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カテゴリ:国債( 846 )

ロシアは米国債保有国のランク外に

 米国の財務省が公表した米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、ついにランキング(31位以内)からロシアが姿を消していた。

「MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES」

http://ticdata.treasury.gov/Publish/mfh.txt

 これによると6月の国別の米国債保有高のトップは引き続き中国となっていた。6月時点の中国の米国債保有額は1兆1787億ドルとなった。

 今回も2位となっていた日本による3月の米国債保有額は1兆304億ドルとなっていたが、これは2011年10月以来の低水準となるようである。

 さて問題のロシアによる米国債保有高であるが、3月の961億ドルから4月の487億ドル、5月には149億ドルに急減していたが、今回はランキング(31位以内)そのものから姿を消していた。

 ここに来て大量売却に踏み切った背景には米国が打ち出した厳しい追加制裁とされる。ロシアによる米国債の大量売却は制裁強化で米国債の取引が制限されるのを警戒し、打撃を防ぐ狙いとみられる(7月19日日本経済新聞)。

 ロシア中央銀行のナビウリナ総裁は米国債売却の狙いについて、外貨準備を多角化する政策の一環と発言していたようだが、政治的な要因が大きいように思われる。

 米国が最も圧力をかけている中国に関しては、保有する米国債を売却するとの観測が出ていたものの、いまのところそのような動きはない。しかし、ロシアのようにいずれ中国が保有する米国債を売却してくる可能性もありうるか。

単位、10億ドル、()内は前年比増減

トップ10

中国(China, Mainland)1178.7

日本(Japan)1030.4

ブラジル(Brazil)300.1

アイルランド(Ireland)299.6

英国(United Kingdom)274.0

スイス(Switzerland)236.5

ルクセンブルク(Luxembourg)219.7

ケイマン諸島(Cayman Islands)197.2

香港(Hong Kong)196.1

サウジアラビア(Saudi Arabia)164.9


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by nihonkokusai | 2018-08-17 09:44 | 国債 | Comments(0)

長期金利の上昇を受けて、個人向け国債(変動タイプ)の利子も上昇

 日銀が7月31日に金融政策の微調整を行ったことにより、思わぬところに影響が出ていた。個人向け国債の10年変動タイプの初期利子が、これまで最低保障の0.05%にへばりついていたものから、0.09%(税引き前)に上昇したのである。

 10年変動タイプの初期利子が最低保障利回りの0.05%から上昇したのは、2016年2月の0.17%以来となる。

 2016年1月の金融政策決定会合で日銀はマイナス金利付き量的・質的緩和の導入を決定した。これで長期金利は抑え込まれ、同年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の決定によって、完全に長期金利はゼロ近辺に押しつぶされてしまった。

 これにより国債市場の流動性が後退し、市場機能が低下した。これを危惧して日銀は7月31日の金融政策決定会合で、長期金利のプラス0.2%あたりまでの上昇を容認することになったのである。

 長期金利、つまり日本の10年債利回りは8月2日に0.145%まで上昇した。ちょうどこの日は10年国債の入札日であった。

 個人向け国債の10年物変動金利タイプは、10年国債の流通利回りによって利子が変動する。今回の8月募集分については8月2日の10年国債の入札結果に応じて初期利子が決定される仕組みとなっていた。ただし、8月募集分の個人向け国債を購入してすぐに利子がもらえるわけではなく、半年先に払われる利子がこの入札結果で決定される。

 8月2日の10年国債の入札での平均落札利回りは0.126%。ここから算出された個人向け国債の初期利子が0.09%(税引き前)となった。ちなみに7月3日の10年国債入札における平均落札利回りは0.037%となっており、この時点で最低保障利回りの0.05%に届いていなかった。

 個人向け国債は通常の国債のように利回り変動に応じて価格は変動しない。つまり国債利回りの上昇によって価格が下落することはない。10年変動タイプは10年国債の入札時の利回りに応じて利子が変わる仕組みになっており、上昇すればするほど得られる利益が高くなる。

 ただし、3年固定、5年固定については今回も最低保障利回りの0.05%のままである。今回の日銀の政策の微調整で長期金利は上昇したものの、短期金利はそのままであった。5年国債の利回りは依然としてマイナスのままとなっている。

 今後も10年債利回りについては0.1%を超えて推移する可能性は高いとみられる。それでなくとも元本保証、最低保障金利が設定されている有利な金融商品といえる個人向け国債の優位性がさらに高まる可能性がある。


