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カテゴリ:国際情勢( 158 )

米朝首脳会談の中止?による市場への影響はどうであったのか

 米国のトランプ大統領は、来月12日にシンガポールで開く予定だった米朝首脳会談を中止すると発表し、非核化に向けて北朝鮮に最大限の圧力をかけ続けると強調した。その一方で、北朝鮮の対応次第では首脳会談が開催される可能性はあるという考えを示した(NHK)。

 米朝首脳会談中止の報を受けて、北朝鮮の地政学的リスクが再燃かとの思惑から、24日の欧米市場ではリスク回避の動きを強めた。欧米の国債は買われ、円高が進み、欧米の株式市場は下落した。

 24日のダウ平均は一時280ドル安となったものの、その後下げ幅を縮小させ引けは75ドル安となった。ナスダックも同様に下げ幅を縮小させて1ポイント安に。米債も同様に2.95%近くまで利回りが低下後、2.97%あたりまで戻していた。

 これらの動きを見る限り、米朝首脳会談の中止により、市場ではパニック的な動きとはならなかった。これは米朝首脳会談が完全に中止となったわけではなく、ひとまず6月12日の会談は止めるとの見方によるものか。さらに市場では、ここにきての北朝鮮側からの動きなどから、6月12日の会談は本当に行われるのかと疑心暗鬼になっていた面もあり、やっぱりかとの認識から「予想外」ということでの落ち着いた動きになったものとみられる。

 これによって再び米国と北朝鮮は、中国や韓国などを巻き込んで、腹の探り合い合戦が再開された。米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長という、なかなかの強烈な個性のぶつかり合いに、中国も絡んできているようで、先が見通せないことも確かである。いまのところ軍事衝突となる懸念がそれほど高まっているわけではない。しかし、今後の動向次第では再び緊張が高まる懸念もある。

 そういったところに、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、26日に南北の軍事境界線にある板門店の北朝鮮側の施設で首脳会談を開催したと伝えられた。史上初の米朝首脳会談の実現に向けて意見を交わしたとされる。6月12日の米朝首脳会談は開催される可能性も出てきた。


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by nihonkokusai | 2018-05-27 09:19 | 国際情勢 | Comments(0)

トルコの通貨が急落している背景とは

 トルコの通貨、トルコリラがここにきてさらに下げ足を速めてきている。対円では今年初めに30円台にあったのが、23日に一時22円台にまで急落した。対ドルでも最安値を更新している。

 FRBの金融政策の正常化に伴う利上げによって、新興国に流れていた資金が米国などに環流しやすいなかにあって、特にトルコリラが大きく売られているのには理由がある。

 トルコリラはいわゆる高金利通貨とも呼ばれているように、インフレ率が高いことで金利も高い。トルコ経済そのものはしっかりしているが、輸入の依存度が高く、ここにきての原油価格の上昇もあり、インフレ懸念が強まっている。通貨安や物価の上昇に対してトルコ中銀は利上げによって対処しようとしていたところに、待ったを掛けた人物がいた。エルドアン大統領である。

 トルコは6月24日に大統領選と国会議員選を控えている。2003年に首相に就任したエルドアン氏は、インフレ対策としてデノミネーションを実施し、インフレを抑制させ、トルコ経済の回復に寄与した。エルドアン氏はその後、トルコで初めて直接選挙で大統領が選ばれることとなった2014年の大統領選挙に立候補して当選した。

 6月24日の大統領選挙でも、いまのところエルドアン氏が優位と伝えられているが、予断は許さない。エルドアン大統領は選挙も意識してか、年金支給などを利用してのバラマキ政策を行っている。そしてエルドアン氏は「金利を下げれば、インフレも低下する」という持論を展開したことにより、それが今回のトルコリラ急落のきっかけとなった。

 政治家が中央銀行の利上げを嫌うのはどこの国でもあることながら、利下げによって物価上昇を抑えるというのは理屈に合わない政策である。ただし、異次元の金融緩和策を講じても、一興に物価が上がらない国もあるため、一概にエルドアン氏の経済運営能力に疑いをかけるというのもどうかと思うが、とにかく市場ではエルドアン氏の金融経済に関する姿勢に疑問を投げかけた。

