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カテゴリ:景気物価動向( 296 )

調査統計不正問題での政府統計への信頼回復は容易ではない

 国会での予算審議でも取りあげられている厚生労働省の毎月勤労統計での不正問題であるが、この問題で最も危惧すべきものは国の統計に対する信認の低下となろう。

 日本経済新聞社とテレビ東京による25~27日の世論調査で、政府統計の信頼性を聞いたところ「信用できない」が79%で「信用できる」は14%となっていたそうである。

 たとえば、中国が発表している統計では、政府からのバイアスが掛かっているのではとの疑惑もあり、それがどの程度信用できるのかという疑問符が付いていた。これに対して、日本政府の発表する統計の数字には、そのようなバイアスは掛かっておらず、正確性も高いと漠然と信じられていた。

 私は以前、金融市場に関わる統計に関する本を書いたことがある。すでに廃刊となってしまっているが「ネットで調べる経済指標」という本である。ここには厚生労働省の毎月勤労統計調査についても触れていた。

 「毎月勤労統計調査とは、賃金、労働時間及び雇用の変動を明らかにすることを目的に、厚生労働省が全国の常用労働者5人以上の事業所を対象として毎月実施しています。賃金(給与)や労働時間、出勤日数、労働者数などの動きを毎月調べている調査です。調査結果は、景気動向指数や月例経済報告などの景気判断の基礎資料として使われています。「マイキン統計」とも呼ばれているそうです。」(「ネットで調べる経済指標」より引用)

 つまり毎月勤労統計での不正となれば、景気動向指数や月例経済報告などの景気判断の基礎資料にも影響を与えることになる。そうなると政府の統計全般への信認問題に波及する可能性もある。毎月勤労統計での不正のようなことが他の統計でも行われていたのではないかと疑心暗鬼にもなりかねない。

 特に政府や日銀などが出している統計に対しては、当然ながら正確性が求められる。その正確性に疑問符が付くと、統計全般への信認失墜にも繋がりかねない。

 通貨の信認にしてもそうだが、いったん失われてしまうとそれを取り戻すことは容易ではない。今回の厚生労働省の毎月勤労統計での不正問題をきっかけとした政府の統計への信認を回復させるためには、かなり思い切った改革も必要となろう。


by nihonkokusai | 2019-02-07 09:32 | 景気物価動向 | Comments(0)

実感なき景気回復から、実感ある景気減速に

 「アップルが29日発表した2018年10~12月期決算は、売上高が前年同期比5%減の843億1000万ドル(約9兆2200億円)だった。主力商品である「iPhone」の中国販売が想定よりも落ち込み、9四半期ぶりに前年実績を割り込んだ。19年1~3月期も前年同期比で減収を予想しており、不振が長びく可能性が出てきた」(30日付日経新聞電子版)。

 iPhoneの中国における販売の低迷の要因としては、米中の貿易摩擦による影響も大きかったとみられる。しかし、スマートフォンとしては高額なiPhoneへのニーズそのものが後退していた可能性がある。

 中国国家統計局が21日に発表した2018年の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除いた実質で前年比6.6%増となり、天安門事件の影響で経済が落ち込んだ1990年の3.9%増以来、28年ぶりの低水準となっていた。この景気減速もあっての高額なiPhoneへの買い控えが起きていたのではなかろうか。

 画像処理半導体エヌビディアは2018年11月~19年1月の売上高を2割下方修正していた。こちらには仮想通貨バブルはじけたことも要因として指摘されているが、サーバーなどへの投資そのものが手控えられていることも要因とされている。

 半導体景気が失速したことによって、韓国の2018年のGDPも3年ぶりの減速となり、2012年以来、6年ぶりの低水準となった。ハイテク投資の落ち込みは日本経済にも少なからず影響をもたらすことが予想される。

 iPhoneの地域別の売り上げでは中国で27%も減ったが、日本でも5%減少していた。今後は日本で端末と通話料金の分離が進むとされ、通話料金が下がれば、端末の実質負担が大きくなる可能性がある。そうなると10万円もの携帯を2年おきに乗り換えるといったインセンティブは低下してくる可能性がある。景気が後退してくればなおのことになるのではなかろうか。

 半導体などのハイテク需要は個人向けだけではなく、法人企業向けも大きいが、こちらも景気動向に大きく左右される。米中の貿易摩擦が景気減速要因となっているとは思うが、その影響だけでなく、世界経済そのものが減速傾向にあるとみていた方が良いのではなかろうか。実態なき景気回復から、実態のある景気減速に移ってくる可能性も意識しておく必要がありそうである。


by nihonkokusai | 2019-01-31 10:03 | 景気物価動向 | Comments(0)

毎月勤労統計問題からみた政府統計の信用改善策

 総務省は24日、政府が重要と位置づける56の基幹統計のうち4割にあたる22統計で作成に誤りがあったと発表した。厚生労働省の不適切な統計調査の発覚をきっかけに、政府全体に広がる統計現場のずさんな体制が明るみに出たと日経新聞が伝えている。

 人手が足りなかった、予算が少ない等々の理由もあったかもしれないが、特に公的な統計の誤りの影響は各所に影響が及ぶ。

 毎月勤労統計の不適切な調査をめぐる問題が日銀の景気分析にも影を落としているとこちらも日経新聞が伝えている。日銀が独自に公表している需給ギャップや企業向けサービス価格指数でも、同統計を活用しているためだが、これらは日銀の金融政策の判断材料となりうるものとなる。

 金融市場では、たとえば中国の統計は政府の意向も絡んでおり、正確性に欠くといった認識が強い。それに対して日本では特に公的な統計はしっかりしているとの認識が強かった。しかし、その信頼性に疑問が生じつつある。

 以前に下記のような記事が日経新聞から出ていた。

 「日本の現状を映す統計を巡り、内閣府と日銀が綱引きしている。国内総生産(GDP)など基幹統計の信頼性に日銀が不信を募らせ、独自に算出しようと元データの提供を迫っているのだ。内閣府は業務負担などを理由に一部拒否しているが、統計の精度をどう高めるかは、日本経済の行く末にも響きかねない大きな問題をはらんでいる」(2018年11月13日付日経新聞)

 民間企業が総務省に対して元データの提供を迫ったのではなく、やはり日本の基礎統計となるものを算出している日銀からの要望を何故、頑なに総務省は拒否していたのか、この記事を読んだときに解せなかった。実はこの要因も厚生労働省の不適切な統計調査が絡んでいたとみられる。

 「日銀の不信には一定の根拠がある。例えば厚生労働省が毎月まとめる賃金に関する統計。今年1月に統計手法を変えたところ前年同月比の伸び率が跳ね上がった。これには専門家から異議が噴出。統計委員会でも俎上に載り、この賃金データを基にまとめる内閣府の報酬統計も修正を迫られた。」(2018年11月13日付日経新聞)

 「例えば」となっていたが、総務省としても厚生労働省のデータに疑問を持っていた可能性がある。しかし、それでも何故、日銀に元データの提供をしなかったのか。同じ統計分析のプロ同士が協力して、疑問点を解消し、精度を高めるといった工夫はできなかったのであろうか。総務省と日銀という組織の壁みたいなものが邪魔をしていたのか。

 特に公的な統計については、例えば総務省と厚生労働省、さらには日銀なりがそれぞれデータを共有して相互チェックが可能なようにすることはできないものか。今回の問題は単に予算や人を増やすことで解決できような問題ではないようにも思うのであるが。


by nihonkokusai | 2019-01-26 11:18 | 景気物価動向 | Comments(0)

毎月勤労統計の不適切調査問題で、日本の統計への信頼が揺らぐ事態に

 厚生労働省が賃金や労働時間を示す毎月勤労統計調査で不適切な調査を続けていたことが発覚した(16日付日経新聞)。

 厚生労働省の毎月勤労統計調査で賃金上昇率が高めに出ている問題はすでに昨年夏あたりにエコノミストなどから指摘されていた。

 9月29日付けの西日本新聞によると、「1月に統計の作成手法を変更した影響で数値が高めに出ていることや、公式統計値より実勢に近い「参考値」を十分に周知できていない現状を踏まえ、公表資料の拡充や発表手法の改善を検討する。公式統計値の補整はしない方向。有識者らが公的統計の在り方を検討する政府の統計委員会(委員長・西村清彦政策研究大学院大学特別教授)に同日報告、了承された」とある。

 ところが、その後も同統計の正確性を疑問視する声が根強かったため、総務省は独自の分析作業を継続。調査対象としている事業所の従業員規模ごとの数値を精査したところ、500人以上の大規模な事業所群で不自然な数値の上振れが見つかり、同12月10日に厚労省側に照会した。厚労省側は同13日、統計委の西村清彦委員長も交えた非公式会合で、東京都の500人以上の事業所で抽出調査をしていたと「告白」した(1月15日付西日本新聞)。

 毎月勤労統計調査では、500人未満の事業所については対象事業所を厚生労働省がサンプリング(抽出)して実施しているが、500人以上の事業所は「全数」調査することになっている。しかし「実は、全数調査じゃない」ことが判明したのである。  

 「東京都で調査対象となる約1400のうち、3分の1しか調べていなかった。中小企業に比べれば賃金の高い大企業が抜けていたため、2004~2017年は実際よりも統計結果の賃金が低くなっていた(日経新聞)」

 厚労省が本来の調査方法に近づけるための数値補正を昨年1月に始め、事業所数が少ない前年の数値とそのまま比較した同月以降の賃金上昇率が過大になっていたと考えられる(西日本新聞)。

 つまり、2018年分から本来の結果に近づける加工を施したことになる。これは国が発表する統計への信頼が揺らぐ事態といえよう。さらにこの統計は雇用保険や労災保険の給付額計算の根拠となっていたことから、雇用保険などの差額をさかのぼって支給することによる追加の支給額に加え、その事務にかかる費用なども含め全体の費用は合わせて795億円に上るとされている。また、GDP統計などにも影響が及ぶ可能性がある。

 これは氷山の一角なのか。「実は、全数調査じゃない」との厚生労働省からの説明を受けて、元日銀副総裁でもある西村清彦教授が「重大なルール違反だ」と批判したことが、今回の問題発覚に至ったとされている。日本の統計の信頼が大きく揺らぐ前に、西村教授が進めている抜本的な公的統計改革を行う必要があろう。

 西村教授は今回の件に関するNHKのインタビューで、「政府の統計調査全体に対する信頼が落ちることを最も心配している。統計調査は政策の基本だから、きちんとした調査をしないかぎり、きちんとした政策はできない」と指摘している。


by nihonkokusai | 2019-01-17 10:43 | 景気物価動向 | Comments(0)

米国の長期金利の3%割れと原油先物の50ドル割れの背景は共通、世界経済の減速の兆候

 11月29日の米国債券市場では、28日のパウエルFRB議長の発言を受けて、早期打ち止め観測が強まり、米10年債利回りは一時3%を割り込んだ。米長期金利の3%割れは9月18日以来となる。

 やや腑に落ちないのは、28日の米国債券市場の動きであった。同日の米株式市場では、パウエル議長の発言を受けて利上げ打ち止めが近いとの思惑が広がり、ダウ平均は素直に617ドル高となっていた。しかし、同日の米国債券市場では何事もなかったかのように3.06%と前日比とほぼ変わらずとなっていたのである。

 この日は原油先物も大きく下落しており、米債は買われていてもおかしくなかったが、買われなかった。ところが、29日の東京時間に米債はあらためて買い進まれ、29日の米国時間の早朝に一時3%割れとなった。結局、この日の米10年債利回りは3.03%と前日の3.06%から低下した。

 この米債の動きをみると10年債利回りで3%が大きな抵抗線になっているようにみえなくもない。ただし、29日に発表されたコアPCEデフレータが予想を下回るなど、外部環境は国債の買い方優位にみえる。3%はそれほど強い抵抗線ではなくなるのではなかろうか。

 そして、29日にはサウジのエネルギー産業鉱物資源相がサウジ単独での減産は行わないと表明したことや、28日に発表されたEIAの週間在庫統計で米原油在庫が予想以上に増加したことから、原油先物の指標となっているWTI先物は一時50ドル割れとなった。

 先日、チャートの月足ベースでみると10月と11月のWTI先物の下落は、2014年に100ドルを超えていたWTIが急落し、2015年1月に50ドルを割り込んだ相場の当初の動きにも似ていると指摘した。このときの調整は2016年1月あたりまで続き、WTI先物は30ドルを割り込んでいる。

 チャート上からも50ドルは心理的名節目となっているとみられる。これに対して、産油国であるロシアのプーチン大統領が28日に原油価格について同国としては60ドルなら満足できるとの見解を示した上で、「OPECとは連絡を取り合っており、必要に応じて共同の取り組みを続ける用意がある」と言及した(ロイター)。

 このプーチン発言等を受けて、来週開かれるOPEC総会で協調減産が決定されるのではないかとの期待が広がり、原油先物に買い戻しが入って、29日のWTI先物1月限は結局、1.16ドル高の51.45ドルとなった。

 原油先物価格のここにきての下落は、トランプ大統領が原油価格は高過ぎると表明したことも一因となっていた。そのトランプ大統領はG20で予定していたロシアのプーチン大統領との会談を中止すると明らかにした。ロシアがウクライナの艦船を拿捕した事件が背景にあるそうだが、原油価格を巡っても米国とロシアの対立色が見え隠れしている。

 注意すべきは、FRBの利上げ早期打ち止め観測による米長期金利の一時3%割れと、原油在庫増などを受けたWTI先物の一時50ドル割れの要因としては、米国を含む世界経済の景気減速懸念があることである。

 あくまでいまのところ懸念ではあるものの、世界経済の減速の兆候が経済指標等に現れてくれば、この流れを人為的に止めることは難しくなる。


by nihonkokusai | 2018-12-01 10:28 | 景気物価動向 | Comments(0)

石油先物価格が急落、世界経済の減速懸念も背景に

 13日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物相場は12日続落となった。12日続落は過去最長の模様。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)12月物は前日比4.24ドル安の1バレル55.69ドルで引けた。WTI先物の1日の下落率としては、ここ3年で最大となったようである。

 下落要因はさておき、チャートから見た、いわゆるテクニカルによる分析からは、これだけの下げはそうそう起きるものではない。仕掛け的な売りも当然入っていようが、買い方の投げが主要ともいえそうな動きとなる。

 13日の大幅下落の要因としては、減産を検討しているサウジアラビアなどに対して12日に米国のトランプ大統領が減産しないよう要求し、「原油価格はもっと低いはず」と主張したことがひとつの要因とされた。

 また、OPECが13日発表した月報で、世界経済の減速や非加盟国の予想以上の増産により2019年には供給過剰になる可能性があると指摘したことも下げ要因になった。

 それにしてはWTIの4ドルもの下げというのは、下げ方が大きすぎると言える。チャートを意識したテクニカル的な売りも入っていたと推測される。

 ただし、OPECも指摘していたように中国を主体とした世界的な景気減速観測もあることで、買い方の不安を助長させて、下げが加速された面もあったかもしれない。

 WTIが60ドルを割り込んだことで、チャート上からは下値が見えなくなってきた。上昇相場の出発点となった30ドル台あたりまで下落する可能性もチャート上からはありうるか。

 もちろんWTIで70ドル台を維持させたいとするサウジアラビアなどが、あらためて減産等を行ってくる可能性はある。しかし、それはあくまでそれなりの需要があることが前提となる。現実に世界経済が後退局面となれば、原油価格を高値で維持することは難しくなる。


by nihonkokusai | 2018-11-15 09:39 | 景気物価動向 | Comments(0)

原油先物価格の上昇トレンドが崩れる。世界的な景気減速の兆候なのか

 原油先物のベンチマークといえるWTI先物のチャートをみてみると、今年7月3日に75ドル台まで上昇したあと調整売りが入り、8月中旬に65ドル近辺まで下落した。これには米国による対中追加関税措置の発動なども影響していたと思われる。中国が米国産原油に関税を課すことなどへの懸念も出ていた。

 しかし、その後は米国株式市場の上昇に歩調を合わせるような格好となり、原油先物もじりじりと回復し、WTI先物は70ドル台を回復した。10月3日に77ドルに接近したところでピークアウトした。米国株式市場のダウ平均も10月3日に27000ドルに接近したところで同じくピークアウトしている。

 その後のWTI先物はダウ平均と同様に下落し、10月23日に66ドル台に下落した。チャート上からは、このあたりが正念場となっていた。8月につけた65ドル近辺を大きく割り込むようであれば、上昇トレンドがいったん崩れる格好となる。

 上記は10月に書いた「原油先物価格にみる適温相場の変調」から引用したものだが、足元のWTI先物は60ドル台に下落しており、チャートからは上昇トレンドが崩れたかたちになっている。

 ここにきて原油先物価格が下落していたのは、イラン産原油の供給混乱に対する懸念が後退したことなどが指摘されている。しかし、原油そのものの需要が後退している可能性もあるのではなかろうか。また、サウジアラビアと米国の関係悪化など政治上の問題も絡んできている可能性もある。

 米中間選挙という大きなイベントが終了し、米国の株式市場が大きく戻してるが、この原油先物価格の動きを見る限り、再び米国株の上昇トレンドが回復するかどうかは疑わしい面もある。

 来年は世界経済を牽引していた米国経済についても減速してくるのではとの見方も出てきている。米国と中国との貿易摩擦による影響も次第に出てくることも予想される。株価の復活シナリオが完全になくなったわけではないものの、原油価格の動きを見る限り、リスクシナリオも意識しておいた方が良いのかもしれない。


by nihonkokusai | 2018-11-09 09:33 | 景気物価動向 | Comments(0)

日銀短観にみる日本経済の現状と先行き

日銀が10月1日に発表した9月の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)では、ヘッドラインとして注目される大企業製造業DIがプラス19となり、前回6月のプラス21から悪化した。3四半期連続での悪化となり、先行きについてはプラス19と現状維持を見込んでいる。

 全産業でみてみると9月のDIはプラス15となり、6月のプラス16から悪化、先行きについてもプラス13とさらなる悪化を見込んでいる。

 原油先物価格はすでに4年ぶりの水準に上昇しており、この原油高による原材料の価格高騰による影響も出ているようである。さらには西日本豪雨や、台風21号による影響、北海道での地震などの自然災害による影響なども大きいとみられる。また、人手不足による影響もあろう。

 米国と中国を中心とした貿易摩擦への懸念も大きい。日本車を巡り、トランプ政権が検討していた追加関税は、日米が新たな通商協議入りすることで、ひとまず回避されたが懸念は残る。11月の米国の中間選挙に向けてトランプ政権が更に揺さぶりをかけてくる懸念もありうるか。

 ただし、注意すべきは日銀短観での事業計画の前提となっている想定為替レートが2018年度で107円40銭となっている点である。通常でも慎重に、実勢よりは円高においている数字ではあるが、ドル円は10月2日に114円台を回復しており、7円近く想定を上回っている。円安による日本経済への影響は昔ほどは大きくはないにしても、想定以上の円安による好影響を受ける可能性はありうる。

 さらに米国株式市場の動きをみると、米中の貿易摩擦が懸念されているにもかかわらず、上昇トレンドを形成していた。米トランプ政権の保護主義政策については、いまのところ米経済には大きな影響は与えていないとの見立てなのか。日本の企業経営者のほうがやや悲観的に見ているとの見方もできるかもしれない。

 短観の大企業製造業DIと日経平均株価はトレンドの変化が似たようなタイミングで起きることが良くある。しかし、今回は短観の数字と日経平均はトレンドとしては方向が異なっている。米国株式市場の上昇とドル円の上昇などを背景に、日経平均は約27年ぶりにバブル崩壊後の高値を更新した。

 果たして日銀短観の大企業製造業DIと日経平均のトレンドの違いはいずれどのように修正されていくのか。あまり楽観視はいけないかもしれないが、短観の数字がやや慎重すぎるのではないかと個人的には見ているのだが。


by nihonkokusai | 2018-10-09 10:45 | 景気物価動向 | Comments(0)

日本の携帯電話料金は高すぎるのか、物価に直接的な影響も

 菅官房長官は21日の札幌市での講演で、大手携帯電話会社は巨額の利益を上げているとしたうえで「競争が働いていないと言わざるを得ない」とし、「携帯電話料金は、今より4割程度下げる余地がある」と言及した(ロイター)。

 携帯料金の引き下げ自体は、個人的には歓迎であるが、この発言についてはいくつか疑問がある。

 ひとつはアベノミクスと呼ばれた物価2%達成を目指した政策と相反するという点である。アベノミクスの前提にあるのは、物価目標は日銀の金融政策で可能であるという意見を鵜呑みにした政策であったが、結局は物価目標は達成できていない。これはつまり金融政策で物価を自由にコントロールすることは困難であるということをむしろ示したものとなる。

 消費増税によって物価は上がらなかったというのであれば、金融政策の効果を増税が簡単に阻害してしまうということになってしまう。そうであれば、アベノミクスの金融政策は万能という前提も崩れることになるのではなかろうか。

 もし携帯料金が40%値下げ、一律に引き下げが実施されたと仮定した場合、最大でコアCPIを約0.9%ポイント押し下げるとの試算もあるそうである(ロイター)。

 そうであれば金融政策ではなく、携帯料金を大きく引き上げればあっさり2%は達成できたのではないのか。金融政策は万能薬でも何でもない。物価は現場で上げ下げされる。

 アベノミクスとはいったい何であったのか。我々はあらためてそれを考えることも必要ではなかろうか。アベノミクスは効果があったという人も多いが、海外要因を除いた国内要因だけでみて、果たして日銀による大量の資金供給がダイレクトな効果を生み出したといえるのか。むろん、そういう環境のお膳立てをしたとの見方はできる。それが本来の金融政策の効果であるからだが、それ以上の効果が果たしてあったのか。

 菅官房長官の携帯料金の引き下げ発言については、どれだけ現状を理解されているのかという疑問もある。すでに格安スマホというものも出ており、大手キャリアでも割安プランもある。中古市場も以前よりは整備されている。安く済まそうとすれば、それは可能である。それはあくまで国民の選択によるものではなかろうか。

 そもそも日本で携帯料金が高い要因は、現在では10万円台となっているiPhoneなど新品のスマートホンの価格が高すぎることに理由があるのではなかろうか。

 特に日本では新型iPhoneの人気が高く、10万円もの製品を2年ごとに買い換えるとなれば、その負担は大きい。大手キャリアはその負担が軽減されたかのように、通話料金にスマホ価格を組み込むかたちで高い料金体系にせざるをえない面もあるのではなかろうか。そうであれば、携帯会社ではなく、国民に対して新品の高級スマホは買い手控えてほしい、ということになってしまうのではないかと思うのだが。


by nihonkokusai | 2018-08-29 11:33 | 景気物価動向 | Comments(0)

物価が低迷している謎を解き明かせるのか

 日銀は7月30、31日に開催される金融政策決定会合で、物価動向を再検証する。雨宮副総裁は朝日新聞のインタビューで、「もう一度物価が上がりにくい理由、物価観の形成の仕方などを点検する。物価動向について何が起きているのかをきちんと詰める」と語っていた。今回は検証ではなく点検という位置づけである。

 このインタビューで雨宮副総裁は、物価の伸び悩みは先進国に共通するとし、「『アマゾン・エフェクト』と呼ばれるネット販売の物価引き下げ効果」などを理由に挙げた。日本では人手不足でも賃上げは非正規雇用が中心で、正規雇用では雇用安定を重視する傾向が強いとも指摘。「労働需給の引き締まりが賃金上昇に及ぶのに時間がかかる」と述べていた。

 日銀はアマゾンなどのインターネット通販の拡大に伴って、消費者物価指数(除く生鮮食品、エネルギー)の伸び率が0.1~0.2%程度押し下げられるとする試算結果を公表している。ネット通販との競合度が高いとみられる日用品や衣類には、0.3%程度の押し下げ効果があるとの結果も出している。

 日経新聞の記事によるとドラッグストアーが医薬品だけでなく食品でも安値をけん引していることで、消費者物価指数を0.1%ほど押し下げているとの試算も出ていた。

 企業業績が上向いているにも関わらず、それが賃上げには回りづらくなっていることも確かで、例えば日銀が27日に発表した資金循環統計(速報)によると、2017年度の民間企業(金融を除く)の資金余剰が27兆6672億円となり、2016年度から10兆円あまり増え、7年ぶりの高水準となった(日経新聞)。

 世界経済の拡大基調が寄与して国内企業の業績も伸びてはいるものの、余剰資金は賃上げや設備投資には向かわず、今後のリスクも意識してか内部にため込まれている。日本企業は自力で収益を上げているというよりも、欧米を主体とする景気拡大という他力によって、業績が向上していることもいえることで、無理に勝負に出ることはせずに、国内でのポール回しに徹しているようにもみえる。

 これらの状況を打破するために、果たして日銀の異次元緩和はどれだけ有効なのか。そして、グローバルスタンダードとされる物価目標の2%という数字は適切なのかも本来であれば、再検証する必要はないのか。

 日銀が2013年4月に異次元緩和を決定してからの物価の動向も検証する必要があろう。日銀の緩和策が強力に物価に働きかけるのであれば、他の要因によってそれが阻害されることは考えづらい。2014年4月の消費増税が物価低迷の要因と指摘する声も出ているが、これについても検証してほしいところではある。


by nihonkokusai | 2018-07-08 15:07 | 景気物価動向 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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