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by nihonkokusai | 2018-08-15 09:36 | 国債 | Comments(0)

1兆円を超える過去最大級の日本国債の空売りの背景

 日銀は7月30、31日の金融政策決定会合で「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」を決定した。フォワードガイダンスを導入するなど緩和強化にも見えるが、長期金利の誘導レンジを±0.1から±0.2%に拡大させることが主眼となっていた。

 日銀が金融政策の柔軟化を検討していることが、20日の夜11時頃に時事通信やロイターが報じ、債券市場はこれを受けて臨戦態勢に入った。それまで一日に数銭しか動かなかった債券先物が20日のナイトセッション(夜間取引)で57銭も動いた。これは主に海外投資家による動きとみられたが、23日の東京市場でも債券先物は38銭動き、国内の市場関係者も日銀による長期金利操作レンジ引き上げに向けてシフト体制を講じてきた。

 これに対し日銀は決定会合前であり、あくまで観測が出ているだけでともいえることで、思惑的な動きを封じる構えをみせた。23日に10年債カレントの水準の0.11%で「指し値オペ」をオファーした。このときの指し値オペの応札額は、長期金利の上昇が0.09%止まりとなっていたことでゼロであった(利回りが0.11%以上でなければ日銀に売却する必要はない。市場で売った方が良い)。

 27日にはあらためて10年債利回りの上限を試すような動きとなり、10年債利回りは前場に0.105%まで上昇した。これを受けて、この日の14時に日銀は10年債カレントで「0.11%」ではなく「0.10%」で指し値オペをオファーした。この際の応札額は940億円あった。0.11%ではなく0.10%にしたことで応札があったわけではあるが、0.10%にしたのは指し値オペは可変であると示したのではないかとも憶測された。

 決定会合初日となる30日にも市場は10年債利回りの上限を試すことになる。後場に入り13時26分に日本相互証券で10年債利回りが0.110%に上昇した。0.110%を付けたのは昨年2月以来となる。14時に日銀は10年債カレント利回りの0.100%水準で指し値オペをオファーした。このときの応札額、つまり指し値オペは全額落札されるので応札額・落札額は、なんと1兆6403億円もあったのである。

 これはいったい何か。それについては、やはり日銀のオペレーションで明らかになる。

 31日に日銀は「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」を決定。このタイトルと「フォワードガイダンス」に反応してしまったのか、10年債利回りはこの日0.090%から0.045%に低下した。つまり大きく買い戻された。債券先物も安値の150円24銭から150円80銭まで買い戻された。

 30日の1.6兆円もの指し値オペの応札は、売り手となる業者のショート(空売り)ではないかとも観測され、こういったショートのカバー(買い戻し)が入ったとの見方があった。私はむしろ債券先物でHFTと呼ばれる取引手法での買い戻しの動きが主体ではないかと見ていた(実際にどうであったのかは手口情報が開示されていないのでわからない)。

 注目すべきは、31日の日銀による国債補完供給(国債売現先)の結果であった。日銀による国債補完供給オペとは、日銀による大量の国債買入により流動性に支障が出る懸念があり、1日に限り、日銀が国債を現先方式で貸し出すというものである。

 31日の国債補完供給(国債売現先)では1兆4246億円もの応札があり、そのうち10年債では349回1634億円、350回3766億円、351回7964億円落札された。むろんこのような大きな金額での国債補完供給はレアケースである。

 つまりこれは31日に1兆円以上も指し値オペで応札した市場参加者(業者?)が、やはりショート(空売り)していたということになる。ちなみにこの際の指し値オペは349回、350回、351回が該当していた。これはつまり、日銀の国債補完供給を使って、次の10年国債の入札日までショートを繋ごうとしていたことになる。

 1兆円を越す日本国債の現物債での空売りがあったとすれば過去最大級となる。日銀の政策調整により、10年債利回りの上昇に賭けたトレードということになろう。

 8月1日の国債補完供給では、10年349回1215億円、350回2273億円、351回7306億円の落札額となっていた。ショートした参加者は少し市場から買い戻しを入れていたことがわかる。それでもまだ大きなショートは残っていた。

 そして8月2日には10年国債の入札が行われた。このとき入札されたのはリオープン(再発行形式の発行)の351回であり、7000億円規模の351回のショートはこの入札によってカバー(買い戻し)されたとみられる。

 2日の国債補完供給の10年債は340回が470億円、349回805億円、350回2076億円、351回7152億円となっていた。ちなみに2日の入札された351回債の発行日は3日である。この日までショートを繋ぐ必要があった。

 3日の国債補完供給はトータルで2444億円となっていた。10年債は339回50億円、340回399億円、342回16億円、346回8億円、349回603億円、350回1308億円。351回は入札でカバーしたものの、349回と350回はまだカバーしきれていなかったようである。

 このように、どこかの業者?が今回の日銀の政策修正を睨んで大規模な空売りを仕掛けていたようである。これに対して日銀は、国債補完供給の利用を前提とした国債買入の応札はしないように業者に向けて注意を促したようである。

 業者とよばれる証券会社が1兆円を越す空売りを仕掛けていたとして、なぜそのような規模の空売りが可能となったのか。国債の発行額が巨額となっていることに加え、日銀による長短金利操作付き量的・質的緩和で国債の値動きが抑えられていたこともあり(ボラティリティの低下)、大手証券などは数兆円規模の国債保有が可能となっているとみられる。このため、1兆円を越す取引もできるようになっているのではないかと推測されるのである。


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by nihonkokusai | 2018-08-10 09:56 | 国債 | Comments(0)

3月末現在の日本国債の最大保有者は日銀、海外は残高が減少

 日銀は6月20日に資金循環統計(1~3月期速報値)を発表した。これによると個人の金融資産は3月末時点で約1829兆円となり、株価の上昇傾向などを背景に過去最高を更新した12月末時点からは減少した。12月末比でみると1月から3月にかけて日経平均は下落しており、その影響を受けたとみられる。個人の金融資産の内訳は、現金・預金が前年比で2.3%増の約961兆円となった。株式等が同11.7%増の約199兆円、投資信託も1.4%増の約73兆円となっていた。

 この資金循環統計を基に国債(短期債除く)の保有者別の内訳を算出してみた。

 残高トップの日銀の国債保有残高は437兆2791億円、43.9%のシェアとなった。前期比(速報値)からは10兆435億円の増加となる。

 残高2位の保険・年金基金は236兆4565億円(23.7%)、2兆8786億円増。

 残高3位は預金取扱機関(都銀や地銀など)で171兆2825億円(17.2%)、5兆193億円増。

 残高4位が海外投資家で59兆5311億円(6.0%)、2737億円減。

 残高5位が公的年金の46兆8859億円(4.7%)、1兆343億円増。

 残高6位が家計の12兆3823億円(1.2%)、85億円減。

 その他が31兆8632億円(3.2%)、11兆1856億円減となっていた。

 2017年12月末に比べ国債(短期債除く)の残高は7兆5079億円増の995兆6806億円となった。短期債を除いた国債残高が1000兆円に迫っている。12月末に比べて大きく増加したのは、国債を大量に買い入れている日銀で、シェアは4割を上回っている。今回、前期比で大きく減少したのはその他の11兆1856億円減となった。内訳で見るとディーラー・ブローカーが11兆3913億円の減少となっていた。

 短期債を含めた国債全体の数字でみると残高は約1097兆円となり、日銀が約459兆円で41.8%のシェアとなっていた。海外勢の残高は約120兆円と短期債を含めると国債全体の10.9%のシェアとなっていた。海外の長期債保有が減少しており、こちらの今後の動向にも注意したい。


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by nihonkokusai | 2018-06-28 09:28 | 国債 | Comments(0)

4月のロシアによる米国債の保有高が前月から半減したのは政治目的なのか

 米国の財務省が先日公表した米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、4月にロシアが保有している米国債を大量に売却し、保有額が半減していた。ちなみに中国による米国債の保有額については小幅な減少に止まっていた。

「MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES」

http://ticdata.treasury.gov/Publish/mfh.txt

 これによると4月の国別の米国債保有高のトップは引き続き中国。4月時点の中国の米国債保有額は1兆1819億ドルとなり、3月の1兆1877億ドルから58億ドル減少していた。

 今年1月に中国当局が米国債の購入縮小もしくは停止を検討していると報じられたが、その後中国当局が米国債購入の縮小または停止を検討しているとの報道は否定した。3月に中国の駐米大使が米国債の購入減額について「あらゆる選択肢を検討している」と含みを持たせた。つまり、報復措置として米国債の購入を減額するなどの手段を講じる可能性を示した。

 中国による米国債の保有高は今年1月は昨年12月に比べて減少していたが、2月と3月は「増加に転じ」昨年12月の水準に戻した。4月にやや減少させていたものの、報復措置として米国債の購入を減額するなどの手段は講じられてはいない

 中国の3月末の外貨準備高は前月比90億ドル増の3兆1430億ドルと再び増加に転じていた。しかし、4月は再び減少し3兆1200億ドルとなっていたことで、4月の中国による米国債保有高の減少はこれで説明がつきそう。

 今回も2位となっていた日本による3月の米国債保有額は1兆312億ドルと2月の1兆435億ドルから123億ドルの減少となっていた。

 さて問題のロシアによる米国債保有高であるが、4月は487億ドルと3月の961億ドルから474億ドルの減少となっていた。日経QUICKニュース(NQN)によると、「米国がロシアのアルミ大手ルサールへの経済制裁を打ち出すなど、2016年の米大統領選への介入疑惑やシリア問題を巡り米ロ関係が急速に悪化した時期と重なる」とされる。

 しかし、政治的な配慮によってロシアによる米国債保有高を減少させたとなると、さらに米国とロシアの関係悪化に火が付きかねない。日経QUICKニュース(NQN)の記事でも指摘されていたが、ロシア政府がルーブル買い・ドル売りの原資確保を目的に主に米債で運用する外貨準備の一部を取り崩したとみるのが現実的か。

単位、10億ドル、()内は前年比増減

トップ10

中国(China, Mainland)1181.9、-5.8

日本(Japan)1031.2、-12.3

アイルランド(Ireland)300.4、-17.5

ブラジル(Brazil)294.1、+8.1

英国(United Kingdom)262.7、-1.0

スイス(Switzerland)242.2、-3.2

ルクセンブルク(Luxembourg)213.9、-7.7

香港(Hong Kong)194.0、-2.2

ケイマン諸島(Cayman Islands)180.7、-15.2

台湾(Taiwan)168.1、-2.0

22位

ロシア(Russia)48.7、-47.4


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by nihonkokusai | 2018-06-20 09:51 | 国債 | Comments(0)

イタリアの国債の動きにみる市場参加者のマインド変化

 6月5日と6日の欧米市場の動きは、金融市場の気まぐれというか、揺れ動く市場参加者のマインドがどのように変わってくるのかを見るのに良い事例となりそうである。これを参考に相場の動きの違いは何で判断できるのかを私なりに解説してみたい。

 5日と6日にイタリアの国債は大きく売られた。しかし、その背景については別なものであった。ちなみに5日のイタリアの10年債利回りは2.76%と前日の2.50%から大きく上昇し(国債価格は急落)、6日のイタリアの10年債利回りは2.90%に上昇していた。

 これだけをみるとイタリアの政治情勢が要因とみられておかしくはない。イタリアでコンテ首相率いるポピュリズム政権が発足したことで、積極的な財政政策を行う可能性があり、ユーロ離脱に向けた動きを取る懸念が存在する。コンテ首相が所信表明演説で国民に急進的な変革をもたらすと約束したことで、新政権はもう少し慎重な対応をとるのではとの期待が後退し、5日のイタリアの国債が急落したのは確かである。

 それでは6日のイタリア国債の下落も同じ要因によるものではないかと言えば、もちろん全く影響がなかったわけではないものの、それ以外の要因によるものと見ざるを得なかった。

 それが良くわかるのが、同じユーロ圏の他の国の国債の動きとなる。5日にドイツの10年債利回りは0.36%と前日の0.41%から低下した。イタリアの国債が売られ、中核国のドイツの国債が「買われた」というのは、いわゆるリスク回避の動きといえる。

 ところが6日のドイツの10年債利回りは0.46%と前日から大きく上昇(国債価格は下落)していたのである。これはオランダやフランスの国債も同様の動きをしていた。イタリアの国債と一緒にドイツの国債なども売られていたのである。これは違う要因が働いたと見ざるを得ない。

 それを確認するとECBが絡んでいた。6日にイタリアやドイツの国債が売られたのは、ECBのプラート専務理事が、来週14日のECB理事会において、資産買い入れ策を年内に終了させるかどうか討議すると述べたことがきっかけであった。ドイツの連銀総裁も年末までに資産買い入れプログラムを終了させるとの観測は妥当と述べていた。

 実は5日にもECB当局者の発言として、14日のECB理事会で資産買い入れの終了時期を公表する可能性があるとすでに報じられ、外為市場ではユーロがドルなどに対して買われていたが、5日のユーロ圏の国債市場は、それよりもイタリアの政治情勢を重視していたと思われる。

 ところがECB関係者という匿名希望ではなく、プラート専務理事やドイツのバイトマン連銀総裁、オランダのクノット中銀総裁らが相次いで年内の資産買入終了の検討を示唆したことで、市場が大きく反応した。これは市場に対してECB当局者が念を押したことで、市場にその可能性を浸透させようとし、市場もそれに反応したといえる。

 もうひとつ、ここにきて欧米市場のマインド変化にも注意する必要がある。特に世界の金融市場への影響も大きい米国の株式市場、特にナスダックがここにきて過去最高値を更新するなどしてきた。イタリアは確かに政治リスクを抱え、スペインも同様である。しかし、それよりもECBの動きの方に市場の視線がより集まったのは、米株の動きからみてもイタリアのリスクについては材料としてかなり織り込み、あらたな動きが出ない限りは、リスク回避とは違う要因の方に比重を傾けてきたといえる。

 今回の金融市場の動きが何によって動いているのかは、他の市場の動きを組み合わせてみることで、何か変わってきたな、ということがわかる。ユーロ圏の中核国と周辺国の国債の動き、外為市場でのユーロや円の動き、この場合の円の動きとはリスク回避なのか、リスクオンなのかを区別するのにも目安となる。そして、欧米の株式市場、特に米国の株式市場の動きなどになる。それぞれが勝手に動いていることもあるものの、関連して動くことも当然多く、今回のユーロ圏の国債のように1日違いでまったく違った動きをみせたときなどは、市場の関心が違う方向に移ってきたのではと考える必要がある。



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by nihonkokusai | 2018-06-08 09:36 | 国債 | Comments(0)

イタリアの国債が大きく売られたあと急速に買い戻されたが、何が起きたのか

 イタリアの10年債利回り(以下、長期金利)は5月7日頃に1.7%台にあったものが、5月29日には3.1%台まで急上昇した。つまりイタリアの国債価格が急落したのである。欧州の信用危機の際にイタリアの長期金利は一時7%台にまで上昇した。しかし、信用不安の後退に伴い、2015年3月に1.1%台に低下。その後やや上昇したものの、イタリアの長期金利は1.0%台から2.3%台あたりでのレンジ内の動きが続いた。今回、わずかな期間の間でそのレンジを一気に突き抜けて3%台に上昇してきたのである。

 これを受けて欧米の金融市場ではリスク回避の動きを強めた。イタリア国債を保有している銀行の株なども大きく下落し、外為市場ではユーロが売られ、欧州の信用不安が再来かと懸念された。29日のイタリアの2年債利回りの上昇幅はユーロ導入後で最も大きくなったようで、市場参加者の動揺も窺える。ややパニック的な動きの背景となっているのは、イタリアの政局を巡る状勢変化である。

 イタリアでは、ポピュリズム政党の「五つ星運動」と反移民を掲げる「同盟」が連立政権樹立に向けた政策で合意したものの、2党が選んだユーロ懐疑派の経済財務相候補の起用をマッタレッラ大統領が拒否し、ポピュリスト2党の指導者は組閣を断念した。五つ星のディマイオ党首はムーディーズの格下げが組閣を妨害したと批判し、大統領を弾劾する提案を検討していると指摘している。「同盟」のサルビーニ書記長は謀略の存在をほのめかし、再選挙を呼び掛けた。

 イタリアでは大統領とポピュリズム2党の対立色が強まったことで、政治的な混迷が一段と深まった。再選挙となれば、ポピュリズム政党が勢力を一段と拡大させる懸念も強まり、市場ではリスク回避の動きを強めたのである。

 スペインではラホイ首相の元側近が汚職事件で有罪判決を受けたことを踏まえ、最大野党の社会労働党がラホイ首相に対する不信任決議案を提出した。こちらも総選挙の可能性が出てきたことで、政局の先行き不透明感を強め、こちらもリスク回避の動きの要因となった。欧州の国債はイタリアを中心にスペインやポルトガルなど周辺国の国債が急落(利回りは急上昇)し、ドイツやオランダ、さらに英国の国債はリスク回避の動きによって買い進まれた(利回りは低下)。そして、米国債も大きく買われ、米長期金利は5月17日に3.1%台にあったものが、29日には2.78%に低下した。

