牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

<   2010年 09月 ( 31 )   > この月の画像一覧

「2010年6月末現在の国債保有者別残高」

9月17日に日銀が発表した2010年4~6月資金循環勘定速報によると、家計の金融資産は2010年6月末現在で1445兆250億円となった。

この資金循環勘定速報をもとに 2010年6月末現在の国債所有別内訳を算出した。

国債の残高そのものは、710兆4364億円となった。海外投資家のシェアは、4.6%と3月末と変わらずとなった。家計のシェアは4.8%となり3月末の5.0%からやや低下した。

3月に比べ全体の残高が増加したが、最大の増加額となったのは銀行など民間預金取扱機関で9兆4140億円もの増加となった。引き続き余剰資金を抱えた銀行などが積極的に国債残高を積増した。民間の保険・年金が5兆8529億円増、投信など金融仲介機関が5兆7907億円増、日銀も5兆836億円の増加となった。

全体に占めるシェアとしては、民間預金取扱機関が269兆5537億円で37.9%、民間の保険・年金が173兆8680億円で24.5%、公的年金が77兆8403億円で11.0%、日本銀行が56兆2541億円で7.9%、投信など金融仲介機関が40兆5039億円で5.7%、家計が34兆3806億円で4.8%、海外が32兆4188億円で4.6%、財政融資資金が8711億円で0.1%、その他が24兆7459億円で3.5%となった。
[PR]
by nihonkokusai | 2010-09-21 11:56 | 国債 | Comments(0)

「不胎化されるまでタイムラグを利用」

19日の日経新聞によると、財務省は通常、為替介入の実施の際、日銀から借りた円資金を本来は可及速やかに公募発行されるFBで得た資金により返済しなければいけない。しかし、介入による緩和効果を高めるために、一気に介入分のFBを発行せず、段階的に発行する方針と伝えられた。たとえば仮に3兆円の介入を行った際に、1週間あたり5000億円のFBを6週間に渡り発行すれば緩和効果を持続させることができると日経新聞では例を出している。

2003年から2004年にかけての大規模介入に際しても同様の措置が講じられていたが、当時、日銀は量的緩和政策という日銀の当座預金残高そのものをターゲットにする金融政策を行っていた。日々の大量の金融調節の中にあり、本来は介入資金だけを色分けすることはできないものの、介入分でFBで吸収されなかった資金分を当座預金残高に積み上がげておけば、緩和効果と形式上はなりうる。

ただし、当座預金残高が増加した要因が介入資金によるものなのか、それとも別途期末要因とかであるのか峻別することは難しい。これについては野田日銀審議委員が16日の会見で下記のように発言している。

「介入資金は一時的には金融市場への資金の供給要因になるということは、ご指摘のとおりだと思います。したがって日本銀行としては、この介入資金の活用も視野に入れながら潤沢な資金供給を行っていくことになるのではないかと、個人的には、かつ現時点では考えています。ただ、だからといって介入額が、そのまま日本銀行の当座預金残高の増加にストレートに結びつくと考えているわけでもないということも、申し上げておきたいと思います」

また、現在の日銀の金融政策は、政策金利である無担保コール翌日物金利を0.1%近辺に誘導することであり、さらに当座預金残高の超過準備分には政策金利と同じ0.1%の補完金利が付いている。この状況下にあっては、擬似的な量的緩和策により当座預金残高を多少増加させようとも緩和効果そのものは限定的である。

このため今回の財務省による不胎化されるまでタイムラグを利用する措置についても、あくまでアナウンスメント効果を意識し、市場心理(この場合の市場には短期金融市場は含まれないと思われるが)に働きかけようとするものであろう。
[PR]
by nihonkokusai | 2010-09-21 09:50 | 日銀 | Comments(0)

「為替介入の資金調達の仕組み」

非不胎化の意味を理解するためには、為替介入の資金調達の仕組みを理解する必要がある。これについては日銀のサイトに説明があり、これを参考にして見てみることにする。

「日本銀行における外国為替市場介入事務の概要」 http://www.mof.go.jp/jouhou/kaikei/syokan/gaitame.htm

日本での為替介入は財務大臣の権限において実施されるとある。日本銀行はその際に財務大臣の代理人として、財務大臣の指示に基づいて為替介入の実務を遂行している。

新聞・ニュース等でしばしば使われる「日銀介入」という言葉は、やや誤解を招きやすい表現であるとわざわざ指摘している。ただし、最近では政府・日銀による介入と使われることも多くなっているが、いまだに日銀が自らの判断で実施しているとの誤解も一部にあるようだ。

今回、15日以降の介入は官邸などからの強い要請により、財務大臣が指示を出したと言われる。実務部隊となる日銀の金融市場局為替課は電子ブローキングシステム(EBS)などを使って民間金融機関に注文を出している。

そして、今回の議題となる為替介入に要する資金の調達についてだが、日本での為替介入はすべて政府の外国為替資金特別会計の資金を用いて行われていることに注意したい。日銀の勘定とかではなく政府の勘定において実施されている点を認識しておく必要がある。

外国為替資金特別会計とは政府が実施する外国為替等の売買(為替介入等)等の円滑化に資するため設けられているものである。今回のように、円売り・ドル買い介入の場合には、政府短期証券(為券)の発行により円資金を調達し、外国為替市場における為替介入によりこの円資金を売却しドルを購入する。通常、この代金の決済は二営業日後に行われる。

ここで為券について少し解説したい。政府が国庫や特別会計などの一時的な資金不足を補うために発行されているのが、FB(Financing Bills)と呼ばれる政府短期証券である。発行根拠法により財務省証券、食糧証券及び外国為替資金証券に分かれている。このうち外国為替資金証券が為券と呼ばれるものである。

政府短期証券(FB)及び割引短期国庫債券(TB)は2009年2月より「国庫短期証券(Treasury Discount Bills)」として統合発行されている。しかし、発行される毎にそれが、TBなのかそれても財務省証券、食糧証券及び外国為替資金証券なのかは区別されている。

これはたとえば下記のように財務省のサイトで公表されている国庫短期証券の入札発行などに表記されている。

国庫短期証券(第138回)の入札発行 http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/offer220916.htm

この中の発行根拠法律及びその条項がそうである。TDBの138回は下記内容となっている。

財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

個別にはそれぞれの条項を読めばその区別がわかる。財政法第7条に基づくものは財務省証券、財政融資資金法第9条に基づくものは融通証券であり、特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条には「外国為替資金に属する現金に不足がある場合には、外国為替資金特別会計の負担において、一時借入金をし、融通証券を発行し、又は国庫余裕金を繰り替えて使用することができる。」とあることで、この融通証券が為券であることがわかる。

参考までに10年国債の発行などについても、同様に財務省の発表する入札発行を確認すれば、それが建設国債なのか赤字国債なのか、借換債もしくは財投債なのかがわかる。

ついでに、財政融資資金法の第9条二項をみると、「融通証券の限度額については、予算をもつて、国会の議決を経なければならない。」とあるが、外国為替資金証券は無制限な発行を防ぐため、毎年度の予算で発行残高の上限が規定されている。

これは2010年度予算で145兆円に設定されており、このうち発行済みの借り換え分104兆円と15日の介入相当額となる約2兆円を除くと、 残る39兆円が今年度の介入可能額となる計算となる。

ちなみに2003年には臨時措置として、政府と日本銀行は、外国為替市場での円売り介入に使用する円資金が不足する場合に、政府が外貨準備で保有している米国債券を日本銀行に売却して必要とする円資金を調達することができる契約を結んでいる。

さて、話を本題の為替介入による資金調達に戻したい。これまで見てきたように円売り・ドル買い介入の場合には、政府が政府短期証券(為券)を発行することにより円資金を調達する。この仕組みによれば為替介入は基本的に不胎化介入となる制度的な仕組みとなっている。

これについては「日本の外貨準備の政策分析」という早稲田大学の谷内満教授の論文を参考に見てみたい。

「日本の外貨準備の政策分析」http://www.jica.go.jp/jica-ri/publication/archives/jbic/report/review/pdf/36_04.pdf

1999年以前は、為券は日銀が主に引き受けていたが同年以降は、為券は公募で発行され市中消化されている。この仕組みのもとでは為替介入は常に不胎化介入となる。なぜなら、円売りドル買い買い介入の場合、まず為券が発行されるが、それによって民間銀行の為券保有が増加し、その購入資金の支払いのため銀行準備が減少する。外貨買い介入が行われると民間銀行の外貨資産が減少し、銀行準備が(先ほどの減少分と同額だけ)増加する。したがって、民間銀行の銀行準備は変化せず、マネタリーベースは不変となる。

