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日銀による国債引受が禁じられている理由

 自民党の安倍総裁は11月17日に、熊本市内で講演し、衆院選後に政権を獲得した場合、金融緩和を強化するための日銀法改正を検討する考えを重ねて表明した。「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう。新しいマネーが強制的に市場に出ていく」と述べ、日銀が建設国債を全額引き受けるのが望ましいとの考えを表明した(日経新聞)。

 日銀による国債の引受けは、財政法第5条によって原則として禁止されている(国債の市中消化の原則)。

 財政法第5条:すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。

 中央銀行が、いったん国債の引受などにより政府への資金の供与を始めてしまうと、その国の政府の財政規律を失わせ、通貨の増発に歯止めが効かなくなり、将来において悪性のインフレを招く恐れが高まる。それにより日本に対する国内外からの信認も失われ、格付け会社による日本国債の格下げも行われよう。国債への信認低下により日本の長期金利は大きく上昇し、これは日銀の金融政策などにより抑えられるものではなくなる。

 中央銀行による国債引受は麻薬に例えられることがある。いったん踏み入れてしまうと常用することになり、元には戻れず最後に身を滅ぼすことになる。先進主要国が中央銀行による政府への信用供与を厳しく制限しているのは、こうした考え方に基づくものである。

 たとえば、米国では連邦準備法により連邦準備銀行は国債を市場から購入する(引受は行わない)ことが定められている。また、1951年のFRBと財務省との間での合意(いわゆるアコード)により、連邦準備銀行は国債の「市中消化を助けるため」の国債買いオペは行わないことになっている。しかし、FRBは2009年3月から3000億ドル分の長期国債の買入れを行ない、同年10月には6000億ドルの追加購入を決定したが、これらは財政ファイナンスが目的ではない。

 また、欧州では1993年に発効した「マーストリヒト条約」およびこれに基づく「欧州中央銀行法」により、当該国が中央銀行による対政府与信を禁止する規定を置くことが、単一通貨制度と欧州中央銀行への加盟条件の一つとなっている。つまり、ドイツやフランスなどユーロ加盟国もマーストリヒト条約により、中央銀行による国債の直接引受を行うことは禁止されている。ECBは2010年5月より国債の買入れを行っているが、国債市場の安定化や市場機能の正常化を目的とした市場からの買入れである。

 イギリスではイングランド銀行による国債の引受は明示的には禁止されておらず、以前にはイングランド銀行による国債の直接引き受けが行われていた例はあるが、現在、直接引き受けは行われていない。イングランド銀行も2009年3月から国債買入を行ったが、その目的は中期的なインフレ率目標を達成するために、マネーと信用の供給量拡大をはかるためであり、やはり財政ファイナンスが目的ではない。

 日本を含めて主要先進国では中央銀行による国債引受は禁じられていることを示したが、日銀については国債引受には例外が存在している。このため、日銀はすでに国債引受を行っており、日銀による国債の直接引き受けは問題ないと論じる向きもいる。

 たしかに日銀による国債引受については例外があるが、これは財政ファイナンスを目的としたものではない。日銀保有の国債償還分の1年間に限って現金償還を延長するのも、60年償還ルールに基づいた借換債の発行増による市中への影響を軽減させるなどの目的もあるものとみられる。さらに、FBについては「予期せざる資金需要」が発生した場合などにはむしろ短期的な措置としては必要なものであろう。それぞれ、あくまで短期的な措置である。

 もし、日銀が財政ファイナンスを目的とした国債引受を行うとなれば、その時点で市場参加者による国債への信用が失われよう。当然ながら長期金利にもその影響は及ぶであろう。そして、その歯止めが効かないと認識されると、歴史上何度も繰り返されたような悲惨な事態が起こりうる。それだけは絶対に避けなければならない。

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by nihonkokusai | 2012-11-18 09:21 | 国債 | Comments(2)

高橋是清の事例と本来学ぶべき事

 1929年7月に金輸出解禁の方針を掲げた浜口内閣が成立し、緊縮財政への転換と国民への倹約の呼びかけを行い、井上準之助蔵相が主導し1930年1月に旧平価により金輸出を解禁した。この金解禁により金本位制に復帰した日本は、旧平価に対し円がとくに弱かった時期に金本位制への復帰が発表されたため、物価と輸出が急速に低下し、大量の金が輸出解禁とともに海外に流出した。アメリカから始まった世界恐慌の影響も受けて国際収支も悪化し、日本の景気は急速に悪化し、昭和恐慌と呼ばれる深刻なデフレ不況に陥った。これに対して石橋湛山や高橋亀吉らの経済学者たちは、井上準之助蔵相の財政政策を批判し、インフレ誘導によるデフレ不況克服を訴えた。

 1931年9月にイギリスが金本位制を離脱、同年12月の犬養内閣の成立にともなって高橋是清が蔵相に就任すると、直ちに事実上のリフレ政策を断行した。金輸出が再禁止され、1932年1月には「銀行券の金貨兌換停止に関する勅令」の公布施行により、金兌換が停止され、日本は金本位体制から離脱し、日本銀行券の兌換も原則として停止された。1941年の日華事変の拡大とともに増大する戦費調達のため、兌換銀行券条例臨時特例法が制定され、翌年に新たに制定された日本銀行法により法律上も兌換義務がなくなった。

 高橋是清は首相や蔵相を歴任し、積極財政によって当時の日本の経済を立て直してきた。1931年再び81歳で蔵相となった高橋是清は日銀引受の国債を発行する。それによって得た資金で政府が物資を買うことなどにより経済の状況が回復し、物価も少しずつ上昇した。政府は日銀が引受けた国債を市中に売却することで余剰な資金を回収するという巧みな政策を実施してきた。

 この積極財政の仕組みは、成功するかに見えたが、軍部予算の急膨張によってバランスを失う。すでにインフレの兆候も出てきたこともあり、1936年の予算編成で高橋蔵相は公債漸減方針を強調した。

 しかし、健全財政を堅持しようとする大蔵省と軍部との対立が頂点に達したことにより、軍事費の膨張を抑制しようとした高橋是清は二・二六事件により凶弾に倒れたのである。

 高橋是清による日銀の国債引受などの手段は、景気を回復させ物価を上昇させたことは確かであり、だからこそ高橋是清に習い積極的なリフレ政策を取るべきとの意見がある。しかし、高橋是清は非常に危険な綱渡りを行っていた。それが結果として二・二六事件の結果へと繋がる。

 高橋是清はこんな言葉を残している。

 「多額の公債が発行されたにもかかわらず、いまだ弊害が表れずかえって金利の低下や景気回復に資せるところが少ないので、世間の一部にはどしどし公債を発行すべしと論じるもがあるが、これは欧州大戦後の各国の高価なる経験を無視するものである」

 「公債が一般金融機関等に消化されず日本銀行背負い込みとなるようなことがあれば、明らかに公債政策の行き詰まりであって悪性インフレーションの弊害が表れ、国民の生産力も消費力も共に減退し生活不安の状態を現出するであろう」

 高橋是清による日銀による国債引き受けは、国債市場が整備されていない当時、いったん日銀が引受けるが、それを銀行に売却するという手段を講じ、国債消化をスムーズにさせることで財政政策を行いやすくしたわけではある。しかし、日銀による国債引き受けというパンドラの箱を開けてしまったことは確かである。

 高橋蔵相はそれでもデフレが解消し景気回復が達成できれば、国債発行を抑制するなど自らコントロールすることが可能と認識していたのかもしれない。しかし、いったん開いたパンドラの箱は閉じることはできなくなることを、自らが暗殺されてしまったことにより、歴史に示したといえる。

 二二六事件による高橋蔵相暗殺後、国債発行と日銀引き受けのコントロールが効かなくなり、本格的な国債の日本銀行背負い込みが始まる。それは結果的に高橋蔵相が危惧していた悪性インフレーションを招くことになり、太平洋戦争による直接的な被害以上の損害を日本経済に与えることになる。

 これだけ事情を把握していた高橋是清にすら、国債発行と日銀引き受けのコントロールが最終的にはできなかったものを、現在の政治家がうまくできるとは思えない。ましてやその物価上昇に対して、日銀がインフレターゲットを採用すれば押さえ込めるとの発想は、まったく現実的ではない。

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by nihonkokusai | 2012-11-17 08:51 | 日銀 | Comments(0)

リフレ政権へのリスク

 2013年は日本にとって変化の年になる可能性がある。ひとつは12月16日の衆院総選挙によって政権が変わるであろうことによる影響である。自民党が政権を奪還するのではとの見方が強いようであるが、ここに大きな懸念材料が存在する。

 自民党の安倍総裁は政権奪還後、政府と日銀はアコードを結び、インフレターゲットを設定する。目標達成までは無制限な対応を行い、もし政策目標達成できなければ、日銀には説明責任を求めるとしている。さらに日銀法改正も視野に入れている旨を示唆している。

 11月15日には都内の日本商工会議所の岡村正会頭らとの懇談会で、日銀の金融政策に関して「政権をとった暁には日銀と政策協調を行い、大胆な金融緩和を行っていくことを約束する」と語ったそうである。たしか金融政策を決定するのは自民総裁ではなく日銀総裁を含めた政策委員ではなかったろうか。勝手に約束などして良いものなのか。

 さらに日銀が10月30日の金融政策決定会合で決定した2か月連続の金融緩和について「市場が織り込み済みになってしまう緩和だ」と指摘。この言葉の意味が良くわからない。緩和を行えば、それを市場は織り込みに行くと思うのだが。

その上で「基本的には2%、3%のインフレ目標を設定して、それに向かっては無制限に緩和していく(ことが必要)」と述べたそうである(日経電子版)。

 自民党が政権を奪還するかどうか不透明ながら、もし安倍総裁が首相になれば、これらの発言を実行に移してくる可能性がある。いわばリフレと呼ばれるような政策である。日銀はすでにかなり踏み込んだ政策を行っているが、政策協調とかで政府による圧力が加わり、ましてや日銀法改正まで視野というのであれば、さらにアクセルを踏まざるを得なくなる。そもそも日銀の独立性が脅かされる事態にもなりかねない。

 今後は国債の買入等のさらなる増額なども予想され、市場ではこの政府の圧力や、アコード、さらには日銀法改正の動きに対し、財政ファイナンスと認識してくる可能性もありうる。それでなくても多額の債務を政府は抱えている状況では、このような積極的な日銀による国債購入は後戻りすることが困難になる恐れがある。

 2013年はさらに注意すべきことがある。白川日銀総裁の任期は2013年4月8日、その前に山口副総裁と西村副総裁の任期は2013年3月19日となっていることである。

 白川総裁の任期は来年4月となるが(再任の可能性はある)、それまでに衆院選が行われ、安倍氏自らが首相になった場合の次期総裁人事について、「わが党が政権を取っていればの話だが、当然、政府と協調してデフレ脱却のために思い切った大胆な金融緩和を行ってもらえる方」が望ましいと述べていた。

 もし仮に安倍総裁が首相となった場合には、白川総裁の再任の可能性はなくなるとともに、たとえば山口副総裁や西村副総裁の総裁昇格といった可能性もなくなるとみられる。そうなれば新たな総裁・副総裁はすべて「思い切った緩和を行っていくべき」人物に置き換わるということになる可能性がある。

 11月14日に衆院の解散総選挙の日程が具体的に示されてから、円安の動きが強まっているが、これは安倍政権を意識して安倍シフトを敷いたことによる動きとされた。その背景にあるのはデフレ脱却への期待なのであろうか。それよりも、そこに潜むリスクを意識した動きなのではなかろうか。これは決して債券市場というか国債市場にとり、好ましい状況ではないはずである。

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by nihonkokusai | 2012-11-16 09:09 | 日銀 | Comments(0)

需給ギャップの意味

 11月12日の白川日銀総裁の講演内容は、これまでの日銀批判に対する日銀総裁としての回答を示している点が興味深い。今回は「需給ギャップの意味」について見てみたい。

 「内閣府の試算によると、足もとの需給ギャップは、GDPの2%程度、実額の年率換算で約10兆円とされています。日本銀行による試算もほぼ同様です。」

 需給ギャップ(GDPギャップ)とは、経済全体の供給力(潜在GDP)と現実の需要(実質GDP)との間の乖離のことであり、一般に「需要不足額」として認識されている。需給ギャップ(%)は次のような式で算出される。

需給ギャップ(%)=(実質GDP-潜在GDP)/潜在GDP×100

 理論上、中央銀行は金融政策によってこの需給ギャップに影響を与えることで、インフレ率を望ましい水準に誘導していくことが可能であるとの考え方がある。

「中央銀行は金融政策により名目金利を調整することで、実質金利ギャップ(景気中立的な実質金利(自然利子率)と実際の実質金利の幅)に影響を与え、これが財市場を通してGDPギャップを縮小させ、物価を安定させる。この関係を定式化したのが、テーラー型ルールである。」(「デフレからの脱却の見通し」財政金融委員会調査室 鈴木克洋氏の資料より)

 このため、これを埋めるだけの需要を政策的に行えばば、ギャップが直ちに解消してデフレから脱却できるはずだ、という議論がある。これに対して白川総裁は次のような発言をしている。

 「確かに、需要不足が純粋に一時的なものである場合には、そうした議論に妥当性はありますが、注意しなければならないのは、需給ギャップというのは、あくまで現存する供給構造を前提に、それらに対応する需要不足を捉えたものに過ぎない、という点です。」

 白川総裁は、高齢化や女性の社会進出、価値観の多様化などによって、新しいタイプの需要が潜在的に生まれていると考えられる、としている。

 「変化の激しい経済にあっては、需給ギャップは、既存の財・サービス供給に対する需要不足のみを捉え、新たな潜在需要に対する供給不足を捉えていないという意味で、非対称な概念となっています。言い換えると、本来「需給のミスマッチ」と認識すべき部分まで、「需要不足」という形で示されているということです」

 そして、持続的に需給ギャップを改善していくためには、潜在需要を顕在化させるように、経済の変化に合わせて供給構造を作り変えていくことが必要と指摘している。さらに掘り起こされた需要は、人々が自発的に求めていた需要のため、その後も支出増加と収益・所得増加の好循環につながると指摘している。

 ただ闇雲に数字合わせのようにGDPギャップに見合う政策を行っても、それにより潜在需要を掘り起こせるのかという指摘は正しいと思う。GDPギャップそのものが様々な前提を置いて算出されることとなるため、不確実性を伴っている点にも注意すべきである。少なくとも足りないのは単純に10兆円といった資金ではなく、景気回復や雇用促進のためのアイデアでもあることを総裁は指摘しているようにも思われる。

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by nihonkokusai | 2012-11-15 09:24 | 日銀 | Comments(0)

あらためて、デフレ脱却とは何か

 11月12日の白川日銀総裁による講演「物価安定のもとでの持続的成長に向けて」の中で、そもそも「デフレ脱却」とは何かについて述べている。

 「一般にデフレとは物価の持続的な下落のことを指しています。したがって、デフレからの脱却とは、その反対解釈から、物価の下落が止まる、あるいはごく緩やかに上昇する状況になることを意味します。」(白川総裁)

 白川総裁は日銀の「生活意識に関するアンケート調査」結果を引き合いに出し、物価の上昇について8割強が「どちらかと言えば困ったことだ」と回答しているのに対し、物価の下落については「どちらかと言えば好ましい」という回答が3分の1程度を占めている点を指摘した。

 デフレ脱却の必要性については、何げにそうかなと思いながらも、もし賃金が上昇せずに物価だけが上昇すれば困るのは確かである。デフレが物価の下落だけを意味していると見なせば、デフレ脱却、つまり物価の上昇について国民は好ましくないとしている。

 「単に物価が上がりさえすれば良いということではなく、企業収益や雇用の増加、賃金の上昇など、経済そのものが全般的に改善し、その結果が物価の緩やかな上昇として現れる状況を目指しています」(白川総裁)。

 日銀もデフレ脱却を目指してはいるが、それは単純に物価の上昇ではないということであろう。しかし、これについては物価が上昇しさえすれば、景気も付いてくるとの見方もある。

 「デフレ脱却には経済成長が必要という議論に対しては、経済を好転させるためには、まずインフレ予想を高めることが必要であり、そしてそれが中央銀行の仕事ではないか、という議論も聞かれます。」と総裁は指摘している。

 「民間経済主体の予想インフレ率が上昇すれば、名目金利から予想インフレ率を差し引いた実質金利が低下し、それが景気刺激につながるというメカニズムが想定されています。しかし、物価も賃金も上がらないという状況が長く続いた経済においては、いきなり人々のインフレ予想だけが先行して高まる、あるいは高められると考えるのは現実的でありません。」(白川総裁)。

 この予想インフレ率とか期待インフレ率というのが、やっかいなものである。これを的確に計る術はない。物価連動債などから機械的に導き出されるものは、あくまで市場参加者によるものでそこには物価とは関係のない個別債券の需給要因等も影響する。国民全体の期待や予想を知るのはかなり困難なはずである(それがわかれば政治家も苦労はしない)。

 「消費者が物価は上がるものではないという物価観を背景に、企業の値上げを受け容れないため、企業でも賃金を含めてコストを抑制する動きが続き、デフレからの脱却に時間がかかっているという面もあるように思います。」(白川総裁)。

 つまりはデフレのひとつの要因に、その状態に慣らされてしまい「物価の上昇は許容できない」という感覚が広く定着しているという状況があるとしている。たしかに消費者物価指数(除く生鮮)の前年比は1994年あたりからほぼ1%を割り込む状況が続いている。物価の低位安定にすっかり慣らされてしまっている。

 国民の物価観によれば、物価が上がることへの恐怖心も強い。それが景気回復や賃金上昇も伴うものであるとの確信がないとなかなか容認しづらい。デフレ脱却を目指すのであれば、物価上昇が好ましい状況に導かれるとの期待を抱かせる必要がある。それは単純に物価を上げれば何とかなるものではないと思われる。

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by nihonkokusai | 2012-11-14 09:15 | 日銀 | Comments(0)

過去の消費増税のタイミングと金利への影響

 消費増税による金利への影響を見るには、過去の消費税引き上げの際の状況も確認する必要がある。今回は日本における消費税の歴史から振り返ってみたい。

 1979年9月の大平総理の所信表明において、特例国債を含めた国債の本格的な償還が始まる1985年を控えた1984年までに、特例国債依存体質から脱却するための目標が明らかにされた。この財政再建のために一般消費税の導入が図られ、10月の総選挙で国民に問われることとなったが、国民の反発は強く自民党は大敗した(拙著「マネーの日本史」より)。

 その後、1986年の中曽根政権の際にも、赤字財政を解決するために、税制を是正しようとの動きがあった。売上税法構想であるが、これは世論の反発等もあり、導入は失敗に終わる。

 1980年代のバブルの波に乗り、民間消費や民間設備投資に主導された経済成長が持続した。このため申告所得税、源泉所得税、法人税、そして有価証券取引税などを中心に税収は伸び、この時期、一般歳出は抑制され続け財政再建策が取られていたことで、財政状況は大きく改善した。

 1988年の竹下政権時に消費税法が成立し、1989年4月からは、所得税や法人税などの大規模な減税と引き換えに消費税が導入された。この結果、1990年度には特例国債依存から脱却するまでになった。1990年度から1993年度まで特例国債の発行停止が続いたのである。

 消費税導入後の1989年5月に日銀は公定歩合を3.25%に、さらに10月には3.75%に、12月には4.25%と引き上げ、完全に金融引締策へと転向した。これは消費税の導入の影響ではなく景気の過熱感というかバブルへの対処であった。日経平均株価は、1989年の大納会の大引けで3万8915円を付け、これが最高値となってバブルは崩壊する。

 このように1989年4月の消費増税導入の金利への影響については、バブル期という特殊事情もあり、その影響だけを見ることは難しいが、消費税導入後の短期金利は上昇し、債券相場も1989年には下落基調となっており、金利は上昇局面にあった。

  1993年8月に38年ぶりの非自民政権である細川内閣が誕生したが、1994年には細川政権で消費税を廃止し、税率を7%とするという国民福祉税構想を突然打ち出した、しかし、これは与党内からの反対もあり翌日白紙撤回した。

 1995年11月に武村大蔵大臣は財政危機宣言を行った。1996年度の国債発行額が22兆円近くに迫り、税収の約半分にも達する見込みとなったためである。

 1997年4月に、減税の財源として消費税の5%への引き上げが実施された。財政構造改革と、この消費税の導入がその後の景気後退の要因とも指摘されたが、実際にはバブルの後遺症ともいえる不良債権処理の遅れがその大きな要因となった。

 1997年7月に日本の長期金利は初めて2%を割り込む。7月には企業の破綻が相次ぎ、11月に入ると金融システム不安が一気に表面化し、三洋証券が会社更正法適用を申請、北海道拓殖銀行が経営破綻し北洋銀行への営業譲渡を発表。さらに証券大手の山一證券が自主廃業を届け出、徳陽シティ銀行が分割譲渡と金融機関が相次いで破綻したのである。

 このように1997年4月の消費税の引き上げの影響についても、バブル崩壊後の金融システム不安などによる影響もあり、その影響だけを判別することは難しい。長期金利の動向だけみれば、消費税導入以降は上昇基調となり、そして5%への消費税の引き上げ以降は歴史的な水準にまで長期金利は低下した。たしかに消費増税のタイミングは金利にとっても何か大きな変革期であったことは確かである。

 今後の予定としては、2014年4月1日に消費税は5%から8%に引き上げられる予定であり、2015年10月1日には10%に引き上げる予定となっている。このタイミングで金利の方向性への影響があるような何かしら大きな出来事が起きている可能性があるのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2012-11-13 09:03 | 債券市場 | Comments(0)

日本で超低金利が続いた理由

 日本は現代における超低金利の国のまさに先駆者である。日本の金利はずいぶん長らく低い状態が続いてきた。そのひとつの起点になるのが、1999年2月の日銀の「ゼロ金利政策」である。

 ゼロ金利政策とは、日銀が金融政策のために誘導する金利をゼロ近くに押さえるという政策である。日銀の金融政策では、非常に期間の短い金利を操作する。昔は公定歩合を操作していたが、いまは無担保コール翌日物という短期の金利を操作している。とにかく、日銀はたいへん短い期間の金利をゼロに近づけることを1999年2月に決めたのである。

 1999年2月のゼロ金利政策は、1998年12月に起きた日本国債の急落がひとつの要因とされている。つまり長期金利の上昇抑制のためにゼロ金利政策を行ったともいえる。しかし、その背景には1990年以降のバブル崩壊後の金融経済ショックがあったのである。

 1990年以降のバブル崩壊により、不良債権を抱えた銀行への不安は強まり実際に大手銀行や大手証券の一部も破綻した。金融危機により経済活動は低迷し、その結果、デフレと呼ばれる状況が続いた。

 日銀は政策金利を引き下げ、政府は経済対策を打ち出すがその効果は限られた。政府による度重なる経済対策により国債発行額は増加し、海外の格付け会社ムーディーズが日本国債の格付けを引き下げたのが1998年11月であった。ただし、日本国債の格下げは12月の日本国債の直接的な原因ではなかった。当時、国債を大量に引き受けていた大蔵省の資金運用部が国債の引受を減少するとの報道がきっかけであった。

 2000年8月に日銀はこのゼロ金利政策をいったん解除する。ところが米国景気を支えたITバブルが崩壊しデフレ懸念はさらに強まることとなり、景気はさらに悪化していった。このあたりから日銀は金融緩和から引き締めに転じようとしても、何かしらのショックが襲うようになる。

 日銀は2001年3月に金融調節目標を金利から、日銀当座預金残高という量に変更することを決定し、いわゆる量的緩和政策が実施された。つまり政策金利は再びゼロ金利近くとなり引き下げ余地がなくなり、このため政策目標を別なものに変えなければならなかったのである。

 2006年には量的緩和政策とゼロ金利政策の解除が実施され、2007年2月に政策金利である無担保コール翌時物金利の誘導目標を0.50%に引き上げたが、利上げはここまでとなった。

 2006年半ばに、それまで高騰を続けていたアメリカの住宅価格が下落に転じ、サブプライム問題が発生した。これをきっかけに2008年9月にリーマン・ショックが起き、世界的な金融経済危機が発生したのである。これで再び日銀は金融緩和に舵を切ることになった。

 2010年1月に欧州委員会がギリシャの統計上の不備を指摘したことが報道され、ギリシャの財政状況の悪化が表面化し、ギリシャ国債が急落。これをきっかけとした欧州の信用不安が世界の金融市場を震撼させた。

 2010年10月に日銀は金融緩和を一段と強力に推進するために、包括緩和策を決定したが、この政策にはゼロ金利政策も含まれていた。それ以降、政策金利は再びゼロ近辺となり、下げ余地がなくなったため、これ以降は主に資産買入基金の残高を増加させることになり、現在に至る。

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by nihonkokusai | 2012-11-12 09:15 | 日銀 | Comments(0)

2012年9月が日本の転機となった可能性も

 財務省は11月8日に9月の国際収支(速報)を発表した。これによると経常収支は前年比68.7%減の5036億円の黒字となった。貿易収支は4713億円の赤字。サービス収支も2801億円の赤字。所得収支は1兆3095億円の黒字となった。

 そして、9月の季節調整済み経常収支は1420億円の赤字となった。季節調整値が赤字となるのは1996年1月の現行統計開始以来初めてとなる。この赤字転落の主因は貿易赤字の拡大による。9月の季節調整済みの貿易赤字は9774億円となっていた。

 これには領土問題による日中貿易への影響もあるであろうが、大手電機メーカーの決算状況などを見ると、この貿易赤字が大きく縮小することも考えづらい。原発事故により原油等の輸入増なども影響している思われるが、日本の貿易構造そのものの変化もあり、今後は経常収支の赤字が定着してくる可能性がある。

 経常収支の赤字が定着すると外為市場では円安要因となる。もちろん為替は相手国があり、米国の財政の崖問題や、ユーロ圏でのギリシャやスペインの財政問題では、一時的にドルやユーロが売られ円が買われる場面もあろう。しかし、これまでのように円高傾向が定着するような環境には徐々になくなりつつあると考えられる。

 7月末あたりから円はユーロに対して下落傾向となり、ドル円については9月あたりから円安ドル高傾向となっている。

 円安の流れが定着すれば、日本の輸出企業にとり恩恵を被ろうが、電気メーカーの業績悪化は円高ばかりが原因ではない。その背景には海外メーカーとの競争力の低下などが要因とみられ、円安により業績が急回復することは考えづらい。また輸入についても原油などの輸入増は続くものと予想される。

 財政赤字が今後定着するとなれば、これは円安要因になるとともに金利に対しても上昇要因になりうる。さらに円高トレンドが反転したとなれば、今後はこれまで海外投資家が大量に購入していた中短期債主体の日本国債を売却に転じてくる可能性がある。この売却も円安要因となる。

 11月8日に発表された10月の対外及び対内証券売買契約等の状況(月次・指定報告機関ベース)によると、対内証券投資については中長期債が6081億円、そして短期債が3兆5745億円の処分超となっていた(9月が6957億円取得超)。3兆円を超える規模の短期債の処分超は2010年3月の3兆4380億円の流出以来となる。

 年内にも解散総選挙の可能性も出てきたが、新たな政権も日本のデフレ脱却を目標に掲げてくることが予想され、日銀への追加緩和圧力もさらに強まることも予想される。これも円安要因となる。今後の日本の景気悪化への懸念もあるなど、国内で見る限り、円高となる要因はあまり見当たらず、円安要因が強まりつつあるように思われる。2012年9月あたりがひとつの日本の転機となった可能性もあるため、今後の日本の経常収支などの状況には注意しておく必要がある。

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by nihonkokusai | 2012-11-11 09:07 | 国内情勢 | Comments(0)

9月は短期債の増加額が減少、10月は3兆5745億円の処分超に

 財務省は11月8日に9月の国際収支(速報)を発表した。これによると経常収支は前年比68.7%減の5036億円の黒字となった。貿易収支は4713億円の赤字に。サービス収支も2801億円の赤字。所得収支は1兆3095億円の黒字となった。また、9月の季節調整済み経常収支は1420億円の赤字となったが、季節調整値が赤字となるのは1996年1月の現行統計開始以来初めて。

 国際収支の発表には、付表として対外・対内直接投資、対外・対内証券投資も発表されている(財務省トップページ > 国際政策 > 関連資料・データ > 国際収支状況 > 報道発表資料)。このうち、9月の対外・対内証券投資を確認してみたい。

 国内から海外の国債等への投資は、主要国・地域ソブリン債への対外証券投資で確認できる。米国債への国内からの投資は、ネットで9月は1兆2621億円の増加となり、8月の5374億円増からさらに増えた。ユーロ圏の国債では、8月のドイツのソブリン債への投資が8815億円の増加とこちらも8月の4663億円増よりも増えている。フランスへは4146億円の増加、イタリアへは719億円の減少、英国は572億円の減少となっていた。

 日本の債券(主に国債)に対する海外からの投資を見てみると、9月はネットで1兆847億円の増加となり、8月の2兆2094億円増から増加額は縮小。内訳としては中長期債が4136億円、短期債が6711億円の増加となっていた。8月は中長期債が7738億円、短期債が1兆4357億円の増加となっていた。

 9月の対内証券投資の地域別内訳をみると、日本の中長期債での購入額が大きいのが、英国の6321億円増(8月は9329億円増)で、次に米国の1222億円増(8月は210億円増)。反対に中長期債での流出で多かったのは、シンガポールの887億円減、サウジアラビアの681億円減。

 日本の短期債で購入は英国の7兆5008億円増(8月は5兆2017億円増)が引き続き突出している。これに対して流出が大きいのは、ルクセンブルグの1兆9963億円減(8月は7625億円減)、フランスの1兆1776億円減(同1兆3003億円減)、国際機関9073億円減(8月は7387億円減)、米国が8688億円減(同1614億円減)、アラブ首長国連邦5789億円減(8月は3374億円減)。

 9月の海外から日本の国債を主体とする債券への8月に比べて増加額は減少した。中長期債と短期債ともに英国からの増加額が8月に比べて減少している。また、短期債ではルクセンブルグやフランスが差し引き1兆円を超える処分超となっていた。

 9月の債券相場は狭いレンジ内での動きとなり、先物は143円50銭近辺から144円20銭近辺内での方向感に乏しい動きとなっていた。外為市場ではドル円も77円から79円近辺での方向感に乏しい動きとなっていたが、ユーロ円は一時103円台に乗せるなど円安ユーロ高が進む場面があった。

 ちなみに11月8日に発表された10月の対外及び対内証券売買契約等の状況(月次・指定報告機関ベース)によると、対内証券投資については中長期債が6081億円(9月が4522億円)、短期債が3兆5745億円の処分超となっていた(9月が6957億円取得超)。3兆円を超える規模の短期債の処分超は2010年3月の3兆4380億円の流出以来となる。これは円安を受けて海外投資家による売りが入ったものと思われる。

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by nihonkokusai | 2012-11-09 09:37 | 債券市場 | Comments(0)

歴史上2%割れの長期金利は極めて希、ところが今は至る所で

 長期金利については、どの水準が低金利となるのか、具体的な目安があるわけではないが、過去の歴史を振り返るとそれはどうやら、2%がひとつの節目となっている。

 しかし、歴史を振り返ると長期金利の2%割れのケースはこれまではわずかしかなかった。そのひとつが日本である。日本の長期金利は1997年8月27日に現物指標銘柄が初めて2%を割り込み、その後、1999年に2.440%まで上昇した。それ以降は2006年に2.005%をワンタッチしたものの、それ以外は現在に至るまで2%を上回ったことがない。2003年6月11日には0.430%まで低下し、世界記録を作っている。

 過去の歴史において、長期金利が2%割れとなった他のケースを確認してみたい。最も古い記録は、1611年から21年間2%以下の金利が続いたジェノバ共和国の長期金利である。当時のジェノバは地中海貿易で富を蓄えた金融大国であった。このカネ余りが超低金利をもたらすことになる。ジェノバの長期金利が1619年に1.125%と歴史的な水準にまで低下したのである。ジェノバの銀行家が当時の強国であるスペインの戦費調達を助けたことで、ジェノバには大量に金銀が流れ込んだ側面もあったようだが、スペイン王家の衰退が始まると、金利は急激に上昇することになる。1625年にはジェノバの金利は4%を超えて、異常な超低金利時代は終焉したのである。

 そして、第二次世界大戦前後の米国でも長期金利が2%割れとなった。1941年に1.85%を記録している(残存12年超)。1941年から1951年にかけて、米国の長期国債金利は低位安定しており、25年債は一度も2.5%を上回ることがなかった。これについては、「国債利払い費を抑制するために国債価格を維持するために買いオペを行なってきたという解釈が多かった」(「国債の歴史」富田俊樹氏より引用)。

 これが結果として最近また取り上げられるようになった「アコード」へと結びつく。つまり、第二次世界大戦後、国債の利払いコストを抑えさらに利上げによる国債価格の下落を回避しようとしたアメリカの財務省と、インフレ抑制のために金融引き締めを主張するFRBとの対立が激化した。このため1951年にトルーマン大統領の調停により、財務省とFRBとの間で「アコード」が成立し、国債管理政策と金融政策が「分離」され、これによって低金利政策は廃止され、FRBは政府からの「独立性」を強めたのである。(「マネーの歴史(世界史編)」 [Kindle版]より引用)。その後の米国では、物価の急上昇などもあり、長期金利も上昇し始め1956年に3%、1959年には4%を超えてきたのである。

 ちなみに「国債の歴史」によると、長期間にわたって金利低下が続いたヴィクトリア時代の英国においてのコンソル(永久国債)の最低金利は1897年の2.25%であったそうである。

 これを見てもおわかりのように、世界史の中で最も超低金利時代と呼ばれそうなのは、17世紀のジェノバではなく、また第二次世界大戦前後の米国でもない。まさに現在がそれに該当しよう。

 現在では2%以下となった長期金利は至る所で存在している。米国、カナダ、英国、ドイツ、オランダ、フィンランド、オーストリア、スイス、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、チェコ、シンガポール、台湾、香港そして日本である。歴史上、21世紀に入るまでわずか3か国の事例しかなかったものが、現在これだけの国や地域で超低金利となっているのである。これはまさに異常な事態であると言えよう。

 ちなみに日本ではすでに1997年から15年以上も続いている2%割れの長期金利ではあるが、米国の長期金利が2%を割り込んだのは2011年8月のことであった。

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by nihonkokusai | 2012-11-08 09:17 | 債券市場 | Comments(0)
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