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カテゴリ:国債( 842 )

4月のロシアによる米国債の保有高が前月から半減したのは政治目的なのか

 米国の財務省が先日公表した米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、4月にロシアが保有している米国債を大量に売却し、保有額が半減していた。ちなみに中国による米国債の保有額については小幅な減少に止まっていた。

「MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES」

http://ticdata.treasury.gov/Publish/mfh.txt

 これによると4月の国別の米国債保有高のトップは引き続き中国。4月時点の中国の米国債保有額は1兆1819億ドルとなり、3月の1兆1877億ドルから58億ドル減少していた。

 今年1月に中国当局が米国債の購入縮小もしくは停止を検討していると報じられたが、その後中国当局が米国債購入の縮小または停止を検討しているとの報道は否定した。3月に中国の駐米大使が米国債の購入減額について「あらゆる選択肢を検討している」と含みを持たせた。つまり、報復措置として米国債の購入を減額するなどの手段を講じる可能性を示した。

 中国による米国債の保有高は今年1月は昨年12月に比べて減少していたが、2月と3月は「増加に転じ」昨年12月の水準に戻した。4月にやや減少させていたものの、報復措置として米国債の購入を減額するなどの手段は講じられてはいない

 中国の3月末の外貨準備高は前月比90億ドル増の3兆1430億ドルと再び増加に転じていた。しかし、4月は再び減少し3兆1200億ドルとなっていたことで、4月の中国による米国債保有高の減少はこれで説明がつきそう。

 今回も2位となっていた日本による3月の米国債保有額は1兆312億ドルと2月の1兆435億ドルから123億ドルの減少となっていた。

 さて問題のロシアによる米国債保有高であるが、4月は487億ドルと3月の961億ドルから474億ドルの減少となっていた。日経QUICKニュース(NQN)によると、「米国がロシアのアルミ大手ルサールへの経済制裁を打ち出すなど、2016年の米大統領選への介入疑惑やシリア問題を巡り米ロ関係が急速に悪化した時期と重なる」とされる。

 しかし、政治的な配慮によってロシアによる米国債保有高を減少させたとなると、さらに米国とロシアの関係悪化に火が付きかねない。日経QUICKニュース(NQN)の記事でも指摘されていたが、ロシア政府がルーブル買い・ドル売りの原資確保を目的に主に米債で運用する外貨準備の一部を取り崩したとみるのが現実的か。

単位、10億ドル、()内は前年比増減

トップ10

中国(China, Mainland)1181.9、-5.8

日本(Japan)1031.2、-12.3

アイルランド(Ireland)300.4、-17.5

ブラジル(Brazil)294.1、+8.1

英国(United Kingdom)262.7、-1.0

スイス(Switzerland)242.2、-3.2

ルクセンブルク(Luxembourg)213.9、-7.7

香港(Hong Kong)194.0、-2.2

ケイマン諸島(Cayman Islands)180.7、-15.2

台湾(Taiwan)168.1、-2.0

22位

ロシア(Russia)48.7、-47.4


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by nihonkokusai | 2018-06-20 09:51 | 国債 | Comments(0)

イタリアの国債の動きにみる市場参加者のマインド変化

 6月5日と6日の欧米市場の動きは、金融市場の気まぐれというか、揺れ動く市場参加者のマインドがどのように変わってくるのかを見るのに良い事例となりそうである。これを参考に相場の動きの違いは何で判断できるのかを私なりに解説してみたい。

 5日と6日にイタリアの国債は大きく売られた。しかし、その背景については別なものであった。ちなみに5日のイタリアの10年債利回りは2.76%と前日の2.50%から大きく上昇し(国債価格は急落)、6日のイタリアの10年債利回りは2.90%に上昇していた。

 これだけをみるとイタリアの政治情勢が要因とみられておかしくはない。イタリアでコンテ首相率いるポピュリズム政権が発足したことで、積極的な財政政策を行う可能性があり、ユーロ離脱に向けた動きを取る懸念が存在する。コンテ首相が所信表明演説で国民に急進的な変革をもたらすと約束したことで、新政権はもう少し慎重な対応をとるのではとの期待が後退し、5日のイタリアの国債が急落したのは確かである。

 それでは6日のイタリア国債の下落も同じ要因によるものではないかと言えば、もちろん全く影響がなかったわけではないものの、それ以外の要因によるものと見ざるを得なかった。

 それが良くわかるのが、同じユーロ圏の他の国の国債の動きとなる。5日にドイツの10年債利回りは0.36%と前日の0.41%から低下した。イタリアの国債が売られ、中核国のドイツの国債が「買われた」というのは、いわゆるリスク回避の動きといえる。

 ところが6日のドイツの10年債利回りは0.46%と前日から大きく上昇(国債価格は下落)していたのである。これはオランダやフランスの国債も同様の動きをしていた。イタリアの国債と一緒にドイツの国債なども売られていたのである。これは違う要因が働いたと見ざるを得ない。

 それを確認するとECBが絡んでいた。6日にイタリアやドイツの国債が売られたのは、ECBのプラート専務理事が、来週14日のECB理事会において、資産買い入れ策を年内に終了させるかどうか討議すると述べたことがきっかけであった。ドイツの連銀総裁も年末までに資産買い入れプログラムを終了させるとの観測は妥当と述べていた。

 実は5日にもECB当局者の発言として、14日のECB理事会で資産買い入れの終了時期を公表する可能性があるとすでに報じられ、外為市場ではユーロがドルなどに対して買われていたが、5日のユーロ圏の国債市場は、それよりもイタリアの政治情勢を重視していたと思われる。

 ところがECB関係者という匿名希望ではなく、プラート専務理事やドイツのバイトマン連銀総裁、オランダのクノット中銀総裁らが相次いで年内の資産買入終了の検討を示唆したことで、市場が大きく反応した。これは市場に対してECB当局者が念を押したことで、市場にその可能性を浸透させようとし、市場もそれに反応したといえる。

 もうひとつ、ここにきて欧米市場のマインド変化にも注意する必要がある。特に世界の金融市場への影響も大きい米国の株式市場、特にナスダックがここにきて過去最高値を更新するなどしてきた。イタリアは確かに政治リスクを抱え、スペインも同様である。しかし、それよりもECBの動きの方に市場の視線がより集まったのは、米株の動きからみてもイタリアのリスクについては材料としてかなり織り込み、あらたな動きが出ない限りは、リスク回避とは違う要因の方に比重を傾けてきたといえる。

 今回の金融市場の動きが何によって動いているのかは、他の市場の動きを組み合わせてみることで、何か変わってきたな、ということがわかる。ユーロ圏の中核国と周辺国の国債の動き、外為市場でのユーロや円の動き、この場合の円の動きとはリスク回避なのか、リスクオンなのかを区別するのにも目安となる。そして、欧米の株式市場、特に米国の株式市場の動きなどになる。それぞれが勝手に動いていることもあるものの、関連して動くことも当然多く、今回のユーロ圏の国債のように1日違いでまったく違った動きをみせたときなどは、市場の関心が違う方向に移ってきたのではと考える必要がある。



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by nihonkokusai | 2018-06-08 09:36 | 国債 | Comments(0)

イタリアの国債が大きく売られたあと急速に買い戻されたが、何が起きたのか

 イタリアの10年債利回り(以下、長期金利)は5月7日頃に1.7%台にあったものが、5月29日には3.1%台まで急上昇した。つまりイタリアの国債価格が急落したのである。欧州の信用危機の際にイタリアの長期金利は一時7%台にまで上昇した。しかし、信用不安の後退に伴い、2015年3月に1.1%台に低下。その後やや上昇したものの、イタリアの長期金利は1.0%台から2.3%台あたりでのレンジ内の動きが続いた。今回、わずかな期間の間でそのレンジを一気に突き抜けて3%台に上昇してきたのである。

 これを受けて欧米の金融市場ではリスク回避の動きを強めた。イタリア国債を保有している銀行の株なども大きく下落し、外為市場ではユーロが売られ、欧州の信用不安が再来かと懸念された。29日のイタリアの2年債利回りの上昇幅はユーロ導入後で最も大きくなったようで、市場参加者の動揺も窺える。ややパニック的な動きの背景となっているのは、イタリアの政局を巡る状勢変化である。

 イタリアでは、ポピュリズム政党の「五つ星運動」と反移民を掲げる「同盟」が連立政権樹立に向けた政策で合意したものの、2党が選んだユーロ懐疑派の経済財務相候補の起用をマッタレッラ大統領が拒否し、ポピュリスト2党の指導者は組閣を断念した。五つ星のディマイオ党首はムーディーズの格下げが組閣を妨害したと批判し、大統領を弾劾する提案を検討していると指摘している。「同盟」のサルビーニ書記長は謀略の存在をほのめかし、再選挙を呼び掛けた。

 イタリアでは大統領とポピュリズム2党の対立色が強まったことで、政治的な混迷が一段と深まった。再選挙となれば、ポピュリズム政党が勢力を一段と拡大させる懸念も強まり、市場ではリスク回避の動きを強めたのである。

 スペインではラホイ首相の元側近が汚職事件で有罪判決を受けたことを踏まえ、最大野党の社会労働党がラホイ首相に対する不信任決議案を提出した。こちらも総選挙の可能性が出てきたことで、政局の先行き不透明感を強め、こちらもリスク回避の動きの要因となった。欧州の国債はイタリアを中心にスペインやポルトガルなど周辺国の国債が急落(利回りは急上昇)し、ドイツやオランダ、さらに英国の国債はリスク回避の動きによって買い進まれた(利回りは低下)。そして、米国債も大きく買われ、米長期金利は5月17日に3.1%台にあったものが、29日には2.78%に低下した。

 イタリア銀行(中央銀行)のビスコ総裁は「信頼というかけがえのない資産を失うリスクから」常に数歩手前にあるとし、「イタリアの運命は欧州の運命だ」と述べていた(ブルームバーグ)。

 イタリアの選挙結果次第では、ポピュリズム政党の「五つ星運動」と「同盟」が勢力を拡大し、いまのところ両党は否定しているが、ユーロ離脱に向けて舵を取る懸念がある。ビスコ総裁による「イタリアの運命は欧州の運命だ」という発言はこのあたりを意識したものではなかろうか。

 ただし、今回の金融市場の混乱を見て、「五つ星運動」と「同盟」が再度連立政権協議に入る可能性も示唆したようで、大統領の弾劾も求めない考えを明らかにした。五つ星運動は政権樹立の争点となっている経済相の人選でも妥協点を探っているとし、ユーロ懐疑派のサボーナ氏擁立を断念する構えを示し、あらためて新政権樹立を模索する動きが出てきた。これにより大統領とポピュリズム2党の対立はひとまず免れる可能性が出てきた。

 これを受けて30日の欧州市場では急激なリスク回避の巻き戻しが起きて、イタリアの10年債利回りは前日の3.13%から2.84%に急低下した。ドイツや英国、米国の国債は買い戻され、欧米の株式市場は反発となった。

 これでイタリアのユーロ離脱といった最悪シナリオが免れるかどうかは、まだ予断は許さない。仮に「五つ星運動」と反移民を掲げる「同盟」が連立政権を樹立したとして、今後どのような行動を起こしてくるのか読めない面もある。いずれにしても今後のイタリアの選挙の行方次第によって、金融市場の動向が決まるかなといった状勢となってきている。

 イタリアの長期金利の乱高下や、その背景となっているイタリアの政局のリスク、それによるユーロ圏の経済への影響などから、ECBの正常化に向けたロードマップも修正を余儀なくされる可能性も出てきたことにも注意したい。

 金融市場の流れが大きく変わってくるのか、それとも市場の視線が米朝首脳会議など違うものに向けられてくるのか。今後の市場動向を見極める必要がありそうである。


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by nihonkokusai | 2018-05-31 09:50 | 国債 | Comments(0)

イタリアは政府紙幣の発行と言う奇策を講じる気なのか

 ここにきてイタリアの国債利回りが急上昇している。5月7日に1.75%あたりにあったイタリアの10年債利回りは21日に2.40%近辺まで上昇している。この原因となっていたのが、ポピュリズム(大衆迎合主義)政党の「五つ星運動」と反移民を掲げる「同盟」の連立構想であった。

 両党による政府の政策草案とされているものによると、加盟国にユーロ離脱を認める域内での手続き導入が提案されているほか、2500億ユーロ(約32兆5300億円)のイタリア政府の債務を帳消しにするよう欧州中央銀行(ECB)に要請する方針が盛り込まれていたとされるが、これについては否定された。

 ユーロ加盟国は財政赤字を3%以内に抑えるよう求められているが、これに対して両党は財政ルールの見直しを求めるとされている。そして、これとは別に小額国債を乱発するとの臆測が流れていた。実際に同盟のボルギ報道官は、共通政策議題に短期政府債発行が含まれると明らかにした。

 ブルームバーグの下記記事などによると、どうやらこの小額国債というのは、通常の国債ではないようである。これは国債というよりも政府紙幣ともいえるものである。

参照記事

https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-05-21/mini-bots-the-monster-under-the-bed-for-european-investors

https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-05-21/why-mini-bots-loom-big-for-investors-in-italy-assets-quicktake?utm_source=google&utm_medium=bd&cmpId=google

 「mini-BOT」と呼ばれるこの短期政府債は、1ユーロから500ユーロまでの小額の額面となり、国債と言いながらも利息は支払われず、償還期限もない。また額面を政府が保証するという、どう見ても政府紙幣となる。ただし、ユーロ圏の法定通貨を発行できるのは欧州中央銀行(ECB)だけであることから、これは法定通貨ではないと主張している。

 ただし、両党によればこれは国債であっても政府債務には含まれず、財政赤字の3%ルールには該当しないというようなかなり強引な主張をしている。

 ここにきてのイタリア国債の利回り上昇の背景にはこの「mini-BOT」構想も要因としてあったようである。ブルームバーグによると過去にこのような政府紙幣を発行した最近の例として、2000年代初頭のアルゼンチン、2009年のカリフォルニア州の例などを挙げているが、いずれもどうしようもなくなってしまって追い込まれての非常手段であった。

 ところがイタリアの財政は確かに悪化しているものの、日本ほどではないし、それほど財政赤字が懸念されて危機的状況にあるわけではない。それにも関わらず、このような発想が出てくることは、むしろこれによってイタリアの財政を危機的状況に追い込む懸念が出てくる。そのためイタリアの国債利回りが急上昇することによって警戒信号を点滅させたと言えよう。


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by nihonkokusai | 2018-05-23 09:34 | 国債 | Comments(0)

3月に中国は米国債保有高を削減どころか増加させていた

 米財務省が公表している米国債国別保有残高をもとに、中国などによる米国債の保有状況を確認してみたい。

「MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES」 http://ticdata.treasury.gov/Publish/mfh.txt

 これによると3月の国別の米国債保有高のトップは引き続き中国となっている。3月時点の中国の米国債保有額は1兆1877億ドルとなり、2月に比べて110億ドル増加していた。

 今年1月に中国当局が米国債の購入縮小もしくは停止を検討していると報じられたが、その後中国当局が米国債購入の縮小または停止を検討しているとの報道は否定している。さらに3月23日には崔天凱・駐米大使は米国債の購入減額について「あらゆる選択肢を検討している」と含みを持たせた。つまり、報復措置として米国債の購入を減額するなどの手段を講じる可能性を示した。

 中国による米国債の保有高は今年1月は昨年12月に比べて減少していたが、2月と3月は「増加に転じ」昨年12月の水準に戻している。3月末現在では、報復措置として米国債の購入を減額するなどの手段は講じられてはいないようである。

 ちなみに中国の外貨準備高は2月は前月比270億ドル減の3兆1340億ドルと13か月ぶりに減少していたが、3月末の外貨準備高は前月比90億ドル増の3兆1430億ドルと再び増加に転じていた。

 今回も2位となっていた日本による3月の米国債保有額は1兆435億ドルとなり、前月比では160億ドルの「減少」となっていた。これにより中国との保有額の差が拡大した。


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by nihonkokusai | 2018-05-21 09:34 | 国債 | Comments(0)

国の借金は過去最高を更新、国債のアラート機能は停止中

 財務省は5月11日に2018年3月末現在の「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」を公表した。これによると内国債と借入金、政府短期証券を合わせた政府の債務(借金)は、合計で1087兆8130億円となった。

 ちなみに内国債というのは国内で発行された国債のことであるが、現在、日本政府は海外で日本国債は発行しておらず、発行される国債はすべて内国債となる。ただし、政府短期証券は別カウントとなっている。

 内訳としては内国債が959兆1413億円、借入金が54兆228億円、政府短期証券が74兆6489億円となっている。借入金を除いても1000兆円を超えている。

 この数字は2017年12月末と比べ2兆593億円増えていることで、過去最高を更新している。

 これだけ巨額の債務を抱えてはいるが、国債への信認が維持されていれば今後の債務維持は可能となる。しかし、現在の国債を巡る構図としては、日銀が物価を上げるためとして国債を大量に買い入れ、さらにはイールドカーブコントロールという政策まで取り入れて無理矢理、長期金利つまり国債の利回りを押し下げている。

 長期金利の水準は、理論的には市場参加者の将来の実質経済成長率の予測、物価上昇率の予測、政府債務に対するリスクプレミアムの三要素で決まるとされている。あくまで理論的には、ということであり、市場参加者が適切な経済成長率や物価の予測を行えるかどうかとの疑問もある。しかし、少なくとも2017年度のGDPや足元の物価水準からみても、長期金利のゼロ%近傍が適正水準とは思えない。さらに政府債務に対するリスクプレミアムについても完全に無視されている格好となっている。

 国債の利回りは各国の「経済の体温計」にたとえられるが、これは国の債務アラートの役割ともなっているはずである。これが日銀によってコントロールされてしまうということは、まだ市場はそれほどの警戒レベルに達していないとの見方もできる。しかし、無理矢理に日銀によって封じ込まれているとの見方もできなくはない。


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by nihonkokusai | 2018-05-12 10:31 | 国債 | Comments(0)

国債の決済T+1が始動、これにより日銀の国債買入がさらにスムーズに

 国債など有価証券の取引には約定日(売買した日)と決済日(資金と証券の受渡日)が存在している。この関係は国債の入札日と発行日の関係にもあたる。つまり売買を行った日と別に決済日・発行日が存在している。

 国債の決済に関しては、2012年4月23日約定分から「T+2」に決済を行うようになった。つまり売買約定日から起算して原則3営業日目の日に受渡し決済を行っていた。

 この決済期間が5月1日から「T+1」に短縮された。つまり約定日から起算して原則2営業日目の日に受渡し決済を行うことになる。

 なぜ国債の決済期間を短縮しなければならなかったのか。これについては主導した日本証券業協会のサイトなどでも確認できる。大きな要因としては「リーマン・ショックで顕在化した国債決済リスクの削減」ということになる。また、「国債市場・短期金融市場の流動性・安定性・効率性の向上」も目的としている。さらに「国際標準手法の導入を通じ国債のグローバル化に対応」ともある。簡単にいえば最も流動性の高い米国債の決済がT+1であり、日本国債もそれに揃えようとの動きと言えた。

 国債の入札も財務省と業者の国債の売買契約となるため約定日ということになり、それとは別に発行日(受渡日)が設けられている。これは約定日と決済日の関係と同じである。今回の国債の決済期間の短縮によって、国債の入札から発行までの期間も短縮される。

 これまで5年債、10年債、20年債、30年債については入札日を含めた3営業日目の日(T+2)が発行日となっていた。これがT+1となる。ただし、3月、6月、9月、12月のいわゆる国債の償還月については、20日が発行日となっていた(20日が休日の場合は翌営業日)。償還月の発行日が20日となっているのは、償還を迎えた国債への再投資を円滑に進めるなどの理由があった。ただし、これだと入札日から発行日までの期間が大きく空いてしまうことになる。

 償還月の発行日が20日となっていることで、実は日銀の国債買入にも影響が出ていた。日銀は発行されていない国債を購入することはできない。つまり発行日を過ぎないと買入対象とならないのである。償還月に際しては20日まで日銀が買入対象にできないため、国債を入札した業者は期間リスクを負うことになる。

 しかし、今後は償還月でも発行日は入札翌営業日となることで、業者の負担が軽減される。ただし、2年債についは5月入札分(31日入札)から翌月1日発行とし、これまでの翌月15日から約2週間程度前倒しされる。


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by nihonkokusai | 2018-05-03 10:55 | 国債 | Comments(0)

今年度の国の予算と国債の発行計画を再確認

 3月28日に2018年度予算は政府案どおり成立した。昨年12月22日に出された2018年度予算政府案とそれにともなう2018年度の国債発行計画を再確認したい。

 2018年度予算案は一般会計の総額で97兆7128億円程度と、2017年度の当初予算を2581億円程度上回り、過去最大となった。歳入のうちの税収は59兆790億円、その他収入は4兆9416億円、公債金(新規国債発行で補われるもの)が33兆6922億円となる。歳出では国債費(国債の利払い償還)が23兆3020億円、一般歳出が58兆8958億円、地方交付税交付金等が15兆5150億円となっている。

 新規国債(建設国債と赤字国債)の発行額は33兆6922億円となり、昨年度当初予算からは6776億円の減額となり、三次補正後では1兆8624億円の減額となる。

 2018年度の国債総発行額は149兆8856億円となり、これは昨年度当初からは4兆778億円の減額、三次補正後でみると6兆2395億円の減額となる。新規国債が昨年度の当初から6776億円減額され、復興債が5582億円の減額、借換債は2兆8420億円減額される。

 国債総発行額の149兆8856億円のうち、入札等で発行されるカレンダーベースの国債発行額は134兆2000億円となる。昨年度当初に比べると7兆円の減額。発行総額とカレンダーベースの差額は個人向け国債発行や日銀乗り換え分となる。個人向け国債については0.05%という最低保証利回りが功を奏して人気化していることで、今年度は3兆3000億円の発行予定となっている。昨年度当初に比べ3000億円の増加。また日銀乗り換えは2兆5000億円と昨年度の3兆円から5000億円の減額となっている。日銀乗り換えとは、日銀が保有している国債が満期償還を迎えると、1年間に限って現金償還を延長し、現金の代わりに短期国債を発行し、それを日銀が引き受けるというもの。

 今年度の前倒債の発行限度額は55兆円(昨年度の56兆円から減額)。前倒債とは借換債の弾力的な発行などを可能にするため、会計年度を越えて発行される借換債のこと。このように限度額が決められているが、その範囲内で金融情勢などに応じた発行が可能となっている。これはいわば何かあったときのバッファーともいうべきもので、何かの事情で国債入札ができなくなった際にもこの範囲内で調整が利くことになる。

 カレンダーベースの年限別の国債発行額をみてると、40年債が今年度は4000億円6回と昨年度当初の5000億円6回から減額される。30年債は7000億円が12回と昨年度の8000億円12回から減額。20年債は1.0兆円12回と変わらず、10年債は2.2兆円が12回と昨年度の2.3兆円12回から減額され、5年債は2.0兆円12回と昨年度の2.2兆円12回から減額され、2年債は2.1兆円12回と昨年度の2.2兆円12回から減額される。1年物短期国債も都合2.2兆円減額となる。10年物物価連動国債は変化なし。日銀の大量の国債買入の影響を受けている市場に配慮して流動性供給入札は1.8兆円増額となる。

 これらはほぼ国債市場特別参加者会合などでの参加者からの意見を組み入れた格好となる。日銀による大量の国債買入が継続されるなか、国債発行額が減額されることにより、今年度の国債の需給はさらにタイトになることが予想される。


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by nihonkokusai | 2018-04-04 09:59 | 国債 | Comments(0)

1月に中国による米国債保有額が減少した理由とは

 中国政府は米通商法301条に基づいた対中制裁に報復する意向を示し、米国を強くけん制した。崔天凱・駐米大使は23日に米国債の購入減額について「あらゆる選択肢を検討している」と含みを持たせた。つまり、報復措置として米国債の購入を減額するなどの手段を講じる可能性を示した。

 現実に中国が政治目的で米国債の購入を減額することが可能なのかはさておき、米財務省が公表している米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)をもとに、中国などによる米国債の保有状況を確認してみたい。

 これによると、昨年1月の国別の米国債保有高のトップは引き続き中国となっている。1月時点の中国の米国債保有額は1兆1682億ドルとなり、昨年12月に比べて167億ドル減少していた。1月に中国当局が米国債の購入縮小もしくは停止を検討していると報じられた。その影響かとの見方ができるかのような数字ながらも、その後中国当局が米国債購入の縮小または停止を検討しているとの報道は否定している。中国人民銀行によると、2月末の外貨準備高は13か月ぶりに減少していたこともあり、この1月に関しては意図的に減らしていたわけではないと思われる。

 これに対して今回も2位となっていた日本は1月の米国債保有額は1兆658億ドルとなり、前月比では43億ドルの増加となっていた。これにより中国との保有額との差が12月末に比べて縮小した。

単位、10億ドル、()内は前年比増減

中国(China, Mainland)1168.2、-16.7

日本(Japan)1065.8、+4.3

アイルランド(Ireland)327.5、+1

ブラジル(Brazil)265.7、+8.9

スイス(Switzerland)251.1、+1.5

英国(United Kingdom)243.3、-6.7

ケイマン諸島(Cayman Islands )241.9、-3.9

ルクセンブルグ(Luxembourg )220.9、+3.3

香港(Hong Kong)194.1、-0.6

台湾(Taiwan)175.4、-5.5

 中国と日本の2強に変化はないが、12月に比べてそれ以外の順位が多少入れ替わっている。外為市場などの影響とともに、年末要因等によるものと思われる。


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by nihonkokusai | 2018-03-29 09:58 | 国債 | Comments(0)

個人向け国債の売り上げが好調な理由とは

 2月28日に財務省で開催された国の債務管理の在り方に関する懇談会の議事要旨に次のような発言が記述されていた。

 「個人向け国債の売り上げが好調なのは、現在、銀行にとって預金がコストとなっており、預金から個人国債に振り替える動きが出ていることによるもの。金利水準が戻れば、個人国債の売り上げも元に戻るのではないか。」

 銀行にとって預金がコストとなっているというのは、日銀のマイナス金利政策により、残存が9年近くまでの国債利回りがマイナスとなっているためである。預金者にはマイナス金利を課すことは控えられているなか、国債の利回りは残存9年近くまでマイナスとなっており、資金運用がかなり難しくなっている。

 個人の資金を預金ではなく個人向け国債の購入に振り向ければ、販売する金融機関には手数料が支払われる。昨年4月発行分からこの個人向け国債の手数料が引き下げられ、固定3年で額面100円あたり20銭、固定5年で額面100円あたり30銭、変動10年で額面100円あたり40銭となった。これは購入者負担ではなく、販売額に応じて金融機関に財務省が支払う手数料である。手数料が引き下げられても10年変動では40銭もある(50銭からの引き下げ)。

 この手数料の引き下げもあり、販売する金融機関は手数料引き下げ前の昨年3月に個人向け国債のキャンペーンを張り、販売額は全体で9315億円となった、翌4月発行分は2030億円に落ち込んだが、7月には3000億円台を回復し、2018年に入ってからは毎月3000億円を超す販売が続いている。これは預金から個人向け国債に振り向ける動きもないとはいえないが、個人による個人向け国債へのニーズが強いことも要因と思われる。

 個人向け国債には0.05%という最低保証利回りがついている。日銀のマイナス金利政策などの影響もあり、この0.05%がいつの間にか銀行などの預金金利を上回ったことで、利回りとして魅力化したのである。

 日銀は現在、長短金利操作付き量的・質的金融緩和策という政策を行っている。これは短期の金利をマイナスに誘導するとともに、長期金利もゼロ%近辺に誘導するというもので、これまでのオペの動向などから長期金利は0.11%以下に抑えようとするものである。

 日銀の黒田総裁の続投も決まり、日銀は現在の金融緩和政策を物価目標達成まで進めるつもりのようである。日銀の政策に変化が出ない限りは、わずかな金利ではあるものの、個人向け国債の優位性は維持され、販売する金融機関にとっても手数料が得られることにより、個人向け国債の販売好調は継続すると思われる。

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by nihonkokusai | 2018-03-19 14:38 | 国債 | Comments(0)
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