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日銀は異次元緩和の副作用を意識、政策の微調整はあるのか

 現在の異次元緩和のキーパーソンともいえる日銀の雨宮正佳副総裁が相次いでメディアのインタビューに応じていた。

 朝日新聞のインタビュー記事をみると、雨宮副総裁は、「物価上昇率2%」について、「簡単に機械的に達成することは難しくなっている」と認め、7月の金融政策決定会合で要因を再点検する方針を示した。これについては黒田日銀総裁も会見で示唆していた。

 これについて雨宮副総裁は、「もう一度物価が上がりにくい理由、物価観の形成の仕方などを点検する。物価動向について何が起きているのかをきちんと詰める」と語っていた。

 これまでのリフレ派の主張をそのまま取り込んだような政策から軌道修正を行う可能性がある。

 雨宮氏は「副作用が緩和のメリットをひっくり返す大きさにはなっていない」としつつ、「(副作用が)知らないうちにたまっていることもあるので、注意深く見ていく必要がある」とした(朝日新聞)。

 ブルームバーグでのインタビューでも、「だんだん累積的にたまっていくものなので注意深く見ていく」と説明している。

 副作用については、6月14、15日に開催された金融政策決定会合における主な意見で、ある委員から「金融機関では、保有有価証券の評価損益の悪化に加え、低収益店舗の減損リスクも生じてきている。金融政策の継続にあたっては、その効果と副作用の二つの時間軸を意識し、副作用が顕在化する前から対応を検討しておくことが必要となる。」との意見が出されていた。

 そして注目すべきは 今後の緩和策の修正に関しての雨宮副総裁の説明となる。

 「物価目標を安定的に達成するために必要なら、調整はあり得るし、排除してはいけないと思う」と述べ、修正するかは「物価や経済の状況、副作用の総合判断」とした(朝日新聞)。

 「必要な政策の調整は排除すべきではない」(ブルームバーグ)

 雨宮副総裁から、インタビューを通じて緩和策の修正に関する発言が出たことは注目すべきと思う。もちろんこれで、すぐにも微調整があるということではないが、その準備も進めている可能性がありうる。

 すでに日銀は国債の買入額を修正しつつある。これは今後もタイミングを見ながら進めてくるとみられる。そして、債券市場の機能低下という問題に対して、長期金利の目標値を若干引き上げるか、もしくはターゲットのレンジを拡げるなどしてくる可能性がある。

 金融機関への影響を考慮するとマイナス金利政策も止めるべきではあるが、こちらの判断は黒田総裁次第とみられ、ややハードルが高いかもしれない。

 さらに日銀のETFなどの買入についても、日銀が実質的な筆頭株主になっていることや、本来市場に委ねるべき相場形成への影響についても危惧されつつある。こちらは株式市場への影響が大きいだけに慎重に行う必要はありながら、ストック効果を強調しつつ、いずれ新規の買入を減額もしくは停止すべきと考える。


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by nihonkokusai | 2018-06-29 09:26 | 日銀 | Comments(0)

3月末現在の日本国債の最大保有者は日銀、海外は残高が減少

 日銀は6月20日に資金循環統計(1~3月期速報値)を発表した。これによると個人の金融資産は3月末時点で約1829兆円となり、株価の上昇傾向などを背景に過去最高を更新した12月末時点からは減少した。12月末比でみると1月から3月にかけて日経平均は下落しており、その影響を受けたとみられる。個人の金融資産の内訳は、現金・預金が前年比で2.3%増の約961兆円となった。株式等が同11.7%増の約199兆円、投資信託も1.4%増の約73兆円となっていた。

 この資金循環統計を基に国債(短期債除く)の保有者別の内訳を算出してみた。

 残高トップの日銀の国債保有残高は437兆2791億円、43.9%のシェアとなった。前期比(速報値)からは10兆435億円の増加となる。

 残高2位の保険・年金基金は236兆4565億円(23.7%)、2兆8786億円増。

 残高3位は預金取扱機関(都銀や地銀など)で171兆2825億円(17.2%)、5兆193億円増。

 残高4位が海外投資家で59兆5311億円(6.0%)、2737億円減。

 残高5位が公的年金の46兆8859億円(4.7%)、1兆343億円増。

 残高6位が家計の12兆3823億円(1.2%)、85億円減。

 その他が31兆8632億円(3.2%)、11兆1856億円減となっていた。

 2017年12月末に比べ国債(短期債除く)の残高は7兆5079億円増の995兆6806億円となった。短期債を除いた国債残高が1000兆円に迫っている。12月末に比べて大きく増加したのは、国債を大量に買い入れている日銀で、シェアは4割を上回っている。今回、前期比で大きく減少したのはその他の11兆1856億円減となった。内訳で見るとディーラー・ブローカーが11兆3913億円の減少となっていた。

 短期債を含めた国債全体の数字でみると残高は約1097兆円となり、日銀が約459兆円で41.8%のシェアとなっていた。海外勢の残高は約120兆円と短期債を含めると国債全体の10.9%のシェアとなっていた。海外の長期債保有が減少しており、こちらの今後の動向にも注意したい。


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by nihonkokusai | 2018-06-28 09:28 | 国債 | Comments(0)

株式市場を動揺させるトランプ・トラップ、投資制限については米政権内での対立も

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙が24日、トランプ米政権が中国の知的財産侵害への対策を強化するため、中国資本が25%以上の企業を対象に対米投資を制限する検討に入ったと報じた。ITなど先端技術の流出も規制すると伝えた(日経新聞電子版)。

 これを受けて24日の東京株式市場では日経平均が下げ幅を拡大させ、早朝に110円台にあったドル円は109円台半ばまで下落した。25日の米国株式市場では、IT技術の流出規制の影響を受けやすい半導体株などを主体に売られ、ダウ平均は一時500ドル近くまで下落した。

 ところが、通商政策を担当し対中強硬派で知られるナバロ大統領補佐官が米CNBCに出演し「対米投資の制限は今のところ検討していない」と述べたことから、ダウ平均はやや下げ幅を縮小させて328ドル安、ナスダックは160ポイントの下落となった。

 ドル円はナバロ大統領補佐官の発言を受けて、109円30銭台あたりから、一時110円台に切り返した。

 トランプ政権が中国製品への追加関税の発動を表明したのに対し、中国も米国製品に対し同じ規模、同じ強さの追加関税措置を出すと応じ、これにより、米中の貿易摩擦が激化するのではとの懸念が強まり、市場は動揺した。それが少し落ち着いてきたかに思えたタイミングで、トランプ大統領はあらたなトラップを仕掛けてきたかに思われる。

 ナバロ大統領補佐官は25日に「中国の問題に関してムニューシン財務長官が29日に大統領に報告する」とも述べていた。ナバロ氏は「報告は中国以外の国とは全く関係ない」とも語った。一方、ムニューシン氏は投資制限について「中国だけを特定したものではなく、われわれの技術を盗もうとする全ての国が対象となる」とツイッターに投稿した。米政権内では対中通商政策をめぐり路線対立があるともされており(共同)、今後もあらためてこの問題が蒸し返される可能性がある。

 米国株式市場でナスダックはじりじりと上昇して、20日には再び過去最高値を更新していた。しかし、ここにきての下落により、チャート上は上昇トレンドが崩れつつある。ダウ平均も24000ドルを割り込むようなことになると、下落トレンド入りする懸念がある。

 トランプ政権が株式市場を全く無視しているわけではないと思うが、いまの市場はトランプリスクに怯えている。今度はどのようなトラップを仕掛けてくるのか。果たしてそれは自国経済にとって本当にプラスになるものなのかどうか。米国景気の拡大基調がこのまま崩れるようなことになると、自ら仕掛けたトラップに米国自体がはまってしまうというリスクも警戒する必要がありそうである。


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by nihonkokusai | 2018-06-27 09:48 | 国際情勢 | Comments(0)

キャッシュレス化のキーとなるQRコードにセキュリティ上の弱点が見つかる

 電子決済や広告などに広く利用されている「QRコード」に、偽の情報を仕込むことができるセキュリティ上の弱点があることが、神戸大学のグループの研究でわかったとNHKが伝えた。

 QRコードとは、1994年にデンソーの開発部門(現在はデンソーウェーブ)が開発したマトリックス型の二次元コードである。QRコードはデンソーウェーブの登録商標となっているが、特許権者のデンソーウェーブは、規格化された技術に対し特許権を行使しないと宣言していることから、様々な分野に利用されている。

 QRコードを使った電子決済に関しては、中国系のAlipay、WeChat Payが一気に普及させ、日本でもLINE Pay、楽天ペイ、Origamiといったサービスが登場したが、いまのところそれほど普及は進んでいない。

 しかし、ヤフーもQRコードを使った決済サービスを開始し、セブンイレブンも独自のスマホ決済を導入すると報じられ、NTTドコモ、KDDI、JCB、さらにメガバンクなどもQRコード決済サービスを進める計画を発表した。そして、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFGはQRコードの規格を統一することで合意したと伝えられている。

 ただし、規格が分かれたまま普及が進むと、消費者や小売店の利便性を損ねると判断した経済産業省はQRコードを使った決済の規格統一に乗り出すとも伝えられている。

 このようにキャッシュレス化のキーとなるQRコードではあるが、当然ながらそのセキュリティにも注意を払う必要がある。

 このQRコードのセキュリティについて、神戸大学の森井昌克教授らのグループが検証したところ、コードを作成する際に不正な操作を加えると、本来の情報に加えて、偽の情報を仕込むことができることがわかったそうである(NHK)。

 QRコードは一見しただけでは内容がわからないため、誘導された先が正しいかどうかチェックを強化する必要があると森井教授はコメントしている。中国では改ざんしたQRコードを正しいコードの上から貼り付ける手口で、代金をだまし取られる被害も出ているそうである。

 今後、日本でもQRコードを使った電子決済が急速に拡大する可能性があり、このようなセキュリティ上の弱点が存在することも意識しておく必要がありそうである。


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by nihonkokusai | 2018-06-26 15:57 | 金融 | Comments(0)

日銀の政策委員からも国債市場の機能低下を危惧する声が。日銀はコミットメントよりも副作用を注視すべき

 日銀は6月14、15日に開催された金融政策決定会合における主な意見を公表した。このなかから「金融政策運営に関する意見」をみていきたい。

 「現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが適当である。」

 との毎度の意見はさておき、

 「物価の伸び悩みの理由は、単純な需要不足とは考え難いことから、短期間で需要を無理に押し上げるような政策は適当ではない。現在の緩和的な金融環境を粘り強く維持していくことが 重要であり、そのためには、経済・金融環境に深刻な歪みが生じることがないよう注意しながら、持続性に十分配慮した政策運営がなされるべきである。」

 「短期間で需要を無理に押し上げるような政策」とはサプライズも意識した異次元緩和そのものを指しているようにもみえなくもないが、さらなる追加緩和については反対のようである。そして、注目すべきワードは「深刻な歪み」と「持続性」となる。いまの政策が持続不可能なほど深刻な歪みが生じるリスクを意識し始めたか。

 「金融機関では、保有有価証券の評価損益の悪化に加え、低収益店舗の減損リスクも生じてきている。金融政策の継続にあたっては、その効果と副作用の二つの時間軸を意識し、副作用が顕在化する前から対応を検討しておくことが必要となる。」

 こちらでは経済・金融環境に深刻な歪みとされるものが具体的に示されている。この危惧は時間の経過とともに強まっていく。

 「低金利が銀行経営の悪化を通じて金融仲介機能を低下させ、却って金融緩和効果を削ぐという議論がある。こうした金融仲介機能の中核は、預金を集めて返済可能性を考慮しながら貸し出すことであるが、国内銀行の平均預貸率は7割以下であり、残りは債券運用である。この点を考慮すれば、銀行の金融仲介機能にはそもそも改善の余地があるのではないか。」

 例によって「という議論がある」という発言をする方の意見であるが、これは金融政策決定会合という場の金融政策運営に関して発言すべき意見であるのであろうか。

 「足もとの国債市場では、米国金利等の動きに対する感応度が低下しているほか、新発債の業者間取引が不成立となる日もみられる。本来の市場機能をできるだけ維持する観点から市場調節を運営していくことが重要である。」

 日銀の長短金利操作付き量的・質的緩和の副作用の指摘であるが、どの委員による意見なのであろうか。佐藤委員と木内委員が任期を迎えたあとは、債券市場関係者は政策委員にはいない。これは債券村の住人はリフレ派の意見を理解していないためかどうかはしらないが、このようななかにあって、債券市場動向を気にしてくれる委員がいるのは心強い。日銀の国債買入について何らかの修正が入るかもしれないという期待をしても良いのであろうか。

 「ETFなどリスク性資産の買入れは、「物価安定の目標」を実現するための政策パッケージの一要素として行っているが、政策効果と考え得る副作用についてあらゆる角度から検討を続けるべきである。」

 こちらも副作用に関する指摘であり、ターゲットは国債ではなくETFなどリスク性資産の買入に関するものである。この環境下で日銀が株価を買い支える必要性はない。事前に市場にしっかり織り込ませるかたちで、ETFなどの買入は早めに停止すべきと個人的には思っている。

 「他の先進国では、2%程度の物価上昇が当然とされ、そのもとで3~4%程度の名目成長が達成されてきた。2%の「物価安定の目標」は、国際社会に対して日本が他国並みの名目成長を実現するという決意の表れである。」

 何を言っているのかわからない。

 「予想物価上昇率がなかなか上がらない現状を考えると、場合によっては、民間主体の期待形成に働きかけるべく、2%に向けたコミュニケーションと広い意味でのコミットメントを改善する工夫を講じることが望ましい。」

 広い意味でのコミットメントの改善とは具体的などのようなものなのかの説明がほしい。

 「足もとの物価上昇率が高まっていないため、予想物価上昇率も伸びにくくなっている。予想物価上昇率に働きかける追加的なコミットメントが必要である。」

 予想物価上昇率に働きかける追加的なコミットメントって何だろうか。

 「共同声明で謳われた政府・日本銀行のコミットメントに揺らぎがないと理解されることが大切である。」

 コミットメントと言う用語が乱発されており、どうやら日銀の金融政策は精神論に走りつつあるようにも思われるのだが。それよりも現実の副作用に目を向けたほうが良いと思う。


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by nihonkokusai | 2018-06-26 09:43 | Comments(0)

デフレだったのは本当に1998年から2013年までなのか

 日銀の黒田総裁は15日の記者会見において下記のような発言をしていた。

 「1998年から2013年まで15年続いたデフレ、低成長というものが、一種のデフレマインドとして企業や家計に残っています。」

 これについて記者から「その15年のデフレ期間という認定は、日銀のコンセンサスでしょうか。」との質問があり、黒田総裁は下記のように返答した。

 「15年間デフレだったというのはデータでも示されていますし、その点に何ら異論はないと思います。なお、2013年4月以来の量的・質的金融緩和によってデフレではない状況になったということは、政府も認めていますし、私どももそう言っているわけですが、デフレからの脱却というところには、政府もまだ踏み切っていないわけです。」

 1998年から2013年まで15年続いたデフレというのは、物価の指標であるGDPデフレーターの推移から示されているものかと思われる。これをみると確かに1998年から2013年まで低下基調となり、2014年からは回復基調となっている。

 それでは2013年4月の日銀による量的・質的金融緩和によってデフレが解消されたといえるのであろうか。もしそれでデフレが解消されていれば、長短金利操作付き量的・質的緩和策まで踏み込む必要性はあったのであろうか。

 この期間の日銀の物価目標である消費者物価指数の推移をみると別な姿が浮かび上がる。消費者物価指数は年間ベースでみて1983年に2%を割り込んでから、原油価格の高騰や消費増税による影響により2%を超えることがあっても、それは一時的となりほぼ2%を下回った状態が続いている。

 もし日銀が物価目標をGDPデフレーターとして、その低下基調がストップし回復基調が見えたときに、デフレは脱却したと判断すれば、異次元緩和と呼ばれる緩和策を修正していたのであろうか。

 GDPデフレーターと消費者物価指数の動きの違いはどのように説明するのか。たとえば、1997年の消費増税などによってデフレがスタートし、それをストップさせたのは2013年4月以来の「量的・質的金融緩和」と判断するのであれば、何故それによって消費者物価指数を対象としている物価目標は達成していないのか。これにはどちらかに特殊な要因が影響していたのではないのか。

 1998年というのは債券関係者にとっても記憶に残る年であった。10年債利回りが初めて1%を割り込み、日本国債が格下げされ、年末に運用部ショックが起きている。長期金利で見る限り、たしかにデフレがスタートした年と判断されるかもしれない。しかし、その長期金利でみると、それは現在ゼロ%近辺に張り付いた状態にある。


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by nihonkokusai | 2018-06-24 09:47 | インフレ・デフレ | Comments(0)

日本国債の動かなさが、半端ない!

 16日にNHKは「国債の取り引き 不成立相次ぐ 日銀の大量購入で品薄に」と言うタイトルのニュースを流していた。日本国債がNHKニュースに取りあげられることが珍しいが、ここにきての日本の債券市場の流動性の低下が市場関係者以外からも危惧されてきた現れではなかろうか。

 NHKニュースでは「国債の取り引きを仲介する日本相互証券によりますと、取り引きが成立しない日は、去年は1年間で2日でしたが、ことしはすでに5日と2倍以上に増えています。」と指摘していた。

 自分でカウントしていなかったが、今年に入っての10年債を主体にカレント(直近に発行した銘柄)の出合いのない日がこれまで以上に多いことは感じていた。特にマイナスの利回りとなっている2年と5年の中期ゾーンのカレントは出合いのない日が多い。

 日銀は21日に、債券市場参加者会合(6、7日開催分)の議事要旨を公開した。ここでは「前回会合以降、円債市場の機能度・流動性の状況に大きな変化はみられない」との意見も出ていたが、国債の価格発見機能が失われている点も指摘されていた。さらに「各社とも円債の部署に人材を投入しなくなっている」、「証券会社を中心に市場参加者が減少し始めている」との指摘が市場関係者から指摘された。

 市場の厚みが失われているだけでなく、債券市場の人材の厚みも縮小されている。それでなくても債券市場は債券村と呼ばれるように、やや専門性が高い市場であり、市場で価格が動かず、国債の価格発見機能が失われ、その結果、市場動向の読みといった経験も機会も失われていることは危惧する必要がある。

 市場参加者からは次のような要望が日銀に寄せられていた。

 「将来の「出口」を念頭に置くと、市場参加者のノウハウが失われるような事態は避けるべきだと思う。そうした観点からも、金利がある程度動くような柔軟な調節運営を行ってほしい。」

 私は先日、メディアの取材を受け、債券市場が大きく動いていたときの経験談を話させてもらった。金利は動くときは動く。どのように動いてきたのか。それに対処するにはどうすれば良いのか。そこには経験が物を言うという主張をしたが、いまはその機会が失われている。

 デフレの期間について、安倍政権と日銀は1989年から2013年までとしたようだが、長期金利から見れば1989年から2%以内での推移が続いて、2013年からは今度は人為的にゼロ%近くまで抑え込まれている。物価目標を達成するためとして、我々が本来受け取れるはずの利子が押さえ込まれ、結果としてその分、政府の財政を助ける格好となっている。この期間に失われたのは金利だけでなく、金利を決める債券市場の機能そのものであり、市場参加者の経験も失わせ、人材そのものも消失しようとしている。このような環境が続くなり、さらに悪化するなどした場合には、日銀が出口政策など取れるものではない。


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by nihonkokusai | 2018-06-23 07:37 | 債券市場 | Comments(0)

ワールドカップの優勝国予想と物価予想の違い

 日本銀行ワーキングペーパーシリーズと題されたレポートが日銀のサイトにアップされている。このなかに6月5日にアップされた、『「分からない」という回答から分かること?』とタイトルされたレポートがアップされた。面白い着目点である。

 このレポートの趣旨としては、『短観の「物価見通し」における「分からない」という回答の中から、真の意味では「分かる」と推察される回答を機械学習の手法を用いて識別する』というものである。

 『一般に、アンケート調査における「分からない」という回答には、次のふたつのケースがある。ひとつは、「分かる」と「分からない」との間の線引きが明確な場合である。たとえば、「量子コンピュータの仕組みを知っていますか?」という質問に対する「分からない」という回答がこれにあたる。』

 『もうひとつのケースは、「分かる」と「分からない」との間の線引きがいくらか曖昧な場合である。たとえば、「2018年のワールドカップの優勝国はどこになると思いますか?」という質問に対する「分からない」という回答がこれにあたる。後者のケースでは、「分からない」という回答と「ブラジル」という回答を異なる回答とみなすかどうかは、議論の余地がある。』

 ワールドカップの優勝国予想については選択肢が32しかない。世界ランキングも発表されている。まったくサッカーに興味がない人であれば「分からない」と答えるかもしれないが、ドイツやブラジルと答える人が多いであろうことは容易に想像しうる。

 これに対して「量子コンピュータの仕組みを知っていますか?」という問いに対して、「分からない」という回答をする人が多いであろう。

 それでは短観の「物価見通し」については、上記の事例のどちらか該当するであろうか。短観とは企業に調査票を送って答えてもらうものであり、基本的に企業経営者が答えているはずのものである。それでは企業経営者にとって、物価の予想は「ワールドカップの優勝国予想」のような容易なものなのか、それとも「量子コンピュータの仕組み」のようなものなのであろうか。

 短観では「自社の販売価格」も聞いている。こちらについては当然ながら企業も予想を立てる必要がある。そうでなければ年度の計画、もしくは長期計画などが立てられない。この「自社の販売価格」の予想を参考にして「物価見通し」も回答するということは考えられる。

 しかし、自社の販売価格はあくまで物価のほんの一部にすぎず、それで物価全体を見通すことは難しい。企業経営者であっても、物価はワールドカップの優勝国予想のように比較的容易に見通せるものではないはずである。

 日本の消費者物価指数はどのような構成要素となっているのかをご存じであろうか。かなり専門的な人でなければ、それは答えられないはずである。たとえば、日本の消費者物価指数には帰属家賃が大きく影響しているとされるが、それについて的確に答えられる人も少ないのではなかろうか。

 このように消費者物価指数の仕組みについては、ワールドカップの優勝国予想のごとく容易に答えられるものではない。これは「量子コンピュータの仕組みを知っていますか?」という問いに近いものであると思う。

 それでは日銀が大胆に国債やETFなどを買えば、どのようにして消費者物価は上がるのか。これについてもその経路を具体的に説明することは困難となる。金融市場の資金量が増加すれば、単純に物価が上がるものではないことは、この5年間で日銀が証明してきた。

 日銀の黒田総裁は20日にポルトガルのシントラで開かれた欧州中央銀行(ECB)のパネルディスカッションで、3%の賃上げを求める政府の要請はかなり適切だと指摘したが、この背景には、日銀の物価目標の達成に向けては、現状よりはるかに高い年3%ペースでの賃金引き上げが必要との認識を示した。

 日銀はやることをやったので、あとは企業経営者の努力次第ということなのであろうか。企業経営者は何故賃金を抑制しているのかを一番わかっているはずである。企業経営者にとってはワールドカップの優勝国予想のように、賃金をなかなか引き上げられない理由を説明することができるであろう。しかし、日銀の異次元緩和によって物価目標達成させるため、結果として賃金を引き上げなければならないのかについては疑問を呈するのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2018-06-22 10:08 | 日銀 | Comments(0)

アマゾンが日本の物価を引き下げている?

 日銀は6月5日に「インターネット通販の拡大が物価に与える影響」というレビューをサイトにアップした。

 日本に限らず、欧米の物価もなかなか上昇してこない。米国は消費者物価指数などがやっと2%台に乗せてきたものの、イエレン前FRB議長は物価の低迷について、これを「謎」と称した。その理由のひとつにIT化による影響が考えられる。特にアマゾンを中心としたインターネット通販が物価の押し下げ要因になっている可能性がある。

 日銀のレビューでも次のような指摘がある。

 「アマゾンなどのインターネット通販の急速な拡大が、スーパーなど既存の小売企業が直面する競争環境を厳しいものにし、値下げ圧力にもつながっているという声が多く聞かれるようになってきている。」

 実店舗を持たず人件費も節約可能なインターネット通販での価格は、確かに実店舗の表示価格に比べて安いことが多い。以前には特に家電商品でみられ、ネットで調べた価格を店頭の商品購入の際に提示して、価格の引き下げ交渉をするといった光景も見られた。

 しかし、アマゾンなどのネット販売の拡大は、家電だけでなく広範囲の商品についても価格の引き下げを可能にしつつある。アマゾンではプライム会員などを主体に送料も無料化するなどしており、種類豊富な選択肢があり、実店舗より安い価格の商品が、家に直接届く仕組みになっている。

 それではこのアマゾンなどのインターネット通販の拡大がどのような経路で物価に影響を与えているのか。日銀のレビューは下記のように解説している。

 「わが国の消費者物価指数(CPI)においては、原則としてインターネット販売価格は価格調査の対象となっていない。このため、インターネット販売価格の変動自体がCPIに直接影響を与えるわけではない。」

 「しかし、インターネット通販の拡大を受けて競争環境が変化すれば、既存の小売企業の一部が対抗措置としての値下げを行うことで、結果的にCPIで計測される物価が下押しされる可能性はある。」

 家電では昔、ヤマダ電機の価格がひとつのベンチマークとなっていたと言われたことがあった。現在ではアマゾンの価格がひとつのベンチマークとなっているとしてもおかしくはない。結果としてそれが物価の下押し要因となっている可能性は否定できない。これは日本国内だけでなくグローバルで起きていることでもある。



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by nihonkokusai | 2018-06-21 09:46 | 景気物価動向 | Comments(0)

4月のロシアによる米国債の保有高が前月から半減したのは政治目的なのか

 米国の財務省が先日公表した米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、4月にロシアが保有している米国債を大量に売却し、保有額が半減していた。ちなみに中国による米国債の保有額については小幅な減少に止まっていた。

「MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES」

http://ticdata.treasury.gov/Publish/mfh.txt

 これによると4月の国別の米国債保有高のトップは引き続き中国。4月時点の中国の米国債保有額は1兆1819億ドルとなり、3月の1兆1877億ドルから58億ドル減少していた。

 今年1月に中国当局が米国債の購入縮小もしくは停止を検討していると報じられたが、その後中国当局が米国債購入の縮小または停止を検討しているとの報道は否定した。3月に中国の駐米大使が米国債の購入減額について「あらゆる選択肢を検討している」と含みを持たせた。つまり、報復措置として米国債の購入を減額するなどの手段を講じる可能性を示した。

 中国による米国債の保有高は今年1月は昨年12月に比べて減少していたが、2月と3月は「増加に転じ」昨年12月の水準に戻した。4月にやや減少させていたものの、報復措置として米国債の購入を減額するなどの手段は講じられてはいない

 中国の3月末の外貨準備高は前月比90億ドル増の3兆1430億ドルと再び増加に転じていた。しかし、4月は再び減少し3兆1200億ドルとなっていたことで、4月の中国による米国債保有高の減少はこれで説明がつきそう。

 今回も2位となっていた日本による3月の米国債保有額は1兆312億ドルと2月の1兆435億ドルから123億ドルの減少となっていた。

 さて問題のロシアによる米国債保有高であるが、4月は487億ドルと3月の961億ドルから474億ドルの減少となっていた。日経QUICKニュース(NQN)によると、「米国がロシアのアルミ大手ルサールへの経済制裁を打ち出すなど、2016年の米大統領選への介入疑惑やシリア問題を巡り米ロ関係が急速に悪化した時期と重なる」とされる。

 しかし、政治的な配慮によってロシアによる米国債保有高を減少させたとなると、さらに米国とロシアの関係悪化に火が付きかねない。日経QUICKニュース(NQN)の記事でも指摘されていたが、ロシア政府がルーブル買い・ドル売りの原資確保を目的に主に米債で運用する外貨準備の一部を取り崩したとみるのが現実的か。

単位、10億ドル、()内は前年比増減

トップ10

中国(China, Mainland)1181.9、-5.8

日本(Japan)1031.2、-12.3

アイルランド(Ireland)300.4、-17.5

ブラジル(Brazil)294.1、+8.1

英国(United Kingdom)262.7、-1.0

スイス(Switzerland)242.2、-3.2

ルクセンブルク(Luxembourg)213.9、-7.7

香港(Hong Kong)194.0、-2.2

ケイマン諸島(Cayman Islands)180.7、-15.2

台湾(Taiwan)168.1、-2.0

22位

ロシア(Russia)48.7、-47.4


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by nihonkokusai | 2018-06-20 09:51 | 国債 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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