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カテゴリ:景気物価動向( 278 )

31年ぶりの貿易赤字とそれによる日本国債などへの影響

 25日に発表された貿易統計によると、2011年の貿易収支は2兆4927億円の赤字となり、31年ぶりの貿易赤字となった。

 財務省の報道発表によると、「輸出は自動車、半導体等電子部品等が減少し、対前年比2.7%の減少となった。また、輸入は原粗油、液化天然ガス等が増加し、12.0%の増加となった。その結果、差引額はマイナス2兆4927億円となった」とある。

 東日本大震災によるサプライチェーンの寸断で自動車などの輸出産業に影響が出た事に加え、欧州の信用不安に伴う円高の進行や海外の景気減速、さらにタイの洪水被害なども、輸出の減少に影響を与えたものと思われる。

 さらに福島原発事故の影響により、火力発電所の燃料となる液化天然ガスなどの輸入が大幅に増えたことから、輸入が大幅に増え、その結果、日本は1980年以来、31年ぶりの貿易赤字に陥った。当面は輸出が急回復する可能性も薄く、原発の再稼働の見込みも立たないことで液化天然ガスなどの輸入も継続するとみられ、貿易赤字の状況は続く可能性が強い。

 すでに2011年1月から11月までの貿易赤字は2.3兆円程度となっており、年を通じての貿易赤字は避けられないとの見方は強かった。つまり市場ではある程度想定していたはずであったが、24日の海外市場ではWSJの「日本の輸出大国時代の終わり」などの報道もあり、日本の貿易赤字転落が意識され、円が主要16通貨のうち12通貨に対して下落し、ユーロ円は101円台に乗せ、ドル円も一時77円85銭まで円安ドル高が進んだ。

 欧州の信用不安は多少緩和されつつあるものの、ギリシャの債務交換協議が難航するなど予断は許さない状況にある。しかし、市場のマインドは以前に比べ改善してきているのも確かであり、安全資産として買われていたドイツ国債、米国債、英国債などには戻り売りが入ってきている(ちなみに25日の米債はFOMCの声明受けて買い戻されているが)。このため日本の貿易赤字転落をきっかけとして、安全資産への資金流入の反動から、円売りに流れが傾いた可能性がある。

 円高の流れが修正されることは、日本の輸出企業にとっては悪いことではない。東京株式市場にとってもプラス要因とされると思われるが、多少の不安感も伴う。これをきっかけに、今後、日本の国際競争力の低下などが意識されると、海外投資家による日本株などへの投資に影響を与える可能性もありうる。

 そして、債券市場にとってこの貿易赤字転落が、今後の経常収支の赤字を連想させかねないことに注意する必要がある。すでに経常収支の黒字幅は減少傾向にあるため、いずれかの時点で赤字に転落するであろうとの予想も出ている。経常収支が赤字となれば、国内資金で日本国債を賄うにはそろそろ限界に近づいたことを印象づける懸念もある。それを見越してすぐに日本国債を売ってもまた、踏まされる(空売りして、高いところで買い戻して損失が発生すること)だけであり、オオカミ少年はまだまだ健在であろう。

 とはいえ、本物のオオカミが霧の彼方からやってくるのが感じられるだけでも市場は恐れを抱くことにもなる。そんなマインド変化が現れると市場の動きはあらたな展開を迎える可能性もある。オオカミを引き寄せることのないようにするにはどうすれば良いのか。そのあたりも含め、今国会における消費増税の行方などにも注目する必要がありそうである。


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by nihonkokusai | 2012-01-26 09:34 | 景気物価動向 | Comments(2)

為替介入の良いタイミングでは

 本日発表された貿易統計によると、2011年の貿易収支は2兆4927億円の赤字となり、31年ぶりの貿易赤字となった。

 年間を通じての貿易赤字は避けられないとの見方は強かったが、24日の海外市場では、WSJの「日本の輸出大国時代の終わり」などの報道もあり、 日本の貿易赤字転落が意識され、円は下落しユーロ円は101円台に乗せ、ドル円も一時77円85銭まで円安ドル高が進んだ。

 昨日のニューヨーク市場の引け後、発表されたアップルの決算が良かったことでアップルの株価が急伸したこともあるが、この円安も好感してか、本日の日経平均株価は8900円近くまで上昇している。

 ユーロ圏の信用不安については、ギリシャの債務交換協議が難航するなど予断は許さない状況にある。しかし、市場のマインドは以前に比べ改善してきているのも確かであり、安全資産として買われていたドイツ国債、米国債、英国債などに戻り売りが入ってきている。このため日本の貿易赤字転落をきっかけとして、安全資産への資金流入の反動から、円売りに流れが傾いたとしてもおかしくはない。

 つまり、これまでの円買いの巻き戻しが入りつつあり、それが日本の貿易赤字転落をきっかけにその動きを強めている。ここは為替介入、つまり円売り介入には絶好のタイミングではなかろうか。

 個人的には相場を人為的に動かそうとする、為替介入そのものには反対である。

 それでも介入はやる、というのならばタイミングが重要であり、いまがその良いタイミングではなかろうか。さらなる貿易赤字の解消のための介入ならば、目的も明確となる。(ただし、欧米諸国の理解を得るのは難しいであろうが)

 円買いの勢いが強い際の介入は効果は薄く、むしろ投機筋の標的にされる懸念がある。しかし、その勢いに衰えが見えた際には、介入はかなり効果的なものになりうる。市場参加者の間で円が売られ始め、そろそろ円を売ろうかと迷い始めているところに介入、となれば、押し上げ介入ともなり、巻き戻しにより円を売る動きが強まることが予想される。

 また、貿易赤字により日本の国際競争力の低下などが意識され、円安は日本売りなども連想されやすいが介入での円安となれば、円安に対する解釈も違ったものになりうる。ただし、今のところ日本の株も債券もしっかりしているので、日本売りといった連想は働いてはいないが。


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by nihonkokusai | 2012-01-25 13:06 | 景気物価動向 | Comments(0)

CPI基準年改定による影響は大きなものに

 日銀は本日の金融政策決定会合で、4月に発表した展望レポートの中間評価(中間レビュー)を行うが、その際に東日本大震災の影響により、2011年度の「実質GDP」は4月見通しのプラス0.6%から下方修正されるとみられる。

 しかし、消費者物価指数(除く生鮮)の見込みについては、大きな修正はないとみられる。4月時点での消費者物価指数(除く生鮮)は前年比プラス0.7%の見込みである。ただし、これは現行の2005年基準の指数をベースにしている数値である。

 来月8月26日に発表される7月の全国消費者物価指数からは、基準年が現行の2005年から2010年に改定される。前回の2000年から2005年の改定の際と同様に0.5%近辺下方修正されるのではないかとみられていたが、その修正幅が大きくなる可能性が出てきた。

 先週7月8日に、総務省は「平成22基準 消費者物価指数ウエイト」を発表したが、これによるとエコポイントや地デジ化にともない販売額が伸び、さらに価格低下の大きな液晶テレビの影響が大きくなるため、当初想定されていた0.5%近辺のマイナス修正が、0.8%近辺のマイナス修正となる可能性が強まった。

 そうなれば展望レポートのCPI予測が基準年の変更による要因を含まずにプラス0.7%となっているだけに、マイナス0.8%近辺の修正が入れば結局、マイナス圏となる可能性がある。

 基準年の変更によるマイナスは、エコポイントなどの特殊要因も絡んだものであり、これを持ってデフレからの脱却が余計困難になると結論づけるわけにはいかないものの、なかなか物価が上昇しにくい環境が続いていることは明らかである。

 日銀は4月の展望レポートの際には、「中長期的な物価安定の理解」に基づいて物価の安定が展望できる情勢になったと判断されるにはなお時間を要するとしているが、基準年の変更によりさらに時間が必要となる可能性が高まる。

 つまり、それは現在のゼロ金利政策を続ける時間軸をさらに長期化させることとなり、これは長期金利にとり低位安定させるひとつの要因とはなろう。

 もちろん、現在の物価を取り巻く環境に大きく変化が生じないとの前提の上での見方であり、今後、資源価格の高騰といった状況などが発生すれば状況が変わる可能性はある。


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by nihonkokusai | 2011-07-13 11:25 | 景気物価動向 | Comments(0)

原発全停止の可能性とその影響

 東京電力の福島第一原子力発電所における事故と、それにより多量の放射性物質が外部に放出されたことにより、原発そのものへの見直し機運が高まっている。原発再開の是非を問うイタリアの国民投票は、投票率が50%を超えて成立し、暫定開票結果では、原発凍結賛成票が約94.5%を占めた。国内世論に関しても今後、脱原発に向けて高まることが予想され、来年春には全ての原発が停止する可能性がある。

 経済産業省所管の日本エネルギー経済研究所によると、すべての原子力発電所が運転停止し、火力発電所で発電を代行した場合、液化天然ガスや石炭など燃料調達費が増えるため、2012年度の毎月の標準家庭の電気料金が平均で1049円上昇するとの試算を発表した(読売新聞)。このように家計にも負担が掛かり個人消費にも影響が及ぶ可能性がある。この1千円のアップを高いと見るか安いとみるか、毎月1千円の節約で原発リスクをおさえられるならばとの見方も出てこよう。

 中部電力は菅首相の要請を受けて、5月14日までに浜岡原子力発電所の全原子炉を停止した。現在の時点で、停止している原発は、福島第一、第二原発や浜岡原発、女川原発、のほか、定期点検中のものを含めると35基となり、営業運転しているのはわずか19基となっている。

 原発は電気事業法により、ほぼ13か月おきに、原発を停止して検査を行うことになっている。通常の場合は、定期検査で停止した原発は地元の了解なしに運転を再開し、1か月程度の調整運転を経て、原子力安全・保安院の最終試験を実施し、営業運転に入ることになる。

 しかし、今後は福島第1原発の事故を受け、地元への理解が必要となろう。枝野官房長官も5月の会見で、定期検査中の原発の運転再開について「各電力会社の緊急安全対策を、国がしっかり確認した上で、地元の意向を踏まえて検討していく」とコメントしている。

 ただし、政府は浜岡原発を停止させたこともあり、原発再開に対して現時点で地元(原発を抱える14道県)の協力を得ることはかなり難しいであろう。今後の大きな余震発生の可能性も指摘される中で、原発再開へのリスクを地元住民もかなり警戒してくることが予想されるためである。

 もし、随時原発が点検に入り、再開ができなくなれば来年には、国内のすべての原発が停止する可能性がある。全国の電力供給の3割を担う原発が止まれば、震災で大きな打撃を受けた日本経済にさらにマイナスの影響を与える可能性があり、生産拠点の海外移転による産業空洞化が加速される懸念もある。

 国内原発がすべて停止されるとなれば、それに向けて電力の供給不足を補う方法とともに、需要を抑える必要性も出てこよう。これまでオイルショックなど大きなショックを乗り越えてきた日本だけに、今回も震災復興とともに新たな電力供給に向けての努力が行われるであろうが、その間、経済は影響を受けることになる。

 オイルショックを乗り越えた日本ではあったが、その影響を受けた税収不足などのため特例法を制定しての赤字国債が発行されるなどしており、政府債務増加のひとつのきっかけともなっている。今回も震災と原発事故の影響で、政府債務がさらに拡大するとみられる。景気へのマイナスの影響は税収不足をもたらすことが予想される上、歳出の増加により、いわゆるワニの口はさらに開くことも想定される。その分、いわゆる臨界点は前倒しされることとなる。だからこそ、原発は再開すべきというわけではない。念の為、それによる影響もある程度、想定しておく必要もあると思うのである。


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by nihonkokusai | 2011-06-14 08:43 | 景気物価動向 | Comments(0)

プラスに浮上したCPIの今後の動向

 総務省が27日に発表した4月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、コアCPI)は前年比プラス0.6%となり、2008年12月以来2年4か月ぶりにプラス転換した。ただし、市場予想もプラス0.6%であり、これは想定されたとおりのものであった。

 3月のコアCPIは同年同月比でマイナス0.1%であったのが、何故プラスに転じたのかといえば、4月分からは公立高校授業料無料化の影響が剥落したためである。実際に授業料無償化の影響を除けば、上昇幅はゼロ程度となっていた。

 今後のCPIの動向について注意しなければいけないのが、消費者物価指数の基準年の変更による影響である。2005年から2010年への基準年の変更は、今年の夏に行われ、8月に発表される7月分からは2010年基準が公表される。

 一般に消費者物価指数の前年比は、基準年から先に進むほど実勢よりも強めに算出されやすく、こうした統計上の歪みは、基準改定の際に修正される傾向があると言われる。つまり、夏の基準改定で、消費者物価指数の前年比が下方に改定される可能性が高い。

 2006年8月の消費者物価指数の基準年の変更に結果的には0.4%から0.5%の下方修正が行われた。今回も同様の下方修正が予想され、その結果、他の大きな変動要因がなければ、ゼロに近いものの若干のプラスとなることが予想される。さらに10月からタバコの増税によるプラス寄与が剥落してさらに0.2%下方シフトするため、再びマイナスに陥ることも想定される。

 今後については日銀の展望レポートで次のような記述もある。

 「先行きの物価を巡る環境を展望すると、個別の財やサービス市場では、震災の影響による供給制約が、ボトルネック状況などにつながり、これが物価上昇圧力となる可能性はあるものの、マクロ的な需給バランスは、震災の影響により供給面での制約が厳しくなると同時に、需要も減退するとみられるため、その変動については、短期的には不確実性が高い」

 やや長い目でみれば、景気が緩やかな回復経路に復していくに従って、マクロ的な需給バランスは徐々に改善していくと考えられ、その結果、中長期的な予想物価上昇率は、安定的に推移すると想定しているようである。ただし、原油価格の動向など国際商品市況の動きには注意しておく必要もある。

 その結果、政策委員の大勢見通しは2011年度でプラス0.7%、2012年度でもプラス0.7%となっている。この見通しについては公立高校授業料無料化の影響は除いており、さらに現行の 2005年基準の指数をベースにしている点に注意したい。つまり、2010年基準で見れば、若干のプラスとの予想とみられる。

 このように消費者物価指数については、震災の影響、商品市況の影響などにより若干の変動はあるとみられるが、総じてゼロ近傍での推移となることが予想される。日銀による「中長期的な物価安定の理解」においては「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度である。」としており、1%に届くにはかなりの時間を要することも予想され、現在の実質ゼロ金利政策は今年から来年にかけても継続されることが、これからも予想される。


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by nihonkokusai | 2011-05-30 11:25 | 景気物価動向 | Comments(0)

二期連続のGDPマイナス成長と政府の対応

 5月19日に1~3月期GDP一次速報が発表された。実質GDPは前期比マイナス0.9%、年率でマイナス3.7%と事前予想も大きく下回った。

 東日本大震災による影響が大きく、生産設備が被災しサプライチェーンが寸断されたことにより生産に大きな影響を与えた。原発事故もあり、その後の自粛ムードの影響による個人消費の低迷なども影響した。個人消費はマイナス0.6%、設備投資はマイナス0.9%となった。

 昨年10~12月期GDPがマイナスとなっていたことから、これにより2四半期連続でのマイナスとなり、定義上はリセッション(景気後退)入りとなる。連続のマイナス成長となれば、世界的な金融経済危機が影響した2008年4月から2009年3月までの4四半期連続以来となる。

 今回のGDPのマイナス成長は原因がはっきりしていることもあり、また政府もそのための対策を講じている。4兆円規模の第一次補正予算はすでに成立しており、今後は復興に向けた第二次補正予算編成も控えている。

 ただし、ねじれ国会の影響がこの第二次補正予算編成に向けた動きにも影響し、菅総理は第二次補正予算案の編成を8月以降に先送りする方針を示した。これに対し野党は反発しており、小規模の二次補正を今国会に提出する方向で検討をはじめ、さらに6月22日までの会期を小幅延長する可能性も出てきたと伝えられた。

 復興に向けてはかなり先を見通したビジョンも必要となり、ある程度の時間を傾けることも必要であろう。しかしその間、日本経済が大きく落ち込むリスクもある。4~6月期のGDPはさらに大きく落ち込む可能性も指摘されている。

 今年後半あたりからの、景気回復に向けての政府の後押しは必要となろう。そのためには、政治的な理由での停滞などは控えるべきである。現在は平時ではなく非常時である。震災そのものとともに原発事故による影響もあるなど、待ったなしの状況にもある。

 このような中での与野党の攻防を見せつけられると、政治とは何なのかをあらためて考えさせられる。被災地や原発の現場では必死の作業が続けられており、また被害を被った生産設備の復旧も進められている。しかし、今後の復旧・復興のビジョンを描くべき司令塔がこのように不安定となってしまっては、日本経済そのものの本格的な復興にも影響が出るのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2011-05-19 10:02 | 景気物価動向 | Comments(0)

商品価格の高騰の原因とその影響

 先日のG20財務相・中央銀行総裁会議では、一次産品など国際商品市況上昇の背景と、マクロ経済・金融面に与える影響を分析するスタディグループを立ち上げることで合意し、そのスタディグループの議長に日銀の中曽宏理事が就くこととなったと伝えられた。今回の国際商品市況上昇は政治情勢も変化させ、また政治情勢の変化がさらに国際商品市況を上昇させるなど、非常に重大な問題となりつつある。

 今回の国際商品市況上昇の原因としては、新興国や資源国の需要の拡大があげられる。これは2007年8月にニューヨーク原油先物価格が147ドルの高値をつけた際と同様の要因によるものである。投機的な資金が流れ込んだことも要因ではあったものの、その背景には中国など新興国による強い需要があった。この際の商品市況の急騰は、リーマン・ショックなどによる世界的な金融経済危機により、いったんは収束に向かう。

 しかし、新興国の需要は衰えることはなく、2009年あたりから再び食料品価格や原油価格が上昇基調となった。それを加速させた要因として、米国を初めとする先進国の金融緩和に伴う投資資金が国際商品市場に流入していることも指摘された。

 さらにここにきて供給ショックによる原油価格の上昇という側面も出てきた。新興国などでは食料品価格の高騰などにより国民の不満が高まり、また雇用の悪化などから政権そのものへの不満が強まった。それが中東における民主化運動を引き起こし、チュニジアのジャスミン革命の動きがエジプト、リビアにも飛び火した。特に原油産出国であるリビアからの原油供給がストップするなど、中東情勢緊迫化により原油価格をさらに上昇させてきている。

 この国際商品市況の上昇が、先進国そして新興国・資源国の経済に対してどういうインパクトを与えるのかを探ることも重要であり、スタディグループの研究発表などにも注目したい。日本にとり新興国・資源国の需要の拡大による輸出増から景気に対してプラスの側面はあるものの、その価格の高騰そのものは景気に対してはマイナスに作用する。これは日本ばかりではなく、欧米諸国でも同様であろう。

 それとともに今回の商品価格の高騰が世界の政治情勢を一変させるほどの影響力を持っていることにも注意する必要がある。

 革命は伝播すると言われる。それは過去の歴史も示している。エジプトやリビアの長期政権がこのような短期間に崩れ去ることを誰が予見できたであろうか。しかも、これはまだ現在進行中であり、この革命の伝播がどこまで拡がるかとの懸念とともに、民主化後の政権の姿そのものもはっきりした形をとっておらず、先進国もその行方を見守るばかりである。

 民主化の流れが、たとえばサウジアラビアや中国に伝播する可能性もないとは言えない。もしそうなれば、原油価格のさらなる急騰を招きかねず、また現在の世界の景気を支えている新興国の景気そのものが落ち込むような危険性もある。リーマン・ショック、ギリシャ・ショック、そして今度はジャスミン・ショックが世界経済を揺るがす可能性がある。


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by nihonkokusai | 2011-02-26 10:23 | 景気物価動向 | Comments(5)

今後の消費者物価を見る上での注意点

 本日発表された1月の生鮮食品を除いた消費者物価(コアCPI)の前年比はマイナス0.2%となった。一時的な要因である高校授業料無償化の影響(マイナス0.5%程度)を除いてみると、前年比プラス0.3%となる。日本の生鮮食品を除いた消費者物価(コアCPI)の前年比は2009年8月にマイナス2.4%と大幅に下落した後、下落幅が着実に縮小してきている。

 日本の消費者物価は2007年10月あたりまで前年比でほぼゼロ近傍で推移していたものの、その後石油価格の上昇などを受けて2008年7月にプラス2.4%に上昇したが、ここがピークとなった。2008年9月のリーマン・ショックによる景気悪化などの影響により、2009年8月まで急激に落ち込んだのである。しかし、その後は世界的な需要刺激策などにより景気が回復してきたことで、日本のコアCPIもゼロ%近くまで戻ってきている。

 先行きについては、景気の回復期待も再び強まっていることに加え、原油などの国際商品市況が上昇基調にあることから、2012年度にかけては徐々にプラス幅を拡大させていく見込みとなっている(2月23日の山口日銀副総裁の講演要旨より)。

 ただし、注意しなければならないのは今年7月(発表は8月)の2005年から2010 年への基準年の変更である。一般に消費者物価指数の前年比は、基準年から先に進むほど実勢よりも強めに算出されやすく、こうした統計上の歪みは、基準改定の際に修正される傾向がある。つまり、来年の基準改定で消費者物価指数の前年比が下方に改定される可能性が高い。(昨年10月20日の西村日銀副総裁の講演より一部引用)。ちなみに前回の基準年の変更に際しては0.5%の下方修正が行われており、同様規模引下げられる可能性がある。

 問題は今年の夏場にかけてどの程度物価が上昇してくるかである。ここにきてはリビアの政情不安により原油価格の上昇ピッチがさらに強まる懸念も出てきている。2008年7月に向けてと同様の動きを示す可能性もないとは言い切れない。ただし、原油価格など国際商品市況の上昇を背景とした物価上昇圧力となれば、景気には足枷となる。

 いずれにしても、現在の水準であれば日本の消費者物価指数が債券相場などに影響を及ぼす可能性は少ない。しかし、基準年が変更される7月に向けてどの程度、コアCPIが上昇してくるのか注意しなければならない。また、その前に4月から高校授業料無償化の影響がなくなることで、現在のCPIの水準のままでも前年比プラスとなることが予想される。国際商品市況の上昇の影響とともに、4月と7月の数値が大きく変化することにも注意しておく必要がある。


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by nihonkokusai | 2011-02-25 08:48 | 景気物価動向 | Comments(0)

景気に対する悲観論は後退か

 2月1日に発表された1月の米ISM製造業景気指数は、60.8と前月の58.5から上昇し、2004年5月以来の高水準となった。

 このISM製造業景気指数は、米供給管理協会が製造業約350社の購買担当役員にアンケート調査を実施し、1か月前と比較して、「良い」「同じ」「悪い」の三者択一の回答を元に、季節調整を加えた景気動向指数を作成したもので、景気転換の先行指標として重視されている(拙著「ネットで調べる経済指標」より)。

 内訳となる雇用指数や価格指数についても重視されているが、雇用指数は米国経済指標で最も注目されている指標のひとつである雇用統計の動向などをこの数字からも連想されるためであり、また価格指数は物価動向も見る上で参考にされる。

 その雇用指数については前月の58.9から61.7に、価格指数についても72.5から81.5に上昇している。これらはFRBの金融政策のスタンスを見極める意味でも注目されている指標のひとつでもあり、FRBの景気認識に影響を与える可能性がある。

 また、マークイットが1日に発表した1月のユーロ圏製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は57.3となり、速報値の56.9から上方改訂された。

 このように欧米については製造業を主体に景気が予想以上に回復を見せている兆しがある。日銀の白川総裁は1月26日の記者会見で、「海外経済は、新興国・資源国が高成長を続けているほか、一時期強まった米国経済の先行きに対する悲観的な見方も後退しており、海外経済の成長率が再び高まりつつあります」と述べている。これにより、輸出は、先行き再び緩やかに増加していくというのが日銀の判断である。

 2月14日に2010年10~12月期の日本の国内総生産(GDP)の実質成長率が発表されるが、平均で0.5%のマイナス、年率換算で2.0%程度のマイナスとなり、5四半期ぶりのマイナス成長となることが予想されている。このマイナス要因のひとつに、半導体など情報関連財の在庫調整局面入りを背景とした輸出の伸び悩みが指摘されているが、「情報関連財の在庫調整についても、世界的にIT関連需要が堅調に推移するもとで、着実に進捗していくことが見込まれます」と白川総裁は会見でコメントしている。

 また、エコカー補助金の終了に伴う自動車の駆け込み需要の反動減の影響についても、白川総裁は「自動車の販売動向、生産指数の動き、企業からのヒアリング情報などを踏まえると、徐々に薄まっていく方向にあるとみられます」としている。

 このように、どうやら10~12月期の景気の落ち込みは一時的なものとなりそうで、14日に発表されるGDPに対し、市場は過去の数値としてあまり反応しない可能性が高い。

 エジプトの政情不安にともなう原油高、さらに円高などが景気回復の足かせとなる懸念もあり、不透明感が強いことは確かである。しかし、日本の景気は欧米の景気回復とともに1月以降は回復を示す可能性が強まりつつあり、悲観論が徐々に後退しているように思われる。


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by nihonkokusai | 2011-02-03 08:47 | 景気物価動向 | Comments(0)

「財務相会見で円高が進行した理由」

本日、外為市場では午後4時過ぎに、ドル円が84.72円を下回り、15年ぶりの安値を更新した。この円高進行を受けて、野田財務相は午後5時に記者会見を開き、「為替相場の過度な変動、無秩序な動きは経済に悪影響がある。細心の注意が必要」とし、「マーケットの動きには重大な関心をもって極めて注意深く見守っていく」と述べたそうである(ロイター)。

そして、政府としての政策対応については「マーケット動向を重大な関心をもってウオッチしていくことが肝要」と述べ、為替介入については「コメントしない」とこれまで通りの発言を繰り返した(ロイター)。

この発言を受けて、外為市場ではさらに円買いが進行し、5時10分頃にドル円は84円16銭近辺まで円高ドル安が進行した。財務相がわざわざ会見を開く以上は、何かしらの円高対策についてのコメントがあるのではないかとの期待というか警戒があったが、結局、肩透かしに会い円高を加速させることとなった。

何もしないよりも、少なくとも財務相は関心をもって市場の行方をチェックしていることを伝えることで、市場にインパクトを与えることが可能との認識での会見であったのであろうか。それならば無理に開くよりも、財務相のコメントを手短に市場に伝えるだけで十分である。わざわざ記者会見という場を設けたにも関わらず、従来の発言の繰り返しではむしろ市場の失望を招くだけである。

民主党の代表選や来年度予算に絡んで、政府が動きにくい状況にあることは確かである。さらに為替介入についても欧米との協調介入は難しく、単独介入ではむしろ円高を促進させる結果ともなりかねない。

もし会見を開くのならば、市場に向けてのアナウンスメント効果をかなり意識しての発言内容とすべきである。そのあたりのさじ加減は難しいものがあるが、日本の足元経済やデフレの状況をあらためて強調し、ドルやユーロに対して円の強さの背景には具体的な根拠が乏しいことなどを力説するという手もあるのではないか。

また、日銀との連携についても自ら進んで水面下で接触し、形式的なものだけでなく実際にも協力している姿勢を見せる必要があるのではなかろうか。
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by nihonkokusai | 2010-08-24 19:01 | 景気物価動向 | Comments(3)
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