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二期連続のGDPマイナス成長と政府の対応

 5月19日に1~3月期GDP一次速報が発表された。実質GDPは前期比マイナス0.9%、年率でマイナス3.7%と事前予想も大きく下回った。

 東日本大震災による影響が大きく、生産設備が被災しサプライチェーンが寸断されたことにより生産に大きな影響を与えた。原発事故もあり、その後の自粛ムードの影響による個人消費の低迷なども影響した。個人消費はマイナス0.6%、設備投資はマイナス0.9%となった。

 昨年10~12月期GDPがマイナスとなっていたことから、これにより2四半期連続でのマイナスとなり、定義上はリセッション(景気後退)入りとなる。連続のマイナス成長となれば、世界的な金融経済危機が影響した2008年4月から2009年3月までの4四半期連続以来となる。

 今回のGDPのマイナス成長は原因がはっきりしていることもあり、また政府もそのための対策を講じている。4兆円規模の第一次補正予算はすでに成立しており、今後は復興に向けた第二次補正予算編成も控えている。

 ただし、ねじれ国会の影響がこの第二次補正予算編成に向けた動きにも影響し、菅総理は第二次補正予算案の編成を8月以降に先送りする方針を示した。これに対し野党は反発しており、小規模の二次補正を今国会に提出する方向で検討をはじめ、さらに6月22日までの会期を小幅延長する可能性も出てきたと伝えられた。

 復興に向けてはかなり先を見通したビジョンも必要となり、ある程度の時間を傾けることも必要であろう。しかしその間、日本経済が大きく落ち込むリスクもある。4~6月期のGDPはさらに大きく落ち込む可能性も指摘されている。

 今年後半あたりからの、景気回復に向けての政府の後押しは必要となろう。そのためには、政治的な理由での停滞などは控えるべきである。現在は平時ではなく非常時である。震災そのものとともに原発事故による影響もあるなど、待ったなしの状況にもある。

 このような中での与野党の攻防を見せつけられると、政治とは何なのかをあらためて考えさせられる。被災地や原発の現場では必死の作業が続けられており、また被害を被った生産設備の復旧も進められている。しかし、今後の復旧・復興のビジョンを描くべき司令塔がこのように不安定となってしまっては、日本経済そのものの本格的な復興にも影響が出るのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2011-05-19 10:02 | 景気物価動向 | Comments(0)

復興増税ではない消費税増税の議論が必要

 NHKの世論調査によると、東日本大震災からの復旧・復興の財源を確保するために増税を行うべきだという考え方について賛否を聞いたところ、賛成が26%、反対が31%で、反対が賛成を上回った。賛成が先月より6ポイント低下し、反対が5ポイント上昇した。

 復興増税については、野党側と民主党内非主流派が増税反対で足並みをそろえており、菅政権に対して揺さぶりをかけている。政府・民主党内では岡田幹事長らが今年度第2次補正予算編成では復興財源を増税でまかなう方針を明言しているが、世論の動きからみても増税そのものが難しくなる可能性がある。ちなみに、毎日新聞によると今国会会期内に小規模な2次補正が検討されているようである。この財源は国債発行によるとしている。

 すでに1次補正の財源として、当初予算において基礎年金に繰り入れるはずであった基礎年金の国庫負担割合(2分の1)を維持するための2兆4897億円を流用した。これについて政府は2012年度以降に増税し、年金財政にあく穴を埋める意向と伝えられている。しかし、このように震災直後の増税論議には慎重論も根強いことから、今回の転用分が確実に埋められるかどうかは不透明である。これが返済されるまでは、年金給付に足りない分は年金積立金を取り崩して賄う可能性も指摘されている。

 2012年度以降分を増税で賄うとの方針は、2011年度末までに消費税増税を法律で決め、その後に実施するとの順番が大前提となっていた。準備期間の関係により実際の増税は2014年度以降になる見通しだが、その間、年金積立金の取り崩しが続いても、将来の増税が法律で担保され返済の見通しがついていた格好となる。しかし、2011年度分も将来の増税でまかなうという前倒し方針は、法改正による増税の裏付けがなく、返済の保証もない状態にある。

 さらに震災による被害額は政府試算で16~25兆円とあり、2次補正では国債の増発は避けられない見通しとなっており、その財源としても消費税増税が念頭にあるようだが、それもままならないように状態にある。

 これらの動きは、実は過去何度が繰り返されてきたことでもある。将来の消費税増税を担保に社会保障費の伸びを容認してきたが、一向に消費税の引き上げは行われず、その結果、歳出は伸び続け、景気低迷もあって税収そのものは落ち込み、いわゆるワニの口が形成されている。

 震災を機に消費税増税に向けて今度こそ政府も重い腰を上げるかに見えたが、この状態では今回も増税が先送りされる可能性がありうる。確かに現時点での増税には景気への影響を加味すれば、反対意見が多いことも理解できる。しかし、これまでのつけのことも考えれば、そろそろ政府も決断しないことには、日本の財政そのものが持たなくなる危険性がある。

 そして震災後の日本復活のためには、日本における最大の懸念である政府債務の問題をある程度抑制させておく必要もあろう。重い荷物を引きずったままでは、身動きが取れない。少しでもその荷を軽くさせるための努力が必要となる。

 日本の政府債務についてはまだまだ安心、それよりデフレを解消するのが先決との意見も一部にある。確かにあと数百兆円程度の新規国債の発行余力がないとなれば、すでに国債への信認は失墜し国債価格は急落しているであろう。それだけの余力は現時点ではあると考えられるが、それでも毎年50兆円規模の新規国債を国内資金で消化できるには、その余裕の年数はそれほど多くないことも事実であろう。さらにまだ余裕があるからといって巨額の財政支出を行えば、当然ながら残りの期間が短縮されるだけである。

 日本の債務リスクが顕在化する前に手を打たなければ、取り返しがつかなくなる。そのためには、国民が震災のためということではなく、日本の先行きの展望を開かせるために増税はやむを得ないものであることを理解してもらうよう、政府も働きかける必要があるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2011-05-18 10:06 | 国債 | Comments(0)

日米のねじれ国会による国債発行問題

 オバマ米大統領はテレビのインタビューで「米国の十分な信頼と信用が裏付けられず、米国が債務返済の約束を守らない恐れがあると考えるなら、金融システム全体が破綻する可能性がある」と指摘した。

 米財務省は16日、ガイトナー財務長官が議会に宛てた書簡を公開し、債務の総額が、議会の定めた上限である14兆2940億ドルに達したと発表した。債務上限到達の影響を回避するため、政府年金基金への支出を取り止める特別措置を講ずることにより、議会に提示した債務上限引き上げの期限の8月2日までは債務不履行といった最悪の事態を回避できる見通しである。

 米国での債務上限引き上げについては、5月中の合意の可能性はかなり低くなっており、7月が濃厚な合意の時期として浮上しているとの見方も出ている。

 これに対して、日本では菅総理と岡田幹事長が15日夜に総理大臣公邸で会談し、今年度の公債特例法案について、今の国会で成立させるため今月中には衆議院を通過させる必要があるという認識で一致したと報じられた。

 菅総理と岡田幹事長は成立のめどが立っていない公債特例法案について、6月22日までの今の国会の会期内に成立させなければ夏以降の予算の執行に支障が出るほか、震災復興にも影響しかねないなどとして、今月中には衆議院を通過させる必要があるという認識で一致したそうである(NHKより)。

 現時点では民主党が頼りにしているとみられる公明党は、菅政権の延命に手を貸すような対応を安易に取るべきではないとして、反対の方針を崩さずにいる。6月22日までに特例公債法案が成立する目処はまったく立っていない。

 日本の財務省も特例公債法案が成立しないまま今年度入りしたことで、予算のやり繰り等を行なっているが、それにも限界があり、夏に入る前には成立の目処をつけないと不測の事態が発生する可能性がある。

 日米政府ともに政府債務を巡っては同じような状況に追い込まれている。市場ではそれでもさすがに政府封鎖やデフォルトは回避されるであろうとの認識ではある。ただし、米連邦債務上限引き上げについては米国民の47%が反対しているとの調査結果もあり、予断は許さない。日本でも野党の協力を得る必要があるとみられ、そうなれば今年度予算そのものが大きく見直される可能性があるなど、難しい問題を抱えている。

 しかし、時間は待ってはくれない。特に日本では震災復興という重要な問題も抱え、政府の財政が行き詰まるようなことは避けなければならないはずである。日米の政府と議会がどのような折り合いを見せるのか。今後の動きに注目する必要がある。


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by nihonkokusai | 2011-05-17 08:23 | 国債 | Comments(0)

第一次補正予算の財源問題と財政再建へのリンク

 総額4兆0153億円の2011年度第1次補正予算案は、4月30日に衆議院本会議で可決の後、5月2日に参議院本会議でも可決・成立した。この財源は、子ども手当や高速道路無料化・料金割引といった民主党のマニフェスト施策を含む歳出見直しとともに、当初予算において基礎年金に繰り入れるはずであった基礎年金の国庫負担割合(2分の1)を維持するための2兆4897億円を流用する。

 政府は2012年度以降に増税し、年金財政にあく穴を埋める意向と伝えられている。しかし、震災直後の増税論議には慎重論も根強い。このため、今回の転用分が確実に埋められるかどうかは不透明である。これが返済されるまでは、年金給付に足りない分は年金積立金を取り崩して賄うとみられるとも伝えられた。

 震災前の段階で政府は基礎年金の国庫負担維持に必要な2.5兆円について、2011年度は独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構の利益剰余金などの「埋蔵金」を使う。2012年度以降は税制の抜本改革による増税分を充てる方針だった。しかし、震災後はそれを復旧費に回し、税制の抜本改革との方針を2011年度に1年前倒しすることで決着したと伝えられた(5月1日毎日新聞ネット版より)。

 元々、2012年度以降分を増税で賄うとの方針は、2011年度末までに消費税増税を法律で決め、その後に実施するとの順番が大前提となっていた。準備期間の関係により実際の増税は2014年度以降になる見通しだが、その間年金積立金の取り崩しが続いても、将来の増税が法律で担保され返済の見通しがついていた格好となる。しかし、2011年度分も将来の増税でまかなうという今回の前倒し方針は、法改正による増税の裏付けがなく、返済の保証もないという(毎日新聞)。

 第一次補正予算については当初、財政支出2兆円規模を軸に調整するとされていた。この財源については2011年度予算の予備費1兆1600億円の活用と、主要政策の削減によるものとされていた。しかし、いつの間にか規模が4兆円となり、その財源に基礎年金の国庫負担維持に必要な2.5兆円が含まれていた。

 第一次補正予算については財源として国債増発は回避させることが念頭に置かれていたとみられ、国債増発に頼らず、基礎年金の国庫負担割合を維持させるため2.5兆円を活用することにより、将来の消費税引き上げを担保させた格好ともなったのである。

 これはある意味、財政再建を見据えた動きとも言える。ここにきての日本の財政悪化の大きな要因は社会保障関係費の伸びであり、財政再建のためにはここに切り込む必要があるが、それをある程度維持させるためには消費税の引き上げは避けられない。

 しかし、政府は消費税引き上げに言及しても選挙の結果を恐れるあまりに、実現性には乏しい状況が続いている。今回の第1次補正予算の財源に基礎年金の国庫負担割合を維持させるため2.5兆円を活用したことによって、政府は増税に向けて動かざるを得なくなったとも言える。


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by nihonkokusai | 2011-05-16 08:23 | 国債 | Comments(0)

来週の日銀の決定会合を占う

 来週の5月19日から20日にかけて日銀の金融政策決定会合が開催される。前回の会合が4月28日であり、それからの期間も短く、また特に経済情勢に大きな変化はいまのところなかったことで、金融政策の変更はないと予想される。

 このため注目すべきは、前回4月28日の会合で資産買入等の基金を5兆円程度増額し45兆円程度とする独自の議案を提出していた西村副総裁の動向になるかと思う。この独自案の理由として「震災等の影響が長期化し、企業や消費者マインドの悪化を通じて実体経済への悪影響が強まることを防ぐ観点から」であることが、白川総裁の会見で明らかにされた。

 消費者マインドを見る上では、昨日発表されたの景気ウォッチャー調査も参考となりそうである。4月のDIは現状判断が2000年1月の調査開始以来最大の落ち込みとなった先月の27.7から0.6ポイント改善し28.3となった。また、先行き判断については3月の26.6から11.8ポイントと大きく改善し38.4となり、先行き指数の改善幅としては過去最大となった。

 一時の自粛ムードの広がりはやや緩和され、サプライチェーンに関しても3月のように先行きがまったく見えない状況から、やや改善に向けた動きも出てきている。

 もちろん先行きに対して楽観視ほどの状況ではないことも確かである。福島第一原発の1号機でメルトダウンが起き原子炉に小さな穴が開いたことが発覚するなどしており、まだまだ予断を許さない状況にある。電力供給についてもかなり悲観的な見方は後退しているものの、夏場に向けては節電努力が求められるなど、景気に与える影響も小さくはない。

 経済を取り巻く環境が前回会合に比べ、それほど変化がなかった以上、西村副総裁が来週の決定会合でも独自議案を提出するであろうことが予想される。また、前回の会合では西村副総裁の独自議案は、1対8で否決されたが、今回も提出された場合には賛成者が増える可能性もありうる。前回の会合でも西村案に賛同してもおかしくない委員がいたとの観測もある。

 ただし、ここで仮に西村案に賛成者が増えたとしても、それにより日銀の追加緩和の可能性が強まったとするのは時期尚早と思われる。4月6日と7日に開催された日銀金融政策決定会合議事要旨を見ても、景気の先行きに悲観的な発言をした委員に対して、真っ向から反対意見を述べている委員がいた。白川総裁が追加緩和となる議長案を提出するためには、もう少し条件が揃う必要があるとみられる。

 それには政府による第二次補正予算の編成も大きな要素となりうる。20兆円規模とも言われる二次補正は震災復興に向けた取り組みともなり、それを日銀が追加緩和で後押しする可能性もある。それまでは余程のことがない限り、手元のカードを切ることはないのではなかろうか。

 いずれにしても来週の決定会合にむけて市場の関心はあまり高くはなさそうだが、西村副総裁の動向については注目されるものと思われる。


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by nihonkokusai | 2011-05-14 10:52 | 国債 | Comments(0)

トリシェECB総裁の後任はドラギ氏

 これまで態度を保留していたドイツのメルケル首相がドラギ氏を支持と明言したことにより、トリシェECB総裁の後任に、イタリア中央銀行のマリオ・ドラギ氏の就任がほぼ決まった。

 5月12日付の日経新聞によると16日のユーロ圏財務省会合で総裁候補に指名され、6月下旬の欧州連合首脳会議で就任が正式に決定されて11月に就任する見通しとなっている。任期は8年となる。

 マリオ・ドラギ氏は世銀のエクゼクティブ・ディレクター、イタリア経済財政大臣、ゴールドマン・サックス副会長を経て、2006年1月にイタリア中央銀行総裁に就任している。

 マーストリヒト条約では、総裁を含むECB役員会メンバーは、ユーロ圏の国籍を持ち、金融に精通した専門家の中から選ばれる。ECB総裁の人事についてはドイツとフランスの駆け引きが行われており、初代のECB総裁はどちらにも属さないオランダ出身のドイセンベルグ氏が就任した。しかし、ドイセンベルグ氏は任期半ばで予定通り(?)に辞任し、そのあと現在のフランス出身のトリシェ氏に引き継がれた。

 3代目の総裁としてはドイツ出身者が就任するであろうことが暗黙の了解のようになっていた。しかし、トリシェECB総裁の後任として本命視されていたドイツ連邦銀行のウェーバー総裁が「個人的な理由」で4月末に辞任し、ドイツのメルケル首相の目論見が狂った。ドイツ内ではほかに有力候補はいなかったこともあり、メルケル首相もドラギ氏支持に回らざるを得なかったものとみられる。

 ドラギ氏は信用不安を抱える南欧の出身でもあり、今回のギリシャなどのユーロ圏諸国の信用不安に対してどのようなスタンスで望むのかも注目されよう。民間金融機関で働いた経験なども生かせるのではないかと思う。また、スタイルは物価重視の姿勢を取るなど、ブンデスバンクを中心とした欧州の中銀の伝統に近いものがあり、その意味でもトリシェ総裁のスタイルから大きな変化はないと予想される。

 ここで少し欧州中央銀行(ECB)の歴史を振り返ってみたい。1998年6月1日、欧州共同体設立条約(マーストリヒト条約)及び欧州中央銀行制度(ESCB、後述)および欧州中央銀行(ECB)に関する定款に基づき、欧州中央銀行(ECB)と欧州中央銀行制度(ESDB)が設立された。

