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カテゴリ:国際情勢( 142 )

シリアへのミサイル攻撃に対し金融市場は冷静に受け止める

 米国のトランプ大統領は東部時間13日午後9時(日本時間14日午前10時)にホワイトハウスでテレビ演説を行い、シリア・アサド政権の「化学兵器施設」に対する局所攻撃を命じたと発表した。首都ダマスカス郊外東グータ・ドゥーマに対してシリア政府軍が化学兵器を使用したと疑われている攻撃に対応するもので、英仏軍との合同作戦が「すでに始まっている」と述べた(BBC)。

 国防総省によると、発射されたミサイルは105発(米85発、英仏20発)。地中海東部などに展開する米艦船や原子力潜水艦から巡航ミサイル「トマホーク」を発射。B1戦略爆撃機からも空中発射ミサイルで攻撃した。英仏の戦闘機や艦船もミサイル攻撃に加わった(朝日新聞)。

 アサド政権軍が40発以上の地対空ミサイルを発射したが、米側への影響はなく、ロシアの防空システムは稼働しなかったとされる。米政権は昨年4月にもアサド政権軍がシリア北西部で化学兵器を使用したとして、シリア中部の政権軍基地に巡航ミサイルを発射し、戦闘機約20機を破壊した(朝日新聞)。

 これを受けてロシアは「国際法と国連憲章に違反する」と米英仏を非難する決議案を安保理に提出したが否決された。決議案に賛成した国はロシア、中国、ボリビアの3か国であったようである。

 11日にトランプ大統領は、シリアに対しミサイルが飛んでいくぞ、とツイッターに書き込み、シリアに対するミサイル攻撃を強く示唆した。加えて、シリアのアサド政権を支援しているロシアを批判した。これを受けて11日米国市場は、リスク回避の動きを強め、米株は売られ、米国債は買われて利回りは低下した。

 ところが、12日にトランプ大統領はシリアをいつ攻撃するかを言ったことは一度もないとツイートした。これを受けて12日の米国市場はリスク回避の巻き戻しといった動きとなり、米株は買い戻され、米債は売られ利回りは上昇した。

 これらの動きを見る限り、米国によるシリアへのミサイル攻撃は準備されていたが、11日にトランプ大統領は軍の最高司令官として、攻撃のタイミングについて、本来言ってはいけない軍事機密を呟いてしまい、それを慌てて修正したのが、12日の発言とみられる。

 11日から12日の金融市場の動きを見る限り、シリアへの米英仏による攻撃は中東の地政学的リスクを拡大させかねず、ロシアとの関係悪化により、緊張が高まることによってリスク回避の動きを強めさせかねにかった。

 ところが週明け、ミサイル攻撃後に開かれた16日東京市場での動きを見る限り、市場はかなり冷静さを取り戻している。ドル円は107円半ばに上昇し、米株先物や日経平均もしっかり。噂で売って、現実で買うといった動きにも見えなくもないが、想定していたような混乱は起きておらず、ロシア側からの出方も慎重となっていたことを好感か。これをきっかけに戦局が拡大するといったこともなく、一回限りの攻撃との見方もあり、市場は冷静さを取り戻しつつあるのではないかと思われる。

 これでシリアを巡る状勢が改善するとも思えないものの、トランプ大統領とすればやるべきことをやり、プーチン大統領も国連に訴えることでこちらも抗議すべきことはやったということであろうか。

 シリア大統領府は空爆から一夜明けた14日午前に、大統領府に出勤するアサド大統領の様子だという映像をツイートしたそうである。このように比較的冷静に受け止められていることも市場を安堵させているようにも思える。いまのところ、シリアへの攻撃は金融市場を大きく揺るがすような要因とはなっていない。


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by nihonkokusai | 2018-04-17 09:40 | 国際情勢 | Comments(0)

中国の習近平国家主席の発言で貿易摩擦懸念は、ひとまず後退

 中国の習近平国家主席は10日、中国海南省で開催中の博鰲(ボアオ)アジアフォーラムで演説し、「開放の新たな段階」を約束した。 演説は新政策をほとんど提示しなかったものの、輸入促進や製造業の外資保有制限緩和、知的財産権の保護拡大に向けた提案を確認ないし膨らませた。

 トランプ大統領はツイッターで、「関税や自動車障壁に関する中国の習主席の丁重な言葉に深く感謝する」と述べ、「知的財産と技術移転に関する見識」にも謝意を示し、「われわれは共に大きく前進する」と記した。(以上、ブルームバーグの記事より引用)。

 トランプ政権は3月23日に米通商拡大法232条に基づき、鉄鋼・アルミニウム製品の輸入制限を発動した。国内の鉄鋼・アルミ産業の衰退が「国家の安全保障上の脅威になる」として、一部の例外国を除き、鉄鋼は25%、アルミは10%の追加関税を課す。また、3月22日に1974年通商法301条に基づく対中制裁措置の発動を決定し、これにより情報通信機器や機械など約1300品目を対象に25%の関税を課すことになる。

 これに対して中国は4月4日に米国からの輸入品約500億ドル相当に25%の追加関税を課す計画を発表した。対象には大豆や自動車、化学品、航空機などが含まれた。米国のトランプ政権が打ち出した関税措置への対抗策といえる。

 これに対してトランプ大統領は5日に声明文を公表し、中国の不当な報復を踏まえて、1000億ドルの対中追加関税の検討を通商代表部(USTR)に指示したことを明らかにした。自分で仕掛けておきながら、やられたらやり返す、まさに貿易戦争を仕掛ける気なのかと市場は危惧した。

 このため10日の中国の習近平国家主席による発言が注目されていた。場合によると中国も態度をさらに硬化させて、貿易戦争がエスカレートするのではとの危惧も出て当然の状況となっていた。

 しかし、今回の中国の習近平国家主席の演説では、対抗措置といったものは出されず、新たな施策は出なかったものの、米国に配慮したような格好となっていた。

 トランプ大統領は演説等ではなくツイッターを利用して威嚇のような発言を繰り返すことで、市場はその真意が読み取れずにいた。ただし、以前にムニューシン財務長官が米政権が中国との間で建設的な対話をしていると発言するなど、米中の政府間で水面下の協議が進展しているのではとの観測もあった。

 貿易戦争がエスカレートして困るのは中国ばかりでなく、多少なり米国にも影響を与えかねない。それ以上に金融市場の混乱そのものが景気に悪影響を及ぼす懸念もある。当然ながら、ここにきての米国株式市場の動向などはトランプ政権も気に掛けていたのではないかと思われる。

 今回の中国の習近平国家主席の発言を見る限り、中国としても妥協点を探るような動きとなっているのではなかろうか。トランプ大統領の真意は読み取れないが、中間選挙を睨んで、公約は守っており、それによって米景気は上向いていることをアピールする狙いがあるとみられる。そのあたりも中国には見透かされている可能性もある。トランプ大統領が習近平国家主席の発言に、すばやく好意的な対応をみせたのも中国側の出方をある程度、読んでいた可能性がある。


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by nihonkokusai | 2018-04-12 09:46 | 国際情勢 | Comments(0)

米国の関税引き上げに対する中国の報復はあるのか、米国債も人質に?

 トランプ政権は3月23日に米通商拡大法232条に基づき、鉄鋼・アルミニウム製品の輸入制限を発動した。国内の鉄鋼・アルミ産業の衰退が「国家の安全保障上の脅威になる」として、一部の例外国を除き、鉄鋼は25%、アルミは10%の追加関税を課す。

 また、トランプ大統領は3月22日に1974年通商法301条に基づく対中制裁措置の発動を決定している。これにより、情報通信機器や機械など約1300品目を対象に25%の関税を課すことになる。

 中国政府はこの米通商法301条に基づいた対中制裁に報復する意向を示し、米国を強くけん制した。崔天凱・駐米大使は23日に米国債の購入減額について「あらゆる選択肢を検討している」と含みを持たせた。つまり、報復措置として米国債の購入を減額するなどの手段を講じる可能性を示した。

 このように、301条の制裁に対する中国の報復措置がどのようなものになるのかが、焦点となっていた。

 これを受けて米中の貿易摩擦から貿易戦争に発展しかねないとの観測が強まり、22日のダウ平均は大きく下落し724ドル安、そして23日のダウ平均は424ドル安となった。

 しかし、ここにきてムニューシン財務長官が米政権が中国との間で建設的な対話をしていると発言するなど、米中の政府間で水面下の協議が進展しているのではとの観測が出てきている。

 フィナンシャル・タイムズ紙は26日に、匿名の関係者の話として、中国政府は対米黒字を削減するため、米国からの半導体輸入を拡大する。代わりに韓国や台湾からの輸入を抑えると報じた。

 また、ロイターはトランプ米政権は貿易戦争回避に向けて中国と交渉を開始しており、米国製自動車に対する関税引き下げ、外資による金融機関への過半の出資認可、米国からの半導体輸入拡大などを要求していると報じている。

 トランプ大統領は大統領選挙の期間中に中国製品の輸入関税を引き上げなどを選挙公約としており、それを実行に移した格好となった。やや強行ともいえるこの発動については、11月の中間選挙を睨んだものとも言えそうだが、株価が過剰反応を示したように、扱い方によってはむしろ自分にとっては不利な要因ともなりかねない。このため、水面下で中国との妥協策を講じて、貿易戦争は回避しようとしているようである。

 中国としてもここで貿易戦争を起こしても、決して自分に有利になるとは限らない。中国の米国債の保有もあくまでドルの運用先であり、これを政治利用するとなれば、米国の債券市場が過剰反応し、米国債の価格が急落するような事態も起こりうる。そうなれば、中国としても保有する米国債をすべて手放すことはありえないため、保有している米国債で損失を被るリスクがある。もちろん米国市場そのものが動揺する懸念があり、トランプ政権としてもそのような事態は避けたいところであろう。

 中国の報復措置として米国から輸入する大豆などに高関税を課すという手段も想定されているようだが、これは米国の大豆を生産する農家を直撃するだけでなく、大豆の多くを輸入に頼る中国の消費者にも影響を与えることになる。

 一見、強気を通しているかにみえるトランプ政権ではあるものの、公約は守っているかたちをとりながら、相手国となる中国などとの妥協点を探り、悪影響を極力及ぼさない方法を模索しているようにもみえる。



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by nihonkokusai | 2018-03-28 09:35 | 国際情勢 | Comments(0)

今後の原油価格の動向にも注意が必要に

 米国のトランプ大統領はホワイトハウスで安全保障政策を担当するマクマスター大統領補佐官を交代させ、後任にボルトン元国連大使を起用するとツイッターで明らかにした。  国家安全保障担当の米大統領補佐官としてマクマスター氏の後任に指名されたジョン・ボルトン元国連大使は、外交政策のタカ派で知られている。

 「北朝鮮の核兵器が突き付ける現在の必要性に対し、米国が先制攻撃で対応するのは完全に正当」と発言するなどしており、北朝鮮に対し厳しい姿勢を示す保守強硬派として知られているボルトン氏の大統領補佐官の起用により、北朝鮮との首脳会談を前にして、トランプ政権が北朝鮮に対して厳しい姿勢で臨む構えを示した格好となった。

 ボルトン元国連大使は2015年に「イランの爆弾を止めるには、イランを爆撃せよ」と題した論説をニューヨーク・タイムズに寄稿するなど、イランに対す強行派としても知られている。

 そのボルトン氏の安全保障政策を担当する大統領補佐官への起用により、対イラン制裁が再び導入されるとの観測から23日の原油先物は大きく上昇した。WTI先物5月限は前日比1.58ドル高の65.88ドルに上昇した。中東の地政学的リスクが意識されたものとみられる。

 また、サウジアラビア軍は25日、隣国イエメンから撃ち込まれたミサイル7発を迎撃したと発表した。このミサイルについて、イエメンを拠点としサウジと敵対するイランと関係が近い武装組織「フーシ派」が発射したとしており、今後緊張が高まる懸念がある。、

 米国とイランの緊張関係が今後高まるのかどうかについても注意する必要はあるが、原油先物がひとつの節目とされる66ドル台にすでに乗せてきていることにも注意したい。

 原油価格についてはそもそも価格下落を危惧した石油輸出国機構(OPEC)諸国とロシアなどが昨年初めから協調して減産したことに加え、世界的な景気拡大による需要増も相まって反発基調が続いている。

 協調減産は果たしてこのまま続けられるのか、原油価格の回復に伴って米国の原油生産量が大幅に増えていることで、価格が抑えられるのではとの見方がある。

 しかしWTIのチャートからみると、この66ドル近辺の水準を大きく突破してくるとなれば、さらに戻りを試してくることが予想される。

 WTIは2014年7月から2015年1月あたりにかけて急落し、その急落相場から立ち直りかけているところである。チャート上からはWTIは66ドルあたりを上抜けると100ドルあたりまで節目らしい節目はない。

 世界的な景気拡大と言っても、WTIが100ドル台になるほど原油の需要が増加しているようには見えないし、さすがにそこまでの上昇を見込む向きは少ないと思われる。それでもひとつの可能性としてみておく必要があるかもしれない。そうなれば日本の消費者物価にも直接的な影響を与える可能性がある。


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by nihonkokusai | 2018-03-27 09:29 | 国際情勢 | Comments(0)

ドイツ、イタリア、北朝鮮と米国のリスクの行方とそれによる金融市場への影響

 ここにきて金融市場に影響を与えかねないイベントが立て続けに起きている。そのひとつがドイツのドイツ連邦議会の第2党の社会民主党でのメルケル首相率いる政党と連立政権を組むかどうかについて党員投票であった。結果次第ではメルケル政権の存続の危機となり、ドイツばかりかユーロそのものの存続にも影響を与えかねない状況にあった。

 むしろそのような危機意識も手伝ってか党員投票の結果は賛成多数で連立が承認された。これにより、メルケル首相の4期目の政権が発足することになり、ひとまずこちらの危機は避けられた。

 4日に実施されたイタリアの総選挙もユーロの存続に影響しかねないものとなっていた。その結果は大方の予想通り、上下両院ともにどの陣営も過半数を取れずハングパーラメントの状態となった。ただし、中道右派連合が上下院ともに4割程度の議席を取って第1勢力となり、今後の連立交渉の軸になる見通しとなっている。同連合の一角で欧州連合(EU)懐疑派である極右「同盟」と、ポピュリズム政党の「五つ星運動」が議席を大きく伸ばし、今後の連立政権の軸となる可能性が高い。

 ただし、今回の選挙ではユーロ離脱などが争点となっていたわけではないことで、ユーロ体制を揺さぶることはなさそうである。ただし、連立そのものがどうなるのかが不透明であり、これまでの政策が大きく修正されるのか。移民問題はどうなるのか。金融絡みではイタリアの銀行の不良債権問題はどうなるのかあたりに注意する必要はある。

 そして、韓国と北朝鮮が来月、文在寅大統領と金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談を開くことで合意したとのニュースが飛び込んできた。北朝鮮問題が新たな展開を迎えたともいえる。ひとまず北朝鮮の地政学的リスクは表面上は後退するかにみえるが、予断は許さない。

 北朝鮮問題には当然ながら米国も大きく絡むわけだが、その米国ではトランプ政権で経済政策の司令塔だった国家経済会議のトップ、コーン委員長が辞任すると発表された。コーン委員長は、トランプ大統領が表明している鉄鋼製品などに高い関税を課す異例の輸入制限措置に反対していたと伝えられていた。

 大規模な税制改革で主導的な役割を果たしたとされるコーン委員長であったが、その辞任によって、今後の米国の経済政策の運営に対して不透明感が強まることになる。さらにその辞任の原因となったとみられる鉄鋼とアルミニウムに追加関税を課す方針についても、中国などの出方次第では貿易摩擦を強めかねない。

 金融市場では順調な世界景気の拡大を背景に米国市場などは過去最高値を更新し続ける状況が続いていたが、2月に入り大きな調整が入った。やっとその調整も落ち着いたかにみえたところに、今後の動向を不透明にさせるようないイベントも発生してきており、引き続き波乱含みの展開となる可能性がある。


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by nihonkokusai | 2018-03-08 09:32 | 国際情勢 | Comments(0)

米中貿易戦争が意識されて、株式市場が動揺

 米商務省は1月11日に米通商拡大法232条に基づき中国などからの鉄鋼製品の輸入が米国の安全保障に与える影響をまとめた調査報告書をトランプ大統領に提出していた。トランプ大統領は90日以内に輸入制限発動などの制裁措置を判断するとしていた(毎日新聞の記事より引用)。

 そして3月1日にトランプ大統領は、中国の過剰生産によって安く輸入されている鉄鋼製品が米国の安全保障の脅威になっているとして、25%の高い関税を課す異例の輸入制限措置の発動を来週にも正式に決める意向を明らかにした。アルミニウムにも10%の関税を課すとしている。対象国は明らかにされていないものの、中国だけでなく欧州や日本、韓国、ベトナムなども対象になる可能性がある。

 これは通商拡大法232条に基づくものとなるが、これまで米国の歴代の政権は自由な貿易を損ないかねないとして発動には慎重な対応をとってきており、実際に発動されたのは、法律ができて50年余りで1980年前後に政治的に鋭く対立したリビアとイランからの原油だけとなっている(NHKニュースより引用)。

 3月1日の米国株式市場では、この日に実施されたパウエルFRBの米上院での証言で、米景気が過熱する見通しは否定して、緩やかな利上げを進めると強調したことで、タカ派的な色彩がやや薄れたとの認識から米長期金利は低下し、米株は買われていた。しかし、トランプ大統領の発言により、米中の貿易戦争への懸念を強め、結局、ダウ平均は420ドル安となった(日経新聞の記事より一部引用)

 2月に入ってからの米国株式市場は調整局面となり、5日のダウ平均は1175ドル安となって過去最大の下げ幅を記録した。米国株式市場はここまで調整らしい調整はなく、じりじりと上昇しながら高値を更新してきたが、その反動が出たとみられる。ただし、相場はいったん動きだすと荒れた展開が続くことが多い。ボラティリティが低い状態が長らく続いていたこともあって、その反動も起きたといえる。ここにきて少し落ち着きも見えてきたかと思われたところにトランプ大統領によって、火に油が注がれた状態となってきた。

 今回の米株の下落は一時的な調整とみてはいるが、ここであらためてトランプ政権に対するリスクが意識されると、トレンドそのものが変化してくる可能性もあるため、今後のトランプ政権の動向とそれを見据えた米株やドルの動向、さらには米長期金利の動向には細心の注意も必要となってきそうである。


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by nihonkokusai | 2018-03-03 09:03 | 国際情勢 | Comments(0)

スペイン・カタルーニャ州の独立問題とは何か

 カタルーニャ州のプチデモン州首相は、10月1日に行われた住民投票の結果、カタルーニャがスペインから独立する権利を得たと強調した上で、スペイン政府との交渉を視野に今後数週間、独立を延期すると発表した(NHKニュースより)。

 カタルーニャ州の独立問題は欧州の新たな火種となっており、スペインの国債も一時大きく売られるなどしていた。

 スペインの北東部にあるカタルーニャ州は1979年にスペイン国家内で自治州の地位を得たが、歴史的にフランスと結びつきが強く独立志向が強い地域となっている。

 10月1日にカタルーニャ州において実施されたカタルーニャの分離独立の是非を問ういわゆる「州民投票」に際しては,独立支持派と治安関係者の間で小競り合いが発生し,州政府の発表によれば,800人以上の負傷者が発生した。カタルーニャ州政府は一方的な独立宣言を行う可能性があり、中央政府はこのような行為は違法であるとして認めていない。日本の外務省はサイトでカタルーニャ州に渡航・滞在される方は、安全に注意する必要があることを認識するよう呼びかけている(外務省のサイトより一部引用)。

 ちなみにカタルーニャ州の州都はバルセロナである。有名なサッカークラブであるFCバルセロナの愛称「バルサ」はカタルーニャ語読みから来ているそうである。

 それはさておき、プチデモン州首相は賛成多数で独立が承認されれば、「48時間以内に独立宣言を行う」と公約していた。10日夜からバルセロナにある州議会が開かれ、この中でプチデモン州首相は、住民投票では独立賛成が大多数を占めたと報告し、「住民投票の結果、カタルーニャは共和国として独立国家になる権利を得た」と述べて、スペインから独立する正当性を強調した。そのうえで「スペインとの問題を解決するには対話が必要だ」と述べ、住民投票は憲法違反だとしているスペイン政府との交渉も視野に今後数週間、独立を延期すると発表した(NHKニュースより一部引用)。

 10日の欧州市場はひとまずこのプチデモン州首相による独立延期の発表を好感した格好となった。プチデモン州首相とは政府との交渉の余地を探りたいとみられるが、スペイン政府がカタルーニャ州の自治権の停止も含めた強硬措置に乗り出す可能性もあるとされ、問題が深刻化する懸念もある。これがユーロシステムを揺るがすような事態に発展するのかは読みづらいが、今後の動きには注意すべきと思われる。


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by nihonkokusai | 2017-10-12 09:33 | 国際情勢 | Comments(0)

ハリケーンが米国の債務上限問題を進展させる結果に

 米国のトランプ大統領と議会指導部はハリケーン「ハービー」の被害救済法案に、12月15日までの債務上限引き上げと政府運営資金の確保を抱き合わせることで合意したと伝えられた。

 テキサス州を直撃した大型ハリケーン「ハービー」は、進路に当たる地域に甚大な被害をもたらした。テキサス州のアボット知事は今回の被災地域は2005年の「カトリーナ」襲来時よりも大きいと述べていた(NEWSWEEK)。

 このハリケーンの被害救済が米国の政治に思わぬ影響を与えることとなった。今回のハリケーンの被害を受けて、トランプ政権は145.5億ドルの補正予算を議会に要請することとなり、うち78.5億ドルを2018年度の暫定予算に組み入れる方針と伝えられた。

 トランプ大統領は8月22日のアリゾナ州フェニックスで開かれた支持者の集会で、政府を閉鎖しなければならなくても壁を建設すると述べた。これにより政府閉鎖への懸念が強まった。もうひとつの問題がここに絡む。債務上限問題である。財務省は9月29日までに議会が債務上限を引き上げを要望している。いずれの法案も上院を通すには民主党の一部が支持しなければ可決できない。ここに民主党が反対するメキシコ国境の壁建設の予算を強引に求めると、かなりこじれ、政府機関の閉鎖やデフォルトが現実味を帯びてきたのである。

 しかし、ハリケーン「ハービー」による緊急事態に対処するため、ここで議会が動き、トランプ大統領も強行な発言を控えてきた。被害対策の補正予算を通すため、それぞれ妥協の必要が出てきたといえる。ここで主義主張を振りかざしては、国民からの批判がより強まることも予想されるためである。

 その結果が12月15日までの債務上限引き上げと政府運営資金の確保を抱き合わせることでの合意である。ただし、これは野党である民主党指導部が明らかにしたものである。

 共和党指導部と民主党指導部との会合で、共和党の指導部は18か月の債務上限引き上げを要請し、6か月引き上げ案も可能性として挙げた。しかし、民主党のペロシ下院院内総務、シューマー上院院内総務の両氏は6か月引き上げ案を拒否し、債務上限3か月の引き上げ案を出していた。

 ムニューシン財務長官ら共和党メンバー全員が、より長期間の債務上限引き上げを支持したが、トランプ大統領は結果として野党・民主党の債務上限3か月の引き上げ案を受け入れた格好となったのである。

 ちなみに上院(定数100)での可決には60の賛成票が必要となるが、上院の共和党議席は52で、民主党の一部が支持しなければ可決できない。

 共和党のライアン下院議長は民主党案に強く反発していたようだが、補正予算を早期に通すためには、民主党案を飲まざるを得なかったことも確かであろうが、これでまたトランプ大統領と共和党の議会首脳部との間に溝が拡がった可能性もある。しかし、市場で懸念されていた政府機関閉鎖の懸念とデフォルトの懸念がひとまず後退したことも確かである。


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by nihonkokusai | 2017-09-08 10:06 | 国際情勢 | Comments(0)

米国の政府機関閉鎖の懸念と債務上限問題

 トランプ大統領は8月22日のアリゾナ州フェニックスで開かれた支持者の集会で、政府を閉鎖しなければならなくても、壁を建設すると述べた。

 議会は会計年度が終了する9月末までに、新年度の歳出法案を成立させなければならない。しかし、議会で合意が得られない場合には、つなぎ予算案を承認しつつ、新年度の本予算の協議を続けることになる。今回のそのケースとなる可能性が高い。しかし、つなぎ予算と本予算のどちらも折り合いがつかないとなれば、政府機関の閉鎖という事態が発生する。

 政府機関閉鎖は過去何度か起きた。直近では2013年10月にオバマ前政権の医療保険制度改革法(オバマケア)向け支出を巡り、ねじれ状態となっている米国議会で次年度予算が成立せず、与野党の対立が解けないまま、およそ18年ぶりとなる政府機関の一部が閉鎖される事態が発生した。

 米国のムニューチン財務長官やポール・ライアン下院議長などは「連邦政府機能の一部閉鎖」という事態は発生させないと主張したものの、22日のトランプ大統領の発言により、政府閉鎖の可能性が現実化しつつある。

 トランプ大統領は選挙公約にメキシコ国境の壁建設を掲げていたが、2018年度の歳出法案には、この建設費用は含まれていない。上院(定数100)での可決には60の賛成票が必要となるが、上院の共和党議席は52で、民主党の一部が支持しなければ可決できない。

 そしてもうひとつの問題がここに絡む。債務上限問題である。財務省は9月29日までに議会が債務上限を引き上げてくれることを要望している。ただし財務省には緊急時の予備財源があり、デフォルトが起きるのは早くて10月半ば以降になる。

 いずれの法案も上院を通すには民主党の一部が支持しなければ可決できない。ここに民主党が反対するメキシコ国境の壁建設の予算を強引に求めると、かなりこじれ、政府機関の閉鎖やデフォルトが現実味を帯びる。

 トランプ大統領は高い支持を得ている退役軍人関連の法案に、債務上限引き上げ措置を盛り込むよう議会の共和党指導部に求めていたが、共和党上院院内総務と下院議長は両法案を抱き合わせにしない決定を下した。

 メキシコ国境の壁建設の費用を予算で捻出するため民主党からの賛同者を売るのは極めて難しい状況にある。トランプ大統領が壁抜きで共和党のまとめた予算案を受け入れず、拒否権を行使すれば、政府機関が閉鎖されるだけでなく、共和党議員との対立姿勢を強めることも予想される。今回は政府機関閉鎖が解かれる状況も見づらくなる。何らかの妥協が求められるがトランプ大統領がそれを行えるのかが注目点となろう。


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by nihonkokusai | 2017-09-04 09:35 | 国際情勢 | Comments(0)

トランプ大統領は議会との壁も構築中

 トランプ大統領は22日、アリゾナ州フェニックスで開かれた支持者の集会で、米国はおそらくある時点でNAFTAを終了させることになるだろうと述べるとともに、政府を閉鎖しなければならなくても、壁を建設すると述べた。これらの発言を受けて、23日の米国株式市場は下落し、米債は買われ、リスク回避の動きとなった。この発言がどうしてリスク回避の動きとなったのかを整理してみたい。

 議会は今会計年度が終了する9月末までに、新年度の歳出法案を成立させなければならない。しかし議会で合意が得られない場合には、つなぎ予算案を承認しつつ、新年度の本予算の協議を続けることになる。新年度予算案を審議する期間は少なく、今回のそのケースとなる可能性が高い。しかし、つなぎ予算と本予算のどちらも折り合いがつかないとなれば、政府機関の閉鎖という事態が発生する。

 ムニューチン財務長官やポール・ライアン下院議長などは「連邦政府機能の一部閉鎖」という事態は発生させないと主張しているものの、今回のトランプ大統領の発言により、政府閉鎖の可能性が現実化しつつある。

 トランプ大統領は選挙公約にメキシコ国境の壁建設を掲げていた。ところが2018年度の歳出法案には、メキシコ国境沿いの壁建設費用は含まれていない。上院(定数100)での可決には60の賛成票が必要ーとなるが、上院の共和党議席は52で、民主党の一部が支持しなければ可決できないことになる。

 政府機関閉鎖は過去何度か起きてはいる。直近では2013年10月にオバマ前政権の医療保険制度改革法(オバマケア)向け支出を巡り、ねじれ状態となっている米国議会では次年度予算が成立せず、与野党の対立が解けないまま、およそ18年ぶりに政府機関の一部が閉鎖される事態となった。

 そしてもうひとつの問題がある。債務上限問題である。米国政府は財政赤字を支えるために米国債を発行して借入をする必要がある。この債務については上限が議会で決められており、債務上限に達した場合、議会があらためて債務上限の引き上げに応じなければならない。もしこれができなければ政府はデフォルト(債務不履行)に陥る。

 財務省は9月29日までに議会が債務上限を引き上げてくれることを要望しているとされる。ただし財務省には緊急時の予備財源があり、デフォルトが起きるのは早くて10月半ば以降になる。通常、歳出予算案と債務上限の2つは本来別々に審議されるが、今回はセットで取り上げられる公算が大きいとされている。(ロイターの記事より引用)。

 いずれの法案も上院を通すには民主党の一部が支持しなければ可決できない。ここに民主党が反対するメキシコ国境の壁建設の予算を強引に求めると、かなりこじれ、政府機関の閉鎖やデフォルトが現実味を帯びることになる。

 トランプ大統領は高い支持を得ている退役軍人関連の法案に、債務上限引き上げ措置を盛り込むよう議会の共和党指導部に求めていたそうだが、共和党上院院内総務と下院議長は両法案を抱き合わせにしない決定を下したとか。すごく簡単にできたはずなのに今はめちゃくちゃだ、とはトランプ大統領(ブルームバーグ)。妙な裏技を使おうとしたトランプ大統領の方がめちゃくちゃのような気がしなくもない。

 大手格付け会社フィッチ・レーティングスは23日、米連邦政府の債務上限が10月までに引き上げられない場合、米国の長期債務格付けを引き下げ方向で見直す可能性があるとの見解を示した。


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by nihonkokusai | 2017-08-25 09:58 | 国際情勢 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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