牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

カテゴリ:景気物価動向( 278 )

ワールドカップと金融危機

 6月12日からブラジルでワールドカップが開催される。開幕戦となるブラジル対クロアチアの審判は、日本の西村主審と相樂亨副審、それに名木利幸副審の3人が務めることになったそうである。まさに快挙といえるが、もちろん日本代表選手にも活躍してもらい、まずは決勝トーナメントに進んでほしい。

 それはさておき、今回のワールドカップはブラジル大会。次回は2018年にロシアで開催されるが、前回は2010年の南アフリカ大会であった。BRICSと呼ばれた5か国のうちの3か国での連続開催というのは、新興国の発展の勢いを物語るものかと思われる。

 前回大会の南アフリカ大会が開催されたのは2010年6月から7月にかけてであった。日本では探査機「はやぶさ」が地球に帰還したタイミングでもあったが、このときすでに欧州の信用不安が吹き荒れていた。ワールドカップと世界経済には直接の影響はないと思われるものの、その年に起きた世界経済に関わる出来事を追いながら、過去のワールドカップの歴史を振り返ってみたい。

 戦後初めて開催されたのは1950年のブラジル大会、1954年スイス、1958年スウェーデン、1962年チリ、1966年イングランド大会と続く。1970年はメキシコ大会、1974年は西ドイツ大会。1978年はアルゼンチン大会。

 1982年はスペイン大会となったが、この年、メキシコ政府は1000億ドルの対外債務は支払い不能である旨公表し、これをきっかけに世界的な債務危機が引き起こされた。

 1986年はそのメキシコでの大会となったが、その前年の1985年にプラザ合意があり、ドルは急落した。日本ではバブルが発生しつつあった時期に重なる。

 1990年はイタリア大会。前年の1989年11月にベルリンの壁が崩壊し東西ドイツは統一に向かい、12月にはマルタ会談により冷戦が終結した。日本のバブルが崩壊した年でもあった。

 1994年の開催地は米国。

 1998年はフランス大会。5月にロシアの通貨危機が発生し、LTCMが9月に破綻に追い込まれた。日本のデフレがスタートしたのはこの頃とされている。

 2002年は日本と韓国での開催。

 2006年はドイツ大会。この年あたりからアメリカの住宅価格が下落に転じサブプライム・ローン問題が発生した。それが2008年のリーマン・ショックと呼ばれるような世界的な金融経済危機の引き金となった。

 2010年は南アフリカ大会。欧州の信用危機が発生した年であった。

 そして今回の2014年、ブラジル大会である。世界的な金融経済危機は去ったが、日米欧の中央銀行は危機に際して、過去に例のない手を打ってきた。日銀はデフレ対策という名のもとに、2013年に異次元緩和を決定した。ECBもいまだ追加緩和を行ってきている。果たしてこの年に何が起きるのか。過去には大きな危機等もない開催年もあったが、今年はどうであろう。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2014-06-12 09:25 | 景気物価動向 | Comments(0)

今後の物価動向とそれによる影響

 2013年4月4日の金融政策決定会合で日銀は、量的・質的金融緩和の導入を決めた。日銀が掲げた消費者物価指数(除く生鮮食料品、コアCPI)の2%という物価目標に対して、2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するとした。

 1月31日に発表された昨年12月のコアCPIの前年同月比はプラス1.3%となった。昨年4月のコアCPIはマイナス0.4%、そして5月のコアCPIは0%であったが、このゼロを基準にみれば、単純計算ではすでに65%程度の達成度となっている。

 日銀は2015年度までの見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとしているが、数値の上ではいまのところこのシナリオに沿った物価の上昇となっている。

 この物価上昇の大きな背景になっているのは、円安である。12月の物価上昇の要因として、円安に伴って原油や液化天然ガスなど原燃料の輸入価格が上昇したことで、ガス・灯油価格やガソリン価格が上昇している。外国パック旅行やハンドパック(輸入品)の価格の上昇も円安の影響を受けている。

 円安に伴う原材料費の上昇を、そのまま価格にオンできるような環境になっていることも、確かにこの物価上昇の背景にある。年末年始の海外旅行者数は過去最高となったようだが、パック旅行の価格が上がっても海外に行く人が多いこと自体、景気の回復が物価を支えている。

