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欧州危機のイタリアへの伝播

 7月11日の欧州市場では、欧州の債務危機がイタリアにも波及するのではとの懸念が強まり、イタリアの10年物国債の利回りは5.7%台、スペインの10年国債利回りも6%台に上昇、イタリアの株式市場も急落した。12日にイタリアの10年国債利回りは一時、6%を上回り1997年以来の水準をつけた。

 11日からブリュッセルで欧州首脳の緊急会合が開催されたが、この会合にはトリシェECB総裁や、ユンケル・ユーログループ議長、バローゾ欧州委員長なども出席したが、ギリシャ支援を巡る関係国などとの調整が難航し、債務問題がイタリアなどにも波及するとの思惑も出たようである。12日にイタリアのトレモンティ経済・財務相は、会議を中座して帰国したが、この理由として財政再建計画を仕上げるためと説明した。

 11日から12日にかけてのイタリア国債の利回り上昇を受けて、イタリア上院は14日に政府の財政再建計画を賛成多数で承認し、15日には下院で可決された。財政赤字の削減額は当初の470億ユーロの1.5倍の700億ユーロ強に引き上げる。

 2011年のイタリアの財政赤字はGDP比で3.9%に達する見通しであるが、財政再建計画実行後は2014年にも黒字化する見込みである。野党は当初、緊縮財政が国民生活を圧迫するとして今回の財政再建計画に反対であったが承認が遅れれば、国債への信用が一段と低下しかねないとして。再建計画に賛成する方向で修正した(7月15日付日経新聞より)。

 イタリア国債の利回り上昇により背中を押される格好となり、財政再建計画を推し進めることになったが、それでは何故、急に欧州の債務問題がイタリアにまで波及したのであろうか。

 欧州で債務問題を抱える国として、PIIGSという言葉が使われることがある。これは当初PIGSとして、ポルトガル (Portugal)、イタリア (Italy)、ギリシャ (Greece)、およびスペイン (Spain) を指していた。のちに、これにアイルランド(Ireland)を加えてPIIGSと呼ばれるようになった。

 しかし、2009年末末からはイタリアを除いたポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペインの組み合わせでPIGSと呼ばれるなど、債務問題を抱える南欧諸国にあっては、イタリアは比較的優等生であったはずである。

 ところが、5日に格付会社のムーディーズがポルトガルの格付を投機的等に引き下げたことを受け、ポルトガル国債が急落し、次はスペイン、そしてイタリアかとの連想を招いた。

 また、イタリアでは与野党での債務削減を巡る対立に加え、ベルルスコーニ首相のスキャンダルも与野党での争点となり、財政再建の旗振り役でありトレモンティ経済・財政相と首相との対立も問題を複雑化させた。

 さらにトレモンティ経済・財政相自身も、収賄に関する疑惑が浮上し、それにより市場からの信頼が厚いトレモンティ氏の更迭の噂も流れ、これもイタリア国債急落のひとつの要因とされている。

 市場では11日から12日にかけてのイタリア国債の下落や株の下落は、中国からの売りがあったとの噂もあったようだが、これは確認できていない。ポルトガルの格下げからスペイン、そしてイタリアの債務悪化が意識され、そこにトレモンティ氏の更迭の噂が火をつけた可能性がありそうである。

 トレモンティ氏と首相はその後、和解したと伝えられ、また議会による当初の規模を上回る財政再建計画への承認期待から、6%台に乗せたイタリアの10年債の金利は5%台半ばまでいったん低下した。14日に実施されたイタリアの5年と15年物国債入札は無事消化されたが、まだ不安は燻り続けている。

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by nihonkokusai | 2011-07-16 08:03 | 国債 | Comments(0)

欧州の財政状況を受けての日本への教訓

 一般の方に対して債券や国債に対する認知度を少しでも高めてほしいと思い、このたび本を出すことになりました。7月21日に発売される本のタイトルは、「債券と国債のしくみがわかる本」(技術評論社刊)です。

 ここでは熊課長、牛主任、そして債券部に配属されたばかりの猫さんが登場します。新人の猫さんに債券や国債のことを知ってもらおうと熊さんや牛さんが一生懸命に解説をしています。

 この本のご紹介も兼ねて今回のコラムでは、この3人による会話を聞いてから、解説するというスタイルを取ってみたいと思います。

熊課長「ギリシャからポルトガルと来て、今度はスペイン、イタリアか」
牛主任「それって海外旅行の話ではなくて、欧州の債務問題の再燃の話ですよね」
猫さん「あのう課長、それについてなのですが、欧州の債務が問題にされると何故、日本の国債は買われるのですか」
熊課長「米国やドイツの国債が安全資産として買われるように、日本の国債も安全資産とみなされているからだ」
猫さん「でも、日本の債務残高ってかなり大きいので、心配ではないのですか」
牛主任「日本国債にはしっかり買い手も存在しているし、信認も厚く、いまのところ心配はないが、安心とも言い切れない面もある」
熊課長「これについては、7月12日の日銀の白川総裁が会見で話をしているので、それを見てみるといいぞ」

 ということで、7月12日の金融政策決定会合後の白川総裁の会見から、欧州の財政状況を受けての日本にとっての教訓に関してコメントしている部分を確認してみましょう。

 白川総裁はギリシャの場合について、2009年秋頃までは国債の金利はそれほど上昇していなかったものの、その後の急激に上昇したことについて、「何らかのきっかけで、突然、市場参加者の信認が非連続的に低下する可能性がある」と指摘しています。

 実は日本でも1998年末に同様なことが起きています。これは債券市場関係者以外の人にはあまり知られていませんが、「資金運用部ショック」と呼ばれた急激な長期金利の上昇が発生しました。国債に対する不安が非連続的に増加する可能性は当然ながら日本国債にもありえます。

 さらに白川総裁は、「いったん財政の持続可能性に対する信認が低下し、金融市場が動揺すると、実体経済も下押しされ、財政、金融システム、実体経済の間で負の相乗作用が生じ」その結果、「最終的に必要となる財政の緊縮が、急激で厳しいものになってしまう」という可能性を指摘しています。

 そして、日本の長期国債金利が低位で安定していることの解釈を2つ挙げており、1つ目として「日本の財政バランスは大変厳しい状況にあるわけですが、いずれ必ず財政バランスの改善に向けた取り組みが進められるはずであると市場で受け止められている」との解釈を取り上げています。

 これについては市場関係者が本当にそう思っているのかは疑問です。現在の不安定な政権が財政再建を進められるのか疑問視している参加者も多いはずです。ただし、基本路線としては財政再建は進めざるを得ないというのが共通認識かと思います。

 そしてもうひとつの解釈として、「金利はこれまで安定してきたのだから、これからも安定していると市場が漠然と予想している」という解釈を取り上げています。これは漠然とした解釈ではありますが、この解釈はかなり的を射ていると思われます。この2つの解釈を述べた上で、総裁は次のように語っています。

「前者の場合ですと、わが国として、市場からの信認を裏切らないことが大切ですし、また、後者であれば、そうした漠然とした予想がいつまでも続く保証はありません。いずれにせよ、できるだけ早期に財政健全化への取り組みを実際に開始する、あるいはその道筋を明確に示していく必要があることを示していると思っています。」

猫さん「なるほど、市場参加者は漠然としながらも、財政健全化はいずれ行われると期待し、現在の低金利は続くと考えているのですね」
牛主任「国債価格の急落は避けたいので、そうなっていてほしいという期待感から信認が継続している面もあるのかもしれないが」
熊課長「その期待が何かのきっかけで裏切られるようなことがあれば、ギリシャのような事態は十分に起こりうるということでもある」


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by nihonkokusai | 2011-07-15 10:16 | 国債 | Comments(0)

ハイパーインフレの恐さ

「買おうと思っていた商品を、買おうと思っていた値段で、財布のなかにある紙幣で買えることが、どんなに幸せかわからないだろう。」

 2011年3月11日の日本を襲った大震災により、いろいろな物の見方が変わってきたと思う。それは「ありえない」と思っていたことが現実にはありうることを再認識させた。それは自然災害であり、原発による被害でもあった。

 それだけではない。人との結びつきが強く意識されたり、それを見直したりと人生観まで変わってしまった人も多かったようである。電気、ガス、そして水というインフラのありがたさを再確認した人も多いであろう。

 我が家も大きな被害はなかったものの茨城というとりあえず被災地であり、短期間ではあったが電気や水道のない生活を送らざるを得なかった。そのなかで感じたことのひとつが、最初の言葉にあったように、ガソリンや水を「買いたくても買えない」状況であった。これは一時的な物不足に過ぎなかったとは言え、その時に抱いた恐怖心のようなものは忘れられない。

 最初の言葉は、文面からもわかるように今回の震災を受けて書かれたものではない。この文章の前に次のような文書がある。

 「通貨価値の急落に愕然とした経験のない主婦には、通貨の安定がどんなにありがたいのかは、わからないだろう」

 これは第一次世界大戦後のドイツのハイパーインフレについて書かれた「ハイパーインフレの悪夢」(アダム・ファーガソン著)の一節である。

 ひとつ問題を出したい。インフレやデフレを人為的に創りだすことは可能であろうか。つまり意図的にインフレにしたり、デフレにしたりすることである。

 中央銀行の金融政策はまさにその物価を上げ下げすることが目的ではないかと言われるかもしれない。しかし、日銀の金融政策の目的は「物価の上げ下げ」にあるのではない。「物価の安定」が目的である。

 何が違うのか。そもそも中央銀行には物価を上げ下げする手段は持たない。あくまで物価の上昇を金融引き締めによりブレーキを掛けたり、デフレに対しては金融緩和によりその流れを少しでも食い止めようとするものである。中央銀行は直接、物価に働きかける手段は持っていない。

 いや、厳密に言えば手段はある。たとえばインフレにするには、日銀券や同様の信用力を持っている国債の信用を低下させれば良い。日銀に国債を引受させることで、日銀が財政をファイナンスする仕組みが出来上がる。とりあえず政治家はそれに限度額を講ずることで歯止めがかかるとするであろうが、目的が財政ファイナンスであれば、それは絵に描いた餅であり、歯止めはかけられず国債の信用力は低下しよう。

 発行される国債が日銀引受により安定消化されるようになると、いったん財政への懸念は後退するとともに、積極的な財政政策により景気が上向くことも予想される。物価も上昇し、税収も回復するであろう。そして、ある程度、物価の上昇が意識されたところで、ブレーキは掛けられるであろうか。

 景気が良ければ貸し出しも伸びてくることで、銀行が余剰資金を振り向けるようなことをしなくなる。物価上昇とともに長期金利は上昇することで、それにより海外からの日本国債への投資を招くかもしれない。しかし、中央銀行しか買い手がないような国債に手を出すような海外投資家はいないであろう。

 長期金利の上昇は国債の利払い負担を増加させ、ある程度税収が回復してもそれを相殺してしまう。さらに物価上昇は金利の急騰を招くことになり、それでなくても信用力を失った国債の利回りは大きく上昇することが予想される。市場金利である国債の利回りを抑えこむことは、現在のギリシャの金利を抑えこむのと同様に困難極まりなくなる。

 国債そして円に対しての信用力の低下は、物価の上昇を招くことになり、それがハイパーインフレに繋がる危険性が強まる。その結果生じるのが、第一次世界大戦後のドイツや第二次世界大戦後の日本で見られたハイパーインフレである。これまで日本国債を買い支えていたのが国内資金であるだけに、その価値の実質的な目減りは国民生活を直撃しよう。

 通貨価値が安定しないという状況は、今回の震災後にみられた物不足のパニックがまるで些細なことであったように感じさせることになろう。今度は物があってもそれが財布の中の円では買えなくなってしまう。

 そんなことが起きるはずがないと言うかもしれない。現在の政府や日銀がそんなことを許すわけがないと言うかもしれない。しかし、デフレを解消しさえすればすべてはうまく行くという主張が、国会議員からも出されているような状況にあることを良く考えてみる必要がある。ハイパーインフレは決して過去の遺物ではない。


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by nihonkokusai | 2011-07-14 11:03 | 国債 | Comments(0)

CPI基準年改定による影響は大きなものに

 日銀は本日の金融政策決定会合で、4月に発表した展望レポートの中間評価(中間レビュー)を行うが、その際に東日本大震災の影響により、2011年度の「実質GDP」は4月見通しのプラス0.6%から下方修正されるとみられる。

 しかし、消費者物価指数(除く生鮮)の見込みについては、大きな修正はないとみられる。4月時点での消費者物価指数(除く生鮮)は前年比プラス0.7%の見込みである。ただし、これは現行の2005年基準の指数をベースにしている数値である。

 来月8月26日に発表される7月の全国消費者物価指数からは、基準年が現行の2005年から2010年に改定される。前回の2000年から2005年の改定の際と同様に0.5%近辺下方修正されるのではないかとみられていたが、その修正幅が大きくなる可能性が出てきた。

 先週7月8日に、総務省は「平成22基準 消費者物価指数ウエイト」を発表したが、これによるとエコポイントや地デジ化にともない販売額が伸び、さらに価格低下の大きな液晶テレビの影響が大きくなるため、当初想定されていた0.5%近辺のマイナス修正が、0.8%近辺のマイナス修正となる可能性が強まった。

 そうなれば展望レポートのCPI予測が基準年の変更による要因を含まずにプラス0.7%となっているだけに、マイナス0.8%近辺の修正が入れば結局、マイナス圏となる可能性がある。

 基準年の変更によるマイナスは、エコポイントなどの特殊要因も絡んだものであり、これを持ってデフレからの脱却が余計困難になると結論づけるわけにはいかないものの、なかなか物価が上昇しにくい環境が続いていることは明らかである。

 日銀は4月の展望レポートの際には、「中長期的な物価安定の理解」に基づいて物価の安定が展望できる情勢になったと判断されるにはなお時間を要するとしているが、基準年の変更によりさらに時間が必要となる可能性が高まる。

 つまり、それは現在のゼロ金利政策を続ける時間軸をさらに長期化させることとなり、これは長期金利にとり低位安定させるひとつの要因とはなろう。

 もちろん、現在の物価を取り巻く環境に大きく変化が生じないとの前提の上での見方であり、今後、資源価格の高騰といった状況などが発生すれば状況が変わる可能性はある。


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by nihonkokusai | 2011-07-13 11:25 | 景気物価動向 | Comments(0)

債券や国債に対する認知度

 ある程度、専門に特化してしまうとその仲間内では通じることも、外部の人が聞くと何を言っているのかわからないことがある。福島原発の事故による放射性物質の拡散についても、たとえばマイクロシーベルトといった専門用語が何を示しているのかすらさえ当初はわからないような状況にあった。

 専門用語は専門家が理解できれば通常は済むものである。専門外の人はよほどの好奇心からか、もしくは何かの必要に迫られでもしなければ、その専門知識は必要にはならない。

 それぞれの分野に精通してそれを解説する専門家が存在する。債券関係で言えば、ストラテジスト、アナリスト、エコノミストと言われる人たちであるが、その解説する対象は一般向けというよりも、その専門家向けである。

 専門分野を必要に応じて一般向けに解説しているのは、これらの専門家の話を聞いて伝えるマスコミとなるが、よほど世間で騒がれるようなことがない限り、専門的な話をマスコミが取り上げることはない。

 つまり、たとえば金融市場にあって、世間一般が注目する株式市場や外為市場の動きは、それなりに解説されることはあっても、債券や国債については原発事故前の原子力関係の知識のように、世間一般からはあまり関心をもたれるものではない。

 特に債券に関しては、その市場が存在していることすらあまり認知されていないように思われる。日本国債が暴落するとか、格下げで海外投資家が国債を売ると漠然と考えていても、それがどこでどのように売られるのかを具体的にイメージしているわけではないのではなかろうか。

 海外投資家といってもいったい誰なのか。そもそも国債暴落とはどのようなことを指すのか。それ以前に、どのような理由で国債価格が上げ下げしているのか、それすら理解せずに、国債は全く問題がないとか、国債は危険だとかを、あまり市場そのものを知らない人たちが騒ぎ立てていることも多い。

 国債のリスクも原発のリスクも、それぞれ極論が先走ってしまっている感もあるが、それを一番良く理解しているのは現場にいる人達のはずである。債券についても市場の動き、またそのリスクを一番理解しているのは、日々その売買に携わっている人たちであろう。

 現在は確かに世間一般からの債券や国債に対する認知度は低いと思う。しかし、原発のリスクが福島原発の事故で明らかになり、また国の財政に対するリスクがギリシャ・ショックなどで明らかになるなど、いずれ日本国債のリスクが何かのきっかけで顕在化する可能性がある。

 それに備えておくためには、ある程度、基礎的な債券市場そのものの知識も得て置く必要もあるのではなかろうか。デフレ解消のために国債をどんどん発行して日銀に引受させてでも、物価を上昇させれば日本経済は回復すると説く人たちがいる。しかし、その人達には巨額の国債を発行するためにどれだけ神経が使われているのか。何故、それが安定消化されているのか、そういった根本的な理解が欠如していると思う。そのような意見に惑わされず、冷静な見方をするためにも、世間一般における債券や国債に対する認知度を少しでも高められればと思っている。


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by nihonkokusai | 2011-07-13 11:22 | 国債 | Comments(0)

日本国債の買い手

 6月17日に発表された資金循環統計(速報)(1~3月期)のデータから日本国債の保有者の内訳がわかる。

 日本国債の最大の保有者は、銀行など民間預金取扱機関である。ここにはゆうちょ銀行も含まれるが、286兆3280億円となり、全体に占めるシェアは39.4%とほぼ4割を占める。

 民間の保険・年金にはかんぽ生命も含まれるが、175兆3205億円となり、全体に占めるシェアは24.1%となり、全体の四分の一を占める。

 そして、公的年金は73兆8854億円となり、シェアは10.2%である。また、投信など金融仲介機関も35兆9482億円と4.9%のシェアとなっている。

 個人向け国債などを購入している個人は、家計として集計されており、31兆1209億円で4.3%のシェアとなっている。

 このように銀行・保険・年金、さらに投信等や家計で、日本国債の83.0%と8割近くを占めており、個人の資金が預金や保険料、年金積立、投信などを通じ、さらに個人け国債などを通じて直接に国債投資に向かっており、日本国債を支える構図となっている。

 この中でも大きなシェアを占めているのが、銀行と生命保険会社といえる。7月2日付けの日経新聞によると、日銀調べで国内民間銀行の国債保有残高は4月末に前年同月比16%増の約158兆7791億円となった。5年前の約100兆6700億円に比べて58%増、さらに10年前の79兆3740億円に比べて約2倍となっている。

 保有額を大きく増加させたのはいわゆるメガバンクであり、この理由としては預金の振り向け先が見当たらないためである。預金がどれだけ貸し出しに回ったのかをみる預貸率は3月末で71%と過去最低となった。さらにバーゼル3など銀行に対する規制強化の動きも影響している。

 こういった動きは銀行ばかりでなく、生保も同様であり、7月8日付けの日経新聞では今年3月末の生命保険会社の運用資産に占める国債の比率は41.3%となり、5年連続で過去最高を更新した。これと対照的に1980年代まで5割を超えていた融資比率は13.7%と過去最低水準となっているのである。

 生命保険協会によると、国内で営業する生保47社の運用資産は3月末で313兆円で、そのうち国債が132兆円となっている。生保も銀行と同様にその他の資産での運用が難しくなっている上に財務の健全性を示すソルベンシーマージン比率の算定基準が2012年3月期から厳しくなることも影響している。

 この動きは当面続くものと予想される。リーマン・ショックなどを受けての金融機関への規制強化や財務の健全性は今後も求められるとみられる上、今後も貸し出しが大きく伸びることは期待しづらい。

 今後の国債需給だけを考えれば、これは国債の安定消化につながるものではある。しかし、それは日本全体でみればデフレ圧力の強まりや景気の低迷が背景となるため、決してプラス要因ではない。この状況は何らかのかたちで打破しなければいけないが、その際には国債の新たな買い手を探すことも必要となろう。


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by nihonkokusai | 2011-07-11 08:20 | 国債 | Comments(0)

欧州委員会のバローゾ委員長による格付会社批判

 5日に格付会社ムーディーズは、ポルトガル国債の格付けをBaa1から投機的等級のBa2に4段階引き下げたが、欧州委員会のバローゾ委員長は信用不安を煽る恐れもあるとして、格付会社の対応を強く批判した。

 バローゾ委員長は「ある格付け会社による決定は、何かをより明確にするものではなく、むしろ現況に新たな投機的な要素を加えるものでしかなかった」とし、ムーディーズによる格下げは金融市場における投機的な動きを助長させているとの見方を示したのである。

 バローゾ氏は現在、ヨーロッパ連合の執行機関であるヨーロッパ委員会の委員長であるが、2002年4月6日から2004年6月29日までポルトガル首相を務めていた。ヨーロッパ委員会が個々の格付け会社の対応を批判するのは異例とされるが、自国の格下げに対するものであったこともあり、強い批判につながった可能性もある。

 バローゾ委員長はまた、「欧州からの格付け会社が1つもないのは奇妙なことだ。これは、欧州のある特定の問題に対する評価に関して、市場である一定の偏見がある可能性を示している」と述べ、欧州各国が主に米国に本拠を置く格付け会社への依存からの脱却を検討しており欧州の格付け機関設立も示唆している。さらに法的な手段を通した是正の可能性も探っていることを明らかにした。

 さらに欧州中央銀行のトリシェ総裁は7日の理事会後の会見において、「国際金融のレベルでの小さなグループ、小さな寡占的体制は恐らく望ましくない」とした、格付会社の機能は最適ではないとも語っている。

 日本国債がムーディーズやS&Pの格下げで動揺を示さなかったひとつの要因として、国内では格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)など国内の格付会社が日本国債に対して格付を変更してこなかったことも影響している。

 このため、一部の格付会社による小さな寡占的体制を打破するため、欧州の格付け機関設立もそのひとつの手段ともなろう。国債に対する格付けそのものは1920年代にはじまったとされ、実は歴史が古いものである。しかし、過去の歴史を見ても国債がデフォルトとなった事例は多くない。しかも1960年代以降、国債のデフォルトはアルゼンチンやロシア等発展途上の国家ばかりあり、先進国での例はない。

 今回のギリシャの事例についても過去に例のないものであり、それについて一部の格付け会社だけの見方だけを取り上げてよいものであろうか。日本国債の例を見ても、それが適切であったかどうか疑問も残るところだけに、格付け会社による格付けの取り扱いは慎重にすべきものであろう。

 バローゾ委員長は自国の格付けが下げられただけに、余計に格付け会社に対する強い批判となってしまった側面はあろう。しかし、格付けそのものに対する市場の過剰な反応をある程度押さえ込むために、なんらかの手段を講じる必要はあると考える。


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by nihonkokusai | 2011-07-09 08:57 | 国債 | Comments(0)

個人向け国債の販売額が大幅に増加した要因とは

 6日に財務省は6月に募集した個人向け国債の応募額を発表した。これによると個人向け利付国庫債券(変動10年:第35回)は2319億円、個人向け利付国庫債券(固定5年:第23回)は1688億円、個人向け利付国庫債券(固定3年:第13回)は501億円となった。

 変動10年タイプの応募額は前回の126億円から大幅に増加し、2007年7月の3713億円以来の水準となった。また、全体でも前回の3月募集の2399億円から4508億円に増加した。これは2009年7月の4873億円以来の多さとなる。

 今回、なぜこのように急激に10年変動タイプの個人向け国債が売れたのかといえば、今回から10年変動タイプの適用利率の算式が、これまでの「基準金利-0.80%」から、「基準金利×0.66」に変更されたことが最大の要因であろう。

 今回の個人向け国債の適用利率は、変動10年第35回債の初回の利子の適用利率が年率0.77%(税引後0.616%)となった。基準金利は6月1日の10年国債の入札結果から算出された金利1.17%であり、これまでの利率の方式ならば0.37%であったので、それに比べてかなり有利となった。

 また、固定5年第23回債の利率は年率0.41%(税引後0.328%)、固定3年第13回債年率0.20%(税引後0.160%)であり、10年変動の有利性が目立つ格好となった。

 さらに今回から個人向け国債の広告がリニューアルされ、ツイッターでもコクサイ先生のつぶやきが開始されるなどしたことも販売増に影響した可能性がある。ボーナス時期と重なったことも要因であろう。

 とは言うものの、今回の個人向け国債の販売額の増加の主因は、10年変動タイプの利率設定の変更によるところが大きいことは間違いない。過去の個人向け国債の売り行き状況を見ても、初期利子や利率が高くなっているときに販売額が増加しており、今回の販売額の増加についても、個人による国債投資は利率がポイントとなっていることを裏付ける格好となった。

 個人向け国債は、10年変動タイプが良いのか5年固定タイプが良いのかについて、昔、NHKのテレビ番組で解説させていただいたことがある。その際には利率の設定のわかりやすさなどから5年固定タイプに軍配が上がった。しかし、今回の販売状況を見ると、個人は利率の設定がわかりにくい変動タイプだから敬遠していたとも言えず、やはり利率、初期利子の高さの違いが単純に販売額に結びついていた可能性がある。

 ここにきて販売が低迷していた個人向け国債であるが、今回の販売額の回復が今後も継続していくのかも注目したい。2011年は5年固定タイプの償還が始まり、約4兆円規模とみられる資金の行き先が注目されている。個人向け国債を購入する資金は安全性が配慮されるが、利率の低い個人向け国債ではなく、とりあえず預貯金に向かうであろうとみられた。しかし、今回の販売額の回復を見る限り、ある程度、個人向け国債のまま滞留する可能性がある。

 今年度の国債発行計画によると、個人向け国債の販売額として2兆円とある。すでに4月から7月にかけての4か月間で個人向け国債は8545億円の販売額となっており、このままのペースで行けば予定販売額を上回る可能性がある。そうなると第3次補正予算による国債増発による市中消化額を多少なり緩和させる可能性もある。今後の個人向け国債の販売状況についても注意して見ておく必要がありそうである。


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by nihonkokusai | 2011-07-08 08:46 | 国債 | Comments(0)

格付会社に振り回される金融市場

 5日に格付会社ムーディーズは、ポルトガル国債の格付けをBaa1から投機的等級のBa2に4段階引き下げた。格付の見通しはネガティブとした。ムーディーズがユーロ圏加盟国に投資不適格級の格付けを付与するのはギリシャに次いでポルトガルで2か国目となる。

 ムーディーズは、資本市場から資金を調達できるようになる前に、第2次金融支援が必要になるリスクが高まっているとしている。4日にS&Pがギリシャ国債のロールオーバーは、選択的デフォルトの状態とする可能性があるとの見解を示したが、ポルトガルも同様の状況となる可能性があるということか。

 また、ムーディーズは今回の格下げの要因として、ポルトガルが2013年7~12月とそれ以降に資本市場で借り入れを維持可能なコストで実施できなくなる確率が高まっていることや、同国が財政赤字削減の目標を完全には達成できないリスクも根拠としたようである。

 ただし、このような格付会社の格下げにより、格下げされた国債の価格がさらに下落することにより、当事国の資金調達を困難にさせるという悪循環をもたらす懸念も存在する。

 もちろん格付会社による国債の勝手格付も、警鐘を鳴らす上では必要なことかもしれないが、市場の不安心理を増幅させることにより、負の連鎖を加速させてしまうと債務問題の解決をさらに困難にさせかねない。

 ロイターによると、欧州委員会のバローゾ委員長は「前日のある格付け会社による決定は、何かをより明確にするものではなく、むしろ現況に新たな投機的な要素を加えるものでしかなかった」と述べたそうで、ムーディーズによる格下げは金融市場における投機的な動きを助長させているとの見方を示した。

 日本国債については、このような格付会社の格付により市場が動揺するようなことはなく、政府の資金繰りに影響を与えることはこれまでなかった。これは日本国債がその95%を国内資金で賄われていることに加え、日本国債への信任の厚さも影響していると思われる。

 さらに国内の格付会社が日本国債に対して格付を変更してこなかったことも影響している可能性がある。日本の格付会社のひとつR&Iは、2月に日本国債格付け(AAA/格付けの方向性はネガティブ)について、引き下げまでの距離が縮まっているとの認識を示してはいたが、その後、東日本大震災が発生し日本の財政状態はさらに悪化する懸念が強まったものの、現在のところ日本国債の格下げには至っていない。

 この点についても、欧州委員会のバローゾ委員長は、「欧州からの格付け会社が1つもないのは奇妙なことだ。これは、欧州のある特定の問題に対する評価に関して、市場である一定の偏見がある可能性を示している」と述べ、欧州各国が主に米国に本拠を置く格付け会社への依存からの脱却を検討しており、法的な手段を通した是正の可能性を探っていることを明らかにしたそうである(ロイター)。

 日本国債についてはムーディーズやS&Pの認識が正しいのか、それとも国内格付会社の認識が正しいのか。国債価格の推移などを見る限り、格付を変更してこなかった国内格付会社の認識の方が適切であったとと思われるが、日本の債務残高の増加状況をみる限り、海外格付会社の格付がある意味正しかったようにも思える。ただし、債務残高は膨らみ続けていた中で、海外格付会社は途中で格付を引き上げるなど一貫していない面もあった。

 いずれにせよ格付会社の見方は絶対的なものではない。しかし、投資家の債券保有には格付の影響は大きいことで、国債の格下げは問題を複雑化させ、さらに市場を混乱させる要因ともなりうる。大手格付会社の格付変更はあくまで警鐘との意味合いにとどめ、市場の混乱を増強させることがないようにさせることはできないものであろうか。


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by nihonkokusai | 2011-07-07 08:10 | 国債 | Comments(0)

9月以降、政府機関の一時封鎖の可能性

 報道によると、赤字国債の発行に必要な特例公債法案がこのまま成立しなければ、早ければ10月中に財源の裏付けのある約48兆円分の予算を使い切ってしまうとの見通しを、政府がまとめたそうである。政府の見通しによると、現在のペースでは、執行額が早ければ10月中、遅くとも11月中に税収と税外収入で確保できる48兆4千億円分に達するとしている。

 野田財務相によると、第2四半期の支出見込み額を含む9月末の累積支出見込み額は約46.7兆円。このうち、建設公債を財源とする事業の執行分を除くと9月末の支出見込み額は約42.2兆円となる。10月の支出額は例年5兆円~6兆円とみられ10月末で48兆円程度となることが予想される。

 他方、歳入面では、特例公債法が成立しなければ、第一次補正後予算総額から特例公債発行額を除く55.7兆円しか確保できず、建設公債発行額7.3兆円を除く48.4兆円が歳出の許容額となる。

 この結果、野田財務相は「早ければ10月中、遅くとも11月中には建設公債を財源とする事業を除く累積の支出額が48.4兆円に到達する見込みだ」との見通しを示し、今会期内に特例公債法が成立しない事態になれば、9月以降、円滑な予算執行が困難になると訴えた(以上、ロイター等)。

 ちなみに「平成23年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案」によると特例公債法は特例公債の発行と、特別会計からの繰入れ等のその他特例的な歳入措置の根拠となるものとなり、平成23年度予算では一般会計予算92.4兆円のうち40.7兆円(このうち特例国債は38.2兆円)がカバーされる。

 すでに新年度入りして3か月以上が経過しており、いろいろとやり繰りした結果、10月あたりまではなんとかなるものの、その先については見通しが立たない状態にある。このため、それ以降の予算執行が停止するだけでなく、9月以降の執行を抑制せざるを得ない状況となるようである。つまり今国会の会期末(8月31日)までに成立しない場合には、いずれ政府機関の一時封鎖(シャットダウン)の可能性すら出てくる。

 民主党の岡田克也幹事長は3日にテレビで、特例公債法案について「できれば11年度第2次補正予算案の審議の前に成立させてほしい」と述べ、野党側に協力を求めたそうである。これに対し、自民党の石原伸晃幹事長は子ども手当に所得制限を設け、民主党のマニフェストはできないと謝るべきだと主張するなど、まだ与野党間の隔たりがある。

 米国でも債務上限引き上げを巡り与野党の攻防が続いており、米財務省は債務上限を引き上げなければ8月2日に同国の債務の履行が不可能になるとの見通しを示している。こちらもぎりぎりの攻防が続いているが、現在のところ日米ともに予算執行のための財源確保ができない状態にある。

 財源確保ができなくなるという異常事態はなんとしても回避すべきであり、もし政府機関の一時封鎖(シャットダウン)などという事態が起きれば、国民生活にも支障が出るだけでなく日本国債への信用そのものに影響する可能性がある。

 日米ともにさすがに最悪の事態は回避させるべく、最終的な落ち着きどころを探る展開が続きそうだが、それぞれタイムリミットも近づいている。日本では震災復興については待ったなしの状況にもある。ねじれ国会により、もし予算執行を妨げるとなれば、与野党ともに責任を負うこととなる。特例公債法案は政争の具にされているが、それが政争の愚とならぬよう、早期に成立をはかるべきである。


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by nihonkokusai | 2011-07-06 13:13 | 国債 | Comments(0)
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