ただし、2003-04年の大量のドル買い介入の際は、円資金の調達規模が大きすぎて市場での資金調達が追いつかず、一部が不胎化されず、不胎化されるまでタイムラグが生じた。上述のように、為券は1999年からは原則公募発行によっているが、介入を機動的に行うため、ドル買い介入をする際は一時的に日銀が為券を引受け、後日公募発行で市場から資金を調達し日銀が引き受けた為券を償却する。通常はこの期間はごく短期間だが、この時期の大量介入の際は、日銀への資金返済には時間がかかり、したがってその間不胎化が完全にはなされなかったことになる(谷内満教授の論文より)。

日銀による公債の引受けは、財政法により原則として禁止されているが、FBについては当該条項の適用を受けないと解されており、日銀法でも日銀がFBの引受けを行うことができる旨の条項が設けられている(日本銀行法第34条第4号3)。

ただし、FBの発行が1999年度以降、原則として市場における公募入札により発行する方式に改められ、この公募入札方式への移行後は、日銀がFBの引受けを行う場合は、政府からの要請に応じて例外的に行う臨時引受けと、日銀の業務運営上必要がある場合に自らが行う引受けに限られることとなった。

このうち、政府からの要請に応じて実施する臨時引受けには、市場における公募入札において募集残額等が生じた場合と、為替介入の実施や国庫資金繰りの予想と実績との乖離の発生などにより「予期せざる資金需要」が発生した場合に限定されている。また、臨時引受けを行った政府短期証券については、可及的速やかに償還を受ける扱いとなっている。このように、臨時引受けについては、中央銀行による政府向け信用のあり方の観点も踏まえ、一時的な流動性の供給となるような明確な「歯止め」が設けられている。 (以上、「日本銀行の対政府取引」についてより、http://www.boj.or.jp/type/exp/stat/exseifu01.htm)

非不胎化させるさせないの議論があるが、現在の日本の為替介入の仕組みでは、結果とすればこのように常に不胎化となる。ただし、不胎化されるまでタイムラグの間、日銀の当座預金残高がその分一時的積み上がる。為券を発行し資金返済がなされてももしその分が上乗せされたまま当座預金残高を維持するというような金融調節を日銀が行うならば、それは結果として非不胎化ということになろう。

ただし、現在のように金融政策で金利をターゲットにして、さらに当座預金残高の超過準備分には政策金利と同じ0.1%の補完金利が付いている。この状況下にあっては、介入資金を形式上当座預金残高に多少反映させたとしても緩和効果そのものは限定的なのであり、あくまでアナウンスメント効果を意識したものでしかない。
[PR]
by nihonkokusai | 2010-09-17 11:52 | 日銀 | Comments(2)

「牛さん熊さんの本日の債券」のメルマガを発行

まぐまぐにて「牛さん熊さんの本日の債券」のメルマガ発行(有料)を10月1日からスタートします。
よろしければご購読ください。

ご登録はこちらからお願いいたします。


http://www.mag2.com/m/0001185491.html

[PR]
by nihonkokusai | 2010-09-16 11:49 | 債券市場 | Comments(0)

「アナウンスメント効果を意識した非不胎化観測」

昨日の為替介入は2兆円規模となり、円売りドル買い介入としては過去最大規模となったようである。これまでの介入の最高額は1998年4月に行った2.6兆円であるがこの際は円買いドル売り介入であった(日経新聞)。

日銀も政府に歩調をあわせた。白川方明日銀総裁による「強力な金融緩和を推進するなかで、潤沢な資金供給を行う」との談話や、たまたま本日、講演を行っていた日銀の野田審議委員も介入資金使い潤沢に供給と発言し、いわゆる非不胎化措置を連想させる発言をしたのである。

同様の発言は2001年9月17日の介入の際にもあった。この日、政府は2000年4月3日以来の為替介入を実施し、この介入に際して「介入資金も利用して、潤沢な資金供給に努めていく方針」と日銀はコメントしたのである。非不胎化を匂わしながらも「市場調節方針を実現するため介入資金も含め全体としての資金供給額を決定している」とも発言していた。そもそも介入資金を非不胎化しようがしまいが日銀はどちらにしても毎日大量の資金供給を実施している。どの部分が介入の非不胎化によるものなのかはっきり区別もつけづらい。それでも今日の非不胎化に関するコメントが相場に多少なりインパクトも与えたのである(2001年9月17日の「若き知」より)。

今回も同様のアナウンスメント効果を狙っての日銀関係者からの発言であったと思われる。実際に日銀からは「非不胎化」との具体的な言葉は出てきていない。あくまで政府の介入実施に歩調をあわせるため、介入資金も含め全体としての資金供給を潤沢に行うとして、非不胎化措置を連想させるとともに、量的緩和政策を意識させ市場に影響を与えることを狙ったものであろう。今回もどの部分が介入の非不胎化によるものなのかはっきり区別もつけづらい。

しかし、今回の日銀総裁の潤沢な資金供給を行うとの談話などが、日銀の量的緩和に向けての姿勢を意識させたことも事実である。過去の量的緩和政策の効果は限定的であったとする日銀ではあるが、アナウンスメント効果を意識するのならば量的緩和策の再導入の可能性もありうる。白川総裁はそこまで意識しての発言であったのか、日銀の次の一手に注目したい。
[PR]
by nihonkokusai | 2010-09-16 11:29 | 日銀 | Comments(0)

「EBSを使ったとみられる為替介入と日銀による非不胎化措置」

本日15日午前10時半近くに政府は2004年3月16日以来となる為替介入を実施した。ドル円は10時25分頃つけた82円88銭近辺から一気に83円台後半に。その後も断続的な介入により、ドル円は85円台を回復した。野田財務相は財務省内で緊急会見を開き、「為替相場の過度な変動を抑制するため、さきほど為替介入を実施した」と明らかにした。また、今回は協調介入ではなく日本単独での介入であることも明らかにした。

介入については、個人的にはその効果に懐疑的である。特に単独での介入では、過去の介入同様に投機筋の餌食にされる可能性がある。スイスも介入を行ってきたが、介入すればするほどスイスフランが買われる結果となった。

介入を戦争に例えるのはどうかとは思うが、太平洋戦争末期、戦艦大和の最後の出撃と被る。援軍はなく単独で、しかも大艦巨砲主義の象徴でもあり、結局、航空機の攻撃により沈没。この場合の航空機が今回は投機筋になりうる。もし戦略・戦術が優れ、市場の隅々にまで精通した人材がいて介入指示を行えば、数多の投機筋に対抗しうる可能性はないとは言えないが、それでも円高圧力を腕力で抑えこむには限界があろう。

ただし、今回の介入では2004年当時とは戦術に変化があった。介入の実行部隊となる日銀はインターバンクに協力を依頼せずに、EBSから直接円売りを実行したとの観測がある。EBS(Electronic Broking System)とは電子ブローキングシステムで人を介さず売買注文を端末に入力することにより取引が成立するコンピュータシステムである。これにより過去の介入時のように大手行主体に直接電話で取引するのと異なり、約定後でなければ相手方、つまり日銀とはわからない方法で介入したとみられる。これまでは大手行主体に介入が入りやすく、その分、介入の情報も偏在化していたが、電子取引を使うことでより公平感とともに、隠密性、さらに即時性が高まることとなる。今回はEBSで取引したディーラーがBOJQという相手方のコードを見てかなり驚いたとも伝わった。

今回の介入については日銀も政府の動きに歩調をあわせることとなった。日銀は、今回の円売り介入で市場に供給される資金を吸収しない方針を固めたと一部報道で伝えられ、たまたま本日、講演を行っていた日銀の野田審議委員も介入資金使い潤沢に供給と発言し、いわゆる非不胎化措置を講ずることとなったのである。これはある意味、量的緩和策がイメージされ、日銀が追加緩和を行ったのと同様のアナウンスメント効果があろう。
[PR]
by nihonkokusai | 2010-09-15 16:23 | 日銀 | Comments(0)

「為替介入と日米の追加緩和観測と長期金利の行方」

14日にウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が、ゴールドマン・サックス・グループが、FRBは早ければ11月にも新たな資産買い入れプログラムを発表する可能性があるとの見通しを示したと伝えた。WSJによると、ゴールドマンのチーフエコノミスト、Jan Hatzius氏が新たな買い入れプログラムについて、「9月21日の会合では予想していないが、11月または12月には発表される可能性がある」と述べ、約1兆ドル規模の米国債を買い入れる公算が大きいとの見方を示した。(ロイター)。

これを受けて14日の米国債券市場では、前日に一時2.85%まで上昇していた10年債主体に買いが入った。10年債利回りは前日比0.090%低下の2.67%に、2年債利回りは同-0.040%の0.50%、30年債利回りは同-0.07%の3.78%にそれぞれ低下した。

FRBの追加緩和観測とそれを受けての米長期金利の低下などから外為市場ではドルが売られ、ドル円は一時82.92円と83円を割り込み、ユーロドルも1.3033まで上昇した(ロイター)。

果たしてゴールドマンのチーフエコノミストによるFRBのバランスシート拡大の可能性はあるのであろうか。それを裏付ける何かしらの情報を握っての発言なのか、それともあくまで推測の域を出ていないのか。

8月24日に米10年債利回りは2009年以来で初めて2.5%を下回ったが、その後は上昇基調となり13日には一時2.85%に上昇している。日本の10年債利回りも8月25日に0.895%と0.9%を割り込んでから9月7日に1.195%と1.2%に接近した。それぞれ絶対水準は違えども、0.3%程度の水準調整が行われたこととなる。

円債の水準調整についてはこれまで言及していたように、小沢氏の民主党代表選出馬表明をきっかけとした財政悪化を意識しての売りがきっかけであり、史上三度目となった長期金利1%割れというバブル相場の反動という面が強かった。それに対して米債の調整については、一部、好調な経済指標の発表などを受けて極端な米経済への悲観論が後退し高値警戒も相まっての水準調整であった。

そんな中にあっての民主党の代表選の結果での菅氏の勝利と、米FRBにより追加緩和観測とそれを受けての円高ドル安は目先の債券相場の転機を示しているとも言える。ユーロに対してはさほど円高とはなっていないものの、ここにきてユーロが静かになっているが、なんらかのかたちでギリシャ問題などが蒸し返されてくる可能性もある。少なくともドル円は83円を割込むなどしており、政府や日銀に対して何らかの対応策が求められ、そのひとつの結果が2004年3月以来となる為替介入であった。

このコラムを書いている最中に単独での日本政府による為替介入が実施された。介入は2004年3月16日以来となる。ドル円は82円90銭近辺から84円台へとドルが大きく上昇した。介入を始めてしまったことにより、当初は効果があれども、一度始めると止められなくなり、投機筋の格好な餌食にされむしろ円高がさらに進行する危惧がある。このあたり過去の介入時の状況を当局はあらためて確認しておく必要もあろう。また、介入資金のためのFB発行増なども意識しておく必要がある

欧米はこれまで実力行使というよりもアナウンスメント効果を意識して自国通貨安を演出してきたが、日本はついに実力行使を始めたことで、欧米当局が不快感を示す可能性もある。いや、むしろ過去の経緯から、これを黙認し介入すればするほど円高進行する状況を見てみることにするのかもしれない。

政府が動いたこともあり、日銀にも追加緩和圧力がさらに加わる可能性は否定できない。しかも、8月30日の会合で新型オペの拡充策を打ち出したばかりであり、別な手段を講じる必要がある。その選択肢としては国債買入増額などが視野に入る。

介入当初はさすがに円安が進み、株式市場にも好影響を与えることにより、債券相場はいったんは上値が重くなろう。しかし、その介入の効果も薄れると日銀へのプレッシャーの強まりにより、再び長期金利に低下圧力が加わる可能性がある。もしFRBによる米国債の買入拡大の実現性が高まれば、米長期金利にも低下圧力が加わろう。

いったんは上昇基調となった日米の長期金利は再び、目先つけた0.9%割れと2.5%割れを試す可能性もないとは言えなくなってきた。日本の財政問題は菅氏の続投により、急激に悪化するリスクが抑えられたに過ぎず、今後は「菅さんでも売り」となる可能性も否定はできないと昨日のコラムでは書いたが、その前にもう一度、債券バブルが復活する可能性も見ておく必要がある。
[PR]
by nihonkokusai | 2010-09-15 11:14 | 債券市場 | Comments(4)

「民主党代表選の結果を受けての債券相場の動向」

14日に投開票が行われた民主党の代表選挙で菅候補が小沢候補を大差で破り続投が決まった。小沢氏が勝利すれば財政拡大の可能性もあり、一時的にせよ債券相場には売り圧力がかかる可能性はあったが、それは回避された。

この日には20年国債の入札が実施されたが、最低落札価格はほぼ予想に近いものとなったが、テールは20銭と前回の8銭から大きく拡大。ただし、応札倍率は4.56倍と前回の2.86倍を大きく上回った。民主党代表選の結果待ちの状況下の中にしてはまずまず無難な結果となった。

この結果を見て投資家は民主党代表選の結果を待たずに押し目買いを入れたことから、現物は10年310回が当時朝方の1.165%から1.130%に、5年91回も0.390%から0.370%に、超長期20年120回も朝方の1.975%から1.930%に、それぞれ大きく切り返してきた。

ある程度、菅氏勝利を意識していた可能性はあるが、それよりもたとえ小沢氏が勝利しても債券売りは限定的とみていたものとみられる。財政に向けての菅氏と小沢氏の姿勢は正反対であったが、もし小沢氏が首相に選ばれたとしてもあまり無茶な政策を行うことができなかったのではないか。小沢氏とて日本の財政悪化をまったく理解していないはずはない。

しかし、それでも小沢氏が首相となれば今後のリスクが高まる懸念もあった。たとえば14日の民主党代表選での立候補者演説で、小沢氏は日銀法改正など制度改革やインフレターゲット政策も視野に入れ、金融政策と財政政策の両面からあらゆる手段を尽くすと発言していた。これは所謂、民主党のデフレ議連と同様の発想であり、日銀法改正を本気で取り組むとなれば、これまでの中央銀行の歴史に逆行することともなりかねないものである。

また、小沢氏が主張していた無税国債の発行や国有財産の証券化などを本当にやるとしたら、債券市場はかなり神経質な動きを示すことも考えられた。とりあえずはこういった動きは回避され、債券相場にとり菅氏の勝利は「閑散に売りなし」という格言にあやかって、まさに「菅さんに売りなし」ということになった。しかし、これで再び長期金利が1%を大きく割込むかどうかは不透明である。債券相場にとり今回の結果はあくまで売りの材料とはならなかったと言う程度でしかない。

円高進行などにより今後は政府によるさらなる景気対策への期待が強まることも考えられる。日本の財政問題は菅氏の続投により、急激に悪化するリスクが抑えられたに過ぎない。今後は「菅さんでも売り」となる可能性も否定はできない。今後の財政再建に向けた取り組み姿勢もしっかり確認しておく必要がある。
[PR]
by nihonkokusai | 2010-09-14 16:04 | 債券市場 | Comments(0)

「民主党代表選挙後の債券相場の予想」

民主党の代表選挙を明日に控え、その結果後の債券相場の動向を占ってみたい。現在のところ菅氏がややリードと伝わっているが、債券市場で注目されるのは財政に向けての動きである。

菅氏は前回の衆院選マニフェストについて修正やむなしとの立場であり、また社会保障改革を財源と一体で議論しその中で消費税を含む税制の抜本改革についても検討するとして消費増税に言及するなど、財政再建を意識した立場におり、その点では国債市場にとり「小沢ショック」が払拭し、買戻しの要因となりうる。それに対して小沢氏は2010年度予算に計上している予備費を財源に2兆円規模の景気対策を行うとし、さらに国債増発の可能性についても言及している。

8月25日に長期金利が0.895%をつけたあと債券相場は大きく下落したが、そのきっかけのひとつが6日に民主党代表選に小沢前幹事長が出馬と報じられ、財政拡大が意識されたことであった。このタイミングでメガバンクなどが超長期債を主体に売りを持ち込んだことで、債券相場は大きく売られ、10年債利回りは9月6日に1.195%と1.2%に接近した。

しかし、小沢氏の出馬はあくまで債券相場の売りのきっかけに過ぎなかったことに注意する必要がある。日本の債券相場は米国債やドイツ連邦債がリスク回避の資金流入で買われたことなどを背景にして、じりじりと買われ史上三度目の長期金利1%割れという場面を迎えていた。その米国債もやや高値警戒などから売りが入りつつあり、日本国債も何かしらのきっかけ次第で売られやすい状況にあった。小沢氏の出馬による財政悪化懸念は、まさにタイミングよい材料となったに過ぎない。

このため民主党代表選の結果がそのままストレートに材料視されることは考えづらい。しかし、財政に向けての動き次第では今後の国債需給があらためて見直される可能性はある。

財政に向けての菅氏と小沢氏の姿勢は正反対であり、菅氏の場合にはいったん足元の財政悪化懸念は後退しよう。小沢氏は代表選に向けては菅氏と反対の立場をとっているが、実際に首相に選ばれればあまり無茶な政策を行うことができなくなるのではないか。小沢氏とて日本の財政悪化をまったく理解していないはずはない。

ただし、仮に無税国債の発行や国有財産の証券化などを本当にやるとしたら、債券市場はかなり神経質な動きを示すことが考えられる。財政拡大に歯止めがかからないとなれば、日本国債が国内資金で賄うことができる臨界点がさらに前倒しされることになる。いまのところ日本の財政危機は狼少年に例えられているが本当の狼は必ずやってくる。問題はそれが「いつ」であるのかに過ぎない。その日を少しでも先送りさせ、その間に税制改革なり抜本的な手を打つ必要がある。

もし小沢氏にそのような認識が本当にないとなれば、債券市場が下げ足を早めるリスクはある。また、菅氏が勝利しても小沢氏の処遇次第では国債への信認が低下する懸念もある。いずれにせよ、債券相場にとっては一時的な買戻しの材料、もしくはいったんの下値模索となり、そのあとは政局とともに財政の行方を見極めてということになろう。
[PR]
by nihonkokusai | 2010-09-13 17:41 | 債券市場 | Comments(0)

「何故、8月10日に日銀は動かなかったのか」

8月9日から10日にかけて開催された日銀の金融政策決定会合の議事要旨が発表された。同日10日に開催された米FOMCでは、MBSの償還資金による国債への再投資を表明し、これを追加緩和とした。現実にはFRBのバランスシートの規模を維持するだけで追加緩和とは認識しづらいが、日銀が動かずFRBが「追加緩和」を行ったことで、円高ドル安を進行させたひとつの要因となった。

結局、このときには追加緩和策を決めなかった日銀は8月30日に臨時の決定会合を開催し、新型オペの拡充策という「追加緩和」を実施している。それでは、なぜ8月10日の会合では追加緩和を見送っていたのか、議事要旨の内容から見てみたい。

注目すべきは為替に関する部分で、最近の為替動向については、「多くの委員は、円高が輸出や企業収益の下押し要因になりうると述べた。また、多くの委員は、円高やそれに伴う株安が、企業や家計のマインドに与える影響にも、注意が必要であると指摘した。ある委員は、足もとの円高水準が持続するリスクが高まっているとの見方を示した。」

円高リスクに対して警戒はしているものの、「複数の委員は、為替円高が経済全体に与える影響は、世界経済全体の情勢、企業収益や金融環境の動向など、様々な要因に依存するため、バランス良く全体を評価していく必要があると」との指摘もあった。

さらに、ある委員が「円の対ドル相場が、1995 年の円高のピークに近づいていることが話題となっているが、その後の日本の物価上昇率が低かったため、実質実効為替レートでみると当時ほどの円高ではないとした上で、円高と物価下落を、別々のものではなく、総合的に捉えて経済への影響を評価する必要がある」と指摘していた。このある委員とは誰なのであろうか。

それはさておき、この会合では政府からの出席者からも、特に追加緩和を望む発言はなかった。FRBが同日のFOMCで動くことはある程度日銀も察知していたと思われるが、その内容がMBSの償還資金による国債への再投資であるならば追加緩和としての実質的な効果はないことで、為替市場に与える影響は限定的とみていたのであろう。

しかし、米FRBのバーナンキ議長はFOMCの決定を「追加緩和」として、動かぬ日銀と動いたFRBとの違いを印象付けることとなった。自国通貨安を意識しての行動は、結果としてはFRBのほうが上手であったと言うことであろう。少ない手札をタイミングよく有効活用したとも言える。

この日銀の決定会合の結果は全員一致での現状維持であった。30日の臨時会合では須田委員が新型オペの拡充策については反対票を投じて全員一致が破られてはいるが、ここにきての決定会合はほぼ全員一致のケースが目立っている。もし、多少なり日銀も動くそぶりを見せれば市場に影響も出る。8月10日に日銀は動かずとも、ここで1人か2人の委員が、追加緩和策を議事提案していれば、市場が見る日銀の印象に変化があった可能性がある。

日銀の金融政策決定会合は、いろいろな分野の代表者が、それぞれの意見に基づいて最終的には多数決で金融政策等が決定される仕組みである。あまりに考え方が同方向であると、硬直的なものとみられてしまいかねず、柔軟さを示すためにも、意見の違いをもう少しはっきりさせ、少なくとも全員一致が続くような事態は避けるべきではなかろうか。
[PR]
by nihonkokusai | 2010-09-10 10:40 | 日銀 | Comments(3)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー