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ECB、BOEの追加緩和と日銀の追加緩和の可能性

 7月5日のECB政策理事会やイングランド銀行のMPCでは予想通りの追加緩和を決定し、ついでに中国まで、同じような時間帯で利下げを発表した。

 5日に開催されたECB政策理事会では、政策金利であるリファイナンス金利を0.25%下げて、1999年のユーロ導入以来の過去最低水準となる0.75%とすることを決定した。また、民間銀行がECBに預金を預け入れる際の預金ファシリティ金利(日銀当座預金の超過準備の付利に相当)も0.25%引き下げられゼロ%となる。

 預金ファシリティ金利をゼロにしたことについては市場関係者の間では、意外感もあったようである。日本も量的緩和を行った際に短期金融市場の機能が失われたことで、現在は日銀の超過準備に対して付利がなされ、それが短期金利の下限となり、短期金利の機能を損なわないように配慮されている。

 今回のECBの預金ファシリティ金利の引き下げにより、日銀の当座預金への付利引き下げ観測も出ていたようだが、その可能性は薄いと思われる。そもそも追加緩和そのものの可能性は薄いとみているためである。

 今回のECBの利下げについてドラギ総裁は、「景気悪化のリスクが現実になったため」とした。日経新聞によると、ECBの場合は政策金利を反映させるのに時間がかかるため、実施は即日ではなく11日からとなる。

 このECBの追加緩和の決定より少し前、イングランド銀行のMPCでは資産購入枠を500億ポンド拡大し3750億ポンドに拡大し、2か月前にいったん打ち切ったQEの再開を決定した。今回は1回当たりの購入規模を減らして、実施期間をこれまでの3か月から4か月に延長した。ただし、政策金利は過去最低水準の0.5%に据え置いた。

 そして、このMPCの追加緩和とほぼ同時に中国人民銀行が、この1か月で2回目の利下げを発表したのである。中国人民銀行は貸出基準金利の1年物を0.31%下げて6%に、預金基準金利の1年物定期預金を0.25%引き下げ3%にした。市中銀行の融資金利の基準金利に対する割引も最大30%まで認めることになった。つまり1年貸出基準金利は利下げ後に4.2%まで下げ可能となる。

 興味深かったのは、この中国人民銀行の利下げの発表のタイミングである。中国の金融政策の最終的な判断は政府にあるため、発表時間はどうしてもまちまちとなり、今回のような時間帯になってもおかしくはない、しかし、今回はわざとBOEやECBのタイミングに合わせてきた可能性もある。中国にとりユーロは最大の貿易相手国でもある。

 このようにECB、BOEは事前予想通りに追加緩和を実施し、中国人民銀行も利下げを行った。それでは来週11日、12日に開催される日銀の金融政策決定会合では追加緩和の可能性はあるのであろうか。

 現在の日銀の金融政策を見る上で、個人的には3つのポイントを確認する必要があると思っている。それは景気物価等のファンダメンタルズの動向、そして外為市場や株式市場を中心とするマーケットの動向、そして政治からの圧力の動向である。

 最初のファンダメンタルズについては、今回は2日に日銀の金融政策において最も重視される短観が発表されており、この内容が吟味されよう。設備投資等かなり良い数字となっており、少なくとも追加緩和を促すような内容ではない。さらに昨日のさくらレポートでは、全地域が前回から改善されていた。欧米の景気減速への懸念もあるが、日銀としては「わが国の経済は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。」(日銀支店長会議の総裁挨拶より)との認識であり、ファンダメンタルズから見て、追加緩和の可能性はないと見て良いのではなかろうか。

 次に外為市場や株式市場を中心とするマーケットの動向である。ECBの追加緩和により、ユーロに対して円高が進んでいることなど気になるが、ここには3つ目の政治からの圧力を加味して考えると、ドル円での円高進行が限定的であれば、追加緩和の可能性は薄くなろう。まして、株式市場は日経平均の9000円台でのしっかりした動きとなっていることも、マーケットからの追加緩和圧力を軽減させると思われる。

 ただし、7月31日、8月1日開催のFOMCで、もし追加緩和が決定され、それによりドルに対しても円高が進行するようなことになれば、日銀はそれを確認して追加緩和を行う可能性はありうる。つまりそれまではカードは切らず、温存していたほうが良いとも言える。

 3つ目の政治からの圧力については、現状、政府もいろいろとあり、それどころではないと思われ、日銀の金融政策への関心はそれほど高いとは思えない。

 7月の決定会合では、展望レポートの中間レビューが発表される。この際に物価見通しが下方修正される見込みともなっているようで、このため追加緩和の可能性を指摘する見方もある。しかし、展望レポートの内容などをもとに追加緩和を行うとすれば、きりがなくなる。確かに4月27日の追加緩和は展望レポートがひとつの要因となったことは確かであろうが、今回はそれとは切り離し、とりあえず足下の日銀の景況感やマーケットの落ち着きを見て、さらに今月末のFOMCもあることで、金融政策は現状維持となる可能性が高いとみている。


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by nihonkokusai | 2012-07-07 10:44 | 日銀 | Comments(0)

日銀への関心度

 日銀は7月4日に「生活意識に関するアンケート調査」(第50回)の結果を発表した。この中で、景況感については改善に向かっているようである。

 現在に関し、1年前と比べると良くなったが3月の1.9から今回は4.5に上昇し、悪くなったが57.5から44.0に低下した。1年後を現在と比べ、良くなるが6.7から7.8に上昇し、悪くなるが37.1から33.8に低下している。

 さらに景況感D.Iのグラフをみると、現在の景況感については2009年3月を底にして上昇過程にあり、震災のあった昨年3月の調査時よりも数値上は上回ってきている。プラス圏まではまだ遠いものの、トレンドとしては上向きトレンドが継続しそうである。

 今回はこの景況感よりも、日銀に対する関心や認知度、評価に関する結果について見て行きたいと思う。

 日本銀行の活動に日頃から関心があるかとの問いには、5割近い人が「関心はない」と答えている。自分のことで恐縮だが、金融に関するブログを書いていて、日銀に関するものを取り上げた際と、債券や国債に関して取り上げた際にあきらかにアクセス数が異なる。日銀を取り上げた際のアクセスはかなり低いのである。これは私自身の知識不足等も影響しているかもしれないが、そもそも日銀への関心があまり高くないことを示しているのではないかと思う。

 ただし、日本銀行は私たちの生活に関係があるかとの問いについては、7割以上が関係があると答えている。さらに日本銀行は私たちの生活に役立っているかとの問いについては、5割弱が役立っているとしており、役だっていないは1割程度となっている。

 そして日本銀行の外部に対する説明はわかりやすいかとの質問に対しては、わかりにくいが6割程度を占めている。その理由としては、日本銀行について基本的知識がない、日本銀行の説明や言葉が専門的で難しい、金融や経済の仕組み自体がわかりにくい、などが挙げられている。

 日銀の役割等については中学生あたりでも学習するであろうが、中学生に金融政策を説明しようとしても確かに難解すぎる。かといって高校生の社会で選択科目として政治経済を取る人は、日本史や世界史などに比べて少数派となっているのではなかろうか。大学に入り、文系の一部では金融を学ぶ機会があるかもしれないが、それでも現在の日銀の役割をしっかり認識できている学生は一部であるのかもしれない。教育がこのような状態であるとすれば、一般社会人が日本銀行について基本的な知識がなく、用語が難解であるとしても致し方ない。そもそも金融の仕組みそのものを学ぶ機会が少ないことも影響していよう。

 このような状況で、日本銀行を信頼しているかと問われても、漠然とした答えしか出てこないと思うが、それでも信頼しているが4割程度おり、信頼していないは1割程度である。

 信頼している理由については、日本銀行の活動が物価や金融システムの安定に役立っ ていると思うからが圧倒的に多く、中立の立場で政策が行われていると思うから、が続いている。

 日本銀行を信頼していない理由について最も多いのが、日本銀行の活動が物価や金融システムの安定に役立っていると思わないから、となっている。また、中立の立場で政策が行われていると思わないから、との意見もあった。

 この日銀への関心度のアンケート調査は、ぜひ国会議員の間でも行ってほしい気がする。たぶん一般回答よりは、多少日銀への関心度は高まるかもしれないが、それでも国会議員でも関心度は今回の数値と比べてそれほど高くないと思われる。ただし、一部の国会議員の関心度は妙に高いようで、日銀を信頼せず、中立の立場で政策が行われていることに疑問を投げかけている。このような意見が国会議員の間では、どの程度のシェアを占めているのかも知りたいところである。

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by nihonkokusai | 2012-07-06 09:36 | 日銀 | Comments(0)

LIBORはなぜ不正操作されたのか

 ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作問題を受け、英国の大手銀行であるバークレイズのボブ・ダイヤモンド最高経営責任者(CEO)が3日、辞任した。これがいったいどのような問題であるのかをあらためて確認したいと思う。

 そもそもの発端は2008年4月にウォールストリート・ジャーナルが、LIBORがもはや信頼できないかもしれないとの懸念を銀行家やトレーダーが抱いていると報道したことによる。これを受け、英国銀行協会(BBA)が調査に乗り出し、実勢とかい離した金利を提示する銀行をリファレンスバンク(金利提示銀行)から外すとの観測も出た。ウォール・ストリート・ジャーナルは「資金繰りに困っているという印象を与えないために銀行が金利を正確に報告していないと市場は懸念を抱いている」としていたのである。(2008年4月18日の牛さん熊さんブログより)。

 LIBORとは「London InterBank Offered Rate」の略で、一般的には英国銀行協会(British Bankers Association)が複数の銀行の金利を平均値化して、ロンドン時間午前11時に毎日発表するBBA LIBORのことを指している。米ドルだけでなく英ポンド、日本円、ユーロ、豪ドル、ニュージーランドドル、スイスフラン、カナダドル、デンマーククローネの9通貨について発表され、歴史もあり短期金利の重要な指標となっている。

 ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)は、英国の住宅ローンや預金金利などに直接影響する金利であるともに、国際的な融資などにおける国際金融取引の基準金利として、またスワップ金利などデリバティブ商品の基準金利としても利用されている。

 LIBORを基準に金利が決まる取引は、総額360兆ドルにものぼるそうである(2012年7月6日日経新聞社説より)

 英米当局は1年以上にわたる捜査で、バークレイズが2005~2009年に虚偽申告を繰り返し、経済の実態とかけ離れてLIBORを上げ下げしたと結論づけた。この調査では、バークレイズのトレーダーがLIBOR担当者に「1か月物と3か月物の数値をできる限り高くしてほしい」と頼んだメールも見つかったようだが、それとは反対に銀行協会に申告する数字が他行よりも高いことを経営陣が嫌がり、実態に比べて低い数字を出したケースもあったようである。これはサブプライム問題等からリーマン・ショックにいたる間、金融機関への懸念が極度に高まり、銀行数字が高いのは経営不安の裏返しだと市場に解釈されるのを恐れたためとみられる。

 ただし、2008年10月9日付のバークレイズの内部メモによると、イングランド銀行のタッカー副総裁が常に高い金利を報告する必要はないと話していたことも明らかになったようで、このあたりも問題を複雑化させている。ただし、4日の議会特別委員会の証言で、ダイアモンド氏はタッカー副総裁との会話について、バークレイズの借り入れ金利動向について政治家が懸念していることに対する警告と受け止めたが、実態隠しを容認しているとは解釈しなかったと述べたそうである(ロイター)。

 バークレイズはこの不正の事実を認めて先週、米英当局に総額2億9000万ポンドもの巨額の罰金を払った。さらにマーカス・エイジアス会長の辞任表明や役員賞与返上などにより、他行に先駆けて非を認め、早々に幕引きを行おうとしたとみられる。ところがその幕引きを、ターナー金融サービス機構(FSA)長官やイングランド銀行のキング総裁が阻止し、この結果、責任が会長より重いボブ・ダイヤモンド最高経営責任者(CEO)が辞任することになった。この背景には、英国政府の意向なども強く働いていた可能性がある。

 LIBORの調査は米国や日本を含めて他の金融機関でも行われており、その結果次第では問題がさらに拡大する可能性もある。これにより銀行への規制強化が進む可能性も指摘されている。また、英政府は今回の騒動を踏まえて、LIBORの設定方法も見直す委員会を設ける方針も表明している。

 ただし、このような金利の提示について、現実にはどうしても裁量の余地が存在してしまう。毎日、各種金利が発表されて、それが債券価格等を算出する基準となっているが、すべての金利が毎日ついているわけではない。たとえば、日本ではここにきて日本相互証券では2年債カレント物が出合う日がほとんどない。それでも基準利回りは発表されている。それはイールドカーブの状況や、需給動向等、オファー・ビッド等を見ながら業者がだいたいの目安の位置を出しているためである。2年債を保有しているところは、それを基準に債券の保有価格を算出する。LIBORでも同様に常に付いた金利だけをそのまま出しているわけではなかろう。そこに自己のポジションや、外部からの評価を意識して多少、金利水準に変更を加えることがあったとしても、それはそれで致し方のない面もある。もちろん、あからさまな数値の操作は問題があり、だからこそ今回の問題が発生したわけではあるが。


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by nihonkokusai | 2012-07-05 10:01 | 債券市場 | Comments(1)

次期日銀総裁にふさわしい人とは

 木内氏と佐藤氏の二人のエコノミストは両院での同意を得たことで、日銀の審議委員に就任するが、これにより日銀の金融政策そのものに変化が生じるであろうか。6月のQUICKによる債券市場関係者への月次調査によると、結果としては「変化なし」が53%と、「追加緩和に積極的な方向にバイアスがかかる」の44%を上回っていた。

 この結果について、市場関係者以外の方から見て意外性があったかもしれない。なぜならば、審議委員にBNPパリバ証券の河野氏を起用する案が否決されたことで、積極的な金融緩和に反対する人物は審議委員にはふさわしくないとの印象を強めさせたためである。

 実際に報道などでは、木内、佐藤両氏ともに金融緩和派として知られるとあり、最近のレポートで木内氏は「政府と日銀の連帯強化」が必要との持論も展開していたことを報じられていた。ただし、レポートの件はさておいて、それほど現在の日銀の金融政策の姿勢に木内、佐藤両氏が距離を置いているとの認識は持たれていなかった可能性もある。

 それとともに、審議委員になったばかりで、仮にこの両者が追加緩和に積極的であったとしても、すぐに行動を起こすとは思えない。たとえ二人が行動を起こしたとしても、最終的には多数決で決定されるため、政策委員の全体のバイアスが緩和に傾くことのない限り、金融政策そのものに変化が生じることは考えづらい。

 私も新しい審議委員が加わっても、現在の日銀の金融政策には大きな変化はないと思っている。ただし、これが総裁人事となればその影響力は当然異なる。今回のQUICKの調査では2013年4月に任期満了となる白川総裁の再任の可能性等に関するものもあった。

 白川総裁の再任が望ましいかどうかについては、全体で6割以上が望ましいとしている半面、7割が再任はないとの認識である。この背景には、1998年に日銀法が改正されたあとの日銀総裁は速水優元総裁(平成10年3月20日~平成15年3月19日)、福井俊彦前総裁(平成15年3月20日~平成20年 3月19日)ともに再任はなかったことがあろう。ただし、審議委員では植田氏と須田氏が再任されている。

 白川総裁が再任されなかった場合にどんな人が新たに総裁になると思いますか、との質問もあり、これについては「政治家とのコミュニケーション能力の高い人」が43%、「市場とのコミュニケーション能力の高い人」が39%となっていた。市場参加者へのアンケートであるが、市場とのコミュニケーションとともに、政治家とのコミュニケーション能力をより求めるあたり、現在の日銀の抱える大きな問題が存在しているように思われる。

 今回の調査には、日銀の独立性に関する問いもあり、その結果は「政府の経済政策と整合的な金融政策を実施すべき」と「現状の政府との距離感を保つのが望ましい」というのが拮抗していたが、このあたり日銀だけでなく市場参加者も中央銀行と政府の距離感についてどのようにあるべきかを模索しているようにも感じられる。だからこそ政治家とのコミュニケーション能力の高い人が求められているように思われる。

 しかし、政治家とのコミュニケーション能力を持った上で、市場とのコミュニケーション能力の高い人となるとなかなかふさわしい人物が見当たらない。しかも、その人物が両院で同意されるかとなると、さらに絞り込みが難しくなろう。総裁を含む日銀の政策委員の人事等については、形式上は内閣官房副長官から国会に提示されることで、最終判断は官邸にある。問題はその人事を決めるときに官邸にいるのは誰かということもあるし、その際に衆参両院のバランスも不確定要因となりうる。

 最後に債券市場関係者の間では「国債引き受け等財政政策にも積極的に協力すべき」との答えが5%あった。債券市場参加者だからこそ日銀による国債引き受けのリスクを意識しているため、このような数値となったとみられるが、むしろ5%もいたのかとの印象でもあった。


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by nihonkokusai | 2012-07-04 09:38 | 日銀 | Comments(0)

今年上半期の日米欧の金融政策の動向

 2012年1月25日のFOMCでは、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導レンジを0-0.25%に据え置くことを決定し、「異例に低いFF誘導水準の維持が2014年後半まで続く事が正当化されるとFOMCは予想している」とした。つまり、事実上のゼロ金利政策を解除する時期を、これまで公表してきた来年の半ばから1年余り先延ばしし、少なくとも2014年の遅い時期まで続ける方針を示した。

 さらにFRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%としたのである。これは実質的なインフレ目標値の設定とも言えるものである。

 2月9日のイングランド銀行のMPCでは、資産買い取りプログラムの規模を500億ポンド拡大することを決めた。その際に購入対象となる償還期限を変更し、従来よりも3~7年物の購入を増やすことにした。

 2月9日のECB政策理事会では政策金利は据え置かれたが、今月の3年物資金供給オペで、7か国の中銀が受け入れ担保の基準を引き下げることを明らかにした。これら一連の動き、なかでもFRBによる物価目標の設定と時間軸の長期化は日銀にも大きな影響を与えた。

 2月14日の日銀の金融政策決定会合では、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率として「中長期的な物価安定の目途」を示すことを決定した。「中長期的な物価安定の目処」とは、消費者物価指数の前年比上昇率で2%以下のプラス領域にあるとある程度幅を持って示すこととした。その上で、「当面は1%を目途(Goal)」として、金融政策運営において目指す物価上昇率を明確にした。

 当面、消費氏や物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入措置により、強力に金融緩和を推進していく。ただし、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じないことを条件とするとした。

 また、資産買入等の基金をこれまでの55兆円程度から65兆円程度に10兆円増額することも決定した。この買入の対象は長期国債とするとしたが、日銀はデフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けて、日銀の政策姿勢をより明確化するとともに、金融緩和を一段と強化することを決定したのである。

 3月13日の日銀金融政策決定会合では、政策金利や資産買い入れ基金の規模の変更はなく現状維持としたが、成長基盤強化を支援するための資金供給(成長支援資金供給)を拡充することを決定した。

 2010年6月に日銀は成長支援資金供給を導入した。これは成長分野への投資促進に向け、民間金融機関に政策金利の0.1%で貸し出すものである。この貸付総額の残高上限は3兆円としていたが、新規貸付の受付期限を2014年3月末まで2年延長するとともに、貸付枠も3.5兆円に5千億円増額することとした。

 昨年6月に出資や動産・債権担保融資など、不動産担保や人的保証に依存しないABLと呼ばれる融資を対象に、5000億円を上限として、年0.1%の金利で原則2年とし1回の借り換えを可能とした最長4年の貸し付けを行う新しい枠組みを導入していたが、これについても、5000億円の貸付枠のもとで、新規貸付の受付期限を 2014年3月末まで2年延長することとした。

 さらに成長支援資金供給では対象としていない小口の投融資を対象に、新たに5000億円の貸付枠(小口特則)を導入することも決定した。対象となるのは、日本経済の成長に資すると認められる1件当たり100万円以上1000万円未満の投融資。対象先金融機関は成長支援資金供給の対象先金融機関。有担保貸し付けで、貸付期間は1年とし3回の借り換えを可能とする(最長4年)。貸付利率は貸付実行日における誘導目標金利、つまり現行では年0.1%となる。

 そして、成長に資する外貨建て投融資を対象に、日銀が保有する米ドル資金を使い、新たに1兆円の貸付枠(米ドル特則)を導入することも決定した。対象先金融機関は、成長支援資金供給の対象先金融機関のうち、ニューヨーク連邦準備銀行に米ドル口座を保有する先および同行に口座を保有する先へ米ドル決済を委託している金融機関。米ドル資金の有担保貸し付けとなり、貸付期間は1年、こちらも3回の借り換えを可能とする(最長4年)。貸付利率は市場金利となる。

 4月27日の金融政策決定会合では、資産買入基金の増額というかたちで追加緩和を決定した。資産買入等の基金を65兆円程度から70兆円程度に5兆円程度増額する。内訳としては、長期国債(残存1年以上3年以下)を10兆円程度増額し、期間6か月の固定金利式・共通担保供給オペは応札額が未達となるケースが発生しているため、これを5兆円程度減額する。そしてETFの買入を2千億円、J-REITの買入を百億円程度増額する。

 買入対象となる長期国債の残存期間は、多額の買入を円滑にすすめ、長め金利に効果的に働きかける観点から、これまでの「1年以上2年以下」から「1年以上3年以下」に延長する。社債についても、国債と同様に、買入対象の残存期間を延長する。

 基金の70兆円程度への増額は2013年6月末を目途に完了する予定。今年末までの基金の規模は65兆円とする。つまり、今年末までの国債買入は5兆円程度増額するが、期間6か月の固定金利式・共通担保供給オペの残高は今年末に15兆円規模であったものを10兆円に減額した。さらに2013年6月までに基金による国債の残高をあらたに5兆円積み増すことになった。

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by nihonkokusai | 2012-07-03 10:51 | 中央銀行 | Comments(1)

2002年の日銀による国債買入制限緩和の理由

 2002年1月16日の日銀金融政策決定会合において、国債の買い切りオペの対象を「発行後1年以内のもののうち発行年限別の直近発行2銘柄を除く」ことで拡大することを決定した。これは1月17日より実施されることになった。

 これが決定される過程について詳しいことは、7月にも発表されると思われる当時の金融政策決定会合の議事録を確認したいが、この件については当時の私のコラムが残っており、今回はこれを元にして、なぜ日銀による国債買入の制限が緩和されたのかを探ってみることにする。「」内が当時私が書いたものである。

 「昭和42年1月、戦後初めて発行された国債が1年経過した時点で日銀は発行後1年たった国債を買い切りオペに加えることを決定した。財政法で禁じられている日銀による国債の直接引き受けを避ける意味合いから1年というルールを設けたものと思われる。これにより国債を半ば強制的に引き受けさせられていた銀行の国債は1年たつと日銀の買い切りオペで吸い上げられるようになり、当時7年の国債も実質1年の国債と同様であった。」(2002年1月16日の債券ディーリングルーム「若き知」より)。

 当時発行されていた国債は7年満期の国債であった。10年に期間が延びたのは1972年(昭和47年)1月からである。銀行は半ば強制的に引き受けさせられていたとの表現があるが、これは当時発行された国債の引受先が大蔵省の資金運用部と国債引受シンジケート団であり、引き受けた銀行はその国債を自由に売却することができなかったためである。

 「ところが次第に国債の発行額が増加しこのままだとインフレを引き起こす可能性が指摘され金融機関の保有する国債の市中売却が認められた。日銀の国債買い切りは資金供給手段のひとつとしてその後も続けられた。」

 1977年に金融機関の取得した国債の流動化がスタートしている。日銀による国債買入で吸収される国債の比率が低下し、都銀等の預金増加額に占める国債引受の割合が急増していたため、借換債の発行をしていなかった特例国債の市場売却については、各金融機関の自主的な判断に委ねられたのである。ただし、引き受け後一年間は引き続き売却を自粛することとされた。また建設国債に対しても借換方式を見直すことを前提に流動化が開始されたのである。ただし、銀行による国債などの本格的なフルディーリングが認められたのは、つまり何ら制限なく売り買いが可能となったのは1985年6月であった。

 「国債発行額がさらに増加したことやデフレの進行により日銀は段階的に国債買い切りオペを増額していった。ただし日銀券発行残高までという制限もつけた。」

 あっさりと歴史が飛ぶが、日銀は2001年3月に量的緩和策を導入し、それとともに国債買入額を増加させてきた。ただし、日銀が保有する国債の額を日銀券発行残高までにするという自主ルール、いわゆる日銀券ルールを設けたのである。

 「そして本日、日銀はついにこの1年ルールを変更することにしたのである。米国でもFEDは資金供給手段の手段として米国債の買い切りを行っており、しかも直近発行銘柄を除くという条件付きである。日銀はすでにTBの買い切りなど行っており実際に1年というルールが必要かとの問題もあり、1年ルールの撤廃を求める声も強かった。」

 このあたりが1年ルールを撤廃した理由となったとみられる。FRBによる米国債の買い入れが、直近発行銘柄を除くという条件となっていたことは、確かに日銀としても見直すための要因となったと思われる。

 ちなみに米国でも連邦準備法により国債引受は禁じられている。また、1951年のFRBと財務省との間での合意(いわゆるアコード)により、連邦準備銀行は国債の「市中消化を助けるため」の国債買いオペは行わないことになっている。

 TBというのは短期国債であり、現在はFBとともに国庫短期証券として発行されているが、期間1年以下の国債である。つまりすでに日銀は発行されて1年経たない国債を買い入れていた。そして市場からも1年ルールの撤廃を求める声が強かったように記憶している。

 「しかしそれは限りなく国債引受に近づく。そこで来年度の国債発行額が30兆円に押さえられ、とりあえず財政の規律の喪失に直結しないこの時期に発表したものと思われる。もしくは今後は公的資金の導入、もしくは景気悪化のための財政出動の可能性はあるために、国債増発観測が出てくるタイミングでの発表はむずかしくなることも確かである。今回の発表で債券市場は素直に買いで反応した。今回の銘柄拡大自体は債券市場にとってはプラスとなろう。しかし、財政構造改革が挫折するようなことになると日銀の国債引受といった意味合いが強くなる可能性もあるために注意も必要であろう。」

 なぜこのタイミングでの発表であったのかについては、議事録を確認したいが、財政ファイナンスと認識されないよう気をつけていた可能性はあったのかもしれない。いずれにしても、日銀による国債買入は「財政ファイナンス」とは切り離して、市場への資金供給手段としての認識である、ということをかなり意識していたことは伺える。

 しかし、日銀はその後基金という別腹を設けて、さらに国債の買入を進めている。目的はどうあれ、中央銀行が国債を大量に買い入れているのは事実であり、すでに国債残高に占める日銀の保有シェアは10%近くになっている。国債消化のために日銀の果たす役割というか、需給における影響は大きくなりつつある。今後も日銀への追加緩和要求が高まり、その結果、基金による国債買入の額を増加させたり、買入国債の条件を緩和するようなことになれば、次第に財政ファイナンスとして意識されてしまう可能性もないとはいえない。このあたりも日銀が追加緩和を慎重にさせる要因のひとつとなっているのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2012-07-02 09:32 | 日銀 | Comments(0)

日本国債を外国人は買い占めているのか

 週刊文春7月5日号に国債に関する記事が出ていた。タイトルは、『日本国債「外国人買い占め」で大暴落の現実味』。どんな記事なのかと思い買って読んでみた。記者がこの記事を書くにあたって、日本国債の海外保有比率が10%近くに高まってきたことを元に、国債暴落の可能性を浮かび上がらせ、読者に訴えようとしたようであるが、タイトルそのものが矛盾している。

 外国人が日本国債を購入しているのは買い占めが目的ではないし、こんな巨額の残存がある日本国債を買い占めるのも不可能で、むしろ買い占めてくれたほうが日本の財政は助かるか。とにかく、買い占めとの表現は誇張というよりおかしい。ちなみに日銀が発表した資金循環統計によると、今年3月末現在、国庫短期証券を含んだ数字でみると、海外は全体の8.3%のシェアとなり昨年末の8.5%よりは低下したものの、これまで最高だった2008年9月末の8.5%に近い水準となっている。金額では76兆円(うち短期債を除くと47兆円)程度ある。

 外国人の日本国債保有額が増加したのは、リーマン・ショックに続き、欧州の金融不安により、比較的安全資産とされる米独英などの国債とともに日本国債も買われた側面があるとともに、円がユーロやドルに対して買われた結果、海外投資家が保有する円の投資先として、短期債中心に振り向けられたにすぎない。日本が介入によるドル資金を米国の短期債中心に運用しているのと同じようなものである。

 これらの海外からの資金はリスクオフの流れでちょっと円に置いている、とも言えることで、状況次第で短期間で売却される可能性はある。しかし、それでなくても日銀の買い入れなどにより需給がタイト、つまり銀行などの買い手がたくさんいる状況の日本の短期債なので、多少まとまった売りが入ったとしても、即座に消化してしまう可能性が高い。ポジション調整として短期債を大量に海外投資家が売ったとしても、市場にはほとんど影響なく、したがってそれによる大暴落には何ら現実味はない。

 記事にはヘッジファンドの「ヘイマン・キャピタル」のサブプライム問題で大儲けしたというカイル・バル氏なる人が登場し、「われわれが最も多くの金を破綻の側にかけているのが、日本とフランス」との発言を掲載している。

 そもそもなんとかで大儲けした人が、その後また何かで大儲けするということは非常にまれである。むしろ、何かで儲けたことで一躍有名になったものの、その後のコメントの相場観がちぐはぐというケースも多い。いずれ日本国債は暴落する可能性は否定はできないが、それは今ではないでしょう。ここにもオオカミ少年が一人いたという結果になる可能性が高い。過去大儲けしたヘッジファンドだからといって、そのポジションが常に正しいとは限らない。

 ただし、記事の内容を良く読むと、外国人が日本国債を大量に保有しているから暴落の懸念があるということではなく、何かのきっかけで日本国債が売られるようになったらたいへんだよという内容ともなっている。それはそれで警告を発することも大切かと思うが、無理矢理に外国人投資家に結びつけるあたり、かなり無理がある。まあ、読者の関心を引くためには、このタイトルも致し方ないのかもしれないが。


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by nihonkokusai | 2012-07-01 09:36 | 国債 | Comments(2)
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