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物価目標設定と追加緩和に見るデフレ脱却の難しさ

 1月22日の金融政策決定会合で、日銀は政府からの要請のあった「物価安定の目標」を導入することを決定し、同時にあらたな追加緩和策として、「期限を定めない資産買入方式」を導入することを決めた。

 物価安定の目標については昨年2月に決めた物価安定の目途を修正し、目途(Goal)を目標(Target)とした上で、その目標を消費者物価指数の前年比上昇率で2%とした。この変更は「柔軟な金融政策運営の重要性に対する理解が浸透している状況を踏まえたもの」としている。つまり今回、日銀はインフレーション・ターゲティングを導入したことになるが、あくまでこれは白井審議委員が先日の講演で解説していたフレキシブルなインフレーション・ターゲティングということになる。この目標に対し「できるだけ早期に実現すること目指す」としたが、政府の意向を踏まえたものであろう。

 2%の物価目標に対して、佐藤委員と木内委員が反対し、7対2の多数決が決定された。会合前に麻生財務相が、物価目標に関して「政策委員の中でも意見の割れるところ」と発言し、反対者がいるであろうことを示唆していたが、それがハト派と呼ばれる佐藤委員と木内委員であったことは意外感もあった。しかも、その反対理由は、成長力強化の取り組み進む前に2%目標掲げると信認毀損すると反対したそうである。

 日銀は物価目標とともに、あらたな追加緩和策として「期限を定めない資産買入方式」を導入することも決定した(全員一致)。これは2014年初から期限を定めず毎月一定額の金融資産を買入れる方式を導入し、当分の間、毎月、長期国債2兆円程度を含む13兆円程度の金融資産の買入を行う。これにより基金の残高は2014年中に10兆円程度の増加となり(国債には償還があり、基金による買入対象国債は中期債のため)、それ以降、残高が維持される格好になる。

 今回の追加緩和は、これまでの方式で言えば買入資産の残高を10兆円増額することになるが、目標が基金の残高ではなく、それを維持するための毎月の買入額に焦点をあてたのは、残高維持のために毎月多額の国債を買い入れることをアピールする狙いがあろう。それとともに「無期限」という表現も使いたかったのではなかろうか。

 今回は石田委員からの超過準備の付利撤廃の議案提示はなく、追加緩和は「期限を定めない資産買入方式」だけであった。

 果たしてこれでどのように物価目標に到達できるのか、その具体的なプロセスが示されているわけではない。あくまで「金融緩和を思い切って前進させる」というどちらかといえば気合いみたいなプロセスを期待しているかに思える。佐藤委員と木内委員が反対したことも頷ける。

 物価目標もフレキシブルなものとなり、追加緩和も表現は異なるが、やることはこれまで通り。これは物足りないと言いたいのではない。このあたりに金融緩和によるデフレ脱却の難しさが表れていると思うのである。

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by nihonkokusai | 2013-01-23 08:10 | 日銀 | Comments(0)

安倍政権の中央銀行の政策についての誤った理解

 ドイツのショイブレ財務相は1月17日、安倍新政権が目指している将来的な追加金融緩和に強い懸念を表明した。ショイブレ財務相は、下院議会での演説で「安倍政権の新たな政策を非常に懸念している。世界の金融市場で流動性が過剰であることを考えると、中央銀行の政策についての誤った理解がそれをあおっている」と述べた(ロイター)。

 これは円安ユーロ高の動きに対しての牽制発言とも受け取れなくもないが、「中央銀行の政策についての誤った理解」という指摘というか批判は注意すべきものではなかろうか。

 大胆な金融緩和と積極的な財政政策をミックスさせたアベノミクスは、円高調整の動きを加速させ、それにより急激な株高を演出した。円安株高の動きは、まさに日本人にはハッピーと受け取られ、新聞雑誌にはアベノミクスの活字が踊り、書店によってはアベノミクスのコーナーも設けられているそうである。安倍政権の誕生により、神風が吹いたような印象である。そのアベノミクスの提唱者の一人とされる浜田宏一内閣官房参与の発言により円安がさらに進むなどしている。

 21日から22日にかけての日銀の金融政策決定会合では、2%の物価上昇率を目標とする共同声明を政府と日銀で取り交わすことについても議論するとみられる。日銀総裁は政府の意向に賛同しているとみられるが、日銀の決定は政策委員の多数決によって行われる。しかし、政府の意向に逆らうような決定が出されることは考えづらい。

 政府も日銀の独立性にも配慮したのか、アコード(政策協定)という表現は引っ込めて、共同宣言、もしくは共同声明とするようで、より拘束力の強いアコードの名称にはこだわらない姿勢を示した(日経新聞)。日銀としても、日銀法改正に向けた動きは断固避けたいとみられ、政府もそこまで踏み込むことによるリスクを配慮したものと思われる。

 この共同文書には、「西村副大臣によると、2%の物価目標を共有するが達成時期は明記せず、金融緩和手段は日銀に委ねる。共同文書には政府も規制緩和などを推進し成長戦略を実行していく旨を記載するとともに、財政再建の重要性も盛り込む方向だ。物価目標達成に向けた進ちょく状況を日銀総裁が経済財政諮問会議で説明する説明責任についても記載する。」(ロイター)

 成長戦略の実行、財政再建の重要性などについては、日銀からの要請があった可能性もある。日銀の金融政策だけで物価を上げることには、かなりのリスクが伴う。昨年の安倍自民党総裁の発言にもあった輪転機政策では、日銀券の信用損失と引き替えに円の下落や、物価上昇を引き起こす懸念が存在する。そもそもデフレ脱却と主張するが、必要なのは物価上昇そのものではなく、景気や雇用の回復があり、それとともに物価も上昇していく姿ではなかろうか。物価が上がれば何もかもうまく行くのであれば、何も金融政策や財政政策に頼らずとも、公共料金の値上げ等などにより可能なはずである。

 2%の物価上昇率を目標とする共同声明については22日に、麻生副総理兼財務相、甘利経済再生担当相、それに日銀の白川総裁がそろって発表する。問題となるのは、物価を前年比2%のプラスとする手段である。目標の達成時期は盛り込まず、具体的な手法については日銀に委ねることになろうが、これは日銀の独立性を配慮したというより、ある意味日銀に丸投げされた格好である。22日には政府の経済財政諮問会議も開かれ、この共同声明の内容が報告されるとともに、今後、目標の進ちょく状況などを諮問会議で検証することを確認すると伝えられている。イングランド銀行総裁は四半期に一度、公開書簡を財務相に送れば済むが、日銀総裁は経済財政諮問会議で毎度説明する必要がある。

 日銀はこの共同声明の受け入れとともに、2回連続となる追加緩和を決定すると予想されている。その内容は資産買入基金の増額や、国債買入に関しても期間を設けないことなどを含め、何らかの変更も想定される。超過準備の付利撤廃についても議論される可能性がある。物価目標が達成されるまで、このような追加の緩和策が政府からも要求されよう。このあたり、ショイブレ財務相の言うところの中央銀行の政策についての誤った理解が政府側にあったとすれば、今後の日銀の金融政策は大きなリスクも孕みかねない。国内はアベノミクスに浮かれているが、ショイブレ財務相の見方にも耳を貸す必要があろう。

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by nihonkokusai | 2013-01-22 08:24 | 日銀 | Comments(0)

フレキシブルなインフレ・ターゲティング

 日銀の白井審議委員は講演で次のようなコメントをしている。

 「世界には、いわゆる「インフレーション・ターゲティング(以降、略してインフレ・ターゲティングと呼ぶ)」を採用している諸国があります。例えば、英国、カナダ、スウェーデン、ニュージーランド、ノルウェー等が挙げられます。インフレ・ターゲティングは、現実には元々の厳密な意味(つまり、物価の安定だけに焦点を当てる方針)で採用している国はなく、全ての採用国がいわゆる「フレキシブル・インフレーション・ターゲティング」を採用していると、金融論の分野では世界的権威かつスウェーデン中央銀行(Riskbank)の副総裁であるLars E. O. Svensson博士が指摘しています。」

 この「フレキシブル・インフレーション・ターゲティング」とは何であるのか。白井委員は次のように解説している。

 「フレキシブル・インフレ・ターゲティングは、インフレと需給ギャップのそれぞれの見通しが、インフレはインフレ目標の近くで、需給ギャップは持続可能な水準の近くで最も安定化すると思われる政策金利を設定することを試みる枠組みです。」

 これでは、良くわからない。さらに次のような解説もある。

 「単純にインフレ目標をいかなるコストを払っても達成するというものではなく、インフレ安定化とマイナスの需給ギャップの縮小との間でうまくバランスをとるような政策金利を設定しようという枠組みです。」

 何となく見えてきた。「いかなるコストを払っても達成する」ものではないというところがポイントになりそうである。さらに白井委員は続けている。

 「つまり、インフレ目標を達成するにあたり、現実には様々な予期せぬショックが発生しておりますので、それらが経済成長に及ぼす影響にも配慮しながら、柔軟に金融政策を運営するという考え方に立っています。」

 インフレ目標は設定するが、それに対して闇雲に政策を取るのではなく、柔軟な対応というところがポイントになる。これは白川総裁が言うところの、「適度な裁量性」が必要であるということか。

 インフレ目標を採用しているイングランド銀行はインフレターゲットの2%の上下1%を超えると財務相に公開書簡を出さなければいけないが、書簡の回数は2007年4月以降、すでに14回にものぼっているそうである。つまり多少、目標から逸れようが、他の事情があり、物価目標だけを達成するような政策は打ちづらい。

 米国はもっと柔軟性があり、そもそも2012年1月に物価に対して特定の長期的な目標を置いたが、本来インフレターゲットを強く主張していたはずのバーナンキ議長は、これはインフレターゲットではないとしている。つまりその数字に縛られてしまうと適切な金融政策運営ができなくなるためである。

 「世界金融危機が金融政策に与えた教訓として各中央銀行に共有されている見方は、インフレ目標や物価安定だけに着目した政策運営では、インフレを低い水準に維持できても、リーマンショックを契機とする金融危機の発生を回避できなかったということです。つまり、多くの中央銀行がこれからはインフレないしは物価の安定だけではなく、「金融不均衡」にも注目してそれが拡大しないように金融政策を運営する必要があると考えるようになっています。」

 「こうした観点からも、フレキシブル・インフレ・ターゲティングを採用する多くの国では、金融政策の「柔軟性」を維持することが重要であり、場合によっては実際のインフレがインフレ目標から乖離することを容認するようになっています。実際、かなり長い期間にわたって実際のインフレがインフレ目標から乖離する採用国も複数見られます。 」

 つまりフレキシブルなインフレ・ターゲティングが現在のインフレ目標を採用している中央銀行の潮流であるとしている。白井委員は「日本銀行はインフレ・ターゲティングを採用していませんが」としているが、フレキシブル・インフレ・ターゲティング採用国との類似点を指摘している。

 この日銀はインフレ・ターゲットを採用していないとの表現が少し気に掛かる。実質的には日銀はすでにフレキシブルなインフレ・ターゲティング採用国との認識と思うが、それは1月22日の決定会合での共同文書によって、正式採用となるのであろうか。

 さらに白井委員は次のような発言もしている。

 「日本銀行もフレキシブル・インフレ・ターゲティングを採用している国も、金融政策運営においてはともに「実際のインフレにもとづくアプローチ」ではなく、「インフレ・フォーキャスト(インフレ予測)・アプローチ」を採用しています。」

 まさにFRBがこれを採用しているように思われるが、果たして短期間でデフレ脱却を目指す安倍政権は、やや生ぬるいともされかねないインフレ・フォーキャスト・アプローチを許容するのかどうか。このあたりを含めて、21日から22日の金融政策決定会合の行方を見守りたいと思う。

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by nihonkokusai | 2013-01-20 12:36 | 日銀 | Comments(3)

10年国債と20年国債の利回り格差が1%に拡大した理由

 1月17日に日本国債の10年債利回りと20年債利回りの格差が1%に拡大した。同利回り格差が1%以上に拡大するのは1999年末の「資金運用部ショック」以来約14年ぶりとなるそうである(ロイター)。

 これは日本相互証券による引けでの利回りを参考にしている。数百兆円もの残高のある国債の評価額は、大量に保有している銀行や生保、年金、日銀等々の資産価値に大きな影響を与えることになる。しかし、個別の取引価格等は顧客との守秘義務もあり、外部に発表する必要はない。このため、この評価については、日本証券業協会が発表する公社債店頭売買参考統計値、もしくは日本相互証券(BB)の発表する国債価格などが使われている。

 国債は金利商品であり、利率や償還日の違い等で価格で比較ができないため通常の比較には利回りが使われる。その利回りから価格が算出される。どちらも、複数の証券会社(日本証券業協会は21社、日本相互証券は18社)からの報告された15時を基準とした価格をもとに、(その中の上下を割愛して)平均値を算出したものである。

 ということで、1月17日の日本相互証券における10年債と20年債のそれぞれカレント物と呼ばれる直近入札された国債の利回り(引け値)は、10年327回債が0.730%、20年141回債が1.735%の引けとなっていた。

 何故、これほどまでに10年債と20年債の利回り格差が拡大したのであろうか。イールドカーブの形成要因を説明する仮説として、「純粋期待仮説」、「流動性プレミアム仮説」、「市場分断仮説」の3つがあるが、今回の場合は中短期と超長期それぞれの変動要因が異なるということで、市場分断仮説での説明が可能かもしれない。これは短い金利には低下圧力が加わっているものの、長い金利にはむしろ上昇圧力が掛かったためと言える。

 短い期間の金利に低下圧力が掛かっているのは、いわゆるアベノミクスによる日銀に対する緩和圧力によるものであり、1月21日、22日の金融政策決定会合では追加緩和を検討し、政府との共同文書も取り交わし、2%の物価目標(target)を設定する見込みと伝えられている。資産等買入基金の増額となれば、中期ゾーンの国債買入をさらに進められることで、国債の需給面から見てプラス要因となり、それが長期ゾーンにも影響したと考えられる。また、ここにきて一時的に円安修正が入り、米国債も上昇していたことから、債券先物の買い戻しに加え、10年債にも買いが入ってきてい他面もある。

 それに対して超長期債については、アベノミクスがむしろマイナス要因となっている。積極的な財政政策により、今年度補正予算で国債発行額が増加した。これによる超長期債の増額はなかったものの、来年度の国債発行計画では超長期債への増額の可能性も残る。確かに来年度の新規国債発行額は今年度の当初予算よりも抑えられる見込みと報じられてはいるが、アベノミクスによる積極的な財政政策は財政悪化も意識させた可能性がある。さらにそのアベノミクスが、デフレ脱却に主眼を置いている以上、もし仮に本当に物価が上昇するとなれば、それを先取りして長い金利には上昇圧力が加わる。現状でインフレ懸念というのは大袈裟かもしれないが、同様の動きは米国債でも良く見られる。

 この10年債と20年債の利回り格差が何か影響を及ぼすのか。たとえば外為市場で気にするところの対外金利差には長期金利もしくは政策金利などの短期金利が影響するとみられ、超長期債の利回り上昇はあまり意識されないであろう。また、投資家にとって、長い金利にそれなりの利回りが付くのも歓迎であろう。ただし、1999年の運用部ショックという大きな変動期に遡るまでの格差拡大というのは、金利そのものが動く予兆のようなものであるのかもしれない点に注意すべきかと思う。

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by nihonkokusai | 2013-01-19 11:35 | 国債 | Comments(2)

超過準備の付利引き下げは必要か

 日銀の白井審議委員は、ローマにおける講演の中で、補完当座預金制度、つまり日銀の当座預金の超過準備に0.1%の利子を付ける制度に関してコメントしていた。

 この講演を受けて、1月16日のニュースのヘッドラインでは、付利撤廃で期待される効果に関する部分だけが取り上げられていたようだが、その前に付利がつけられたことにより期待できる効果についても解説していたのである。

 日銀の包括緩和政策では、政策金利の誘導目標として0~0.1%程度を維持する一方で、補完当座預金制度(2008年10 月導入)の下で適用金利(付利金利)0.1%が適用されている。つまり金融機関が日銀の当座預金に預けておかねばならない部分(法定準備預金)を上回って預けている預金について、日銀は金利を支払っている。これが超過準備への付利である。

 日銀の当座預金の超過準備に対して0.1%を支払っている理由はいくつかある。もし付利がないと銀行間市場が縮小し、金融機関がいざ必要なときに市場から即座に資金調達することが難しくなる可能性である。これは市場機能の低下とも表現されているが、付利がなかった日銀の量的緩和時代のように短期市場が麻痺してしまう懸念である。

 そして、付利金利があると銀行間市場の金利に下限が生まれるため、その分だけ市場金利の変動は小さくなるとの指摘がある。たとえばこの付利が2年国債の利回りが0.1%近くで張り付いていたことの要因となった。2年債利回りが0.1%以下となれば、超過準備の付利を利用できる金融機関は2年債を買わずに、日銀の当座預金に現金を残しておいたほうが、高い利子が得られるというわけである。しかし、ここにきて2年債利回りは0.08%に下がったではないかとの指摘があろうが、これはまさに付利引き下げ観測があったためである。

 また、白井審議委員は「将来の話になりますが、学術的には、景気回復局面で中央銀行が過度なインフレを引き起こすことなく、金融政策の正常化に向けて円滑に移行できる利点が指摘されています。付利金利があらかじめ維持されていれば、たとえ当座預金に多額の超過準備が残されていたとしても、(市場金利の下限を形成する)付利金利を引き上げることで市場金利も引き上げることができると考えられるからです。」

 金融政策の手段のひとつとして、付利金利の操作もありうるということであろう。日銀が当座預金の超過準備に対して利子をつけているのはこのような理由による。それに対して、付利撤廃で期待される効果も白井委員は指摘している。

 「例えば、国庫短期証券やそのほかの短期金利が低下しますので、米国など他国との金利差をもたらすことで為替相場を円安方向に後押しする効果が期待されます。」

 これについては甚だ疑問である。たかだか0.1%の引き下げでは金利差の誤差範疇ではなかろうか。ただし「付利撤廃」ということを強調してアナウンスメント効果は期待できるかもしれない。しかし、その効果も一時的なものであろう。

 「この他、付利撤廃がもたらす影響が定かではないのが、金融機関の貸出行動への影響です。一般論として、付利金利を撤廃すれば金利の付かない当座預金に預けておくよりも民間貸出を増やすインセンティブが高まるという見方がある一方で、付利収入を失うこと等により金融機関の収益が低下すると信用リスクのある民間貸出を伸ばすインセンティブがむしろ阻害される可能性も指摘されています。」

 たしかにこの影響は定かではない。付利金利を撤廃すれば金利の付かない当座預金に預けておくよりも民間貸出を増やすインセンティブが高まるというのは、考えづらい。これは前回の日銀の量的緩和の際に、それを期待しても効果はなかったことでも伺える。たとえ銀行側にお金を貸したいとのインセンティブが高まったとしても、借りる人がいなければお話しにならない。これは超過準備の利子をマイナスにしても同様である。この場合に金融機関はなるべく法定準備金ぎりぎりに収めるようにするであろうが、それまでの超過準備部分は貸出ではなく、多少でもプラスの利子の付く国債に振り向けられよう。

 そして、付利収入を失うこと等により金融機関の収益が低下すると信用リスクのある民間貸出を伸ばすインセンティブがむしろ阻害される可能性との指摘はなかなか興味深い。見方を変えれば、この超過準備の付利というのは、結果として日銀が金融機関の収益を助ける格好になっている。このため、12月20日の決定会合で銀行出身の石田審議委員から、補完当座預金制度における適用利率をゼロ%とする議案が提出されたことに市場関係者が驚いたのである。

 「いずれにしましても付利金利の長所と短所について、その撤廃の有無が経済・物価にどのように寄与するのかを含めて理解と議論を深めていく必要があるように思います。」

 どうやら白井委員は、付利撤廃に傾いているわけではないようである。ただし、次回の決定会合での追加緩和策のひとつとして、市場では付利の引き下げ期待があるのは事実。短期市場では、すでにそれを意識して動いている。白川日銀総裁はこの付利引き下げにはあまり積極的ではないとみられ、個人的にも短期市場の市場機能を維持させるためにも、付利を引き下げる必要はないと考えている。

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by nihonkokusai | 2013-01-18 08:32 | 日銀 | Comments(0)

補正予算による国債発行計画の修正

 1月15日の夕方に政府は2012年度補正予算案を決定した。総額は13兆1054億円となり、2009年度第一次補正の総額14.7兆円に次ぐ過去二番目の規模となる。ただし、2012年度の国債利払い費が当初予算の歳出から2兆円余り減額されたことで、一般会計の補正規模は10兆2027億円となる。補正後の一般会計総額は100兆5366億円と過去三番目の大きさに。今回はその使い道等はさておき、その資金繰りとこれによる今年度の国債発行計画の修正についてみて見たい。

 補正予算の歳入の部分は、税収2610億円、税外収入1495億円、「公債金5兆2210億円(建設国債5兆5200億円、赤字国債は2990億円減)」、前年度剰余金8706億円、前年度剰余金受入(復興財源)1兆1165億円、「年金特例公債金2兆5842億円」となる。

 これにより2012年度の国債発行額は、建設国債が5兆5200億円増加して11兆4290億円となり、赤字国債は2990億円減少して38兆360億円となる。つまり新規国債と呼ばれる部分は、このふたつの国債を合計した49兆4650億円となる。(財務省の資料、「平成24年度国債発行予定額」を参考)

 そして、年金特例公債2兆5842億円とは、基礎年金の国の負担分を二分の一に維持するための財源となる国債である。

 復興債は2790億円減額して2兆4033億円、財投債はかわらずの15兆円、借換債は1兆2309億円減額(このうち復興債の借り換え分減額が9358億円)され、111兆741億円に。

 以上の国債発行額を合計すると2012年度の国債発行総額は180兆5266億円となり、当初予算から6兆2953億円増加する。しかし、不必要になった復興債や借換債のうち復興債分での減額調整分が約1.5兆円あったことで、当初想定されていた7.8兆円規模からかなり減額された。

 この補正予算にともなう今年度の国債発行計画も修正された。これは「カレンダーベースの市中発行額」の部分で、その数字は149兆4000億円となり、当初予算の149兆7000億円からむしろ3000億円「減額」されている。国債発行額が6.3兆円も増加したのに、なぜカレンダーベースの発行額は減少したのか。

 そもそもカレンダーベースとは何かということが、なかなか理解しづらいかもしれない。年度の政府予算が決まって、それによって国債の発行額が決まっても、そのすべてが市中消化、つまり入札等で機関投資家などに買ってもらうわけではない。その理由のひとつは、市中消化以外に個人向け国債などの個人向けの販売分とともに、日銀乗換があるためである。日銀が保有している国債(基金の分は除く)は満期償還を迎えると、1年間に限って現金償還を延長し、現金の代わりに短期国債を発行し、それを日銀が引き受けるというものである。さらに国債の発行には赤字国債の出納整理期間内発行と、借換債の前倒し発行があり、こちらでやり繰りが可能となっているためである。実はこちらの影響がかなり大きい。

 出納整理期間内発行はのちほど説明するが、前倒し発行とは大量の国債発行を円滑に行うために、借換債は年度を越えて前年度に前倒して発行ができるというものである。これは翌年度の国債発行額を多少なりとも減額させられるときには借換債を前倒しで発行し、国債の安定消化を図るように調整するためのものである。

 さて話を補正予算に戻すと、「平成24年度国債発行予定額」の消化方式別発行額によると、この中で第二非競争入札分が当初見込みよりも2兆476億円分上方修正されている。第二非競争とは国債市場特別参加者が、財務省が各特別参加者ごとに設定する応札限度額まで応札することができるという仕組みの入札方式である。つまりそれだけ国債への投資家の需要が強かったということにもなる。これも国債発行額の減額要因となった。

 そして年度調整分というのが、5兆1477億円ある。これが「出納整理期間内発行」分となる。つまり今年度の国債発行分の一部を、出納整理期間である今年の4月から6月に先送りするものである。赤字国債の発行にあたっては、国会の議決を経た範囲内で、税収等の実績に応じ発行額を極力抑える必要があるとして、毎年度の税収の収納期限である翌年度の5月末までの税収実績等を勘案して、特例国債の発行額を調整するため、特例国債の発行時期を翌年度の6月末までとする「出納整理期間発行」の制度が設けられている。特例法にもあるようにその期間における(つまり4月1日から6月末)国債発行による収入は、3月末までの予算計上年度のものとし、これは会計年度所属区分の特例規定となっている。

 第二非競争入札分が予想より多かった分と出納整理期間内発行に回す分が合計7.2兆円程度あり、今年度の個人向け国債の販売が予想より下振れしたことで個人向け販売分の減額分6000億円を差し引いても6.6兆円程度は差し引ける計算になる。それに対して必要額が6.3兆円なので、カレンダーベース(つまり4月~3月の12か月で発行される)国債については、3000億円の「減」ということになる。

 カレンダーベースの発行額については、今年度の5年債を2月から毎月2000億円ずつ増額し、10年債は同1000億円増額する。その上で、9000億円の発行予定であった6か月物のTBの発行を見送る。これについては、来年度は借換債が増える見込みであり、これを考慮して6か月物の発行は見送るようである。

 今回は予想されていたような超長期債の増額も見送られた。今後は、出納整理期間内発行分として5兆円規模で来年度の発行に先送りされた部分も加わり、来年度予算編成にともなう4月以降の国債発行計画が進められる。今後はこちらの動向も注目されよう。来年度予算の政府案は、今月29日にも閣議決定する方向のようである。

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by nihonkokusai | 2013-01-17 10:15 | 国債 | Comments(0)

11月の海外からの日本の債券への投資状況

 財務省は1月11日に11月の国際収支(速報)を発表した。これによると、経常収支は2224億円の赤字と10か月ぶりの赤字となった。1月以外では1985年以降初の赤字となる。ただし、季節調整済みでは2259億円の黒字に。

 国際収支の発表には、付表として対外・対内直接投資、対外・対内証券投資も発表されている(財務省トップページ > 国際政策 > 関連資料・データ > 国際収支状況 > 報道発表資料(発表日別)。このうち11月の対外・対内証券投資から債券の部分について確認してみたい。

 国内から海外の国債等への投資は、「主要国・地域ソブリン債への対外証券投資」で確認できる。米国債への国内からの投資は、ネットで11月は3045億円の減少となり、10月の4565億円の減少に続いての減少に。ユーロ圏への国債投資では、フランスのソブリン債への投資が11月は4884億円増と10月の5635億円に続いて増加した。11月のドイツのソブリン債への投資が1496億円の増加と10月の706億円減少から増加に転じた。

 「本邦債券に対する対内証券投資」から、日本の債券(主に国債)に対する海外からの投資を見てみると、11月はネットで3兆8904億円の増加となり、10月の2兆8357億円減少から増加に転じた。内訳としては中長期債が4173億円の増加、短期債が3兆4731億円の増加となっていた。ちなみに10月は中長期債が6989億円増、短期債が3兆5346億円減となっていた。

 11月の「対内証券投資の地域別内訳」をみると、日本の中長期債での購入額が大きいのが、英国の4851億円、フランスの995億円、中国の958億円など。反対に中長期債での流出で多かったのは、オーストラリアの3748億円、ルクセンブルクの2381億円など。

 日本の短期債で購入額が多かったのは、英国の8兆3697億円増(10月は5兆4255億円増)が引き続き突出している。これに対して流出が大きいのは、ルクセンブルグの1兆6029億円減(10月は1兆5168億円減)、フランス5329億円、国際機関5113億円減、米国5084億円、シンガポール4446億円、UAE44076億円、香港2309億円、タイ1941億円、ニュージーランド1020億円、ドイツ1004億円など。

 11月の海外から日本の国債を主体とする債券への投資額は、特に短期債は英国経由のものが再び大きく増えていた。反対に短期債の売却はあちらこちらからそこそこ出ていた。11月の中旬あたりから、円安基調が強まってきたが、これを見る限りこの円安による影響は限られていたように思われる。

 ちなみに1月11日に発表された12月の対外及び対内証券売買契約等の状況(月次・指定報告機関ベース)によると、対内証券投資については中長期債が1兆1423億円減(11月は3706億円増)、短期債が1兆6235億円減となっていた(11月は3兆4686億円増)。12月に入り円安の動きがさらに加速したこともあり、中長期、短期債ともさすがに売却が増加したものとみられる。ちなみに中長期債のネットの売り越しが1兆円を超えたのは、2012年3月の1兆8169億円の売り越し以来となる。

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by nihonkokusai | 2013-01-16 09:51 | 国債 | Comments(0)

日銀総裁人事の行方と、日銀総裁の仕事

 日銀の総裁選びが本格化すると14日の日経新聞は伝えている。安倍首相はその条件として「大胆な金融緩和を実行できる人」を挙げている。また、麻生太郎財務相は「語学力、組織運営の経験、健康」を条件に挙げている。総裁を含む日銀の政策委員の人事等については、形式上は内閣官房副長官から国会に提示されることで、最終判断は首相官邸にある。ただし、その人選については、日銀への関与を強める安倍総裁とともに、麻生財務相あたりを中心に人選が進められるのではないかとも予想される。

 参考までに、イングランド銀行総裁の人事については、副総裁含めて、首相の助言に基づいて女王が任命する形式となっている。その人選にあたっては財務省の影響が大きく、これまでは現役の総裁や財務次官などと検討し、財務相が首相に候補者を推薦する格好となっている。英国政府は11月26日に、英国の中央銀行であるイングランド銀行のキング総裁の後任にカナダの中央銀行であるカナダ銀行のマーク・カーニー総裁を任命すると発表したが、これに奔走したのが、 オズボーン財務相とされる。

 2013年3月19日に日銀の二人の副総裁、西村清彦氏と山口廣秀氏が任期満了を迎える。そして、4月8日には白川総裁が任期満了となる。それぞれ再任も可能であるが、少なくともこれまでの報道等を見る限り、安倍総裁が白川総裁を再任させることは考えづらい。また、山口氏と西村氏の総裁昇格についても、現在の日銀執行部には批判的な安倍氏であるため考えづらい。

 この場合に総裁だけというよりも、副総裁人事と絡めて3名の人事をまとめて行うことが予想される。日銀の政策委員などを決める国会同意人事は、政府が国会に候補を提示し、衆参それぞれの本会議で同意を得ることが必要となる。このため自公は参院で過半数に届かない状況であり、野党の協力を求める必要がある。 前回2008年の際の日銀総裁人事では、やはりねじれ国会となる中、当時の野党であった民主党は、与党の自民党が提出してきた財務省出身の総裁候補を参院でことごとく否決し、戦後初めて総裁ポストが空席となるという異常事態が発生した。ただし、今回は野党となった民主党もむやみな反対は控えるようである。

 NHKの報道によると、安倍総理大臣は15日に内閣官房参与を務める、アメリカ・エール大学の浜田宏一教授や、静岡県立大学の本田悦朗教授ら、専門家らを集め、日銀との連携強化の方策や、ことし4月に任期が切れる日銀の白川総裁の後任人事ついて意見を聞き、検討を本格化させるそうである。いわゆるリフレ派と呼ばれる浜田宏一氏や、本田悦朗氏の人選となれば、かなりリフレ色の強い人選となることも予想され、その人選に果たして麻生財務相がどの程度関わるのかによっても状況は異なってくるように思われる。

 しかし、総裁だけでなく副総裁も含めるとなれば、多少なりバランスも意識されると思われる。まさか3人とも積極的なリフレ派となるようなことは考えづらい、というよりあまり考えたくない気もする。麻生太郎財務相や甘利明経済再生担当相は財務省OBを選択肢から排除しない意向を示している。また、バランスを考えれば、少なくとも3名のうち1人は日銀出身者が入る可能性もあり、それは副総裁となるのではないかと見ている。

 総裁候補としては、5年前にも総裁候補となった武藤敏郎元日銀副総裁(現、大和総研理事長)、岩田一政前日銀副総裁(日本経済センター理事長)、黒田東彦元財務官(アジア開発銀行総裁)、伊藤隆敏東京大学教授、小泉純一郎元首相の秘書官でもあった丹呉泰健元財務次官(内閣官房参与)、勝栄二郎前財務次官などが上がっている。ただし、副総裁一人がもし日銀出身者となるとなれば、中曽宏日銀理事の名前も挙がっている。

 日本の中央銀行である日銀の目的として日本銀行法第1条には、銀行券を発行すること、物価の安定を図ること、決済システムの円滑かつ安定的な運行を確保することが明記されている。日銀は発券銀行であることに加え、銀行の銀行、そして政府の銀行としての役割を担っている。

 日銀の働きとして重要なもののひとつが、日銀券の紙幣を発行であるが。この紙幣に対し価値を与え、円滑に使われるようにするための管理をしているところが日銀となる。日銀券、つまりお札を見ると、お札の表面に赤い印章があるが、これは「日銀総裁」の印章で、「総裁之印」と篆書という字体で書かれている。日銀券というお札は、安心して使えるように日銀総裁がその価値を保証しているものであり、それだけに日銀総裁に課せられている責任は重いものがある。あまり輪転機を回しすぎるような政策を取ると、日銀券への信用が失われる懸念もある。

 日銀は金融政策だけが仕事ではなく、むしろそれはほんの一部であり、日銀は「円」という通貨の価値を安定させ、お金を通じてあらゆる取引の決済が円滑に行われるようにするために、経済全体に流通するお金を管理するという大きな責任を負っている。いわば金融というインフラを管理しているのが日銀といえる。そのトップが日銀総裁なのである。

 私たちは、買い物などを含めて毎日いろいろな商取引を行っている。決済システムとは決済手段であるお金を受払いしたり、証券を受渡したりするための仕組みのことである。決済システムのうち、お金を受払いする仕組みを「資金決済システム」、証券を受渡すための仕組みを「証券決済システム」と呼ぶ。日銀が安定させなければいけない決済システムは、金融を介して日本経済に関わる決済の仕組み全体を指す。お金の流れを安定して維持させるためには、決済システムの安定が求められる。

 日銀は物価の安定を図り日本経済を支えるという重要な役割があり、日銀総裁は日銀の最高責任者として、こうした機能を円滑にするため職務執行の責任を担っている。日銀の仕事として最も重要なものは金融政策の決定だが、金融政策の決定は合議制を取っており、日銀総裁の票も他の政策委員と同じ一票にすぎない。しかし、総裁は最終的に議長として政策委員の意見を取りまとめる。総裁は政府の経済財政諮問会議に出席し、財務大臣とともにG7(7か国財務相・中央銀行総裁会議)や中央銀行総裁会議(BIS)などの国際会議に出席している。

 日銀総裁の給料は日銀のサイトに「日本銀行における役員の給与等の支給の基準」があり、ここに参考資料として給与2016千円(月額)、役員手当て5016千円(半期)とある。

 日銀総裁になるための条件は「経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者」とあり、それ以外に国籍含めて条件は日銀法では見当たらない。

第二十一条  日本銀行に、役員として、審議委員六人のほか、総裁一人、副総裁二人、監事三人以内、理事六人以内及び参与若干人を置く。
第二十二条  総裁は、日本銀行を代表し、委員会の定めるところに従い、日本銀行の業務を総理する。
第二十三条  総裁及び副総裁は、両議院の同意を得て、内閣が任命する。
2  審議委員は、経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て、内閣が任命する。

 過去の日銀総裁は日銀出身者と財務省出身者のたすき掛け人事と言われていたが、日銀法が改正されてからは、速水優氏、福井俊彦氏、白川方明氏と結果として日銀出身者が続いている。

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by nihonkokusai | 2013-01-14 15:17 | 日銀 | Comments(0)

円安加速の背景

 ここにきて円安の動きが加速している。ユーロ円は119円台をつけ、ドル円は89円台をつけてきた。この背景には国内外の要因が重なり合ったことがある。

 今回はドルに対するよりもユーロに対する円の下落ピッチが速かったように感じる。その背景には、ユーロ危機の収束が意識された。1月10日に開催されたECB政策理事会では、全会一致で主要政策金利の据え置きを決定した。ドラギ総裁は理事会後の会見で、「事態が悪い時に伝染ということがしばしば口にされたが、良くなる時にはプラスの伝染というものがあると思う」と語り、ユーロ圏の国債市場が3年にわたる混乱を脱し安定するに伴い、域内経済が今年、徐々に健全性を取り戻すとの見通しを示した。(ロイター)。

 10日のスペイン国債の入札では58億ユーロを調達し、予定の50億ユーロを大幅に上回った。これを受けてスペイン国債は急伸し、スペインの10年債利回りは5%割れとなったのである。去年のスペインの10年債利回りは、一時7.75%近辺あたりにまで上昇していたが、7月以降、利回りは低下してきた。このスペインの長期金利の低下も、ユーロ圏の危機が後退したことを示す象徴的なものと言えよう。

 ユーロ圏についても足下景気の悪化はあるものの、ドラギ総裁は今年中に「緩やかな景気回復が始まる」との見通しを示していた。中国の12月の輸出が予想以上に回復したことを受けて、世界の景気回復への期待が高まったこともあり、ユーロ高を演出した側面もあった。

 米国については1月3日に発表された2012年12月11~12日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が大きく影響している。この中で、一部の委員から出口を意識した発言が出ていたことが明らかになった。この会合では毎月450億ドルの米国債を追加購入すると発表したが、ここではQEを終える可能性も議論されていたのである。「超低金利を維持する時期の目安に失業率を据えるなどの大盤振る舞いは、量的緩和の終わりの始まりだった可能性がある」(日経新聞電子版の記事より)。との指摘もあった。

 国内では、日銀の追加緩和への期待が強まっている。9日に約3年半ぶりに再開した経済財政諮問会議で首相は、日銀に対して、デフレ脱却に向けて2%の物価上昇率目標を設け、一段の金融緩和に踏み切るよう正式に要請した。これを受けて日銀は、「21~22日の金融政策決定会合で、2%のインフレ目標を設定するとともに、その達成が見通せるまで金融緩和を続けることを検討する」(読売新聞)とも伝えられた。この読売新聞の記事は11日朝刊一面中央にあり、「日銀、無制限緩和を検討」との見出しが躍っていた。この件については、もう少し内容を吟味する必要もある。しかし、出口を意識し始めたFRBや利下げ観測の後退したECBと対照的な、日銀による追加緩和観測が円売りを加速させた側面はあろう。

 11日には昨年11月の国際収支状況(速報)が発表され、経常収支は2224億円の赤字になった。赤字は10か月ぶりとなり、1月以外では1985年以降初の赤字である(ただし、季節調整済みでは2259億円の黒字)。11月の経常収支が赤字となったことも、円安を加速する要因となった。つまり特にユーロを主体とする国外要因と、日銀の追加緩和期待と経常収支の赤字という複数要因が重なって、円売りが加速したとみられる。

 安倍首相の言葉を借りれば、ここにきての円安の動きは、まさに次元が違うような動きとなっている。しかし、その大きな背景にあるのは、あくまで世界的なリスク要因の後退にある。円が売られやすい地合となっているところに、いくつもの円売りの材料が重なり合ってきている。いったん流れが出来てしまうと、その流れに沿うような材料に反応しやすくなるのも相場の習性である。ここにきて少しピッチの速さが気になるところではあるが、この円安の動きは新たな材料が出ない限りは、当面続くものとみられ、節目のひとつであるドル円の90円もすでに視野に入りつつある。

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by nihonkokusai | 2013-01-12 08:50 | 日銀 | Comments(0)

マネタイゼーションに気を付けろ

 昨年末あたりから、金融の一部の関係者ではなく、世間一般で注目されているのが、「日銀の物価目標」ではなかろうか。金融の関係者の間では、インフレターゲットやら調整インフレ、インフレ目標と呼ばれる金融政策は昔から議論されていたが、世間からすれば非常にマニアックな議論であったかと思われる。

 たとえば、iPadに使われている液晶の製造元がどこであるのかとかに関心があるのは、一部の専門家というかマニアであった。ところが、iPadのRetinaディスプレイが綺麗であると宣伝されると、Retinaディスプレイが何であるかはさておき、それはすごいということになる。

 安倍自民党総裁が12月の衆院選に向けて、世間にアピールしたのが、デフレ脱却であった。その目玉のひとつとなっていたのが、日銀によるインフレ目標であった。当初は、まだ野党であるから何でも言えたのかは知らないが、良く分からない過激な発言も目立った。しかしここにきて、どうやら日銀に2%のインフレ目標を持ってもらうことに落ち着いてきたようである。

 いわゆるアベノミクスと呼ばれた政策に対して、それにより円安株高を招いたとの見方もあり、世間からはおおいに注目された。円安となり株が上がれば皆喜ぶのは必然か。安倍政権はデフレからの脱却に向けて救世主となりうるとの期待も強まったようである。

 10日の産経新聞の「正論」で双日総研の吉崎達彦氏が、床屋の店主が日銀はもっと積極的に金融緩和すべきだと話していたことを伝えていた。同様の経験をしたことのある人も多いのではなかろうか。正月に親戚が集まった席で、はたまた久しぶりの友人と会ったときに、さらにタクシーの運転手と話しをしているときに、日銀の金融政策やアベノミクスが話題になったのではなかろうか。

 私も同様の経験があり、多くはもっとしっかりとリフレ政策のリスクも伝えないといけないと感じることが多かった。そんな中にあり、安倍さんの政策って恐いんじゃないか、との意見もあった。この人は私のブログとかを読んでいる人ではなく、金融関係者でもなかったが、意外とそのあたりのリスクを見抜いている人もいたのである。

 実際問題として、日銀が2%の物価目標を設定すれば物価が上がるのかといえば、そんな単純なものではない。それができるのなら日銀はすでに手を打っているはずである。その手を打っていないからデフレが続いたとの議論もあろうが、その手段というのが、安倍首相に言わせれば、次元を変えた政策という。これまでの発言内容からすれば、その次元というのは、マイナス金利とかだけではなく、どうやら禁じ手を指しているかのようにも思われる。いわゆる輪転機発言もその一環ではなかったろうか。

 米国でも米財務省がプラチナのコインを発行して当座をしのぐ案が話題を呼んでいるそうである。この「奇策」では、まず米財務省が額面1兆ドルのプラチナ硬貨を発行。これをFRBに預金して得た1兆ドルで当座の政府の資金繰りをまかなうと言う(日経新聞電子版)。これはまさに典型的なマネタイゼーションであり、そんなことが話題になっていることそのものが少し恐い。しかも、ノーベル賞経済学者のクルーグマン・プリンストン大教授がこれについて、「まやかし」と認めつつ、「経済に何ら悪影響がない」プラチナ硬貨を使わない手はないと自身のブログで繰り返し訴えたそうである(同じく日経新聞電子版より)。

 ノーベル経済学賞受賞者に楯突く気はないが、本当に「経済に何ら悪影響がない」のであろうか。その点は甚だ疑問である。ただし、今後日本でも、現在世間が注目を集めているものが「インフレ目標」から、いずれ「マネタイゼーション」と変わる可能性もありうる。リフレ政策のかけ声だけでも円安株高を招いたのなら、それを実現すれば日本経済はもっと良くなるとの期待感がさらに強まるとしてもおかしくはない。その際に、もし「マネタイゼーション」など気にするな、となれば、ブレーキが外されたクルマとなりかねない。ちなみに11日の読売新聞は、日銀が無制限緩和を検討と伝えている。これについては内容を良く吟味する必要があるが、見出しからだけみると「マネタイゼーション」にも気を付けろ、ということになりそうである。

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by nihonkokusai | 2013-01-11 10:04 | 日銀 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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