝えている。

 「家計消費状況調査による電子マネー利用額の変化だ。世帯主が70歳代以上では2012年時点で年8688円と全世帯平均の8割だったが、17年には1万6216円に増え全世帯の平均に並んだ。80歳代以上に限ると1万7492円と全世代で最多だ」(29日付日経新聞)

 日本ではキャッシュレス決済が進んでいないという見方があるが、もう少し調べてみる必要があるのではなかろうか。

 中国で拡大したQRコード決済だけがキャッシュレス決済ではない。日本ではむしろ、交通系のSuicaをはじめとして、スーパーやコンビニで利用できる電子マネーの利用が浸透しており、それが高齢者にも広がっていることがうかがえる。

 高齢者による電子マネーの利用の拡大に寄与しているのは、セブン&アイ・ホールディングスで利用できる電子マネーのnanacoなどのようである。

 「nanacoは一度に入金できる上限が5万円に設定されており、紛失時に利用を停止できる機能もある。キャッシュカードを持ち歩き、ATMで現金を下ろして使うよりも安全性が高いと受け止められているという」(29日付日経新聞)

 現金であれば盗難や紛失の可能性があり、特に高齢者にはそのリスクがどうしても高くなってしまう。それが電子マネーであれば、カードを落としても利用を止められるなど、安心面がある。また、小銭を扱う必要がないため煩わしさからも解放される。

 日本では高齢化が進み、資産を保有しているのも高齢者が多い。この状況からも、高齢者向けの電子マネーの促進は理に適う。高齢者にとっては扱いづらいと思われるスマホ決済よりも、こういった電子マネーの利用拡大の促進も考慮しても良いのではなかろうか。

by nihonkokusai | 2019-01-30 09:42 | キャッシュレス | Comments(0)

FRBは市場に配慮して資産圧縮計画を凍結か

 ウォール・ストリート・ジャーナルの電子版は25日、米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)が過去の量的緩和で買い入れた米国債など保有資産の圧縮計画を早期に切り上げることを検討していると報じた。29、30日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で主要な議題になるようである。

 昨年12月19日のFOMC後の記者会見において、パウエル議長はバランスシートの縮小に関する質問に対して次のように答えていた。

 「私たちは金融政策の正常化をどのように進めるか注意深く検討し、効果的にバランスシートを正常化させられるように考えてきた。これまでのところ正常化はスムーズで、変更するつもりはない。引き続き金利を金融政策の積極的なツールとして活用していく」(12月20日付日経新聞電子版)。

 「変更するつもりはない」としていたものをどうやら変更することを検討するようである。現在FRBは4兆5000億ドル(約490兆円)まで膨らんだ保有資産の規模を減らす取り組みを開始しており、現在は毎月500億ドルずつ資産を圧縮している。

 今回、FRBが保有資産の圧縮計画を早期に切り上げることを検討するのは、金融市場でのリスク回避の動きやその背景となっている世界的な景気減速への懸念が要因となっていよう。

 FRBとすれば12月のFOMCでは利上げペースは遅らせることを意識し始めてはいたが、資産の圧縮はいまだ道半ばであり、早期切り上げは検討していなかったようである。しかし、景気や市場の動向もあらためて意識せざるを得なくなっての政策変更の検討かとみられる。

 ただし、これではFRBの姿勢が朝令暮改のように見えてしまう。パウエル議長は足元の株価の動向なども配慮し、12月の会見において、政策金利が主要ツールながらも景気物価動向の行方次第では、いずれ変更する可能性もないけではないとコメントしておいたほうが良かったのかもしれない。

 実際にパウエル議長は上記の会見での発言の前に次の用な発言もしていたのである。

 「2013年から2014年にFRBで働いていた時の経験を踏まえると、市場はバランスシートのサイズや資産購入のペースのニュースにとても敏感だ。」

 何故それを知っていて「変更するつもりはない」と言い切ってしまったのであろうか。たしかに現実問題としてFRBの資産圧縮を早期に切り上げても、それによる実質的な効果はあまり期待はできない。あくまで市場心理に影響を与えることが重要で、中央銀行はマーケットフレンドリーであるとの認識を持たせることも時には必要となる。12月の会見はもう少し市場に配慮すべきではなかったろうか。配慮しすぎるのも問題ではあるが。


by nihonkokusai | 2019-01-29 09:44 | 中央銀行 | Comments(0)

毎月勤労統計問題からみた政府統計の信用改善策

 総務省は24日、政府が重要と位置づける56の基幹統計のうち4割にあたる22統計で作成に誤りがあったと発表した。厚生労働省の不適切な統計調査の発覚をきっかけに、政府全体に広がる統計現場のずさんな体制が明るみに出たと日経新聞が伝えている。