 問題となるのはエルドアン氏は、この持論を展開するためか、6月の大統領・議会選後に金融政策への影響力拡大を望むと発言したことである。これに市場が動揺を示した。トルコ中銀の独立性が失われれば、インフレ圧力は強まり、それによって通貨安に歯止めが掛けられなくなるとの見方も出てきた。某国の中央銀行も政治的な圧力を受けているように見えるが、それはさておき、そこにあらためて登場したのが、格付け会社となる。

 格付け会社フィッチ・レーティングスは「トルコの金融政策は以前から政治の制約を受けてきた。しかし中銀の独立性を低下させようとするあからさまな脅威は、政策決定環境と政策の有効性に対するリスクを増大させる」と指摘した(ロイター)。

 これを受けてトルコリラの売りが加速したようである。ここに個人投資家などからの売りも入り、売りが売りを呼ぶような展開となってきている。いまのところどこまで下げるのかは見通しづらいが、トルコリラの下落が金融市場のリスク要因となりつつあることも確かである。


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by nihonkokusai | 2018-05-24 10:51 | 国際情勢 | Comments(0)

トルコの通貨が急落している背景とは

 トルコの通貨、トルコリラがここにきてさらに下げ足を速めてきている。対円では今年初めに30円台にあったのが、23日に一時22円台にまで急落した。対ドルでも最安値を更新している。

 FRBの金融政策の正常化に伴う利上げによって、新興国に流れていた資金が米国などに環流しやすいなかにあって、特にトルコリラが大きく売られているのには理由がある。

 トルコリラはいわゆる高金利通貨とも呼ばれているように、インフレ率が高いことで金利も高い。トルコ経済そのものはしっかりしているが、輸入の依存度が高く、ここにきての原油価格の上昇もあり、インフレ懸念が強まっている。通貨安や物価の上昇に対してトルコ中銀は利上げによって対処しようとしていたところに、待ったを掛けた人物がいた。エルドアン大統領である。

 トルコは6月24日に大統領選と国会議員選を控えている。2003年に首相に就任したエルドアン氏は、インフレ対策としてデノミネーションを実施し、インフレを抑制させ、トルコ経済の回復に寄与した。エルドアン氏はその後、トルコで初めて直接選挙で大統領が選ばれることとなった2014年の大統領選挙に立候補して当選した。

 6月24日の大統領選挙でも、いまのところエルドアン氏が優位と伝えられているが、予断は許さない。エルドアン大統領は選挙も意識してか、年金支給などを利用してのバラマキ政策を行っている。そしてエルドアン氏は「金利を下げれば、インフレも低下する」という持論を展開したことにより、それが今回のトルコリラ急落のきっかけとなった。

 政治家が中央銀行の利上げを嫌うのはどこの国でもあることながら、利下げによって物価上昇を抑えるというのは理屈に合わない政策である。ただし、異次元の金融緩和策を講じても、一興に物価が上がらない国もあるため、一概にエルドアン氏の経済運営能力に疑いをかけるというのもどうかと思うが、とにかく市場ではエルドアン氏の金融経済に関する姿勢に疑問を投げかけた。

 問題となるのはエルドアン氏は、この持論を展開するためか、6月の大統領・議会選後に金融政策への影響力拡大を望むと発言したことである。これに市場が動揺を示した。トルコ中銀の独立性が失われれば、インフレ圧力は強まり、それによって通貨安に歯止めが掛けられなくなるとの見方も出てきた。某国の中央銀行も政治的な圧力を受けているように見えるが、それはさておき、そこにあらためて登場したのが、格付け会社となる。

 格付け会社フィッチ・レーティングスは「トルコの金融政策は以前から政治の制約を受けてきた。しかし中銀の独立性を低下させようとするあからさまな脅威は、政策決定環境と政策の有効性に対するリスクを増大させる」と指摘した(ロイター)。

 これを受けてトルコリラの売りが加速したようである。ここに個人投資家などからの売りも入り、売りが売りを呼ぶような展開となってきている。いまのところどこまで下げるのかは見通しづらいが、トルコリラの下落が金融市場のリスク要因となりつつあることも確かである。


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by nihonkokusai | 2018-05-24 10:51 | 国際情勢 | Comments(0)

イタリアが政府債務を帳消しにするようECBに要請?

 イタリアでは、ポピュリズム(大衆迎合主義)政党の「五つ星運動」と反移民を掲げる「同盟」が13日、新政権樹立へ包括的な合意に達したと明らかにした(WSJ)。

 両党は15%の均一税率や新たな社会保障の導入のほか、不評な年金改革を撤回することを提唱している。

 政府の政策草案とされているものによると、加盟国にユーロ離脱を認める域内での手続き導入が提案されているほか、2500億ユーロ(約32兆5300億円)のイタリア政府の債務を帳消しにするよう欧州中央銀行(ECB)に要請する方針が盛り込まれていた(WSJ)。

 市場では最悪のシナリオとなっていた「五つ星運動」と「同盟」の連立政権が樹立しても、ユーロ離脱に向けた動きは出ないとの見方も強かった。ところが、今回の政策草案とされているものが明らかになったことを受けて、16日のイタリアの株式市場は銀行株主体に下落した。

 ユーロ圏の債券市場では、イタリア政府の債務帳消しを求めるという奇想天外な要請観測に驚き、16日のイタリアの10年債利回りは前日比0.16%上昇の2.11%と大きく上昇した。これを受けて、スペインやポルトガルの国債も連れ安となったが、ドイツなど中核国の国債はリスク回避の動きから反対に買われていた。

 リフレ派の影響が強く残っている日本ではなく、イタリアがECBに対して政府債務を帳消しにするよう求めるなどということが、本当に起こりえるのか。日本でもし日銀保有の日本国債をなかったものとしたらどうなるであろうか。日銀のバランスシートからみれば、我々のもつ現金や金融機関の当座預金の価値もゼロとなることになる。それ以前に、日本国債への信認が急落し、持っていても償還金や利子が支払われない懸念がある日本国債を保有する投資家が競って売却に走る可能性がある。

 今回のイタリア国債の急落もこういった思惑が背景であろうが、それでもこの程度に収まったのは、債務帳消しの実現性に疑問を持っていたからと思われる。実際に五つ星運動と同盟は16日、草案は古い情報で、詳細は著しく変わったと釈明した。最近の協議では、ユーロ残留に疑問が呈されることはなかったと説明している。当然、イタリア政府の債務を帳消しにすることも実現性は後退したとの見方はできる。

 しかし、それでもこの最悪の組み合わせ政党が、財政再建に力を注ぐことは考えづらい。債務が拡大するであろう懸念は強まることも予想される。それは債務比率が制限されているユーロ残留の条件を無視することにもなりかねず、イタリアのユーロ離脱のリスクは今後も意識せざるを得なくなりそうである。


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by nihonkokusai | 2018-05-18 10:02 | 国際情勢 | Comments(0)

ポンペオ米国務長官の動向が原油価格や米長期金利、ドル円に影響、イランや北朝鮮問題に関わるキーパーソン

 解任されたティラーソン米国務長官の後任となったのが、ポンペオ米中央情報局(CIA)長官である。ポンペオ氏は陸軍出身で、2010年下院選で保守派草の根運動「茶会」(ティーパーティー)の支持を受けて当選した。

 強硬派として知られ、下院議員時代にはイラン核合意の破棄を主張していた。また、北朝鮮の体制転覆に含みを持たせたこともあった。ティラーソン国務長官が突然解任されたのも、北朝鮮に対して強硬路線を貫くためではとみられていた。

 ところが、そのポンペオ氏がCIA長官だった今年3月末~4月初頭に極秘訪朝していたのである。史上初の米朝首脳会談のお膳立てをしたのは韓国の文在寅大統領であったかもしれないが、対北朝鮮強硬派であったはずのポンペオ氏も大きく関与していた。

 トランプ大統領は8日、ホワイトハウスで記者団に対し、ポンペオ国務長官を米朝首脳会談の準備のため北朝鮮に派遣したことを明らかにした。46年前の1971年に米中和解の道筋をつけたキッシンジャー大統領特別補佐官のような役割を演じているようにも思える。

 史上初の米朝首脳会談が成功するとなれば、北朝鮮リスクが大きく後退することになる。北朝鮮の核開発やミサイル試射によって北朝鮮の地政学的リスクが意されて安全資産として買われていた米国債は、戻り売りに押されることになり、米10年債利回りは3%台に乗せる場面があった。

 そして、今度はイランの問題がここにきて再燃した。これにも当然ながらポンペオ国務長官の影響が及んでいると思われる。トランプ大統領は8日、イランと欧米など6か国が2015年に締結した核合意から離脱し、対イラン経済制裁を再開すると発表した。

 イランの核開発問題とは、イランが自国の核関連施設で原子爆弾の製造のために高濃縮ウランの製造を行っているのではとの疑惑である。これに対して2015年にイランは、米英仏独中露の6か国協議で、核開発施設の縮小や条件付き軍事施設査察などの履行を含む最終合意を締結した。その代わりに、経済制裁を解除するという内容だった。

 米国がイランへの経済制裁を再開するとなれば、中東の地政学的リスクが高まることも予想されるが、それ以上にイランからの原油の供給への影響も危惧されている。米国が対イラン経済制裁を再開するとの懸念から、原油先物価格は上昇しWTIは70ドルの大台を回復させた。

 北朝鮮の地政学的リスクの後退によるリスク回避の巻き戻し、原油価格上昇による物価への影響から、米国債利回りには上昇圧力が掛かる可能性がある。米10年債利回りは3%台に乗せたあとイラン問題でリスク回避の動きからいったん買い戻されたが、原油価格の上昇から再び3%台に乗せてきた。そうなれば日本の長期金利は日銀に抑えられていることで、日米金利差の拡大を受けて、外為市場ではドル円の上昇要因ともなりうる。ドル円の110円台乗せや、米長期金利の4%に向けた上昇といったことも想定される。


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by nihonkokusai | 2018-05-10 09:40 | 国際情勢 | Comments(0)

原油先物価格が70ドル突破、80ドル台へ押し上げもありうるか

 5月7日に原油価格のベンチマーク(指標)となっているニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)に上昇している原油先物のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は、期近の6月物で1.01ドル高の1バレル70.73ドルで引けた。引け値でも70ドルの大台を突破した。

 年初に、WTIの100ドル台を正当化しうる材料も見当たらないため、あくまでこれはいまのところ初夢というか、仮定・想定の話ではあると書いたが、WTIの100ドル台乗せもあながち奇想天外な予想ではなくなりつつある。

 ここにきての原油価格の上昇にはイランを巡る動きが関係している。米英仏など6か国が2015年に結んだ合意はイランにウラン濃縮活動などを大きく制限する代わりに、経済制裁を解除する内容だった。

 トランプ米政権は同合意を「最悪のディール」と批判し、抜本的な見直しがされない限り、対イラン制裁解除の是非を再検討する期限である12日に合意から離脱する方針を示した。米国がこの制裁を再発動すれば、原油に依存するイラン経済だけでなく、世界の原油市場への影響は大きい。世界の消費量の1%にあたる100万バレル前後の供給が減るとされる(日経新聞の記事より)。

 そして、産油国であるベネズエラの経済混乱による影響も出ている。ベネズエラは財政悪化による資金不足で産油量が落ち込んでいるのである。

 ただし、これらの影響も大きいとはいえ、ここにきての原油価格の上昇の背景には、価格下落を危惧した石油輸出国機構(OPEC)諸国とロシアなどが昨年初めから協調して減産したことによる影響が大きい。

 サウジアラビアの政府高官は、原油価格について「サウジアラビアには上昇を止める意向は一切ない」と発言しているようだが、サウジアラビアは今年、原油価格を少なくとも1バレル=80ドルに押し上げようとしている(WSJ)。

 世界的な景気拡大による需要増も相まって原油価格の反発基調が続いている格好となっている。WTIは2014年7月から2015年1月あたりにかけて急落し、その急落相場から立ち直りかけているところである。チャート上からはWTIは66ドルあたりを上抜けると100ドルあたりまで節目らしい節目はない。テクニカル的にみても80ドルや100ドル台乗せは十分にありうる。

 いまのところ、この原油価格の上昇が景気の足を引っ張るような状況にはなってはいないようだが、今後、企業業績に影響が及び、価格転嫁によって家計にも影響を与える可能性がある。個人的にもガソリン代の値上げはあまりうれしくはない。

 しかし、原油価格の上昇は消費者物価指数に押し上げ要因ともなることで、WTIが80ドル台、100ドル台へと上昇してくれば、当然ながら日銀の物価目標としている消費者物価指数の押し上げ要因となりうる。


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by nihonkokusai | 2018-05-09 09:46 | 国際情勢 | Comments(0)

シリアへのミサイル攻撃に対し金融市場は冷静に受け止める

 米国のトランプ大統領は東部時間13日午後9時(日本時間14日午前10時)にホワイトハウスでテレビ演説を行い、シリア・アサド政権の「化学兵器施設」に対する局所攻撃を命じたと発表した。首都ダマスカス郊外東グータ・ドゥーマに対してシリア政府軍が化学兵器を使用したと疑われている攻撃に対応するもので、英仏軍との合同作戦が「すでに始まっている」と述べた(BBC)。

 国防総省によると、発射されたミサイルは105発(米85発、英仏20発)。地中海東部などに展開する米艦船や原子力潜水艦から巡航ミサイル「トマホーク」を発射。B1戦略爆撃機からも空中発射ミサイルで攻撃した。英仏の戦闘機や艦船もミサイル攻撃に加わった(朝日新聞)。

 アサド政権軍が40発以上の地対空ミサイルを発射したが、米側への影響はなく、ロシアの防空システムは稼働しなかったとされる。米政権は昨年4月にもアサド政権軍がシリア北西部で化学兵器を使用したとして、シリア中部の政権軍基地に巡航ミサイルを発射し、戦闘機約20機を破壊した(朝日新聞)。

 これを受けてロシアは「国際法と国連憲章に違反する」と米英仏を非難する決議案を安保理に提出したが否決された。決議案に賛成した国はロシア、中国、ボリビアの3か国であったようである。

 11日にトランプ大統領は、シリアに対しミサイルが飛んでいくぞ、とツイッターに書き込み、シリアに対するミサイル攻撃を強く示唆した。加えて、シリアのアサド政権を支援しているロシアを批判した。これを受けて11日米国市場は、リスク回避の動きを強め、米株は売られ、米国債は買われて利回りは低下した。

 ところが、12日にトランプ大統領はシリアをいつ攻撃するかを言ったことは一度もないとツイートした。これを受けて12日の米国市場はリスク回避の巻き戻しといった動きとなり、米株は買い戻され、米債は売られ利回りは上昇した。

 これらの動きを見る限り、米国によるシリアへのミサイル攻撃は準備されていたが、11日にトランプ大統領は軍の最高司令官として、攻撃のタイミングについて、本来言ってはいけない軍事機密を呟いてしまい、それを慌てて修正したのが、12日の発言とみられる。

 11日から12日の金融市場の動きを見る限り、シリアへの米英仏による攻撃は中東の地政学的リスクを拡大させかねず、ロシアとの関係悪化により、緊張が高まることによってリスク回避の動きを強めさせかねにかった。

 ところが週明け、ミサイル攻撃後に開かれた16日東京市場での動きを見る限り、市場はかなり冷静さを取り戻している。ドル円は107円半ばに上昇し、米株先物や日経平均もしっかり。噂で売って、現実で買うといった動きにも見えなくもないが、想定していたような混乱は起きておらず、ロシア側からの出方も慎重となっていたことを好感か。これをきっかけに戦局が拡大するといったこともなく、一回限りの攻撃との見方もあり、市場は冷静さを取り戻しつつあるのではないかと思われる。

 これでシリアを巡る状勢が改善するとも思えないものの、トランプ大統領とすればやるべきことをやり、プーチン大統領も国連に訴えることでこちらも抗議すべきことはやったということであろうか。

 シリア大統領府は空爆から一夜明けた14日午前に、大統領府に出勤するアサド大統領の様子だという映像をツイートしたそうである。このように比較的冷静に受け止められていることも市場を安堵させているようにも思える。いまのところ、シリアへの攻撃は金融市場を大きく揺るがすような要因とはなっていない。


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by nihonkokusai | 2018-04-17 09:40 | 国際情勢 | Comments(0)

中国の習近平国家主席の発言で貿易摩擦懸念は、ひとまず後退

 中国の習近平国家主席は10日、中国海南省で開催中の博鰲(ボアオ)アジアフォーラムで演説し、「開放の新たな段階」を約束した。 演説は新政策をほとんど提示しなかったものの、輸入促進や製造業の外資保有制限緩和、知的財産権の保護拡大に向けた提案を確認ないし膨らませた。

 トランプ大統領はツイッターで、「関税や自動車障壁に関する中国の習主席の丁重な言葉に深く感謝する」と述べ、「知的財産と技術移転に関する見識」にも謝意を示し、「われわれは共に大きく前進する」と記した。(以上、ブルームバーグの記事より引用)。

 トランプ政権は3月23日に米通商拡大法232条に基づき、鉄鋼・アルミニウム製品の輸入制限を発動した。国内の鉄鋼・アルミ産業の衰退が「国家の安全保障上の脅威になる」として、一部の例外国を除き、鉄鋼は25%、アルミは10%の追加関税を課す。また、3月22日に1974年通商法301条に基づく対中制裁措置の発動を決定し、これにより情報通信機器や機械など約1300品目を対象に25%の関税を課すことになる。

 これに対して中国は4月4日に米国からの輸入品約500億ドル相当に25%の追加関税を課す計画を発表した。対象には大豆や自動車、化学品、航空機などが含まれた。米国のトランプ政権が打ち出した関税措置への対抗策といえる。

 これに対してトランプ大統領は5日に声明文を公表し、中国の不当な報復を踏まえて、1000億ドルの対中追加関税の検討を通商代表部(USTR)に指示したことを明らかにした。自分で仕掛けておきながら、やられたらやり返す、まさに貿易戦争を仕掛ける気なのかと市場は危惧した。

 このため10日の中国の習近平国家主席による発言が注目されていた。場合によると中国も態度をさらに硬化させて、貿易戦争がエスカレートするのではとの危惧も出て当然の状況となっていた。

 しかし、今回の中国の習近平国家主席の演説では、対抗措置といったものは出されず、新たな施策は出なかったものの、米国に配慮したような格好となっていた。

 トランプ大統領は演説等ではなくツイッターを利用して威嚇のような発言を繰り返すことで、市場はその真意が読み取れずにいた。ただし、以前にムニューシン財務長官が米政権が中国との間で建設的な対話をしていると発言するなど、米中の政府間で水面下の協議が進展しているのではとの観測もあった。

 貿易戦争がエスカレートして困るのは中国ばかりでなく、多少なり米国にも影響を与えかねない。それ以上に金融市場の混乱そのものが景気に悪影響を及ぼす懸念もある。当然ながら、ここにきての米国株式市場の動向などはトランプ政権も気に掛けていたのではないかと思われる。

 今回の中国の習近平国家主席の発言を見る限り、中国としても妥協点を探るような動きとなっているのではなかろうか。トランプ大統領の真意は読み取れないが、中間選挙を睨んで、公約は守っており、それによって米景気は上向いていることをアピールする狙いがあるとみられる。そのあたりも中国には見透かされている可能性もある。トランプ大統領が習近平国家主席の発言に、すばやく好意的な対応をみせたのも中国側の出方をある程度、読んでいた可能性がある。


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by nihonkokusai | 2018-04-12 09:46 | 国際情勢 | Comments(0)

米国の関税引き上げに対する中国の報復はあるのか、米国債も人質に?

 トランプ政権は3月23日に米通商拡大法232条に基づき、鉄鋼・アルミニウム製品の輸入制限を発動した。国内の鉄鋼・アルミ産業の衰退が「国家の安全保障上の脅威になる」として、一部の例外国を除き、鉄鋼は25%、アルミは10%の追加関税を課す。

 また、トランプ大統領は3月22日に1974年通商法301条に基づく対中制裁措置の発動を決定している。これにより、情報通信機器や機械など約1300品目を対象に25%の関税を課すことになる。

 中国政府はこの米通商法301条に基づいた対中制裁に報復する意向を示し、米国を強くけん制した。崔天凱・駐米大使は23日に米国債の購入減額について「あらゆる選択肢を検討している」と含みを持たせた。つまり、報復措置として米国債の購入を減額するなどの手段を講じる可能性を示した。

 このように、301条の制裁に対する中国の報復措置がどのようなものになるのかが、焦点となっていた。

 これを受けて米中の貿易摩擦から貿易戦争に発展しかねないとの観測が強まり、22日のダウ平均は大きく下落し724ドル安、そして23日のダウ平均は424ドル安となった。

 しかし、ここにきてムニューシン財務長官が米政権が中国との間で建設的な対話をしていると発言するなど、米中の政府間で水面下の協議が進展しているのではとの観測が出てきている。

 フィナンシャル・タイムズ紙は26日に、匿名の関係者の話として、中国政府は対米黒字を削減するため、米国からの半導体輸入を拡大する。代わりに韓国や台湾からの輸入を抑えると報じた。

 また、ロイターはトランプ米政権は貿易戦争回避に向けて中国と交渉を開始しており、米国製自動車に対する関税引き下げ、外資による金融機関への過半の出資認可、米国からの半導体輸入拡大などを要求していると報じている。

 トランプ大統領は大統領選挙の期間中に中国製品の輸入関税を引き上げなどを選挙公約としており、それを実行に移した格好となった。やや強行ともいえるこの発動については、11月の中間選挙を睨んだものとも言えそうだが、株価が過剰反応を示したように、扱い方によってはむしろ自分にとっては不利な要因ともなりかねない。このため、水面下で中国との妥協策を講じて、貿易戦争は回避しようとしているようである。

 中国としてもここで貿易戦争を起こしても、決して自分に有利になるとは限らない。中国の米国債の保有もあくまでドルの運用先であり、これを政治利用するとなれば、米国の債券市場が過剰反応し、米国債の価格が急落するような事態も起こりうる。そうなれば、中国としても保有する米国債をすべて手放すことはありえないため、保有している米国債で損失を被るリスクがある。もちろん米国市場そのものが動揺する懸念があり、トランプ政権としてもそのような事態は避けたいところであろう。

 中国の報復措置として米国から輸入する大豆などに高関税を課すという手段も想定されているようだが、これは米国の大豆を生産する農家を直撃するだけでなく、大豆の多くを輸入に頼る中国の消費者にも影響を与えることになる。

 一見、強気を通しているかにみえるトランプ政権ではあるものの、公約は守っているかたちをとりながら、相手国となる中国などとの妥協点を探り、悪影響を極力及ぼさない方法を模索しているようにもみえる。



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by nihonkokusai | 2018-03-28 09:35 | 国際情勢 | Comments(0)

今後の原油価格の動向にも注意が必要に

 米国のトランプ大統領はホワイトハウスで安全保障政策を担当するマクマスター大統領補佐官を交代させ、後任にボルトン元国連大使を起用するとツイッターで明らかにした。  国家安全保障担当の米大統領補佐官としてマクマスター氏の後任に指名されたジョン・ボルトン元国連大使は、外交政策のタカ派で知られている。

 「北朝鮮の核兵器が突き付ける現在の必要性に対し、米国が先制攻撃で対応するのは完全に正当」と発言するなどしており、北朝鮮に対し厳しい姿勢を示す保守強硬派として知られているボルトン氏の大統領補佐官の起用により、北朝鮮との首脳会談を前にして、トランプ政権が北朝鮮に対して厳しい姿勢で臨む構えを示した格好となった。

 ボルトン元国連大使は2015年に「イランの爆弾を止めるには、イランを爆撃せよ」と題した論説をニューヨーク・タイムズに寄稿するなど、イランに対す強行派としても知られている。

 そのボルトン氏の安全保障政策を担当する大統領補佐官への起用により、対イラン制裁が再び導入されるとの観測から23日の原油先物は大きく上昇した。WTI先物5月限は前日比1.58ドル高の65.88ドルに上昇した。中東の地政学的リスクが意識されたものとみられる。

 また、サウジアラビア軍は25日、隣国イエメンから撃ち込まれたミサイル7発を迎撃したと発表した。このミサイルについて、イエメンを拠点としサウジと敵対するイランと関係が近い武装組織「フーシ派」が発射したとしており、今後緊張が高まる懸念がある。、

 米国とイランの緊張関係が今後高まるのかどうかについても注意する必要はあるが、原油先物がひとつの節目とされる66ドル台にすでに乗せてきていることにも注意したい。

 原油価格についてはそもそも価格下落を危惧した石油輸出国機構(OPEC)諸国とロシアなどが昨年初めから協調して減産したことに加え、世界的な景気拡大による需要増も相まって反発基調が続いている。

 協調減産は果たしてこのまま続けられるのか、原油価格の回復に伴って米国の原油生産量が大幅に増えていることで、価格が抑えられるのではとの見方がある。

 しかしWTIのチャートからみると、この66ドル近辺の水準を大きく突破してくるとなれば、さらに戻りを試してくることが予想される。

 WTIは2014年7月から2015年1月あたりにかけて急落し、その急落相場から立ち直りかけているところである。チャート上からはWTIは66ドルあたりを上抜けると100ドルあたりまで節目らしい節目はない。

 世界的な景気拡大と言っても、WTIが100ドル台になるほど原油の需要が増加しているようには見えないし、さすがにそこまでの上昇を見込む向きは少ないと思われる。それでもひとつの可能性としてみておく必要があるかもしれない。そうなれば日本の消費者物価にも直接的な影響を与える可能性がある。


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by nihonkokusai | 2018-03-27 09:29 | 国際情勢 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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