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山本幸三氏の発言の矛盾

 自民党の山本幸三衆院議員は、日銀の金融政策に関し、経済・物価情勢の展望(展望レポート)を策定する10月30日の金融政策決定会合に合わせて追加の金融緩和に踏み切るべきだとの認識を示した(ブルームバーグ)。

 山本幸三氏はいわゆるリフレ派と呼ばれる人たちの代表格ともいえる。安倍晋三首相とは野党時代に金融政策の勉強会を重ねてきており、2012年11月の安倍総裁の輪転機発言の背景にいた人物であり、本田悦朗内閣官房参与や浜田宏一内閣官房参与などとともに、リフレ政策による金融政策を柱としたアベノミクスを勧めてきた人物である。

 山本氏は具体策として、現在は「年間80兆円」のペースで行っている長期国債などの資産買い入れを最低10兆円規模で拡大することが必要と述べ、経済や物価に関する見通しは「どうせ見直しをしたら落ちるだろう。その時に何もしないというのはおかしい」と指摘。10月30日の会合は追加緩和の「いい機会だ」と語ったそうである(ブルームバーグ)。

 山本氏は今年1月のロイターとのインタビューでは、 日銀が掲げる「2%の物価安定目標」達成は、2016年度に後ズレするが、消費税率引き上げによるマイナスの影響が強すぎた結果だとして十分説明可能と述べていた。追加緩和の効果が、今年夏以降に出てくるとし、「よほどそのほかの外的ショックがなければ様子をみてよい」としていた。

 また、2014年のブレジデントとのインタビューでは、「アベノミクスの金融緩和で円安になれば、輸出が伸びるから、その分で消費税の悪影響の分は相殺できるので大丈夫だろうと予測していた。しかし、輸出がまったく伸びない。工場の海外移転が大きい理由です。輸出構造が変わってしまった。消費税増税の影響を相殺する材料がないから、マイナスの影響だけが残った」との発言もあった。

 それでは日銀が2013年4月と2014年10月に二度にわたる異次元緩和を行った意味は何であるのか。山本氏などのリフレ派が求めていたようなインフレターゲット政策を日銀が行ったにもかかわらず、肝心の物価が上がっていない。リフレ政策は円安のための政策であったのか。その円安の効果すらものちほど否定している。

 消費増税による影響が大きいとするのであれば、異次元緩和の効果なるものはどこにいったのであろう。消費増税の悪影響を一定水準に止めるショックアブソーバー的な効果しかなかったとすれば、リフレ派が否定してきたそれまでの金融緩和効果と、どのような違いがあったのか。昨年10月の追加緩和の効果そのものも出てきていないし、物価は上がっていない事実をどのように説明するのか。

 その説明もなしに、日銀による「10兆円」の資産買入の増額で、どこにどのような効果が出るというであろうか。すでに山本氏は円安の効果についても自ら否定していることで、10兆円を増やせば物価目標を達成できるという根拠に乏しい。

 そろそろリフレ政策の意味そのものを問い直す必要もあるのではなかろうか。今回の山本氏の発言を受けて日銀が動くようなことはなかろう。アベノミクスに乗った日銀ではあったが、その効果について結果が伴っていないことを一番理解しているのは日銀自身であろう。

 市場参加者も日銀に資産買入による追加緩和を求めても、一時的に株価やドル円などに働きかけることはできても、実体経済や物価そのものを押し上げることはできないという事実を認識すべき時かと思われる。

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by nihonkokusai | 2015-09-13 12:31 | アベノミクス | Comments(0)

株と債券の先物とヘッジファンド

 ここにきての東京株式市場や外為市場の動きは大荒れの展開となっている。これに対して、日本の債券の動きは非常に鈍くなっている。中国の景気減速などによるチャイナリスクやFOMCの利上げ観測などにより、市場が不安定となっている面がある。債券は日銀の国債買入があるため、大きくは売られないが、高値警戒もあって動けない状況にある。

 株や為替の相場変動の大きさと債券の相場変動の大きさには、ヘッジファンドやHFTと呼ばれるアルゴリズムトレードなどが先物などを通じて影響を与えている可能性がある。9月8日から10日にかけての日経平均やドル円の相場変動には、海外のヘッジファンドなどが暗躍していた可能性があり、HFTがその値動きを荒くさせていたのではなかろうか。

