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カテゴリ:景気物価動向( 287 )

基調的な物価上昇圧力とは何か

 日銀の黒田総裁は2014年6月23日の講演で次のような発言をしていた(日銀のサイトの講演要旨より引用)

 「消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、昨年(2013年)12月から4か月連続で+1.3%となった後、4月は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて+1.5%と、プラス幅を幾分拡大しました。その中身をみると、エネルギー関連の押し上げ幅が頭打ちとなる一方で、緩やかな景気回復が続くもとで、幅広い品目で改善の動きがみられています。先行きについては、需給ギャップの改善など基調的な物価上昇圧力が強まっていく一方、エネルギーを中心とした輸入物価の押し上げ効果が減衰していくことから、暫くの間、1%台前半で推移すると予想しています。」

 2014年4月以降の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比はこのときの黒田総裁の発言通りに暫くの間、前年比を縮小させ1%台前半で推移することになる。しかし、その前年比の縮小は止まることなく2014年10月には前年比1.0%を割り込み、2015年2月に前年比ゼロ%まで縮小した。

 これに対する黒田総裁の説明は「消費税率引き上げ後の需要面の弱めの動きや、昨年夏場以降、原油価格が大幅に下落したことを背景に、消費者物価の伸び率が鈍化しました」とある(2015年5月15日の講演より)。

 昨年6月の説明をみると「需給ギャップの改善など基調的な物価上昇圧力が強まって」前年比プラス1.5%まで持ってきたが、その基調に変化はないはずだが、事前には想定していたはずの消費増税の影響と予想外の原油価格の下落によって物価の前年比が縮小したとしている。

 「需給ギャップの改善など基調的な物価上昇圧力」が果たしていかほどのものがあったのかを数値化することは難しい。しかし、その部分を除いてこの間の物価の動きをみると説明は意外と楽である。2012年11月のアベノミクスの登場による急激な円安と原油価格の高止まりが、前年比での物価の回復予想されていたなか、物価の前年比を予想以上に押し上げた。そのタイミングをみると日銀が異次元緩和を決定した2013年4月が前年比マイナス0.4%から5月にゼロ%、6月にはプラス0.4%に回復している。

 まるで異次元緩和に即効性があったような動きとなっていたが、当然ながら株式市場などとは異なり、大胆な金融緩和で物価の数値がいきなり跳ね上がることはありえない。このタイミングでの物価の回復は異次元緩和そのものによる効果と考えることには無理があろう。

 ただし、多少のタイムラグ(そのラグの期間は不明)があって異次元緩和の効果が出て1年後の2014年4月にプラス1.5%にまで上昇したとしよう。その後、1年弱で前年比ゼロ%まで縮小したのが仮に原油価格下落と消費増税の影響だとしても、「需給ギャップの改善など基調的な物価上昇圧力」分までそぎ落としてしまったと言うことになるのであろうか。

 そもそもそのようなものは存在せずプラス1.5%までの上昇要因が、原油価格の下落でそげ落ちたと見る方が自然ではなかろうか。ここから物価の前年比がプラス幅を拡大したとしても、それは「需給ギャップの改善など基調的な物価上昇圧力」というより、原油価格の下げ止まりによる影響が現れたとみて良いのではなかろうか。

 「需給ギャップの改善など基調的な物価上昇圧力」というものを完全に否定するわけではない。現在の日銀の政策スタンスはこれが基になっていることを考えれば、日銀としてもこの部分を考慮しないわけにはいかないであろう。しかし、現実の物価動向の説明は「需給ギャップの改善など基調的な物価上昇圧力」なるものを除いて説明したほうがすっきりはしまいか。
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by nihonkokusai | 2015-05-20 09:31 | 景気物価動向 | Comments(0)

日銀短観と市場の反応

 4月1日に発表された日銀短観(3月調査)では、 ヘッドラインとして注目される大企業製造業DIがプラス12ポイントと、前回の2014年12月調査のプラス12ポイントからは横ばいとなった。大企業製造業DIの3か月先の予測はプラス10ポイントと2ポイントの悪化を示した。

 大企業非製造業はプラス19と2ポイントの改善となっていたが、3か月先の予測はプラス17とやはり悪化を示した。

 大企業全産業の2015年度の設備投資計画(含む土地投資額)は前年度比マイナス1.2%となり、全規模合計では前年度比5.0%のマイナスとなっていた。企業経営者は景気の先行きについてかなり慎重な見通しとなっているようである。

 大企業製造業DIは株式市場のトレンド変化を示すことがある。足元が予想を下回っただけでなく、先行きの悪化も意識されてか、1日の東京株式市場は下落し日経平均は一時19000円を割り込んだ。この株安を受けてドル円も下落し、債券先物は反対に買い戻されていた。

 2013年4月4日の量的・質的緩和政策の決定からまもなく2年が経過しようとしている。2014年10月の量的・質的緩和政策の拡大もあり、過剰流動性相場となり、株や債券が買われ、株高に絡んで円高調整が進行した。しかし、日銀の物価目標は達成できる見込みがなくなっているばかりか、企業の景況感も短観を見る限りかなり慎重になっている。

 日経平均は2万円手前で反落となった。2万円台に乗せるにはいったん調整をしておいてから再度チャレンジかとの見方もできるかもしれないが、日米欧の中央銀行の金融政策によって生み出された過剰な相場はいずれ修正を迎えることも予想される。

 実態経済と株価や金利が乖離すればするほど、いずれそれが修正されるときが来る。異常な状況に慣らされてしまうと異常さが感じられなくなる。新年度入りしたが、2015年度はそのあたりに注意を払う必要があるのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2015-04-02 09:46 | 景気物価動向 | Comments(0)

原油先物と消費者物価指数(日本と欧州編)

 欧州連合統計局(Eurostat)が発表した1月のユーロ圏CPI速報値は、前年同月比でマイナス0.6%となった。昨年12月はマイナス0.2%となっており、マイナス幅が大きくなった。このマイナス0.6%は、2009年7月に並ぶ過去最大の物価下落率となった。この今年1月の物価下落は原油先物の下落による燃料価格の急落が背景にあった。

 ユーロ圏は2009年6月から10月にもインフレ率がマイナスとなっているが、これは日本のCPIでも同様の動きがあった。このとき、何が起きていたのか。

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 2008年1月18日に証券化商品を保証していたモノラインと呼ばれた金融保証会社が資本調達難から格下げされ、証券化商品全体の価格下落に拍車をかけた。世界的な株安連鎖により市場は混乱に陥った。3月14日に証券化商品を大量保有していた投資銀行のベア・スターンズが資本調達の失敗から資金繰りに行き詰まり、FRBの資金支援のもとJPモルガン・チェースに買収された。

 このタイミングでなぜか商品市況が急騰していたのである。中国やインドなど新興諸国を中心とした世界的な需要増加によるものとの見方もあった。しかし、原油価格は2008年7月11日につけた147.27ドルをピークに急落していた。

 サブプライム問題を起因としての米大手金融機関の巨額損失に加え、米政府系住宅金融機関の経営不安まで出てきて、金融不安が再び広がりを見せ、金融株が大きく売られていた際に、原油先物が上昇基調を続けていた。米金融株と原油先物のチャートを見ると綺麗に逆相関となっていた。ヘッジファンドなどが米金融株売り、原油先物買いといったポジションを大きく組んでいたのではないかとの見方があった。そのポジションのアンワインドが7月以降起きたとされる。

 原油先物は2008年末には40ドル近辺にまで下落しており、ピーク時から三分の一以上に下落した。日本のコアCPIは2008年7月に前年比プラス2.4%と軽く現在の日銀の物価目標を超えていた。それが1年後の2009年7月には前年比マイナス2.2%となり、8月にマイナス2.3%となっていた。原油価格の急落により、前年比で大きく落ち込むことになった。日本と同様のことが2009年6月から10月にかけてユーロ圏でも発生し、そのときに過去最大の物価下落率をユーロのCPIでも記録していたのである。

 ちなみに原油先物は2008年2月に40ドル近辺となり、2009年2月には80ドル近くと倍になっているが、2009年2月の日本のコアCPIはマイナス1.2%に止まっている。確かにマイナスのピーク時からはマイナス幅は縮小しているが、原油価格は倍になってもそれほど大きくマイナス幅は減少していない。

 現在の日銀は原油価格が下げ止まり、再び上昇すればCPIは物価目標達成も可能としているが、2008年から2009年のあたりの動きからは見てそれはあくまで期待に過ぎない。

 今回の原油先物の下落は、ヘッジファンドなどの仕掛け的な動きも入っていた可能性はあるが、2008年のときのような仕掛け的な動きとはまた異なる。サウジアラビアなどがシェールに対抗して値を上げないような政策をとっているためとされる。ヘッジファンドが仕掛けていれば、そのアンワインドも起きるという期待もあろうが、現在の原油価格はそうではなく、どの程度の価格低下に耐えられるかを試しているような状況にある。その急激な反動はそれほど期待しにくいのではなかろうか。

 そうなると一時の相場の反動による影響を受けていた2008年から2009年にかけての状況と現在は異なる。そしてCPIそのものも2008年当時は日本のCPIのほうがより影響を受けていたが、前年比で見る限り今回はユーロ圏のほうが影響力が大きいように思われる。日本についてはアベノミクスによる円安により、物価がある程度支えられていた面もあったのかもしれない。このあたり、ユーロ圏と比較した分析も必要かもしれない。

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by nihonkokusai | 2015-02-03 09:45 | 景気物価動向 | Comments(0)

妖怪、油すましとサウジアラビア

 「妖怪、油すまし」と言えば、全身に蓑を羽織った妖怪で、峠に突如出現して通行人を驚かせる。正体は油を盗んだ罪人の亡霊とされている。妖怪の噂話をするとその妖怪が現れることでも知られる。

 全身に蓑を羽織ったすまし顔の姿は、漫画「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する「油すまし」である。日本の妖怪と言えば民俗学者の柳田國男の著書などでも知られているが、その姿を思い浮かべるときには、水木しげるの妖怪画がいわゆるオリジナルとなっている。映画の「妖怪大戦争」などに出てくる妖怪も水木しげるの妖怪画がオリジナルである。

 妖怪といえば水木しげるであり、妖怪を取り扱う際にはそれが大きな壁となっていた。いわば妖怪の圧倒的なシェアを「ゲゲゲの鬼太郎」の妖怪たちが担っていたといえる。このためアニメで妖怪を取り上げたくても、それが難しかったのはこれが要因との説もある。しかし、その壁を打ち破ったのが、昨年ブームになった「妖怪ウォッチ」である。水木しげるの妖怪画に触れることがないようにしたゲームをまず仕上げ、それがアニメ化されて大ヒットとなったとされている。元々、日本人は妖怪好きであるらしい。

 好き嫌いに関わらず、日本人にとっても必要なのは「油すまし」ならぬ「油」である。原油に関しては日本でも秋田県や新潟県を中心に生産が行なわれているが、国内消費量は1%未満であり、国内消費量のほとんどは中東などからの輸入に依存している。

 その油というか原油価格がさらに値下がりしている。1月5日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)でWTI原油先物は2009年4月以来、約6年ぶりに50ドルの大台を割り込んだ。2009年には30ドル台にまで下げており、今回も40ドル割れもあるのではないかとの観測がある。

 1月5日の原油先物の下落の背景には、ロシアの生産増加とイラクの輸出増加計画などが指摘された。さらにサウジアラビアが、2月積みの欧州向け原油価格を大幅に引き下げ、米国向けも小幅に引き下げたことも要因とされた。ただし、アジア向けは逆に値上げをしている。もちろんこれは日銀の金融政策に配慮したわけではなく、サウジアラビアの原油戦略の一環といえる。

 今回の原油価格の下落の要因としては、このサウジアラビアによる原油戦略も指摘されている。米国を中心としたシェールガスへの対策が大きな要因となっている。米国ではシェールガス掘削ブームに乗り、2005年に国内消費の60%を占めていた外国産原油が2016年には25%まで減る見込みとされる。このシェールガスに対抗するには、原油価格を引き下げてもシェールガスの採算を取れなくする狙いもあるものとみられる。

 サウジアラビアは原油シェアを維持するために価格下落には目をつぶっているとの見方もある。さらに米国経済は順調に回復しているが、欧州や中国、さらには新興国、そして日本を含めて景気減速の懸念もあり、石油需要が減少するとの見方も原油価格下落の背景にある。

 水木ワールドで占められていた妖怪世界に、新手の「妖怪ウォッチ」が進入してきたように、それまでエネルギーとしては原油の占める割合が大きかったところに、シェールガスという新たな勢力が出てきた。サウジアラビアは生き残りをかけ、身を削ってまでもシェア維持に躍起になり、それが結果としてさらなる原油価格の下落の要因となっているのではなかろうか。

 そのサウジアラビアであるが、国王アブドラが王位を退く用意があると発言したそうである。91才という高齢であり、次期継承者は78才のサルマン皇太子が指名されており、もし国王が交代するとサウジの石油戦略が変わるのではないかとの観測も出ている。

 いずれにしても、WTIが50ドル割れとなれば、そこからせいぜい下げても40ドル割れ程度までとみられ、ここからの下落余地にも限りはある。原油安によるロシアなど産油国経済への影響も懸念はされているが、1998年のロシア危機の再来の可能性も現状は低い。むしろ世界経済にとっては原油価格下落による恩恵の方が大きいとみられる。いずれにしても原油価格の先行きは、戦略家ともされる「油すまし」ならぬサウジアラビアが握っていることは確かなようである。

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by nihonkokusai | 2015-01-07 09:10 | 景気物価動向 | Comments(0)

秋以降のCPIに注目

 8月29日に発表された7月の全国消費者物価指数(除く生鮮食料品)は前年同月比でプラス3.3%となった。日銀は消費増税がフル転嫁されればコアCPIの前年比は2.0ポイント押し上げると試算していることから、消費増税の影響を除くとプラス1.3%となる。

 日銀は2013年4月に、コアCPIの前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するため「量的・質的金融緩和」を導入した。コアCPIはこの異次元緩和を意識したかのように、2013年4月のマイナス0.4%から5月にはゼロとなり、その後順調に上昇し続け、2014年4月にプラス1.5%となったことでピークアウトした。消費増税の影響を除くと5月がプラス1.4%、6月と7月がプラス1.3%となっていた。

 黒田日銀総裁は8月1日の講演において、(消費者物価の)先行きについては、景気回復に伴って需給ギャップが改善する一方、エネルギーを中心とした輸入物価の押し上げ効果が減衰していくことから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみているとしている。

 7月のコアCPIは、エネルギーにより総合の上昇幅が縮小したものの、生鮮食品を除く食料や自動車保険料(任意)による拡大でカバーされた格好となった。8月の先行指標となる東京都区部の8月中旬速報はコア指数の前年比は前月と変わらずとなっており、これらは黒田総裁の見方を裏付けるものとなっていた。少なくとも夏場に1%を割り込むことはなさそうである。

 問題となるのは夏場以降となる。黒田総裁によれば、「その後は、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、2016年度までの見通し期間の中盤頃、すなわち15年度を中心とする期間に、2%程度に達する可能性が高い」と予想している。

 日銀の消費者物価の予想に関してはかなり精度が高いとされているが、その正確性はあくまで3か月程度先あたりまでの予想であり、その後不確定要因が入り込むと予想が違ってくる可能性がある。

 地政学的リスクによる影響、特にエネルギー価格などの変動による影響なども想定されるが、これは予想ができるものではない。これよりもむしろ、消費増税後の景気の見通しが日銀の想定通りになるのかどうかによって、物価の動向にも影響が出ることが予想される。

 消費増税による4~6月期GDPの大幅な落ち込みは、やや予想を上回るものではあったが、1~3月期の反動も大きいことである程度、想定されていたものであった。問題は7~9月期の回復の度合いである。

 29日に発表された7月の鉱工業生産指数速報は前月比0.2%上昇となり、2か月ぶりに上昇したものの、前月比1.0%あたりの予想を下回っていた。生産予測指数は8月が前月比プラス1.3%、9月がプラス3.5%の上昇となっていた。

 ここにきて気になるのが、欧州を中心とした長期金利の低下である。この背景にはウクライナや中東などの地政学的リスクとともに、欧州を主体としての物価の低迷にある。日本はアベノミクスによる急激な円高調整により、結果として物価には上昇圧力が加わった。ここからさらに一段と上昇するためには、さらなる景気回復も必要となろう、海外の長期金利の動きを見る限り、海外の景気動向が不透明となってきている。たとえECBが追加緩和を行ったとしても、それですぐに景気が回復し物価が上がることも予想しづらい。

 このように秋以降の物価の動向は不透明ながら、異次元緩和以降の日銀の強気の予想はほぼ的中している。となれば日銀の予想が正しかったとなる確率も高いように思われる。それでもその予想が外れるリスクも意識しておく必要もあろう。ただし、来年4月にむけて、たとえ2%の目標に達する見込みが立たなくても、CPIの大きな落ち込みでもない限りは、日銀が追加緩和に追い込まれるリスクはいまのところ低いと思われる。

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by nihonkokusai | 2014-09-01 09:50 | 景気物価動向 | Comments(0)

格安スマホによるCPIへの影響

 格安スマホとはドコモやAU、ソフトバンクなどの携帯電話・スマートフォンとは異なる。スマホはその料金体系からみると、2つのものがセットになったものとなっている。SIMカードと端末本体である。端末だけでは通話はできず、回線を使ったネットの利用もできない。そこに固有のID番号が記録されたICカードを指すことによって自分の番号での通話が可能となる。つまり、端末が違ってもSIMカードさえ利用できれば通話や回線を利用したネットが可能になる。

 番号を変えずに機種を変更したり携帯会社を変えることができるのは、このSIMカードの情報があるため。携帯電話の料金設定もSIMカードにその情報が入っている。携帯料金はこのSIMカードの利用料金というべきものであり、だから別に端末の料金がかかってくる。

 このSIMカードと端末を組み合わせれば携帯電話やスマホが完成する。そのSIMカードを販売する業者が現れた。それが仮想移動体通信事業者、MVNOである。携帯電話Sなどの移動体回線網を自社では持たないものの、実際に保有する他の事業者から借りて自社ブランドで通信サービスを行う事業者のことである。ドコモなどから回線を借りて、それを割安で販売する業者が出てきた。もちろんそこにはデータ量の制限などがつくものの、ひと月1000円以下の料金が出てきた。MVNOによって料金も買われるが、私の利用しているものはひと月900円程度で、1ギガ分利用できる。メールやネットなどを中心とした利用であれば、この容量で十分ではないかと思われる。さらにIP電話ならばこれでも通話が可能(別途IP電話の契約は必要)。

 SIMカードとともにもうひとつ必要なのが端末である。SIMカードを使うことができる端末は、海外ではあったものの国内ではほとんどなく、あったとしてもかなり高価なものが主流であった、ところがSIMカードの登場とともに、それを使える割安な端末も出てくるようになった。安いものでは1万円台からあるが、格安スマホはこの端末の分割料金を込みで、料金の設定を3000円程度で横並びしている。これは端末の料金を2年間で分割し、毎月1500円程度の支払とし、そこにSIMカードを使った通話とネット接続の料金1500円程度がプラスされる格好となる。家電量販店ではこのSIMフリーの端末とSIMカードをセット販売にしており、単体では買えないような仕組みにしている。端末の2年間の分割払いがすめば、毎月の料金はSIMカードの利用分だけとなる。

 端末の料金とセットでも毎月3000円程度(2年後はさらに安くなる)に収まれば、通常の携帯電話などに比べてかなり割安となる。ただし、この格安スマホにはiPhoneはない。iPhoneもフリーSIMタイプのものがあるが、5Sで7万円近くから9万円近くする。これでは分割しようが、なかなか割安とはいえない。

 スマホはiPhoneのシェアが大きく、その牙城を崩すことは難しい。格安スマホも一時的なブームになっているかもしれないが、そのシェアはまだまだ大きくはない。このため、格安スマホの登場で消費者物価指数への影響が出るわけではない。そもそもCPIの携帯電話料金は契約数の多い3事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)別に事業者が消費者に提供しているプランの中から、原則として利用パターンごとに消費者にとって最も安いプランを選定している。ということは、ドコモなどの料金体系の変更などによる影響が大きく、現状は格安スマホの影響はまったくないことになる。しかし、格安スマホの登場で携帯料金が下がるようなことがあれば、CPIにも影響が出ることは考えられる。

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by nihonkokusai | 2014-08-17 12:58 | 景気物価動向 | Comments(0)

今後の物価上昇シナリオも準備

 8月13日に4~6月期の実質GDP一次速報が発表された。前期比年率でマイナス6.8%減となり、予想されたほどの落ち込みとはならなかった。ただし、消費増税前の駆け込み需要の反動で個人消費が大きく落ち込んだ。特に家計最終消費支出(実質)の落ち込みはマイナス5.2%と大きかった。

 名目のGDPは前期比年率でマイナス0.1%に止まっており、駆け込み需要の反動とともに、消費増税そのものによる物価への影響も加味する必要がある。消費増税の影響によりGDPデフレーターは季節調整したものでプラス1.7%、原系列でプラス2.0%となった。国内需要デフレーターはそれぞれ1.4%、2.4%となった。消費増税の影響は当然加味されているものの、数字上からは日銀の物価目標に近いものとなっている。

 1~3月期の反動もあったことで、消費増税による景気への影響を知るには7~9月期の数字をチェックする必要がある。来年10月の消費税率10%への引き上げの重要な判断材料としても7~9月期のGDPが挙げられている。その足元景気に関しては、やはり13日に公表された日銀の金融政策決定会合議事要旨(7月14日・15日分)も参考になろう。

「景気の先行きについて、委員は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとの見方を共有した」(決定会合議事要旨より)

 注目される個人消費に関しては次のような記述もあった。

「駆け込み需要の反動減について、委員は、各種のデータや企業からの聞き取り調査には強弱様々なものがあるが、全体としてみれば概ね事前の想定の範囲内となっているとの見方で一致した」(決定会合議事要旨より)

 ただし、次のような発言も出ていた。

「複数の委員は、企業からの聞き取り調査では想定の範囲内との声が多く聞かれる一方、各種のデータには大きめの反動減を示すものもあるとの認識を示したうえで、これには聞き取り調査の対象が大企業中心であることが影響している可能性があると指摘した。」(決定会合議事要旨より)

 7月の消費者動向調査でも消費者心理は3か月連続で改善を示している。消費増税だけで景気そのものが大きく冷え込むことは考えづらい。日銀は楽観的な見方をしているようにも見えるが、いまのところは日銀の見方が正しいように思われる。

 決定会合議事要旨では物価に関して次のような記述があった。

「ある委員は、コスト転嫁が難しかったとみられる中小企業・非製造業でも販売価格判断DIが1991年調査以来の「上昇」超になるなど、企業の価格設定行動は付加価値を高めながら販売価格を引き上げる方向に変化し始めているとの見方を示した」(決定会合議事要旨より)

 消費増税の影響を受けてもなお景気回復の基調が維持されれば、このような動きは継続してくることも予想される。暫くの間、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみてプラス1%台前半で推移するというCPIは、先行きさらに高まっていくという日銀のシナリオ通りとなるのか。その日銀の想定通りになった際、長期金利はどう動くのか。このあたりのシナリオも準備しておく必要があるのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2014-08-14 09:37 | 景気物価動向 | Comments(0)

消費増税の影響は7~9月期を確認すべき

 7月30日に発表された4~6月期の米国の実質GDPは、年率換算で前期比4.0%増となった。予想は3%近辺であったことで予想も上回った。米国では1~3月期が深刻な寒波の影響でマイナス成長に陥ったの反動が大きかったとみられる。その1~3月期のGDPもマイナス2.9%からマイナス2.1%に修正された。

 4~6月期はGDPの約7割を占める個人消費が2.5%増と、前期の1.2%増から大きく伸び、民間設備投資も5.5%増と、前期の1.6%増から拡大した。輸出も9.5%増と二期ぶりのプラスとなった。

 日本の4~6月期のGDPは8月13日に発表されるが、30日に発表された6月の鉱工業生産指数が前月比3.3%低下となったことを受け、民間エコノミストの推計では7.1%減との予想となった。これは消費増税の駆け込みによる反動とみられ、1~3月期の実質GDPは前期比で6.7%増となっていたが、その伸び以上に減少するとの予想となっている。

 前回の1997年の消費増税の際は、1~3月期に3.0%増、4~6月期に3.7%減となっており、このときよりも振れ幅が大きい。ただし、このときと現在は経済を取り巻く環境が大きく異なる。1997年はバブルの後遺症ともいえる不良債権処理の遅れで金融不安が拡がりつつあった。まさに暗い状況となっていた。企業の破綻が相次ぎ、7月4日に東海興業、7月30日に多田建設、8月19日大都工業、9月18日ヤオハンが会社更正法の適用申請を行った。11月に入ると金融システム不安が一気に表面化し、3日に三洋証券が会社更正法適用を申請、17日には都銀の北海道拓殖銀行が経営破綻し北洋銀行への営業譲渡を発表した。さらに24日には証券大手の山一證券が自主廃業を届け出、26日には徳陽シティ銀行が分割譲渡と金融機関が相次いで破綻したのである。

 これに対して現在は、欧州の信用不安が後退し、サププライム問題から、リーマン・ショック、さらには欧州の信用不安と、立て続けに起きた世界的な金融ショックがやっと沈静化してきた。そのタイミングでアベノミクスが登場し、急激な円安・株高がおきてムードが一変した。2020年の東京オリンピックの開催も決定し、日本経済には明るいムードが出始めていた。消費増税前の駆け込みが一気に入ったわけだが、それだけ個人消費が回復しつつあるとも言える。このためその反動も大きくなったともいえる。消費増税による影響が果たしてどの程度あったのかは、4~6月期の数値より、7~9月期のGDPなどを確認する必要がある。

 その意味では米国経済の回復基調は心強い。FRBも予定通り10月にもテーパリングを終了し、来年4~6月あたりでの利上げも予想される。その前にイングランド銀行の利上げもあるとみられ、正常化も意識されやすい。急速な景気回復などを期待するよりも、この正常化が徐々に進むほうが、景気回復そのものも長続きするとみられる。日本だけが消費増税の影響で景気が悪化することは考えづらい。仮に日本だけが景気悪化となれば、それは消費増税の影響というよりも、別な要因による可能性を意識する必要があろう。


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by nihonkokusai | 2014-08-06 19:07 | 景気物価動向 | Comments(0)

パソコンから見た失われた15年

 自宅で使っているパソコンを買い替えた。これまで使っていたのはウインドウズのデスクトップのパソコンで、OSはXPではないが、そのあとのVISTAであった。最近になって動作が鈍くなったり、動かなくなるなどの症状が出ていたが、ついにそのパソコンから異音が出たことでハードディスクの寿命と決断して、新たなパソコンを購入した。

 これまでもデスクトップを使っていたので、今回も同様にデスクトップにした。OSは考慮した結果、最新のウインドウズ8.1とした。安定性ではウインドウズ7といわれるが、個人で使用することもあり、使い勝手より新しいものを選択した。

 故障しかけたVISTAのパソコンを購入したのは6、7年前かと思う。CPUなどの性能は劇的に向上しているのかもしれないが、ネットやもの書きに使う分にはそれほど体感的な速度に変わりなく、値段も当時とは大きな差はなかったように思う。

 買ってみてから思ったが、果たして今後もこのようなデスクトップのパソコンに需要はあるのであろうか。XPの乗り換え需要でパソコンが一時的に売れたようだが、大きな箱型のデスクトップはいずれオフィスからはなくなってくると思われる。もちろん画像処理能力が必要とされる業務や、3Dゲームなどをしている個人ユーザーにはデスクトップが必要とされるかもしれない。しかし、表計算やワードなどを中心に使う業務には、それほどの処理能力は必要ない。動画も鮮明な4Kの映像を求める人はまだ一部であろう。

 それならば現在のタブレットでも十分にその処理能力はある。ただし、画面が小さい、キーボード、マウスが使えないとの不便さがある。もちろんノートパソコンという選択肢もあるが、ディスプレーとキーボード、マウスが一体化し、そこにタブレットを接続すると通常のパソコンのような業務ができるようなコンポーネントが普及してくる可能性はある。

 iPhoneの登場をきっかけに、世界的に一気に普及した現在のスマホやタブレットは少し前のデスクトップに匹敵するかそれ以上の性能を持っており、まさにパソコンである。パソコンの普及もNECの8001のように個人から始まり、性能が向上し、NEC9001のような業務用が誕生した。スマホやタブレットも同様に個人に普及し、いずれ業務用にも広がっていくことが予想される。ちょうどいまがその端境期にいるのではなかろうか。

 パソコンが個人に普及したのがウインドウズ95が登場した1995年あたりであるが、その前に1992年に発売されたウインドウズ3.1のヒットが大きな起爆剤となっている。世の中にパソコンが普及を始めたころ、日本では政策金利が実質ゼロに近い状態となっていた。日本で失われた15年とされている期間は、ある意味、パーソナルコンピューターの普及期にあたっている。

 もちろんパソコンの普及がデフレの主要因であると指摘したいわけではない。日本だけがそのマイナスの影響を受けたとは考えづらい。日本企業もパソコンの普及により恩恵を受けたところも多い。しかし、結果としては美味しいところは米国、韓国、中国などに持っていかれたような気もする。失われた15年の間に、本当は日本で何が失われたのか。パソコンなどひとつのものに焦点をあてて考察するとまた別の理由が見えてくるかもしれない。少なくとも日銀の緩和が足りなかったからというのは、まったく理由の説明にはなっていないことは確かであろう。

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by nihonkokusai | 2014-08-06 09:26 | 景気物価動向 | Comments(2)

ワールドカップと金融危機

 6月12日からブラジルでワールドカップが開催される。開幕戦となるブラジル対クロアチアの審判は、日本の西村主審と相樂亨副審、それに名木利幸副審の3人が務めることになったそうである。まさに快挙といえるが、もちろん日本代表選手にも活躍してもらい、まずは決勝トーナメントに進んでほしい。

 それはさておき、今回のワールドカップはブラジル大会。次回は2018年にロシアで開催されるが、前回は2010年の南アフリカ大会であった。BRICSと呼ばれた5か国のうちの3か国での連続開催というのは、新興国の発展の勢いを物語るものかと思われる。

 前回大会の南アフリカ大会が開催されたのは2010年6月から7月にかけてであった。日本では探査機「はやぶさ」が地球に帰還したタイミングでもあったが、このときすでに欧州の信用不安が吹き荒れていた。ワールドカップと世界経済には直接の影響はないと思われるものの、その年に起きた世界経済に関わる出来事を追いながら、過去のワールドカップの歴史を振り返ってみたい。

 戦後初めて開催されたのは1950年のブラジル大会、1954年スイス、1958年スウェーデン、1962年チリ、1966年イングランド大会と続く。1970年はメキシコ大会、1974年は西ドイツ大会。1978年はアルゼンチン大会。

 1982年はスペイン大会となったが、この年、メキシコ政府は1000億ドルの対外債務は支払い不能である旨公表し、これをきっかけに世界的な債務危機が引き起こされた。

 1986年はそのメキシコでの大会となったが、その前年の1985年にプラザ合意があり、ドルは急落した。日本ではバブルが発生しつつあった時期に重なる。

 1990年はイタリア大会。前年の1989年11月にベルリンの壁が崩壊し東西ドイツは統一に向かい、12月にはマルタ会談により冷戦が終結した。日本のバブルが崩壊した年でもあった。

 1994年の開催地は米国。

 1998年はフランス大会。5月にロシアの通貨危機が発生し、LTCMが9月に破綻に追い込まれた。日本のデフレがスタートしたのはこの頃とされている。

 2002年は日本と韓国での開催。

 2006年はドイツ大会。この年あたりからアメリカの住宅価格が下落に転じサブプライム・ローン問題が発生した。それが2008年のリーマン・ショックと呼ばれるような世界的な金融経済危機の引き金となった。

 2010年は南アフリカ大会。欧州の信用危機が発生した年であった。

 そして今回の2014年、ブラジル大会である。世界的な金融経済危機は去ったが、日米欧の中央銀行は危機に際して、過去に例のない手を打ってきた。日銀はデフレ対策という名のもとに、2013年に異次元緩和を決定した。ECBもいまだ追加緩和を行ってきている。果たしてこの年に何が起きるのか。過去には大きな危機等もない開催年もあったが、今年はどうであろう。

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by nihonkokusai | 2014-06-12 09:25 | 景気物価動向 | Comments(0)
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