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カテゴリ:日銀( 1136 )

日銀は異次元緩和による副作用の軽減策を検討か、日銀の英断を期待したい

 日銀の雨宮副総裁は以前、朝日新聞のインタビューで「物価上昇率2%」について、「簡単に機械的に達成することは難しくなっている」と認め、7月の金融政策決定会合で要因を再点検する方針を示した。

 「もう一度物価が上がりにくい理由、物価観の形成の仕方などを点検する。物価動向について何が起きているのかをきちんと詰める」とも語っていた。

 その結果次第では簡単には物価目標は達成できず、このままの状態では半永久的に異次元緩和を続けざるを得ない状況に陥る可能性もあるのではなかろうか。そうなると懸念さけるのが、異次元緩和による副作用となる。

 副作用のひとつが国債市場への影響となる。すでに債券先物は日中、数銭しか動かず、現物債もカレント物と呼ばれる直近発行された国債までもが日本相互証券で出合わない日が何日も出てきている。相場が動かなければ、債券市場関係者はファンダメンタルなどに応じた金利の調整といった経験を積めないばかりか、人材も流出しつつある。また膨大な国債を抱えていてもそれによるリスクへの意識がかなり薄れてきていると言わざるを得ない。国債利回りの上昇に耐えうる市場でなくなってきている。

 雨宮副総裁は「副作用が緩和のメリットをひっくり返す大きさにはなっていない」としつつ、「(副作用が)知らないうちにたまっていることもあるので、注意深く見ていく必要がある」と指摘していた。その副作用としては金融機関の体力を奪っていることもある。

 6月14、15日に開催された金融政策決定会合における主な意見で、ある委員から「金融機関では、保有有価証券の評価損益の悪化に加え、低収益店舗の減損リスクも生じてきている。」との意見が出ていた。

 国際決済銀行(BIS)の関連組織は5日公表した報告書の中で、低金利の長期化が銀行収益の下押しなどを通じ「金融システムの脆弱性の原因になりうる」と警鐘を鳴らした(日経新聞)。これは日本に限ったことではないものの、異次元緩和による日本の金融機関への影響も危惧すべきものとなる。

 時事通信は「日銀は大規模な金融緩和が長期化する中、金融機関の収益悪化や国債取引の低迷など緩和がもたらす副作用の軽減に向け本格検討に入る。」と伝えている。

 「今月末の金融政策決定会合でまとめる経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、物価見通しを下方修正する見込み。現在の大規模緩和策を抜け出す「出口」が見えない中、政策委員の一部でも、副作用への警戒感が広がっており、会合では突っ込んだ議論となりそうだ。」(時事)。

 この時事通信の記事は気になるところ。7月の決定会合で物価が上がらない要因を再点検し、このまま異次元緩和を続けて行くことによる副作用についても検討し、副作用を軽減しつつも大胆な緩和を継続するための政策について検討してくる可能性がある。

 ここにきて日銀の国債買入の減額などに為替市場が過剰反応してこなくなるなど、微調整イコール円高との認識が後退してきている状況も修正を行いやすくしているのではなかろうか。

 これにより、8月には何らかの調整を日銀が行ってくる可能性がある。国債やETFなどの買入額の柔軟化、そして長期金利コントロールの柔軟化などが候補となるのではないかと思われる。金融機関の収益など考慮するとマイナス金利政策をまず止めるべきと思われるが、これについてはややハードルは高いのではなかろうか。いずれにしても日銀の英断を期待したいところである。


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by nihonkokusai | 2018-07-13 10:10 | 日銀 | Comments(0)

日銀の異次元緩和は神の領域を侵したものなのか

 日銀の原田泰審議委員は石川県での金融経済懇談会における挨拶で、金融政策に対する批判への若干の反論として次のように説明を行っていた。

 「その中で、QQEはインパール作戦のようなもので、一刻も早く撤退すべきだという方もいます。インパール作戦とは、1944年3月から7月初旬まで展開された、ビルマから進軍してインド北東部の都市インパール攻略を目指した作戦のことです。これは莫大な犠牲を出して惨憺たる失敗に終わり、無謀な作戦の代名詞としてしばしば引用されています。途中食糧はなく、餓死者を続出し、敵戦闘機に襲撃され、マラリアに罹病し、参加人員10万人のうち戦死者3万人、戦傷および戦病のため後送されたもの2万、残存兵力5万のうち半分以上も病人という状況に陥り、日本軍は壊滅的打撃を受けました。しかし、QQEはほとんどの経済指標を改善させているのです。QQEを日本軍のインパール作戦と比べるのは比喩のつかい方として誤りだと思います。」

 若干の反論としているが、インパール作戦の説明が若干ではない。それはさておき、QQEはほとんどの経済指標を改善させているのです、との説明を具体的にほしいところ。QQEがどのような経路を通じて日本の景気に良い影響を与えているのか。肝心の物価目標が達成されていないのに、そこを経由せずに景気に好影響を与えたのは何故なのか。日銀が行うべきは物価を安定させて景気拡大に寄与することであれば、物価は2%という数字に固執せずにインパール作戦とまで比喩された非常時の異次元緩和は、景気の回復を確認すれば、修正しても良いということになるのではないのか。

 そして、QQEに対する認知的不協和については次のように原田委員は述べていた。

 「QQEで経済は良くならないという自分の強い認識に対し、現実に経済が改善しているという事実を突き付けられたとき、その事実を否定、または、今は良くても将来必ず悪化すると主張して、不快感を軽減しようとするわけです。」

 以前も指摘したが、これはむしろ次のように言い換えられるのではなかろうか。

 「QQEで物価が上がるという自分の強い認識に対し、現実に物価が低迷しているという事実を突き付けられたとき、その事実を否定、または、今は低迷していても将来必ず上がると主張して、不快感を軽減しようとするわけです」

 さらに原田委員は次のようにも述べていた。

 「金融緩和政策の手段そのものを否定しようという心理もあるように思います。大胆な金融緩和は危険であり、そのような手段を取るべきではないというのです。人間は、太古からこのような感情をいだいていたのかもしれません。神話は、神に挑戦した人間たちの悲劇を繰り返し描いています。バベルの塔、太陽に近づいたイカロス、土で作られ、命を与えられたゴーレムが破滅を導いた神話です。QQEに反対する人々は、QQEも神の領域を侵すものだと言いたいのかもしれません。」

 日銀が2013年4月以降に行っている政策は、これまでの緩和策が慎重すぎるため、禁じ手とされた実質的な財政ファイナンスを行うことによって物価を上昇させようとするものともいえる。財政法で禁じられたものを行うにあたっては、日銀が禁忌を犯したとの見方はできる。しかし、それを例えるのにバベルの塔、イカロス、ゴーレムを持ち出すというのもなかなか大胆である。

 「また、歌舞伎の雷神不動北山桜(なるかみふどうきたやまざくら)には、朝廷が、邪悪な心を持った早雲(はやくも)王子を皇位から遠ざけるため、鳴神(なるかみ)上人に寺院建立を約束に、本来は女子として生まれるはずの子を超人的な力―変成男子(へんじょうなんし)の行法―により世継ぎの皇子として誕生させたという話があります。ところが、朝廷は、上人は自然の摂理を侵したとして、寺院建立の約束を反故にしてしまいます。しかし、QQEは自然の摂理を侵すような方策でしょうか。」

 QQEは自然の摂理を侵すような方策かどうかはさておき、財政ファイナンスやマネタイゼーションを何故、各国は禁じているのかは過去の歴史をみれば明らかとなる。ただし、神話の時代に遡るほどのものではない。

 「ローマに税金を払うべきか否かを問われたイエスは、銀貨に皇帝の肖像が彫られていることを人々に確認させた後に、「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返せ」と言われました。貨幣に関わる金融政策は、神のものではなく人間のものです。人間のものであれば、理論と事実に基づく議論を避けるべきではありません。」

 貨幣に関わる金融政策は、神のものではなく人間のものであることには異論はない。人間のものであれば、理論と事実に基づく議論を避けるべきではないことも全くもって同意である。そうであれば、神の領域を侵すとまで比喩された異次元緩和を行うことで、理論的には物価は上がると主張されていた方々に対しては、なぜ物価は上がらないという事実が起きているのかを改めて問うてみたい。


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by nihonkokusai | 2018-07-07 08:05 | 日銀 | Comments(0)

住宅ローンは変動型にすべきか固定型にすべきか、それは日銀次第!?

 住宅ローンを変動型金利で借りる人が急速に増えていると3日に日経新聞が伝えた。住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)によるアンケート調査によると、変動型の割合が固定型を5年ぶりに上回ったそうである。

 このアンケート調査によると、変動型金利で借りている人の割合は、10年前は2~3割だったが、その後2011~2012年度に5割を上回った。しかし、日銀が異次元緩和に踏み込んだ2013年4月以降は物価上昇に伴う将来の利上げを警戒する心理が働き、固定型の金利で借りる人が増えた(日経新聞)。ところがここにきて再び変動型が増加してきた。それは何故なのか。

 お金を借りる際に固定金利タイプにするか、変動金利タイプにするのか。特に住宅ローンのように長期間にわたり、個人にとっては巨額の資金を借り入れる際には、なかなか悩ましいところとなる。これは資金を貸すと言う点で裏返しとなるものの、個人向け国債を購入する際に5年や3年の固定金利タイプにするのか、10年の変動タイプにするのかという選択と似たところがある。

 原則論で言えば金利が低いときには、将来の金利上昇に備えて固定タイプで借りるということになる。しかし、住宅ローンを借りるタイミングを金利の動向に合わせてというのは難しいため、ローンを組んで住宅を建てるタイミングでの将来の金利動向を予測しての選択となる。

 変動型金利で借りている人の割合が10年前は2~3割だったが、その後2011~2012年度に5割を上回った。これは世界的な経済金融危機が影響したためか。リーマン・ショックや欧州の信用不安を受け、欧米の中央銀行や日銀も含め、強力な金融緩和政策を推し進めることになった。日本の長期金利は低下し1%を割り込み、日銀の政策金利はほぼゼロ%近くに低下した。住宅ローンの変動タイプは主に短期金利に連動することから、固定金利より変動金利の金利の低さとともに、金融不安が簡単には解消しないとの見方も変動タイプを選択させたのではないかと思われる。

 しかしその後、世界的なリスクの後退局面で、日銀は2013年4月に異次元緩和を決定し、物価を上げようとする姿勢を強めてきた。急激な円高調整と世界的なリスク後退のタイミングでもあったことで株価も大きく戻してきた。このタイミングでは、債券市場関係者はさておいて、一般には物価と金利の先高感が強まっていたとしてもおかしくはない。現実に消費者物価指数はプラスに転じるなどしたこともあり、このタイミングでは金利の低いうちに固定金利で借りようとの動きが強まったと思われる。

 しかし、日銀が結果として長短金利操作付き量的・質的緩和という各種合わせ技で金融緩和策を講じても物価はいっこうに上がらず、短期金利はマイナスとなり、これがいつまで続くのか検討がつかなくなっているのが現状となった、そうなると現在の日銀がそう簡単に政策金利を引き上げることはできないとの認識も強まる。将来の金利上昇の可能性はあるかもしれないが、当面は低い変動金利で借りていても問題はないのではとの認識も働いて、再び変動金利型が増えてきているのではなかろうか。

 日経新聞はもう一つの要因としてローンの借り換えが増えていることも指摘している。ローンの借り換えとなれば期間はさほど長くはなく、変動で借りても期間による金利上昇リスクは低いとの認識か。

 それでは現状、住宅ローンは固定で借りた方が良いのか、変動で借りた方が良いのか。これは日銀次第ということになる。いまの日銀が行っている金融政策は、長短金利操作付き量的・質的緩和であり、主な変動金利に影響を与える短期金利と、主な固定金利に影響を与える長期金利の両方を操作しているためである。

 いったい日銀はこの政策をいつまで続けるのか。それは政治の問題とも絡んでくることもあり、かなり不透明感も強く、現状は多少の微調整はあっても、金利を大きく引き上げることはできないとの見方が強い。それでも10年、20年先の金利まで見通せるわけではなく、将来的な金利上昇リスクを考慮すれば、固定の方が安心ではある。

 ちなみに私は個人向け国債について固定タイプと変動タイプのどちらが良いのかという選択について、それが発行された当初から、将来の長期金利の上昇を期待して変動タイプが良いと答えてきた。しかし、結果として長期金利の上昇は限られ、固定タイプの方が利息面では有利となったケースが多かったのではないかと思われる。つまり裏返すと、15年あたり前からみると住宅ローンは変動タイプで借りた方が良かったのではということになる。

 しかし、現状の長短金利差は、ローン金利なので短期のマイナスはありえないとして、0.1%少々となり、微々たる差である。将来長い目でみると、金利が上昇する可能性は十分ありうることを考慮すれば、固定タイプの方が安心であるとは思う。これも結局は日銀次第ということになるのだが。


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by nihonkokusai | 2018-07-05 09:54 | 日銀 | Comments(0)

マネタリーベースの月末残が500兆円超え、さらに増やす意味はあるのか

 7月3日に日銀が発表した6月のマネタリーベースによると、6月の月末残のマネタリーベースが502兆9173億円と初めて500兆円を超えてきた。

 2013年4月に日銀は量的・質的緩和政策、いわゆる異次元緩和を決定した。この際にマネタリーベース・コントロールを採用し、マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍に拡大するなどして、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するとした。

 量的・質的緩和政策を決定した2013年4月末のマネタリーベースの月末残は155兆2803億円となっていた。その2年後の2015年4月末のマネタリーベースは305兆8771億円とほぼ2倍近くなっていた。消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)でみると、2013年4月が前年比マイナス0.4%、2015年4月が同ゼロ%となっていた。

 その後もマネタリーベースは増加し続けるものの、コアCPIは再び前年比マイナスとなった。2016年1月に日銀はマイナス金利付き量的・質的緩和を導入、同年9月に長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定した。

 マネタリーベースは2016年6月に400兆円を超えてきた。この月のコアCPIは前年比マイナス0.4%となった。

 そして2018年7月にマネタリーベースの月末残が500兆円超えてきた。コアCPIは2018年2月に前年比1.0%と一時1%台に乗せてきたものの、ここにきてプラス0.7%とやや低迷している。

 これを見るまでもなく、マネタリーベースを急激に増加させても消費者物価を押し上げる効果があるようには見えない。

 日銀は2016年9月に決定した長短金利操作付き量的・質的金融緩和により、操作目標を量から再び金利に戻している。これにより長期国債の買入ペースをやや落としてきてはいるものの、大量の国債などの買入は続けており、その結果としてマネタリーベースも増え続けている。

 大量の国債買入とマイナス金利政策により金融機関の収益を圧迫するばかりでなく、債券市場の機能も急激に低下しつつある。見えない副作用が蓄積されるなかで、マネタリーベースをここから更に増加させる意味があるのか。あらためて問う必要もあるのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2018-07-04 09:33 | 日銀 | Comments(0)

日銀は異次元緩和の副作用を意識、政策の微調整はあるのか

 現在の異次元緩和のキーパーソンともいえる日銀の雨宮正佳副総裁が相次いでメディアのインタビューに応じていた。

日本のキャッシュレス化の普及にも独占的な決済方式が必要に

 以前に日本の現金利用率の高さには何かしらの原因があるため、電子マネーへの移行を促進する必要があるとの主張があった。現金保有の高さの原因として、マネーローンダリングや脱税に使われているためとの見方があった。

マネーローンダリングや脱税に使われていないとは確かに断言はできない。持ち主不明の多額の現金が見つかることもある。ただし、これは年配者がその存在そのものを忘れていたというケースもあるとみられ、一概に脱税のための現金とは言えない。

 そもそも日本の現金保有率の高さの原因としては、その使い勝手の良さが挙げられる。治安が良いこと、偽札が少ないこと、日本全国どこでも利用できることなど利便性の良いところが、日本人による現金利用の高さの背景にある。

 ただし、小額利用については今後、中国などのようにQRコード決済を使った電子決済が普及してくる可能性がある。日本のキャッシュレス化を推進するために経済産業省はQRコードを使った決済の規格統一に乗り出すとされる。ただし、すでにヤフーや楽天やOrigamiなどはQRコード決済サービスを展開し、セブンイレブンも独自のスマホ決済を導入する。NTTドコモ、KDDI、JCB、さらにメガバンクなどもQRコード決済サービスを進める計画とされておりおり、様々な形式のサービスが登場しつつある。

 このままだと利用者にとっては、いろいろなQRコード決済を使い分けなくてはならず、財布のなかのポイントカードのごとく、スマートフォンにアプリが溢れてしまうような事態にもなりかねない。

 中国ではAlipay、WeChat Payが、スウェーデンでは大手行などが共同で開発した単一のモバイル決済によってキャッシュレス化が進行する要因となっていた。

 日本でこのまま多種多様のQRコードを使ったモバイル決済が存在するとなれば、むしろそれはモバイル決済の普及を妨げる可能性もあるのではなかろうか。とはいえ、経済産業省が率先して独占化を進めるわけにもいかない。ある程度は市場原理に委ねる必要もあるが、個人的には自分の銀行口座そのものの管理にも繋がるメガバンクが主導するQRコード決済が使いやすくなるのではないかと思っている。

 このQRコードのセキュリティについて、神戸大学の森井昌克教授らのグループが検証したところ、コードを作成する際に不正な操作を加えると、本来の情報に加えて、偽の情報を仕込むことができることがわかったそうである。今後、日本でもQRコードを使った電子決済が急速に拡大する可能性があるため、このようなセキュリティ上の弱点が存在することも認識しておく必要があろう。


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by nihonkokusai | 2018-07-01 18:05 | 日銀 | Comments(0)

日銀は異次元緩和の副作用を意識、政策の微調整はあるのか

 現在の異次元緩和のキーパーソンともいえる日銀の雨宮正佳副総裁が相次いでメディアのインタビューに応じていた。

 朝日新聞のインタビュー記事をみると、雨宮副総裁は、「物価上昇率2%」について、「簡単に機械的に達成することは難しくなっている」と認め、7月の金融政策決定会合で要因を再点検する方針を示した。これについては黒田日銀総裁も会見で示唆していた。

 これについて雨宮副総裁は、「もう一度物価が上がりにくい理由、物価観の形成の仕方などを点検する。物価動向について何が起きているのかをきちんと詰める」と語っていた。

 これまでのリフレ派の主張をそのまま取り込んだような政策から軌道修正を行う可能性がある。

 雨宮氏は「副作用が緩和のメリットをひっくり返す大きさにはなっていない」としつつ、「(副作用が)知らないうちにたまっていることもあるので、注意深く見ていく必要がある」とした(朝日新聞)。

 ブルームバーグでのインタビューでも、「だんだん累積的にたまっていくものなので注意深く見ていく」と説明している。

 副作用については、6月14、15日に開催された金融政策決定会合における主な意見で、ある委員から「金融機関では、保有有価証券の評価損益の悪化に加え、低収益店舗の減損リスクも生じてきている。金融政策の継続にあたっては、その効果と副作用の二つの時間軸を意識し、副作用が顕在化する前から対応を検討しておくことが必要となる。」との意見が出されていた。

 そして注目すべきは 今後の緩和策の修正に関しての雨宮副総裁の説明となる。

 「物価目標を安定的に達成するために必要なら、調整はあり得るし、排除してはいけないと思う」と述べ、修正するかは「物価や経済の状況、副作用の総合判断」とした(朝日新聞)。

 「必要な政策の調整は排除すべきではない」(ブルームバーグ)

 雨宮副総裁から、インタビューを通じて緩和策の修正に関する発言が出たことは注目すべきと思う。もちろんこれで、すぐにも微調整があるということではないが、その準備も進めている可能性がありうる。

 すでに日銀は国債の買入額を修正しつつある。これは今後もタイミングを見ながら進めてくるとみられる。そして、債券市場の機能低下という問題に対して、長期金利の目標値を若干引き上げるか、もしくはターゲットのレンジを拡げるなどしてくる可能性がある。

 金融機関への影響を考慮するとマイナス金利政策も止めるべきではあるが、こちらの判断は黒田総裁次第とみられ、ややハードルが高いかもしれない。

 さらに日銀のETFなどの買入についても、日銀が実質的な筆頭株主になっていることや、本来市場に委ねるべき相場形成への影響についても危惧されつつある。こちらは株式市場への影響が大きいだけに慎重に行う必要はありながら、ストック効果を強調しつつ、いずれ新規の買入を減額もしくは停止すべきと考える。


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by nihonkokusai | 2018-06-29 09:26 | 日銀 | Comments(0)

ワールドカップの優勝国予想と物価予想の違い

 日本銀行ワーキングペーパーシリーズと題されたレポートが日銀のサイトにアップされている。このなかに6月5日にアップされた、『「分からない」という回答から分かること?』とタイトルされたレポートがアップされた。面白い着目点である。

 このレポートの趣旨としては、『短観の「物価見通し」における「分からない」という回答の中から、真の意味では「分かる」と推察される回答を機械学習の手法を用いて識別する』というものである。

 『一般に、アンケート調査における「分からない」という回答には、次のふたつのケースがある。ひとつは、「分かる」と「分からない」との間の線引きが明確な場合である。たとえば、「量子コンピュータの仕組みを知っていますか?」という質問に対する「分からない」という回答がこれにあたる。』

 『もうひとつのケースは、「分かる」と「分からない」との間の線引きがいくらか曖昧な場合である。たとえば、「2018年のワールドカップの優勝国はどこになると思いますか?」という質問に対する「分からない」という回答がこれにあたる。後者のケースでは、「分からない」という回答と「ブラジル」という回答を異なる回答とみなすかどうかは、議論の余地がある。』

 ワールドカップの優勝国予想については選択肢が32しかない。世界ランキングも発表されている。まったくサッカーに興味がない人であれば「分からない」と答えるかもしれないが、ドイツやブラジルと答える人が多いであろうことは容易に想像しうる。

 これに対して「量子コンピュータの仕組みを知っていますか?」という問いに対して、「分からない」という回答をする人が多いであろう。

 それでは短観の「物価見通し」については、上記の事例のどちらか該当するであろうか。短観とは企業に調査票を送って答えてもらうものであり、基本的に企業経営者が答えているはずのものである。それでは企業経営者にとって、物価の予想は「ワールドカップの優勝国予想」のような容易なものなのか、それとも「量子コンピュータの仕組み」のようなものなのであろうか。

 短観では「自社の販売価格」も聞いている。こちらについては当然ながら企業も予想を立てる必要がある。そうでなければ年度の計画、もしくは長期計画などが立てられない。この「自社の販売価格」の予想を参考にして「物価見通し」も回答するということは考えられる。

 しかし、自社の販売価格はあくまで物価のほんの一部にすぎず、それで物価全体を見通すことは難しい。企業経営者であっても、物価はワールドカップの優勝国予想のように比較的容易に見通せるものではないはずである。

 日本の消費者物価指数はどのような構成要素となっているのかをご存じであろうか。かなり専門的な人でなければ、それは答えられないはずである。たとえば、日本の消費者物価指数には帰属家賃が大きく影響しているとされるが、それについて的確に答えられる人も少ないのではなかろうか。

 このように消費者物価指数の仕組みについては、ワールドカップの優勝国予想のごとく容易に答えられるものではない。これは「量子コンピュータの仕組みを知っていますか?」という問いに近いものであると思う。

 それでは日銀が大胆に国債やETFなどを買えば、どのようにして消費者物価は上がるのか。これについてもその経路を具体的に説明することは困難となる。金融市場の資金量が増加すれば、単純に物価が上がるものではないことは、この5年間で日銀が証明してきた。

 日銀の黒田総裁は20日にポルトガルのシントラで開かれた欧州中央銀行(ECB)のパネルディスカッションで、3%の賃上げを求める政府の要請はかなり適切だと指摘したが、この背景には、日銀の物価目標の達成に向けては、現状よりはるかに高い年3%ペースでの賃金引き上げが必要との認識を示した。

 日銀はやることをやったので、あとは企業経営者の努力次第ということなのであろうか。企業経営者は何故賃金を抑制しているのかを一番わかっているはずである。企業経営者にとってはワールドカップの優勝国予想のように、賃金をなかなか引き上げられない理由を説明することができるであろう。しかし、日銀の異次元緩和によって物価目標達成させるため、結果として賃金を引き上げなければならないのかについては疑問を呈するのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2018-06-22 10:08 | 日銀 | Comments(0)

欧米の中央銀行が出口に向かうなか、日銀だけが出口に向かえないのは何故なのか

 6月13日の米国の金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場で予想されていた通り政策金利を年1.50~1.75%から1.75~2.00%に引き上げた。これは8人のメンバー全員一致で決定した。ちなみに次回からはFRB副議長に指名されているクラリダ氏と、同理事に指名されているボウマン氏が加わり、メンバーは10人となる。13日に発表された会合参加者による金融政策見通しによると、あと年2回の利上げを見込むことになっていた。これにより今年の利上げ回数は、これまて見通しの3回から計4回となる。議長会見が予定されている9月と12月のFOMCにおいて利上げが決定される可能性が強まった。議長会見については来年からは8回のFOMCすべてで行われることも発表された。

 欧州中央銀行(ECB)ECBも正常化のステップを歩み始めた。14日にECBは金融政策を決める政策理事会において、資産を大量に買い入れる量的緩和政策を年内に終了することを決めた。月300億ユーロの買入は9月まで続け、10月から12月にかけては月間の資産買入額を150億ユーロに減らし、買入そのものは12月で停止する。主要政策金利となるリファイナンス金利は、少なくとも来年の夏まではゼロ%のままとし、利上げはそれ以降になることを示した。資産保有額は維持することも発表しており、国債の償還分についてはその分は買い入れることになる。正常化に向けての慎重姿勢はイタリアの政治リスクや物価が目標を達成していないことも理由となろうが、市場に配慮していることも確かである。

 そして日銀は15日の金融政策決定会合において、長短金利操作付き量的・質的金融緩和策の維持を決定した。欧米の中央銀行が出口に向けて慎重ながらも舵を取るなか、日銀は非常時の政策とも言える異次元緩和策を継続している。

 ただし、現実には国債の買入規模を縮小しているなど出口戦略も意識しているかにみえるが、いまだに買入れペースの保有残高の増加額年間約80兆円と言う数字を残している。また長期金利の誘導目標もゼロ%程度としており、平時とも言える状況になっているにも関わらず、非常時のような対応を続けていると言わざるを得ない。

 何故、日銀は柔軟な対応を取れないのか。欧米の中央銀行が出口に向かうなか、日銀だけが出口に向かえないのは何故なのか。これは、日銀が大胆な緩和策を取れば物価のグローバルスタンダードとした物価の前年比2%の上昇は、いとも簡単に達成しうるとしたリフレ派と呼ばれる人達の意見を政府が日銀に押し込んだことが要因といえる。しかし、そのような考え方が間違っていたことはこの5年間の日銀の対応と物価の動きを重ねればわかるはず。

 日銀が目標として掲げてしまった2%の物価目標そのものが日本経済にとって適切なのか。黒田総裁は15日の会見で7月末に公表する新たな「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」に向け、物価について議論を深めていくと明言した。元々日銀は日本の物価についての適正な水準はゼロ近傍、もしくは前年比1%あたりを想定していたはずである。1%あたりとすれば、目標としている物価、つまり消費者物価指数(除く生鮮食料品)であれば、今年に入り一時1%台に乗せていた。つまり、物価目標の2%に達成していないものの、出口戦略に舵を取ったECBのように慎重ながらも日銀も出口戦略を採り得たはずである。しかし、日銀は2%を絶対目標のごとくしてしまって柔軟さをなくしてしまった。これにより頑なな姿勢を変えられずにいる。このあたり、7月の展望レポートに向けて、日本の経済実態に即した物価水準にあらためる、もしくはもう少し柔軟な姿勢に変化させることが必要ではないかと思われる。


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by nihonkokusai | 2018-06-19 09:47 | 日銀 | Comments(0)

日銀が国債買入を減額したにも関わらず、円安が進行した理由

 5月31日の夕方に日銀が発表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」によると6月の日銀による国債買入のスケジュールは1回当たりのオファー金額のレンジ、そして回数ともに5月とまったく同じとなっていた。

 ところが、6月1日の10時10分の日銀による国債買入のオファーにおいて、残存期間5年超10年以下のいわゆる長期ゾーンの国債買入を前回の4500億円から今回のオファーは4300億円と200億円減額したのである。

 6月の買入スケジュールが5月のものとまったく同じだったことで、当面、日銀は買入額を修正に動くことはないだろうと大方の市場参加者は見ていたと思う。そんなところに、日銀はオファー額を減額した。

 「当面の長期国債等の買入れの運営について」での買入額は、4500億円といった絶対額ではなく、3000億円から5000億円程度というレンジが設けられていることもあり、数字が前月と変わらなかったからといって、減額はありえないということではない。ただし、タイミングからはややサプライズとも言えた。

 これを受けて債券先物は151円近くから150円80銭近くまで下落した。前日の31日に先物は日中4銭しか動いていなかったことを考えれば、大きく下落したことになるかもしれないが、この程度の下落は急落とは言わない。債券市場参加者がそれほど動揺したわけではない。特にこの長期ゾーンは今年2月に4500億円に増額してから手をつけていなかったゾーンであり、今年度は国債発行額が減少していたこともあり、いずれ減額はありうると見ていた参加者も多いと思われる。

 今回の動きとして興味深かったのが、債券市場そのものの反応よりも、外為市場での反応であった。これまでも日銀のこのような減額に対して債券先物などよりドル円の方が敏感に反応していた。その動きとしては当然ながら、日銀の国債買入縮小なので、緩和策の修正かとの連想により円高(ドル円の下落)であった。

 今回も日銀の国債買入のオファー額を確認して、109円近くにあったドル円は一時108円70銭近くまで下げていた、ところが、今回はすぐに切り返して109円20銭まで戻していた。一見すると日銀の国債買入減額に対し、円安で反応したかにもみえる動きとなっていた。

 今回のドル円の動きの背景としては、日銀の国債買入減額に対する反応よりも、日経平均が戻ってきており、イタリアの政局リスクの後退なども意識されて、こちらに反応していた可能性がある。というよりも日銀の国債買入の微調整に対して緩和策の修正という認識が変化していた可能性がある。

 相場の方程式に絶対はなく、その場その場で、どの材料に反応しやすく、どのようにポジションが傾いていたのかなどが影響する。このため今回のような動きも起こりうる。これによって日銀による国債買入減額は必ずしも円高要因とはなりえないといった見方が外為市場で強まれば、日銀としても買入修正をしやすくなる。これまでも円債がそれほど反応していないのに、ドル円が過剰に反応するのはどうかと個人的にも見ていたのだが。


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by nihonkokusai | 2018-06-02 11:01 | 日銀 | Comments(0)

日銀が金利を上げれば金融機関は打撃を受けるのか

 日銀は4月26、27日に開催された金融政策決定会合における主な意見を公表した。この会合から副総裁が替わっての新体制となったこともあり、ニュアンスがどのように変化したのかに興味があった。

 金融政策運営に関する意見においては、「強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが適当である」、「物価安定の目標の趣旨について広く社会との共有を進めるべきである」との意見が出ていた。

 また、「需給のバランスや金融システム面への影響にも配意しながら」との注意喚起もあった。「長期実質金利の低下に伴う経済・物価への緩和効果は小さくなっている可能性がある」という意見もあった。「政策効果と考え得る副作用についてあらゆる角度から検討を続けるべきである」との意見も出ていた。

 そして今回も前回の会合と同様に、「えっ」となる意見が出ていた。

 「市場は金利の早期引き上げを求めていると言われることがあるが、実際に金利を引き上げれば、債券価格と株価が下落し、円高で企業の経営が悪化し、信用コストが増大し、金融機関は大きな打撃を受けるだろう。また、短期金利を上げても長期金利が上がるとは限らず、長短スプレッドはむしろ縮小してしまう可能性もある。これは2006年以降の日本で起きたことである。」

 「市場は金利の早期引き上げを求めていると言われることがあるが」という点についてだが、確かに経済実態に応じた金利にすべきとは私も主張していることではあるが、いきなり米国のような利上げペースにすべきとは主張はしていない。べき論としては、金融機関に負の影響をもたらすマイナス金利を止めるべきで、そして長期金利コントロールについてはもう少し柔軟なものにすべきと私は主張している。

 「実際に金利を引き上げれば、債券価格と株価が下落し、円高で企業の経営が悪化し、信用コストが増大し、金融機関は大きな打撃を受けるだろう。」とのご意見ももっともらしいように聞こえるが、米国の正常化による利上げを受けて、米長期金利が上がると銀行株は「買われ」、米株もしっかりしている。ドルは多少高くはなっているものの急激に上昇してはおらず、株価や景気実態にマイナスの影響を及ぼしているようには思えない。

 米国と日本は状況は違うと言われるのかも知れないが、日本も無理矢理な金融緩和よりも、経済実態に即した金融政策のほうが、むしろ株式市場には好材料となる可能性がある。

 2006年のことを持ち出したのは2月の量的緩和解除と7月のゼロ金利解除に伴っての長短スプレッドの縮小を示しているとみられる。しかし、2006年の日経平均の動きをみても大きく下落したわけではない。たしかにその後の米国のサブプライムローン問題をきっかけとした世界的な金融経済ショックが起きたことで、2006年の利上げは早すぎたとの見方はある(その後のリーマン・ショックまで予測しての利上げが早急すぎたとのご意見に対しては、金融政策には未来予知が必要となってしまうことになる)。しかし、この際の利上げによって金融機関が大きな打撃を受けたわけではない。むしろ仮死状態にあった短期金融市場が正常化したこともあり、金融機関にはプラス要因となった面も大きかったのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2018-05-11 09:49 | 日銀 | Comments(0)
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