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二・二六事件で高橋是清が暗殺された理由

 これを書いている2月14日も関東地方では雪が降っている。2月8日の大雪に続いて今回もかなりの積雪が予想されているそうである。2月8日の積雪は東京の都心で27センチと45年ぶりの記録だった。そのときのことはうっすらと記憶に残っている。当時、私はまだ小学生で横浜のアパートに住んでいた。そのアパートの屋上で積もった雪に30センチの物差しを垂直に差したところ、完全に見えなくなったことを覚えている。

 それはさておき、先日の2月8日の大雪で仙台では積雪が35センチに達し、昭和11年以来、78年ぶりの大雪となった。昭和11年は西暦で1936年、この年の2月は東京も何度か大雪に見舞われたそうである。その雪のなか2月26日に起きたのが二・二六事件であった。この軍部によるクーデター事件で当時蔵相であった高橋是清も暗殺された。何故、暗殺の対象に高橋是清が含まれていたのであろうか。

 高橋是清は日銀副総裁当時、日露戦争の戦費調達を成功させ、その後、日銀総裁、蔵相、さらには首相にまでなった人物である。1931年12月に再び蔵相となった高橋是清が、金輸出禁止による円安放置政策、日銀引受による国債発行と財政支出の拡大、低金利政策を柱に打ち出した政策が、高橋財政である。

 高橋財政により国内景気は急速に回復し、1932年から1935年にかけての実質経済成長率は年率7%程度と高い水準で推移した。銀行の貸し出しも伸び、1935年下期から銀行貸し出しが増加に転じた。銀行による国債の買い余力が減少してきたことで、日銀が引き受けた国債の民間への売却比率は1935年上期が9割程度あったのに対し、下期には5割前後に低下した。1933年から1935年半ばにかけてほぼ横ばいで推移していた卸売物価指数は、1935年の夏あたりから再び上昇してきた。

 放漫財政とも呼ばれた拡大財政について高橋是清は、比較的短期間のうちに歳出規模は再び収縮し、景気回復に伴う税収増と相まって財政収支は均衡を回復するとの認識でいたようだが、これはやや楽観的すぎた。1934年度の予算編成のころとなると、さすがに高橋是清も財政膨張の抑制、国債増額の是正に取り組みはじめた。

 1932年以降の政府支出の拡大要因は軍事費の拡大が主要因となったことで、財政政策の転換は簡単にはいかなかった。1935年に高橋蔵相は軍備拡張を強引に要求する軍部と対立する。高橋財政のリスクとしては、財政拡大の主因が軍事費であったことに加え、日銀による国債引受があった。打ち出の小槌を与えてしまったのである。

 高橋蔵相は経常収入の増加分だけ公債を減額すると言う方針で1936年度の予算編成に臨む。ところが1936年度予算を巡り軍部と大蔵省が衝突した。この予算案では歳出の5割弱が陸・海軍省の経費となっていたが、陸・海軍省はさらなる要求をしていたことで、不満は大きくなっていった。さらに歳出の3割程度は国債発行で賄われることになる。

 高橋蔵相は「ただ国防のみに専念して悪性インフレを引き起こし、財政上の信用を破壊するごときがあっては、国防も決して安固とはなりえない」と主張した。しかし、大陸進出を狙う軍部としては軍事費削減につながる国債の減額は到底受け入れられず、これにより軍部の反発を招いた結果、高橋蔵相は二・二六事件で標的にされてしまったのである。

高橋是清について関心のある方は、是非、拙著も読んで見てください。



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by nihonkokusai | 2014-02-16 12:20 | アベノミクス | Comments(0)

金融政策の目的・目標とは何なのか

 米国の中央銀行であるFRBの使命(目的)はデュアル・マンデートと呼ばれ、物価の安定と雇用の最大化となっている。ただし、もうひとつ適度な長期金利も最後に加えられている。デュアル・マンデートがFRBの使命となったのは、1977年の連邦準備改正法の成立によるものだが、その源流には1946年の雇用法があるとされている。

 2012年12月12日のFOMCで少なくとも2015年半ばまで低金利を維持するとの文面が声明文から削除され、その代わりに、米失業率が6.5%を上回り、向こう1~2年のインフレ率が2.5%以下にとどまると予想される限り、政策金利を低水準にとどめる、という数値のガイダンスに変更された。いわゆるデュアル・マンデート(最大限の雇用と物価安定)のそれぞれに、期間を限定せずに目標が課せられた。

 欧州中央銀行(ECB)の第一の目的は、物価の安定を維持するとなっている(1991年マーストリヒト条約における欧州中央銀行法)。ただし、物価の安定のみではなく、目的を達成するため各国が高水準の雇用と、インフレの加速しない持続可能な成長の政策を行うことを欧州の中央銀行は支持するとしている。

 ECBのドラギ総裁は2013年7月4日の定例理事会後の記者会見で、「理事会はECBの主要金利が長期間にわたり、現行水準もしくはそれを下回る水準になると予想する」と発言した。これまでECBは金利に関して予断を持たず、形式上は事前に将来の金融政策についてコミットしないという方針を貫いてきたが、その方針を変更してきた。つまりこちらもフォワード・ガイダンスを取り入れた政策らしきものにそれとなく移行した。

 日本の中央銀行である日本銀行は、日銀法第二条に「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」とある。

 日銀は2013年1月の金融政策決定会合で「物価安定の目標」を消費者物価指数(除く生鮮食料品・消費増税の影響も除く)の前年比上昇率2%と定め、これをできるだけ早期に実現するとした。さらに2014年4月の会合では、2%という物価目標に対して2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するとした。ただし、日銀は雇用の安定については特に目的としていない。

 イギリスの中央銀行であるイングランド銀行における金融政策の目的は、物価の安定を維持すること、および成長及び雇用目的を含む政府の政策を支持すること、と規定されている(1998年イングランド銀行法)。イングランド銀行は政府が定めるインフレーション目標を達成するための政策手段の決定を行う権限を持っているが、財務省が「物価の安定」の内容を決定し、政府の経済政策を具体化する責任を負っている。

 このイングランド銀行は、2013年7月に総裁がキング氏からカーニー氏に変わり、8月のインフレレポートの発表時に、失業率が7%に低下するまで政策金利を過去最低の0.5%から引き上げる検討はしないととて、フォワード・ガイダンスを導入することを発表した。

 そのイングランド銀行は半年あまりで、はやくもフォワード・ガイダンスの修正を行うそうである。すでに目標としてきた失業率が7%近くまで下がってきたことで、新たな枠組みで金融政策を判断するとか。その枠組みなどはさておき、これはどこかおかしくはなかろうか。

 英国経済はイングランド銀行が目指していた目標どおりに回復してきており、目標としていた雇用の数字もクリアーできる段階で何故、当初置いていた目標を取り下げるのか。もちろんこの背景には、ここで何もしないと目的が達せられた以上、利上げは近いとばかりにマーケットが先んじて動いてしまうことを避けたかったと思われる。機械的に動くようなことをせず、物価などへの影響を鑑み、とかいった理由もあろう。

 しかし、このような修正はそもそも金融政策の目的では何であるのか、疑問を投げかける。物価や雇用の安定を目標として、具体的な数値目標を立てるのは結構であるが、その具体的な数字は、国内経済物価動向等を鑑みて本当に適切な数字であるのか。そもそも中央銀行の金融政策で、失業率や物価が動かせるのか、という根本的な問題も存在する。仮に金融政策で物価や雇用が操作できるのであれば、極論ではあるが、政府は何もせずとも金融政策に頼れば良いということになりかねない。まあ、大きな世界的なショックの際は日米欧の政府はほとんど何もできず、金融政策に頼り切ってしまったことは確かではあるのだが。

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by nihonkokusai | 2014-02-14 09:36 | 中央銀行 | Comments(0)

イエレンFRB議長の見方は正しいのか

 イエレンFRB議長は11日に議会下院金融サービス委員会で就任後初となる議会証言を行った。そのなかで、労働市場の回復は完全と呼べる状況には程遠いとしながらも、バーナンキ前議長が主導した政策を継続する考えを表明した。テーパリングについては、計画を変更するハードルは高いことを示唆した。

 11日の米国株式市場では、イエレン議長の証言からみて、量的緩和の縮小は続くが、緩和的な政策は継続する。つまり利上げはかなり先であろうとの見方などから、11日のダウ平均は4日続伸となり、前日比192ドルもの上昇となった。

 今回のイエレン議長の議会証言では、日銀の異次元緩和についても触れていたようで、日経新聞電子版によると、イエレン議長は「日本の成長率を高めるのに成功している」と述べ、日銀の金融政策を支持する考えを表明したそうである。

 質疑では米大手自動車のお膝元であるミシガン州出身議員が、ドル高・円安傾向と日本の為替政策への見解を問いただしたところ、イエレン議長は「20年に及んだデフレを勘案すれば、日銀の緩和政策は自然かつ論理的だ」と指摘し、為替政策は国内目的に限って用いるという国際合意の範囲を逸脱していないとの認識を示したそうである(日経新聞電子版)。

 黒田総裁と親しいとされ、元々ハト派とされるイエレン議長は日銀の異次元緩和政策に理解を示しているようである。この見方はバーナンキ前議長も同様であった。イエレン議長は「日銀が日本の成長率を高めることに成功すれば、近隣諸国の利益に跳ね返り、ひいては世界経済の利益にもなる」と評価しているようである。

 中央銀行の金融政策が失業率を引き下げたり、成長率を高めたりできるのか。政治的には微妙な通貨安政策を除いて、このあたりもぜひバーナンキ氏やイエレン氏に、その仕組みについて教えていただきたいところではある。これについては興味深い指摘も、今回の証言で行っていた。

 イエレン議長は、「2008年の金融危機後に採用したFRBの量的緩和政策の目的が長期金利の抑制であり、それに「成功した」と強調。住宅価格の上昇で家計のバランスシートが改善し、借り入れ能力が増したため、雇用が増加する好循環につながったと説明した。」(日経新聞電子版)。

 たしかに2007年には5%台にあった米長期金利は2012年に1%台にまで低下した。しかし、この長期金利の低下をFRBの金融政策にだけ求めるにはかなり無理がある。そもそも、2007年あたりからのサブプライムローン問題に端を発してリーマン・ショックに繋がる金融不安によるリスク逃避のための米国債買いの要因が大きかったのではないか。その後はギリシャ・ショックに端を発する欧州の信用不安による世界的な金融経済ショックにより、安全資産として米国債は買われ、つまり米長期金利は低下した。もちろんまったく関係ないとは言わないが、この期間の米長期金利の低下の主要因がQEであったのかは甚だ疑問である。

 もしFRBの量的緩和政策の主目的が長期金利の抑制であり、それに「成功した」とするのであれば、日本の異次元緩和についても、円安政策というよりも長期金利の抑制が目的であったとの見方もできる。日銀の異次元緩和は確かに日本の長期金利の上昇を抑制している。ところでその日本の長期金利が抑制されたことで、物価が上がってきているのであろうか。日本のデフレ脱却は長期金利を抑制すれば可能なのか。もちろん天下のFRB議長に異を唱えるようなことはしたくはないが、これに関してはどうも納得がいかないのである。

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by nihonkokusai | 2014-02-13 09:45 | 中央銀行 | Comments(0)

見透かされたアベノミクス

 2月10日の日経新聞電子版の記事に、『「ソロス氏日本売り」の噂、アベノミクスに飽きた投機筋』との記事が出ていた。安倍晋三首相は1月22日からスイスで開く世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に出席し基調講演を行った。日本の首相としては初めての基調講演となり、このなかで、アベノミクスの成果を強調したうえで、法人税の実効税率の引き下げを含む税制改革に取り組む決意を表明していた。

 このダボス会議は世界の著名な政治家や経営者らが集まり討論を行うが、サミットやG7などのような公式の会議とはかなり趣が異なり、参加者同士が直接顔を付き合わせて討議が出来る場とされている。そういった意味で、ただの民間会議ではあるが特異な世界会議と言われている。

 1月23日のこのコラムで、以下のようなことを書いた。

 「日本の首相がいまごろになってやっとはじめて基調講演に立ったことに、どれだけの意味があるのかは不明ながら、世界に向けての情報の発信の場となることは確かであろう。それよりも、その後の個別会議のほうがこの会議の性質上は意味があるように思われる。 」

 どうやら安倍首相はこの個別の会議にも顔を出し、ダボス会議の常連とも言えるヘッジファンドのジョージ・ソロス氏と会って話をしたようである。さきほどの記事によると、安倍首相がジョージ・ソロス氏にかなり突っ込まれていたとの観測もあったとか。また、経済について聞いても首相からは気の利いた返答がなかったとの見方も流れていた。

 アベノミクスの誕生は、2012年11月14日に衆院の解散が正式に発表されたときである。2009年8月の政権交代で大きな期待を集めた民主党政権だったが、十分な成果を上げられず、国民の間での不満が強まった。解散総選挙が決まり、自民党政権への期待に繋がり、東京株式市場は11月14日あたりから上昇基調となる。

 11月16日に衆院選が解散されたが、翌17日に熊本市内の講演で、安倍晋三自民党総裁は衆院選後に政権を獲得した場合、金融緩和を強化するための日銀法改正を検討する考えを表明した。さらに、建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう。新しいマネーが強制的に市場に出ていくと述べた。同日の山口市での講演で安倍総裁は、輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう、と発言した。

 いわゆるリフレ政策(中央銀行が世の中に出回るお金の量を増やし、人々のインフレ期待を高めることでデフレ脱却を図ろうとする金融政策のこと)を打ち出すであろうことがこれではっきりし、日銀の金融政策が大きく変わるであろうことが示された。

 これは市場に強いインパクトを与え、デフレ脱却を全面に打ち出すことで、レジーム・チェンジ(体制変換)が意識された。それが外国為替市場(外為市場)で円安を招き、その円安がさらに株価を上昇させるというスパイラルが発生した。

 ここで登場していたのが、ジョージ・ソロス氏のヘッジファンドとされている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙はジョージ・ソロス氏率いるヘッジファンドが2012年11月以降、円の下落を見込んだ取引で約10億ドルの利益を得たと報じていた。

 リフレ的な政策を行う事になれば、円安・株高を招くとの見方を強め、その効果そのものへの期待よりも、過剰流動性相場への期待を強めた。欧州の信用不安の後退により、円が急落する余地が十分にあり、そこにまとまった仕掛が入ったことが、アベノミクスと呼ばれた政策の多くを占めるものとなる。つまり急激な円安株高を招いた。アベノミクスを打ち出したのはリフレ派であるが、そこで実際に動いたのはヘッジファンドなど海外投資家達であった。

 ただし、リフレ政策の効果についてはソロス氏も懐疑的であったのではなかろうか。そのため、アベノミクスの中心人物である安倍首相に、直接対話できる場で意見を求めたのではなかろうか。その際、アベノミクスの効果、つまりは異次元緩和でどのようにデフレ脱却が可能なのかを適切に説明が出来たとは思えない。期待に働きかけるといっても、働きかけられる側の投資家が疑心暗鬼では効果が出るはずもない。

 アベノミクスとは何で合ったのか。それをあらためて振り返る必要がある。物価はたしかに日銀の目標に向けて順調に上がっているように見える。果たしてそれは日銀が国債を大量に買ったからなのか。それについては円安を仕掛けた本人達も疑問に感じているのではなかろうか。俺たちが円安を仕掛け、それで結果として日本の物価が上がっただけではないのかと。

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by nihonkokusai | 2014-02-12 09:30 | アベノミクス | Comments(0)

今後の物価動向とそれによる影響

 2013年4月4日の金融政策決定会合で日銀は、量的・質的金融緩和の導入を決めた。日銀が掲げた消費者物価指数(除く生鮮食料品、コアCPI)の2%という物価目標に対して、2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するとした。

 1月31日に発表された昨年12月のコアCPIの前年同月比はプラス1.3%となった。昨年4月のコアCPIはマイナス0.4%、そして5月のコアCPIは0%であったが、このゼロを基準にみれば、単純計算ではすでに65%程度の達成度となっている。

 日銀は2015年度までの見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとしているが、数値の上ではいまのところこのシナリオに沿った物価の上昇となっている。

 この物価上昇の大きな背景になっているのは、円安である。12月の物価上昇の要因として、円安に伴って原油や液化天然ガスなど原燃料の輸入価格が上昇したことで、ガス・灯油価格やガソリン価格が上昇している。外国パック旅行やハンドパック(輸入品)の価格の上昇も円安の影響を受けている。

 円安に伴う原材料費の上昇を、そのまま価格にオンできるような環境になっていることも、確かにこの物価上昇の背景にある。年末年始の海外旅行者数は過去最高となったようだが、パック旅行の価格が上がっても海外に行く人が多いこと自体、景気の回復が物価を支えている。

 ただし、その円安の要因が剥がれるとここからの物価の上昇は厳しくなる。今年に入り為替や株式市場の様相が大きく変化した。日本株を中心に世界の株式市場は調整局面入りし、円安トレンドも変化し、ドル円は105円台から100円台に下落した。昨年の円安の動きの背景が、ポストグローバルリスクとすればその動きもある程度一巡した。

 為替市場については、昨年のような円安を見込むことは難しくなり、今年は落ち着く水準を探る展開も予想される。日米の金融政策の方向性の違いが円安を促進させた面もあったが、すでにFRBはテーパリングを開始しており、日銀の追加緩和もある程度想定して動いてきており、これらをあらためて材料視して円が急落するのも考えづらい。

 日銀の物価目標については、円安のフォローがなくなればこれからが正念場となる。しかし、今後は4月以降の消費増税の影響分が加味される。消費者は消費増税を除いた物価の行方などは見ていない。実感として物価が2%を超えて上がることがあれば、物価上昇による悪影響のほうを意識してくる可能性もある。それにもかかわらず、物価をさらに上げようとする日銀に対して、消費者はどのような視線を向けてくるのか。さらに日銀の国債買入でおとなしくなっている国債市場も、この物価上昇を完全に無視して良いものなのか。このあたりも今後の注目材料となりそうである。

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by nihonkokusai | 2014-02-08 12:55 | 景気物価動向 | Comments(0)

昨年は倍返し、今年はSTAP細胞

 市場関係者にとって2013年のキーワードは「アベノミクス」であろう。しかし、2013年の流行語大賞には選ばれなかった。2013年の大賞は4つあった。

 安倍首相がデフレ対策を行うには「今でしょう」とばかり、リフレ政策を全面に推して、それを実行したのが黒田日銀となった。

 昨年4月の異次元緩和では、コアCPIの2%という物価目標に対して、2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するため、マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍程度とし、長期国債の平均残存年数を現行の2倍以上にするという、まさに「倍返し」の政策を日銀は打ち出した。

 この日銀の異次元緩和を柱とするアベノミクスは、急激な円安をもたらし、それが株高へと繋がり、日本にとってまさに「お・も・て・な・し」となった。

 ただし、日銀の大胆な国債買入は、国債市場の流動性を後退させ、国債相場は不安定となり、債券市場関係者にとっては、「じぇじぇじぇ」という事態が発生した。

 2014年も1か月とちょっとが過ぎた。すでに今年の流行語大賞の有力候補になりそうなものも現れた。小保方晴子博士が発見した「STAP細胞」である。「STAP細胞」は固定観念を疑うことから発見に繋がったと言えるのではなかろうか。そんなことはありえない、「数世紀に及ぶ生物細胞学の歴史を愚弄するものである」とまで評されたものが、実はありえた。このあたり、市場でのテールリスクに似たようなところもある。市場でもありえないと思っていたことがありえた。リーマン・ショックのあとに欧州の信用危機が訪れると誰が予想できたであろうか。

 今年はまだ11か月近くある。ソチ・オリンピックはまもなく開催され、あらたなドラマが生まれるかもしれない。2020年の東京オリンピックのことを意識しながら、開会式などをみることになろう。今年はサッカー・ワールドカップもブラジルで開催される。こちらも注目度が高い。このあたりから流行語大賞の候補が出るかもしれない。

 しかし、流行語大賞になるような言葉は、「STAP細胞」のように予想もしなかったところから現れる。それを予測することは難しいが、今年に入り株式市場などは大荒れとなっている。これが何かしらの前触れであるかもしれない。アベノミクスとは何であったのか。何の努力もなしに、日銀が国債を大量に買い入れるだけでデフレを脱却させるという、まさに錬金術のようなものが本当に可能なのか。

 ある有名なアニメ「鋼の錬金術師」の台詞に、「人は何かの犠牲なしに何も得ることはできない。何かを得るためには、それと同等の代価が必要になる。それが、錬金術における等価交換の原則だ」というものがある。その犠牲とは何であるのか。異次元緩和という錬金術に対する等価交換が今年のキーワードとなる可能性もあるのではなかろうか。そもそも錬金術などなかったという結果となるのかもしれないが。

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by nihonkokusai | 2014-02-07 10:01 | 債券市場 | Comments(0)

長期金利0.6%の壁

 2月4日の10年国債(332回債のリオープン)の入札は、最低落札価格が100円00銭。利率が0.6%なので利回りが0.6%ちょうどになる。平均落札価格は100円03銭で、こちらの利回りは0.596%と0.6%を割り込んだ。この10年国債の入札結果は、最低落札価格は予想をやや下回り、テールも前回から流れ、応札倍率も前回から低下するなど、やや弱めの結果となった。この日の332回債の日本相互証券での動きは、0.600~0.615%となっており、0.6%割れはなかった。

 市場参加者へのヒアリングによる集計結果をみると、今回の落札額は前回から数千億円増えていた。10年国債の発行額は変わりはないので、これはつまり不明玉と呼ばれるものの減少を意味していた。

 この国債入札時の不明玉について、具体的に何処がどの程度落としたのかはわからない。大手外資系を含み、集計のヒアリングに参加していないところもあり、こちらが大きく落札した可能性もある。そうではなく、銀行本体や生保などが直接入札して落札した可能性もある。

 後者の投資家がそこそこ大きな割合をこれまで占めていたと仮定すれば、今回は銀行などの投資家が直接落としていなかったのではないかとの推測も働く。あくまで推測ではあるが、それでもこの入札結果発表後の10年債の売られ方などをみると、投資家のニーズはさほど強くなかったように思われる。

 投資家ではなく、プライマリー・ディーラーを中心としたいわゆる業者(証券会社)にとっては、投資家のニーズがさほどなくても日銀という最終投資家(?)が控えており、いずれそのポジションを売却することは可能であり、0.6%の水準でも慎重に落札したと思われる。しかし、それに対して投資家は0.6%割れでの購入は極力控えているようにみえる。

 この10年債利回りの0.6%割れは何故警戒されているのであろうか。昨年からの10年債利回りの推移をみると、直近では昨年10月末から11月初めにかけて0.6%割れとなったが、これは一時的なものとなった。

 その前の0.6%割れは昨年5月初めであったが、その後の10年債利回りは5月23日には1.0%まで上昇した。

 市場参加者の間では、日銀が異次元緩和と呼ばれた量的・質的金融緩和策の導入を決定した前日の0.55-0.56%をひとつの目安にしているようである。日銀が異次元緩和導入の翌日4月5日に、10年債利回りは0.315%まで低下したあと0.620%に上昇した。このあたりからも0.6%割れにはかなり警戒心を抱いているようである。

 日本の10年債利回り、つまり長期金利の0.6%に特別、何かしらの意味はないと思うが、過去の値動きからみて、このように0.6%割れが警戒されている。ここには市場参加者にとって大きな心理的な壁もあるようである。もし何かの材料から、長期金利が0.6%を大きく割り込んでくれば債券相場は新たな展開を迎えることも予想される。特段の意味はなくとも、この長期金利の0.6%はひとつの節目とみておく必要がある。

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by nihonkokusai | 2014-02-06 09:55 | 債券市場 | Comments(0)

円高株安の要因と今後のリスク

 市場にはアノマリーと呼ばれるものがある。はっきりした理論的根拠を持つわけではないものの、経験則からそういうパターンが多いというもので、株式市場では有名な「節分天井、彼岸底」などが代表的なものである。今年は節分天井というわけではないが、3日の米国株式市場でダウ平均は326ドル安と急落しており、4日の東京株式市場も大幅に下落してのスタートとなった。

 米国ではFRB議長が替わると新たな危機が発生するというジンクスもある。グリーンスパン元議長は、就任して2か月後にブラックマンデーに直面した。1月末で退任したバーナンキ議長は、就任後に住宅バブルが崩壊し、その後のサブプライム・ショックやリーマン・ショックへと繋がっていく。

 ただし、2人とも就任式の日の株価は上昇していたそうであるが、イエレン新議長の就任式が行われた3日の米国株式市場は急落し、そのパターンには当てはまらなかった。

 今年に入ってからの米国株式市場の調整や外為市場での円高局面、それによる日本株の下落の背景は、いろいろな要因が重なっていると思われるが、根本的な要因として「正常化」の動きが一巡したことが挙げられよう。

 今年に入っての相場の調整要因として、FRBのテーパリングの開始とそれによる新興国市場への影響、中国の景気への懸念などがあった。しかし、FRBのテーパリングの開始そのものが、世界的な金融経済ショックから立ち直りつつあることを示すものであるように、昨年の市場は非常時のものから正常に戻る過程であったとみることができる。

 アベノミクスにより引き起こされたとされる円安株高もその背景には、世界的なリスクの後退があった。ただし、日米欧の中央銀行は非常時の対応からすぐには抜け出すことはできず、それにより過剰流動性相場が演出され、米国のダウ平均などは昨年末に向けて過去最高値を更新し続けることとなった。

 ところが、今回の世界的な危機を発生させた原因となったギリシャの国債をみると、利回りはすでに2010年の危機発生あたりの水準近くまで低下している。ドル円の動きをみると、すでに危機以前の水準を上回るような円安となっていた。

 市場の動向からみると、ユーロ危機は2012年に収束し、2013年はその反動により株式市場などが活況を呈し、日本ではアベノミクスと騒がれた。しかし、その正常化の動きも一巡しつつあり、その反動が今年に入っての相場の動きに現れているものと思われる。

 年初から日米の株式市場は調整局面となり、外為市場でドル円は年初の105円台からここにきて100円台に円高が進んでいる。FRBがテーパリングを開始し、日銀は追加緩和への思惑も出るなかにあり、この円高の動きは中銀の動向からは説明しづらい。テーパリングが開始されているにもかかわらず、米長期金利はここにきて低下している。長期金利からみた日米金利差縮小からの円高というのもやや無理がある。株安と円高のセットと見た方が素直ではなかろうか。

 それでは今後はどう動くのか。新たな危機の発生でもない限り、あくまで今回の株安は昨年の上昇相場の調整と捉えれば、下値も限られると思われる。自分のディーラー時代から逆張りが得意でなかったので、どの水準で止まるかなどとの予想はここでは控えさせていただきたい。

 ただし、新たな危機が起きるようなことになると、また相場が変わってくる可能性はある。その危機の発信元が日本という可能性もないとは言えない。これは巨大地震とかの災害ではなく、世界的な危機が収斂しつつあるにもかかわらず、異次元の緩和をし続けている日銀の金融政策に対してのリスクが存在しているように思われる。

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by nihonkokusai | 2014-02-05 10:00 | 債券市場 | Comments(0)

2014年の市場を見る上での注意点

 2014年がスタートして1か月が過ぎ去ろうとしているが、なかなか波乱含みのスタートとなった。米国のダウ平均や日経平均、さらにドル円の動きを見て見ると、年を越えてからの動きがそれまでの動きと違ってきている。簡単に言ってしまえば、ダウ平均や日経平均は10月あたりかじりじりと上昇基調となっており、外為市場では円が売られドルが買われていた。ところが2014年に入ると、その基調に変化が生じ、戻り売りに押されることになり、途中からその値動きが非常に大きくなってきているのである。

 株式市場や債券市場の動きを見る際に、チャートと呼ばれるグラフを使うが、そのチャートをみると株高・円安のトレンドが崩れつつあることがわかる。材料はさておき、チャートだけでみると株式市場がさらに大きく下落し、円高が進行する可能性がある。

 それに対して債券市場はどうなっているかといえば、円高株安による年初からじりじりと上昇してきており、10年債利回りは年初に0.7%台にあったが、1月末にかけて0.6%近くまで低下してきている。これは米国債も同様であり、米10年債利回りは年初の3%近辺から、月末には2.7%割れまで低下した。

 いったい2013年と2014年では何が変わってきているのか。2013年の日本の金融市場を語る上でのキーワードはアベノミクスであろう。2012年12月の衆院選での政権交代により、安倍自民党政権への期待が強まり、特に安倍自民党総裁は日銀の大胆な金融緩和によるデフレ脱却を掲げた。すでに政権交代が意識されて2012年11月あたりから、急速な円安調整が入り、その円安により株が上昇した。安倍総裁の唱えた金融政策は黒田日銀総裁が、4月5日に決定した量的・質的緩和で実現した。これにより2年の間で2%の物価上昇を実現させるとしたのである。この金融政策を柱とする経済政策がアベノミクスと呼ばれた。

 日本ではこのアベノミクスが大きく騒がれてしまったことで、この円安株高や景気の回復、さらには物価の上昇がすべてアベノミクスの功績のように取られてしまった。しかし、そう結論づけてしまうと本質を見誤る。円安のきっかけとそれを加速させたのは確かに安倍発言であるが、それは円高調整がまさに起きようとしたタイミングでの発言であったのである。

 さらに2013年は欧米の景気も回復基調となっていた。たとえば2013年の経済成長率は1.9%で、2007年以来の大幅な伸びを記録していたのである。これはアベノミクスの成果なのか。当然そうではない。欧米の景気回復、さらには円高調整の背景にあったのは、世界的なリスクの後退なのである。これはギリシャやスペイン、イタリアの国債の動きをみるとあきらかである。

 2012年6月にギリシャの長期金利は30%超えとなっていたが、ここから下落基調となる。9月6日のECB政策理事会で償還期間1~3年の国債を無制限で買い入れることを決定したことも長期金利の低下に拍車を掛けた。2013年5月には10%を割り込んでいた。

 2013年はユーロ危機が後退した年であった。だからこそ日米欧の景気が回復し、株は上昇した。米国のFRBががテーパリングと呼ばれる量的緩和の縮小を開始したいとしたのも、世界的なリスクの後退が背景にある。テーパリングは非常時の金融政策からの脱却を意味するものである。

 そのような状況下にあって、日銀は2013年4月に異次元緩和と呼ばれた大胆な金融緩和政策を打ち出した。これが今後、何をもたらすことになるのか。実はこれが2014年の債券市場にとっての注目材料となる。

 2014年1月に入っての新興国通貨の下落も、その背景にユーロ危機の後退がある。ユーロ危機や日米欧の中央銀行による過剰なまでの金融緩和政策で新興国のリスクが覆い隠されていたが、それが表面化したのである。これが新たな世界的な金融リスクに発展することは現状考えづらいが、注意すべき要因のひとつとなる。

 さらに日銀が打ち出してしまった異次元緩和をどう決着を付けるのか。4月からの消費増税を受けての景気減速を意識しての追加緩和期待も根強いが、インパクトのある追加緩和を打ち出すことは無理がある。技術的にさらな国債買入を増加させることは可能ではあるが、それは財政ファイナンスと捉えられてしまう懸念も生じる。足下物価は円安の影響もあり、すでに1.2%に上昇しており、景気の回復も意識すると、0.7%程度の長期金利はかなり低い。この背景には日銀の国債買入による国債需給の引き締まりがあるが、需給だけで国債価格を維持させる、つまりは国債価格と反対に動く長期金利を低位に保つことは難しい。

 円安・株高基調が崩れてきたことは、債券市場にとっては買い要因となるが、今後は低位安定し続けている日本の長期金利が動き出すことも考えておく必要がある。あまりに長く日本の長期金利は低位安定してきたため、それが上昇するということがなかなか考えづらい。しかし、そういう状況が永久的に継続されるものでもない。すでに日本の国債発行残高が2023年度末に1千兆円を超えるとの財務省試算も出されているが、これだけの借金を維持するのは実はかなり綱渡りの面もあることも認識しておく必要がある。

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by nihonkokusai | 2014-02-04 06:53 | 債券市場 | Comments(0)

1月のFOMCでの全員一致の背景

 1月28、29日のFOMCでは、国債などの買い入れ額を100億ドル減らし、2月から650億ドルとすることを決定した。昨年12月のFOMCに続き2回連続で債券買入規模の縮小を行う。縮小規模は前回と同額となり、長期国債を50億ドル減らして350億ドルに、MBSも50億ドル減らして300億ドルとする。

 今回の決定は10人のメンバー全員一致となった。1月のFOMCから連銀の投票権を持つメンバーが、ニューヨーク連銀のダドリー総裁を除いて交代した。クリーブランド連銀のピアナルト総裁、フィラデルフィア地区連銀のプロッサー総裁、ダラス地区連銀のフィッシャー総裁、ミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁に変わった。このなかでコチャラコタ総裁は、より緩和的なスタンスをとるべきと主張していたはずだが、テーパリングの決定に対して反対するどころか賛成している。

 キング総裁時代のイングランド銀行のMPCでは、総裁自ら少数派に回ることがあるなど、意見がはっきり分かれることが多かった。それに対して日銀は以前に比べて金融政策そのものへの反対票は出なくなった。異次元緩和については全員一丸となって突き進む姿勢を示している。米国では連銀総裁などから反対票も出ていたが、今回の緩和縮小決定に反対意見は出ず、2011年6月以降で初の全員一致となったのである。

 これには1月末で任期を終えたバーナンキ議長とそれを引き継ぐイエレン副議長を意識したものであった可能性がある。バーナンキ議長が付けたテーパリングの道筋を、しっかりイエレン新議長が引き継ぎ、年内に非常時の対応策となった量的緩和策を止めて通常の金融政策に戻すことが現在のFRBの大きな仕事となった。一時的な雇用の悪化や、ここにきての新興国通貨の下落等により、テーパリングのスケジュールに支障が出るようなことになると、目的が果たせなくなる懸念が生じる。このあたり、戦力の随時投入はしないとしている現在の日銀の金融政策と相通じるものがある。

 FOMCのメンバーには、副議長としてスタンレー・フィッシャーと新たな理事としてラエル・ブレイナード氏を迎い入れる予定となっている。フィッシャー氏とブレイナード氏の加入により、現在の政策の路線が変更されることは考えづらい。むしろ異次元の政策からの脱出をどのようにスムーズに行うのかが、今後のFOMCメンバーの大きな課題となるであろう。

 ただし、何が起きようともテーパリングを完成させるというわけでもない。再びあらたな危機が訪れることがあれば、世界的なリスクに対して副議長として乗りきったイエレン氏とともに、フィッシャー氏の経験が生かされるものと思われる。ブレイナード氏には政府とのパイプ役も期待されるのではなかろうか。

 大きな人事交代を控え、それによるリスクも極力減らすために、今回の全員一致でのさらなるテーパリングの決定があったものと思われる。

 世界的なリスクに対処するためには、最終的に中央銀行に依存せざるを得なくなった。しかし、今後はその依存度を少しでも下げていくことが、出口に向けての大きな課題となる。ここは慎重に行わなければ市場が牙をむく可能性がある。かといって時間を置いてしまうと、資産バブルのリスクが増加する。このあたりの兼ね合いが非常に難しい。そのようななかにあり、異次元緩和と呼ばれる政策をとったまま、追加緩和すら伺っている中央銀行が存在する。これをアリとキリギリスに例えてはいけないであろうか。

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by nihonkokusai | 2014-02-03 10:01 | 中央銀行 | Comments(0)
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