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将来の日本の国債市場を見据えて、物価目標の再考を

 7月30、30日の日銀金融政策決定会合の議事要旨には次のような指摘があった。

 「何人かの委員は、わが国の国債市場では、このところ長期金利の変動幅がさらに縮小し、取引高の減少傾向が目立っていると指摘した。」

 7月31日の金融政策決定会合では、金融緩和策の柔軟化というか弾力化が図られた。現在の金融緩和の持続性を強化する措置として、「長期金利の変動幅として、これまでの概ね±0.1%の幅から、上下その倍程度に変動しうることを念頭に置くことが大方の委員の合意となるのであれば、本日の議長による記者会見でこれを明らかにしてはどうかと提案した。」とある。実際に31日の黒田総裁の記者会見では、「上下その倍程度」という認識が示された。

 これを受けて8月2日に日本の10年債利回りは0.145%まで上昇した。これに対して日銀は急激な金利変動を抑制するためとして、臨時の国債買入をオファーした。これは指し値オペではなかったものの、市場は0.150%以上の金利上昇までは容認していないのかとして、ここで10年債利回りの上昇はいったんストップした。

 その後の債券市場は再び7月31日以前の膠着相場に戻りつつある。

 9月25日の債券市場では、債券先物は8月3日以来の150円割れとなった。超長期債と呼ばれる残存20年、30年、40年の国債も売られた。

 この理由としては9月21日の日銀による国債買入で残存25年超の買入予定額を100億円減額したことが挙げられる。減額幅はわずか100億円といえども、米10年債利回りが3%を超えてきたり、ドル円が113円台をつけ、日経平均も13000円に迫るなか、債券売りはきっかけ待ちとなっていたともいえる。日銀の買入減額はちょうど良い売りのきっかけとなり得たといえる。

 しかし、それにより超長期債が年初来の最高利回りを更新したといっても、売買高そのものは限られた。25日の10年債カレントは前場に出合いはなく、中期ゾーン、つまり残存2年や5年の国債が日本相互証券で15時までに売買がないという異例の事態となっていた。債券先物も150円割れとなったといっても、日中値幅はわずかに8銭しかなかった。

 日銀が多少、長期金利の変動幅の拡大を容認しようとも、債券市場の機能低下に対しては根本的な解消要因とはならない。イールドカーブのスティープは市場参加者にとっては歓迎されようが、売買が盛り上がらない以上、債券市場への魅力は後退するばかりとなってしまう。

 こういったなか動かない債券市場の参加者が更に減っていくことも予想される。国債利回りが大きく動いたことを経験した我々世代はすでに引退世代入りしており、金利変動を経験した人も市場から自然といなくなってしまう。債券市場の機能回復には日銀の大きな政策変更という大きな壁があるのかもしれないが、達成できることは考えづらい物価目標達成というお題目のために、大きなものが失われかねない。それが将来の日本の国債市場に大きな影響を与えてしまうことも認識すべきときではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2018-09-27 09:30 | 債券市場 | Comments(0)

日銀は何故7月に金融政策の調整を行ったのか

 7月30、31日に開催された日銀の金融政策決定会合議事用意が公開された。31日に何故、金融政策の調整を行ったのか、その理由をこの議事要旨から探ってみたい。

 金融政策の基本的な運営スタンスに関して次の用な発言があった。

 「何人かの委員は、強力な金融緩和をさらに継続していくためには、これに伴う副作用にも十分配慮し、その影響を可能な限り軽減すべく、政策枠組みに見直しの余地がないかどうか、点検することが必要であると述べた。」

 ここでのポイントは「強力な金融緩和をさらに継続していくため」として、副作用に配慮した政策枠組みに見直してはどうかとの意見である。金融機関の収益力の低下のみならず、債券市場の機能低下が顕著となってきており、日銀としてはこの副作用の軽減措置が必要と認識していたものとみられる。そのための理由付けとしては緩和を継続させるためとするのではないかと私も想定していた。