 イタリア銀行(中央銀行)のビスコ総裁は「信頼というかけがえのない資産を失うリスクから」常に数歩手前にあるとし、「イタリアの運命は欧州の運命だ」と述べていた(ブルームバーグ)。

 イタリアの選挙結果次第では、ポピュリズム政党の「五つ星運動」と「同盟」が勢力を拡大し、いまのところ両党は否定しているが、ユーロ離脱に向けて舵を取る懸念がある。ビスコ総裁による「イタリアの運命は欧州の運命だ」という発言はこのあたりを意識したものではなかろうか。

 ただし、今回の金融市場の混乱を見て、「五つ星運動」と「同盟」が再度連立政権協議に入る可能性も示唆したようで、大統領の弾劾も求めない考えを明らかにした。五つ星運動は政権樹立の争点となっている経済相の人選でも妥協点を探っているとし、ユーロ懐疑派のサボーナ氏擁立を断念する構えを示し、あらためて新政権樹立を模索する動きが出てきた。これにより大統領とポピュリズム2党の対立はひとまず免れる可能性が出てきた。

 これを受けて30日の欧州市場では急激なリスク回避の巻き戻しが起きて、イタリアの10年債利回りは前日の3.13%から2.84%に急低下した。ドイツや英国、米国の国債は買い戻され、欧米の株式市場は反発となった。

 これでイタリアのユーロ離脱といった最悪シナリオが免れるかどうかは、まだ予断は許さない。仮に「五つ星運動」と反移民を掲げる「同盟」が連立政権を樹立したとして、今後どのような行動を起こしてくるのか読めない面もある。いずれにしても今後のイタリアの選挙の行方次第によって、金融市場の動向が決まるかなといった状勢となってきている。

 イタリアの長期金利の乱高下や、その背景となっているイタリアの政局のリスク、それによるユーロ圏の経済への影響などから、ECBの正常化に向けたロードマップも修正を余儀なくされる可能性も出てきたことにも注意したい。

 金融市場の流れが大きく変わってくるのか、それとも市場の視線が米朝首脳会議など違うものに向けられてくるのか。今後の市場動向を見極める必要がありそうである。


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by nihonkokusai | 2018-05-31 09:50 | 国債 | Comments(0)

イタリアは政府紙幣の発行と言う奇策を講じる気なのか

 ここにきてイタリアの国債利回りが急上昇している。5月7日に1.75%あたりにあったイタリアの10年債利回りは21日に2.40%近辺まで上昇している。この原因となっていたのが、ポピュリズム(大衆迎合主義)政党の「五つ星運動」と反移民を掲げる「同盟」の連立構想であった。

 両党による政府の政策草案とされているものによると、加盟国にユーロ離脱を認める域内での手続き導入が提案されているほか、2500億ユーロ(約32兆5300億円)のイタリア政府の債務を帳消しにするよう欧州中央銀行(ECB)に要請する方針が盛り込まれていたとされるが、これについては否定された。

 ユーロ加盟国は財政赤字を3%以内に抑えるよう求められているが、これに対して両党は財政ルールの見直しを求めるとされている。そして、これとは別に小額国債を乱発するとの臆測が流れていた。実際に同盟のボルギ報道官は、共通政策議題に短期政府債発行が含まれると明らかにした。

 ブルームバーグの下記記事などによると、どうやらこの小額国債というのは、通常の国債ではないようである。これは国債というよりも政府紙幣ともいえるものである。

参照記事

https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-05-21/mini-bots-the-monster-under-the-bed-for-european-investors

https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-05-21/why-mini-bots-loom-big-for-investors-in-italy-assets-quicktake?utm_source=google&utm_medium=bd&cmpId=google

 「mini-BOT」と呼ばれるこの短期政府債は、1ユーロから500ユーロまでの小額の額面となり、国債と言いながらも利息は支払われず、償還期限もない。また額面を政府が保証するという、どう見ても政府紙幣となる。ただし、ユーロ圏の法定通貨を発行できるのは欧州中央銀行(ECB)だけであることから、これは法定通貨ではないと主張している。

 ただし、両党によればこれは国債であっても政府債務には含まれず、財政赤字の3%ルールには該当しないというようなかなり強引な主張をしている。

 ここにきてのイタリア国債の利回り上昇の背景にはこの「mini-BOT」構想も要因としてあったようである。ブルームバーグによると過去にこのような政府紙幣を発行した最近の例として、2000年代初頭のアルゼンチン、2009年のカリフォルニア州の例などを挙げているが、いずれもどうしようもなくなってしまって追い込まれての非常手段であった。

 ところがイタリアの財政は確かに悪化しているものの、日本ほどではないし、それほど財政赤字が懸念されて危機的状況にあるわけではない。それにも関わらず、このような発想が出てくることは、むしろこれによってイタリアの財政を危機的状況に追い込む懸念が出てくる。そのためイタリアの国債利回りが急上昇することによって警戒信号を点滅させたと言えよう。


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by nihonkokusai | 2018-05-23 09:34 | 国債 | Comments(0)

3月に中国は米国債保有高を削減どころか増加させていた

 米財務省が公表している米国債国別保有残高をもとに、中国などによる米国債の保有状況を確認してみたい。

「MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES」 http://ticdata.treasury.gov/Publish/mfh.txt

 これによると3月の国別の米国債保有高のトップは引き続き中国となっている。3月時点の中国の米国債保有額は1兆1877億ドルとなり、2月に比べて110億ドル増加していた。

 今年1月に中国当局が米国債の購入縮小もしくは停止を検討していると報じられたが、その後中国当局が米国債購入の縮小または停止を検討しているとの報道は否定している。さらに3月23日には崔天凱・駐米大使は米国債の購入減額について「あらゆる選択肢を検討している」と含みを持たせた。つまり、報復措置として米国債の購入を減額するなどの手段を講じる可能性を示した。

 中国による米国債の保有高は今年1月は昨年12月に比べて減少していたが、2月と3月は「増加に転じ」昨年12月の水準に戻している。3月末現在では、報復措置として米国債の購入を減額するなどの手段は講じられてはいないようである。

 ちなみに中国の外貨準備高は2月は前月比270億ドル減の3兆1340億ドルと13か月ぶりに減少していたが、3月末の外貨準備高は前月比90億ドル増の3兆1430億ドルと再び増加に転じていた。

 今回も2位となっていた日本による3月の米国債保有額は1兆435億ドルとなり、前月比では160億ドルの「減少」となっていた。これにより中国との保有額の差が拡大した。


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by nihonkokusai | 2018-05-21 09:34 | 国債 | Comments(0)

国の借金は過去最高を更新、国債のアラート機能は停止中

 財務省は5月11日に2018年3月末現在の「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」を公表した。これによると内国債と借入金、政府短期証券を合わせた政府の債務(借金)は、合計で1087兆8130億円となった。

 ちなみに内国債というのは国内で発行された国債のことであるが、現在、日本政府は海外で日本国債は発行しておらず、発行される国債はすべて内国債となる。ただし、政府短期証券は別カウントとなっている。

 内訳としては内国債が959兆1413億円、借入金が54兆228億円、政府短期証券が74兆6489億円となっている。借入金を除いても1000兆円を超えている。

 この数字は2017年12月末と比べ2兆593億円増えていることで、過去最高を更新している。

 これだけ巨額の債務を抱えてはいるが、国債への信認が維持されていれば今後の債務維持は可能となる。しかし、現在の国債を巡る構図としては、日銀が物価を上げるためとして国債を大量に買い入れ、さらにはイールドカーブコントロールという政策まで取り入れて無理矢理、長期金利つまり国債の利回りを押し下げている。

 長期金利の水準は、理論的には市場参加者の将来の実質経済成長率の予測、物価上昇率の予測、政府債務に対するリスクプレミアムの三要素で決まるとされている。あくまで理論的には、ということであり、市場参加者が適切な経済成長率や物価の予測を行えるかどうかとの疑問もある。しかし、少なくとも2017年度のGDPや足元の物価水準からみても、長期金利のゼロ%近傍が適正水準とは思えない。さらに政府債務に対するリスクプレミアムについても完全に無視されている格好となっている。

 国債の利回りは各国の「経済の体温計」にたとえられるが、これは国の債務アラートの役割ともなっているはずである。これが日銀によってコントロールされてしまうということは、まだ市場はそれほどの警戒レベルに達していないとの見方もできる。しかし、無理矢理に日銀によって封じ込まれているとの見方もできなくはない。


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by nihonkokusai | 2018-05-12 10:31 | 国債 | Comments(0)
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