 債券先物の売買高などからみると海外投資家の比率は高いものの、日本の債券については、あまりヘッジファンドなどが手を出しづらい状況にある。そもそも超低金利状態が長く続き、財政リスクなどから日本国債売りを仕掛けても、他の市場参加者が乗ってこない。このためヘッジファンドはオオカミ少年と化してしまい、ショートで仕掛けづらい。

 債券村の市場慣行というものに反応しづらい面もあるのかもしれない。国債入札の結果にしても、低調なのか、無難なのか、順調なのか、好調なのかの判断についても、事前予想の居所そのものの見極めや、応札倍率と投資家の動向等を含めて意外と判断が難しい面もある。そもそもHFTなどは海外投資家であり、漢字ベースで公表されるペーパーをネットで読み込んでのアルゴリズムトレードが難しいとの観測もある。債券先物は日経平均先物などに比べアルゴリズムトレードは低調のようである。

 株や債券の動きをみるには、ヘッジファンドならずとも先物の動きを見るのが良い。ザラ場中はほとんど値が付いており、相場の方向性が確認できるとともに、何かしら材料が出ると即座に反応する。債券市場にとり、まもなく30周年を迎える長期国債先物こそがベンチマークとなっている。

 ただし、注意すべきはその取引時間である。債券先物は前場8時45分~11時00分、後場12時30分~15時00分、イブニングセッション15時30分~翌2時55分となっている。同じく大阪証券取引所に上場している日経平均先物は9時00分~15時10分、ナイトセッション16時30分~翌午前3時となっている。

 このため9月8日の15時過ぎから日経平均先物が急反発していた状況は大阪証券取引所に上場している日経平均先物の動きからは確認できなかった。こちらはCMEの日経平均先物で動きを確認できたのである。

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by nihonkokusai | 2015-09-11 09:56 | 債券市場 | Comments(0)

9月8日の15時に市場で何が起きたのか

 9月8日の日経平均は上海総合指数が上昇していたにも関わらず、下げ幅を拡大させ日経平均の引けは433円安となり、7か月ぶりの安値をつけた。昨年末の引け値を下回り、年初からの上昇分を打ち消した格好となった。外為市場ではドル円も一時119円を割り込むなど円高も進行していた。

 ところがこの日の東京市場の引け後に相場は急変する。CMEの日経平均先物は17400円割れから急反発し、あっさりと18000円台を回復したのである。ドル円も同様に上昇し、120円台を回復していた。まさにV字回復となった。また、同じタイミングで米株の先物も上昇していた。

 この相場変動はどのような説明が可能なのか。8日には日経平均やドル円にかなりの売り圧力が掛かっていたことは確かである。上海総合指数の動きとも乖離しつつあったこともそれを示していた。

 日経平均先物は8月25日のナイトセッションで17160円まで下落後、中国の利下げ等もあってチャイナリスクがやや後退し、買い戻しが入り28日に日経平均は19000円台を回復した。ところがFRBの早期利上げも意識されて再び上値が重くなり、日経平均は再度下落基調となった。

 あらためて東京株式市場の地合いの悪化もあり、日経平均は17160円という目先の安値も意識されてショートポジションが積み上がっていた可能性がある。9日の日経新聞が伝えていたような仕組み債などが絡んでの売りが入っていた可能性もあろう。

 しかし、8日の15時過ぎに地合は急変する。その要因が実は見当たらない。通常はこれほどの相場変化が生じるには、何かしらのヘッドラインニュースが影響する場合が多い。ところが相場にインパクトを与えるようなニュースはこのタイミングでは流れていなかった。国内の大手損保会社が英国の損保会社を買収との記事があり、それを見越した円売りドル買いが入ったとの観測もあったようだが、後講釈のようにもみえる。

 国内市場から海外市場に移る東京時間の15時というタイミングで何が起きていたのか。動きから見ると何かしらの手口が入っていた可能性がある。日経平均先物などのショートの積み上がり方、上海株の上昇受けての米株の上昇まで見越した仕掛けが入っていたのかもしれない。東京市場が引けてからの動きであり、GPIFや日銀による買い支えも考えづらい。タイミングからみると海外ヘッジファンドなどが積み上がったショートをみて買い仕掛けをしてきた可能性がある。2012年11月のアベノミクスの登場時にも、欧州危機により円買いと日本株売りのポジションが積み上がっていたところにヘッジファンドは大量の買い仕掛けを行っていた。今回も安倍自民党総裁が無投票で再選され、三本の矢を強調していた。アベノミクス第二弾に期待したわけではないかもしれないが、タイミングとして仕掛けやすいものであったのかもしれない。

 9日の日経平均は1000円以上の上昇となった。しかし、これで日経平均が底打ちしたとはまだ言い切れない。今回の相場変動の背景にはチャイナリスクとともにFRBの利上げ観測もある。世界銀行のチーフエコノミストが、世界経済が一段と安定するまで、FRBは利上げを見送るべきとの考えを示したことも8日の米株の上昇要因のひとつとなったが、来週のFOMCでの利上げ決定の可能性は残る。このため、相場の変動はまだ続くとみておく必要があろう。

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by nihonkokusai | 2015-09-10 09:56 | アベノミクス | Comments(0)

日銀の国債買入の限界

 日銀の木内審議委員は9月3日の青森県の講演で下記のような発言をしていた。

 「国債は無制限に存在する訳でなく、また日本銀行が発行済みの国債を市中から全て購入できるわけではないことを踏まえると、国債買入れ策の持続性の問題がいずれ表面化する可能性もあります。国債買入れの限界がいつ生じるかを予見することは非常に困難ですが、仮に国債買入れに支障が生じるような事態が突然生じれば、金融政策に対する信認の低下や先行きの金融政策運営に関する不確実性が急速に高まることで、金融市場の不安定性が一気に高まることも考えられます」

 日銀の国債保有残高は約300兆円に積み上がっている。このうち短期債が約50兆円、短期債を除く国債が約250兆円。短期債を含めた国債の全体の残高は約1000兆円存在する(財務省の国債及び借入金現在高より)。つまり日銀はすでに国債全体の3割近くを保有している計算になる。

 日銀は2014年10月の異次元緩和第二弾以降は、国債の市中発行額の9割もの買い入れを行っている。このまま買入を続ければ、2026年あたりまでに日銀がほぼ国債を独占してしまう計算になるようだが、あと10年以上も異常な金融政策を続けることも考えづらい。

 そこまで待たずとも、2017年ないし18年に日銀がテーパリングをする必要があるとの指摘も多い。これは国内の債券市場関係者からだけでなく、サーカン・アースラナルプ、デニス・ボットマン両氏によるIMFのレポートでも指摘されていた。

 このような規模の国債買入を日銀が続ければ、いずれ限界が来ることは確かであるが、理論上は発行残高分まで買い入れることは可能となる。しかし、民間金融機関にとってもある一定額の国債保有は必要となる。これは日銀担保分だけではなく、安全資産として一定割合を国債で運用しているためである。

 GPIFが政府の意向も反映し、資産構成における国内債券の割合を60%から35%に引き下げた。共済組合などもこの資産構成の修正を行っている。都銀は2013年4月の異次元緩和以降、国債の残高を大きく落としていた。ゆうちょ銀行なども国債の残高が落ちている。これらは資産構成の修正というより、その分、日銀の当座預金の残高を増加させている面もある。生保などの国債保有額も頭打ちとなっていたこともあり、国内投資家とさほど競合することなく、日銀が大量に市場から国債を吸い上げても、いまのところ大きな支障はない。

 しかし、GPIFの国債の売却もある程度一巡し、都銀もむしろここにきて国債残高を増加させてきている気配がある。ゆうちょ銀行などは資産構成そのものの見直しが入る可能性があり、こちらは日銀の国債買い余力、つまりバッファーを増やすことになるかもしれない。しかし、それらをすべてカウントしても現在のペースのまま、日銀の国債買入が順調に進むことは考えづらい。

 むろん、日銀の物価目標がクリアされれば、限界を待たずにテーパリングを開始する可能性はある。しかし、異次元緩和から2年以上経過し、物価目標到達はかなり怪しくなっており、国債買入の限界が先に来る可能性のほうが高いのではなかろうか。

 木内委員は2014年10月の量的・質的緩和の拡大に反対し、ここにきて、マネタリーベースおよび長期国債保有残高が、年間約45兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節および資産買入れを行うことを主張している。これは追加緩和の効果そのものへの疑問だけでなく、日銀の国債買入にいずれ限界がくることを意識した上での主張とみられる。

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by nihonkokusai | 2015-09-09 09:42 | 国債 | Comments(0)

