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復興国債の日銀買い切りの問題点

 17日付けの日経新聞によると、民主党と公明党は一次補正で財源に転用された基礎年金の国庫負担割合(2分の1)を維持するための約2.5兆円の穴埋め方法について、東日本大震災復興債の発行で充当する方向で協議に入ったそうである。

 年金給付に足りない分は年金積立金を取り崩して賄うとみられていたが、それでは年金制度への不安が増すとの公明党の批判などを受け、今年度については復興債の発行で手当する可能性が出てきた。

 先日のコラムでも指摘したが、震災による復旧、復興のための国費部分は15~20兆円規模が想定されているが、1次補正が4兆円、2次補正が2兆円規模であり、これを差し引いてもざっくりと10兆円から15兆円規模となることが予想される。そこに2.5兆円分がオンされる格好になるのであろうか。

 この復興国債について、その償還財源を臨時増税で充てるとした政府の復興構想会議の提言案に対し、6党211人による超党派議員連盟の「増税によらない復興財源を求める会」はこの増税に反対した。その上で、当面の対応について「政府と日銀の間で政策協定(アコード)を締結し、必要な財源調達として政府が発行する震災国債を日銀が原則全額買い切りオペするよう求める」と提唱しているのである。

 これは批判も強い日銀による国債引受とはしていないが、財政ファイナンスが目的であるため、たとえ買い切りオペであろうが、日銀の国債引受となんら変わりはないものである。日銀の国債引受による弊害については言うまでもないことながら、それを211人もの国会議員が賛同しているという事実に驚きである。

 白川日銀総裁が「通貨、国債、中央銀行 ―信認の相互依存性―」と題する講演の中で述べているように、仮に中央銀行による国債買入れオペが財政ファイナンスや国債金利の安定を目的として行われていると受け止められるようになると、リスク・プレミアムが高まり、長期国債金利は上昇する。

 震災の影響が残る中で増税反対なのは理解できなくもないが、それでなぜ日銀に国債を引き受けさせなければいけないのか、その理由がわからない。日本の市場にはまだ国債を消化する余地はあるはずである。もし将来の税収ですでに国債が賄いきれないというのであれば、来年度の新規国債の発行などできない状況にあるというのであろうか。

 増税反対ならば、将来の税収増を見据えた政策を講じる必要がある。もしその手段が日銀による国債引受によるとするのならば、何のために国会議員は存在しているのであろうか。


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by nihonkokusai | 2011-06-18 10:45 | 国債 | Comments(0)

補正予算の財源問題

 第2次補正予算は1.5次的な補正予算の位置づけとなり、規模は2兆円程度と小規模となる見通しで、財源については税収の上振れなどによる1.4兆円程度の2010年度決算剰余金を全額充てることで、赤字国債や建設国債は増発しない方針のようである。

 ただし、決算剰余金は財政法6条で、2分の1以上を国債などの償還財源に充てることが決まっている。(財政法 第6条 各会計年度において歳入歳出の決算上剰余を生じた場合においては、当該剰余金のうち、2分の1を下らない金額は、他の法律によるものの外、これを剰余金を生じた年度の翌翌年度までに、公債又は借入金の償還財源に充てなければならない。)

 剰余金を全額繰り入れるには特例法を制定する必要がある。つまり、決算剰余金を財源として活用するためには、特例公債法案と同様の特例法を国会で通す必要がある。

 15日に民主と自民そして公明3党が幹事長会談を開いたが、そこでは特例公債法案の成立へ向け、政調会長レベルの協議を始めることで合意とも伝えられている。もし、2次補正予算を成立させその財源も確保するには、今年度の特例公債法案も同時に成立させなければ理屈に合わない。

 そして、今後予想される3次補正については10兆円以上の国費が必要にされると予想されている。震災による復旧、復興のための国費部分は15~20兆円規模が想定されているが、1次補正が4兆円、2次補正が2兆円規模であり、これを差し引いてもざっくりと10兆円から15兆円規模となることが予想される。

 この財源については臨時国債を発行し、所得、法人、消費税の基幹税を増税して償還するよう求める復興構想会議で提言がなされている。この臨時国債は復興国債とも呼ばれるものであり、通常の国債とは別のものとして発行されるものとなる。

 1995年の阪神淡路大震災の際には10兆円近くの被害を受け、3回の補正予算が組まれ、支出総額は3兆2298億円に上っていた。この際には、8106億円の震災特例公債が発行され、3兆3337億円の減税特例公債も発行している。

 この前の時期では、経済成長が持続しこの時期、一般歳出は抑制され続け財政再建策が取られていたことで、財政状況は大きく改善した結果、1990年度には特例国債依存から脱却し、1990年度から1993年度まで特例国債の発行停止が続いていた。このため、ある意味、現在に比べて財政の余裕はあったとも言える。ただし、これをきっかけに特例国債の発行が再開されたことも確かであった。

 しかし、今回発行が見込まれる復興国債については、規模も大きいことからそれなりに市場への影響も大きくなることが想定される。ただし、実際の市中消化額は前倒し債の取り崩しによる発行余力分もあるため、それほど大きくはならないであろうとも予想される。いずれにせよ、早めに今年度の特例公債法案を国会で通し、2次補正の財源問題もクリアーにしておかないと先には進めない。これらがあまり先送りされてしまうと年度末に向けての国債発行額が予想以上に大きくなってしまう懸念も生じる。


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by nihonkokusai | 2011-06-17 08:43 | 国債 | Comments(0)

日銀の新たな貸付と景気判断

 日銀は14日の金融政策決定会合で出資や動産・債権担保融資など、不動産担保や人的保証に依存しないABLと呼ばれる融資を対象に、5000億円を上限として、年0.1%の金利で原則2年とし1回の借り換えを可能とした最長4年の貸し付けを行う新しい枠組みを決定した。

 日銀は昨年3月から、成長分野への投資促進に向け、民間金融機関に政策金利の0.1%で貸付期間原則1年とし、貸付総額の残高上限は3兆円として資金を貸し出す「成長基盤強化を支援するための資金供給」制度を導入した。これまでに計4回実施され、すでに総貸付残高は約2兆9424億円と上限の3兆円にほぼ達している。

 この資金供給は、金融機関の自主的な取り組みを進めるうえでの「呼び水」としての役割を果たしてきているが、成長基盤強化に向けた企業の取り組みをさらに後押しして行く観点から、資本性資金の供給や従来型の担保・保証に依存しない融資に着目し、今後これを支援していくことが適当と考え、あらたな貸付枠を設定することにしたようである(白川総裁会見より)。

 白川総裁は、成長基盤強化を支援するための資金供給の上限を引き上げなかったことについては、「これまでやってきた成長基盤強化支援の枠を単純に増額することは、効果と副作用の面からみてそろそろ限界に近づいている」と述べた。

 今回の新たな貸し付け制度もあくまで「呼び水」的な効果が期待されるもので、景気そのものへの影響は限定的であると思われる。ただし、「成長基盤強化を支援するための資金供給」制度を完全に打ち切ることはせず、内容を変えて貸し出しを継続させたものとみられる。

 そして、14日の金融政策決定会合では足元の景気判断を、5月の「わが国の経済は、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある」から、「わが国の経済は、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力が続いているが、持ち直しの動きもみられている」と修正されている。

 5月には「震災による供給面の制約を背景に、生産活動は大きく低下している。この結果、輸出が大幅に減少し、また、企業や家計のマインド悪化の影響もあって、国内民間需要も弱い動きとなっている。」とかなり弱気な見方となっていたが、今回は「最近は供給面の制約が和らぎ始め、家計や企業のマインドも幾分改善しつつあるもとで、生産活動や国内民間需要に持ち直しの動きもみられている。」とやや強気の見通しに転じている。

 確かに震災の影響による生産活動の低下はかなり大きなものであったが、自動車を含めて予想以上の回復をしていることも確かであり、特定の産業への依存度が高い日本経済のリスクがやや軽減したと判断したともみられ、この変更には違和感はない。西村副総裁が4月28日に基金の増額というに独自議案を出しながら、その後、引っ込めたのもこういったマインドの変化を意識してのものであろう。

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by nihonkokusai | 2011-06-16 08:19 | 日銀 | Comments(0)

第2次補正予算は1.5次的補正の位置付けに

 野田財務相は14日の閣議後の会見で、菅首相から2次補正予算を編成し、7月初めに国会に提出するよう指示があったことを明らかにした。規模は10兆円を超えるようなものではなく小規模となる見通しで、財源については税収の上振れなどによる1.5兆円程度の2010年度決算剰余金などを充てることで、赤字国債や建設国債は増発しない方針のようである。

 特例公債法案の行方が不透明であることに加え、首相の退陣のタイミングなども絡んで、その後、本格的な補正予算への繋ぎのような補正予算を編成するようである。

 中途半端な規模といえど補正予算の成立までには時間も要する。本来であれば、これほど大きな災害を受けた以上、迅速な復旧、復興が求められるはずである。しかし、特例公債法案が政争の具にされたことや、首相の退陣問題も絡んで本格的な復興にむけた政府の対応は先送りされた格好になる。

 ここには復興に向けての主導権争いなども影響してこよう。今後の10兆円を超える規模とみられる補正予算をどのように配分するのか。ある程度のグランドデザインを描いた上で、被災地の今後も見据えた復興対策が求められるところであるはずが、利権争いなどが絡んできては有効的な活用ができなくなる恐れもある。

 日本人は我慢強いと言われるが、それでもこういった政府の対応に対しては異議を唱える必要もあろう。危機には危機の迅速な対応が求められる。それができないというのであれば、少なくともトップは早く交代して、状況を変えていく必要があると思う。

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by nihonkokusai | 2011-06-15 08:36 | 国債 | Comments(0)

原発全停止の可能性とその影響

 東京電力の福島第一原子力発電所における事故と、それにより多量の放射性物質が外部に放出されたことにより、原発そのものへの見直し機運が高まっている。原発再開の是非を問うイタリアの国民投票は、投票率が50%を超えて成立し、暫定開票結果では、原発凍結賛成票が約94.5%を占めた。国内世論に関しても今後、脱原発に向けて高まることが予想され、来年春には全ての原発が停止する可能性がある。

 経済産業省所管の日本エネルギー経済研究所によると、すべての原子力発電所が運転停止し、火力発電所で発電を代行した場合、液化天然ガスや石炭など燃料調達費が増えるため、2012年度の毎月の標準家庭の電気料金が平均で1049円上昇するとの試算を発表した(読売新聞)。このように家計にも負担が掛かり個人消費にも影響が及ぶ可能性がある。この1千円のアップを高いと見るか安いとみるか、毎月1千円の節約で原発リスクをおさえられるならばとの見方も出てこよう。

 中部電力は菅首相の要請を受けて、5月14日までに浜岡原子力発電所の全原子炉を停止した。現在の時点で、停止している原発は、福島第一、第二原発や浜岡原発、女川原発、のほか、定期点検中のものを含めると35基となり、営業運転しているのはわずか19基となっている。

 原発は電気事業法により、ほぼ13か月おきに、原発を停止して検査を行うことになっている。通常の場合は、定期検査で停止した原発は地元の了解なしに運転を再開し、1か月程度の調整運転を経て、原子力安全・保安院の最終試験を実施し、営業運転に入ることになる。

 しかし、今後は福島第1原発の事故を受け、地元への理解が必要となろう。枝野官房長官も5月の会見で、定期検査中の原発の運転再開について「各電力会社の緊急安全対策を、国がしっかり確認した上で、地元の意向を踏まえて検討していく」とコメントしている。

 ただし、政府は浜岡原発を停止させたこともあり、原発再開に対して現時点で地元(原発を抱える14道県)の協力を得ることはかなり難しいであろう。今後の大きな余震発生の可能性も指摘される中で、原発再開へのリスクを地元住民もかなり警戒してくることが予想されるためである。

 もし、随時原発が点検に入り、再開ができなくなれば来年には、国内のすべての原発が停止する可能性がある。全国の電力供給の3割を担う原発が止まれば、震災で大きな打撃を受けた日本経済にさらにマイナスの影響を与える可能性があり、生産拠点の海外移転による産業空洞化が加速される懸念もある。

 国内原発がすべて停止されるとなれば、それに向けて電力の供給不足を補う方法とともに、需要を抑える必要性も出てこよう。これまでオイルショックなど大きなショックを乗り越えてきた日本だけに、今回も震災復興とともに新たな電力供給に向けての努力が行われるであろうが、その間、経済は影響を受けることになる。

 オイルショックを乗り越えた日本ではあったが、その影響を受けた税収不足などのため特例法を制定しての赤字国債が発行されるなどしており、政府債務増加のひとつのきっかけともなっている。今回も震災と原発事故の影響で、政府債務がさらに拡大するとみられる。景気へのマイナスの影響は税収不足をもたらすことが予想される上、歳出の増加により、いわゆるワニの口はさらに開くことも想定される。その分、いわゆる臨界点は前倒しされることとなる。だからこそ、原発は再開すべきというわけではない。念の為、それによる影響もある程度、想定しておく必要もあると思うのである。


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by nihonkokusai | 2011-06-14 08:43 | 景気物価動向 | Comments(0)

AKB48の総選挙と民主党の代表選

 既に社会現象と化しているAKBの総選挙が6月9日の夕方に実施された。秋葉原のドン・キホーテの上にできたAKB48劇場をホームグラウンドとするAKB48がこれほどまで活躍するとは思わなかった。ただし、秋元康氏がプロジュースするということで、何か仕掛けてくるような予感だけはあった。

 私自身、AKBのメンバーでも顔と名前が一致するのは数人である。それでも今回の総選挙には関心があった。たかが新曲のセンターを決めるのに武道館まで使うことはあるまいと思うが、その投票権ほしさにCDを買い求める人が続出し、その結果、売れ行き不信のCD業界にあって、投票権のついたCD「Everyday、カチューシャ」売上が133.4万枚に達したそうである。

 それに対して、民主党のセンターを選ぶ代表選が7月にも行われる見通しが出てきている。しかし、すでに有力候補とみられていた岡田民主党幹事長や大連立を模索している仙谷官房副長官、さらに震災後に人気が高まっている枝野官房長官らは代表選に立候補しないことを表明した。

 これは候補をある程度絞った上で、代表選を行うことを想定しているとみられ、その有力候補に野田財務相の名前が上がっている。

 日本の政治は政党政治である以上は、自民党が政権を握っていた時代には自民党総裁選、そして民主党が政権を担ってからは民主党代表選が日本の首相を決める選挙となる。しかし、その選挙権は当然ながら党員にしか認められておらず、国民全体の声が反映されたものではない。

 AKBの総選挙はまさに誰が最も人気が高いのかを決めるものであろう。それを例えば日本の首相を決める選挙と同列で考えるのはおかしいかもしれないが、それでもより国民の声を反映できるような首相の決め方はないものなのであろうか。さらに毎年恒例のようになってしまった首相交代もなくして、ある程度の長期政権を構えられるような工夫はできないものなのであろうか。

 野田財務相が次期首相となれば、財政再建路線が引き継がれることになり、日本国債の信用度も維持されよう。しかし、新しい首相がその力を存分に発揮できるような組織づくりも必要であろう。しかし、現在の民主党からはそれも難しい面がある。内部分裂は回避されたものの、民主党がまとまっているようには思えない。また、自民党と連立を組むにしても相容れない部分も多く、たとえ震災復興のための限定的なものだとしても、まとまりそうはない。

 本来であれば今回の大震災のような未曾有の危機が訪れた際には、政治が大きく変貌し、ひとつになって国難に立ち向かっていたはずである。しかし、それでも政治は動かず、いまだに政争を行なっている。あれだけの危機、さらに原発事故まで起きても、特例公債法案を政争の具にするような余裕があるということなのであろうか。

 日本の政治を変えるほどの危機となれば、それは日本の債務危機が訪れたときと考えられる。国内資金が日本国債が賄えなくなることがはっきりした際に、政治は変わるのであろうか。しかし、それに気づいたときには対処の手段もないことになる。

 日本にはこれまで蓄積されたものがあり、未曽有の危機であろうと、巨額債務であろうとなんとか乗り切ってきている。しかし、その余裕がいつまで持つのかはわからない。チーム日本のセンターに位置する者は、その余裕部分を使い切るのではなく、余裕のあるうちに本当の意味での危機を招かないための施策を講じる必要があるし、そのような政治の仕組みを作る必要もあろう。


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by nihonkokusai | 2011-06-13 09:43 | 国債 | Comments(0)

震災により国債を取り巻く環境の変化

 6月8日に発表された4月の国際収支統計では、経常収支は4056億円の黒字となり、大幅に減少した。この減少要因としては貿易収支が4175億円の赤字となったことに加え、サービス収支が4213億円の赤字となったことが大きい。

 東日本大震災等の影響により輸出が減少した半面、輸入が増加したことにより、貿易収支は赤字に転じた。ちなみに4月の米貿易赤字が減少したが、この要因のひとつに震災の影響により日本からの輸入が減少したことが指摘されている。

 さらにサービス収支も4213億円の赤字となっていたが、これは東日本大震災後に世界中で訪日自粛ムードが広がったことにより、入国者数の大幅減少を主因に旅行収支の赤字幅が拡大したことが大きく影響している。

 ただし、所得収支が1兆3308億円の黒字となっていることから、貿易収支の赤字転換やサービス収支の赤字を相殺した格好となっていた。

 このように国債需給にも影響を与えかねない経常収支の黒字幅の縮小は気掛かり材料ではあるが、所得収支が大きいことで当面の赤字転落は考えづらく、また生産の回復とともに輸出も回復することが予想され、貿易収支の改善も見込まれる。

 しかし、震災をきっかけにサプライチェーンの問題が表面化し、また原発事故や、それによる電力供給不足の問題により、産業の空洞化リスクもある。これにより日本の貿易構造そのものが大きく変化し、貿易収支の改善が進まない可能性もありうる。

 そして、震災や原発事故への対応により銀行貸出にも多少なり影響が出ており、8日に日銀が発表した銀行貸出においてマイナス幅が前月より0.2%縮小している。これについて日銀は「設備投資のための資金需給は引き続き弱いが、東日本大震災後に運転資金の需要が増えている」としている。

 日本国債を買い支えているのは国内資金である。特にここにきては貸し出しの伸び悩みや、企業の手元資金の増加分が新規に発行される国債を買い支えてきた面がある。しかし、今後は震災の影響を受けて企業の運転資金の増加も見込まれることで、それに頼ることが出来なくなることも考えられる。

 第二次補正予算においては国債増発が予想されている。財源を特定しての復興国債の発行となったとしても、来年度以降も将来の税収を担保に発行される巨額の新規財源債を発行しなければならない状況下ではあまり意味をなさず、その分、国内資金での国債消化余力を減少させることになる。

 震災や原発事故による影響により、国債を取り巻く環境は悪い方向に向かう可能性がある。これですぐに国債需給に影響を与えるわけではない。実際に現在でも長期金利は1.1%台にあるなど低位安定している。しかし、少し長い目で見れば、決して安寧としてはいられないことも確かであろう。

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by nihonkokusai | 2011-06-11 11:54 | 国債 | Comments(0)

日本の中長期債の購入を増やしている中国

 5月20日に日本証券業協会が発表した公社債投資家別売買高によると、短期債を除いたものでみると外国人投資家が1兆7009億円の買い越しとなっていた。国債の投資家別売買高で見てみると、外国人投資家は中期債を2兆1362億円買い越しとなっていた。

 そして、6月8日に財務省が発表した4月の国際収支によると、中国がネットで中長期債を1兆3300億円買い越し、短期債を1兆4887億円売り越していたことが明らかになった。

 ちなみに財務省の発表した国際収支から、この中国の数値を拾うには、財務省のサイトの関連資料・データ、国際収支状況、報道発表資料(発表日別)に入り、平成23年の6月8日発表分の中の付表3(対外・対内 証券投資)のPDFを開く。そのPDFファイルの下の方に、対内証券投資(地域別内訳)があり、そこで確認できる。

 中国の外貨準備は3月末で3兆447億ドルと3兆ドルを越えている。その運用先として米国債を主体とするドル資産から、他通貨の資産への乗換を行なっているとみられ、実際に中国の保有する米国債は減少傾向にある。

 これは「MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES」からも確認できる。中国による米国債の保有額は2010年8月に1兆1753億ドルあったものが、今年3月には1兆1449億ドルに減少している。

 中国の巨額な外貨準備の運用先のひとつとして日本の債券(ほとんどが国債か)が選択されているとみられる。ただし、短期債では利回りが低いため、より高い利回りを求めて中期債あたりに比重を移している可能性がある。

 日本国債への中国からの投資は政治的な意図はあまりないとみられ、為替市場で円が安定していることもあり、投資先として日本の債券が選択されるのは理にかなっている。ただし、今後も日本の債券を安定的に中国が購入してくるかどうかは不透明である。むしろ足の早い投資家、といった感じでみておくほうが良さそうである。

 日銀の資金循環統計は今月17日に2011年3月末の数字が発表される予定であるが、2010年12月末の段階でも、資金循環統計から見た海外投資家による日本国債の保有比率は4.8%しかない。多少、中国の保有が増加してもこの保有比率は大きくは変わらないとみられる。

 ただし、日本国債を売買する投資家として中国がそれなりに存在感を示しつつあることも確かなようである。中国が日本の債券動向に関する情報を求めているといった話も聞く。日本の債券相場に影響をあたえる投資家のひとつとして、中国が入ってきていることも確かなのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2011-06-10 08:28 | 国債 | Comments(0)

バーナンキ議長が語った財政再建策

 バーナンキ米連邦準備理事会議長は、6月7日のアトランタにおける講演の中では、財政問題にも触れていた。

 景気回復には財政問題が制約となるものの、短期的で急激な財政再建策は、脆弱な経済に対して回復を妨げることにもなりかねない。このため、財政問題に関しては長期的な問題として認識する必要がある。適切な対応策としては、財政再建に向けた信頼に足る長期的な計画を迅速に実行することだとしている。

 これにより景気回復を損なうような財政収縮を避けることが可能となる。それと同時に、信頼のおける財政再建策は長期的に見て経済を強めることになり、長期金利の低下を導き、消費者や経営者の信頼を得ることで、短期的にも恩恵をもたらすとしている。

 これらの発言は米国だけではなく、日本にもまったく同様のことがあてはまる。日本の財政問題は、いまそこにある危機ではないものの、手遅れにならないうちに適格な対処をしておかなければ、財政の持続性そのものに問題を与えることになりかねない。

 リーマン・ショックによる世界的な経済金融危機から立ち直りかけた矢先の大震災とそれに伴う原発事故により、日本経済は大きな痛手を受けた。このため、短期的で急激な財政再建策は、脆弱な日本経済に対して回復を妨げることにもなりかねない。

 しかし、だからといって財政再建問題はもう先送りできるような状況にもない。このため政府も、税と社会保障の一体改革を進めようとしている。その内容について切り込みが足りないとの指摘もあろうが、とにかくもこれまで先送りし続けた消費税増税に道筋をつけることは必要であろう。

 もちろん、震災の復旧・復興の最中に増税を行うことには無理がある。しかし、消費税増税にはある程度の期間が必要であり、タイムラグが存在する。実際に増税を行う頃には震災による経済への影響は、かなり後退していることが予想される。

 むしろ、消費税増税を含めた財政再建策により、将来の財政の持続性に関するリスクが多少なり後退すれば、消費者や経営者のマインドに働きかけて、バーナンキ議長の言うように、短期的にも恩恵をもたらす可能性もある。

 何がなんでも増税反対というのならば、それに変わる案を出す必要がある。日銀による国債引受や政府紙幣の発行、また政府保有の米国債の売却などにより巨額の財源を確保し、さらなる積極財政を行うというのであれば、それにより将来に向けて安定した税収増が見込め、財政再建も可能とするような政策を示す必要があろう。

 しかし、単にデフレが解消されれば、すべての問題は解決するというような発想だけでは、あまりに付随するリスクが大きい上に、将来的な財政健全化に向けた努力まで後退させることが考えられる。それによりもし結果が出なければ、日本の債務危機が表面化してくる懸念がある。


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by nihonkokusai | 2011-06-09 08:21 | 国債 | Comments(0)

2012年のIMFと世銀の年次総会は48年ぶりの日本開催に

 国際通貨基金(IMF)と世界銀行の理事会は、2012年の合同年次総会を来年10月に東京で開催すると発表した。日本での開催は東京オリンピックが開かれた1964年以来、実に48年ぶりの開催となるそうである。

 年次総会は通常、2年続けてワシントンDCのIMF及び世界銀行の本部で開催され、3年に一度加盟国で開催される。前回2009年はトルコのイスタンブールで開催され、約1万3千人が参加した。2006年はシンガポール、2003年はドバイ、そして2000年プラハで開催された。

 来年10月の開催予定地は予定ではエジプトであったが、エジプトが今回の政情不安を理由に先送りする意向を表明したため、日本が年次総会を東京に誘致する方針を表明し、それが理事会で承認された。

 IMFのサイトによると、国際通貨基金(IMF)と世界銀行グループの年次総会には毎年、中央銀行総裁、財務・開発大臣、民間企業の幹部、学会の専門家などが集まり、世界の経済の見通し、貧困撲滅、経済発展、そして援助の有効性など世界的な課題について話し合われるそうである。

 経済金融に絡む世界の要人達が一同に会することで注目度も高く、日本政府が東日本大震災からの復興をアピールする絶好の場となりそうである。

 IMFはストロスカーン専務理事が5月19日に辞任したが、その後任には、フランスのクリスティーヌ・ラガルド経済・財政・産業相が有力視されている。IMFは6月30日までに専務理事を選任する方針を示している。

 これに対して、向かい入れる日本のトップは果たして誰になっているのであろうか。また、合同年次総会が開催される来年10月までに福島原発問題を含めて、震災復興に向けてどの程度、進展が進むのであろうか。

 今回の震災や福島の原発事故により、日本の動向に対しては世界が注目している。この来年の年次総会に向けてIMF加盟187か国も、日本の動向に注視してこよう。

 そのような時、首相が退陣するとかしないとか、党内の主導権争いなどをしている場合ではないはずである。来年になり、年次総会は日本で開催すべきでなかったなどと思われないためにも、この時期の無意味な権力抗争は早期に止めて、復興に向けて全力を傾けるべきときではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2011-06-08 08:20 | 国際情勢 | Comments(0)
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