 「これに対し、一人の委員は、物価上昇率が伸び悩んでいる現状では、金融緩和を息長く続けるための対応ではなく、息長くならないように金融緩和自体を強化すべきであると述べた。 」

 これは片岡委員による発言であろう。一見するとこちらが正論にみえる。ただし、大胆な緩和が物価上昇に本当に結びつくのかという前提そのものに問題があるのだが。

 そのあとに「強力な金融緩和をさらに継続していくにあたって」点検すべき課題について議論がされていた。  「ある委員は、海外中銀の例にもあるような、将来に向けて政策金利を低位に維持することを約束するフォワードガイダンスを導入することを検討してはどうか、と述べた。」  

 7月の修正では「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」と言うタイトルとともに、フォワードガイダンスの設定は個人的に想定外となった。しかし、リフレ派の委員というよりも、黒田総裁に修正案を飲んでもらうには、これらが必要となったのではないかと個人的には見ている。

 「何人かの委員は、この先、金融緩和をさらに継続していく際は、金融市場調節や資産の買入れをより弾力的に運営するなどして、緩和の長期化に耐え得る枠組みを構築していく必要があるとの認識を示した。」

 「ある委員」ではなく「何人かの委員」というのがひとつのポイントともなりそうである。つまり賛同者はすでに複数人いたことが示されている。

 「この委員は、「ゼロ%程度」という操作目標等の骨格は維持したうえで、実際の長期金利は、上下双方向にある程度変動しうることを示してはどうか、との意見を述べた。何人かの委員は、そうした長期金利操作の弾力化は、市場機能の維持・向上に資するとして、この意見を支持した。」

 この委員が果たして雨宮副総裁であったのかは議事録が出るまではわからないものの、今回の調整は雨宮副総裁が主導してのものであったと思われる。

 「一人の委員は、現状より金利が幾分上昇するようなことがあっても、経済・物価への影響は限定的とみられる一方、金融仲介機能への累積的な影響の軽減と政策の持続性強化に効果が見込まれるとの認識を示した。。そのうえで、この委員は、主要国の最近の長期金利の動きを参考にすると、わが国でも、±0.25%程度の変動を許容することが適切であると述べた。」

 「別のある委員は、イールドカーブ・コントロール導入後の金利変動幅である概ね±0.1%をベースとしつつ、上下その倍程度に変動しうることを念頭に置くことが適切であると述べた。」

 前者の意見は雨宮副総裁か。後者は黒田総裁の可能性があり、長期金利のレンジの幅に関しては若干の意見の違いがあったようだ。結局、後者の「上下その倍程度に変動しうる」に落ち着いたようである。個人的には特に海外投資家には刻み幅の0.25という数字が利上げと認識されかねないのではと思っており、その意味では0.20%の方が良かったと思っている。別に0.3%でも良かったのだが。


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by nihonkokusai | 2018-09-26 09:51 | 日銀 | Comments(0)

日銀によるETFの購入について再考の必要はないのか

 日銀はETFと呼ばれる上場投資信託を購入するかたちで日本の株式を購入している。これが決められたのは、2010年10月5日の決定会合においてであった。これは包括緩和とも呼ばれたが、資産買入等の基金を創設し、「国債、CP、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)など多様な金融資産の買入れと固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを行うため、臨時の措置として、バランスシート上に基金を創設することを検討するとした。

 10月28日の決定会合において、指数連動型上場投資信託を0.45兆円程度、不動産投資信託を0.05兆円程度という買入限度額を設定した。11月5日には買入対象の詳細や信託銀行を受託者とする買入方式などの具体的な運用を定める買入基本要領等を決定。2010年12月から買入が開始された。

 その後日銀は金融緩和の強化として、ETFおよびJ-REITを含めて買入額を増加させてきた。2013年4月の量的・質的緩和策、いわゆる異次元緩和を決定した際には、ETFおよびJ-REITの保有残高が、それぞれ年間約1兆円、年間約300億円に相当するペースで増加するよう買入れを行うとした。

 その後も追加緩和によって買入金額は増加した。現在では保有残高はそれぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行うとしている。

 ただし今年7月31日の決定会合では、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとするとしている。

 日銀が国債を大量に買い入れ、長期金利を抑えつけることによる弊害が債券市場の機能低下という格好で起きている。いまのところ日銀によるETFを通じた株式購入が、株式市場の機能低下を招くといった弊害は目に見えるかたちではおきてはいない。しかし、株式市場における日銀依存度が高まっていることは確かであり、適正な価格形成という市場機能にも影響を与えている。

 実質的に日銀が筆頭株主になっているような企業も多い(実際には筆頭株主に日銀の名前が出てくることはない)。さらにETFを日銀が購入する際に組成した金融機関に支払う手数料なども一部で問題視されている。

 そもそも日銀がETFを通じて、2%の物価上昇をもたらす経路が良くわからず、追加緩和という名目で買入金額だけが増加されていることに疑問はなかったのか。市場への影響がこれ以上大きくなる前に日銀によるETFなどの買入についても再考する必要があるのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2018-09-23 10:26 | 日銀 | Comments(0)

米国のダウ平均は連日の最高値更新、日経平均の年初来高値も視野に。この株高の背景とは

 20日の米国株式市場でダウ工業株30種平均が前日比251ドル高の26656ドルとなり、引け値で今年の1月26日以来、約8か月ぶりに史上最高値を更新した。21日もダウ平均は86ドル高となり、連日の最高値更新となった。

 米中の貿易摩擦が激化するなかにあっての株高だけに、違和感を持つ方も多いかもしれない。しかし、米中貿易摩擦による経済への負の影響を考慮しても、米国経済は力強く拡大トレンドを継続させているとの見方が、今回の米株上昇の背景にあるかと思われる。

 トランプ大統領はOPECは今すぐに価格を引き下げるべきだとツイートしたようだが、原油先物価格がWTIで70ドル台を維持しているのは、OPECなどによる生産調整だけでなく、米国を中心として世界的な貿易拡大も背景にあろう。

 20日の自民党総裁選の結果は予想通りに安倍首相が3選を決めたが、日本株はアベノミクスそのものに対しては冷えた目でみている。安倍政権が円安株高を意識して、アベノミクスと呼ばれる政策を行ってきた。しかしそれが効いたのは、欧州の信用不安の後退期というタイミングに、禁断の政策といえるリフレ政策を行うというサプライズが市場を動揺させた当初の時期に限ったものとなった。

 いやいやその後もアベノミクスによって、雇用は改善し景気も回復したとの見方もある。しかし、アベノミクスの柱である異次元緩和で物価目標は達成されておらず、アベノミクスが効いたとの見方はその意味ではおかしい。リーマン・ショックと欧州の信用不安という世界的な大きなリスクの後退と、それによる世界経済の回復の波に日本も乗っていたといえる。ただし、日本が世界的な景気拡大に対して自ら先導してはいないことで、例えば日本の株価の上昇は米国などに比較すれば遅れている。

 それでも再び米国株式市場のシンボル的な指標であるダウ平均が最高値を更新してきたことで、それに引っ張られるかたちで日本株の上昇にも弾みがつくことが予想される。株価の上昇はリスクオンも意識されることで円安要因となる。米長期金利が3%台を回復してきたことも米景気の回復などが背景にあり、この米長期金利の上昇もドル円の上昇を促すことになる。

 日経平均の年初来高値は引け値ベースで1月23日につけた24124円である。日経平均はここが目先のターゲットとなり、ここを抜けてくれば25000円を伺うような動きとなろう。

 ただし、米中の貿易戦争の行方、英国のEU離脱問題、中東情勢、北朝鮮問題、新興国経済の動向等々のリスク要因もあり、これらの動向も注意しておく必要はある。最も注意すべきはトランプ大統領のツイートなのかもしれないが。

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by nihonkokusai | 2018-09-22 07:56 | 金融 | Comments(0)

6月末の投資家別の国債保有額、国内銀行が大きく残高を削減

 日銀は9月20日に資金循環統計(4~6月期速報値)を発表した。これによると個人の金融資産は6月末時点で約1848兆円となり、3月末の約1829兆円からは回復した。個人の金融資産の内訳は、現金・預金が前年比で2.0%増の約971兆円となった。株式等が同8.8%増の約203兆円、投資信託は0.9%増の約73兆円となっていた。

 この資金循環統計を基に国債(短期債除く)の保有者別の内訳を算出してみた。

 残高トップの日銀の国債保有残高は445兆9347億円、44.6%のシェアとなった。前期比(速報値)からは8兆6566億円の増加となる。3月末から6月末の増加額10兆435億円に比べると増加額は減少していた。

 残高2位の保険・年金基金は237兆2468億円(23.7%)、7903億円増。

 残高3位は預金取扱機関(都銀や地銀など)で158兆8391億円(15.9%)、12兆4434億円減。

 残高4位が海外投資家で61兆4576億円(6.1%)、1兆9265億円増。

 残高5位が公的年金の45兆9584億円(4.6%)、9275億円減。

 残高6位が家計の12兆6150億円(1.3%)、2327億円増。

 その他が37兆7009億円(3.8%)、5兆8377億円増となっていた。

 2018年3月末に比べ国債(短期債除く)の残高は4兆719億円増の999兆7525億円となった。短期債を除いた国債残高が1000兆円に迫った。3月末に比べて大きく増加したのは、国債を大量に買い入れている日銀で、シェアは4割を上回っている。今回、前期比で大きく減少したのは預金取扱機関(都銀や地銀など)で12兆円も削減していた。内訳で見ると国内銀行が9兆9087億円減少となっており、都銀などが大きく削減させたとみられる。その他は5兆8377億円増となったが、内訳で見るとディーラー・プローカーが5兆9385億円の増加させていた。

 短期債を含めた国債全体の数字でみると残高は約1100兆円となり、日銀が約465兆円で42.3%のシェアとなっていた。海外勢の残高は約126兆円と短期債を含めると国債全体の11.5%のシェアとなっていた。


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by nihonkokusai | 2018-09-21 09:57 | 国債 | Comments(0)

米長期金利が再び3%超え、ドル円や日本の長期金利の上昇圧力に

 9月18日の米国市場において米10年債利回り(米長期金利)は3.05%となり3%を再び超えてきた。

 18日の日本時間の朝方、にはトランプ政権が2000億ドル相当の中国製品への追加関税を24日から課すと発表し、これを受けて中国も報復措置として600億ドル相当の米国製品に関税を24日から課すと発表した。

 これに対して18日の東京株式市場は寄り付きこそ日経平均はマイナスとなったが、その後プラスに転じ、300円を超す上昇となった。中国株も同様に上海総合指数などは上昇していた。

 18日の米国株式市場もダウ平均は184ドル高、ナスダックも60ポイントの上昇となった。17日に売られていたハイテク株などに買い戻しの動きが入り、米長期金利の上昇から金融株が買われ、原油先物が上昇したことで石油関連株も買われた。

 トランプ大統領はさらなる追加関税も示唆したが、市場では米中を主体とした貿易戦争に対して冷めた目で見始めたとも言えるのかもしれない。税率が思ったよりも低いといった面もあったかもしれないが、そもそもこれによる米国経済への影響は限定的との見方もある。

 FRBのパウエルFRB議長は8月24日のジャクソンホールでの講演で、米経済の力強い成長が続くなかで、利上げペースを速めない姿勢を示唆していた。これもあり、米長期金利8月24日以降、じりじりと上昇し節目とされる3%を再び超えてきたと言える。

 さらに米長期金利の上昇を促すような材料も出てきた。日経新聞は19日、「米国内にインフレ圧力 対中関税5700品目追加で」という記事を伝えている。

 「トランプ米政権が示した対中制裁の第3弾では家具やカバンなどの消費財が多く加わった。また多くの自動車部品や電子部品、化学品も含まれ、米国内で完成品として生産される家電や自動車などもコスト上昇圧力にさらされる。」(日経新聞)

 今回の追加関税を受けての物価上昇圧力なども米長期金利がこれから織り込み始めるとなれば、米長期金利の3%という大きな壁から上抜けてくる可能性はないとはいえない。FRBも当面、利上げを続ける姿勢を示していることも米長期金利の上昇圧力ともなりうる。

 ただし、米国の足元の物価は落ち着いている。たとえば8月の米国の消費者物価指数は、変動の大きい食品・エネルギーを除くコア指数が市場予想に反して伸びが鈍化していた。これが米長期金利の上昇を抑制していた面もある。しかし、今後物価に上昇圧力が加わると、状況が変わる可能性がある。

 米長期金利の上昇は日米の長期金利差からみるとドル円にとっては上昇圧力となる。ドル円もここにきてじりじりと上昇してきているのも、米長期金利の上昇も影響していよう。そうなると、米長期金利の動き次第では、ドル円もあらためて戻りをトライする可能性もある。また、日本の長期金利もあらためて日銀のレンジの上限を試すようなことも予想される。


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by nihonkokusai | 2018-09-20 09:13 | 債券市場 | Comments(0)

リーマン・ショックから10年。何故、世界的な金融危機が訪れたのか

 10年前に発生したリーマン・ショックとは、ひとつの金融機関が破綻したことで、世界的な金融危機を生んだわけではない。潜在的なリスクが顕在化し、それが金融機関の経営を脅かし、多くの大手金融機関が危機的状況追い込まれた。その原因といえるのが、金余りといった現象だけでなく、金融機関の利益優先主義、さらにはリスクは自在に操れるという妄想があったと思う。今回はリーマン・ショックに至る経緯をみてみたい。

米国の住宅バブル

 米国経済は2000年のITバブルの崩壊などがあったものの、その後も個人消費に支えられ、高い成長率を維持した。この消費を支えたのが住宅バブルとなった。

 1990年代に移民の増加による人口の増加に加え、低所得層に対する住宅金融制度が整備され、返済方法についての規制緩和が行われたことなどから、低所得者層にも住宅ブームが波及した。また低金利に加え、持ち家比率の高まりなどが住宅価格の高騰を招いた。米国では住宅価格の値上がり分を担保による貸し出し(ホーム・エクイティ・ローン)が伸び、住宅価格の値上分がり分の消費が可能となり、消費を底上げした。

 低所得者向けの住宅ローン(サブプライム・ローン) は、そのリスクを減らすために証券化され、リスクをより分けるために金融理論で構築された価格と格付会社による高格付けを得て債務担保証券(CDO)という新たな金融商品に組成された。

 欧州や産油国だけでなく、中国や台湾といったアジア勢、そして日本からなどから大量の資金が米国に流入するなどの金余りブームも加わり、このような金融化商品へのニーズは高まり、サブプライム・ローンが組み込まれた証券化商品は世界各国の金融機関やファンドに売却された。

サブプライム・ローン問題

 2006年半ばに、それまで高騰を続けていた米国の住宅価格が下落に転じ、一部の住宅ローンが担保割れとなった。担保割れにより融資の回収不能リスクが高まることで、それを担保とした証券化商品の損失リスクが高まり、証券化商品そのものの価格が下がる結果となった。

 米国住宅バブルの崩壊により、信用力の低い個人向けの住宅資金貸し付けであるサブプライム・ローンで焦げ付きが増加した。格付会社がそれを組み入れた住宅ローン担保証券(RMBS)や債務担保証券(CDO)を格下げしたことで、時価評価の必要に迫られ、CDOなどを保有していた欧米の金融機関での巨額な損失が表面化した。

 サブプライム・ローン問題による最初の危機は欧州で発生した。2007年8月9日にドイツ連邦銀行は、IKB産業銀行がサププライムでの投資に伴う損失発生に対しての救済策を協議するため、緊急会合を開催。さらに同日、仏銀最大手BNPパリバは傘下ファンドの償還停止を発表し、次はどこかとの連想も加わり、欧州銀行向け資金の出し手が急速に限られてしまい、これはパリバ・ショックとも呼ばれた。

 米国のダウ平均は、2007年10月に過去最高値の14164ドルの高値をつけたが、危機の発生により、その後は下落基調となった。

 危機は資金繰りの困難化の問題から始まったことから、各国中央銀行は大量に資金供給を実施。2007年12月にFRBが欧州中央銀行(ECB)、スイス国民銀行(SNB)とスワップ取極を結んで欧州でのドル資金供給を始めた。

 証券化商品は欧米の大手金融機関が大量に保有していており、証券化商品格下げに伴い、評価損失が雪ダルマ式に膨れ上がった。これによって米国の大手金融機関のトップが相次いで辞任するといった事態となった。

リーマン・ショック

 2008年1月18日に、証券化商品を保証していたモノラインと呼ばれた金融保証会社が資本調達難から格下げされ、証券化商品全体の価格下落に拍車をかけた。世界的な株安連鎖による市場の混乱に対し、1月22日にFRBは0.75%の緊急利下げを実施し、さらに0.5%の追加利下げを実施しFF金利の誘導目標は年3%となった。

 3月14日に証券化商品を大量保有していた投資銀行のベア・スターンズが資本調達の失敗から資金繰りに行き詰まり、FRBの資金支援のもとJPモルガン・チェースに買収された。

 6月に入り米株式市場は金融機関の損失拡大への懸念や大手自動車メーカーなどの業績悪化見通しなどにより売り圧力を強めたことで、金融株に対して空売り規制が強化され、これをきっかけにヘッジファンドが組んでいた米金融株売り、原油先物買いといったポジションの撒き戻す動きが一気に強まった。このためニューヨーク原油先物価格は7月11日につけた147.27ドルをピークに急落。7月13日には政府系住宅金融公庫が経営危機に陥り、政府の資本注入などで経営再建を図ることになった。

 そして2008年9月15日に、証券化商品により大きな損失を抱えていた投資銀行のリーマン・ブラザーズが、資本調達や身売りに失敗し経営不安に陥り破綻した。リーマン・ブラザーズのような大規模金融機関が破綻したことにより、世界の金融市場は極度の不安に陥り、これがリーマン・ショックと呼ばれた。金融市場では取引相手のリスク、いわゆるカウンター・パーティーリスクが強まり、各国の中央銀行は大量の資金供給を行った。

 リーマン・ショックにより、巨大金融機関の破綻がもたらす影響を懸念した米国政府は金融機関を破綻させない方針に転じ、FRBは9月16日に米国の大手保険会社AIGに対して緊急融資を行うことを表明した。

 金融機関の不良債権と資本不足の問題に対し、米国財務省は最大7千億ドルを投入して、幅広く金融機関の不良債権を買い取る「緊急経済安定化法案」を議会に提出したが、9月29日に下院で否決された。これは金融市場に再び大きなショックを与え、29日のダウ平均株価は終値で777ドル安と史上最大の下げ幅を記録した。

 欧州各国も預金の全額保護や金融機関の国有化・資本注入、短期債務保証など、様々な施策を迅速に打ち出した。金融グローバル化のもとで、問題解決に向けた国際協調も行われ各国中銀が一斉に利下げを行った。10月8日に欧米の中央銀行に加え一部新興国も含め、10の中央銀行が同時に0.5%の緊急利下げを実施した。

 実体経済への影響も深刻化し、特にアイスランド、ハンガリー、南アフリカなど、経済が米欧金融機関からの借入に過度に依存していた国では経済危機に陥り、IMFなどからの緊急融資を頼ることになった。


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by nihonkokusai | 2018-09-19 09:56 | 金融 | Comments(0)

米国の利上げはいつまで続くのか

 9月7日に発表された8月の米雇用統計では、非農業雇用者数は20.1万人増となり、事前予想を上回った。失業率は3.9%で前月と変わらず。そして、平均時給は前年比で2.9%増と2009年6月以来の高い伸びとなり、これを受けて9月25~26日に開催されるFOMCでの追加利上げがほぼ確実視された。

 ただし、雇用統計がよほど悪化しない限りは、9月のFOMCでの利上げはほぼ規定路線となっていた。これにより2018年は3月、6月のFOMCに続いて3回目の利上げとなる。さらに今年は9月に加え、12月のFOMCでの年内4度目となる利上げも予想されている。

 ただし、12月の利上げに関してはやや不透明な部分もある。米国のトランプ大統領は8月17日に共和党の資金集めのイベントで、あらためてFRBの利上げに不満を漏らしたとされる。トランプ大統領があからさまに利上げ阻止に動く可能性は少ないながらせも、11月の中間選挙の結果次第では米国の政局が変化してくる可能性もある。このため12月の利上げについてはやや流動的な面もあろう。

 仮に12月に利上げがあったとすれば、今年は議長会見の開かれるFOMCすべてで利上げが決定されることになる。昨年までも利上げが決定されたのは議長会見のあるFOMCにおいてであった。

ただし、FRBのパウエル議長は2019年1月のFOMCから毎回、記者会見を開くと表明している。このため来年の利上げに関しては、3月、6月、9月、12月のいずれかというパターンからは外れることも予想される。その分、利上げ決定のタイミングについてFRBの自由度が増すような格好となる。

 それではFRBはこれからあと何回利上げをする予定なのか。このままのペースが継続されると、2019年の2回程度の利上げで中立金利に到達することになる。ここでいったん利上げは終了となるとの見方が強い。

 そもそも今回のFRBによる利上げは、米国の景気や物価の過熱を阻止するためのものではない。非常時対応ともいえた異常な金融緩和策から正常モードへの移行が目的となっている。現在の米国の物価をみてもインフレ圧力が強まっているようには見えず、正常化が達せられたのならば、いわゆる金融引き締めとされるゾーンにまで踏み込むことは考えづらい。

 正常モードに移行したあとは、経済物価動向を見ながらの調節という本来の中央銀行の金融政策に戻ることが予想される。あまり糊代という言葉は使いたくはないものの、米国経済がピークアウトした際にもFRBは利下げという手段も取れることになり、これにより政策の自由度が大きくなることは確かである。

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by nihonkokusai | 2018-09-17 10:24 | 中央銀行 | Comments(0)

トルコ中銀はエルドアン大統領の意に反して大幅利上げを実施

 トルコ中央銀行は13日、政策金利である1週間物レポ金利を6.25ポイント引き上げ24%とした。利上げはそのものは市場で予想されていたようだが、市場予想は3.25ポイントの利上げとなっており、実際には予想の倍の幅での利上げとなった。

 チェティンカヤ総裁率いるトルコ中央銀行の金融政策委員会は、ある意味危ない賭けに出たともいえる。トルコのエルドアン大統領は政策金利引き上げ発表の2時間ほど前に、金利を引き下げるべきだと発言していた。

 エルドアン大統領は今年の選挙前に、金融政策への関与を強める意向を表明したことから、トルコ中銀の独立性は疑問視されてきた。

 エルドアン大統領は同国政府系ファンド(SWF)の経営陣全員を更迭し、自らを会長に指名するなど独裁色を強めるような動きを見せていた。このような状況下、トルコ中銀のチェティンカヤ総裁はエルドアン大統領の意向は無視し、ある意味リスクを冒してまでインフレ退治に躍起になったといえる。

 米国でもトランプ大統領はFRBの利上げに対して懸念を示したとされるが、パウエル議長率いるFRBはそれを意に介さず、淡々と利上げを行う姿勢を示している。

 トルコ中銀とエルドアン大統領の対立色は今後さらに強まることも予想される。利上げによって簡単に物価上昇が抑えられるわけでもなく、トルコと米国との対立という根本的な問題、さらにはエルドアン大統領そのものがリスク要因となっていることで、トルコを巡る問題は根深いものとなっている。

 ただし、今回の事例をみても物価安定のためには為政者の意向を無視してでも、政府からは独立した組織として、断固たる処置を行うことは、ある意味中央銀行が行うべき姿かと思われる。

 これに対して政権の意向に強く支配されて、それが必要とされるタイミングではないにも関わらず、さらにそれによって物価上昇という効果が出るという保証もない異次元の金融緩和策を取らざるを得なかった中央銀行が存在する。非常時の緩和策というべきものをすでに5年以上も続けて、副作用も目に見えるようになっている。中央銀行は政府からは独立した組織であることをあらためて示すことも、トルコの例ではないが重要ではなかろうか。そろそろ軌道修正をしっかり行わないと、市場機能が債券だけでなく、いずれは株式市場も含めて失われかねない。


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by nihonkokusai | 2018-09-16 10:21 | 中央銀行 | Comments(0)

日本の国債市場の機能が再び低下

 9月に入ってからの日本の債券市場の動きを確認してみたい。9月3日の現物債はカレント(直近発行された国債)が、2年、5年、10年、20年、30年、40年ともに一本値となっていた。この日の先物の日中値幅(前後場のみ)は9銭。

 4日に日銀は3年超5年以下の国債買入を月額ベースで減少させたが、この日の2年債と5年債、そして10年債カレントは一本値となっていた。先物の値幅は11銭。

 5日の10年国債入札は順調名結果となり、10年債カレントは久しぶりに動いたもののレンジは0.110~0.115%。5年債は一本値、2年債カレントは出合いなし。先物の値幅は10銭。

 6日に今度は日銀は5年超10年以下の国債買入を月額ベースで減額させた。この日の10年債カレントは一本値、2年債と5年債カレントも一本値。先物の値幅は10銭、

 7日は2年、5年、10年、40年カレントは一本値。先物の値幅は10銭。

 10日は月曜日で先物は中心限月の移行を控えていたこともあるが、2年と40年カレントは出合いなし。ほかのカレントは10年債含めて一本値。先物9月限の値幅は5銭となっていた。

 11日の30年債入札は順調な結果となっていたが、落札結果発表時間が何故か遅れていた。ただし市場への影響は限られ、2年と5年のカレントの出合いなく、10年と20年のカレントは一本値。先物値幅は実質的に中心限月となった12月限が7銭となっていた。

 12日は2年、5年のカレントは出合いなく、10年と20年カレントは一本値。先物の値幅は8銭。

 日銀は7月31日に政策の弾力化というか柔軟化を行った。それを受けて一時的に債券相場は動いたものの、再び膠着相場に戻りつつある。8月27日に債券先物の日中値幅が3銭と過去最低に並んだ。それ以降は10銭程度の値幅となっていたが、動きが乏しいことに変わりはない。

 現物債も2年と5年のカレントが出合わない日が多くなり、10年債カレントもかろうじて値がついている状況となっている。10年債カレントが出合わないとなれば一般のニュースともなってしまう懸念があり、なんとかそれは免れている格好となっている。

 日銀は長期金利の目標レンジをこれまでの±0.1%から±0.2%に拡げたとされる。さらに月額ベースの買入を減少させることで、10年債カレントの流動玉もそれなりに出てくることが予想されている。

 このように需給面では多少は緩和されているものの、それでも需給はタイトな状況に変わりなく、ある意味動きようがなくなっている。外部環境をみても米国10年債利回りが3%近くまで上昇してきたが、それもいまのところ材料視されず。10年債利回りはこの水準が居心地が良いのか、それとも中間決算期末なども意識して動きたくはないのか。ただし、このまま膠着相場が続くとも思えないのだが。


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by nihonkokusai | 2018-09-14 09:36 | 債券市場 | Comments(0)
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