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市場の潮目の変化を知るための事例

 「市場の潮目の変化」という言葉が使われることがある。潮目とは本来は速さの違う潮の流れがぶつかり合う場所で、海面上に細長く伸びた筋が見える所とされるが、情勢が変化する境目との意味で使われることが多い。潮目が変化したかどうかは、その時点では確認することがむずかしいが、時を経て見れば確認できる。

 今回は日本における市場の潮目の変化を代表する事例を2つ取り上げてみたい。

 まずひとつ目が1989年の大納会の大引けにつけた日経平均の38915円87銭である。これがそれ以降20年以上にわたる株価の最高値となり、その後のバブル崩壊、それによる金融危機、デフレの深刻化などにより日経平均は下落相場となる。ここが市場の潮目となったことは確かであろう。

 株式市場では1989年末に向けてかなり熱狂的な状況となり、投資家は日経平均の4万円乗せを疑わず5万円、6万円まで上昇すると期待していた。そんな中、冷めた目でみていた市場関係者がいたのをご存じであろうか。

 1989年5月に日銀は当時の政策金利である公定歩合を3.25%に、さらに10月には3.75%に、12月には4.25%と引き上げ、完全に金融引締策へに転じていた。日経平均はお構いなしに上昇していたが、その一方、債券相場は公定歩合の度重なる引き上げによる短期金利の上昇で長短金利が逆転してしまい、すでに総じて伸び悩みの状態となっていたのである。

 このため当時の債券市場参加者は、私を含め、上昇し続ける日経平均にかなり違和感を覚えていたと思われる。つまり潮目の変化を債券市場はすでに感じていたが、株式市場関係者の多くにはそのような認識は年が変わるまではなかったものと思われる。

 結局、年が変わり1990年は債券安・株式安・円安のトリプル安でスタートした。米国金融緩和期待の後退、ソ連情勢の悪化、日銀による公定歩合の再引き上げ観測などが要因であった。実際に日銀は3月20日に1.00%という大幅な公定歩合の引き上げを実施し、5.25%まで引き上げた。8月2日にイラク軍がクウェートに侵攻すると原油価格が急騰し、インフレ懸念が一段と高まった。その後、原油価格は下落したものの、物価上昇を気にしてか、日銀は同月30日に公定歩合を0.50%さらに引き上げ、年6.00%とする(第五次公定歩合の引き上げ)。これを受けて債券先物は急落し、9月27日には債券先物市場開設以来の安値となる87円8銭にまで下落した。株価も大きく下落し、10月1日に日経平均株価は2万円を割り込んだのである。

 もうひとつ市場の潮目の変化の事例をあげてみたい。今度は1989年の事例とは反対に、株式市場と債券市場の立場が逆転していた。それは2003年の物語となる。

 2003年といえば1月から国債のペーパレス化がスタートし、2月には財務省による国債のバイバックが開始され、また3月からは個人向け国債の発行が開始された。

 2003年5月の、りそな銀行に対する資本注入によって、大手銀行は潰さないといった意識が強まり、その結果、株式市場では銀行株などが買われ、海外投資家の買いなどにより、日経平均株価は2003年4月の7607円88銭がバブル崩壊後の当時の安値となり底打ちした。米国や中国などの経済成長などを背景に、日本の景気も徐々に回復し始め上昇基調を強めたのである。つまり、いまで言うところのリスクオフからリスクオンに転じたこととなる。しかし、そんな株式市場の動きを無視して買われていた市場がある。債券市場であった。

 2003年6月までは債券相場は1日あたりの値幅も限られながらも、じりじりと高値を更新し続け、6月11日に30年債が0.960%、20年債0.745%、そして10年債0.430%とそれぞれ過去最低利回りを記録したのである。10年債の利回り、つまり長期金利の0.430%は今年、スイスに接近されたが、過去の地球の歴史上、最低の長期金利とされる。

 この相場上昇過程において、目立ったのがメガバンクの一角や地銀を含めた銀行主体の債券買いであった。銀行などがポジションのリスク管理に使っているバリュー・アット・リスク(VAR)の仕組み上、変動値幅が少ないことでそのリスク許容度がかなり広がりをみせていた。株価の低迷にともなって債券での収益拡大の狙いもあり、必要以上にポジションを積み上げ、異常なほどの超低金利を演出した。

 しかし、これもいわゆる債券バブルに近いものであった。これについては私の反省をこめて、当時のコラムをご紹介したい。

「買われたものは確かにいずれは売られる。上がったものは下がる。けれど、上がるには上がるだけの理由がある。しかし、上がった価格が実態と乖離していれば当然その修正は入る。それでは、この国債の価格つまり長期金利は日本の経済実態と乖離しているのか。デフレ下にあって、経済成長率も低いなかにあって、日銀が短期金利をゼロにしているなかにあって、10年金利が0.5%はそれほど異常なのか」(2003年6月4日の「若き知」より)

 言い訳にもなりそうだが、6月9日に私はコラムで下記のように書いており、どうやら少しは気が付いていたようにも思われる。

 「災害も警戒している時には起きることなく、忘れたころに起きる。相場の格言に「まだはもうなり、もうはまだなり」というのがある。もうこんなに買われているなら下がるはず。ところがいっこうに下がらない。反対に、まだまだこれからが本番なんて皆が思ったりすると、反落してしまったりする。最近の株価の戻りは一時的なものと見ている人が多い。米国株に追随しているだけとの見方も強い。しかし、以前は米国株の上げ下げにあまり関係なく下げ続けていたようにも思うのだが、なんで今度は上げに連動しているのか。経済指標も決して景気の回復を示すものはない。ないが株が下げなくなったのは何故なのか。誰か無理に買っているわけでもないようである。」(2003年6月9日の「若き知」より)

 10年債金利の0.5%が異常であったのは、そのあとすぐにわかることになる。6月17日に日経平均株価は9000円台を回復し、この日実施された20年国債の利率が1%割れのクーポンとなり、大手投資家などが超長期国債の購入を手控えたことをきっかけにして、債券相場が急落したのである。いわゆるVARショックと呼ばれた債券の急落である。

 この2003年の潮目の変化は、株式市場にとり4月にあった。ところが債券はそれに2か月ほど遅れてやってきたのである。このとき株式市場参加者の心理状態は想像するほかないが、地合が変わってきているのに債券市場関係者は何を考えているのだろうと見ていたことも考えられる。

 このように市場間には、潮目の変化の際に時間差が生じることがあり、それはつまり違う市場の動きとその理由をしっかり認識していれば、自らの市場の変化にも対処できることになろう。

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by nihonkokusai | 2012-11-07 09:16 | 債券市場 | Comments(0)

7月23日あたりが相場の起点に。最悪の状況は脱したのか

 今年の相場を振り返るには少し早いが、債券市場を含めここにきて変化の兆しが出ているように思われる。特に象徴的なのが外為市場での円の動きであることは先日もコラムで指摘した。この円安を受けて東京株式市場も底堅い動きを見せている。

 今年に入っての日本や欧米の債券や為替の動きを見てみると7月23日近辺がひとつの節目というか起点になっていることがわかる。このころにいったい何があったのか。今回の相場の流れを理解するには、そのあたりのことを確認する必要があるのかもしれない。

 私自身はたいへん記憶力が良くない。相場の世界にいたときも、いつ何があったのかをすぐに忘れてしまっていた。このため、それを確認するのは自分で当時書いたものを参考にせざるを得ない。ということで今年7月のコラム等を確認すると、7月31日に「違和感を感じたときには」 との題のコラムを書いていた。どうやらこのころ違和感を感じていたようである。

「今回の欧州の信用不安によるドイツやフランス、さらに英国やスイス、そして米国の長期金利の低下は、国債のバブル相場となっていることは確かではなかろうか。これについては買われる理由があるため買われているのであろうが、過去最低の利回りの更新が続く様子は、2003年6月までの日本国債の動きに近いものがある。」(2012年7月31日の「若き知」より)。

 さらに7月25日には「長期金利の世界記録更新なるか」というコラムを書いていた。

「7月23日、スイスの10年債利回りが0.443%近辺まで低下し、長期金利の世界記録に接近した。スペインが地方政府向けの支援を余儀なくされ、それにより銀行支援だけでなく、財政面からも全面的な支援を仰ぐのではないかとの警戒が出て、23日の欧州市場ではリスク回避の動きを強めた。 スペインの10年債利回りは一時7.6%近辺まで上昇し、イタリアの10年債利回りも6.32%近辺に上昇しアイルランドの10年債利回りを上回った。スペインを助けたらイタリアを助ける資金はないとの懸念も出ていたようである。これに対して安全資産として23日にドイツの国債は買われ、10年債利回りは一時1.126%と、過去最低を記録した(24日はムーディーズがドイツ等の格付け見通しをネガティブに変更したため反落しているが)。同様の理由で英国債も買われ、10年債利回りは一時1.407%とこちらも過去最低を記録している。米債も買われ、10年債は一時1.4%近辺に低下し、こちらも過去最低水準に。スイスの国債もやはり安全資産として買い進まれた結果、0.443%近辺とこちらもデータがある限り、過去最低の利回りを更新したのである。」(2012年7月23日の「若き知」より)。

 世界の歴史上の長期金利の最低記録は、記録が正確に残っている限り、日本において2003年6月11日のザラ場中(引けではなく取引時間中)に日本相互証券で記録した0.430%である。そこにスイスの長期金利が迫ったところで、米国債や英国債、さらに方向は反対ではあるがスペインやイタリアの金利も反転している。日本でも今年の長期金利の最低は7月23日から26日につけた0.720%である。債券先物の今年の高値(前後場)は23日から25日にやはり毎日つけていた144円64銭である。その後の下落ピッチは鈍いとはいえ、上値が重くなったのは確かである。

 外為市場でもユーロ円をみると、7月24日あたりの94円台からユーロは上昇基調となり、一時104円台まで回復している。ドル円については7月ではなく9月末あたりからではあるが、ドルが円に対して上昇圧力を強めている。

 これらから言えることは、7月23日にスイスの長期金利が歴史上最低水準に接近し、そのあたりで米国やドイツ、英国の長期金利がそれぞれの過去最低水準を更新していたのも、振り返ればやや行き過ぎの面もあり、修正がその後入ったとも言える。それに対して日本の長期金利も低下はしていたが、2003年のVARショックが市場参加者の頭をよぎり、警戒感が出ていたのが7月23日から26日と4日間も長期金利が0.720%でとまり、先物も23日から25日にかけて連日144円64銭で止まるというような状況を生んでいたとみられる。

 7月23日あたりを起点に相場の動きは変化してきている。過去の相場の歴史を振り返っても、長期金利のあらためての過去最低記録更新は、新たなショックでも起きないと難しいのではないかと予想される。危機は過ぎ去ったわけではないが、7月23日あたりからの市場の動きを見る限り、どうやら最悪の状況からは脱しつつあるようにも思われるのである。

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by nihonkokusai | 2012-11-06 09:18 | 債券市場 | Comments(0)

暴れん坊将軍自らの金融政策とは

 六代将軍となった徳川家宣は、新井白石からの建議を受け綱吉時代の財政金融政策を見直し事態の立て直しを図りった。これが「正徳の治」である。金銀貨の質を徳川家康が作らせた慶長と同様なものに戻し、これによって小判貨幣量を減少させるために金銀貨の品位・量目の引き上げを行った。

 1714年に金貨の品位を慶長金貨 (84~87%)にまで引き上げる改鋳が行われ、元禄・宝永小判二両に相当する品位84%の正徳小判を発行した。しかし、正徳小判の品位は慶長小判に劣るとの風評が立ち、翌年にはさらに品位を若干高める改鋳を行い、後期の慶長小判と同品位の享保小判(品位87%)を発行したのである。

 新井白石は長崎貿易についても統制令を出して貿易総額を規制し、また、銅の輸出にも歯止めをかけようとした。加えてこれまでの必需品としての輸入商品であった綿布、生糸、砂糖などの国産化を推進した。

 元禄文化に象徴される華美・贅沢な風潮を改め、幕府も徹底的な倹約に努めた。しかし、幕府による財政支出の減少や武士層の消費が大きく減退し、現在で言うところの公共投資と個人消費が減少した。さらに金銀貨の流通量の減少傾向が強まり、物価は大きく下落し、日本経済は再び深刻なデフレ経済に陥ったのである。特に幕藩体制を支えていた米価の下落は農民や武士の生活に深刻な影響を及ぼした。経済の安定のためには物価をコントロールする必要性があるものの、その難しさというものも荻原重秀と新井白石の政策の影響から伺えよう。

 宗家紀州徳川家から八代将軍に就任した徳川吉宗は、新井白石を解任するなど人事の一新を図る。そして享保の改革を通じて、危機的状況にあった幕府財政の建て直しのため、倹約による財政緊縮を重視しデフレ政策を実施した。これにより物価はさらに下落し、特に米の価格下落が激しくなる。このため、吉宗は米価対策を打ち出したものの、商人による米の買い上げなどの政策も功を奏さず、その結果、インフレ策として金銀貨の改鋳による通貨供給量の拡大を計ることとなった。

 ただし、改鋳に当たってこれまでのように出目といわれる改鋳による差益獲得の狙いはせず、新貨幣の流通を主眼に置いた。すなわち、元文小判の金の含有量は享保小判に比べて半分程度に引き下げられたが、新旧貨幣の交換に際しては旧小判1両=新小判1.65両というかたちで増歩交換を行った。しかも新古金銀は1対1の等価通用としたことで、この結果新金貨に交換したほうが有利となり、新金貨との交換が急速に進み、貨幣流通量は改鋳前との比較において 約40%増大した。貨幣供給量の増加により物価は大きく上昇し、深刻なデフレ経済から脱却し適度のインフレ効果を生み出したのである。

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by nihonkokusai | 2012-11-05 09:34 | 金融の歴史 | Comments(0)

円安要因が増加、長期金利にも影響か

 ここにきて円安となる要因がいくつか出てきている。ユーロ円でみると7月24日あたりから、円はユーロに対してじり安となっている。ドル円は2日に80円60銭台をつけ、こちらは9月末あたりから円がドルに対して下落傾向となっている。

 この円安にはいくつかの要因がある。まず外部要因としては、欧州の債務危機が一服していること。ギリシャやスペインの先行きについては、いまだ不安要因が残り、ギリシャのユーロ離脱シナリオが完全に後退したわけではない。しかし、ここにきて不安感が後退しつつあることは確かで、それを顕著に示すものとしてイタリアやポルトガル、スペインの長期金利の低下がある。特にイタリアでは個人向けの国債入札で過去最高の発行額を記録するなど、国内資金による国債買いも見えてきている。

 つまり、リスクオフの反動による円売り圧力が強まってきている。それが特に対ユーロにおいて顕著となっている。そして円はドルに対しても売り圧力を強めている。米企業の業績への不透明感や財政の崖なども意識されてはいるものの、それでもドル円は80円台を回復しており、このまま円安ドル高の流れが強まる可能性もチャートなどからは感じられる。

 この円売りについては、海外勢による国内債の売買状況などにも現れている。特に短期債については大口の買い手として存在感を強めていた海外投資家が今後、円債の購入ペースを縮小する、もしくは売却に転じる可能性がある。

 そして、この円安には内部要因も存在する。これには大手輸出メーカーの業績不振も影響していよう。パナソニックは31日に、2013年3月期連結決算の業績予想を下方修正し、最終損益が7650億円の赤字(従来予想は500億円の黒字)になる見通しを発表した。世界的な景気減速による影響、海外勢との競争が激しい薄型テレビや携帯電話などデジタル家電の低迷が際立った。

 シャープが1日に発表した9月の中間連結決算は、最終損益が3875億円の赤字決算となった。従来予想よりも大幅に悪化した。こちらも液晶テレビなどの販売が不振であった。

 家電メーカーだけでなく、自動車メーカーも業績が悪化している。トヨタ自動車の10月に中国で販売した新車の台数は、日中関係の緊張で去年の同じ月に比べておよそ44パーセントも減少した。またグループ企業も中国で日本車の販売が落ち込みなどから、相次いで2013年3月期の連結業績予想を下方修正している。また、ホンダも今年度の中国での販売目標を引き下げている。

 日本を代表する輸出企業の業績の落ち込みは円安の動きを強めることになる。9月の貿易赤字は5586億円となり、3か月連続の赤字となっている。このままいくと経常収支の黒字がかなり減少する可能性もある。

 さらに日銀は10月30日の金融政策決定会合で、異例とも言える2か月連続の追加緩和を決定した。政府との共同文書も公表するなど、デフレ脱却に向けての前傾姿勢をさらに強めてきている。これも円安要因となりうる。

 今後はこの円安の行方をしっかりミ見定めておく必要があり、円安が進めば債券市場では海外投資家からの売りの懸念も強まり、長期金利は上昇圧力を徐々に強める可能性もある。日銀による追加緩和による円債への影響はほとんどなかった。むしろ今回の日銀の追加緩和が円安・株高を意識したものと認識されると、債券には売り要因ともなりうる。すでに金利の低下余地も限られている中にあり、当面は方向感に乏しく小動きとなることが予想されるが、もし今後長期金利に動きが出るとするならば、上昇方向となる可能性がある。

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by nihonkokusai | 2012-11-04 08:22 | 債券市場 | Comments(0)

政府と日銀の共同文書はアコードなのか

 10月30日の日銀の追加緩和での最大のサプライズは、政府と日銀の共同文書であった。この共同文書作成への内幕に関して、11月1日付けの日経新聞に「幻に終わった政府提案 共同文書、日銀との攻防」との記事があり、これも参考に今回の共同文書の意味を考えてみたい。

 30日の総裁会見で、この共同文書がアコードであるかとの質問が記者からあり、それについて白川総裁は次のように答えている(日銀サイトの総裁会見要旨より)。

 「アコードの定義は定かではありませんが、いわゆるアコードとしてよく知られているのは、中央銀行の独立性に対する意識が高まる中、円滑な戦費調達のためにFRBが行ってきた国債金利上限維持政策の終了を宣言するため、1951年に米国財務省とFRBが公表した共同声明文です。要するに、FRBの独立性を回復した共同声明文がいわゆるアコードです。」

 これについてもう少し説明すると、第二次世界大戦後、国債の利払いコストを抑えさらに利上げによる国債価格の下落を回避しようとしたアメリカの財務省と、インフレ抑制のために金融引き締めを主張するFRBとの対立が激化した。このため1951年にトルーマン大統領の調停により、財務省とFRBとの間で「アコード」が成立し、国債管理政策と金融政策が「分離」され、これによって低金利政策は廃止され、FRBは政府からの「独立性」を強めたのである(拙著「マネーの歴史(世界史編)」より)。
「マネーの歴史(世界史編)」
キンドルストアー


 白川総裁のアコードに対する発言は、あくまで米国で歴史上行われたアコードと今回の共同文書は異なることを指摘している。ところが、前原経済財政相を含めて民主党の議員からは政府と日銀の「アコード」を求める声が以前から強かった。これは米国のアコードの意味合いではない。これについては日銀出身で民主党の大塚耕平議員が、マクロ経済運営で中央銀行当局と財政当局間で共通価値観、何らかのアコードはあり得ると述べており、「共通価値観」という意味合いでのアコードとして使ってきたようである。その意味では今回の共同文書は日本流のアコードと言っても良いものであろう。

 共同文書の内容そのものには目新しいものはない。これで何かしら日銀への拘束力が強まったわけでもない。しかし、証文ではないがこのような文書が日銀と政府の連名で出されたことには大きな意味がある。そのあたり、この文書を巡っての攻防が日経の記事に書かれており、それからもこの重要性が理解できる。

 記事には三者が合意に至るまで水面下では激しい綱引きが繰り広げられたとある。この三者とは共同文書に署名のあった前原経済財政相と白川総裁、そして城島光力財務相である。

 前原氏は「日銀の外債購入とアコードを実現するための検討」を職員に指示したが、外債購入は財務省の猛反対で早々に見送りが決まったとある。「城島財務相にしてみれば所管する外国為替特別会計の領空侵犯につながりかねない。」(日経新聞)。

 前原氏は、物価上昇率を前年比1%にする時期を明記した協定を目指したが、財務省はこれにも強く抵抗したとされる。結局時期は示さず「早期」という表現にぼかした(日経新聞)。

 消費増税へデフレ脱却を狙う「首相」は文書を了承し、政府は先週後半、白川総裁に提案した(日経新聞)。このあたり追加緩和の内容(10兆円の資産買入の増加額など)は事前に報じられていたものの、共同文書についてはまったく表に出なかったことも興味深い。そして白川総裁は1日悩み抜いた末、「『お互いの自主責任という形ならよい』と土俵に乗った」(日経新聞)。

 前原氏は、もし日銀が共同文書を受け入れなかった場合、決定会合で政府側から共同文書を作成する議案を提出することも検討していた(日経新聞)。そこまで準備していたのは驚きであった。政府は新日銀法で議決延期請求権とともに、議案を提出することが認められている。2000年8月の決定会合で、政府は議決延期請求権を行使したことはあるが、過去に独自の議案提出は例がない。

 30日に発表された共同文書は特に目新しい内容ではなく紙切れ一枚である。しかし、その紙切れが重要な意味を持ってくる。日銀はこれでデフレ脱却に向けた努力がさらに求められることになろう。その結果が数値として現れるまで、日銀は積極的に緩和策を講じなければならなくなる。今年に入り、日銀の金融政策は2月の物価の目途の設定などで大きく変わった。今回の共同文書も日銀の変化の現れと捉えておく必要があると思われる。今回の共同文書は明らかに政府と日銀の新たなアコードであろう。ただし、これがどのような結果を招くのかも、しっかり見守って行く必要がある。

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by nihonkokusai | 2012-11-02 09:35 | 日銀 | Comments(0)

アナウンスメント効果狙いの日銀と市場への影響

 日銀は31日の金融政策決定会合で、追加緩和策を決定した。まず資産買入等基金の規模を11兆円増額する。内訳は長期国債が5兆円(2013年6月末までに+2.5%、2013年12月末までにさらに+2.5兆円)、短期国債が5兆円(2013年6月末から12月末まで+5兆円)、リスク資産が1兆円程度となる。リスク資産はETFが5000億円(2013年12月末まで)、REITが100億円(同)、社債が3000億円(同)、コマーシャルペーパーが1000億円程度(同)。

 これは長期国債と短期国債で10兆円、そこにリスク資産の増額も加わるとの事前に報じられていた予想とほぼ一致する。市場ではここに何がプラスアルファされるかが、ひとつの注目点となっていた。

 そこで取られた手段のひとつが、貸し出し増加を支援する無制限の資金供給の枠組み創設であった。貸出支援基金と名付けられた資金供給の総額の上限は設定せずに「無制限」とし、貸付金利は貸付実行時の誘導目標金利(現在は0.1%)による長期固定金利で、貸付期間は最長4年までロールオーバー可能。

 これは既存の成長基盤強化の資金供給の進化バージョンとみられ、それほど新鮮味のあるものではない。ただし「無制限」というところが注目ポイントになる。ECBやFRBの追加緩和でも「無制限」との表現が意識されており、日銀としても緩和策の中この言葉を組み入れたかったのではないかと思われる。

 そして今回の追加緩和の大きなポイントとなりそうなのが、「デフレ脱却に向けた取組について」と題された政府と日銀の共同文書である。政府と日銀が一体となってデフレ脱却に向けて最大限の努力を行うとしているが、「一体」となってとの表現がアコードを意識させる。

 ただし、このアコードというのは、本来の意味のアコードではない。1951年に米財務省とFRBとの間でのアコードにより、国債管理政策と金融政策が「分離」され、これによって低金利政策は廃止され、FRBは政府からの「独立性」を強めた。これが金融市場でアコードと呼ばれたものである。

 今回の共同文書はアコードではないと白川総裁が会見で語ったようだが、たとえば日銀出身の民主党の大塚耕平議員は、マクロ経済運営で中央銀行当局と財政当局間で共通価値観、何らかのアコードはあり得ると述べており、米国流のアコードではなく、共通認識という意味合いでのアコードのようなものとなった。

 今回の共同文書では、今後の物価動向について「デフレ脱却等経済状況検討会議」において定期的に報告するとの表現もある。政治家の一部からはイングランド銀行方式のインフレターゲットを求める声も出ていたが、そのイングランド銀行ではインフレ目標値から1ポイント以上乖離した際に総裁が、金融政策委員会の議長として財務相あて公開書簡を作成しなければならないとされている。

 今回の日銀の金融政策については、経済対策を打ち出した政府からの意向が強く働いていたことが伺える。IMFのラガルド専務理事が「日銀はさらなる金融政策に踏み切る準備ができると確信している」と述べたことも影響していた可能性もある。それが結果として異例ともいえる2か月連続の追加緩和策となった。さらに無制限の資金供給(実際には限度はあるが)も加えた上、今後も政府の意向が強く反映される可能性のある共同文書まで出してきた。

 これは日銀としても今年2月の物価の目途の設定と同様に、大きな政策変更であると言って良いのではなかろうか。すでにいろいろなところで今回の追加緩和の効果について論じられているが、実質的な効果よりも、今回は日銀がデフレ脱却という目的に向けてさらに一歩踏み出したことに注目すべきか。そこには財政ファイナンスが意識される懸念などの将来のリスクも存在するが、よりアナウンスメント効果も意識して日銀は踏み込んだ。

 展望レポートでは、2014年のコアCPIの見通しが0.8%となった(消費税率引き上げの影響を除く)。実質的な物価目標の1%を設定した以上は、それに向けての政策を取らざるを得ない。それには日銀が単独でできるものではないことで、政府との共同文章の発表という格好になったともみられる。

 今年2月の日銀による物価の目途の発表で、為替市場は円安で反応した。円安株高がデフレ脱却の道ではないものの、日銀の政策変更によるアナウンスメント効果により円安とそれによる株安修正の動きが強まれば、市場のマインドも好転しよう。これが中央銀行としての適切な金融政策かどうかは判断も分かれるかもしれないが、個人的には特に為替や株式市場に対して、それなりの効果は見込めるのではないかと思う。

 ただし、日銀が危険に領域に踏み出しつつあるところに、今後の注意が必要であるのも確かであろう。その意味では債券相場については緩和効果そのものよりも、円安株高の動きや、将来の物価上昇、日銀の財政ファイナンスへのリスク等を意識すると、特により期間の長い債券には買い要因とはならなくなるものと予想される。

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by nihonkokusai | 2012-11-01 09:40 | 日銀 | Comments(0)
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