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カテゴリ:日銀( 1113 )

マイナス金利政策の修正の可能性

 日銀の黒田総裁は昨年12月22日の金融政策決定会合後の記者会見において、下記のような発言をしていた。

 「特にリバーサル・レートという学術的な分析を採り上げたからといって、昨年9月以来の長短金利操作付き量的・質的金融緩和について見直しが必要だとか、変更が必要だということは全く意味していません。」

 11月13日のスイス・チューリッヒ大学での講演でも黒田総裁が「リバーサル・レート」について指摘したことで、金融界からの批判も出ていたマイナス金利政策について、日銀はそれをいずれ調整するのではとの思惑が出ていた。しかし、その可能性はないと総裁はあらためて明言した。

 しかし、マイナス金利政策は、どのような経路によって物価や景気に働きかけているのかは不透明であり、金融機関の収益を圧迫するマイナス金利政策は、見直す必要があるのではなかろうかと私は思っている。株式市場や為替市場が動揺するのではとの懸念はあるが、現実には金融株などには好材料となり、株価にプラスに働く可能性すらありうる。

 10月30、31日に開催された日銀金融政策決定会合議事要旨でも下記のような発言が複数の委員からあった

 「複数の委員は「物価安定の目標」の達成を急ぐあまり、極端な金融緩和策をとると、金融不均衡の蓄積や金融仲介機能の低下といった副作用が生じ、結果的に十分な政策効果が得られない可能性があると述べた。」

 また、日銀の宮野谷理事はロイターとのインタビューで、下記のような発言をしていた。

 「ただ、債券キャピタル・ゲインを得られる余地はかなり減少しており、信用コストの一段の低下も期待し難い。そうした中で資金利ざや縮小のデメリットが大きくなり、金融機関の不満が強まっている」

 日銀がすぐにでもマイナス金利政策の調整に動く兆しは、いまのところはない。しかし、今後さらに物価が上昇してくる可能性もある。11月のコアCPIは前年比で0.9%増となり、1%も見えてきた。原油価格も上昇してきている。もちろん2%の物価目標達成には距離はあるが、物価に応じたイールドカーブ形成もいずれ必要となるのではなかろうか。その際にマイナス金利政策から脱すると、むしろ日本の景気回復やデフレ脱却が意識され、その上金融機関の収益の改善も見込めるとなれば、株式市場にとっても悪材料ではなく好材料視される可能性もある。正常化に向けた出口政策は難しくても、景気や物価の状態をみながらの金融政策の微修正ならば検討しても良いのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2018-01-04 09:40 | 日銀 | Comments(0)

片岡委員の意見への反論に垣間見える日銀の本音?

 日銀は26日に10月30、31日に開催された日銀金融政策決定会合議事要旨を公表した。色々と指摘したいところはあるが、特に興味深かったのが、下記のある委員の意見に対する反論である。

 この「ある委員」とはこの会合において、「イールドカーブにおけるより長期の金利を引き下げる観点から、15年物国債金利が 0.2%未満で推移するよう、長期国債の買入れを行うことが適当であるとして反対した」片岡委員である。

 「ある委員は、より長期の金利を引き下げる観点から、10年物国債金利に代えて、15 年物国債金利が 0.2%未満で推移するよう長期国債の買入れを行うことが適当であるとの意見を述べた。」

 片岡委員はその前の会合で、現在のイールドカーブのもとでの金融緩和効果は、2019年度頃に2%の物価上昇率を達成するには不十分であるとして、金融政策の現状維持に反対したが、対案として新たな議案は出していなかった。そもそも対案が必要なのかどうかはさておき、10月30、31日の会合では具体案を出してきたものの、それに対して複数人から反撃を受けた格好となった。

 「この委員の意見に対して、何人かの委員は、15年物国債金利を引き下げた場合の経済・物価に及ぼす具体的な政策効果や、それをもたらすメカニズムが明らかでないと指摘した。」

 何人かの委員が何人なのかは具体的ではないが、3、4人程度とみて良いか。ここには少なくとも片岡氏と同様にリフレ派とされる岩田副総裁、原田委員や櫻井委員ではない可能性が高い。そのあとにもう一人の委員が下記の発言をしている。

 「この点について、別のある委員は、15年物金利のような超長期ゾーンの引き下げは、保険や年金の運用利回りの低下などを通じ、国民のマインド面に影響を及ぼすことが懸念されると付け加えた。」

 これは発言内容からみて鈴木委員の発言ではないかと思われる。そうなると何人かの委員には審議委員だけでなく、黒田総裁もしくは中曽副総裁が含まれている可能性もありうるか。

 片岡委員はこれもあってか、次の12月の決定会合では下記のように意見を修正している。

 「2018年度中に「物価安定の目標」を達成することが望ましく、10年以上の国債金利を幅広く引き下げるよう、長期国債の買入れを行うことが適当であるとして反対した。」

 10月30、31日の会合での片岡委員の意見に対して複数人が反論してきたのは、何かしらの逆鱗に触れた可能性もありうるか。

 10月30、31日の会合では実は下記のような発言もあった。

 「大方の委員は、現在の金融市場調節方針のもと、強力な金融緩和を粘り強く推進していくことが適切であり、現時点で追加緩和を行うべきではないとの認識を共有した。」

 あえて「追加緩和を行うべきではない」との強い表現としたのは何故か。ここに日銀としての本音が隠れているように思われる。これは片岡委員の追加緩和の提案に対する複数人からの反論にも現れたということではなかろうか。

 現在の日銀はよほどの事態が発生しない限りは追加緩和を講じることは想定していないと思われる。これは物価目標の達成の有無に関わらずである。それは現在の強力な緩和策であれば、それで十分効果が出てくるとの認識によるものと思われる。

 ただし、現実には上記反対者の言葉を借りると、異次元緩和を講じた場合の「経済・物価に及ぼす具体的な政策効果や、それをもたらすメカニズムが明らかでない」ことも確かではなかろうかと思う。それでも、これからさらなる深みにはまることは避け、量の調整も可能な現在の長短金利操作付き量的・質的緩和を継続させざるを得ないのではなかろうかと思われる。


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by nihonkokusai | 2017-12-28 10:05 | 日銀 | Comments(0)

景気に応じた金融政策に修正すべきではなかろうか

 12月15日に発表された12月の日銀短観は、大企業製造業の業況判断指数(DI)がプラス25となり、前回9月調査のプラス22から3ポイント改善した。2006年12月のプラス25以来11年ぶりの高水準となり、5四半期(1年3か月)連続の改善となった。2017年度の設備投資計画(ソフトウェア・研究開発を含む設備投資額、除く土地投資額)は大企業・全産業が前年度比7.4%増となっていた。

 大企業・製造業の販売価格判断DIはプラス1と、前回のゼロから1ポイント上昇となった。プラスとなるのは2008年9月のプラス11以来9年ぶりだそうである。それでも物価の上昇圧力は弱く、原油価格の上昇などでどうにか日本の消費者物価指数(除く生鮮)は前年比でプラス0.8%となっている。

 日銀短観から景気動向をみると、景気は回復基調にあることは疑いのない事実である。ただし、これは欧米などの海外の景気回復が大きく寄与している。つまりリーマン・ショックや欧州の信用不安といった世界的な経済金融危機が収束した結果として、世界的に景気が回復したといえよう。

 世界的な経済金融危機に対して、特に金融市場の不安を後退させるために、日米欧の中央銀行による大胆な金融緩和策が講じられた。世界的な経済金融危機の後退には、これが寄与したことも確かである。しかし、その後景気が回復し、米国の株価指数が過去最高値を更新するなどしており、これを見る限り、危機対応としての中央銀行による過剰な緩和策の必要性はなくなりつつある。

 このため米国のFRBは正常化路線を進め、今年も3回目の利上げを行ってきた。イングランド銀行も今年11月に10年ぶりの利上げを決定した。ECBも慎重にQEの縮小を進めようとしている。これら対して日銀はステルステーパリングは進めつつあるものの、物価目標に縛られて方向転換そのものはかなり困難となっている。

 中央銀行の金融政策の方向転換は特に金融市場に大きな影響を与えかねない。金融引き締めと捉えられると株価が下落する懸念もある。だからといって異次元緩和を続ける必要もないはずである。マイナス金利政策は金融機関に対して負の影響を与えるなどしており、むしろマイナス金利政策をやめたほうが株価にプラスになる可能性もある。実態経済に即した金融政策に修正しないと、今後、柔軟な金融政策を取ることが難しくなる懸念もある。そろそろこのあたりを考慮すべきタイミングに来ているのではなかろうかと思う。


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by nihonkokusai | 2017-12-24 14:14 | 日銀 | Comments(0)

日銀は効果の見えないマイナス金利政策を見直すべき

 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、預金の預け先である銀行が日銀に支払うマイナス金利分を負担する方針を固めた。GPIFの預金は現在みずほフィナンシャルグループ傘下の資産管理サービス信託銀行(TCSB)が預かっており、資産管理サービス信託銀行におけるGPIFの預金は2017年9月末時点で預金は10兆円以上となり、1年前より7兆円増えた(12月18日付け日経新聞より)。

 2016年1月に導入が決まった日銀のマイナス金利政策により、準備預金の法定額を超過した一部に、年0.1%のマイナス金利が適用される。信託銀行全体でマイナス金利を適用される預金は約7兆円程度あるようだが、その多くをTCSBが占めているようである。

 これまで年金などを運用する機関投資家がマイナス金利分を負担する事例はあったようだが、ついに超大手の機関投資家ともいえるGPIFも負担せざるを得なくなったということになる。

 日銀が2016年1月の決定会合でマイナス金利政策を導入したことにより、10年債の利回りが一時マイナス0.1%に低下するなど利回りが大きく低下した。MMFやMRFの資金の導入先であるところの債券の利回りも軒並みマイナスとなり、MMFについては新規の購入申し込みを停止し、さらに運用を終了して顧客に資金を返す繰り上げ償還も実施された。同年3月の金融政策決定会合では、マネー・リザーブ・ファンド(MRF)と呼ばれる投資信託について、マイナス金利の適用から外すことを決めた。

 日銀は2016年9月の金融政策決定会合で長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定し、これによって長期金利つまり10年債利回りをゼロ%を少し上回るプラスに引き上げた格好ながら、中期ゾーン以下の国債利回りはいまだにマイナスとなっている。

 いったいマイナス金利政策は、どのような経路によって物価や景気に働きかけているのかは不透明というか、そもそも物価目標は達成される見込みもない。マイナス金利政策が直接、物価上昇に働きかけることを証明できるものはない。そうであるのであれば、金融機関の収益を圧迫するだけともなるマイナス金利政策は早晩、見直す必要があるのではなかろうか。株式市場や為替市場が動揺するのではとの懸念はあるかもしれないが、それでやめられないというのもおかしいし、現実には金融株などには好材料となり、株価にプラスに働く可能性すらありうる。そろそろ、マイナス金利政策の修正を提案する日銀の政策委員が出てきてもおかしくはないのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-12-20 09:28 | 日銀 | Comments(0)

日銀のイールドカーブ・コントロールの目的と問題点

 日銀の黒田総裁は12月7日のきさらぎ会での講演で、日銀のイールドカーブ・コントロールについて説明をしていた。

 「かつてのような国債買入れ額を固定する方式では、経済・物価動向や国債市場の状況等に応じて金利の押し下げ度合いに過不足が生じ、結果的に、日本銀行が望ましいと考えるイールドカーブを実現することができない可能性がありました」

 日銀の金融政策がどのようにして経済や物価に影響を与えて行くのか。それは日銀の金融調節によって行われる。政策金利の短期金利を上げ下げすることで、長期金利にも影響を与え、市場を経由して経済物価動向に影響を与えようとしている。しかし、政策金利がゼロ%となってしまうと、資産買入の量を目標にするなり、政策金利をマイナスとするといった選択となる。

 日銀は買い入れる資産の量を大胆に増やす政策を取った。しかし、量にも限界はある。このため取った政策がマイナス金利政策であり、長期金利そのものをコントロールしてしまおうとするイールドカーブ・コントロールであった。

 本来の長期金利は市場で形成されるものであり、コントロールは難しいものとみられていた。それに対して黒田総裁は「わが国のイールドカーブは、この1年間、金融市場調節方針と整合的な形で、円滑に形成されています」と成果を強調している。

 それでは適切なイールドカーブとは何か。総裁は「それぞれの年限に対応する予想物価上昇率や自然利子率の状況を分析したうえで、全体として、金融緩和の度合いが最適となるイールドカーブの形状を探し出していくことが必要となります」としている。また「適切なイールドカーブの形成にあたっては、貸出・社債金利への波及、経済への影響、金融仲介機能への影響などを踏まえて判断するということです」とも述べている。

 日銀のイールドカーブ・コントロールは、歴史的にみても過去に例のない金融政策と言える。そのため「金融緩和の度合いが最適となるイールドカーブの形状」とか「適切なイールドカーブの形成」が本当に可能であるのか。適切なイールドカーブ形成を市場に委ねるのではなく、中央銀行が本当に操作することが可能なのか。

 景気拡大は続くものの、物価は低位安定していることで、イールドカーブ・コントロールはしやすい面がある。しかし、この安定しているファンダメンタルズが変化し、国債の需給バランスが崩れるような場面が訪れた際にどのように対処が可能なのか。いずれイールドカーブ・コントロール政策が試される場面が出てくる可能性もあろう。


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by nihonkokusai | 2017-12-18 09:33 | 日銀 | Comments(0)

日銀総裁が指摘したリバーサル・レートの議論

 日銀の黒田総裁は、11月13日のスイス・チューリッヒ大学における講演で、「金融仲介機能への影響という点では、最近、「リバーサル・レート」の議論が注目を集めています」と発言し、市場関係者の注目を集めた。黒田総裁はリバーサル・レートについて以下のように説明していた。

 「これは、金利を下げすぎると、預貸金利鞘の縮小を通じて銀行部門の自己資本制約がタイト化し、金融仲介機能が阻害されるため、かえって金融緩和の効果が反転(reverse)する可能性があるという考え方です。」

 リバーサル・レートについては、講演議事要旨の注釈に「Markus K. Brunnermeier and Yann Koby (2017), "The Reversal Interest Rate: An Effective Lower Bound on Monetary Policy," mimeoを参照」とあり、米国のプリンストン大学のブルネルマイアー教授の論文を引用した。リバーサル・レートとはブルネルマイアー教授が考案した概念で、金利がある一定水準を下回ると、かえって貸し出しなど金融仲介機能に悪影響を与えるとの議論である。

 リバーサル・レートの議論は、大胆な金融緩和策の副作用ともいえるものであり、何故、黒田総裁はこのタイミングで、この議論を海外の講演で紹介したのか。

 日銀は長短金利操作付き量的・質的緩和と称する大規模な金融緩和策を行っている。いろいろな緩和策をくっつけたような名称となっているが、現実には量的・質的緩和とその後のマイナス金利政策にいろいろな意味で限界や副作用が生じ、それを修正するための手段との見方もできる。

 2016年1月のマイナス金利付き量的・質的緩和の導入については金融界からの批判が相次いだ。現実にここにきてメガバンクが大量のリストラ策を発表しているのも、マイナス金利による影響が大きい。マイナス金利政策はECBなどがすでに実施していたが、その効果は見えないにも関わらず、金融機関への収益を大きく悪化させかねないものである。そのため、マイナス金利政策の修正を行ったのが、同年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和策である。

 長短金利操作付き量的・質的金融緩和策は一見、短期金利に加えて長期金利も操作目標に加え、追加緩和のようにみえる。しかし、その実態は長めの期間の金利を引き上げ、イールドカーブを少しでもスティープ化させて、金融機関の運用に対する悪影響を軽減させるものである。また操作目標を量から金利に変えたことで、量への呪縛を解くこととなった。

 これにより、日銀は国債の保有残高の増加額年間約80兆円という数字は残しているものの、実質は40兆円台となるなどステルステーパリングを行うことが可能となった。これに対して市場は緩和策ではなくなっているのではとの印象よりも、日銀の国債買入への限界を気にしていたことでその不安が多少なり解消されたことをむしろ好感した。長期金利に目標が課せられたことで、国債の利回りが大きく跳ね上がることも抑えられることになった。

 日銀の黒田総裁がこのタイミングでリバーサル・レートの議論を紹介したのは、さらなる利下げ観測を牽制したとか、今後の異次元緩和からの微調整の可能性を示唆したとの見方もできなくはない。しかし、それよりも日銀の現在の政策である「長短金利操作付き量的・質的緩和」がリバーサル・レートも意識した上での政策であることを示す目的もあったのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-12-06 10:00 | 日銀 | Comments(0)

日銀総裁が金利を下げすぎることによる副作用にも言及

 日銀の黒田総裁は13日の『「量的・質的金融緩和」と経済理論』と題するスイス・チューリッヒ大学における講演は、これまでの発言内容と比較して、やや様変わりとなってきたようにも思われた。それを示すものとして、「量的・質的金融緩和」の成果に加え、副作用についても言及していた点である。

 「最適なイールドカーブの把握」との部分では下記の説明があった。

 「金利の年限によって金利低下の効果が異なることも、最適なイールドカーブを考えるうえで考慮すべき一つのポイントです。経済や物価への影響という点では、一般的に、短期から中期の金利低下による効果が大きいと考えられます。企業や家計の資金調達に占めるこのゾーンのウエイトが大きいためです。」

 だからこそ、2013年4月の量的・質的緩和政策の導入まで、日銀による国債の買入は超短期ゾーンが主体であったはずである。また、短い国債の買入により、償還がすぐ来ることで全体の規模の調整が比較的しやすいメリットがある。つまり出口政策を容易比にさせる。2006年の3月の量的緩和策の解除にも、当座預金残高の削減はかなり短期間で可能とされていた。

 「一方、より長めの金利については、保険や年金といった金融の社会インフラの機能と強い関連があると考えられます。このため、長期・超長期金利の過度な低下は、これらの運用利回りに対する不安感などを惹起し、マインド面を通じて経済に影響を及ぼす可能性に留意する必要があります。」

 この点をあらためて総裁が指摘した意味は大きい。そのために導入したのが2016年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和による、イールドカーブコントロール「YCC」であった。このYCCの目的はイールドカーブをスティープ化させることであった。それによってある程度「運用利回りに対する不安感」などを後退させることができる。

 「このほか、金融仲介機能への影響という点では、最近、「リバーサル・レート」の議論が注目を集めています。これは、金利を下げすぎると、預貸金利鞘の縮小を通じて銀行部門の自己資本制約がタイト化し、金融仲介機能が阻害されるため、かえって金融緩和の効果が反転(reverse)する可能性があるという考え方です。」

 リバーサル・レートとは米プリンストン大学のブルネルマイアー教授が考案した概念で、金利がある一定水準を下回ると、かえって貸し出しなど金融仲介機能に悪影響を与えるとの議論である(ロイターの記事より引用)。リバーサル・レートを引き合いに出して黒田総裁は、金利を下げすぎることによる副作用について、あらためて言及している。これなども今回の総裁発言のなかではあまり過去にはみられないものであった。

 今後、日銀がマイナス金利政策や長い期間の国債の大量買入を主体としている現在の大規模緩和策から調整を図ってくると期待したいところではあるが、市場への影響等を考慮するとそう簡単に修正できるものではない。しかし、それでも結果としてステルステーパリングを行うなど、これまでのかなり緩和に対する前傾守勢を修正しつつあることも確かなのかもしれない。また、これは追加緩和を主張している向きに対する牽制との見方もある。


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by nihonkokusai | 2017-11-17 10:08 | 日銀 | Comments(0)

日銀はサプライズ緩和政策からの方針変更か

 11月9日に日銀は金融政策決定会合における主な意見(10月30・31日分)を公表した。このなかの「金融政策運営に関する意見」のところを確認してみたい。

 「現在の強力な金融緩和を粘り強く推進していくことが重要」、「金融市場調節方針を維持することにより」、「現在の金融政策は・・・政策効果の不確実性が最も小さく、最適な金融政策である」

 決定会合では現状維持が賛成多数で決定されていたため、現状維持が適切であるとする意見が出るのは当然ではあるが、物価目標達成にはかなりの距離はあるものの、それによって追加緩和を行う必要性はないと主張しているようにも思われる。意見のなかには次のようなコメントもあった。

 「政策変更の効果に確信が持てない限り、現状維持が適切である」。「目標達成を急ぐあまり極端な政策をとると、金融不均衡の蓄積や金融仲介機能の低下といった副作用が生じる恐れもある」。「追加緩和に関しては、市場や金融機関への影響、政策の持続性等の観点から、プラスの効果より副作用の方が大きいとみている」、「国債市場の流動性に加え、国内外投資家の動向や金融機関の保有有価証券ポートフォリオの中身について一層注視する必要がある 」

 どうやら副作用についてもかなり気配りをしているようにも思われる。「目標達成を急ぐあまり極端な政策をとると」との表現があったが、2013年4月の量的・質的緩和、2014年10月の量的・質的緩和の拡大、2016年1月のマイナス金利付き量的・質的緩和、同年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和は、ある意味、目標達成を急ぐあまり取った極端な政策のようにも思えるのだが、日銀はそのようにサプライズ緩和政策から方針を変えてきているようにも思われる。

 しかし、なかには何を言っているのかわからない意見も出ている。

 「米欧の中央銀行が出口に向かっているので、日本銀行も同様に出口に向かうべきだという意見があるが、これらの国に比べて、金融緩和の開始時期が遅いため、出口に向かう時期が遅くなることについても不思議はない。」

 当たり前だが、日銀の緩和策は2013年4月の量的・質的緩和に始まったものではない。それまでの日銀の緩和策は緩和策とは言えないと言うのであろうか。

 米欧の中央銀行が出口に向かっているのは何故なのか。それは世界的な金融経済リスクの後退とそれによる世界経済の回復が要因のはず。そもそも金融緩和の開始時期の違いがあったとは思えず、日本だけ景気回復に取り残されているわけではない。むろんそれぞれの中央銀行は横並びに動く必要はなく、自国の経済物価状況に応じて行うものである。しかし、無理な物価目標を立ててしまって身動きを取れなくしてしまい、表立っては出口に向きを変えることすらできないのが現在の日銀の姿ではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2017-11-10 09:34 | 日銀 | Comments(0)

原油価格が上昇すれば日銀の物価目標達成も?

 ここにきて原油価格が再び上昇の兆しを見せ始めている。11月6日の原油先物市場では、サウジアラビア政府が数十人の王族や閣僚を汚職容疑で拘束したとのニュースや、そのサウジアラビアはイエメンの反体制派が首都リヤドに向けた弾道ミサイルを迎撃したことなど、中東情勢の緊迫化を受けて原油価格が上昇したとされた。

 協調減産延長への期待も原油価格上昇の背景にあり、WTI先物は57ドル台となり、終値で2015年6月以来の高値をつけた。このまま上昇トレンドが続けば、2015年6月以来の60ドル台回復の可能性もある。チャート上は60ドル近辺が目先の天井になるとみられるが、ここを大きく抜けると80ドルあたりまで大きな節目はない。いまのところ、ここまで急伸することは現実的ではないが、中東情勢が緊迫化するなどした場合には絶対にないとは言い切れない。

 ここ数年の原油先物の推移をみてみると、2014年7月あたりまで上昇基調となっており、WTIは100ドル台をつけていた。しかし、2014年7月あたりから年末にかけて大きく下げ、2016年には30ドルあたりまで下落した。

 2013年4月あたりからのコアCPIの予想以上の上昇ペースの背景には、アベノミクスをきっかけとした急速な円高調整による円安効果と、消費増税にむけた駆け込み需要、さらには福島原発問題の影響が残るなかでのエネルギー価格の上昇による影響が大きかった。これにより消費増税の影響を除いたコアCPIは前年比1.5%半ばあたりまで上昇し、異次元緩和効果で2%の目標に向けて順調に上昇しているかのように見えた。

 しかし、日銀の異次元緩和が直接物価に働きかけていたわけではないことを2014年5月以降のCPIの前年比の低下が示すことになる。原油価格が2014年7月あたりから急速に下落基調となっていただけでなく、ドル円が110円台から105円台となるなど円安調整も加わってのコアCPIの前年比の落ち込みとなった。2015年2月にはゼロ%となり、同年8月にはマイナスとなっている。このCPIの落ち込みは消費増税によるものとの指摘もあったようだが、原油価格や為替の動向に影響を受けていたとみる方が自然であろう。

 ここにきての原油先物価格の上昇とドル円の上昇も加わって、コアCPIは前年比プラス0.7%あたりまで回復してきている。これは決して日銀の緩和政策によるものではなく、原油価格やドル円の推移で説明可能であろう。そうであれば、今後のCPIの行方を占う上ではWTIが60ドルの壁を破ってくるのかが注目される。もし突破してくるとなればコアCPIの1%台回復も見えてくる。もしまた1.5%あたりまで、たまたま上昇した際には、そのあたりで日銀も手を打ってはどうであろうかとは個人的に思うのであるが。


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by nihonkokusai | 2017-11-08 09:45 | 日銀 | Comments(0)

日銀は物価見通しを何故間違えたのか

 10月30日に発表された経済・物価情勢の展望、いわゆる展望レポートによると、2017年度の物価見通しは前回7月時点の見通しの前年比プラス1.1%からプラス0.8%に下方修正された。

 この場合の物価とは、日銀の物価目標となっている消費者物価指数(除く生鮮食品)であり、数字は政策委員見通しの中央値である。今回の下方修正は9月の消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比がプラス0.7%に止まるなどしたことによる修正とみられる。

 2018年度については前年比プラス1.4%(7月時点でプラス1.5%)、2019年度については前年比プラス1.8%(7月時点でプラス1.8%)となっている(2018年度は消費税率引き上げの影響を除くケース)。展望レポートによると2%程度に達する時期は、2019年度頃になる可能性が高いとしている。

 それでは2年前の2015年10月に発表された展望レポートの予測を確認してみたい。2015年度の見通しがプラス0.1%、2016年度がプラス1.4%、2017年度がプラス1.8%となっていた。予測は大きく外れていると見ざるを得ない。2015年10月のレポートでの物価についての見通しでは下記のような説明があった。

 「2%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されるが、同価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2016年度後半頃になると予想される。」

 参考までに2015年10月末の原油価格を代表する指標としてのWTI先物は46.22ドルであった。それが1年後の10月末に49.78ドル、今年10月30日現在は54ドル近辺となっており、大幅に上昇はしていないが緩やかには回復している。

 2015年10月現在の物価を巡る状況については、「原油価格下落の影響が剥落するに伴って、物価安定の目標である2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる」と物価予測を誤った要因として原油価格を挙げていた。

 たしかに原油価格は緩やかに上昇し、コアCPIは足元で前年比プラス0.7%にまで回復している。コアCPIに関しては原油価格の影響が大きいことは確かである。ところが、この原油価格の影響を除いた生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)でみると今年9月は前年比プラス0.2%に止まっている。これをみても原油価格の押し下げだけが物価を抑制していたわけではないということになる。

 日銀の物価見通しは何故間違えたのか。本来、日銀は物価の予測を含めた調査機関としても日本有数の組織である。展望レポートの数字はあくまで政策委員の予測であるが、データ等の背景説明は受けているはずである。今の日銀には2%の物価目標達成というバイアスが掛かりすぎてしまっていることが、このような予測にも影響を与えているのではないかと思われる。


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by nihonkokusai | 2017-11-06 09:41 | 日銀 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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