 人手が足りなかった、予算が少ない等々の理由もあったかもしれないが、特に公的な統計の誤りの影響は各所に影響が及ぶ。

 毎月勤労統計の不適切な調査をめぐる問題が日銀の景気分析にも影を落としているとこちらも日経新聞が伝えている。日銀が独自に公表している需給ギャップや企業向けサービス価格指数でも、同統計を活用しているためだが、これらは日銀の金融政策の判断材料となりうるものとなる。

 金融市場では、たとえば中国の統計は政府の意向も絡んでおり、正確性に欠くといった認識が強い。それに対して日本では特に公的な統計はしっかりしているとの認識が強かった。しかし、その信頼性に疑問が生じつつある。

 以前に下記のような記事が日経新聞から出ていた。

 「日本の現状を映す統計を巡り、内閣府と日銀が綱引きしている。国内総生産(GDP)など基幹統計の信頼性に日銀が不信を募らせ、独自に算出しようと元データの提供を迫っているのだ。内閣府は業務負担などを理由に一部拒否しているが、統計の精度をどう高めるかは、日本経済の行く末にも響きかねない大きな問題をはらんでいる」(2018年11月13日付日経新聞)

 民間企業が総務省に対して元データの提供を迫ったのではなく、やはり日本の基礎統計となるものを算出している日銀からの要望を何故、頑なに総務省は拒否していたのか、この記事を読んだときに解せなかった。実はこの要因も厚生労働省の不適切な統計調査が絡んでいたとみられる。

 「日銀の不信には一定の根拠がある。例えば厚生労働省が毎月まとめる賃金に関する統計。今年1月に統計手法を変えたところ前年同月比の伸び率が跳ね上がった。これには専門家から異議が噴出。統計委員会でも俎上に載り、この賃金データを基にまとめる内閣府の報酬統計も修正を迫られた。」(2018年11月13日付日経新聞)

 「例えば」となっていたが、総務省としても厚生労働省のデータに疑問を持っていた可能性がある。しかし、それでも何故、日銀に元データの提供をしなかったのか。同じ統計分析のプロ同士が協力して、疑問点を解消し、精度を高めるといった工夫はできなかったのであろうか。総務省と日銀という組織の壁みたいなものが邪魔をしていたのか。

 特に公的な統計については、例えば総務省と厚生労働省、さらには日銀なりがそれぞれデータを共有して相互チェックが可能なようにすることはできないものか。今回の問題は単に予算や人を増やすことで解決できような問題ではないようにも思うのであるが。


by nihonkokusai | 2019-01-26 11:18 | 景気物価動向 | Comments(0)

平成の30年で失われたものとは

 平成がスタートしたのは1989年1月8日であった。この年の4月に3%の消費税が導入された。1986年頃から始まった地価や株価など資産価格の高騰はのちにバブルと呼ばれた。1989年に入ると日銀は公定歩合を数度に渡り引き上げ、完全に金融引締策へと転向。それでも、バブルの勢いは年末まで続き、日経平均株価は、1989年の大納会の大引けで38915円を付け、これがそれ以降30年以上にわたる株価の最高値となった。

 いわゆるバブル崩壊が始まった。地価や株価の急落によって景気は悪化し、物価が低迷しいわゆるデフレが生じた。この後失われた30年の原因は、1989年4月に導入された消費増税によるものとの見方も一部にあるようだが、それによる個人消費への影響などより、バブル崩壊による影響が当然大きかった。

 日本での雇用体系の変化も賃金の上昇を妨げる格好となった。年功序列や終身雇用という体制が崩れてきた。また、パソコンの登場によって労働を取り巻く環境も大きく変化してきた。1990年あたりにDOS/Vが登場し、1991年にWindows 3.0が発売された。1995年のWindows95の発売あたりから急速に職場や家庭内でのコンピュータ化が進む。

 ちなみに日本の人口は2008年の1億2808万人がピークとなり、減少傾向となっている。

 日経平均は1万円の大台を割り込み、ドル円は100円を割り込んだ。サブプライムローン問題からリーマン・ショックが起き、ギリシャの財政問題から欧州危機が生じた。日経平均は一時8000円を割り込み、ドル円は80円割れとなった。

 物価の低迷により金利も抑えられた。長期金利は1999年2月5日に2.440%をつけたが、それ以降は2%が壁となり、日銀の量的・質的緩和政策からマイナス金利政策、イールドカーブコントロールの導入などにより、長期金利は一時マイナスに転じる事態となった。