 欧州中央銀行(ECB)はユーロ参加国で構成されるユーロ圏の金融政策を担っている。米国は連邦制度となっていたことから、連邦準備制度という形式での中央銀行を作ったが、ユーロ圏の経済統合の結果、ユーロシステムを構成しているそれぞれの国の中央銀行は、その役割を欧州中央銀行というひとつの銀行に委ねた。欧州の通貨統合により単一通貨であるユーロが導入され、ユーロ圏の金融政策は欧州中央銀行が行うこととなった。

 これにより、米国のFRBと並んで大きな影響を与えてきたドイツのブンデスバンクをはじめ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギーなどの中央銀行は、欧州中央銀行に対しての調査や銀行監督などの支援業務が中心となったのである。

 欧州中央銀行の政策決定については理事6名とユーロ圏の央銀行総裁13名の計19名から構成されている。米国の連邦準備制度では理事会メンバーが数の上では、地区連銀の代表者よりも多くなっていたが、欧州中央銀行では専属の理事よりも各国中銀メンバーの方が数の上で多くなっており、各国中銀総裁の影響力が大きい。このことからも、共通した金融政策を決定する難しさといったものも感じられる。これもあってか欧州中央銀行の政策決定にあたって、議事録や議事要旨、さらに票決の結果といったものは公表されていない。


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by nihonkokusai | 2011-05-13 10:07 | 日銀 | Comments(0)

2010年度末の国の借金は924兆円

 国の資金調達活動の全体像を見るための集計のひとつが「国債及び借入金残高」である。財政法28条に、国会に提出する予算には、参考のために左の書類を添附しなければならないとあり、この中に「国債及び借入金の状況に関する前前年度末における実績並びに前年度末及び当該年度末における現在高の見込及びその償還年次表に関する調書」がある。

 この財政法第28条に基づき、国債及び借入金の状況に関する残高を算出したものが、「国債及び借入金残高」である。

 この集計は国による債務、つまり国債と借入金(交付税特会借入金を含む)残高となる。2010年度末では、普通国債(636兆円)と借入金等(55兆円)に、財投債(118兆円)、その他国債(4兆円)に政府短期証券(111兆円)が加わり、合計924兆円となる。ここには地方債務(地方債及び交付税特会借入金以外の借入金等)は含まれていない。

 5月11日付の日経新聞によると2011年度第一次補正予算後の財務省見通しでは、2011年度末の「国債及び借入金残高」は1002兆円になるそうである。

 参考までに日銀の資金循環統計(速報)によると、2010年12月末の家計の金融資産は1489兆円、また金融資産・負債の差額は1129兆円となっている。

 国の借金の残高は増加し続け、5年間で100兆円増加となっており、ここにきてその増加のペースが早まりつつある。第二次補正予算では国債の増発も予想されており、2011年度末の残高は1002兆円よりもさらに増加する可能性がある。さらに、その債務を支えている家計の金融資産の増加はすでに頭打ちとなっている。

 今回の震災に伴う復興のための財源としての国債増発は致し方ないところではあるが、リーマン・ショックによる金融経済ショックに続いて、震災により債務増加のピッチが早まってしまっていることには注意しなければならない。

 少なくとも来年度以降は債務残高の増加ペースを落としておかないと、日本国債を国内資金で賄えられるという状況が危ぶまれる日が徐々に前倒しされる懸念がある。一度、この臨界点が意識されてしまうと、現在のギリシャ国債のように市場から見放され、金利の急騰を招き、取り返しのつかない事態となることが想定されるためである。

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by nihonkokusai | 2011-05-12 08:41 | 国債 | Comments(0)

政策委員による国債日銀引受に対する見解

 4月6日、7日に開催された日銀金融政策決定会合議事要旨には、日銀による国債引受に対する政策委員の意見もあった。

 「ある委員は、最近、復興財源を捻出するため、日本銀行が国債を引受けるべきとの主張が一部に聞かれるが、そうした取り扱いは、初めはうまくいったようにみえても、早晩、激しいインフレを招き 、国民生活に大きな打撃を与えたというのが歴史の教訓であり、この点について、広く理解を得る努力を続ける必要があるとの認識を示した。」

 4月7日の会見で白川日銀総裁は次のように発言している。

 「いったん中央銀行による国債引受けを始めると初めは問題はなくても、やがて通貨の増発に歯止めが効かなくなり、激しいインフレを招き、国民生活や経済活動に大きな打撃を与える」

 このある委員とは発言内容からみて、白川総裁によるものと考えられる。この意見についてはまったく同意である。日銀はすでに国債引受を行なっているので問題ないとの一部意見もみられるが、日銀乗換にしろ、国債の買入れにせよ、結果的に日銀が国債を保有することになるものの、目的はマネタイゼーションではない点に注意すべきである。

 「これに関し、複数の委員は、中央銀行による国債引受けが行われ、通貨への信認が毀損すると、長期金利の上昇や金融市場の不安定化を招き、現在、円滑に行われている国債発行が困難になる惧れもあるとの認識を示した。」

 円に対する信認と国債に対する信認はどちらも政府に対する信認となる。日銀によるマネタイゼーションとしての国債引受を行うことにより、政府の放漫財政に歯止めが効かないと意識され、それは国債と通貨である円そのものの信用を毀損する。

 「このうち一人の委員は、通貨への信認は、わが国の金融・経済にとっての重要なインフラの一角をなすものであり、国民生活の安定のためにも、そうしたインフラをしっかりと維持することがきわめて重要であると付け加えた。」

 円の信認を守るため国債の信認を低下させることをすべきでないというよりも、国債の信認そのものを維持することこそが重要である。ただし、それは政府の仕事である。通貨の番人たる日銀は円の信認維持が重要であるとの認識であろうが、この発言者は日銀出身者で、総裁以外の委員の発言ではないかとも想像される。そうとなれば山口副総裁による発言である可能性がある。

 そして、政府関係者として出席していた櫻井充財務副大臣からも次のような発言があった。

 「復興財源を日本銀行の国債引受けにより調達するとの報道等があるが、政府としてそのような検討は全く行っていない。財政法第5条において、歴史的な反省から、公債の市中消化の原則を定めていること等を踏まえれば、国債の直接引受けについては慎重に考えるべきであると考えている。」

 野田財務大臣からも同様の発言があったと思う。それにもかかわらず政府が復興財源を日本銀行の国債引受けにより調達することを検討という報道がなされたのはどういうことであったのであろうか。また、櫻井副大臣は「国債の直接引受けについては慎重に考えるべきである」としているが、財政法で禁じられている以上、国債の直接引受けについては行うことはないと言い切るべきものではなかろうか。言い切れないのは党内でそれを主張する人たちが存在しているためなのであろうか。


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by nihonkokusai | 2011-05-11 08:28 | 国債 | Comments(0)

日銀の西村副総裁にライバルがいた?

 5月9日に4月6日と7日に開催された日銀金融政策決定会合議事要旨が発表された。4月28日の会合では西村副総裁が資産買入等の基金を5兆円程度増額し45兆円程度とする独自の議案を提出していたが、この理由は「震災等の影響が長期化し、企業や消費者マインドの悪化を通じて実体経済への悪影響が強まることを防ぐ観点から」であることが、白川総裁の会見で明らかにされていた。

 それではこの西村総裁が独自議案を提出する前の会合でどのような発言をしたのかを、この議事要旨から探ってみたところ興味深いことが出てきた。

 4月6日、7日の議事要旨の「金融経済情勢に関する委員会の検討の概要」での経済の先行きについて見てみると、何人かの委員から、先行きの設備投資や個人消費については、供給制約の解消時期や原発問題の帰趨に影響される面もあるとの指摘があった際に2人の委員がそれぞれ次のように述べていた。

 「ある委員は 、こうした問題が長引けば、マインド面への影響や、企業収益や家計所得への持続的な下押し圧力を通じて、景気は全体として、震災前に想定していた回復経路よりも下方にシフトした経路を辿る可能性が相応にあると指摘した。」

 「一方、ある委員は、やや長い目でみると、今回の震災を契機に、企業が様々なリスクを意識して生産・物流拠点の移管や複線化などを行うようになれば、サプライチェーンの復旧や毀損ストックの復元といったレベルを超えて、新たな需要が生まる可能性もあると指摘した。」

 この発言内容から見て、最初のある委員が西村副総裁であろうと想像される。それに対してもう一人の委員がその意見に対抗するような意見を述べていたのである。実はこれだけではなく、物価面に関する意見においても、ある2人の委員が異なる認識を持っていたことが次の記述でわかる。

 「ある委員は、供給面での制約が厳しくなるとともに、企業収益や家計所得への持続的な下押し圧力などを通じて、それ以上に需要が減退する可能性もあると述べた。」

 「ある委員は、需給バランスと物価に関する議論は、経済を中長期的に分析する場合には重要であるが、今回のように、サプライチェーンの寸断や電力不足が生じている状況にまで、そうした議論を当てはめることは必ずしも適当ではないとの意見を述べた。」

 これも最初のある委員が、西村副総裁である可能性が高い。その意見に対して、今度は真っ向から反対意見を述べている委員がいる。このようにそれぞれの見方の違いを出すことは重要ではあるが、どうもオブラートに包みがちな議事要旨ですら、かなり火花が散っていたような印象を受ける内容となっている。

 この意見の対立が西村副総裁の独自案に繋がったのかどうかは定かではないが、もしもこれらの発言が予想通りに西村副総裁からのものであったのならば、間接的に影響した可能性はありそうである。しかも、副総裁であろう人物にこのような反対意見を述べている委員は、やはり副総裁クラス以上の人物か、それなりに政策委員としての経験が長い委員であるのではなかろうかとも想像されるのである。


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by nihonkokusai | 2011-05-10 08:53 | 日銀 | Comments(0)

復興国債を発行する意味はあるのか

 東日本大震災の復旧費を盛り込んだ総額4兆153億円の2011年度第一次補正予算が5月2日の参院本会議で成立し、これから国債増発が不可避とされる第二次補正予算編成に向けた動きが強まるものと見られる。10兆円規模ともみられる二次補正は復興国債の発行も有力視されている。復興国債は通常の国債との別に、償還財源を将来の増税で賄い早期の償還を目指すというものである。

 しかし、巨額な政府債務を抱えている中にあり、あらたに財源を消費税を含む増税を別枠に設定して国債発行をする意味があるのであろうか。財源確保は重要であるが、それは復興国債に限ったものではなく、これまで発行されたもの、そしてこれからも発行されるであろう国債についても同様に重要である。新規国債は来年度以降も50兆円規模が発行されることが想定されているにもかかわらず、もし10兆円程度の国債増発が警戒されるような国債需給環境であるのならば、それはそれで危機的状況であると言える。しかし、現在の債券市場にはまだ消化余力は存在しているはずである。

 本来であれば今後の消費税増税などは財政健全化に向けた政府債務全体の削減のために活用すべきものである。今回の復興国債は通常の国債と同様の発行を行った上で、政府の抱える全体の債務に対する償還財源問題を検討すべきものではなかろうか。

 補正予算に伴う国債増発により、その分、日本国債が国内資金で賄えなくなるまでのタイムリミットが短縮されることは確かである。もし日本国債が国内資金で賄えなくなった場合の影響は、今回の震災による日本経済への影響を遥かに凌ぐことが予想される。一部で論じられた日銀による日本国債の引き受けは一時的な時間稼ぎとなろうが、それはその後の危機をさらに増幅させることになる。このため、今そこにある危機への対象も重要ながら、将来の危機を防ぐことも重要である。

 今回の震災を受けての日本経済を立て直し、税収を回復させることにより政府債務の危機を回避することも重要になる。震災復興と景気回復、そして政府債務の改善を同時に図ることはなかなか困難であることは理解できるが、それを今やる必要がある。これまで先送りされ続けてきた政府債務の改善についても、これまで大丈夫だから将来も大丈夫という認識は危険である。すでに債務残高が膨れ上がっている中にあり、国内金融資産そのものの伸びが止まる中、いまは国債消化に問題はなくても、年間50兆円規模もの新規国債を消化する国内の余力が、それほど何年も先まで残されているとは考えられない。

 特例公債法案を巡る攻防、さらに二次補正の財源問題について与野党でやりあうのならば、日本の現在と将来の危機を回避すべく建設的な議論が求められる。ここでもし失敗するようなことがあれば、近いうちにそれは長期金利の急騰といったかたちで市場の反乱を招くことが予想される。


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by nihonkokusai | 2011-05-08 13:44 | 国債 | Comments(0)
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