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経常収支と国債の関係

 3月6日付けの日経新聞の経済教室では、早稲田大学の谷内満教授が経常収支問題を考えるとして「赤字転落を嘆く必要なし」との論文を寄稿している。この中で、経常収支と国債に関するコメントがあり、今回はこの論文を元に特に経常収支と国債の関係を見てみたい。

 まず貯蓄と投資とのバランスの部分をチェックしてみたい。谷内教授は「家計貯蓄は1980年代以降、高齢化を反映して趨勢(すいせい)的な低下傾向にある。財政赤字が拡大し家計貯蓄が減れば、日本の経常収支黒字は減少しそうだが、GDP比でみると90年代の平均2.4%から2000年代平均では3.3%に拡大している」

 その理由として、「その背景には企業部門の大きな変化がある。企業貯蓄が増加する一方、企業の投資が減少傾向にあるので、企業の貯蓄・投資差がプラスで拡大している」点を指摘している。

 つまり企業活力の低下により、家計に代わり企業が日本の経常収支の黒字を支えてきたということになる。このため谷内教授は、「先行きの展望が開けない中での企業の投資行動も大きく変わらず、企業利益を支える低金利も続くと思われるので、近い将来経常収支が赤字化する可能性は低いだろう」と指摘している。

 ただ、将来たとえば「財政再建がいつまでも先延ばしされて大幅な財政赤字が続き、一方で企業部門では、国債利回り上昇に伴う企業の借入金上昇で利子支払いが増加したり、本業の利益が減少したりして、企業貯蓄が減少する場合」には、経常収支が赤字となる可能性があるとしている。

 そして経常収支と国債の関係について、通説的な見方として経常収支黒字は巨額の国債の国内消化に不可欠との見方について異を唱えている。

 「例えば、ドイツは経常収支黒字が大幅で、かつ家計貯蓄率もかなり高いが、国債の約半分が外国保有である」ことを谷内教授は指摘している。

 ドイツの場合はユーロ圏に属し、圏内諸国からの為替リスクなしのドイツ国債への投資もあるため、一概に比較はできない部分もあろうが、それでも経常収支と海外からの国債投資の関係に何らかの方程式が存在しているわけではないのも確かと思われる。

 このため谷内教授は「国内投資家の国債投資意欲が減退するかどうかは、今後も巨額の国債増発が続くかどうかにかかっている。財政悪化が続けば、経常収支黒字でも国債の国内保有が大きく減少することは十分にありうる」としている。

 これについては、国内投資家の国債保有そのものが大きく減少することは、現在の日本の金融システムの中に存在している国内金融機関の投資行動を見る限り考えづらい。一部の資産を海外に向けることはあっても、国債についてはせいぜいデュレーションを短期化する程度ではないかと推測されるのだが。それでも国内投資家にとり、「今後も巨額の国債増発が続くかどうか」ということは、かなり注目しているポイントであることは確かであろう。

 海外諸国の事例を見ても、経常収支と国債需給にそれほど因果関係がなく、経常収支の動向だけを見て、国債市場に大きな影響が出るということは考えづらい。ただし、今後も財政悪化が続くとなれば、いずれそれが国債市場に影響をもたらす可能性はある。つまり大事なことは「経常収支動向の背景にある財政悪化、高齢化、企業の活力低下、日本経済の低成長といった問題に正面から取り組むことだ」との谷内教授の指摘は正論であろう。


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by nihonkokusai | 2012-03-07 10:04 | 国債 | Comments(0)

個人向け復興国債が他の個人向け債券より優れているポイント

 3月5日から個人向け復興国債と個人向け復興応援国債の募集が開始された(3月30日まで)。昨日の日経新聞にも一面広告が出ていたが、今回は金額に応じて金貨や銀貨がもらえる復興応援国債も募集されることで注目が集まるものと予想される。

 今回は個人向け復興(応援)国債と他の個人向け債券と比較することで、個人向け国債の魅力について探ってみたい。

 その前に個人向け復興国債と個人向け復興応援国債は、名称がたいへん似ているため、購入する際には注意が必要である。特に10年変動タイプを購入される方は、通常の個人向け国債である個人向け「復興国債」か、金額に応じて金貨・銀貨がもらえる個人向け「復興応援国債」であるのか、そのあたり金融機関の窓口ではっきり指摘する必要がある。

 個人向け復興国債の概要、さらに個人向け復興応援国債はどのような条件で金貨、銀貨がもらえるのかについては、下記の財務省のサイトにて確認していただきたい。また、取り扱っている金融機関の窓口でも教えてくれるはずである。

「財務省サイト内の個人向け国債に関するページ」 http://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/index.html

 まず、個人向け復興国債と他の個人向け債券との違いについて最も注目すべきポイントは、リターンとリスクの比較であると思われる。リターンとはたとえば利率である。これについては、条件決定のタイミングが同じ時期で同じ償還期間のものであれば、通常は個人向け復興国債より他の個人向け債券の方が高いはずである。特に個人向け劣後債などはかなり高めの設定となっている。

 ただし、個人向けの劣後債は個人向け復興債と発行量が大きく異なり、販売する証券会社なども限られ、人気化したものなどはなかなか購入が難しいケースもある。そして、額面金額も大きいなど注意すべき点がある。これについては私のブログ(牛さん熊さんブログ)にアップした「金融機関発行の個人向け劣後債を購入する際の注意点」を参照していただきたい。

 個人向け復興国債の長所としては、債券のリスクのうち「価格変動リスク」と「流動性リスク」が極力抑えられている点が大きい。1年間の途中売却ができない期間が存在しているため、流動性リスクが全くないとは言えないが、その1年を過ぎればいつでも財務省が額面で買い取ってくれる。つまり発行後1年を過ぎれば、価格変動リスクと流動性リスクはなくなることになる。これは他の債券にはない大きな魅力と言える。

 そして債券のリスクとして、もうひとつ存在する信用リスクについてであるが、国債についてはソブリンリスクが存在するのは確かである。しかし、少なくとも国内金融商品の中にあって国債は最も安全性が優れているというのが、それを運用している金融機関の認識となっている。国債以外の債券は同年限の国債の利回りが基準になり、その上乗せ金利の幅などで信用力が計られる。つまりは、個人向けを含む国債の信用リスクについては、他の個人向け債券よりも信用力は高いとの認識で良いかと思う。

 このようにリスク面を考慮すれば、個人向け復興国債は非常に有利なものとなっている。ただしその分、他の個人向け債券と比較して利率等がやや不利となっている。しかし、現在の超低金利下にあってはその差は限定的であるのも確かである。個人向け劣後債など利率が高く設定されているものもあるが、それについては購入そのものの難しさとともに、途中売却時のリスク、また信用リスクなどのリスクが存在しており、そのあたりはしっかりチェックしておく必要がある。

 最後に10年変動タイプでの個人向け復興国債と個人向け復興応援国債の選択に関しては、利率のみを考えれば個人向け復興国債の方がたぶん有利であろうと思われる。しかし、少なくとも3年間、1000万円を置いておけるのであれば記念金貨を入手できる(銀貨ならば100万円)個人向け復興応援国債も選択肢としてはありかなと思う。復興記念硬貨には金や銀の価値等だけでは判断できない価値、たとえば復興への思いを含めたものも含まれているように思う。このあたりは購入される方の判断にお任せしたいところである。


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by nihonkokusai | 2012-03-06 09:59 | 国債 | Comments(0)

金融機関発行の個人向け劣後債を購入する際の注意点

 銀行が発行する個人向けの劣後債に関するマスコミの取材を過去に何度か受けたことがあり、今回も同様の取材があった。このため、ここで銀行などの金融機関が発行する個人向けの劣後債とはそもそも何であるのか。そして、購入する際に何を注意すべきであるのかをまとめてみた。

 まず劣後債とは、劣後特約のついた社債のことである。劣後特約とは社債に付けられた特約条項のことである。その特約条項の内容は通常、劣後債を発行した企業が倒産した場合、劣後特約のついた社債の返済は一般債権者への支払いが全て完了した後に行うという内容となっている。デフォルト時の元利金の支払い順位が一般債務よりも低くなっており、もし発行した企業が経営破たんした場合には、株式と同じく紙切れ同然になるリスクがある。劣後債のリスクは、一般に普通社債と株式の間くらいとの認識のようであるが、その分、普通社債よりも利率は高く設定されている債券である。

 そして劣後債の発行体をみると、金融機関が非常に多い。金融機関は法律で一定以上の自己資本比率の維持を義務付けられている。劣後債は、会計上は負債に分類されるものの、銀行経営の健全性を維持するための国際ルールであるBIS規制では、自己資本の補完的項目(Tier2)への算入が一定限度まで認められている。このため、株主の権利を希薄化させずに、金融機関は自己資本を高められるというメリットがあるため、金融機関は劣後債を発行しているのである。以前は、劣後債の大半は機関投資家向けとなっていたが、リーマン・ショック以降は一時、機関投資家向けの社債の発行ができなくなるなどしたことで、個人向け劣後債の発行も多くなった。個人投資家にしても、金融市場の混乱と円高進行などから、円建てでより安全とみられる商品へのニーズが強まったことで人気化したのである。

 金融機関の発行する劣後債には、満期前に繰上償還される「期限前償還(コーラブル)条項」が付いているものが比較的多い。劣後債の期限前償還条項とは、発行体が債券の繰上償還をするかどうかは決めることができるもので、いつ償還となるか事前には確定していない。しかし、劣後債を自己資本とみなすルールには、劣後債の償還まであと5年以上残っていなければならない、というルールが存在する。残存期間が5年を切ると年率20%で累積的に減価しなければならないのである。このため、実際には残存5年のタイミングで繰上償還となるケースが大半となっている。劣後債は、BIS規制において自己資本に算入可能であるため、金融機関には残存5年のタイミングで繰上償還し、再度劣後調達を行うインセンティブが働くのである。

 ただし、絶対にコールがかかるというわけではない。これまで大手金融機関が発行した劣後債で、繰上償還が見送られた事例は少ない。しかし、発行体の財務内容が大幅に悪化し繰上償還するだけの余裕がなかったり、金利の上昇などにより再調達コストが大幅に上昇した場合などでは、期限前償還が見送られる可能性があることにも注意が必要である。

 参考までにバーゼル3では劣後債を自己資本に算入するには、実質破綻に陥った際、元本の返済免除か普通株に転換することを条件としている点とともに、従来型は2013年以降、毎年残高の10%が自己資本から差し引かれていくことになるという。バーゼル3とは、国際的に業務を展開している銀行の健全性を維持するための新たな自己資本規制のことであり、バーゼル2(新BIS規制)をさらに規制強化したものであり、2012年から2019年にかけて段階的に適用されていくとされている。バーゼル3準拠の劣後債はこのあたりに注意する必要がある。

 そして、個人投資家にとって劣後債を買い付ける際には、上記の劣後債そのものの性質とともに、買付金額の大きさ、そのタイミングの難しさ、さらに途中売却の難しさも意識する必要がある。

 金融機関の発行する劣後債の最低単位は100万円とか250万円と通常の個人向け債券よりも大きくなっている(ちなみに個人向け国債は1万円単位で購入が可能)。さらに利率が比較的高いことなどもあって人気化しているものなどは、なかなか入手が難しく、ある程度取引やつきあいのある証券会社などからの情報が得られないと購入そのものも難しいケースも多い。

 さらに、劣後債は売りたい時に必ず売れるとは限らず、その流動性の低さに注意が必要である。個人向け国債は途中売却の際に財務省が買い取るが、劣後債は発行する銀行側が買い戻す義務はない。ただし、販売した証券会社が買い取ることは考えられるが、流動性がない分、購入価格よりもかなり安い値段で買い取ることも考えられるため、できる限り途中売却は避け、基本的には購入したら償還まで持ちきることを前提に購入する必要がある。


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by nihonkokusai | 2012-03-05 09:24 | 投資 | Comments(0)

個人向けの復興国債と復興応援国債

 3月1日の10年国債の入札結果を元に、3月5日から3月30日にかけて募集される個人向け復興国債の発行条件が決定された。今回は個人向け復興応援国債も募集されることで、関心も高いものとみられ、ここで条件等を整理してみたい。

 まず個人向け復興国債の発行条件だが、四半期毎に発行される固定利付5年(26回債)のクーポンは年率0.27%(税引後0.216%)となり、前回1月募集の0.33%よりも低くなった。これは2月14日の日銀の追加緩和などにより、中期ゾーンの金利が低下したためである。

 これも四半期毎に発行される変動利付10年(38回債)の初回利子は年率0.64%(税引後 0.512%)となった。10年変動の適用利率は半年毎に見直される。前回1月発行の初回利子は0.72%であり、こちらも前回から低下している。