 しかし、世界的な危機の後退によって、米国を主体に世界的な景気が回復したことで、リスク回避の反動が起き、ドル円や日経平均も回復基調となった。ただし、米株の主要3指数が過去最高値を更新しても、日経平均は1989年の大納会の大引けの38915円に届くようなことはなかった。

 平成の30年で失われたものは物価や地価、金利、株価といったものが挙げられるが、日本の人口の減少などとともに日本経済を引っ張ってきた企業そのものの衰退も挙げられるのではなかろうか。

 この30年間、世界経済を牽引してきた企業はIT関連やハイテク部門が多く、米国や中国、韓国、台湾などに多かった。日本企業も貢献はしていたものの、アップルやアマゾンのような企業が生まれることはなかった。技術力はあってもそれを生かし切れなかった面もあったのではなかろうか。


by nihonkokusai | 2019-01-25 09:57 | 投資 | Comments(0)

米中の貿易協議に過度な期待も禁物か

 英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は22日、米中両政府が月末に開く閣僚級の貿易協議をめぐり、トランプ米政権が予備協議の開催を拒否したと伝えた。中国は次官級を今週米国に派遣し、閣僚協議に向けた準備会合の開催を提案していた。技術移転の強要など中国の構造問題で意見が対立していることが背景にあるという(日経新聞電子版)。

 これに対して米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は22日、CNBCとのインタビューで、今月末のワシントンでの劉鶴副首相との会合が「非常に重要」であり、「決定的」なものになるだろうと発言した。

 これによりクドロー委員長は貿易準備会合が中止されたとの報道を否定した格好ながら、協議の難しさも示したような格好となった。

 ちなみにクドロー委員長は、ムニューシン財務長官などと同様に、中国との関係も対話を進めることで解決への糸口を探ろうとしている、いわゆる穏健派である。ただし、トランプ政権内にあっては少数派とされる。

 技術移転の強要など中国の構造問題で意見が対立していることは確かとみられ、これはトランプ政権内での強行派とされるロス商務長官やライトハイザーUSTR代表などが、強硬姿勢を見せているためではなかろうか。

 トランプ大統領は株式市場への影響も意識して、中国との対話を進める姿勢は見せているものの、中国側が余程妥協しない限り、関税などを巡り強硬姿勢を崩すことも考えづらい。

 中国政府は米国に対して6年間かけて輸入を増やす計画を提案したとされる。しかし、1月30~31日に閣僚級協議では、貿易不均衡の是正だけでなく、中国の知的財産侵害や不適切な産業補助金など構造問題についても中国側に対応を求めるとみられ、今回のトランプ米政権が予備協議の開催を拒否との報道も、中国側に対するプレッシャーの一環ではないかとも推測される。

 米中が3月1日までに合意できなければ、米国は2千億ドル分の中国製品に対する関税の税率を10%から25%に引き上げる予定となっている。もし関税引き上げが実施されるとなれば、米中の貿易摩擦がさらに強まることが予想され、結果として世界経済の減速傾向を強めることになろう。これは米国株式市場ではリスク要因となる。米株の大幅な下落もトランプ大統領は嫌がっているようだが、中国への強硬姿勢を崩さない限り、市場でのリスクが後退するようなこともないとみられる。


by nihonkokusai | 2019-01-24 09:57 | 国際情勢 | Comments(0)

日銀は物価の見通しを下方修正

 16日にロイターは、「複数の関係筋によると、日銀は22、23日に開く金融政策決定会合で、原油価格の下落などを踏まえて2019、20年度の消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)見通しの下方修正を議論する」と伝えた。ブルームバーグや産経新聞も同様の記事を報じていた。

 1月23日の決定会合後に日銀は、経済・物価情勢の展望、いわゆる「展望リポート」を公表した。昨年10月の前回の同リポートでは、コアCPIの前年比上昇率(政策委員の大勢見通し)の消費税率引き上げの影響を除くケースで2019年度が1.4%、2020年度が1.5%となっていた。

 念のため、直近のコアCPIについて確認してみると、2018年度は4月が前年比0.7%、5月が同0.7%、6月が同0.8%、7月が同0.8%、8月が同0.9%、9月が同1.0%、10月が同1.0%、11月が同0.9%、12月が同0.7%となっていた。

 ここにきてのトレンドも前年比の上昇幅が減少傾向となっている。その要因としては、日銀の買い入れる資産の量が減っているから、ではなく原油価格の下落がある。前回リポート時にWTI先物は1バレル70ドル程度だったが、足元で50ドル台となっている。消費者物価指数は日銀の資産買入の量とかではなく、マイナス金利でもなく、原油価格の動向や為替の動向に影響を受けやすい。

 日銀内では、2019年度の物価見通しについて1.4%を下回る、1%前半への下振れの可能性を指摘する見方が出ていた(ロイター)。

 現実を見据えるのであれば、せいぜい1%あたりではないかとも思われる。2%という物価目標に固執するあまり、どうしても上振れの数字が出やすいような気がする。

 2020年度についても、原油を含めて2019年度の一時的な下押し要因が剥落するものの、米中貿易摩擦などを背景に世界経済は、緩やかな減速が見込まれることで、若干の下方修正の必要性が議論されるもようだ(ロイター)。

 2019年度に実施される予定の幼児教育の無償化に伴って、内閣府によると同年度の消費者物価を0.3ポイント押し下げるという試算結果が出ているそうだが、政府が物価上昇の足を引っ張る格好となっているようである。

 実際に23日に発表された展望レポートでは、2019年度の「消費税率引き上げ・教育無償化政策の影響を除くケース」で、プラス0.9%と10月のプラス1.4%から予想以上に大きく下方修正。現実を見据えた修正となっていた。ただし、2020年度については同ケースとして、プラス1.4%として10月のプラス1.5%から小幅な下方修正に止まっていた。

 そもそも論として物価目標2%に無理があったことを日銀としては認めることも必要ではなかろうか。物価を2%まで金融政策だけによって引き上げるという考え方に間違いがあったことを素直に認め、現実に即した目標に修正し、景気や物価動向、さらには金融市場動向に応じた柔軟な政策となるよう修正すべきだと思われる。


by nihonkokusai | 2019-01-23 09:49 | 日銀 | Comments(0)

金融政策はあくまで環境作り、能動的に物価や雇用は動かせない

 1998年4月に施行された日銀法の第2条に「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」とある。日銀の金融政策決定会合での決定に基づいて行われる金融政策の目的は「物価の安定」となる。

 目的は物価の安定となるが、そのための政策手段は金融市場を通じて行われる。物価が下がったからといって、日銀が直接モノを購入して価格を吊り上げるといったことはしていない。「家計や企業などが物価水準の変動に煩わされることなく、経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況」が物価の安定であり、言い換えれば「通貨価値の安定」とも言える。

 通貨価値の上げ下げ、つまり物価における過度なインフレーションやデフレーションは、安定した経済成長にとっての阻害要因となる。金利はお金の価値を示すひとつの尺度となる。この金利を操作することによって、通貨価値を安定させ、物価に働きかけて、安定した経済活動を促すというのが、金融政策の大きな目的となる。

 大胆な金融緩和で物価を「能動的」に上げるという政策には無理がある。中央銀行の金融政策は直接物価を上げたり、下げたりすることが目的ではない。あくまでそれに働きかける環境作りが目的となる。政策金利の上げ下げだけで、それに応じて物価が動くほど経済は単純ではない。

 米国の中央銀行であるFRBの使命(目的)はデュアル・マンデートと呼ばれ、物価の安定(stable prices)と雇用の最大化(maximum employment)となっている。デュアル・マンデートがFRBの使命となったのは、1977年の連邦準備改正法の成立によるものだが、その源流には1946年の雇用法があるとされている。

 このため、日銀も雇用の回復も目的に上げるべきとの意見もある。しかし、物価と同様に金融政策によって雇用に直接働きかけができるわけではない。そもそも金融市場を通じてどのようにして雇用に働きかけができるというのか。

 あくまで金融政策は景気の悪化や過熱を緩和させる程度の効果でしかなく、絶対的な政策ではない。それが結局、日銀の異次元緩和によってあらためて明らかとなった。


by nihonkokusai | 2019-01-22 09:45 | 日銀 | Comments(0)

米政府機関閉鎖の解決の糸口が見えず

 2018年12月22日から続く米国連邦政府機関の一部閉鎖は、1月20日で30日目に入った。これまでの連邦政府機関閉鎖の最長はクリントン政権時の21日間で、今回は最長期間を更新し続けている。

 米国での予算が成立しないことによる政府機関の閉鎖は過去何度か起きていた。直近では2013年10月にオバマ前政権の医療保険制度改革法(オバマケア)向け支出を巡り、ねじれ状態となっている米国議会で次年度予算が成立せず、与野党の対立が解けないまま、およそ18年ぶりとなる政府機関の一部が閉鎖される事態が発生した。

 この際の16日に及ぶ米政府機関の一部閉鎖による経済への影響については、第4四半期の成長率に対し0.2%から0.8%の影響が及ぶとの予測数値が金融機関などから出ていたが、実際にはそれほどの影響はなかったとの見方もあった。

 とはいえ、今回の政府機関の閉鎖の継続にあたって、全く影響が出ないということも当然ながら考えにくい。長引けば長引くほどそれによる影響が拡大する恐れがある。ひとつの例として、各地の空港でセキュリティーチェックを受ける乗客の列が日に日に長くなっていることが挙げられている。

 トランプ大統領としては、公約でもあった壁の建設に固執せざるを得ない面もあろうし、それが2020年の大統領選挙の行方にも影響してくるのではとの危惧もあるかもしれない。しかし、メキシコとの国境の壁建設予算をめぐってのトランプ大統領と民主党の対立は妥協点を見いだすのが困難とみられる。

 トランプ大統領は19日にホワイトハウスで演説し、過去最長となっている政府機関の一部閉鎖を解消するため、移民規制を緩和する代わりに、メキシコ国境での壁建設予算57億ドルを野党・民主党に認めるよう求める妥協案を示した(読売新聞)。しかし、民主党は難色を示し、閉鎖は継続されている。

 英国のEU離脱の行方についても不透明が強いが、米国の壁問題も解決の糸口が見いだせない。トランプ大統領と民主党のどちらも妥協しないとなれば、最終的には大統領選挙も睨んだ世論が解決策を導くかもしれない。しかし、それにも時間が掛かることは確かである。

 いまのところ米中の貿易交渉などが市場では大きく材料視されていることで、政府機関の一部閉鎖による影響はそれほど材料視されていないように思われる。しかし、これにより少しずつリスクが増幅されているようにも思われるため、今後の市場の動向にも注意が必要となろう。


by nihonkokusai | 2019-01-21 09:39 | 国際情勢 | Comments(0)

2019年の注目イベント、改元やG20サミット、消費増税等々

 2019年の金融市場に関わる注目イベントを確認しておきたい。

 日銀の決定会合は1月22~23日、3月14~15日、4月24~25日、6月19~20日、7月29~30日、9月18~19日、10月30~31日、12月18~19日。任期満了となる政策委員はいないためメンバーは替わらず。金融政策の変更はいまのところ考えづらい。

 FOMCは1月29~30日、3月19~20日、4月30日~5月1日、6月18~19日、7月30~31日、9月17日~18日、10月29~30日、12月10~11日。年が変わって地区連銀の投票可能メンバーが変わっている。いまのところ理事は2つ空席。利上げはできても1回程度か。

 1月22~25日に世界経済フォーラム年次総会、通商ダボス会議がスイスで開催される。米国のトランプ大統領は出席しない見込み。注目度は低い。

 2月末が米中通商会議での協議の期限となっており、合意なければ米国が対中国への関税引き上げが実施される。

 英国のEU離脱期日は3月29日となっている。いまのところ不透明感強く、動向次第では金融市場のリスク要因となることも。

 4月には日本で統一地方選挙が行われるが、政治の勢力図が大きく塗り変わるようなことは考えづらい。自民党は安泰か。

 新元号の公表日は4月1日。そして4月30日に明仁天皇が退位し上皇になり、平成が終わる。5月1日に徳仁皇太子が天皇に即位し新元号が始まる。

  G20サミットが、6月28~29日に大阪で開催される。G20サミットの日本での開催は今回が初。米国と中国の貿易摩擦だけでなく、米国とロシア、ロシアと日本の関係、さらにはEUを離脱する予定の英国などなど諸々の問題を抱えた首脳達が大阪に集まる。

 9月にはラグビーワールドカップ2019が日本で開催される。

 そして10月1日に日本の消費税率が8パーセントから10パーセントへ引き上げられる予定。さすがに今回の延期は考えづらい。

 上記の日程をみても特に日本では来年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、新元号のスタートなどお祝い・お祭りムードが強まることも予想される。しかし、世界的に景気そのものは減速観測も強まっており、国内の景気についても低迷する可能性がある。

すでに消費増税の影響も見据えた経済対策も組み込んでいるようだが、世界経済が落ち込めば、それによる効果は限定的となろう。日銀の金融政策についてもこれ以上踏み込んだ緩和策は副作用を強めさせるだけとなりかねない。今後の景気動向が今年、最も注意すべきものとなる。

by nihonkokusai | 2019-01-19 13:32 | 金融 | Comments(0)
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