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景気回復と財政再建と金利のバランス

 2月14日に発表された日本の2010年10~12月期の実質国内総生産の速報値は前期比年率マイナス1.1%となった。予想のマイナス2%近辺ほど悪くはなかったものの、これによる市場への影響はあまりなかった。むしろ、今年1~3月期での回復期待が強まっており、日経新聞によると前期比年率プラス1.8%近辺の予想となっているようである。

 日米ともに景気の回復期待などを背景に長期金利は上昇傾向となっており、米10年債利回りは一時3.77%に上昇し、日本の10年債利回りも1.35%に上昇する場面があった。

 ただし、バーナンキFRB議長は米国の景気回復は力強さを増している兆しが出ているものの、失業率は依然として高過ぎるとの認識を示すなど、警戒心を緩めていない。日銀も今回の決定会合で景気の総括判断を上方修正させたが、これを前回は見送るなどやはり慎重姿勢と取れなくもない。

 バーナンキ議長は9日の下院予算委員会での証言において、景気の回復がぜい弱な局面で一気に歳出を削減すれば、景気回復を脅かす恐れがあるとの認識を示した。長期的な財政健全化は必要としながらも、政府支出を急激に削減すれば、雇用が上向き始めたばかりの国内経済を危険にさらす恐れがあると発言している。

 これに対して、オバマ大統領は提出する予算教書において、政策的な経費の伸びを5年間、凍結する方針を示した。これは米国の財政赤字が過去最悪となっているためである。2011年度の財政赤字は約1兆6500億ドルに達し、2012年度も約1兆1000億円に達することで、米財政赤字は4年連続の1兆円超となる。このためオバマ大統領は、一部の歳出をカットし、今後10年間で1兆1000億ドルの財政赤字を削減するとしたのである。

 しかし、米国の財政状態は日本ほど悪化しておらず、財政再建を進めるにはある程度期間を置くにしてもその方向性を示しておけば信認は維持される。このため、景気悪化を招くような緊縮財政は取るべきでないとするのが、バーナンキ議長の考え方なのであろうか。FRBの金融政策も同様の認識で行うとすれば、現在の超緩和策を長期間維持するとの考え方であるとも伺える。また、財政再建に時間をかける必要があるとするならば、FRBによる側面支援の継続も視野に入り、6月末までの国債買入の延長の可能性も強まろう。

 日本では残念ながら、危機的な債務状態にありながら、大幅な歳出削減計画などはない。財政再建に向けた増税についても掛け声止まりとなっている。財政への危機感は日本に比べて米国や英国の方がより強いように感じられる。これは日本が政府債務を国民がカバーしているという特殊事情も影響しているのかもしれないが、上辺だけではない本当の危機意識が欠如しているようにも感じられる。

 景気回復は財政健全化に向けて税収増などから当然ながらプラス要因となる。このため、財政再建にはこの景気への配慮も必要であろう。ただし、この景気回復や物価上昇は金利の上昇要因ともなり、金利の上昇は債務が大きければ大きいほど、さらに債務を悪化させかねない。

 つまり日米の中央銀行にとり、景気・物価だけでなく財政の動向も金融政策に大きな影響を与えうる。景気回復と財政再建と金利のバランスを考慮して導きだされる結論とすれば、FRBも日銀もすでに出口政策には積極的には踏み込めない状況に追い込まれているということであろうか。


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by nihonkokusai | 2011-02-16 08:39 | 日銀 | Comments(0)

個人向け国債販売に見る銀行と証券の違いなど


 財務省のサイトに国債トップリテーラー会議(第8回)配付資料がアップされており、この中の「最近の販売状況について」のデータがなかなか興味深い。

 最初にあるのが、1月17日現在における個人向け国債の償還予定額(平成23年)である。1月に1兆387億円、4月に9157億円、7月に1兆1717億円、10月に8126億円となっている。途中売却の可能性はあるものの、今年は4兆円近く(3兆9387億円)もの個人向け国債が償還される見込みで、その資金の行き先も注目されている。

 今回はそれとともに「個人向け国債の銘柄別販売割合」などにも注目してみたい。明らかに証券会社と預金取扱機関(銀行)に違いがあった。

 かなり昔になるが、私が出演させていただいたNHKの番組で、個人向け国債は10年変動金利タイプが良いか5年固定金利タイプが良いのかというのを解説させていただいた。クワバタオハラさんがそれぞれの良い点悪い点を比較して、一般のご夫婦に決定してもらうというものであった。この際は結局、5年固定が良いという結果となったが、中立であるはずの私はどちらかというと10年変動を推していた。

 結論から言えば販売額そのものを見る限り、圧倒的に5年固定が優っていた。しかしこれを証券と銀行に分けてみると、意外にも証券では10年変動の割合が高いことがわかる。さすがにその割合は減少しつつあるとはいえ、今年1月でもまだ3割近くとなり、銀行の約1割に比べて割合が大きい。

 これは何が要因なのであろうか。証券会社の顧客層はそれなりに投資知識もあり、今後の金利上昇も意識しているということなのであろうか。また、銀行の顧客はより安全志向であり、あくまで預貯金との兼ね合いで期間のなるべく短い固定利付きのものを選択していたのであろうか。

 この資料には個人向け国債の年代別販売状況もあり、これを見ると10年変動は40歳台が最も多いのに対して、5年固定は60歳台、3年固定は70歳台が最も多い。40歳台主体の現役世代は現在の経済物価、日本の財政事情などを考えて、固定金利よりも変動金利を選択しているのであろうか。

 個人向け国債の投資家は高年齢層が多いのは、日本の個人の金融資産がその年代に集中していることからも当然ではある。高年齢層はその年代の高さゆえ、あまり期間の長いものを選択していないとの見方もある。しかし、件数そのものは少ないものの10年変動の1件あたりの平均販売額は80歳台が800万円に迫っているなど(5年固定は同年代400万円台)、どうも老い先を考えて期間の短いものを選択しているだけとは言い難い面もある。

 ある程度投資経験がある高年齢層の一部には、期間そのものよりも今後の金利上昇を意識している人がある程度存在しているのであろうか。ただし、これには80歳台といった高年齢層には証券会社の店頭でリスク商品は勧めづらいことなども関係している可能性もある。贈与なども想定した上で、発行から1年経過すれば額面で売却できることで、10年変動タイプの個人向け国債を購入した投資家もいたのかもしれない。

 ちなみに今年償還を迎えるのは5年固定タイプのものである。その購入の中心年代は60歳台主体が主体となっている。「個人向け国債の業態別販売割合」から見ても、今回の個人向け国債の購入元は銀行の割合が高いと思われる。そして、元の資金は退職金などが想定されることで、あまりその資金をリスク商品には傾けづらいはずである。ただし、個人向け国債の購入時よりも条件の悪いものには手が出しづらく、難しい選択に迫られているのではなかろうか。

 このため、やや商品性の異なる投資信託などへの流出は一部となり、今後の金利上昇のタイミングを狙っての待機資金として、買い付けた銀行の普通預金などにとどまる可能性が高いのでないかと思われる。



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by nihonkokusai | 2011-02-15 08:44 | 国債 | Comments(0)

日本国債が暴落した場合の対応策とは

 9日に自民党でXデ―プロジェクト会合というのもあり、それについては9日の「牛さん熊さんの本日の債券」(メルマガで配信中)で次のように触れた。

熊「今日は自民党でXデ―プロジェクト会合というのもあった」
牛「主題歌は、中島みゆきさんの地上の星やな」
熊「そっちではなくて、日本国債が暴落するというXデ―に備えた会合だそうだ」
牛「備えると言っても、実際に日本国債が財政悪化で暴落して止められるものなのか」
熊「今回は財務省の主計局、理財局の担当者から日本の財政や国債市場に関する報告を受けたそうだ」
牛「そもそもどういった下げを想定しているのか、それにはかなり債券に関する専門知識も必要やろ」
熊「そういった下落を想定する以前に、それを起こさせないようにするのが政治家の役目のはず」

 今回のXデ―プロジェクト会合にはかなり違和感を覚えた。政治家が今頃になって、何ゆえに「日本国債が暴落した場合の対応策を協議」するのか。こんな日本の債務状態にしたのは誰の責任なのか、まずそのあたりから検証すべきであろう。

 このような状況に追い込まれたら最悪の事態も想定しなくてはいけないとの理由もわからなくはないが、残念ながら市場に対しての知識もなしに対処療法などを検討してもまったく意味はない。

 日本国債は過去何度か大きな相場下落を経験している。戦後で見ても1980年の利率6.1%の国債が12%近くまで利回りが上昇した「ロクイチ国の暴落」があり、1985年の債券先物の上場直後にはプラザ合意に伴う日銀による短期金利の高め誘導をきっかけに、債券先物に売りが殺到し売り気配のまま2日間値がつかないという急落もあった。

 また、債券市場でのディーリング相場の全盛期に買われた89回国債が1987年に2.55%をつけてからの急落は私も市場参加者として経験した。これはタテホ化学工業が債券先物で286億円もの損失を出したことをきっかけに債券相場が急落した「タテホ・ショック」を招き、9月3日から5日までの3日間で、89回債は1%あまりも上昇したのである。

 そして1998年には有名な(債券市場参加者限定で?)「資金運用部ショック」がある。国債の引き受け手として大きな存在であった大蔵省(当時)の資金運用部が国債の引き受けを急減させるとの報道をきっかけに、1998年10月に0.7%も割り込んでいた長期金利は1999年2月に2.440%まで上昇したのである。

 運用部ショックによる相場下落は、国債需給を嫌気したものであり、その意味ではこの運用部ショックによる国債暴落は良い事例研究対象にはなりうる。しかし、運用部ショックを経て国債管理政策が急ピッチで進められ、その後の長期金利の大きな抑制要因となっており、すでにかなりの手は打たれている。ちなみにこの国債急落で日銀に押し付けられたのがゼロ金利政策であったが、現在の日銀もゼロ金利政策をとっている状態にある。

 その後2003年に「VARショック」と呼ばれた急落を迎えたものの、これは銀行のリスク管理手法に問題があったことが影響し、10年債利回りが0.430%にまで低下してしまった反動によるものであった。

 このように過去には国債価格の急落は何度かあったものの、自民党のXデ―で想定される下落は過去に経験のあるものではない。しいて言えば運用部ショックによる相場下落が多少参考になる程度である。もしも日本国債が国内資金で賄えなくなった場合の市場の反応については想定することも難しい上に、はっきり言えば対処のしようがない。海外保有の比率を高めるのは困難であり、その結果、運用部ショックの際にも検討された日銀による国債の直接引き受けが議論されよう。それが実施された際には、のちほど大きな副作用が待っている。

 このような国債暴落に至らせないための注意喚起も意識してのXデ―プロジェクトなのかもしれないが、そんなことをするよりもその暴落を防ぐため、国会議員が必死に努力すべきではないのか。


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by nihonkokusai | 2011-02-11 08:59 | Comments(0)

超低金利継続に対する過度の楽観論も後退か

 2月7日の講演で日銀の白川総裁は、「やや気懸かりなのは、日本の社会において健全な楽観主義が後退していることです。過度の楽観主義がバブルを生むように、過度の悲観主義は経済の停滞の原因にもなります」との発言があったが、日本でもようやく景気に対して過度な悲観主義が後退しつつあるように思われる。

 日銀は14日から15日にかけて開く金融政策決定会合で、景気の総括判断を一歩進める方向と日経新聞が伝えている。すでに政府も1月21日に月例経済報告において、景気の基調判断を上方修正している。

 米国でもここにきての経済指標は景気回復を示すものが多くなり、市場も素直にそれに反応し、ダウ平均は8日までに7日続伸となり、米長期金利は3.7%台に乗せてきている。

 ダラス連銀のフィッシャー総裁は昨日の講演で、現行のQE2については予定通り完了する見通しを示したものの、一段の金融緩和には反対を表明した。また、リッチモンド連銀のラッカー総裁は、QE2の見直しを真剣に検討すべきとの考えを示した。

 フィッシャー総裁、ラッカー総裁ともにタカ派とみられており、これがFRBの総意とは言い切れない部分はあるものの、市場では今年6月末でのQE2に対して、継続されない可能性も意識し始めている。

 また、英国ではイングランド銀行が年内に利上げを余儀なくされるとの観測から2年債利回りは2年ぶりの高水準を付けている。

 さらに世界的に食料や原油などの商品価格の高騰によりインフレ懸念が強まり、それがチェニジアやエジプトの政変の原因ともなった。また、インフレ抑制のため中国人民銀行は8日に、金融機関の貸し出しと基準金利を9日から0.25%引き上げると発表したが、春節明け前という異例のタイミングでの利上げとなった。

 欧米、そして日本でも景気への過度な悲観論は後退し、インフレへのリスク(日本はデフレ解消への期待?)も強まりつつある。米国も日本同様のデフレに陥るとの見方も少しずつ後退している。日本でも楽観的すぎるのではとみられていた日銀の予測通りに、CPIは来年度に向けてプラスに向かう可能性がある(日銀の政策委員による2011年度コアCPI見通しの中央値はプラス0.3%)。

 日本の景気や物価に対しての過度な悲観論の後退は、それはつまり超低金利継続に対する過度の楽観論が後退することを意味する。

 ここにきての日本の長期金利の上昇は米国長期金利の上昇の影響によるところが大きい。しかし、中期債の利回りも上昇するなど、その背景には、ほとんど無限大に近いように思われていた心理的な時間軸(利上げ可能になるまでの期間)が、実は有限であったことを意識させられた可能性がある。


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by nihonkokusai | 2011-02-10 08:52 | 債券市場 | Comments(0)

白川日銀総裁発言への違和感

 7日の日本外国特派員協会における白川日銀総裁の講演内容が日銀のサイトにアップされており、今回はこの内容を見てみたい。

 白川総裁は日本経済の短期的な動向として、最近のデータの動きから、踊り場から脱却する蓋然性が高まってきたとの判断を示した。これは前回の金融政策決定会合での総裁会見でも示している。そして白川総裁は今回の講演で、日本の財政バランスの悪化にもかかわらず、日本国債の金利が低位安定しているのかについて、その理由を述べている。日本の長期金利の低位安定の理由として低成長と低インフレであることに加え、根源的に次のような理由を指摘している。

 「日本は税制や社会保障制度の改革などを通じて、最終的には中長期的な財政健全化に取り組む意思があると投資家が認識しているからではないか」

 これについてはかなり違和感を覚える。市場参加者が現政権に対して、積極的に財政健全化に取り組む意思があると認識しているとは思えない。財政への不安はあるものの、とりあえず国債の需給バランスが崩れない限り、低成長と低インフレで国債を買わざるを得ないというのが、投資家の本音ではなかろうか。財政懸念による国債暴落という狼少年の声に耳を傾けてはいけないというのが、現在のところ日本国債投資に向けた鉄則になっている。

 さらに付け加えて「日本銀行の金融政策運営が、物価安定のもとでの持続的成長の実現という点において軸がしっかりしていることも、重要な要因だと思っています」との総裁発言もあったが、これはやや矛盾しているのではなかろうか。

 長期金利の上昇を日銀が抑えているわけではなく、結果としてデフレ脱却が困難なため、日銀は金融緩和を続けているだけであり、そのため長期金利も上昇していない。本来ならば日銀の金融政策、つまり現状の緩和策が効果を発揮すれば、長期金利は低位安定するのではなく、上昇しなくてはいけないはずである。もちろん日銀の金融政策だけでデフレ脱却が可能なわけではないが。

 総裁は「逆に言うと、そうした信認を大事にし、中長期的な財政健全化に取り組んでいく必要があることを意味しています」とも発言している。「逆に言うと」との表現はいかなるものかと思うものの、国債への信認を維持させることは最重要であることに間違いはない。そして、中期的な財政健全化に取り組むのは政府の仕事であるが、それを推し進めるように働きかけているのは、中央銀行の総裁として適切な発言であると思う。

 また白川総裁は、「やや気懸かりなのは、日本の社会において健全な楽観主義が後退していることです。過度の楽観主義がバブルを生むように、過度の悲観主義は経済の停滞の原因にもなります」との発言があったが、これは私も感じている。特に有識者と言われる人たちに現在の世界的な金融経済情勢について、かなり悲観的な見方をしている人が多い。もちろんそれには理由もあろうが、悪い面ばかり注目してしまうと、その行為そのものが経済低迷の要因ともなりかねないことも確かである。もちろん、理由なき楽観論は慎むべきではあろうが。

 今回の白川総裁の講演についてマスコミなどは、景気が悪化した際に「資産買取の増額なども考え得る」との部分を妙にクローズアップしていた。講演内容全体を見ればわかるが、それはあくまでひとつのリスクシナリオであり、そのことが講演の中心のテーマではない。これも、過度の悲観主義のひとつの現れではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2011-02-09 10:05 | 日銀 | Comments(0)

長期金利は1.3%台に上昇

 米労働省が4日に発表した1月の雇用統計によると、失業率(季節調整値)は9.0%となり、前月に比べて0.4%の改善となった。これは2009年4月以来の低水準となり、市場予測の平均9.5%(日経調べ)を大きく下回った。

 また、非農業部門の雇用者数は前月比3.6万人増となり、市場予測の平均14.8万人(日経調べ)を大きく下回った。また、11月の数値が7.1万人増から9.3万人増に、12月の数値が10.3万人増から12.1万人増に、それぞれ過去の数値が上方修正された。

 今回の雇用統計については大雪などの影響が加味されているとみられ、受け取り方は難しい面もあるが、製造業主体に雇用が緩やかながらも改善していることを示す内容であった。バーナンキFRB議長による「近いうちに雇用者数の増加や失業率の低下をみることができるだろう」との発言通りの内容と言える。

 雇用統計は米債への売りを加速させる材料となり、4日の米10年債利回りは3.64%近辺に上昇し、一時3.66%と昨年5月4日以来の水準をつけた。これにより、米長期金利は今年に入ってから続いていたレンジ相場を上抜けた格好となったと言える。

 雇用統計はあくまで米長期金利上昇のひとつのきっかけであり、今回の米国の長期金利上昇の背景には、1月の米ISM製造業景気指数の改善などを受けた景気回復への期待、さらに原油などの商品市況の上昇などを背景としたインフレ懸念などがある。

 さすがにFRBによる利上げまでは織り込めないものの、6月末までとなっているFRBによる国債買入がここで停止される可能性もあり、国債需給への懸念が出てきてもおかしくはない。ただし、現実にはFRBのよる国債買入停止は難しいとみている。買入そのものが国債需給にかなり織り込まれてしまっており、現状のペースで買入を継続させるか、多少ペースを落としても買入は継続させるのではないかとみている。

 現在の日本の債券市場は米債の影響を非常に受けやすくなっており、日本の長期金利ももみ合いから上放れて再び上昇局面入りする可能性が高まった。実際に7日の東京市場では長期金利は一時1.300%をつけ、昨年の12月15日、16日につけた1.295%を上回ってきている。ただし、債券先物中心限月については12月16日につけた直近安値の138円16銭には届いていない。

 10年債利回りでの1.3%台ではいったん投資家の押し目買いも入るとみられるが、日米の債券がともにレンジ相場から脱しつつあるため、今後の動向を見極めたいとして投資家もしばらくは慎重姿勢で望むものとみられる。

 今後の動向を見る上では、国内要因よりも特に米債の動向が大きな変動要因となり、米債が下げ止まらなければ円債も下値模索の展開が続くことが予想される。今週は8日から10日にかけて総額720億ドルの3年と10年、30年債の米国債入札が予定されており、こちらの動向にも注意が必要となろう。


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by nihonkokusai | 2011-02-08 09:50 | 債券市場 | Comments(0)

中央銀行によるアクセルとブレーキの使い分け

 2月3日のECB理事会では主要政策金利を過去最低の1.00%に据え置いた。ユーロ圏での1月のCPIが前年同月比でプラス2.4%と2か月連続で政策目標の2%未満を上回っているが、理事会後の記者会見でトリシェ総裁は、これについて「想定外のことではない」と述べた。  前回1月13日の会見ではトリシェ総裁は「短期的なインフレ圧力がある」と指摘し、ECBはいつでも利上げできると強調した。しかし、この発言でECBによる利上げ観測が強まり、為替市場ではユーロ高の要因となった。

 この市場の利上げ観測の強まりを抑えるために、トリシェ総裁は今回発言によってブレーキをかけたものと思われる。前回に比べて物価に対する認識がそれほど変わったわけではないと思われる。

 中央銀行はマーケットに対するアナウンスメント効果をかなり意識している。前回のトリシェ総裁はインフレに敏感なユーロ圏市場に配慮して物価上昇抑制を意識した発言をしたのであろうが、それが利上げ観測を強める結果となり、今回はそれを抑える発言をした。

 日銀もこのようにアクセルとブレーキを使い分けてくることがある。たとえば1月20日に日銀の門間調査統計局長は、日本経済について「輸出は1~3月期に明るい方向に進む。冬のボーナスの増加や株価の回復があり、消費も悲観的に見る必要はない。日本経済は今年前半に踊り場から緩やかな回復局面に移行する」と発言した。かなり景気回復について前向きととらえられた。

 しかし、1月25日の日銀の金融政策決定会合における景気認識については「緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられる」との前回(12月21日)の表現を据え置いた。ここではいったん慎重な姿勢を見せたのである。しかし、そのあとの記者会見で白川総裁は、輸出は先行き再び緩やかに増加していく、情報関連財の在庫調整についても着実に進捗していくことが見込まれるとノベルなど、やや景気回復について前向きの姿勢を示している。

 この日銀のアクセルとブレーキのかけ方は非常に緩やかなものであったが、昨年のQE2に向けてのFOMC関係者のコメントはかなりアクセルもブレーキも踏み込みが強かった。

 昨日、バーナンキFRB議長は講演後の記者会見で「近いうちに雇用者数の増加や失業率の低下をみることができるだろう」と発言したが(日経新聞のサイトより)、6月末まで実施される国債買入に関して、その後も実施するのか、規模を縮小するのかといったことには言質を与えなかった。

 6月末までには時間はまだあるものの、市場ではその後の動向に注目している。FOMC関係者は雇用などを主体に景気動向や、ここにきてインフレ懸念も強めつつあるため物価動向を睨みながら、さらに市場参加者のセンチメントも意識して国債買入に関して議論し、また発言をしてくるものと思われる。その際には、市場のセンチメントを見極めるために引き続きアクセルなりブレーキなりをうまく使い分けてくるものと思われる。


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by nihonkokusai | 2011-02-07 10:42 | 日銀 | Comments(0)

米雇用統計を受けて日米の長期金利は上昇局面入りか

 米労働省が4日に発表した1月の雇用統計によると、失業率(季節調整値)は9.0%となり、前月に比べて0.4%の改善となった。これは2009年4月以来の低水準となり、市場予測の平均9.5%(日経調べ)を大きく下回った

 また、非農業部門の雇用者数は前月比3.6万人増となり、こちらは市場予測の平均14.8万人(日経調べ)を大きく下回った。また、11月の数値が7.1万人増から9.3万人増に、12月の数値が10.3万人増から12.1万人増にそれぞれ過去の数値が上方修正されている。

 失業率の低下については、労働参加率の低下、つまり職探しを諦めているなどの人が増えていることも一因であり、特に今回は大雪などの影響で就職活動を休止した人も多かったのではとの推測もある。ただし、就業者比率の上昇による影響もあり、労働参加率の低下だけが要因ではないようだ。

 非農業部門の雇用者数が予想ほど増加しなかった背景にも、大雪の影響が出ていた可能性がある。建設や運輸倉庫といったセクターでの雇用が大幅に減っていることなどからそれを指摘する見方もある。製造工業は1998年8月以来の大幅な増加となっていることから、製造業中心の景気回復が雇用に波及しつつあることも示唆された格好となっている。

 今回の雇用統計については大雪などの影響が加味されているとみられ、受け取り方は難しい面もあるが、製造業主体に雇用が緩やかながらも改善していることを示す内容であった。バーナンキFRB議長による「近いうちに雇用者数の増加や失業率の低下をみることができるだろう」との発言通りの内容と言えそうである。

 この雇用統計の数値は米債への売り材料となり、4日の米国債券相場は5日続落となった。米10年債利回りは3.64%近辺に上昇し、一時3.66%と昨年5月4日以来の水準をつける場面があった。また2年債利回りは0.76%近辺に、30年債利回りは4.74%近辺にそれぞれ上昇した(ブルームバーグ)。

 これにより、米長期金利は今年に入ってから続いていたレンジ相場を上抜けた格好となった。今回の雇用統計はあくまでひとつのきっかけであり、今回の米国の長期金利上昇の背景には、1月の米ISM製造業景気指数の改善などを受けた景気回復への期待、さらに原油などの商品市況の上昇などを背景としたインフレ懸念などがある。

 さすがにFRBによる利上げまでは織り込めないものの、6月末までとなっているFRBによる国債買入がここで停止される可能性も出てくるとみられ、国債需給への懸念が出てきてもおかしくはない。8日から10日にかけて総額720億ドルの3年と10年、30年債の入札も予定されており、これも懸念材料とされる可能性がある。

 日本の債券市場はここにきて米債の影響を非常に受けやすくなっており、日本の長期金利ももみ合いから上放れて再び上昇局面入りする可能性が高まった。すでに4日の東京市場では長期金利は一時1.285%に上昇しており、今年に入ってからのレンジ相場を抜けつつある。その動きが7日以降、本格化する可能性がある。日本の長期金利での1.3%は通過点となる可能性が出てきた。

 4日の米国株式市場ではダウは29ドル高としっかり。また、外為市場では米長期金利の上昇などからドルが買われ、ドル円は82円台を回復するなど円高の動きも一服している。これらは週明けの東京株式市場にとり好材料視されるとみられ、債券市場にとりこれも上値を抑える要因となりうる。

 ただし、このまま日米の長期金利が大きく跳ね上がることは考えづらい。あくまで膠着相場から脱して、あらたな居所を探る展開となることが予想されることで、今回の日米の長期金利の上昇に対し、それほど懸念する必要はないと見ている。債券の投資家にとっても、絶好の押し目買いのチャンスとなるのではなかろうか。

 そうはいっても気をつけなければいけないのは、財政問題がこの金利上昇に拍車をかけるリスクである。市場では金利上昇への警戒心が高まることで、悪材料には敏感になりつつある。そんな中、来年度予算案の審議などをしっかり進めて行かなければ、長期金利の上昇が加速されるリスクがあろう。


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by nihonkokusai | 2011-02-05 09:27 | 債券市場 | Comments(1)

債券はレンジ相場から脱却か

 ここにきて膠着感を強めつつある米国と日本の債券市場であるが、日足チャートなどから見て、そろそろレンジ相場を抜けだしてくる可能性がある。日本の債券先物は、いわゆる三角保合の頂点を形成しつつある。

 このレンジ相場を抜け出すきっかけとなりそうなのが、4日に発表される1月の米雇用統計か。1月の米ISM製造業景気指数が2004年5月以来の高水準となり、その内訳で雇用指数も改善しており、雇用統計そのものの数字も良くなれば景気回復への期待感も強まり、債券市場にとり売り材料となりうる。

 日本でも日銀の門間調査統計局長が日本経済は今年前半に踊り場から緩やかな回復局面に移行すると発言するなど、景気に対する強気の見方が広がりつつある。この背景には欧米の景気回復期待とともに、新興国の力強い経済成長がある。昨日発表された2010年の日本の鉄鋼輸出は2008年を超えて過去最高を記録したが、この背景には韓国や中国などの需要があった。

 そして、もうひとつ気になるのが商品市況であろう。特にエジプト情勢の緊迫化はさらなる原油価格の上昇要因となりうる。新興国の需要増もあり食料品やこの原油価格が値上がりしてきており、それは当然ながら物価全体にも波及しつつある。英国のイングランド銀行が年内に利上げを複数回行うのではないかとの観測も出ているが、その背景にはインフレ懸念がある。

 日本についてはインフレを懸念できるような状況には程遠いものの、それでもじわりじわりとCPIのマイナス幅が縮小してくることも考えられる。それに対し米国では日本に比べるとインフレへの懸念はかなり強いように思われる。

 最近の日本の債券相場は米債の動向に非常に影響を受けやすくなっているため、米債が雇用統計の発表などをきっかけに、もしレンジを下抜けてくれば、日本の債券市場も同様の動きを示すであろう。

 そして、日米ともに財政問題を抱えており、これも債券市場にとり上値を重くさせる要因となっている。来週は米国で総額720億ドルの3年と10年、30年債の入札も予定されており、これも懸念材料とされる可能性がある。

 このように債券がレンジ相場を脱却するとすれば、下抜ける可能性が高いとみられる。しかし、三角保合後はいったん抜け出すような動きを見せるが、それがいわゆるダマシとなることも多いことにも注意を払っておく必要がある。今週末から来週にかけて日米の債券市場がいかなる動きを見せてくるのかに注目したい。


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by nihonkokusai | 2011-02-04 08:23 | Comments(0)

景気に対する悲観論は後退か

 2月1日に発表された1月の米ISM製造業景気指数は、60.8と前月の58.5から上昇し、2004年5月以来の高水準となった。

 このISM製造業景気指数は、米供給管理協会が製造業約350社の購買担当役員にアンケート調査を実施し、1か月前と比較して、「良い」「同じ」「悪い」の三者択一の回答を元に、季節調整を加えた景気動向指数を作成したもので、景気転換の先行指標として重視されている(拙著「ネットで調べる経済指標」より)。

 内訳となる雇用指数や価格指数についても重視されているが、雇用指数は米国経済指標で最も注目されている指標のひとつである雇用統計の動向などをこの数字からも連想されるためであり、また価格指数は物価動向も見る上で参考にされる。

 その雇用指数については前月の58.9から61.7に、価格指数についても72.5から81.5に上昇している。これらはFRBの金融政策のスタンスを見極める意味でも注目されている指標のひとつでもあり、FRBの景気認識に影響を与える可能性がある。

 また、マークイットが1日に発表した1月のユーロ圏製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は57.3となり、速報値の56.9から上方改訂された。

 このように欧米については製造業を主体に景気が予想以上に回復を見せている兆しがある。日銀の白川総裁は1月26日の記者会見で、「海外経済は、新興国・資源国が高成長を続けているほか、一時期強まった米国経済の先行きに対する悲観的な見方も後退しており、海外経済の成長率が再び高まりつつあります」と述べている。これにより、輸出は、先行き再び緩やかに増加していくというのが日銀の判断である。

 2月14日に2010年10~12月期の日本の国内総生産(GDP)の実質成長率が発表されるが、平均で0.5%のマイナス、年率換算で2.0%程度のマイナスとなり、5四半期ぶりのマイナス成長となることが予想されている。このマイナス要因のひとつに、半導体など情報関連財の在庫調整局面入りを背景とした輸出の伸び悩みが指摘されているが、「情報関連財の在庫調整についても、世界的にIT関連需要が堅調に推移するもとで、着実に進捗していくことが見込まれます」と白川総裁は会見でコメントしている。

 また、エコカー補助金の終了に伴う自動車の駆け込み需要の反動減の影響についても、白川総裁は「自動車の販売動向、生産指数の動き、企業からのヒアリング情報などを踏まえると、徐々に薄まっていく方向にあるとみられます」としている。

 このように、どうやら10~12月期の景気の落ち込みは一時的なものとなりそうで、14日に発表されるGDPに対し、市場は過去の数値としてあまり反応しない可能性が高い。

 エジプトの政情不安にともなう原油高、さらに円高などが景気回復の足かせとなる懸念もあり、不透明感が強いことは確かである。しかし、日本の景気は欧米の景気回復とともに1月以降は回復を示す可能性が強まりつつあり、悲観論が徐々に後退しているように思われる。


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by nihonkokusai | 2011-02-03 08:47 | 景気物価動向 | Comments(0)
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