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カテゴリ:日銀( 1155 )

日銀によるETFの購入について再考の必要はないのか

 日銀はETFと呼ばれる上場投資信託を購入するかたちで日本の株式を購入している。これが決められたのは、2010年10月5日の決定会合においてであった。これは包括緩和とも呼ばれたが、資産買入等の基金を創設し、「国債、CP、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)など多様な金融資産の買入れと固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを行うため、臨時の措置として、バランスシート上に基金を創設することを検討するとした。

 10月28日の決定会合において、指数連動型上場投資信託を0.45兆円程度、不動産投資信託を0.05兆円程度という買入限度額を設定した。11月5日には買入対象の詳細や信託銀行を受託者とする買入方式などの具体的な運用を定める買入基本要領等を決定。2010年12月から買入が開始された。

 その後日銀は金融緩和の強化として、ETFおよびJ-REITを含めて買入額を増加させてきた。2013年4月の量的・質的緩和策、いわゆる異次元緩和を決定した際には、ETFおよびJ-REITの保有残高が、それぞれ年間約1兆円、年間約300億円に相当するペースで増加するよう買入れを行うとした。

 その後も追加緩和によって買入金額は増加した。現在では保有残高はそれぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行うとしている。

 ただし今年7月31日の決定会合では、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとするとしている。

 日銀が国債を大量に買い入れ、長期金利を抑えつけることによる弊害が債券市場の機能低下という格好で起きている。いまのところ日銀によるETFを通じた株式購入が、株式市場の機能低下を招くといった弊害は目に見えるかたちではおきてはいない。しかし、株式市場における日銀依存度が高まっていることは確かであり、適正な価格形成という市場機能にも影響を与えている。

 実質的に日銀が筆頭株主になっているような企業も多い(実際には筆頭株主に日銀の名前が出てくることはない)。さらにETFを日銀が購入する際に組成した金融機関に支払う手数料なども一部で問題視されている。

 そもそも日銀がETFを通じて、2%の物価上昇をもたらす経路が良くわからず、追加緩和という名目で買入金額だけが増加されていることに疑問はなかったのか。市場への影響がこれ以上大きくなる前に日銀によるETFなどの買入についても再考する必要があるのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2018-09-23 10:26 | 日銀 | Comments(0)

9月の日銀金融政策決定会合は現状維持か

 9月18日から19日にかけて日銀の金融政策決定会合が開催される。前回7月30、31日の決定会合では金融政策の微調整が行われた。この際の公表文のタイトルは「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」となっていた。強力と強化という言葉が入り、金融緩和策の強化のようにみえたものの、この際の政策調整には、リフレ派代表といえる原田委員と片岡委員が反対票を投じていた。

 強化策のひとつともいえる「政策金利のフォワードガイダンス」について日銀は次のように説明していた。

 「日本銀行は、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。」

 これに対して原田委員と片岡委員は、次のような反対理由を挙げていた。

 「原田委員は、物価目標との関係がより明確となるフォワードガイダンスを導入することが適当であるとして反対した。片岡委員は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成する観点から、長短金利維持のコミットメントではなく、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には追加緩和手段を講じるとのコミットメントが適当であるとして反対した。」

 緩和強化としているにもかかわらず、リフレ派代表といえる原田委員と片岡委員が反対票を投じていることからも、これは緩和策により踏み込んだものではないことが窺える。これには「2019年10月に予定されている消費税率引き上げ」というさほど遠くないタイミングと「消費税率引き上げ」という意外な組み合わせのものを持ってきたことについて、リフレ派がやや懐疑的な見方をしていたとも言えるのかもしれない。

 さらに長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)についても、原田委員と片岡委員は反対票を投じている。

 「原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。片岡委員は、物価が伸び悩む現状や今後のリスク要因を考慮すると、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう、金融緩和を強化することが望ましく、長期金利操作の弾力化は「ゼロ%程度」の誘導目標を不明確にするとして反対した。」

 原田委員と片岡委員は長期金利の操作目標の柔軟化には反対であり、むしろ長期金利の操作目標を引き下げて、金融緩和強化を主張している。債券市場の機能低下などたぶん眼中にはなく、長期金利を引き下げて、どのような経路で物価が上昇するという経路についても曖昧であるが、緩和ありきの姿勢を貫いている。

 それはさておき、9月18日、19日の日銀の金融政策決定会合では、金融政策は7月の修正の影響を見極めたいと現状維持となることが予想される。7月会合以降の長期金利は当初、乱高下したが、その後は落ち着いている。まだ柔軟化したレンジの上限を試すような動きも出ていない。このため、当面は様子をみるためとして現状維持が予想される。

 前回反対票を投じた原田委員と片岡委員は今回も反対票を投じるとみられる。


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by nihonkokusai | 2018-09-12 09:46 | 日銀 | Comments(0)

金利なき世界は健全といえるのか

 シェアハウスへの不適切な融資を巡る問題で、スルガ銀行の第三者委員会が調査報告書をまとめた。審査資料の改ざんなど様々な不正に、支店長を含む多数の行員が関与、借り手の預金残高を改ざんして自己資金があるように装い、融資条件をクリアさせるなど悪質な手口が目立っていた(読売新聞)。

 銀行など金融機関にとって、本来その収益源となるのが金利である。しかし、日本の金利はデフレ脱却というか2%の物価目標を達成しなければならないとの政府の意向を受けた日銀による異次元の金融緩和策で押しつぶされている。短期金利とともに市場で流通している中期債の利回りもマイナスとなっている。長期金利も0.1%程度に抑え込まれてしまっている。

 金融機関が金利で稼げないとなれば、よりリスクのある資産で運用するか、手数料収入を得るため投資信託の販売などを積極化する必要がある。本来であれば、融資などについてもかなり慎重であり、その運用も本来手堅いはずの銀行などの金融機関が、その収益を求めてかなりリスクのある運用や、結果として顧客にリスクを負わせるかたちでの収益増を求め、なかにはスルガ銀行のように違法な取引にも手を出す事例まで出てきてしまっている。

 銀行などが販売する投資信託で、顧客である個人がなかなか利益を挙げられないという事例も目立つようである。これは昔の証券会社が行っていたような途中売却と新規買入で回転させて手数料を得るようなこともあるのではなかろうか。個人向け国債についても、解約できない期間を過ぎると売却が目立つとされる。これも新規買入の際の募集手数料目当てではないかと勘ぐられてもいたしかたない。

 金利がない、もしくは金利がマイナスの状況下においては、金融機関が無理な営業をせざるを得なくなることはある意味、致し方ない面もあるかもしれない。しかし、決してこれは健全な姿とはいえない。個人にとっての、貯蓄から投資への動きへの阻害要因ともなりかねない。

 個人にとってもほとんど金利が付かない世界のなかで、より高い金利を求めるあまり、リスク商品に手を出して、収益どころか損失が発生している事例も多かろう。

 金利なき世界いの大元の原因が日銀の政策だけにあるわけではない。しかし、ファンダメンタルズなどとは乖離し、我々が本来得られるはずの、金融機関にとっては利ざやとなるはずの金利を無理矢理潰して、それが金融機関に、いや我々にも負担をしいていることは確かではなかろうか。それでいったい、政府債務リスクを覆い隠す以外のもので、何が得られているというのであろうか。


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by nihonkokusai | 2018-09-11 09:57 | 日銀 | Comments(0)

日銀は実質的に長期ゾーンの国債買入を減額、市場はこれを織り込み済み

 日銀は6日、10時10分に国債買入をオファーした。対象は5年超10年以下、オファー額は4500億円。前回の一回あたりのオファー額の4000億円から500億円増額した。月額ベースに引き直すと8月は同年限の買入は6回あり、総額2兆4000億円となっていた。これに対し9月は買入予定が5回であり、途中で金額の変更がなければ、4500億円5回の2兆2500億円となることで、実施的に月額ベースで1500億円の減額となる。

 日銀が8月31日の夕方に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」では、いくつか前回から修正ポイントがあった。

 「日本銀行は、長期国債等の買入れについて、弾力的に実施することとしており、当面、以下のとおり運営することとしました(2018年9月3日より適用)。」

 今回は「弾力的に実施することとしており」という表現が入ってきているのである。7月の決定会合でも、「弾力的な買入れを実施する」との表現があった。念のため「弾力的」という単語の意味を確認したところ、状況に応じて柔軟に対応する」とあった。

 9月の国債買入の回数を中期と長期ゾーンについて、8月までの6回から5回に減らしたのは何故か。9月は三連休が2回あり、日銀の決定会合も予定されており、国債買入のスケジュールがかなりタイトになるためというのが表向きの理由と思われる。しかし、ここには「弾力化」つまり「柔軟化」の意味合いも込められていたのではなかろうか。

 それでは今回の日銀の国債買入による「弾力化」の目的とは何か。日銀はこれまでのように長期金利を完全に抑え込む姿勢から、多少なり変動できるように幅を拡大させてきた。この目的のひとつに債券市場の機能回復が挙げられる。

 日本取引所グループのサイトのデータによると8月の国債先物の取引代金は前年同月比49.4%増の134兆円となった。取引金額は8月としては2007年以来11年ぶりの水準だとか(日経新聞電子版)。

 ただし、盛り上がったのは一時的であり、その後再び債券市場の値動きは小さくなり、債券先物の日中値幅が過去最低の3銭となったり、10年債カレントの出合いのない日も出てきた。

 それでも国債買入の弾力化などにより、少しでも債券市場に動きが出るようにと今回の国債買入での修正が行われたのではないかと思われる。

 実質的な買入減額はステルステーパリングとも呼ばれているが、これはすでにGDP規模にまで膨らんでしまった日銀の資産規模に対する警戒も含まれていよう。物価目標達成は見通せず、このまま巨額の買入を続けていくと、債券市場の機能低下などの副作用の蓄積とともに出口政策がより困難になる。そのためには少しでも買入ペースをダウンさせる必要がある。出口戦略もなく突っ走しれば何が待ち構えていたかは歴史が証明している。

 それでは日銀としては長期金利の上昇の後押しをしているのかといえば、たしかに買入の実質減額はそのように見える。しかし、極端に狭いレンジ内に抑え込む必要性がなくなり、ある程度のテーパリングが必要となれば、多少の長期金利の動きは容認する構えなのではないかと思われる。ただし、米国債などの動向にも影響を受けることで、日銀の動きだけで長期金利の動きがすべて決まるわけでもない(はず)。長期金利の動きにもう少し幅を持たせたいととの意味合いも大きいのではないかと思われる。

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by nihonkokusai | 2018-09-07 10:05 | 日銀 | Comments(0)

日銀は国債買入を実施的に減額、注目は本日の長期ゾーンの国債買入額

 9月4日の日銀による国債買入オペレーションにおいて、中期ゾーンの買い入れ予定額は1年超3年以下を前回から500億円増額の3000億円、3年超5年以下を500億円増額の3500億円とした。それぞれ500億円増額した格好ながら、8月31日の夕方に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」で明らかにされたように、カレンダースケジュールの都合もあってか買入の回数を8月の6回から5回に減少させていたことによる増額であった。

 「当面の長期国債等の買入れの運営について」で示された1年超3年以下の買入額は、2000~4000億円程度となり、8月の2000~3000程度から上限を1000億円増額した。市場参加者というか日銀もこの中央値を意識しているようで、8月の中央値が2500億円、9月の中央値が3000億円となり、増額もそれに沿ったものとなった。

 つまりこれにより、1年超3年以下の買入額は、8月は2500億円が6回(1兆5000億円)から、9月は3000億円が5回(1兆5000億円)となり、1年超3年以下の買入額は総額は不変となった。

 3年超5年以下についても、2500~4500億円程度と、8月の2500~3500億円程度からレンジの上限を1000億円増額した。中央値については8月の3000億円から3500億円となり、3年超5年以下についても中央値でのオファーとなった。

 これにより、3年超5年以下については8月が3000億円が6回(1兆8000億円)から3500億円が5回(1兆7500億円)となり、月額ベースでみれば500億円の減額となる。

 簡単な計算といえばそれまでだが、表面上は一回当たりの買入の増額となっているし、レンジも上限が引き上げられ、いかにも増額のように見えながらも、実質減額となる。ただし、500億円程度の減額という見方もできる。

 減額そのものは債券市場関係者はむしろ歓迎するであろう。これに対し、過去に日銀の国債買入減額に敏感に反応していた外為市場や、それをみて反応していた株式市場には、今回の実質減額はほとんど影響を与えなかった。

 それはさておき、日銀は中期ゾーンだけでなく、長期ゾーンの買入回数も9月は減らしている。9月5日に10年国債の入札があり、6日には長期ゾーン(5年超10年以下)の国債買入が予定されている。

 中期ゾーンに習えば、長期ゾーンの8月の買入レンジ3000~5000億円となり、中央値と買入額は4000億円となっていたところ、9月のレンジは3000~6000億円に修正されたことで中央値は4500億円となる。

 もし6日の買入額が4500億円と一回あたりの買入額を500億円増額するとなれば、月額換算で4000億円6回(2兆4000億円)が、4500億円5回(2兆2500億円)となり、こちらは1500億円の減額となる。さすがに1500億円の減額となれば、それなりに影響も出るかもしれないが、こちらの動向も要注目となる。ただし、債券市場では1500億円の減額もそれなりに織り込んではいる。


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by nihonkokusai | 2018-09-06 08:07 | 日銀 | Comments(0)

日銀は国債買入の回数を減少、その目的は何か

 日銀が8月31日の夕方に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」では、いくつか前回のものと異なるところがあった。

 前回の7月31日に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」は、本来であれば公表時間が夕方17時予定であったものの、当日の金融政策決定会合後に発表されたことで発表時間が繰り上げられた。これはどうしてなのか。

 7月31日の決定会合にて決定された金融政策の修正は、「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」というタイトルながら、実質的な柔軟化策を決定したものといえる。それを良く示すのが、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)のところの長期金利の項目で、前回と次のように変わっていた。

 6月会合「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。」

 7月会合「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし 、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」

 このように7月会合では「経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし」、「弾力的な買入れを実施する」としていた。

 ただし、引き締めスタンスに転じたわけではないことを示すためにも、17時ではなく決定会合後に、「当面の長期国債等の買入れの運営について」も公表し、すぐ日銀の国債買入スタンスに変化があるわけではないことを示した。

 そして、そのときに公表された「当面の長期国債等の買入れの運営について」の冒頭のコメントは次のようになっていた。

 「日本銀行は、長期国債等の買入れについて、当面、以下のとおり運営することとしました(2018年8月1日より適用)」

 これに対して、今回8月31日に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」の冒頭のコメントは次のようになっていた。

 「日本銀行は、長期国債等の買入れについて、弾力的に実施することとしており、当面、以下のとおり運営することとしました(2018年9月3日より適用)。」

 今回はそれとなく「弾力的に実施することとしており」という表現が入ってきているのである。弾力的だから上もあるかもしれないが、目的は下であろうと推測される。

 8月31日と7月31日の「当面の長期国債等の買入れの運営について」では、1年超5年以下の買入額のレンジの上限がそれぞれ1000億円引き上げられている。また、5年超10年以下も同様に上限が1000億円引き上げられた。

 その代わりに買入回数が、1年超5年以下と5年超10年以下が8月の6回から5回に減っているのである。これについては9月は3連休が2回あり、決定会合もあり、国債入札日を除く買入日が、かなりタイトになってしまうためとの見方もある。

 市場参加者がひとつの目処としている買入額のレンジを中央値を引き上げることによって、回数の減少分をある程度補うことを示したともいえる。

 しかし、レンジの上限を増やそうが、一回あたりの買入額がきちんとその分増加させるのかどうかは不透明で、オペの買入額次第では、これは実施的な買入弾力化・柔軟化の一環とみることもできるかもしれない。

 7月31日の債券先物はこれを受けて素直に下げた。今回の日銀の「当面の長期国債等の買入れの運営について」の一部修正は債券先物にとっては売り材料と認識されたのである。


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by nihonkokusai | 2018-09-04 09:45 | 日銀 | Comments(0)

異次元緩和への対案、そもそも2%の物価目標はいらない

 日銀の異次元緩和を批判すると、では対案があるのかという問いが来ることがある。そもそも対案というのは、何かしらに窮している際にそれを解決すべき手段が必要な際に必要とされるものではなかろうか。

 日本でも中央銀行による積極的な金融緩和によって欧米並みの物価水準を達成させることで、国民の生活も豊かになるという発想そのものに間違いはないのであろうか。2%という物価目標を達成すれば、我々の生活は豊かになるのか。

 デフレが良くない。デフレを止めるためには物価を金融政策で欧米並みの2%に引き上げなければならないという理屈にもいくつもの疑問点がある。

 デフレが何故起きたのか。日銀の金融緩和が足りなかったからなのか。そもそもデフレがスタートしたとされる1998年頃の状況をみるとバブル崩壊による金融システム不安による影響が大きく、そこにアジアの通貨危機等も加わるなどしたこと、さらに日本国内の雇用体系の変化などによる影響が大きい。これらは日銀の金融緩和でどうにかなるものではなく、あくまで金融緩和は鎮静剤の役目を果たすぐらいであろう。

 日銀による2000年のゼロ金利解除か早すぎたとの意見もあった。そもそもゼロ金利政策はデフレ防止で行われたものではない。その後のITバブル崩壊を予言できたのであれば、確かに解除に急ぐ必要はなかったかもしれないが、それには予言者が必要になる。

 その後もサブプライムローン問題からリーマン・ショック、さらにギリシャ・ショックからの欧州の信用不安に繋がる。この間に世界的な金融経済危機が起きており、日銀も含め積極的な金融緩和策が講じられた。この際の日銀の緩和規模が足りず、円高が進行したとの見方もある。いやいや、それだけ日本の通貨が信用されていたことで円が買い進まれたとの見方の方が素直な見方ではなかろうか。ただし、その円高も行き過ぎた。

 その反動がアベノミクスによって起きたわけではあるが、世界的な金融経済危機が後退していたタイミングであっただけであり、その円高調整が終了後は現在の為替市場をみてもわかるとおり、落ち着いている。日銀が異常な緩和策を行わなければ円高になってしまうとの意見もあるが、米国の利上げによるドル高もたかが知れていることをみると、一概にそのようなこともいえない。

 物価上昇のため、円高解消のためとして、非常時の対応となるような極端な金融緩和策は必要なのか。そもそも、どのような経路を通じて大胆な緩和策が物価に働きかけるのか。

 アベノミクスが登場したのは、欧州の信用不安の後退時期と重なる。その後の世界経済は米国を主体に回復基調にあり、日本経済も同様で雇用も回復してきた。日本経済の回復は日銀の異次元緩和がなければ起きなかったのか。そのようなことはない。異次元緩和で物価は2%に上がることもなかった。

 債券市場や株式市場に歪みをもたせ、財政ファイナンスに近い政策を行ってまでもいったい何をしたかったのか。代案は何かと問われれば、そもそも2%の物価目標はいらない。通常の金融政策を維持させることで、柔軟な金融政策を行える状況とし、非常時には金融市場を通じて心理的な沈静化を図れるようにする。それがいまの金融政策の在り方ではないかと思う。金融政策は直接、物価や景気に働きかけてそれを動かせるものではない。


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by nihonkokusai | 2018-08-23 15:51 | 日銀 | Comments(0)

日銀の総資産が日本のGDPを上回る。これで良いのか

 日銀が14日に発表した営業毎旬報告によると、日銀の保有資産が548兆9408億円となり、2017年の名目GDPの546兆円を上回ったひとがわかった。日銀の総資産が通年ベースのGDPを上回るのは初めてとなる(時事通信)。

 日銀の保有資産の内訳を見るまでもなく、その多くを占めているのが国債であり、466兆円もの国債を保有している。これほど多くの国債を日本の中央銀行である日銀が保有しているのは何故なのか。

 危機的な財政状態に陥っている日本政府を助けるためなのか。政府は日銀が大量に国債を買い入れている上、長期金利まで抑え込んでいるので、助かってはいるが、これが主目的ではない(はずである)。もしこれを目的とするとなれば、財政ファイナンスとなってしまう。

 危機的な日本の財政状態により、日本国債に売りが集中してしまったため、日銀が買い手となっているのか。それも違う。日本国債は日銀が大量に購入する以前も、投資家の買いによって国債は順調に消化されており、国債利回りが急騰(国債価格が急落)するようなことはなかった。

 それでは世界的な金融経済危機、いわゆるリーマン並みの危機が訪れていたため、非常時というか有事対応で日銀が国債を購入することで資金供給を行っていたのか。それも違う。アベノミクスと呼ばれたものが始まったタイミングは、まさにそのような世界的危機が沈静化に向かっていた最中であった。

 それならば何故、これほどまでの国債を購入して日銀の資産がGDPを超えるまでになってしまったのか。それはこれだけ中央銀行が大胆に国債を主体に資産を買い入れれば、物価が2%を超えて上がるという説を鵜呑みにした政府の意向によるものであった。

 その結果はどうなったのか。日銀の物価目標は異次元緩和導入後、5年経過しても達成する気配はなく、日銀もその物価目標達成時期を更に先送りしている状況にある。そろそろ、日銀の大量の資産買入と物価とは連動していないことを素直に認めた上で、資産の買入を停止し、これ以上の中央銀行の資産水ぶくれ状態を解消することを意識すべきときなのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2018-08-16 10:02 | 日銀 | Comments(1)

ある程度の弾力性を回復した日銀の金融政策

 7月30、31日に開催された日銀金融政策決定会合の主な意見が公表された。この決定会合では、政策の修正が行われた訳ではあるが、政策修正に向けてどのような意見が出ていたのかを確認してみたい。

 ・「物価安定の目標」の実現には時間がかかるものの、2%に向けたモメンタムは維持されていることから、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが必要である。

  議長である黒田総裁の意見のように思われる。「実現には時間がかかる」、「粘り強く続けて行く」あたりがポイントになる。

 ・経済の需給が適度に引き締まった状態をできるだけ長く維持することが重要である。そのためには、金融緩和政策の長期化に伴う副作用に十分配意し、その影響を可能な限り軽減すべく、政策の枠組みに見直しの余地がないか、真摯に点検を続けていくことが肝要である。

 今回の修正については雨宮副総裁が主導したとの見方もあるが、この意見は雨宮副総裁のものではないかと思われる。公表文や黒田総裁の会見にはみられなかった「副作用」という言葉が使われている。その上で、調整の可能性を示唆している。

 ・「物価安定の目標」の実現に向けた揺るぎない姿勢への信認を確保するため、政策金利のフォワードガイダンスを導入し、目標実現に対するコミットメントを強化すべきである。

 リフレ派などを納得させるためのフォワードガイダンスの導入だと私はみている。

 ・金融緩和を息長く続けるための枠組みの強化ではなく、息長くならないように金融緩和自体を強化することが必要である。フォワードガイダンスは、総需要やインフレ期待を刺激し、金融緩和が長期化することを食い止める観点から設計することが重要である。

 これはリフレ派の片岡委員あたりからの意見か。そもそもリフレ派が異次元緩和を日銀に押しつけて、その矛盾から複雑な金融政策となってしまっているわけではあるが、この意見については確かに納得しうる面もある。ただし、金融緩和自体を強化すれば物価目標は達成できるのかという大きな疑問は残るわけではあるが。

 ・長期金利の変動幅については、「イールドカーブ・コントロール」導入後の金利変動幅、概ね±0.1%の幅から、上下その倍程度に変動しうることを念頭に置くことが適切である。

 長期金利の変動幅について「倍」という表現が出てきた。

 ・長期金利操作の弾力化は、市場機能の維持・向上に資すると考えられる。現状より金利が幾分上昇しても、経済・物価への影響は限定的とみられる一方、金融仲介機能への累積的な影響の軽減と政策の持続性強化に効果が見込まれる。主要国の足もとの長期金利の動向を参考にすると、わが国の金利操作にあたっても±0.25%程度の動きを許容することが適切と考えられる。

 発言内容からみて銀行出身の鈴木委員の発言か。「±0.25%程度」との意見である。個人的に今回の長期金利コントロールのレンジ拡大については、0.4%でも良いではないかと考えていたが、現実的な落としどころは0.2%あたりかなと見ていた。0.25%という刻みは特に海外の参加者からみて利上げにも見えてしまう懸念があるためである。ただし「倍程度」との表現には0.25%あたりまで含まれている可能性もなくはないかもしれない。

 ・長期金利の変動幅として、概ね±0.1%の幅から、上下その倍程度に変動しうることを念頭に置くことが大方の委員の合意となるのであれば、記者会見でこれを明らかにしてはどうか。

 良い意見だと思う。

 ・中長期の予想インフレ率が弱い現時点で、長期金利が上昇しうることも許容する政策調整を行うと、実質金利が上昇し、物価の伸び悩みを助長しかねない。

 0.1%程度の引き上げを前提だとすると、何をおっしゃっているのかわからない。

 ・今回の「枠組み強化」は、ある程度の弾力性を持って運営するという量的・質的金融緩和の元来有する意図を徹底することにより、政策の持続性と柔軟性を高めて、金融緩和の長期化に備えるものである。こうした措置は「物価安定の目標」の実現に向けた道程をより確実にするものである。

 今回の修正の意図はこの意見に集約されていると思う。今回の修正そのものは個人的にも歓迎している。しかし、ある程度の弾力性を持つことは当初から絶対に必要なものであったはずである。2016年9月の長短金利操作付き量的質的量的緩和で量の柔軟性を持たせ、今回は金利の柔軟性を多少なり回復した。しかし、柔軟性を持たせるためだけにこれだけの労力が必要というのもおかしな話である。


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by nihonkokusai | 2018-08-09 10:07 | 日銀 | Comments(0)

日銀の新たな政策を解説してみた

 7月31日に日銀が決定した新たな政策については、少しわかりづらいものとなっているので、あらためて解説してみたい。

 今回の日銀の決定会合の公表文のタイトルは「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」となっている。これについては、あくまで今回の政策は緩和強化にあるとの見方と内容は副作用の軽減化策ではないのかとの見方に分かれる。緩和強化というのはフォワードガイダンスを導入することからも確かであり、緩和を続けるとの意志の現れだが、なぜか消費増税が出てくる。消費増税が景気物価に悪影響を及ぼすからとの見方がある一方、消費増税は物価にそれほど影響あったか疑問視する声も出ている。

 イールドカーブ・コントロールについて内容はこれまでと同じ。ただし、金利は経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動、と付け足されている。0.1%だろうが0.2%であろうが、ゼロ%程度に変わりない。ここは債券市場の機能回復を目的としたものと言えるのではなかろうか。

 マイナス金利が適用される政策金利残高については」長短金利操作の実現に支障がない範囲で、現在の水準から減少させる「現在の水準の平均して10兆円程度から5兆円程度にする。短期金利の誘導目標はマイナス0.1%から変わってないものの、今回の措置は短期金利を多少なり引き上げるようにも思える。

 そして、ETFの銘柄別の買入れ額を見直して、TOPIXに連動するETFの買入れ額を拡大する。購入する銘柄が偏るのを防ぐことが目的で量を減らすのが目的ではないように見える。しかし、長期国債以外の資産の買入れは市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとするとある。状況に応じて減らせる仕組みにした。もちろん増やす選択肢もあるが、株式市場関係者からも日銀のETF買いは株価形成を歪めているとの見方も出ている。

 そもそも今回の政策は、あくまで強力な金融緩和継続のための政策であるが、内容をみると枠組み柔軟化のようにも見える。様々な不確実性を考慮して、現在の政策を維持していくのが目的だが、今回の修正は、債券市場の機能が低下してしまったことが大きな要因となる。しかし、長期金利目標値のゼロ%を引き上げることが目的ではない。それでも0.1%から0.2%に許容範囲を引き上げたが、そのあたりは誤差範疇で政策の効果には影響ないかもしれない。

 そもそも今回の長短金利操作付き量的質的緩和政策(改ニ)で効果が出るのか。物価上昇のモメンタムに変化はないと日銀は主張しているが、コアコアCPIなどをみると、モメンタムを感じない。それでも雇用は改善して、景気拡大は続いている。それは世界経済の回復による影響が大きく、異次元緩和はどこまで効いているのか。日銀の大胆な緩和策がなければ、景気はもっとひどい状態に陥っていたとの見方もあるが、何もしなくても日本の景気は回復していた可能性も高く、副作用が拡大しただけではないかとの見方もある。このあたり話が噛み合わない。その噛み合わなさが、今回の政策修正をわかりづらくさせている。


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by nihonkokusai | 2018-08-07 09:45 | 日銀 | Comments(0)
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