 ちなみに毎月発行されている固定利付3年の3月募集物(24回債)の利率は年率0.12%(税引後0.096%)となる。

 今回はこれらに加えて、個人向け復興応援国債(801回債)が発行される。個人向け復興国債に「応援」がついただけだが、商品性が異なることに注意が必要となる。

 以前にも紹介したが、復興「応援」国債は変動金利型の10年債であるが、当初3年間の金利は年0.05%(税引後0.04%)と通常の変動金利型より低い変わりに、購入から3年間に中途換金しなければ金額に応じて復興記念の金貨や銀貨がもらえるというものである。4年目からの適用利率は「基準金利×0.66(下限は0.05%)」として通常型の変動利付10年と同じ金利になる。

 いよいよ条件も出揃って、来週5日からの募集開始を待つことになるが、前回1月発行の個人向け復興国債が人気化したことに加え、今回から個人向け復興応援国債の募集も始まることで、その売れ行き動向にも注目が集まりそうである。

 条件そのものは1月発行分に比べて利率は低下しているものの、その要因は日銀が追加緩和を行ったことに加え、物価安定の目処を設定したことも大きい。これは裏を返せば、低金利がかなり長期化する可能性を強めることになり、個人向け国債の利率は預貯金金利と比べれば比較的高いこともあり、この条件がそれほど不利に働くことは考えづらい。

 また、これまで個人向け国債の販売額は設定利率による影響が大きかったとみられたが、個人向け復興国債と名称が変わって販売額が急速に伸びるなど、個人投資家は利率の条件だけでなく、復興支援という意味でも購入意欲を強めている。これは今回も同様であろう。

 今回特に注目されるのは復興応援国債の販売状況であろうか。財務省が2月24日の国債トップリテーラー会議で配布した資料(財務省サイトにアップ)を見ると、興味深いデータがある。「個人向け復興国債の年代別販売状況」というグラフで、10月に募集した60歳代の1件あたりの平均販売額が1千万円に届いていたことである。全体の平均でも10月債は6.3百万円、1月債は5.2百万とあった。

 復興応援国債で復興記念の金貨を1枚入手するには、最低1000万円の復興応援国債を購入し、少なくとも3年間は中途換金をしないことが条件となる。これはなかなかハードルが高いかなと思ったが、データを見る限り、個人向け国債の購入の中心層とみられる60歳代では、それほどハードルが高いとは思えない。あとはプレミアム金貨と利息との比較であろうが、ここにも震災復興のためと購入する個人投資家はいるのではないかと予想される。

 財務省の資料には「個人向け復興国債(1月債及び2月債)販売上位機関」も掲載されていたが、今回も大手証券や都市銀行などを主体に積極的に販売姿勢を強めることも予想される。ここにきて円高の調整が入り、株価も戻しつつあるが、安全資産としての日本国債への個人投資家の投資ニーズはあると見ている。


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by nihonkokusai | 2012-03-03 11:11 | 国債 | Comments(2)

日銀は能動的な金融政策に

 日銀の白川総裁は2月17日の講演で、2月14日に決定した政策について、次のように述べている。

 「今回、日本銀行のデフレ脱却に向けた政策姿勢をより明確にするという観点から、2つの点で見直しを図りました。第1に、時間軸の条件として、中長期的な物価安定の目途で示した当面の目途である1%という物価上昇率に明確に結びつけることとしました。第2に、具体的な政策運営指針については、実質的なゼロ金利の継続だけでなく、それ以外にも実際に行ってきた政策措置を踏まえて、より能動的な表現とすることが適当と判断しました。この結果、新しい時間軸政策として、次のような方針を採用しました。すなわち、当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく、というものです」

 以前にこのコラムでは「物価に対する理解・目途・目標の違い」としてこの白川総裁の講演内容を紹介したが、この講演の議事要旨を見て気になっていたのが「能動的な」という表現であった。

 2月14日の日銀の金融政策決定会合では、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率として「中長期的な物価安定の目途(Goal)」を示すことにすることを決定した。「中長期的な物価安定の目処」とは、消費者物価指数の前年比上昇率で2%以下のプラス領域にあるとして、ある程度幅を持って示すこととした。その上で、「当面は1%を目途」として、金融政策運営において目指す物価上昇率を明確にしたのである。

 2月14日の政策変更において注意すべきは、政策姿勢をより明確にするとした「明確」という表現とともに、もうひとつ、総裁が「能動的」という単語を使ったことにある。つまり、これまでの日銀の姿勢はどちらかといえば「受動的」とみられていた。しかし、2月14日の政策変換により、その姿勢を180度転換し「受動的」から「能動的」な政策に変更したと思われるためである。

 これについて新たな証言が2月29日の衆議院財務金融委員会であったようである。白川総裁は衆議院財務金融委員会での質問を受け、今回の政策について「物価上昇率を引き上げるという要素を内に秘めた能動的な政策だ」と説明、「景気が良くなっていっても物価上昇率1%が見通せない時は、ゼロ金利を続け、資産買い入れを行っていくことを約束するものだ」と明言した(ロイター)。

 今回の日銀の政策変更については、さすがにマーケットはかなり意識したとみられ、それが円安の動きを加速させ、株高の一因となった。円安株高にも関わらず、長期金利が低位安定していたのは、日銀による時間軸の強化とともに、より能動的な政策に変わったとの認識も働いたためではなかろうか。ただし、長期金利が低位安定しているのは日本ばかりでなく、米国やドイツ、英国でも同様であるが。

 日銀の心構えが変わったとしても、それを行動で示す必要もある。そのために表現の変更だけでなく、資産買入等の基金をこれまでの55兆円程度から65兆円程度に10兆円増額し、その増額対象は長期国債(期間1~2年)とすることを決定したとみられる。

 つまり、今後もし金融政策の効果、つまり物価上昇の兆候が見られなければ、いずれ日銀は追加緩和を行う可能性があるということになる。それには今回と同様に国債を主体とした基金の増額を行ってくる可能性がある。そして、緩和効果をより高めるため、買い入れ対象の国債の残存期間の延長もいずれ視野に入る可能性がある。

 ただし、緩和効果はすぐに現れるわけではない。あくまで今回の目途も中長期的な期間を意識したものであり、緩和効果などを確認するためにもある程度の時間は置く必要がある。たとえば次回会合(3月12日から13日)での追加緩和を期待するというのは早計であろう。


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by nihonkokusai | 2012-03-02 09:51 | 日銀 | Comments(0)

この5年間で金融は何が変わったのか

 2006年12月に出した「最新金融の基本とカラクリがよーくわかる本」の改訂版を出させていただくことになり、当時の原稿をあらためてチェックする作業を続けていた。

 当時の原稿の「まえがき」を読むと、「これから投資の勉強もしたいと言っている中学3年、中学1年、そして小学校6年の三人の娘たちにもこの本を捧げたいと思います」とあったが、その長女は今年4月に大学3年生となる。

 2006年12月から約5年経過したわけだが、その間、世界の金融市場は大きく揺れ動いた。2007年には米国でサブプライム問題が発生し、それをきっかけに2008年9月にリーマン・ショックが起きた。2009年10月の政権交代によりギリシャの粉飾財政が表面化し、2010年初頭からギリシャの債務悪化が問題視され、それがユーロ圏の信用不安を招くことになった。

 その間に金融の世界が様変わりしたのかといえば、金融のシステムそのものにはさほど大きな変化はなかったと思う。あらたな金融商品が生み出されたりするようなことはなく、このあたりは元の原稿に手を入れるところはあまりなかった。

 原稿を大きく修正する必要があったのは、特に「日本銀行の役割」とか「政府の役割」の部分であった。リーマン・ショックと欧州の信用不安に対しては、日米欧の中央銀行が積極的に対応策を講じたが、それはこれまでの伝統的手段ではなく、非伝統的な手段となった。そして、政府は積極的に財政政策を打ったことで、その反動として財政悪化を招くことにもなった。

 また、リーマン・ショックやギリシャ・ショックが直接影響したわけではないが、取引所のグローバル化が進み、また国内においても東証と大証が経営統合を発表するなど規模の拡大が進んだ。株価そのものは低迷していたが、その処理速度は速まるばかりであった。

 また、市場参加者である銀行や証券会社そのものもリーマン・ショックにより変化があった。さらにサブプライム問題やリーマン・ショックにより、証券化などを含めて複雑な金融商品への問題点が浮き彫りになり、その後の欧州の信用不安により、リスク回避の動きがさらに強まった。国内では歴史的な円高進行もあり、株の低迷に加え、投資信託などにも大きく影響した結果、「貯蓄から投資へ」という表現は修正しなければならなかった。

 この5年間で何が変わったかといえば、金融というシステムそのものに変化はあまりなく、むしろ金融がある程度成熟化してしまい、そこに内在された問題があらためてリスクとして浮き彫りになったということではなかったろうか。


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by nihonkokusai | 2012-03-01 09:52 | 投資 | Comments(0)
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