 ただし、その円安の要因が剥がれるとここからの物価の上昇は厳しくなる。今年に入り為替や株式市場の様相が大きく変化した。日本株を中心に世界の株式市場は調整局面入りし、円安トレンドも変化し、ドル円は105円台から100円台に下落した。昨年の円安の動きの背景が、ポストグローバルリスクとすればその動きもある程度一巡した。

 為替市場については、昨年のような円安を見込むことは難しくなり、今年は落ち着く水準を探る展開も予想される。日米の金融政策の方向性の違いが円安を促進させた面もあったが、すでにFRBはテーパリングを開始しており、日銀の追加緩和もある程度想定して動いてきており、これらをあらためて材料視して円が急落するのも考えづらい。

 日銀の物価目標については、円安のフォローがなくなればこれからが正念場となる。しかし、今後は4月以降の消費増税の影響分が加味される。消費者は消費増税を除いた物価の行方などは見ていない。実感として物価が2%を超えて上がることがあれば、物価上昇による悪影響のほうを意識してくる可能性もある。それにもかかわらず、物価をさらに上げようとする日銀に対して、消費者はどのような視線を向けてくるのか。さらに日銀の国債買入でおとなしくなっている国債市場も、この物価上昇を完全に無視して良いものなのか。このあたりも今後の注目材料となりそうである。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2014-02-08 12:55 | 景気物価動向 | Comments(0)

コアCPIは5年ぶりの1%台

 12月27日に発表された11月の全国消費者物価指数(除く生鮮食料品、コア)は、前年同月比でプラス1.2%となり、2008年11月以来5年ぶりに1%台に乗せた。市場予想は1.1%近辺となっており、それもやや上回った。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(コアコア)は、前年同月比でプラス0.6%と、こちらは15年3か月ぶりの上昇となった。

 昨年12月からのコアCPIの前年同月比の推移をみると、昨年12月がマイナス0.2%、今年3月にマイナス0.5%まで低下していたが、そこから次第に上昇し5月には0.0%、6月に0.4%、7月は0.7%とブラス幅を拡げ、11月に1.2%と1.0%台に乗せてきた。

 コアコアに関しても昨年12月はマイナス0.6%となっており、今年2月にはマイナス0.9%まで低下していた。こちらもそこからマイナス幅を縮小させ、9月に0.0%となり、11月はプラス0.6%まで回復している。

 総合指数の前年同月比に寄与した主な内訳をみると、前月と同様に電気代や自動車等関係費が上げられている。原発停止の影響による電気代の上昇と、ガソリン価格の値上げ、傷害保険料の引き上げ、外国パック旅行価格の上昇などが要因となっている。

 4月の異次元緩和というよりも、昨年11月のアベノミクスの登場による急速な円高調整による影響は確かに大きい。円安の影響とともに、原発問題に絡んだ電気代の上昇、世界的なリスクの後退に伴うエネルギー価格の上昇、円安の影響もあり輸入の割合が高いパソコンやタブレット端末の価格の上昇、液晶テレビなどの価格下落が止まったことも影響している。いまのところ、景気全体の底上げにともなう賃金上昇等の影響を受けての価格上昇というより、傷害保険料の引き上げなども加わって1%台に乗せてきたといえる。

 問題はここからである。コアCPIの予想としてはそろそろピークアウトし、年度内は1%近辺に止まる見込みとなっている。消費増税の影響を除くと5月以降は鈍化するとの見方もある。ただし、4月以降は消費増税の影響をどの程度と見極めるのか。内税となっている場合などを含めその作業もなかなか困難であり、とりあえず消費増税の影響も加味して物価そのものが上昇していくことで、デフレ脱却がイメージされるかもしれない。

 26日に安倍首相は日銀の黒田総裁と会談し、その際、黒田総裁は日本経済が2%の物価上昇目標に向け順調に推移していると説明した。ただし、まだ道半ばであり、完全に(デフレ脱却)との状態ではないとし、2%の物価安定目標を実現しそれが安定的に持続できるまで現在の金融緩和を続けていきたいと語ったそうである。

 コアCPIは前年比1.0%台に上昇し、予想も上回ったものの27日の債券市場はこれによる影響はあまり受けていない。日銀の国債買入による需給面の影響もあろうが、動揺を示さぬあたり、日銀の掲げる2%の物価目標の達成は困難との見方も強いのか。ドル円は27日に105円台に乗せてきたが、こちらも目標達成困難のため日銀による追加緩和期待が背景にある。数字だけでみれば、CPIは順調に日銀の目標に向かっているかにみえる。しかし、マーケットの反応は、どうもそう結論づけているわけでもなさそうである。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-12-28 10:21 | 景気物価動向 | Comments(2)

日銀短観と市場への影響

 日銀が16日に発表した12月全国企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の業況判断DIは「プラス16」となり、9月調査のプラス12から上昇し4期連続での改善となった。調査機関の予想はプラス13~16ポイントであったことで、ほぼ予想の上限に近い。プラス16は2007年12月調査のプラス19以来の高水準となる。先行きを示す2013年3月の予想はプラス14と減速を見込んでいる。ただし、前回の予想もプラス11と悪化を見込んでいたもののむしろ改善した。業種別では木材・木製品や自動車のプラス幅が大きいが、木材・木製品は公共投資や住宅投資に伴う建築需要の高まりが影響しているようである。

 大企業「非」製造業のDIは「プラス20」となり、9月調査のプラス14から上昇し、こちらも4期連続の改善となった。調査機関の予想はプラス15ポイントからプラス19ポイントとなり、予想を上回る改善となった。先行きを示す2013年3月の予想はプラス17としており、やはり減速を見込んでいる。こちらも業種別では消費税増税前の駆け込み需要により、建設や不動産などに加え物品賃貸の改善幅も大きくなっている。

 中堅企業も製造業・非製造業ともに改善し、中小企業の製造業は前回のマイナス9からプラス1に、非製造業もマイナス1からプラス4と、それぞれプラスとなった。中小企業の製造業のプラス転換は2007年以来、非製造業は1992年以来のプラスとなった。

 大企業全産業の2013年度の設備投資計画(含む土地投資額)は前年度比4.6%増となり、9月調査から0.5ポイント低下していた。特に製造業が1.7ポイントのマイナス修正となっていた。

 大企業製造業の2013年度の想定為替レートは96円78銭で、9月調査の94円45銭に比べて円安・ドル高方向に修正された。それでも現在の103円近辺の実際の水準に比べると、かなりの余裕をみている格好。

 今回発表された短観は、総じて予想以上の改善幅を見せていたが、さすがにそろそろ息切れとなる可能性もある。設備投資計画のマイナス修正も気になるところ。ただし、来年4月からの消費増税を前にした駆け込み需要等も引き続き予想され、それほど大きな減速とはならないのではなかろうか。

 短観の大企業DIと日経平均のトレンドはある程度一致する。アベノミクス登場後の急激な円高調整に加え、米国の株高も相まって東京株式市場も上昇トレンドとなっているが、それがいずれピークアウトするのかは、この短観の大企業DIの動向もチェックしておく必要がある。

 債券市場への影響については限定的と思われるが、それでもこの景気の回復は意識すべきものと思われる。日銀の国債買入の影響もあり、長期金利は0.7%近辺と低位安定しているが、CPIも前年比プラス1%近辺にいることもあり、実態経済に比べてやや乖離しているように見える。日銀の国債買入への依存度を高めてしまうと、のちに大きな反動がくる懸念もある。日銀が無理矢理、長期金利を押さえ込んでいるのではなく、そのような「期待」が長期金利を押さえ込んでいることも注意すべきかと思われる。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-12-17 09:16 | 景気物価動向 | Comments(0)

今後の消費者物価指数の動向

 11月29日に発表された10月の全国消費者物価指数は、日銀が目標(前年比プラス2%)に置いている生鮮食品を除くコア指数は前年同月比プラス0.9%となった。上昇率は2008年11月の1.0%の上昇以来の大きさとなり、9月は0.7%の上昇であったことでプラス幅が0.2ポイント拡大した。

 さらに食料(酒類を除く)とエネルギーを除いたコアコア指数は前年同月比0.3%上昇となった。2008年10月以来、5年ぶりのプラス転換となった。

 これらの上昇要因としては、10月の傷害保険料の引き上げが主な要因となった。外国パック旅行の価格の上昇も寄与した。その半面、これまでの上昇要因となっていたエネルギー価格はむしろ下落要因となっていた。

 今後の全国CPIの動向を見る上において参考となる11月の東京都区部の消費者物価指数は、コア指数が前年同月比は0.6%の上昇、コアコア指数は前年同月比0.2%の上昇となっていた。コアは10月の0.3%の上昇から0.6%の上昇、コアコアは10月のマイナス0.2%からブラス0.2%とプラスに転じている。11月の東京都区部の消費者物価指数の上昇要因としては、家庭用耐久財や教養娯楽用耐久財、宿泊料や外国パック旅行などが寄与していた。

 11月の東京都区部の消費者物価指数も意識すると、来月発表される11月の全国消費者物価指数の前年比は限りなく1.0%に近づくことが予想される。ここにきて円安の動きが再び加速していることもあり、12月のコアCPIの1.0%台の上昇もありうるか。ただし、来年1月以降はエネルギー価格による寄与度が低下する半面、消費税率引き上げ前の駆け込み需要もあり需給バランスのさらなる改善も見込まれている。年度末に向けてコアCPIは1.0%近辺、コアコアも前年比プラスで推移すると予想される、

 これにより日銀としては異次元緩和から1年目の来年4月の中間報告で、異次元緩和により順調に物価も上昇しつつあるとの認識を示す可能性もある。ただし、その中身をみると円安やエネルギー価格の上昇、傷害保険料の引き上げ、さらにはテレビやパソコンなどの価格上昇による影響も大きい。テレビは高付加価値製品へのシフトで単価がアップしていることに加え、消費増税前の住宅購入の増加による影響もある。パソコンについては円安の影響で調達している部品価格の上昇や、アップルのiPadなどの価格そのものの引き上げなども影響している。

 異次元緩和というかアベノミクスによる円安効果は出ているが、異次元緩和そのものによる物価への直接的な影響はこれらを見る限り、見いだしにくい。これをどのように日銀は判断するのか。物価の下振れの可能性を意識したから、さらに異次元緩和を追加するというのは、消費者物価指数の実証研究をしっかりやらないと意味はなく、今後の副作用(国債の流動性や信用への懸念等々)の方が懸念材料となりかねない。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-11-30 11:15 | 景気物価動向 | Comments(0)

米政府機関閉鎖による雇用統計等への影響

 10月31日の日銀金融政策決定会合後の黒田総裁総裁の会見要旨が日銀のサイトにアップされた。米国の財政問題が、米国経済のみならず世界経済に及ぼすリスクに関する質問に対し、黒田総裁は次のように答えていた。

 「最近、財政を巡る協議が難航し、政府機関の一部が閉鎖される事態もあったわけです。しかし、その後、協議が進展し、債務支払いの遅延も回避されたため、経済への影響は小幅かつ一時的なものにとどまった公算が大きいと考えています。従って、先行きの米国経済に関しては、緩和的な金融環境が維持され、財政面からの下押し圧力も次第に和らいでいくことなどを背景に、回復テンポが徐々に速まっていくとみており、こうした見方に変わりはありません。」

 16日に及ぶ米政府機関の一部閉鎖による経済への影響については、第4四半期の成長率に対し0.2%から0.8%の影響が及ぶとの予測数値が金融機関などから出ているが、実際にはどの程度の影響があったのか。これについては10月21日のWSJが次のように報じている。

 「閉鎖が米経済に影響するには二つの経路がある。一つは閉鎖が与える直接的影響―自宅待機となった職員に賃金が払われず、国立公園を訪れた観光客が土産物を買うこともなく、製品の輸出が止まり、政府機関で書類が滞ってしまったために不動産取引も完了できない、などだ」(WSJ)

 ところが、実際には賃金は支払われているケースが多く、個人消費に悪影響を与えるほどのものではなかったとみられる。国立の博物館の閉鎖などによる影響も同様であろう。むろん消費者が不安を感じて消費を控える恐れもあったが、閉鎖解除後の株価などの動きなどを見る限り、それはあくまで一時的なものであった可能性が高い。WSJは1995、96年に政府機関閉鎖があった時、信頼感は急落したが、実際の消費支出にはほとんど影響しなかったと指摘している。

 黒田日銀総裁の米経済への影響は小幅かつ一時的なものにとどまった公算が大きいとの見方は、日銀の調査結果なのか、それとも常に連絡を取っているはずのFRBの見方なのかはっきりはしない。しかし、ある程度はFRBの見方も伝えられていると取るのが自然であり、黒田総裁の認識はFRBの認識に近いものである可能性は高い。ここにきてのFRB関係者の発言からも、政府機関閉鎖による米経済への影響は限定的と見ているように感じられる。

 「ただし、財政協議は今後とも継続されるため、その帰趨次第では、先行き金融市場や経済主体のマインドへの悪影響から、米国景気が下振れる可能性もあり得ます。その点については留意が必要であり、今後とも十分に注視していきたいと思っています。」(黒田日銀総裁)

 注意すべきは政府機関の一部閉鎖よりも、米国でディフォルトが本当に起きてしまったときの影響ではなかろうか。今後の財政協議の行方は不透明ながら、市場に不安感を与えるようなことは繰り返さず、早めに決着して不安を取り除く必要がある。この財政問題が片付けば、FRBのテーパリング開始に向けての大きな障害は取り除かれる。あとは雇用等の経済指標次第となるが、注意すべきは11月8日に発表される米雇用統計となる。

 調査対象時期と政府機関閉鎖時期が重なってしまったため、特に家計調査に基づく失業率の数字の正確性等が疑問視される懸念はある。米労働統計局は、政府機関閉鎖のため一時解雇されていた職員、あるいは閉鎖の影響を受けた労働者を失業者として扱うとしており、一時的に失業率が上昇することも予想される。

 非農業雇用者数については、あとからでも数字は掴めるため、数字の集計に関してはあまり影響はないとされる。その非農業雇用者数の予想はかなりの幅が出ている(ブルームバーグによると5万人増~17.5万人増)。政府機関の一部閉鎖が民間雇用にも影響を与えたとの見方も強い。実際の数字がどのようなものとなり、それをどのように分析するのか。FRBのテーパリング開始時期を巡っては、この10月の雇用統計の数字が大きな注目材料となる。



*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-11-06 09:42 | 景気物価動向 | Comments(0)

日本経済の改善を示した日銀短観

 10月1日に日銀が発表した短観によると、大企業の製造業の景気判断(DI)はプラス12ポイントと前回より8ポイント上昇した。プラス7~8近辺との予想が多かっただけに、大企業製造業については予想を上回る改善幅となった。2007年12月調査のプラス19以来の高水準となり、リーマン・ショック前の水準を回復した。

 大企業の非製造業はプラス14と2ポイント改善。こちらはほぼ予想通りで改善幅は小幅にとどまった。

 製造業でも中堅企業はプラス0、中小企業はマイナス9となり、前回から改善は進んでいるものの、水準そのものは低い状態となっている。円安により自動車や電機メーカーなど海外事業の割合が大きい企業を中心に収益が改善している格好に。

 大企業を中心としての業況判断の改善により、調査対象のすべての企業を合わせた「全規模・全産業」の景気判断は、プラス2ポイントと、5年10か月ぶりにプラスに転じた。

 この短観の結果を受けて、安倍晋三首相は現行5%の消費税率を来年4月に8%への引き上げを表明した。

 2013年度の大企業・全産業の設備投資計画(除くソフトウエア投資)は前年度比5.1%増と前回調査の5.5%増から小幅下方修正された。

 2013年度の事業計画の前提となる想定為替レート(ドル円)は大企業製造業で94円45銭と6月調査の91円20銭よりも円安・ドル高方向に修正された。今回の大企業製造業DIの大幅改善も、この円安に負うところが大きい。

 アベノミクスにより急速な円高調整を招き、世界経済の底打ちのタイミングもあって、DIなどからみると大企業製造業が景気全体を引き上げる構図となっており、中堅・中小企業はまだまだ厳しい状況が続いている。ただし、雇用面をみると人員不足幅が拡がるなどしており、景気全体が底上げしつつあることも確かである。

拙著「聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓」、発売中です。


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-10-02 08:09 | 景気物価動向 | Comments(0)

日銀短観は大きく改善

 7月1日に発表された6月調査の日銀短観において、業況判断指数(DI)は大企業製造業がプラス4となり、3月の前回調査から12ポイント改善した。プラス圏内に浮上したのは2011年9月調査(プラス2)以来1年9か月ぶりとなる。9月予測はプラス10となった。非製造業はプラス12と前回から6ポイント改善した。9月予測はプラス12となった。

 中堅製造業はマイナス4となり、前回調査から10ポイントの改善。9月予測はマイナス3となった。中堅非製造業はプラス7となり、前回調査から3ポイント改善、9月予測はプラス7となった。

 中小製造業はマイナス14となり、前回調査から5ポイントの改善。9月予測はマイナス7となった。中小非製造業はマイナス4となり、前回調査から4ポイント改善、9月予測はマイナス4となった。

 2013年度の大企業・全産業の設備投資計画は前年度比5.5%増と、前回調査の同2.0%減から大きく上方修正された。

 今回の短観の回答期間は5月28日~6月28日。調査対象企業は10623社で回答率は99.0%。2013年度の想定為替レートは通期1ドル91円20銭となっていた。

 回答期間が5月末からとなっており、5月23日以降の株価の調整も意識されての数字となっており、かなり強めの数字ともいえる。

 アベノミクスによる円安・株高に加え、米国経済の回復などにより、企業経営者の景況感の改善に働きかけているものと思われる。円安もあり大企業製造業の景気判断がプラスに浮上したことも大きい。過去の推移をみると日経平均株価と大企業製造業DIはトレンドを形成する際の目先の底入れや天井の目安となっていたが、今回も昨年12月調査分でいったん底入れした格好でその後、改善傾向となっており、昨年11月以降の日経平均の回復と同じような動きとなっている。先行き予測からみても日経平均にはまだ上昇余地があるように思われる。

 今回は設備投資計画の改善幅も予想以上に大きいものとなった。異次元緩和により、期待に働きかけられたということなのであろうか。5月の全国CPIは前年比0.0%とマイナスを脱し、いずれ前年比プラス0.5%近辺までの上昇が見込まれている。ただし、これは異次元緩和以前からも予想されていたものであり、インフレ期待の強まりが大きく影響したわけではない。とは言うものの、景況感がこのまま改善していけば、設備投資や個人消費が回復し、それに応じて物価も上昇してくることが予想される。それも日銀の金融政策次第というより政府による成長戦略の影響の方が大きいように思われる。

 債券市場への影響については、短観そのものは上値を重くさせる要因となる。しかし、5月23日に長期金利が1.000%をつけてからの動きをみると、積極的に売り手もおらず、値動きはそこそこあるものの、方向感に乏しい展開が続いている。特に6月の債券相場がそうであった。ただし、7月となりあらためて方向感が出てくる可能性もある。米FRBの動向とともに、参院選の行方などにも注意しておきたい。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-07-02 08:19 | 景気物価動向 | Comments(0)

1~3月期GDPは年率3.5%の高成長だが設備投資は低迷

 内閣府が16日に発表した2013年1~3月期国民所得統計1次速報によると、実質国内総生産(GDP)は前期比プラス0.9%、年率換算プラス3.5%と高い成長となった。1次速報の予測中央値は前期比プラス0.7%、年率プラス2.8%となっていたことで(ロイター)、事前予想も上回った。名目GDPの成長率は前期比プラス0.4%、年率1.5%となった。

 2四半期連続のプラス成長となったが、これを牽引したのが個人消費で、前期比プラス0.9%と2011年7~9月期以来の高い伸びとなった。個人消費については事前予測でもプラス0.9%の伸びとなっていた。これはアベノミクス効果による円安・株高が背景ということになろうか。自動車や高級品などの販売、さらには株や為替など金融取引サービスなどの好調さがそれを示している。ただし、「高級品」という言葉にも表れているが株価の上昇等で、資産を持つ層の資金が動いたようであり、格差の拡大も意識される。

 住宅投資は実質プラス1.9%と10~12月期の3.5%ほどではないが高い伸びを続けていている。被災地での住宅再建、来年4月からの消費税率の引き上げ前の駆け込み需要などが影響しているようである。

 ただし、民間の設備投資は実質マイナス0.7%と10~12月期のマイナス1.5%ほどではないが、5期連続のマイナスとなり低調であった。

 アベノミクスの起点は、野田佳彦前首相が衆院解散を表明した11月14日とされる。14日のドル円は79円台後半、ユーロ円は101円台後半であったが、翌15日にはドル円は80円台を回復し、ユーロ円は102円台を回復している。日経平均は14日に8600円台となっていたが、15日には8800円台となった。

 それが12月末にドル円は86円台、ユーロ円は114円台に、28日の日経平均は10395円18銭で引けている。ちなみに5月16日のドル円は102円台、ドル円は131円台、日経平均は15000円台となっている。

 この急激な円安と株高を演出したのは、その背景に欧州リスクの後退があったとはいえ、アベノミクスへの期待感が大きく影響したのは確かであろう。それが個人消費等に影響を与えている。ただし、設備投資にはそれほど影響が出ていないところをみると、やはり期待先行の面も大きいと言えようか。デフレ回復には設備投資などの増加、それにともなう貸出の増加等がセットで必要となるはずである。黒田日銀による異次元の金融緩和は円安・株高を促す一因となっているが、本来促すはずの長期金利の低下は、低下どころかむしろ上昇している。金利に働きかけずとも、果たして期待感だけで企業の設備投資意欲をもたらすことはできるのか。アベノミクスの成否は実はこのあたりにかかっているようにも思うのだが。

アベクロ政策と国債問題

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-05-17 09:31 | 景気物価動向 | Comments(0)

9月の日銀短観を見る上での注意点

 日銀が10月1日に発表した9月の短観によると、大企業の製造業DIはマイナス3ポイントで、3期ぶりの悪化となった。マイナス3ポイントというのはほぼ事前の予想の中心値に近いものとなった。

 日銀短観は3月、6月、9月、12月に調査が実施され、およそ1万1000社を対象に、今回は8月下旬から9月下旬にかけて調査が行われた。

 日銀短観は、各企業が業況感に関しての所定の調査表を記入し、それを郵送するかオンラインによって調査するものである。短観は、サンプル数も多い上、日銀が相手ということもあって回収率も高く、数多くある経済指標の中でも注目されている統計となる。

 短観は他の経済指標に比べ速報性に優れ、企業が認識している足元の業況判断とともに先行きの業況について、どのような予測をしているのかを見るためにも貴重な指標となる。

 短観の発表時間は発表当日の朝8時50分。同時刻に日銀のホームページにアップされる。

 10月1日に発表された9月の短観で大企業の製造業DIが悪化したのは、記録的な円高が長期化していることに加え、欧州や中国など海外経済の減速が長引き、それが国内の製造業の輸出や生産などに弱い動きが出ていることが主な要因とされる。

 ただし、今回の回答が9月11日で7割程度届いていたようで、9月16日以降に発生した中国の反日デモによる影響がほとんど加味されていない点には注意したい。もしこれが加味されていれば、大企業の製造業DIの先行きのマイナス3がさらに悪化していた可能性もある。

 大企業の非製造業はプラス8と6月調査と変わらずとなった。東日本大震災の復興需要から建設業の改善が引き続き影響しているようだが、ここにきて個人消費で弱めの指標もでるなどしており、先行きについてはプラス5とブラス幅が縮小している。

 事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業) は6月の78円95銭から、79円06銭とやや円安に修正されている。現状(10月1日10時現在)はまだ78円近辺ではある。

 2012年度大企業・全産業の設備投資計画は前年度比プラス6.4%となった。中小企業・全産業の設備投資計画は前年比0.0%となった。

 9月28日に発表された8月の鉱工業生産指数速報値で生産指数が前月比1.3%の低下となり、市場予想を上回る減少となったこともあり、今回の日銀短観については思ったほどの悪化ではないとの印象である。

 ただし、中国の暴動の影響などもあり、たとえば設備投資について、「基調としては増加を続ける可能性が高いと思いますが、グローバルな企業マインドの悪化の影響が出てこないか、注意してみていく必要」(日銀の山口副総裁の講演より)がある。欧州の景気悪化懸念に加え、米国では財政の崖問題なども控えている。今後もなかなか企業マインドが改善してくるような状況ではなさそうである。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp


[PR]
by nihonkokusai | 2012-10-02 08:06 | 景気物価動向 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー