牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

カテゴリ:日銀( 1127 )

日銀が金利を上げれば金融機関は打撃を受けるのか

 日銀は4月26、27日に開催された金融政策決定会合における主な意見を公表した。この会合から副総裁が替わっての新体制となったこともあり、ニュアンスがどのように変化したのかに興味があった。

 金融政策運営に関する意見においては、「強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが適当である」、「物価安定の目標の趣旨について広く社会との共有を進めるべきである」との意見が出ていた。

 また、「需給のバランスや金融システム面への影響にも配意しながら」との注意喚起もあった。「長期実質金利の低下に伴う経済・物価への緩和効果は小さくなっている可能性がある」という意見もあった。「政策効果と考え得る副作用についてあらゆる角度から検討を続けるべきである」との意見も出ていた。

 そして今回も前回の会合と同様に、「えっ」となる意見が出ていた。

 「市場は金利の早期引き上げを求めていると言われることがあるが、実際に金利を引き上げれば、債券価格と株価が下落し、円高で企業の経営が悪化し、信用コストが増大し、金融機関は大きな打撃を受けるだろう。また、短期金利を上げても長期金利が上がるとは限らず、長短スプレッドはむしろ縮小してしまう可能性もある。これは2006年以降の日本で起きたことである。」

 「市場は金利の早期引き上げを求めていると言われることがあるが」という点についてだが、確かに経済実態に応じた金利にすべきとは私も主張していることではあるが、いきなり米国のような利上げペースにすべきとは主張はしていない。べき論としては、金融機関に負の影響をもたらすマイナス金利を止めるべきで、そして長期金利コントロールについてはもう少し柔軟なものにすべきと私は主張している。

 「実際に金利を引き上げれば、債券価格と株価が下落し、円高で企業の経営が悪化し、信用コストが増大し、金融機関は大きな打撃を受けるだろう。」とのご意見ももっともらしいように聞こえるが、米国の正常化による利上げを受けて、米長期金利が上がると銀行株は「買われ」、米株もしっかりしている。ドルは多少高くはなっているものの急激に上昇してはおらず、株価や景気実態にマイナスの影響を及ぼしているようには思えない。

 米国と日本は状況は違うと言われるのかも知れないが、日本も無理矢理な金融緩和よりも、経済実態に即した金融政策のほうが、むしろ株式市場には好材料となる可能性がある。

 2006年のことを持ち出したのは2月の量的緩和解除と7月のゼロ金利解除に伴っての長短スプレッドの縮小を示しているとみられる。しかし、2006年の日経平均の動きをみても大きく下落したわけではない。たしかにその後の米国のサブプライムローン問題をきっかけとした世界的な金融経済ショックが起きたことで、2006年の利上げは早すぎたとの見方はある(その後のリーマン・ショックまで予測しての利上げが早急すぎたとのご意見に対しては、金融政策には未来予知が必要となってしまうことになる)。しかし、この際の利上げによって金融機関が大きな打撃を受けたわけではない。むしろ仮死状態にあった短期金融市場が正常化したこともあり、金融機関にはプラス要因となった面も大きかったのではなかろうか。


[PR]
by nihonkokusai | 2018-05-11 09:49 | 日銀 | Comments(0)

金融政策に関する情報発信のあり方を巡り、リフレ派との温度差も

 3月8、9日に開催された日銀金融政策議事要旨が7日に公表された。この会合では金融政策は現状維持となり、政策変更はなかった。議事要旨の内容も前回と大きな変化はなかったが、議事要旨によると、金融政策運営に関する情報発信のあり方について議論が行われており、その部分を取りあげてみたい。

 「何人かの委員は、最近の為替市場や株式市場における不安定な動きについては、国際金融市場の変動に加え、わが国でも経済・物価情勢の改善が続く中、今後の金融政策運営の方向性を巡り、市場参加者の関心が高まっていることも影響しているとの見方を示した。」

 この場合の「為替市場や株式市場における不安定な動き」というのは、ドル円や株の乱高下というより、当時の動きからみて、円高の進行とそれも影響しての株安のことを指しているようにも思われる。たしかに日銀の金融政策の行方に過度に神経質となっていたようだが、この円高株安の動きは3月下旬あたりから反転しつつある。

 「何人かの委員は、市場に誤解が生じないよう、日本銀行としては、「物価安定の目標」の実現までにはなお距離があることを踏まえ、引き続き、現在の強力な金融緩和を粘り強く進める方針にあり、いわゆる「出口」のタイミングやその際の対応を検討する局面には至っていないと考えていることを、丁寧に説明していくことが重要であると指摘した。」

 この発言をみても日銀が過度に神経質になっていたように思われる。国債買入の微調整が行えないような状況にあったのかと個人的には勘ぐってしまう。

 「そのうえで、このうちの一人の委員は、将来的には、金融緩和の度合いを次第に縮小していくという意味での「正常化」を検討していくことになるが、それがなお金融緩和の領域にあり、需給ギャップの縮小を狙った「金融引き締め」とは異なることを、市場参加者にきちんと理解されるよう説明していくことも必要であると述べた。」

 この発言が一番気になった。これは以前、量的緩和の解除を行ったときと同様の表現であり、日銀出身者からの発言ではなかろうか。そうであれば、唯一該当するのが、この会合が任期最後となった中曽副総裁からの発言ではなかろうか。

 「別のある委員は、企業の価格設定スタンスの強まりがネガティブに捉えられることのないよう、デフレ脱却の意義について人々の理解を得つつ、「物価安定の目標」の実現を図っていくことが重要であるとの認識を示した。」

 この発言者も気になる。その内容からリフレ派からの発言ではなさそう。事業会社の出身者からの発言のようにも思われる。

 「この間、一人の委員は、追加的な金融緩和の余地が大きくない中、デフレ脱却を確実にするためには、財政政策の協力が必要になるとの見解を示した。そのうえで、この委員は、プライマリー・バランスの黒字化については、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、適切な定量的目標を定めて、柔軟に運営していくことが望ましいと述べた。」

 リフレ派からの発言である。これはやはりこの会合が最後となる岩田副総裁であろうか。そもそもアベノミクスと呼ばれたものは金融政策と財政政策に成長戦略を組み合わせた3本の矢であったはずで、何をいまさらの財政政策なのか。

 「このほか、ある委員は、「量的・質的金融緩和」の経済への効果が小さいとみていた人の中には、強力な金融緩和のもとで経済が大きく改善したことを受けて、将来必ず経済は悪化すると強調することで自己の主張と現実とのバランスを取ろうとする向きもみられると指摘した。」

 何故、金融政策決定会合という金融政策を決める会合において、自分の意見とそぐわない他者への非難を行わなければならないのかがわからない。しかも、リフレ派への非難は当然出てはいるが、「将来必ず経済は悪化すると強調」しているのはあまり聞いたことがない。

 これはむしろ、量的・質的金融緩和の物価への効果が大きいとみていた人の中には、強力な金融緩和のもとで物価が大きく改善しないことを受けても、将来必ず物価は改善すると強調することで、自己の主張と現実とのバランスを取ろうとしているようにも思われる。

 ちなみに3月の決定会合後に公表された「主な意見」では同様の意見を言っていたとみられる委員がこの部分と思われる箇所について、下記のようにまとめていた。

 「量的・質的金融緩和」への反対意見の中には、心理学で認知的不協和と言われるものがある。これは、自分の認識と新しい事実が矛盾することを快く思わないことである。「量的・質的金融緩和」で経済は良くならないという自分の認識に対し、経済が改善しているという事実を認識したとき、その事実を否定、または、今は良くても将来必ず悪化すると主張して、不快感を軽減しようとしている。」


[PR]
by nihonkokusai | 2018-05-08 09:43 | 日銀 | Comments(0)

日銀の国債買入れペース80兆円という数字は削除されるのか

 4月27日の日銀の金融政策決定会合では、資産買入れ方針については全員一致で現状維持、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)については賛成8反対1となり、今回も片岡委員が反対票を投じた。今回から副総裁が替わったが、注目された若田部副総裁は異を唱えることなく前任の岩田副総裁と同様に執行部として賛成票を投じた格好となった。

 これは事前の予想通りであったが、サプライズが展望レポートにあった。展望レポートの「物価の中心的な見通し」で、前回の2017年10月分にあった次の箇所が変更されていたのである。

 「2%程度に達する時期は、2019年度頃になる可能性が高い。」

 上記の文面があった箇所が今回は下記のようになっていた。

 「2019年度までの物価見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である。」

 つまり、2%程度という日銀の物価目標の達成時期の文面が削除されていたのである。当然ながら市場もこれに関心を抱き、27日の総裁会見でも質問が集中した。

 黒田体制の2期目がスタートし、そのタイミングで日銀は微妙な軌道修正を行った。ただし、政策そのものを変えたわけではない。あくまで展望レポートにあった達成予定時期の表記をなくし、未達成ならば追加緩和との見方が出ないようにするためと思われる。

 市場では日銀による金融政策の微調整の可能性も意識しはじめているが、今回の修正はそれに向けたものとは思われない。すでに6回ほど達成時期の先送りをしている現状、これを残す必要性もなくなったともいえる。

 それではもうひとつ、現状と乖離した部分が、こちらは「当面の金融政策運営について」に残っているが、これはどうするつもりなのであろう。その部分とは下記のところである。

 「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。」

 この保有残高の増加額年間約80兆円という数字はすでに現実的ではない。2016年10月の決定会合で導入した長短金利操作付き量的・質的緩和政策により、政策目標は量から金利に戻しており、国債買い入れペースも年間60兆円台あたりとなっている。80兆円はすでに絶対目標とはなっていないこともあり、いずれこの数字も削除してくる可能性はある。ただし、これについては若田部副総裁あたりから反対意見が出ることも予想され、そう簡単なものではないのかもしれない。


[PR]
by nihonkokusai | 2018-05-07 10:01 | 日銀 | Comments(0)

日銀が物価目標達成時期の表記を削除、この目的とは何か

 4月27日の日銀の金融政策決定会合では、資産買入れ方針については全員一致で現状維持、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)については賛成8反対1となり、今回も片岡委員が反対票を投じた。今回から副総裁が替わったが、注目された若田部副総裁は異を唱えることなく前任の岩田副総裁と同様に執行部として賛成票を投じた格好となった。

 これは事前の予想通りであったが、サプライズが展望レポートにあった。展望レポートの「物価の中心的な見通し」で、前回の2017年10月分にあった次の箇所が変更されていたのである。

 「2%程度に達する時期は、2019年度頃になる可能性が高い。」

 上記の文面があった箇所が今回は下記のようになっていた。

 「2019年度までの物価見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である。」

 つまり、2%程度という日銀の物価目標の達成時期の文面が削除されていたのである。当然ながら市場もこれに関心を抱き、27日の総裁会見でも質問が集中した。

 総裁会見での総裁のコメントはさておき、そもそもこの目標達成時期の表記については、日銀と政府の間でかなりの確執があった部分である。

 日銀としては金融政策で自由に物価をコントロールできるといった発想はそもそもなかったはずである。インフレを抑えるのではなく、デフレ予防を金融政策で行うとなれば、あくまでも物価が上昇しやすい環境を整えることが重要となる。金融政策は補助的な道具に過ぎない。

 しかし、リフレ派の意向を組んだ安倍政権は日銀にプレッシャーを与え続け、その結果として2013年1月に日銀(当時の総裁は白川氏)は2%の物価目標の導入を決定し、政府・日銀は共同文書(アコードではない)を発表した。そのなかで目標達成時期については下記のような表現となっていた。

 「日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。」

 この時点では、具体的な時期については表記されていない。日銀は2%は飲んだものの、具体的な時期の表明の表記は拒んだ格好となっていた。

 しかし、総裁が安倍政権が選んだ黒田氏に変わったこともあり、日銀としては政府の意向を時期についても飲まざるを得なくなった。むしろ積極的なリフレ政策を掲げるというある意味、ひとつの賭けに出ざるを得なくなった。

 黒田総裁の就任後まもなくの決定会合で、日銀は量的・質的金融緩和を導入し、2%という物価目標に対しては、「2年程度の期間」を念頭に置いて、早期に実現するとしたのである。

 この決定会合後に発表された展望レポートでは、本文だけではなく最初の概要部分にも「2%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されるが、現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2016年度前半頃になると予想される。」とあった。

 日本の消費者物価指数は量的・質的金融緩和を導入した2013年4月の前年比マイナス0.4%から、1年後の2014年4月にプラス1.5%に上昇したが、ここがピークとなった。

 一見、日銀の金融政策が物価を動かしているようにみえるが、急激な円高修正とその円安による株価の上昇に加え、2014年4月の消費増税に向けた駆け込み需要や便乗値上げなどの影響が大きかった。

 リフレ派はこの消費増税によって個人消費が停滞して物価上昇を抑制したというが、その後も景気そのものは拡大している。消費税で物価がコントロールできるのであれば、そもそも物価安定のための金融政策は必要ないというのであろうか。

 それはさておき、その後の物価の動向はご存じの通り。なぜ物価目標が達成できないのかはすでに日銀が一番良くわかっているものだと思う。それでも目標達成時期の表記は続き、達成時期は先送りされた。

 そして2016年10月に日銀は長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定し、政策目標をリフレ派が主張していたような物価を動かすはずであった量から、金利に戻している。このタイミングで、日銀は展望レポートの概要に表記されていた物価目標達成時期を本文だけとした。さらに今回、本文中の物価目標達成時期も削除した。

 これで何か変わったわけではないが、注目されやすく、何度も先送りしていた物価目標達成時期を残す意味はそもそもなかった。異次元緩和の効果はすでに5年以上経過して薄れているが、さらに無理しての追加緩和で物価を引き上げられる可能性は極めて低い。市場に追加緩和の期待を抱かせるようなことになりかねない部分は削除し、とりあえず淡々と現在の政策を継続する姿勢を示すことが現状では重要となるとの判断ではなかろうかと思われる。


[PR]
by nihonkokusai | 2018-05-02 09:29 | 日銀 | Comments(0)

日銀による国債買入額の修正の可能性

 今年に入ってからの日銀による国債買入額の修正について、振り返ってみたい。

 1月9日の国債買入において日銀は残存10年超25年以下の買入額を1900億円と前回の2000億円から減額し、残存25年超も800億円と前回までの900億円から減額した。これは市況環境によるものというよりも、2018年度の国債発行計画でこの超長期ゾーンも含めて発行額が減額されるため、早めに手を打ってきたとの見方もできた。

 1月31日の国債買入において日銀は3年超5年以下について前回の3000億円から3300億円に300億円増額した。欧米の長期金利上昇を背景に日本の10年債利回りが0.1%に接近したことにより、この利回り上昇を抑制することが目的で増額したとみられる。

 2月2日の東京市場では欧米の長期金利の上昇を受けて、10年債利回りが0.095%まで上昇し0.1%に接近した。これに対し日銀は国債買入で5年超10年以下を4500億円と400億円増額した上で、指し値オペも10年債のカレントで0.11%の水準でオファーした。

 2月28日に25年超の国債買入額を700億円とし、100億円減額した。債券相場が戻り基調となり、イールドカーブのフラット化が進んでていたことでの修正というのが理由かもしれない。しかし、市場では大手機関投資家の意向があったとではとの観測も出ていた。

 4月27日現在で、日銀による国債買入は残存期間1年超3年以下が2500億円、3年超5年以下が3300億円、5年超10年以下が4500億円、10年超25年以下が1900億円、25年超が700億円となっている。27日に日銀が発表した「当面の長期国債買い入れの運営について」では、5月の1回当たりのオファー額レンジ、買い入れ回数ともに、全ゾーンで4月から据え置かれた。

 新年度入りしたことで、4月から国債の発行額はカレンダーペースで20年債以外は減額されている。日銀はこれに備えていたとみられるが、それでも例えば5年超10年以下は2月2日に増額した4500億円のままとなっており、このゾーンなど主体に今後の需給の逼迫も予想されることで、タイミング次第では今後の減額の可能性はありうるか。

 外為市場でドル円が反発基調となってきていることで、為替市場の動向からみて減額はやりやすくなってはいる。トレンドが円安となっていれば、国債買入の減額による影響は一時的となる可能性がある。ただし、ドル円の上昇に合わせて米国の長期金利も上昇してきていることで、日本の長期金利も上昇してくる可能性もあることで、特に5年超10年以下の減額は難しい面もある。為替市場では細かな買入額の調整でも動くときは動くだけに、減額があるとしてもそのタイミングを見定めるのもなかなか難しくなりそうである。


[PR]
by nihonkokusai | 2018-04-30 09:12 | 日銀 | Comments(0)

今年度最初の日銀の決定会合の動向と日銀による国債買入の行方

 4月26、27日に今年度最初の日銀金融政策決定会合が開催される。黒田総裁が再任され、副総裁は雨宮氏と若田部氏に変わって最初の決定会合となる。今回は展望レポートも公表されるが、大きな修正はないとみられ、金融政策そのものも現状維持が予想される。

 個人的に注目しているのが、若田部副総裁の動向である。前任の岩田前副総裁と同様に執行部として総裁と副総裁が一丸となって現在の政策を進めるのか、それとも持論を貫いて何かしらの反対票を投じるのか。いまのところは副総裁という立場からも議長案に反対票を投じることは考えづらいか。もし片岡審議委員と同様に若田部氏が反対票を投じるとサプライズとなる。

 債券市場関係者が注目しているのは、今後の国債買入額の修正かと思われる。こちらは決定会合で決めるものではないが、27日は月末ということで当日の夕方に「当面の長期国債等の買入れの運営について」が発表される。今年度の国債発行額はカレンダーベースで20年債を除き、2年、5年、10年、30年、40年の発行額が減額されている。これまでも日銀は国債買入の減額を行っていたものの、たとえば5年超10年以下などは増額されたままとなっている。

 ただし、別な要因もあって日銀は金額の調整がしづらい面もある。5月1日から国債の決済期間が「T+1」に短縮される。国債は売買約定日から起算して原則2営業日目の日に受渡し決済を行うことになる。これに向けて時間もかけて、しっかり準備はされていると思われるが、実際に始まってみないとわからない面もある。このため、国債の最大保有者でもある日銀にとってもかなり慎重に対処せざるを得ない面もあろう。国債の決済期間がT+1に移行してもスムーズに対応が可能となることを見定め必要があるかもしれない。

 ちなみに日銀は5月1日の国債の決済期間短縮化(T+1化)後、新たな市場慣行のもとでの取引が定着するまでの間、レポ市場の国債需給がタイト化する可能性があることで、レポ市場の国債需給のタイト化に備えた一時的な措置として、5月1日から11日までの間に実施する国債補完供給について、1日3回の入札の実施を可能とする扱いとするとしている。


[PR]
by nihonkokusai | 2018-04-26 09:30 | 日銀 | Comments(0)

デジタル通貨を中央銀行が発行すべきなのか

 日銀の雨宮副総裁はIMF・金融庁・日本銀行共催 FinTechコンファレンスにおける挨拶のなかで、中央銀行が発行するデジタル通貨に関してコメントしていた。

 日銀を含め多くの中央銀行は、歴史的には、支払決済手段の濫立やこれに伴う混乱に対処するために誕生した。中央銀行の登場により、それまでの、「数多くの支払決済手段の信頼性をいちいち調べなければいけない状況」から脱却し、支払決済システムにおける情報処理コストは大きく低減したと雨宮副総裁は指摘している(日銀のサイトにアップされている挨拶の邦訳より引用)。

 日銀が発行する日銀券を用いて支払いを行った場合には、相手がその受取りを拒絶することができない、つまり日銀券は「法貨としての強制通用力」を持っている。これはつまり日本国内で円を使う場合に、日銀券は制限なく使用できることになる。

 中央銀行は銀行券と中央銀行預金の供給に特化する一方で、民間銀行はこれを核とする信用創造活動を通じて、広義マネーとしての預金通貨を供給している。中央銀行と民間銀行による二層構造は、通貨制度の安定性と効率性を両立させる、歴史的知恵であったと言える(挨拶の邦訳より引用)。

 このため、もし中央銀行がデジタル通貨を自ら発行するとなると、単純化していえば、一般の家計や企業が中央銀行に直接口座を持つことになり、通貨制度の二層構造や、民間銀行を通じた資金仲介などに、大きな影響を及ぼす可能性があると雨宮副総裁は指摘している。

 南米ウルグアイの中央銀行はブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用した「法定デジタル通貨」の試験運用を開始した。スウェーデン中銀による「eクローナ」構想、中国人民銀行による「法定数字貨幣」の計画、オランダ「DNBcoin」の開発、カナダの「CAD-coin」など世界各国で研究が進んでるとされ、日銀も研究は進めていると思われる。

 しかし、現実的に我々が日銀に口座を持って、決済を行うということは技術的なものだけでなく、民間銀行の業務の在り方にも大きな影響を与えかねない。歴史によって生まれた通貨制度の二層構造が、いまのところ金融経済にとってはベターなものであり、そこに利便性の面だけで、中央銀行がデジタル通貨を発行するとなれば、金融のシステムが大きく変化する可能性もありうる。

 また、それによって効率的ではあるものの、個人や企業の資金の流れが一元管理されてしまうということにもなりかねない。現状ではキャッシュレス化の流れは必要なのかもしれないが、そのために中央銀行がデジタル通貨を発行するということはあまり現実的なものではないと思われる。


[PR]
by nihonkokusai | 2018-04-19 09:59 | 日銀 | Comments(0)

日銀法改正から20年、新日銀法の目的を再確認すべき

 1998年4月1日に日本銀行法の全文改正を内容とする日本銀行法(日銀法)が施行され、それから20年が経過した。日銀法の第一条と第二条には下記のように記されている。

第一条 日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。

第二条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。

 我々の持っているお札の表には赤い印章があるが、これは「日本銀行総裁」の印章で、「総裁之印」と篆書(てんしょ)という字体で書かれている。日銀券というお札は我々が安心して使えるように日銀総裁がその価値を保証していることになる。日銀はその日銀券(銀行券)を発行し、それが円滑に流動するようにさせることが大きな役割となっている。

 さらに物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念としている。この場合、物価の安定というのは、通貨価値を安定させることであり、通貨価値の大きな変動を抑えて、国民経済の発展を阻害しないようにさせることが目的となっている。

 ここではいくつか注意すべきことがある。通貨の価値については、あくまで対内的な価値であり、対外的な価値、つまり外為市場での円のドルやユーロに対する価値を安定させることが目的ではない。それは財務省の仕事となっている。

 もうひとつ、通貨価値を変動させることによって、国民経済の健全な発展を促すことは直接的な目的ではない。あくまで「資する」(ある物事に対し材料を与えて助けとする)ことであり、補助的なもので主導的なものとはなっていない。

 つまりは2%という物価目標を設定し、それを金融政策によって無理矢理達成させて、それによって景気を良くするという、現在の政策が本当に日銀法に書かれた理念にあっているのかは疑問である。

 2%が日本での適切な物価の安定すべき水準であるのかについても疑問が残る。その物価を金融政策が能動的に動かすべきなのか、そもそも金融政策で動かせるのかという疑問もある。無理矢理動かそうとして副作用はないのか。2%を金融政策で達成して本当に国民経済の健全な発展に資するのか。

 日銀の異次元緩和からは4月3日で5年が経過した。これにより金融政策だけで能動的に物価が動かせないことを日銀は自ら証明したことになる。それは消費増税があろうがなかろうか関係はない。さらに消費者物価指数に影響を与える原油価格の動向、外為市場の動向、原油価格の動向、さらに天候もそうであり、いずれも日銀が金融政策で動かせるものではない。

 しかし、結果として物価目標は達成できないにも関わらず、日本国債を4割以上も日銀が保有することになってしまい、日本の債券市場は仮死状態に陥っている。これをもって副作用はないなどと果たして言えるのであろうか。


[PR]
by nihonkokusai | 2018-04-10 09:53 | 日銀 | Comments(0)

4月9日から新執行部での体制がスタート、日銀の金融政策は変わるのか

 3月20日に雨宮正佳副総裁と若田部昌澄副総裁が就任した。4月8日に任期を迎える黒田東彦総裁は続投となり、4月9日から新執行部での体制がスタートした。雨宮理事の副総裁への就任により、空席となった理事ポストに内田真一名古屋支店長を昇格させる人事が4月1日付で発表されていた。内田理事は、国際局と国際関係統括を担当する一方、企画局・金融市場局、金融研究所は前田栄治理事が担うことになった。

 新体制となったとはいえ、雨宮副総裁は理事当時、日銀の大胆な金融政策の道筋を作った人物でもあり、それを補佐していたのが当時局長であった内田理事である。黒田総裁も続投ということで、日銀の金融政策についてはこれまでの姿勢を維持するというか、維持できるような調節を行ってくるものと予想される。

 企画担当となる前田理事は金融政策立案の責任者として、黒田総裁が率いる執行部を支えることになる。雨宮前理事の路線が継承されることになろうが、市場では日銀の出口戦略をかなり意識していることで、今後はどのようなかたちで出口戦略の道筋を示すことができるのかも注目されよう。

 波乱要因となりそうなのが、リフレ派とされる若田部副総裁の存在となるが、こちらも結果として岩田前副総裁と同様のスタンスになるのではないかと思われる。総裁と副総裁の執行部が一丸となって、物価目標の達成に向けて現在の長短金利操作付き量的・質的緩和を維持させていくスタイルを継続していくものと思われる。

 若田部副総裁がリフレ派としての持論を押し通す可能性もなくはない。とはいえ片岡審議委員のように現状の政策に異議を唱えることは、いまのところは考えづらいのではなかろうか。それでも最初の金融政策決定会合となる4月26、27日の結果については念のため注意する必要がある。

 現在の日銀の金融政策に大きな変化が生じるとなれば、その要因となりそうなのは安倍政権の動向と言える。目標とする物価については足元で前年比プラス1.0%となっているが、ここから2%まで上昇していくことは、原油価格の急騰等がなければかなり難しい。2%を絶対目標と置いている以上は、いまの金融政策そのものを動かすことは難しくなる。しかし、今秋の自民党総裁選の結果として、首相が変わるようなことになるとアベノミクスの柱でもあり、出口を封じ込めている格好となっている現在の日銀の金融政策の修正が迫られる可能性があるかもしれない


[PR]
by nihonkokusai | 2018-04-09 10:19 | 日銀 | Comments(0)

日銀の異次元緩和5周年、その間に何が起きて今後はどうするのか

 日銀は2013年4月4日の金融政策決定会合において「量的・質的金融緩和」の導入を決めた。それから5年が経過した。

 量的・質的金融緩和では、消費者物価指数(除く生鮮食料品)、いわゆるコアCPIの2%という物価目標に対しては2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するため、マネタリーベース(現金通貨と日銀の当座預金残高)および長期国債・ETF(上場投資信託)の保有額を2年間で2倍程度とし、長期国債の平均残存年数を現行の2倍以上にするなど、量・質ともに次元の違う金融緩和を行うとした。その中心となるのが大規模な国債の買入によるマネタリーベースの倍増であり、またイールドカーブ全体にわたって引き下げようというのが中間的な目標(総裁会見より)となっていた。

 リフレ的な政策を全面に打ち出した安倍政権によるアベノミクスは、その一本目の矢の仕上げとして日銀に大胆な金融緩和を要求し、それを自ら選んだ黒田日銀総裁が実行に移した(実際には当時の雨宮理事が主導したとみられる)。 いわゆる日銀理論をベースとした政策から金融政策のレジーム・チェンジ(体制転換)が行われ、リフレ政策をベースにした政策に転じることになった。

 この背景には安倍首相のブレーンとなった浜田宏一氏や本田悦朗氏らの影響が大きかったとみられる。2013年3月20日にはリフレ派筆頭ともいえる岩田規久男氏が日銀の副総裁に就任した。その後、原田泰氏や櫻井眞氏、片岡剛士氏などがリフレ派に推されて審議委員となった。今年3月20日からは岩田氏に変わって、やはりリフレ派の若田部昌澄氏が副総裁に就任している。

 それではこのリフレ派が押した政策がどのような結果をもたらしたのか。目標が物価である以上はその結果も当然、物価で確認する必要がある。目標そのものは途中で消費者物価指数の総合から生鮮食料品を除く総合(コア)へと修正されたが、コアCPIのピークは2014年4月のプラス1.5%となったが、2016年7月にはマイナス0.5%まで低下し、直近ではプラス1.0%となっている。2013年4月から2018年2月までのコアCPIの平均値はプラス0.4%となっていた。

 あれだけ大胆な金融緩和策を行っていながら、なぜ物価目標は達成されないのか。岩田前副総裁は、その要因として2014年4月の消費増税の影響を指摘しているが、消費増税がなかったならば物価目標は達成できていたのであろうか。物価目標は達成できずとも雇用は改善し景気も拡大しているため、予想通りの金融緩和の効果はあったとする見方もあるが、それはいったいどのような波及経路からそのような結果が導き出されるのか。

 ちなみに日銀は物価目標が達成できないことなどから2014年10月に量的・質的緩和の拡大を決定、2015年12月に金融緩和の補完措置を決定、2016年1月にマイナス金利付き量的・質的緩和の導入を決定、同年9月に長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定し、この際に物価目標は総合からコアに置き換え、金融政策の調整目標を量から金利に戻している。

 量的・質的緩和の拡大は円安効果を狙って単純に規模を拡大しただけだが、国債の買入の量には現実的な限界があり、2015年12月の補完措置で買入れの期間を延ばす修正を加え、量に限界があることで2016年1月にマイナス金利政策を行ったものの、金融機関等からの批判もあり、同年9月に長短金利操作付きとして批判をかわした上で、限界のある量から金利に調整目標を変更させて、当初に想定していたイールドカーブ全体にわたって引き下げることを前面に打ち出してきた。結果としてそれで物価は上がるのかという問題は残り、これだけの大胆な緩和策を打ち出して、その後始末はどうするのかというのも今後の大きな課題となってくる。


[PR]
by nihonkokusai | 2018-04-05 09:26 | 日銀 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー