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日銀の国債引受に関する石田日銀審議委員の発言

 6月30日に日銀審議委員に就任した石田浩二氏の就任会見の内容が日銀のサイトにアップされているが、今回はその中から気になる点をピックアップしてみたい。

 会見要旨を読んでの印象としては、特にタカ派、ハト派的なコメントは見えず、日本経済の現状などはこれまでの日銀のシナリオを世襲している感じである。ただし、日銀の国債引受についての発言に違和感を覚えた。

 記者から「復興に絡んだ財源として、増税によらずに、日銀の国債引受けで対応する、あるいは全額の買いオペレーションで対応するように求める声が一部であります。こういった日銀の国債引受け論については、どのようにお考えでしょうか。」との質問に対して、石田審議委員は下記のように答えている。

 「両面の議論があろうかと思いますが、私自身は今まで検討する立場になかったので深い考えはありません。ただ、長年に亘り実務の世界にいると、今までやっていなかった日銀引受けをした場合に、どのようにマーケットは捉えるだろうかという事については考えられます。」

 まず、両論の議論があろう、との発言であるが、総裁を含め日銀にいる現場の関係者からの発言について、これまで両論、特に反対側にある日銀による国債引受容認論については、私の知る限り聞いたことがない。ある程度、今回の会見については日銀の関係者とともに事前に想定問答を準備していたと思うが、それでも「両論」との言葉を使ったということは、今まで検討する立場になく初めての会見という面はあったにしろ、本人には日銀による国債引受を完全に拒否する意思はなかったのではないかとも思われるのである。

 「マーケットには、非常に微妙なところ、保守的なところがあります。諸外国でも日本でも今までやっていなかったことが起こると認識した場合、マーケットはネガティブに反応する可能性が強いと思います。」

 日銀引受はこれまでやったことがないからマーケットがそれで反応して困るようなものではない。マーケットは確かに保守的な面があることは認めるが、だから過去やったことがないものをやると過剰反応するから問題とするのには違和感がある。そもそもやってはいけないことをやるかどうかを問題視すべきものであろう。今回のコメントには財政法について触れていないのも気掛かりである。

 「また、格付機関等もネガティブな反応をするだろうと思います。そうすると、例えば国債の格付けが下がると、それにつれて日本の主要企業の格付けも下がる可能性が高い。この前そのようなことが起きました。そうすると日本の企業の国際競争力にも問題が生じます。そういう意味では、避けるべきことかなというのが実務的にみた場合の反応です。」

 たしかにギリシャの債務問題は格付機関による格下げが問題をさらに深刻化させた面があり、格下げを危惧する気持ちはわからなくはない。しかし、日銀の国債引受の実施に伴って、格下げ、それも日本企業の格下げへの影響を心配すべきものであるのか、これもやや筋違いのように感じる。

 私自身、財政法で禁じられている日本国債の日銀引受については絶対にするべきではないと認識しているため、日銀の新審議委員がこのように国債引受を完全に拒否しなかったことに警戒しすぎている面もあるかもしれない。

 しかし、国債をよく知る人達からも日銀による国債引受容認論が出てきていることも確かであり、個人的にはこのような動きをかなり警戒している。このため実際に国債引受をどのように認識しているのか、今後の石田審議委員の発言内容にも注意していきたいと思う。

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by nihonkokusai | 2011-07-05 08:18 | 国債 | Comments(0)

国家は破綻する

 ギリシャの債務問題の深刻化などを受けて、ソブリン・リスクに対する関心は高まっており、それに関する本も何冊も出版されている。もちろん巨額債務を抱えた日本の債務リスクに対する関心もそれなりに高いとみられ、それに関する本も出ている。

 その中でも、ソブリン・リスクに少しでも関心がある方にお薦めしたいのが、日経BP社から出ている「国家は破綻する」である。原題は「This Time Is Different」であり、「今回は違う」という言葉は適切ではないことを、過去800年に及ぶ膨大なデータを元に検証したものである。その結論のひとつは、この本の帯にある「債務が膨れ上がった国は、悲劇に向かっている」というものである。

 この本の中では、特に公的国内債務に関する研究に注目したい。国内債務そのものの歴史が無視されてきたため、当然ながらその不履行も研究対象とされていなかったとこの本では指摘している。我が国は対外債務は少ないものの国内債務は膨大なものとなっているが、国内債務であるためデフォルトは起きることはないとの主張が決して的確ではないことをこの本は実証している。

 また、この本が書かれたのはギリシャ・ショック以前であったが、まさにギリシャ・ショックのようなことが起きるであろうことを予測したものとも言える。いずれ欧州の債務危機もおおきな実証研究として組み入れられることであろう。

 さらに国内債務の巨額な国がどのような破綻事例となるのか、日本の情勢についても筆者の一人であるロゴフ教授はその行く末を注意深く見ているのではなかろうか。

 現在の日本の債務状態は異常であることは間違いない。しかし、「日本は違う」との認識の元、財政再建に向けての消費税増税の動きについて常にブレーキを踏み続け、その結果、先送りの状況が続いている。今回の社会保障と税の一体改革に向けての動きも同様である。6月30日に決定された社会保障と税の一体改革も消費税の引き上げ時期は明記されず、それよりも閣議決定もできないような状況にあるなど、今後の財政再建に向けた動きは不透明である

 日本が財政破綻すると決め付けることはおかしいとの見方もある。現在、日本の国債は問題なく消化されている。過去のデフォルトの事例は現在の日本には当てはまらない。しかし、「今回は違う」との主張に、何らその裏付けとなるものは存在しない。日本もこのまま行けばかならず行き詰まるであろうことは確かである。

 「国家は破綻する」は大作である。実際に手にとって持つとずっしり重い。カバンに持ち込んで電車の中で読むのも難しいし、寝転んで読むと手がその重さに耐えられなくなる。これはある意味、日本の債務の大きさそのものを本の重量で表しているかのようである。この本は机の上で読むことをお勧めする。じっくりと過去の金融と国家に関する歴史を机の上で確認していただきたい。


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by nihonkokusai | 2011-07-04 08:38 | 国債 | Comments(0)

長期金利低下の流れに変化

 先週末の時点では、ギリシャの債務問題や米国経済に対する減速懸念を背景に、米国やドイツの長期金利の低下に歩調をあわせる格好で日本の長期金利もじりじりと1%に向けて低下するのではないかとみていたが、少し様相が変わりつつある。

 先週末には2.8%台にあった米長期金利は1日に3.22%近辺まで上昇しており、ドイツ連邦債利回りも同様に2.8%台から3%台に上昇している。これにより4月上旬から始まった米国やドイツの長期金利の低下トレンドにブレーキが掛かった格好になった。

 29日にギリシャ議会は緊縮財政案を可決したのに続き、30日には実施方法を定めた関連法案が可決された。これによりEUとIMFから第5弾の融資として120億ユーロを受け取る条件が満たされたことになり、ギリシャのデフォルトは一旦、回避されることになる。

 ギリシャがデフォルトとなった場合の影響を考えれば、質への逃避として米債やドイツ連邦債などに資金が向かわざるを得ない面もあったが、それが回避されるとなればその反動が入ることは避けられない。

 また、米国経済に対する減速懸念についても、経済指標によっては、30日に発表された6月のシカゴ地区の製造業景況指数や1日に発表された6月のISM製造業部門景気指数がそれぞれ予想外の上昇となるなど、良い指標も見受けられることで、あまり悲観的に見過ぎることもリスクが伴うことになる。

 このように、欧米の長期金利の低下要因が剥落しつつある中、あらためて米国での法定債務上限の引き上げ問題や、QE2の終了による米国債需給への影響がクローズアップされてくる可能性も出てきた。

 米国での法定債務上限の引き上げ問題に絡んで、ガイトナー米財務長官が辞任観測が出ている。米債務上限の引き上げを巡っては、オバマ米大統領や上院民主党議員が一時的な引き上げ案を検討との観測もあるが、債務上限引き上げと財政赤字削減で合意した際にガイトナー長官は辞任する可能性があることを関係者が指摘している。法定債務上限の引き上げ問題が解決すれば大きな不透明要因が後退することになるが、それによりガイトナー米財務長官が辞任となればあらたな不透明要因ともなりうる。

 さらにQE2後の米国債の需給についても、これまではあまり問題視はされてこなかったが、相場の地合いが悪化すれば意識されることも考えられ、不安要因となる可能性もある。現実に大口の買い手がいなくなる影響は大きいはずである。

 以上は特に米国債を中心としての不安要因であるが、国内に目を向けてもいくつか不安要因が存在する。30日に決定された社会保障と税の一体改革も消費税の引き上げ時期は明記されず、それよりも閣議決定もできないような状況にあるなど、今後の財政再建に向けた動きは不透明であることが、日本国債の足枷となる可能性がある。

 もちろん首相の居座りにより、第2次補正予算や公債特例法案の行方がまったくわからなくなっている点にも注意すべきである。

 米国やドイツ、そして日本の債券市場は一時的な調整局面を迎えただけなのか、それとも大きな流れに変化が生じるのか、それについては今後の動きをもう少し見定める必要がありそうである。


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by nihonkokusai | 2011-07-02 09:55 | 債券市場 | Comments(0)

IMFトップとなるラガルド氏

 IMFは6月28日に次の専務理事にフランスのラガルド経済財政産業相が選出されたと発表した。女性がIMFのトップに就任するのは初めてとなる。

 次期専務理事候補としてはラガルド氏のほか、メキシコの中央銀行のカルステンス総裁が立候補していたが、ラガルド氏が欧州や新興国の中国に加え、最大の出資国の米国、それに次ぐ日本の支持を得て選出された。

 IMFは現在、ギリシャの債務危機に直面するなどしており、ラガルド氏は就任直後からその手腕が早速問われることになるが、これまでフランスの経済財政産業相としての実績からもその調整能力は高く評価されているようである。

 ラガルド氏は弁護士出身で、農業・漁業相などを経て2007年6月に経済財政相(財務相に相当)に就任したが、G8では初めての女性財務相でもある。ちなみに、日本で過去、女性が大蔵大臣もしくは財務相に就任した例はない。

 ラガルド氏はアメリカで働いた経験もあるようで、テレビ番組に出演した際にも完璧な英語でのやり取りをしたと伝えられている。また、30日の日経新聞ではその人柄について、女性政治家として成功しながらエリート臭がなく飾らない性格と伝えており、フランス国民に親しまれているそうである。

 財務相として2007年から4年間務めていたということはサブプライム・ショック、リーマン・ショック、ギリシャ・ショックなどで混乱した欧州の財政金融問題での舵取りに対して重要な働きをしてきたことになる。これに対し金融市場関係者の間からも、ラガルド氏に対する批判めいたコメントはあまりみられず、調整能力を中心としてのその手腕に対する評価は高いようである。

 今後、ラガルド氏はIMFのトップとしてEUやECBと協議を行いながらギリシャなどの債務問題について難しいかじ取りを行わなければならないが、欧州の債務問題を抱えたIMFのトップとしては適任ではないかと思われる。

 日本に関しては、この人事による直接的な影響はないように思われる。しかし、いずれIMFが日本の債務問題に関与してくる可能性がないとは言えない。ただし、日本の場合にはその債務残高が大きすぎてIMFでも対処できないとの見方もある。とにかくラガルド氏をトップとするIMFが日本に関与する前に、自らの債務問題を解消すべきであると思うが、どうも流れはその反対方向に向かっているようにも感じるのである。


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by nihonkokusai | 2011-07-01 08:34 | 国際情勢 | Comments(0)
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