人気ブログランキング |

牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

カテゴリ:景気物価動向( 301 )

景気の減速感を示唆する日銀短観

 4月1日の朝、日銀短観が発表された。テレビなどのメディアでは新元号の発表を控えて扱いが小さいが、今回の日銀短観の内容は注意すべきものとなっていた。

 最も注目される大企業・製造業の企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、プラス12となった。前回2018年12月調査のプラス19に比べて7ポイントの悪化となった。悪化は2四半期ぶり。7ポイントの悪化は12年12月の9ポイントの悪化以来となる。先行きについてはプラス8と、さらに4ポイントの悪化を見込んでいる。

 製造業の中堅企業のDIはプラス7と前回のプラス17から10ポイントもの悪化となり、先行きはプラス3と4ポイントの悪化を見込む。

 製造業の中小企業のDIはプラス6と前回の14ポイントから8ポイントの悪化となり、先行きはマイナス2と8ポイントの悪化となりマイナスに転ずるとの見込みとなった。

 ちなみに業況判断DIとは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値となる。

 非製造業をみてみると、大企業は足元プラス21とプラス3の悪化、先行きは1ポイントの悪化を見込む。中堅企業は足元プラス18と1ポイントの改善、先行きは6ポイントの悪化を見込む。中小企業は足元プラス12と1ポイントの改善、先行きは7ポイントの悪化を見込む。

 2019年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業・製造業で1ドル108円87銭としている。ドル円の4月1日の10時過ぎ現在のドル円は110円後半となっており、まだ若干の余裕はあるものの、想定レートを割り込む可能性もありうるか。

 日経平均と日銀短観のヘッドラインとなっている大企業・製造業DIは、トレンド変換時などが一致することも多い。しかし、今回については日経平均株価は昨年12月に目先の底を打って回復基調になっている。しかし、短観をみるとすでにピークアウトしたことがうかがえる。

 欧州や中国の景気減速は明らかであり、米国も減速感を強めるのか。米中の通商交渉の行方についての期待感も強いが、仮に関税競争が収まったとしても、それで景気が回復してくるのか、さらにFRBやECBが正常化にブレーキを掛けたことで景気が改善するのか、このあたりも不透明というか過剰なに期待も禁物のように思われる。しかし、景気が悪化することまでは、まだ予想できないないことも確かであろう。

 株価の反発基調がトレンドとして正しかったのか、それとも短観の示すトレンドが正しいのか。次回の短観発表時あたりまでには、ある程度明らかになってくるとみられるが、いまのところどちらが正しいのかは見極めづらい。


by nihonkokusai | 2019-04-02 09:47 | 景気物価動向

ここにきての世界的な長期金利低下のきっかけとなった経済指標のPMIとは何か

 22日発表のドイツの3月の製造業PMI速報値が約6年半ぶりの水準に落ち込み、3月のユーロ圏の総合PMI速報値も予想を下回り、22日のドイツの10年債利回りは2016年10月以来となるマイナスとなった。

 米国のPMIの製造業指数も1年9か月ぶりの水準に低下したことから、22日の米債は買い進まれ、一時2.41%に低下し、3か月物TBの利回りを約11年半ぶりに下回ったことで長短金利が逆転した。結局、米10年債利回りは2.44%と前日の2.53%から大きく低下した。

 これは22日の欧米の市場動向を牛さん、熊さんが解説したものをまとめたものだが、今回は今回、市場が注目していた「PMI」という経済指標をあらためて解説してみたい。

 PMI(Purchasing Managers’Index)とは、「購買担当者景気指数」とも呼ばれ、製造業やサービス業の購買担当者を調査対象にした、企業の景況感を示す景気指標のひとつ。購買担当者に、生産や新規受注、受注残、雇用、価格、購買数量などをアンケート調査し、結果に一定のウエートを掛けて指数化したもの。なかでも製造業の購買担当者は、製品の需要動向や取引先の動向などを見極めて仕入れを行うため、製造業PMIは今後の景気動向を占う「先行指標」とされている(大和証券のサイトより引用)。

 米国のPMIは全米供給管理協会であるISM(Institute for Supply Management)が公表している米国の製造業の業況感を捉える景気指標である。これはそもそものPMI指数の元祖ともいうべきISM製造業景気指数とISM非製造業景気指数のことである。ISMは米国に4万人以上の会員を持つ非営利の供給管理組織であり、この指数は米国の18業種での数百社の代表者の調査に基づいて計算されている。

 ISM製造業景気指数は、米供給管理協会が製造業約350社の購買担当役員にアンケート調査を実施し、1か月前と比較して、「良い」「同じ」「悪い」の三者択一の回答を元に、季節調整を加えた景気動向指数を作成している。1931年から続いている伝統的な経済指標でもある。

 これに対し、金融情報サービス会社のマークイット(Markit)が集計している米国のPMIの製造業指数も存在しており、22日に発表された米国のPMIはこちらの指標であった。

 そして、ユーロ圏製造業PMI(購買担当者指数) も、やはりマークイットが集計する景気指数となっていた。

 そして、日本では日経日本製造業購買担当者指数(PMI)が発表されている。

 中国では中国メディアの財新と英調査会社IHSマークイットが製造業購買担当者景気指数(PMI)を発表している。

 いずれのPMIも「50」を景況感の分岐点としており、これを下回れば景況感が悪く、これを上回れば景況感が良いとされている。


by nihonkokusai | 2019-03-26 10:46 | 景気物価動向

米雇用統計で非農業雇用者数の増加幅が急減したが

 米労働省が8日に発表した2月の雇用統計は、非農業雇用者数が前月比2万人増となった。増加幅は前月の31.1万人増から急減し、予想の18万人増も大きく下回る結果となった。

 2万人という増加幅は、ハリケーン被害があった2017年9月の1.8万人増以来、1年5か月ぶりの低さとなる。今回は米東海岸などで続いた降雪の影響で雇用の伸びが低迷したとみられる。このうち建設業は前月比3.1万人減と就業者数が2016年5月以来の純減に転じていた(8日付日経新聞)。

 ただし、2月の失業率は3.8%と前月から0.2ポイント低下しており、これは約50年ぶりの水準という歴史的水準を維持しており、さらに2月の平均時給は27.66ドルと前年同月比では3.4%増となっていた。

 非農業雇用者数はやや振れが大きく、のちほど大きく修正される可能性もあるため、今後の数字を確認する必要があり、単月の数字だけをみて悲観する必要はない。さらに失業率は低下しており、最近注目度が高い平均時給も上昇している。

 とはいえ、ECBはユーロ圏の2019年の成長率を前回12月における1.7%から1.1%に大きく下方修正した。さらに中国の2月の貿易統計で、人民元建て輸出が急減するなど、世界経済が減速している兆候があらためて現れている。

 これが米国にも波及しているのか。昨年12月の米国の小売売上高は市場予想に反し減少しており、減少率は過去9年で最大となった。これは米政府機関の一部閉鎖も影響していたとみられるものの、消費が低迷しつつある可能性がある。2月の小売業の就業者数も減少していた。ただし、11日に発表された1月の米小売売上高は前月比0.2%増となり、予想を上回っていた。

 たしかに欧州や中国の景気減速による影響を米国はさほど受けずに一人勝ちかとの見方がある。しかし、循環的な景気サイクルによる影響なども考慮すれば、米国景気もスローダウンするとの見方もできるのではなかろうか。米大統領選挙も控え、景気の落ち込みというか株価の下落はなんとか避けたいトランプ政権が対策を講じるとの期待もある。しかし、米国の財政悪化も意識されるなか手段は限られるのではなかろうか。


by nihonkokusai | 2019-03-12 10:10 | 景気物価動向

1月の日本の貿易赤字が4年10か月ぶりの大きさに

 財務省が20日発表した2019年1月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆4152億円の赤字となり、4か月連続での赤字となった。貿易赤字の幅は4年10か月ぶりの大きさとなった。

 貿易統計は通関統計とも呼ばれているが、これは日本の貿易についてまとめた統計となる。日本から輸出及び積戻し並びに輸入された貨物についても通関時の価格による輸出入の金額となる。貿易の商品の種類、量、金額のほとんどを把握しているため、貿易状況を調べる上で基礎的な資料となっている。

 中国向けの輸出が前年同月比17.4%減の9581億円と2か月連続での減少となり、大きく落ち込んだ。減少品目でみると電気回路等の機器、プラスチック、そして半導体等製造装置が大きく落ち込んでいた。

 米中の貿易摩擦、それにも影響されての中国経済の減速により、半導体製造装置などが落ち込んだとみられる。

 EU向けの輸出も4か月ぶりの減少となっているなど、世界的な景気減速の影響が出始めているとみられる。

 昨年一年間と比較しても、今回の貿易赤字の幅はかなり大きいものとなっている。これが一時的なものなのか、それともさらに貿易赤字が拡大してくる可能性があるのか。今後の国内経済の動向を見る上でも、貿易収支の動向は要注意となりそうである。


by nihonkokusai | 2019-02-21 09:41 | 景気物価動向

12月の米小売売上高の悪化で市場マインドは変化するのか?

 内閣府が14日発表した2018年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.3%増だった。年率換算では1.4%増。年率2.6%減だった7~9月期から、2四半期ぶりのプラスとなった(14日付日経新聞)。

 これは夏の自然災害による個人消費の落ち込みの反動ともいえるものであり、内需が全体の成長率押し上げに寄与した格好となった。これに対して外需は中国経済の鈍化などにより成長率を押し下げた。

 そして、米商務省が14日に発表した2018年12月の小売売上高は前月比1.2%減となった。市場の予想は若干のプラスとなっていたのに対して大幅なマイナス、しかもこれは2009年9月以来の9年強ぶりの大幅な減少幅となっていた。

 注意すべきはこの統計の数値への信頼性となる。日本の統計疑惑ではないが、この数字に関しては政府機関の閉鎖がデータ収集作業に影響した可能性も指摘されている。今回の12月の小売売上高統計は、1月25日まで35日間続いた政府機関の一部閉鎖の影響で遅れて発表されたが、集計作業についてもこれまで通りに行われていたのかという疑問も残ろう。

 このため今回の米小売売上高は、念のための参考数値として捉え、今後発表される経済指標を確認した上で、昨年末の景気動向を探る必要はある。

 しかし、日本の10~12月期GDPをみても、外需がマイナスとなっていたことは確かであり、米中の貿易摩擦の影響もあって、世界経済の牽引役となっていた米国や中国の景気が急速に後退してきた可能性はある。欧州の景気後退は言わずもがなとなっている。

 米国株式市場はこういった景気減速の懸念はあれど、米中貿易交渉の進展への期待や米政府機関の再閉鎖の回避への期待で買い戻されていた。しかし、米中貿易摩擦が完全に解決されるようなことはなく、あくまで妥協点の探り合いとなることも予想される。米政府機関の再閉鎖はなくなったとしても、議会とトランプ大統領の対立は続こう。そもそもトランプ大統領そのものがすでに金融市場のリスク要因となっている。FRBが利上げを停止したところで、あくまで金融市場は一時的に好感はしても、それが実態経済に与える影響については不透明である。

 金融市場を取り巻く地合が12月の小売売上高をきっかけに大きく変化してくるのかどうかもいまのところ不透明ながら、あらためて米国を主体とした景気動向が注目されよう。


by nihonkokusai | 2019-02-18 09:37 | 景気物価動向

調査統計不正問題での政府統計への信頼回復は容易ではない

 国会での予算審議でも取りあげられている厚生労働省の毎月勤労統計での不正問題であるが、この問題で最も危惧すべきものは国の統計に対する信認の低下となろう。

 日本経済新聞社とテレビ東京による25~27日の世論調査で、政府統計の信頼性を聞いたところ「信用できない」が79%で「信用できる」は14%となっていたそうである。

 たとえば、中国が発表している統計では、政府からのバイアスが掛かっているのではとの疑惑もあり、それがどの程度信用できるのかという疑問符が付いていた。これに対して、日本政府の発表する統計の数字には、そのようなバイアスは掛かっておらず、正確性も高いと漠然と信じられていた。

 私は以前、金融市場に関わる統計に関する本を書いたことがある。すでに廃刊となってしまっているが「ネットで調べる経済指標」という本である。ここには厚生労働省の毎月勤労統計調査についても触れていた。

 「毎月勤労統計調査とは、賃金、労働時間及び雇用の変動を明らかにすることを目的に、厚生労働省が全国の常用労働者5人以上の事業所を対象として毎月実施しています。賃金(給与)や労働時間、出勤日数、労働者数などの動きを毎月調べている調査です。調査結果は、景気動向指数や月例経済報告などの景気判断の基礎資料として使われています。「マイキン統計」とも呼ばれているそうです。」(「ネットで調べる経済指標」より引用)

 つまり毎月勤労統計での不正となれば、景気動向指数や月例経済報告などの景気判断の基礎資料にも影響を与えることになる。そうなると政府の統計全般への信認問題に波及する可能性もある。毎月勤労統計での不正のようなことが他の統計でも行われていたのではないかと疑心暗鬼にもなりかねない。

 特に政府や日銀などが出している統計に対しては、当然ながら正確性が求められる。その正確性に疑問符が付くと、統計全般への信認失墜にも繋がりかねない。

 通貨の信認にしてもそうだが、いったん失われてしまうとそれを取り戻すことは容易ではない。今回の厚生労働省の毎月勤労統計での不正問題をきっかけとした政府の統計への信認を回復させるためには、かなり思い切った改革も必要となろう。


by nihonkokusai | 2019-02-07 09:32 | 景気物価動向

実感なき景気回復から、実感ある景気減速に

 「アップルが29日発表した2018年10~12月期決算は、売上高が前年同期比5%減の843億1000万ドル(約9兆2200億円)だった。主力商品である「iPhone」の中国販売が想定よりも落ち込み、9四半期ぶりに前年実績を割り込んだ。19年1~3月期も前年同期比で減収を予想しており、不振が長びく可能性が出てきた」(30日付日経新聞電子版)。

 iPhoneの中国における販売の低迷の要因としては、米中の貿易摩擦による影響も大きかったとみられる。しかし、スマートフォンとしては高額なiPhoneへのニーズそのものが後退していた可能性がある。

 中国国家統計局が21日に発表した2018年の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除いた実質で前年比6.6%増となり、天安門事件の影響で経済が落ち込んだ1990年の3.9%増以来、28年ぶりの低水準となっていた。この景気減速もあっての高額なiPhoneへの買い控えが起きていたのではなかろうか。

 画像処理半導体エヌビディアは2018年11月~19年1月の売上高を2割下方修正していた。こちらには仮想通貨バブルはじけたことも要因として指摘されているが、サーバーなどへの投資そのものが手控えられていることも要因とされている。

 半導体景気が失速したことによって、韓国の2018年のGDPも3年ぶりの減速となり、2012年以来、6年ぶりの低水準となった。ハイテク投資の落ち込みは日本経済にも少なからず影響をもたらすことが予想される。

 iPhoneの地域別の売り上げでは中国で27%も減ったが、日本でも5%減少していた。今後は日本で端末と通話料金の分離が進むとされ、通話料金が下がれば、端末の実質負担が大きくなる可能性がある。そうなると10万円もの携帯を2年おきに乗り換えるといったインセンティブは低下してくる可能性がある。景気が後退してくればなおのことになるのではなかろうか。

 半導体などのハイテク需要は個人向けだけではなく、法人企業向けも大きいが、こちらも景気動向に大きく左右される。米中の貿易摩擦が景気減速要因となっているとは思うが、その影響だけでなく、世界経済そのものが減速傾向にあるとみていた方が良いのではなかろうか。実態なき景気回復から、実態のある景気減速に移ってくる可能性も意識しておく必要がありそうである。


by nihonkokusai | 2019-01-31 10:03 | 景気物価動向

毎月勤労統計問題からみた政府統計の信用改善策

 総務省は24日、政府が重要と位置づける56の基幹統計のうち4割にあたる22統計で作成に誤りがあったと発表した。厚生労働省の不適切な統計調査の発覚をきっかけに、政府全体に広がる統計現場のずさんな体制が明るみに出たと日経新聞が伝えている。

 人手が足りなかった、予算が少ない等々の理由もあったかもしれないが、特に公的な統計の誤りの影響は各所に影響が及ぶ。

 毎月勤労統計の不適切な調査をめぐる問題が日銀の景気分析にも影を落としているとこちらも日経新聞が伝えている。日銀が独自に公表している需給ギャップや企業向けサービス価格指数でも、同統計を活用しているためだが、これらは日銀の金融政策の判断材料となりうるものとなる。

 金融市場では、たとえば中国の統計は政府の意向も絡んでおり、正確性に欠くといった認識が強い。それに対して日本では特に公的な統計はしっかりしているとの認識が強かった。しかし、その信頼性に疑問が生じつつある。

 以前に下記のような記事が日経新聞から出ていた。

 「日本の現状を映す統計を巡り、内閣府と日銀が綱引きしている。国内総生産(GDP)など基幹統計の信頼性に日銀が不信を募らせ、独自に算出しようと元データの提供を迫っているのだ。内閣府は業務負担などを理由に一部拒否しているが、統計の精度をどう高めるかは、日本経済の行く末にも響きかねない大きな問題をはらんでいる」(2018年11月13日付日経新聞)

 民間企業が総務省に対して元データの提供を迫ったのではなく、やはり日本の基礎統計となるものを算出している日銀からの要望を何故、頑なに総務省は拒否していたのか、この記事を読んだときに解せなかった。実はこの要因も厚生労働省の不適切な統計調査が絡んでいたとみられる。

 「日銀の不信には一定の根拠がある。例えば厚生労働省が毎月まとめる賃金に関する統計。今年1月に統計手法を変えたところ前年同月比の伸び率が跳ね上がった。これには専門家から異議が噴出。統計委員会でも俎上に載り、この賃金データを基にまとめる内閣府の報酬統計も修正を迫られた。」(2018年11月13日付日経新聞)

 「例えば」となっていたが、総務省としても厚生労働省のデータに疑問を持っていた可能性がある。しかし、それでも何故、日銀に元データの提供をしなかったのか。同じ統計分析のプロ同士が協力して、疑問点を解消し、精度を高めるといった工夫はできなかったのであろうか。総務省と日銀という組織の壁みたいなものが邪魔をしていたのか。

 特に公的な統計については、例えば総務省と厚生労働省、さらには日銀なりがそれぞれデータを共有して相互チェックが可能なようにすることはできないものか。今回の問題は単に予算や人を増やすことで解決できような問題ではないようにも思うのであるが。


by nihonkokusai | 2019-01-26 11:18 | 景気物価動向

毎月勤労統計の不適切調査問題で、日本の統計への信頼が揺らぐ事態に

 厚生労働省が賃金や労働時間を示す毎月勤労統計調査で不適切な調査を続けていたことが発覚した(16日付日経新聞)。

 厚生労働省の毎月勤労統計調査で賃金上昇率が高めに出ている問題はすでに昨年夏あたりにエコノミストなどから指摘されていた。

 9月29日付けの西日本新聞によると、「1月に統計の作成手法を変更した影響で数値が高めに出ていることや、公式統計値より実勢に近い「参考値」を十分に周知できていない現状を踏まえ、公表資料の拡充や発表手法の改善を検討する。公式統計値の補整はしない方向。有識者らが公的統計の在り方を検討する政府の統計委員会(委員長・西村清彦政策研究大学院大学特別教授)に同日報告、了承された」とある。

 ところが、その後も同統計の正確性を疑問視する声が根強かったため、総務省は独自の分析作業を継続。調査対象としている事業所の従業員規模ごとの数値を精査したところ、500人以上の大規模な事業所群で不自然な数値の上振れが見つかり、同12月10日に厚労省側に照会した。厚労省側は同13日、統計委の西村清彦委員長も交えた非公式会合で、東京都の500人以上の事業所で抽出調査をしていたと「告白」した(1月15日付西日本新聞)。

 毎月勤労統計調査では、500人未満の事業所については対象事業所を厚生労働省がサンプリング(抽出)して実施しているが、500人以上の事業所は「全数」調査することになっている。しかし「実は、全数調査じゃない」ことが判明したのである。  

 「東京都で調査対象となる約1400のうち、3分の1しか調べていなかった。中小企業に比べれば賃金の高い大企業が抜けていたため、2004~2017年は実際よりも統計結果の賃金が低くなっていた(日経新聞)」

 厚労省が本来の調査方法に近づけるための数値補正を昨年1月に始め、事業所数が少ない前年の数値とそのまま比較した同月以降の賃金上昇率が過大になっていたと考えられる(西日本新聞)。

 つまり、2018年分から本来の結果に近づける加工を施したことになる。これは国が発表する統計への信頼が揺らぐ事態といえよう。さらにこの統計は雇用保険や労災保険の給付額計算の根拠となっていたことから、雇用保険などの差額をさかのぼって支給することによる追加の支給額に加え、その事務にかかる費用なども含め全体の費用は合わせて795億円に上るとされている。また、GDP統計などにも影響が及ぶ可能性がある。

 これは氷山の一角なのか。「実は、全数調査じゃない」との厚生労働省からの説明を受けて、元日銀副総裁でもある西村清彦教授が「重大なルール違反だ」と批判したことが、今回の問題発覚に至ったとされている。日本の統計の信頼が大きく揺らぐ前に、西村教授が進めている抜本的な公的統計改革を行う必要があろう。

 西村教授は今回の件に関するNHKのインタビューで、「政府の統計調査全体に対する信頼が落ちることを最も心配している。統計調査は政策の基本だから、きちんとした調査をしないかぎり、きちんとした政策はできない」と指摘している。


by nihonkokusai | 2019-01-17 10:43 | 景気物価動向

米国の長期金利の3%割れと原油先物の50ドル割れの背景は共通、世界経済の減速の兆候

 11月29日の米国債券市場では、28日のパウエルFRB議長の発言を受けて、早期打ち止め観測が強まり、米10年債利回りは一時3%を割り込んだ。米長期金利の3%割れは9月18日以来となる。

 やや腑に落ちないのは、28日の米国債券市場の動きであった。同日の米株式市場では、パウエル議長の発言を受けて利上げ打ち止めが近いとの思惑が広がり、ダウ平均は素直に617ドル高となっていた。しかし、同日の米国債券市場では何事もなかったかのように3.06%と前日比とほぼ変わらずとなっていたのである。

 この日は原油先物も大きく下落しており、米債は買われていてもおかしくなかったが、買われなかった。ところが、29日の東京時間に米債はあらためて買い進まれ、29日の米国時間の早朝に一時3%割れとなった。結局、この日の米10年債利回りは3.03%と前日の3.06%から低下した。

 この米債の動きをみると10年債利回りで3%が大きな抵抗線になっているようにみえなくもない。ただし、29日に発表されたコアPCEデフレータが予想を下回るなど、外部環境は国債の買い方優位にみえる。3%はそれほど強い抵抗線ではなくなるのではなかろうか。

 そして、29日にはサウジのエネルギー産業鉱物資源相がサウジ単独での減産は行わないと表明したことや、28日に発表されたEIAの週間在庫統計で米原油在庫が予想以上に増加したことから、原油先物の指標となっているWTI先物は一時50ドル割れとなった。

 先日、チャートの月足ベースでみると10月と11月のWTI先物の下落は、2014年に100ドルを超えていたWTIが急落し、2015年1月に50ドルを割り込んだ相場の当初の動きにも似ていると指摘した。このときの調整は2016年1月あたりまで続き、WTI先物は30ドルを割り込んでいる。

 チャート上からも50ドルは心理的名節目となっているとみられる。これに対して、産油国であるロシアのプーチン大統領が28日に原油価格について同国としては60ドルなら満足できるとの見解を示した上で、「OPECとは連絡を取り合っており、必要に応じて共同の取り組みを続ける用意がある」と言及した(ロイター)。

 このプーチン発言等を受けて、来週開かれるOPEC総会で協調減産が決定されるのではないかとの期待が広がり、原油先物に買い戻しが入って、29日のWTI先物1月限は結局、1.16ドル高の51.45ドルとなった。

 原油先物価格のここにきての下落は、トランプ大統領が原油価格は高過ぎると表明したことも一因となっていた。そのトランプ大統領はG20で予定していたロシアのプーチン大統領との会談を中止すると明らかにした。ロシアがウクライナの艦船を拿捕した事件が背景にあるそうだが、原油価格を巡っても米国とロシアの対立色が見え隠れしている。

 注意すべきは、FRBの利上げ早期打ち止め観測による米長期金利の一時3%割れと、原油在庫増などを受けたWTI先物の一時50ドル割れの要因としては、米国を含む世界経済の景気減速懸念があることである。

 あくまでいまのところ懸念ではあるものの、世界経済の減速の兆候が経済指標等に現れてくれば、この流れを人為的に止めることは難しくなる。


by nihonkokusai | 2018-12-01 10:28 | 景気物価動向
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31