間違った処方箋の劇薬を飲み続ける日本

 日銀の黒田総裁は4日、米国の利上げに関して「もし米国が利上げするとすれば、それは米国経済がよりしっかりと成長していくことを物語っており、それ自体は世界経済にプラスだと思う」との認識を示した(ロイター)。

 米国の利上げが世界経済にプラスとの表現はやや誤解を与えるかもしれない。世界的に株価が不安定となるなか、その不安定要因のひとつがFRBの利上げへの懸念であることを考えると世界経済にプラスとはどういう意味なのかと疑問を投げかけられるかもしれない。

 過去の利上げについてはインフレへの懸念や景気の過熱に対処するために行ってきたとの印象があると思う。しかし、今回のFRBの利上げの目的はそうではないことに注意すべきである。

 日銀も含め、米国の中央銀行であるFRB、イングランド銀行、そしてユーロ危機のど真ん中にいたECBは、サブプライムローン問題からリーマン・ショック、ギリシャ・ショックからユーロの信用不安に至る過程で、救世主的な存在となった。特に財政出動がしづらくなったことで過度に金融政策に危機対策が押しつけられた格好となった。

 たしかに日米欧の中央銀行により、ゼロ金利政策とともに量的緩和と呼ばれるような非伝統的な金融政策が競争するかのごとく講じられてきた。これもあり、百年に一度とされる危機が収まったことは事実である。

 ただし、注意すべきは今回の危機が金融危機であったことである。いずれも金融機関や国の信用が不安視され、それが金融市場を混乱させたのである。その金融市場の混乱を抑えることが異常ともいえる金融緩和に期待され、それが結果を出したことになる。金融危機が経済にも直接影響を与えたが、その経済や物価を直接、金融政策で復活させたわけではない。金融危機が去れば経済環境も危機以前の状態に戻ってしかるべきである。黒田総裁の発言はこの世界的な金融危機が去り、利上げというより正常化、つまり危機以前の普通の金融政策に戻れるという事実が好感されるとの意味にも取れる。

 ところが、黒田総裁がトップの日銀は、その世界的な危機が後退する最中に異次元緩和を二度も発動している。米国発と欧州発の危機に影響は受けた日本だが、欧米に比べると直接的な被害は少なかったはずである。それにも関わらず非常時の金融政策を続けなければいけないのはどうしてなのか。デフレからの脱却が主目的であったとすれば、2年で結果が出なかった以上、処方箋を誤った可能性があり、間違った処方箋の劇薬を飲み続ける日本にはその副作用を心配する必要もあるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-09-08 09:34 | 中央銀行 | Comments(0)

2017年度までの物価目標達成は困難と木内委員

 日銀の木内登英審議委員は9月3日の青森県での講演で次のような発言をしていた。

「私は過去2年半近くに及ぶ量的・質的金融緩和の効果などから、国内の経済・物価は、既に現在の日本経済の実力に見合った安定した状態を取り戻したと考えており、4月の展望レポート、7月の中間評価の予測期間である2017年度にかけては、このような安定した状況が続くと予想しています。」

 2年半近くに及ぶ量的・質的金融緩和の効果「など」から、日本経済は実力に見合った、つまり潜在成長率に近いところまで戻ってきているとの認識のようである。ここでは量的・質的緩和などが成長率そのものを引き上げたということであろうか。

 「量的・質的金融緩和の導入当初は、政策の影響を受けて実質金利が低下を続ける一方、先行きの実質所得の見通しには大きな変化が生じなかったため、将来の消費を前借りする金融緩和効果が一時的に生じたものと考えています」

 果たして実質金利の低下が本当に消費行動に影響するものなのか。実質金利は名目金利と違って肌感覚のようなものとなるが、消費者がそれを敏感に感じ取っているとは考えづらい。ここには消費増税前の駆け込みや消費増税もあっての便乗値上げなども起きやすかったことが起きたとの見方もできるのではなかろうか。

 「現在の局面では、実質金利の低下が一巡していることや、賃金上昇率が物価上昇率に簡単には追いつかないとの見方が消費者の間で広まっているように見受けられる」

 ここで無理矢理に実質金利を持ち出さずとも、賃金が上がってないのに一部の食料品などの価格が上がって、消費が抑制されたという単純な図式ではなかったのか。

 「物価情勢については、民間発表の小売価格統計には、食料品を中心に明確な上昇傾向がみられますが、より広範囲の物価指標である総務省公表の全国消費者物価指数には、依然として大きな変化はみられません」

 広範囲の物価指標を押し上げるための異次元緩和であったはずである。食料品の値上げは円安などによる影響が大きく、株価の上昇などでアベノミクスが囃され、消費増税で価格も上げやすいというこのタイミングであったことで、しゃく品などの価格が上昇したとの見方もできる。価格を上げられるほど経済環境が果たして改善していたのか。ここにきての消費の落ち込みをみても疑問が残る。

 「現在でも、物価上昇率は当面0%程度で推移したあと、かなり緩やかに上昇率を高めていくと考えており、2017年度まで視野に入れても2%に達する可能性は低いとみています。」

 この見方には異論はない。しかし、この意見が日銀の政策委員のなかでは極めて少数派ことなっていることが問題ではなかろうか。期待で物価は動くとの魔法を信じて進まざるを得ないのが現在の日銀の姿であるとすれば、神風が吹くと信じて突き進んでいた70年前の日本の状況にも被るものがある。突き進めば進むほど後戻りはできなくなる。戦争も始めるより止めるのが難しかったが、異次元緩和も同様であろう。FRBがうまくテーパリングを成功させたからといって日銀が同じようにうまく行くとは限らない。物価目標達成まで消耗戦が続けられると、国債買入そのものが困難になることも予想される。

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by nihonkokusai | 2015-09-07 09:41 | 日銀 | Comments(0)

ドラギマジックは健在か

 9月3日に開かれたECB政策理事会では、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.05%に据え置いた。つまり金融政策は現状維持となった。参考までにECBは量的緩和策を導入しているものの、金融調節の目標は金利である。日銀は2013年4月の量的・質的緩和政策の決定に際し、金融調節の目標を金利ではなくマネタリーベースに置き換えている。

 日銀が今後の金融政策において手足が縛られた状態にあるとされる理由は、異次元緩和で物価が上がらなかったことばかりではない。調節目標をマネタリーベースと置いてしまったため、たとえば追加の緩和もマネタリーベースありきで考えなくてはならないためである。この目標値をある程度上げるにはその市場規模から考慮すると国債買入という手段を取らざるを得ない。しかし、すでに国債の年間発行額の9割を買い占めている日銀がこれ以上国債買入を増やすと債券市場の機能低下ばかりでなく、国債買入の未達という事態を早期に招きかねないのである。

 今回ECBはこの債券の買入に関して、債券1銘柄について購入できる割合の上限を33%と従来の25%から引き上げた。3日の欧州の株式市場や債券市場ではこの部分が特に好感されたようである。債券の買入規模に変化はないものの、制限を緩和することで将来の買入拡大の可能性を意識させたものと思われる。

 ちなみに日銀は特に国債の銘柄毎の買入に制限は設けていない。これがいずれ何を招くのか。国債は直近に入札・発行されたものの流動性が高い。日銀にとって、いや日銀の買入に対応する業者にとっては国債入札で大量に応札して、それを日銀に売却するという手段が手っ取り早い。その分、債券市場の流動玉を減少させるだけでなく、近い将来の長期国債先物のチーペースト(現渡し可能な再割安銘柄でこの価格が先物に連動、現在は残存7年の10年債)が日銀の金庫に眠り続けることになる。つまり将来、昔起きたような債券先物の踏み上げが生じるリスクがある。

 ECBにとってはまだ国債などの債券の買い余力はあるとの認識のようである。今回、ECBは成長とインフレの見通しを引き下げたこともあり、ドラギ総裁は必要ならば責務の範囲内であらゆる手段を駆使すると述べていた。今後、量的緩和策の拡充、もしくは量的緩和の終了時期の延期の可能性を示唆した。

 2012年9月のECB理事会では新国債買い切りプログラム(OMT)決定した。ここでのキーワードは、対象となるイタリア、スペイン、ポルトガルなどの国債の「無制限買入」となっていた。これがひとつの決定打となり、市場で渦巻いていた不安が後退した。つまりリスク回避の動きがこれをきっかけに反転したといえる。ただし、このプログラムは器を作っただけで実施されていない。アナウンスメント効果が発揮されたものであり、ドラギマジックとも呼ばれた。この流れにのって、やはり口先介入により市場での新たな流れを加速させたのがアベノミクスと呼ばれたものとなる。

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by nihonkokusai | 2015-09-06 07:35 | 中央銀行 | Comments(0)

G20は中国経済や米利上げが焦点に

 9月4~5日にトルコの首都アンカラで開かれる20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、中国経済の現状や先行きが主要議題となるようである。今回の株式市場を中心とした市場の混乱は中国経済の先行き不透明感が大きな要因となっていた。中国人民銀行の利下げに続いての元切り下げなどをきっかけに、中国経済の減速の深刻さが浮き彫りになった。

 今回のG20では米国の利上げの行方も焦点となろう。今回の相場変動のきっかけが中国にあったとしても、その根本的な要因としては日米欧の中央銀行が行った大胆な金融政策からの脱却の動きがある。何故、非伝統的とされる金融緩和策を実施したのかといえば、それはサブプライムローン問題からリーマンショック、ギリシャ・ショックからの欧州の信用不安という世界的な金融経済危機が立て続けに起きたためである。その危機は去った。それであれば異常な金融政策から正常時の金融政策に戻すことが当然ながら、金融市場はあまりに金融政策に依存する状況となってしまった。

 真っ先に正常化に向けて舵をとったFRBの動きをみて、金融市場が動意をみせた。中国経済の減速や、それもきっかけとした原油価格の下落も手伝って新興国経済への影響などが複合要因となって、世界的な株価の調整が起きた。これだけの動きをした背景にはヘッジファンドなどの仕掛け的な動きも入っていたと予想され、HFTと呼ばれるコンピュータを使ったシステムトレードが値動きをさらに荒くさせたものとみられる。

 非常時からの脱却において市場の動揺をいかに抑えるのかは大きな課題ではあるが、すでにFRBのテーパリングを成功させている。今回の市場の動揺は別の要因も絡んだことでやや過激な動きとはなったが、これがFRBの利上げそのものを阻止するものとはならないと思われる。この程度の相場変動も想定内ではなかったか。

 それよりも気になるのは、中央銀行による過度な金融緩和だけでなく、政府絡みで株価を上昇、もしくは維持させようとしている国が先進国にあることである。百年に一度の大きな危機は去っていたにも関わらず、デフレ脱却との名目でリフレ政策を実行したのは良いが、大胆な国債買入が物価上昇に結びつかないことがむしろ証明された格好となっている。さらに今回は海外初の株安にも関わらず、すでに株高ありきの政策をとってしまっていることで、無理矢理株安を食い止めようとの動きもあったようにみえる。

 1989年末までのバブル経済の崩壊理由をもう一度振り返る必要がある。あのときも円高対策としての金融緩和とともに、土地や株の価格が右肩上がりとなることを前提とした運用を銀行などが行っていたことが、のちのバブル崩壊による金融経済ショックの要因となる。これがデフレそのものの要因となった。

 今回は銀行というよりも、GPIFなどクジラと称されるところが、株式市場の右肩上がりを前提とした運用に変更している。いずれこれはゆうちょなども同様となると予想されている。もし株式市場が今後、大きな調整を迎えると運用益どころではなくなる懸念が生じる可能性があるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-09-04 09:47 | アベノミクス | Comments(0)

蚊帳の外の債券市場

 ここにきて東京株式市場などが乱高下している。日経平均先物は8月11日に20940円と21000円に接近したあと急落し、8月26日に17660円まで下落した。その後切り返し、8月28日に19200円まで上昇。ところがここから再び下落し、9月2日に一時18000円を割り込むが、ここから急速に切り返し一時18300円台と、ジェットコースター並みの相場展開となっていた。

 この動きについては中国株や米国株なども重ね合わせることが可能で、外為市場ではドル円も同様の動きをしている。この変動要因のひとつに原油先物があり、こちらもここにきて非常に値動きの荒い展開となっている。

 2012年11月のアベノミクスの登場の際も日経平均とドル円が同時に大きく上昇した。このときにはヘッジファンドが大量に日本株を買って円を売ったことが明らかとなっている。

 今回の動きも明らかに仕掛け的な動きが入っているであろうことは、値動きからも想像される。日経平均とドル円が同時に仕掛けられている点なども共通している。これだけ金融市場が荒れ、その変動要因のひとつがFRBの利上げ観測という金利に関わっているにも関わらず、債券市場が蚊帳の外に置かれていることも似ている。これは円債に限らず、米国やドイツ、英国などの国債の動きも同様とみられ、特に日本国債については動きが極めて鈍い。

 今回の相場変動の要因としては、FRBやイングランド銀行の利上げ観測以前に、中国の景気減速への懸念、それによる原油安によるディスインフレへの観測もある。これらは日米欧の国債には買い要因ともなるため、利上げ観測がそれにより打ち消し合うため、投機筋も国債には手を触れていないのかもしれない。

 いずれにしても過剰流動性相場の末期的な現象が起きている可能性もある。しかし、米国の利上げが可能になりつつある環境とはいえ、中国などの不安材料が出て、あまり景気に対して楽観できない面もある。これが相場をより不安定にさせている。いずれにせよ一度動き出した相場はそう簡単には落ち着かないことも確かである。

 米利上げ観測がひとつの要因にも関わらず、あまりに静かな債券市場もまた気掛かり材料となる。2013年5月のバーナンキ・ショックの教訓が生きているのかもしれない。利上げは織り込み済み、その後の追加利上げはかなり慎重、との見方がそうさせているのかもしれないが、何かしらのきっかけて動き出す可能性もないとは言えない。

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by nihonkokusai | 2015-09-03 09:38 | 債券市場 | Comments(0)

関東大震災と金融恐慌

 9月1日は防災の日、昔は震災記念日と呼ばれていた気がする。つまり、1923年9月1日に発生した関東大震災における遭難死者を追弔し、記念する日である。現在ではこの教訓を生かして防災について考える日となっている。今回はこの関東大震災による金融市場への影響について振り返ってみたい。

 1923年9月1日に発生した関東大震災によって、関東地方の企業は壊滅的な打撃を受け、損害を受けた企業は震災前に振り出した手形を決済することができず、それを抱えた市中銀行も資金繰りに支障をきたすようになった。政府はこのためモラトリアムを出して、9月中に支払期限を迎える金融債権のうち被災地域の企業・住民が債務者となっているものについては支払期限を1か月間猶予した。

 9月29日には震災手形割引損失補償令が出され、震災地を支払地とする手形や震災地に営業所を有していた商工業者を債務者とする手形等(震災手形)については、特別に日銀による再割引、つまり、銀行がもっている震災手形を日銀に買い取らせた。これに伴い日銀が損害を受けた場合は政府が補償することになったのである。

 時が経ち1927年1月、政府は日銀をはじめとする銀行の損失を補償するための国債を発行したうえで、震災手形の整理を進めることとし、震災手形二法が議会に提出された。しかし、震災手形の振出が鈴木商店に、また所持が台湾銀行に集中していたことから、政府資金による特定企業の救済につながるとして、議会での審議は紛糾した。

 この審議の過程で、3月14日に片岡蔵相が「東京渡辺銀行が破綻した」と発言してしまったのである。同行はこの日、資金融通が可能となり実際には破綻は免れていた。しかし、この片岡蔵相の発言により、一般預金者の不安が増長され、東京渡辺銀行やその関連銀行のあかぢ貯蓄銀行が取付に合い、休業に追い込まれ、その後他の銀行にも取付が波及したのである。

 政府は事態を収束するため、4月22日から2日間銀行を臨時休業させることとしたほか、3週間のモラトリアム(支払猶予)を公布した。この間、日銀は正規の手続きによらない特別融通などの緊急貸出を実施した。預金者の不安心理を一掃することを目的に、現金を銀行の窓口に高く積み上げるという単純ながらも有効な手段が取られた。この際に短期間に大量の日銀券が市中銀行に対する預金者からの預金払戻し請求などに応じるために発行されたことから、銀行券の印刷が間に合わず、やむなく裏面が白紙の200円の高額紙幣が発行された。これらの措置の結果、金融恐慌はようやく鎮静化したのである。

 この金融恐慌が引き金となり、取引の安全性を図るため、コール市場参加銀行がコール協定を締結し、国債担保を原則とすることや長期物取引の禁止を申し合わせた。このため、有担保取引の原則が市場ルールとして定着していった。金融恐慌の発端のひとつとして、特殊銀行が無担保コールを市場で盛んに調達したことが指摘されており、その反省によってコール市場でも有担保取引が主流となったのである。

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by nihonkokusai | 2015-09-02 09:49 | 金融の歴史 | Comments(0)
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