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カテゴリ:アベノミクス( 93 )

独自通貨を持つ国はいくらでも借金できるとの理論は正しいのか

 MMT(Modern Monetary Theory、現代金融理論)と呼ばれる理論が注目を集めているそうである。

 MMTの提唱者の1人である、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授によると、ユーロという共通通貨があり、独自の通貨を持たないギリシャなどは、独自の判断で無制限の流動性供給を行うことはできない。それゆえデフォルトリスクがある。しかし、独自通貨を持つ米国のような国では、政府債務の増加がマクロ的な供給不足からインフレを起こすような場合でなければ、経済成長と雇用の増加が続いている限り、政府債務の増加自体は問題ないというのが、ケルトン教授の説明するMMTのコア部分だとか(3月8日のロイターの記事より)。

 この理論は米国だけでなく日本の状況も意識したものではなかろうか。日本の債務残高はすでにGDP比で200%を超えている。日銀は大胆な金融緩和策として大規模な国債の買入を実施しており、年間の国債発行額を買い入れるといった財政ファイナンスに近い政策を行っている。それにもかかわらず、物価は上がらず、長期金利も日銀の政策で低位に操作されている。

 これが永遠に続けられるとするのがケルトン教授の理論であろう。リーマン・ショックやギリシャ・ショックによって財政政策に限界が来て金融政策に比重が移り、金融政策も限界が見えたら今度は財政政策と、これはフリーランチ・セオリーの延長ともいえる。

 問題となっているのが、ケルトン教授は2016年の米国大統領選では、バーニー・サンダース上院議員の顧問を務めており、さらに昨年11月にニューヨーク州から連邦議会下院選に立候補し、女性として史上最年少の米下院議員となったアレクサンドリア・オカシオコルテス氏がMMTを支持したことである。

 これによってMMTに対して注目が集まり、FRBのパウエル議長は2月26日の議会証言で「自国通貨での借り入れが可能な国にとって赤字は問題でないという人もいるが、私は間違っていると思う」と明確に否定することになる。クルーグマン氏もMMTに対し「支離滅裂」と一蹴し、サマーズ氏もワシントン・ポストのコラムで新たな「ブードゥー経済学だ」と批判した(ロイター)。

 MMTの考え方が正しいとすれば無税国家が成立しうる。しかし、現在の日米の長期金利が低位安定しているのは、政府や中央銀行に対する信認があればこそである。その信認がいったん毀損すると市場は安定感を喪失することになる。信用は築くのはたいへんだが、いったん崩れると取り戻しがきかなくなる。ギリシャは自国通貨でなかったので危機が生じたのではなく、信認が毀損したために危機が起きたのである。

by nihonkokusai | 2019-03-17 10:32 | アベノミクス | Comments(0)

そっと更新されていたアベノミクス

 先日、ツイッターで興味深いツイートがあった。首相官邸のアベノミクス「3本の矢」というページが更新されなくなっていたというのである。そのページを確認してみると、下記のようになっていた。

 「このページは現在更新しておりません。「日本再興戦略」改訂2014(成長戦略2014)の内容をわかりやすく解説したページです。最新の情報は、こちらをご覧ください。」

アベノミクス「3本の矢」

 この表現を見る限り、すでにアベノミクスは一定の役割を終えて、次のステージに移行しているかのような記述となっている。更新されなくなったアベノミクス「3本の矢」の成果については下記の表現があった。

 「すでに第1の矢と第2の矢は放たれ、アベノミクス効果もあって、株価、経済成長率、企業業績、雇用等、多くの経済指標は、著しい改善を見せています。また、アベノミクスの本丸となる「成長戦略」の施策が順次実行され、その効果も表れつつあります。」

 肝心の「物価」はどこに行ったのか。日銀による非常時対応というべき異次元緩和は2%という物価目標達成のために、政府の意向を組んで行われたものであった。2本目の経済政策についても具体的な成果は見えないなか、金融政策の異常さだけが際立っている。そしていつのまにか本丸が「成長戦略」になっていた。

 その異常な金融政策を行っても、目標とした物価上昇はなかったが、結果として株価、経済成長率、企業業績、雇用等が改善したと結論づけるのはおかしくはないか。仮にそうであったとして、その具体的な経路についての説明が求められよう。

 そして、「最新の情報は、こちらをご覧ください。」とのリンク先にあるのは、「アベノミクス 成長戦略で明るい日本に!」というページである。

 「平成30年6月15日、「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革に向けて、未来投資戦略2018を閣議決定しました。「未来投資戦略2018」では、IoT、ビッグデータ、AI、ロボッ トなどの第4次産業革命の技術革新を存分に取り込み、「Society 5.0」を本格的に実現するため、各種の施策の着実な実施を図りつつ、これまでの取組の再構築、新たな仕組みの導入を図ります。」

 どうやらこれが「アベノミクス改」であるようである。もし当初のアベノミクス「3本の矢」が期待された成果が得られ、このため次のステージに移行したというのであれば、日銀の異常な金融緩和政策をより柔軟化させても問題はないということであろうか。そうであれば、その副作用を早めに軽減させるために日銀が動いても政府は干渉しないということで良いのであろうか。


by nihonkokusai | 2018-12-20 08:01 | アベノミクス | Comments(0)

アベノミクスの柱であった日銀の異次元緩和からの脱却

 日銀の黒田総裁は11月5日の名古屋での講演において以下のような発言があった(講演要旨から引用)。

 「かつてのように、デフレ克服のため、大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっています。」

 これは日銀の金融政策の大きな方向転換を示すものと見ざるを得ない。日銀が掲げた物価目標の2%は達成されてはいない。しかし、「既にわが国は、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっています。」との黒田総裁のコメント通り、デフレという状況下にはない。

 7月の金融政策決定会合では、政策の持続性を強化するための措置を決定し、その効果を黒田総裁は強調している。しかし、「フォワードガイダンス」の導入は、「金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうること」としたもののバーターというか、引き締め策に転じたわけではないことを示すためのものと私は受け取っている。

 「金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうること」としたことで、黒田総裁はそれによる効果は既に表れていると指摘するが、債券市場の日々の動きを追う限りにおいて、現実にはそれほど債券市場の機能が回復しているようには見えない。

 債券市場の機能回復とともに、強力な金融緩和がもたらす影響(副作用)として「金融機関の収益や金融仲介機能との関係も、しばしば議論の対象となる」と指摘している。遠回しの表現ながら日銀も当然、銀行の銀行であり、銀行収益に与える影響は大きな懸念材料としてみていても不思議ではない。

 その上で総裁は、大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっていると断じている。これはアベノミクスの一丁目一番地ともいわれた日銀の異次元緩和からの脱却を意識した発言と私は見ている。

 それでは今後、この脱却に向けてどのような修正を日銀は行ってくるのか。これについては、以前にも指摘し、繰り返しとなるが、下記のようなことが予想されうる。

 現在の日銀の保有資産はすでに名目GDPを上回っている。この量による効果を維持させることで、異次元の緩和効果を維持させることをアピールする。マイナス金利政策を止めて短期金利もプラスとし、短期金融市場を活性化させる。さらに長期金利のコントロールも止めることで債券市場の機能も回復させ、金利が動くことによって企業の設備投資などにも刺激を与える。

 将来にわたって低金利が続くと予想すれば、金利が低いうちに資金を借りたいとのインセンティブが働きにくくなる。金利は今後上がる可能性が出てくるとなれば、寝ていた資金が多少なり動いてきても不思議ではない。

 日銀としては、これらは緩和策からの後退ではなく、大規模な緩和効果は維持しつつ、金利がファンダメンタルに応じた動きに戻すことを目的とする。利上げは当面行うことはないと強調し、正常化という表現には表面上距離を置くことで、外為市場などでの急激な円高などを防ぐ。

 本格的な債券市場の機能回復と、金融機関が正常な資産運用をするためには、マイナス金利政策と長期金利コントロールから手を引くことが大きな前提条件となる。それを市場に動揺を与えずにどのように行うのかは大きな課題となる。少なくとも短期金融市場と債券市場の国内の参加者はこれらの動きを当然ながら好感しよう。問題は外為市場と株式市場、そして海外投資家の見方となるのではなかろうか。


by nihonkokusai | 2018-11-07 09:54 | アベノミクス | Comments(0)

日銀の金融政策は消費者物価指数を動かせるのか

 12月1日に発表された11月の全国消費者物価指数は総合が前年同月比プラス0.2%、 生鮮食品を除く総合指数(コア)は同プラス0.8%の上昇、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコア)は同0.2%の上昇となった。

 総合指数の前年同月比の上昇幅は0.5ポイントも縮小した(9月0.7%→10月0.2%)。これは生鮮食品により総合の上昇幅が0.62ポイント縮小したことによる。夏の天候不順で野菜高騰が高騰していたが、それが収まりつつあるようである。

 生鮮食品を除く総合の前年同月比の上昇幅は0.1ポイント拡大した。(9月0.7%→10月0.8%)。これはガソリンなどの上昇幅がさらに拡大し、生鮮食品を除く食料価格の上昇、携帯電話機や外国パック旅行費が上昇に寄与している。

 生鮮食品を除く総合(コア)指数は日銀の物価目標である。これについてみてみると、2017年1月にコア指数の前年比でプラスに転じ、前年同月比のプラス幅が拡大しつつある。かなりの時間を置いて日銀の異次元緩和が効いてきた、、、と言えるわけでは当然ない。ここにきての前年比の上昇率の拡大は原油価格の上昇が大きく寄与している。原油価格の上昇に日銀の金融政策が影響を与えているわけではない。

 日銀が2013年1月に置いた2%の物価目標、さらには同年4月の量的質的緩和政策で置いた目標とする物価は「除く生鮮(コア)」ではなく「総合」であった。ところが、2016年9月の決定会合で長短金利操作付き量的・質的緩和を決定した際、日銀はこの目標とする物価を総合からコアに置き換えている。いろいろな意味でタイムリーであった。

 それまで日銀は独自に新コアコア指数などを発表し、物価抑制の要因となっていたエネルギー価格の影響を排除した指数を使おうとしたが、むしろそのエネルギー価格の反発が、現在の物価を引き上げていることは今年に入ってからの消費者物価指数(コア)の前年比の拡大の状況を見ても明らかであろう。

 日銀の金融政策の目的は物価を安定させることである。その手段が金融市場を通じた金融調節ではあるが、それが直接、消費者物価指数を上げ下げさせることはできないであろうことは、この状況を見ても明らかではなかろうか。そろそろ日銀も消費者物価指数という物価目標に縛られない政策に転じる必要もあると思うのだが。


by nihonkokusai | 2017-12-02 07:45 | アベノミクス | Comments(0)

日銀の金融政策は消費者物価指数を動かせるのか

 12月1日に発表された11月の全国消費者物価指数は総合が前年同月比プラス0.2%、 生鮮食品を除く総合指数(コア)は同プラス0.8%の上昇、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコア)は同0.2%の上昇となった。

 総合指数の前年同月比の上昇幅は0.5ポイントも縮小した(9月0.7%→10月0.2%)。これは生鮮食品により総合の上昇幅が0.62ポイント縮小したことによる。夏の天候不順で野菜高騰が高騰していたが、それが収まりつつあるようである。

 生鮮食品を除く総合の前年同月比の上昇幅は0.1ポイント拡大した。(9月0.7%→10月0.8%)。これはガソリンなどの上昇幅がさらに拡大し、生鮮食品を除く食料価格の上昇、携帯電話機や外国パック旅行費が上昇に寄与している。

 生鮮食品を除く総合(コア)指数は日銀の物価目標である。これについてみてみると、2017年1月にコア指数の前年比でプラスに転じ、前年同月比のプラス幅が拡大しつつある。かなりの時間を置いて日銀の異次元緩和が効いてきた、、、と言えるわけでは当然ない。ここにきての前年比の上昇率の拡大は原油価格の上昇が大きく寄与している。原油価格の上昇に日銀の金融政策が影響を与えているわけではない。

 日銀が2013年1月に置いた2%の物価目標、さらには同年4月の量的質的緩和政策で置いた目標とする物価は「除く生鮮(コア)」ではなく「総合」であった。ところが、2016年9月の決定会合で長短金利操作付き量的・質的緩和を決定した際、日銀はこの目標とする物価を総合からコアに置き換えている。いろいろな意味でタイムリーであった。

 それまで日銀は独自に新コアコア指数などを発表し、物価抑制の要因となっていたエネルギー価格の影響を排除した指数を使おうとしたが、むしろそのエネルギー価格の反発が、現在の物価を引き上げていることは今年に入ってからの消費者物価指数(コア)の前年比の拡大の状況を見ても明らかであろう。

 日銀の金融政策の目的は物価を安定させることである。その手段が金融市場を通じた金融調節ではあるが、それが直接、消費者物価指数を上げ下げさせることはできないであろうことは、この状況を見ても明らかではなかろうか。そろそろ日銀も消費者物価指数という物価目標に縛られない政策に転じる必要もあると思うのだが。


by nihonkokusai | 2017-12-02 07:45 | アベノミクス | Comments(0)

衆議院選挙の行方次第で金融政策に影響は出るのか

 衆議院選挙は10月10日に公示され、22日に投開票が行われる。選挙の行方は不透明感を強めている。ただし、安倍首相は党首討論会で「(与党で)過半数を取れば首相指名を受ける候補として出る」と述べていた。自民党の衆院解散時勢力は287で、今回全議席465の単独過半数となるのは233議席となる。いまのところ自民党は単独でも過半数は維持するのではとの予想となっている。

 台風の目となりそうな希望の党については、当初の勢いは姿を消しつつあり、ある程度の議席は確保するにしても、政権を奪取するほどの勢いとはなりそうもない。安倍政権が維持される可能性が高いのではなかろうか。

 今回の衆院選挙次第では日銀の金融政策の行方にも影響が出る可能性があったが、安倍政権の続投となれば、2%の物価目標も維持され現在の政策が維持されることになろう。ただし、安倍政権もすでに軸足は金融政策によるデフレ脱却を主軸に打ち出していない。自民党の公約のなかの「アベノミクスの加速」は下記のようになっている。

 「わが国の経済は確実に回復している。この流れを確かなものにするため、「生産性革命」と「人づくり革命」の2つの大改革を断行することによって、力強い消費を実現し、経済の好循環を完遂する。」

 もちろん現在の金融政策は維持するという前提の上での上記の政策となろうが、少なくとも日銀の金融政策に期待する比重は、かなり後退してくるともいえるのではなかろうか。

 消費税については2019年10月に消費税率を10%に引き上げるとし、その際、「全世代型社会保障」への転換など「人づくり革命」を実現するため、消費税率10%への引き上げの財源の一部を活用するとしている。あくまで財源の一部であり、財政再建を後退させる事ではない面も強調している。

 その財政再建については、基礎的財政収支を黒字化するとの目標は堅持するとしている。同時に債務残高対国内総生産(GDP)比の安定的な引き下げも目指すとし、引き続き歳出・歳入両面からの改革を進め、目標達成に向けた具体的計画を策定するとしている。

 この財政再建の文章も残っている以上は、ひとまず国債への信認も維持されよう。アベノミクスについては、日銀の異次元緩和の効果等を含め、かなりいろいろと疑問は多いのも事実であり、必ず物価目標を達成しなければならないとの空気が変化してくる可能性もありうる。


by nihonkokusai | 2017-10-16 15:49 | アベノミクス | Comments(0)

日銀短観、10年ぶりの回復が意味するものとは

 日銀が10月2日に発表した9月の短観では、大企業製造業の業況判断指数(DI)がプラス22となった。前回6月調査のプラス17から5ポイント改善した。22ポイントの改善は2007年9月のプラス23以来、10年ぶりの水準となった。

 大企業製造業の業況判断指数は株価指数とも連動性が高く、ここにきての日経平均の上昇の背景には当然ながら、この企業業績の改善も影響していよう。

 9月25日の記者会見で、茂木経済財政・再生相は国内景気について「戦後2位のいざなぎ景気(1965年11月~70年7月の57カ月)を超える景気回復の長さになった可能性が高い」との認識を示した。9月も回復となれば、2012年11月から58カ月と「いざなぎ景気」を上回り、戦後2番目の長期回復局面となる(9月25日日経新聞)。

 実感なき景気回復とされるが、少なくとも景気が落ち込んでいるわけではない。今回の短観の大企業製造業DIの「2007年9月」以来10年ぶりの回復と、「2012年11月」からの景気回復基調とそれぞれの日付けをみると、今回の景気回復の意味するところが現れてくる。

 一見すると2012年11月からの景気回復は、2012年12月の総選挙で登場したアベノミクスによる効果と見えなくもない。日銀が2013年4月に日銀は異次元緩和を呼ばれた量的・質的緩和を決定し、その2013年4月にプラスに浮上した全国消費者物価指数(除く生鮮食料品、コア)は1年後にプラス1.5%まで上昇した。

 今回の景気回復には日銀の異次元緩和を中心としたアベノミクスが功を奏したのであろうか。今回の日銀短観の数字の背景として、日銀による緩和効果といった説明はなく「世界経済の回復を背景とした企業業績の好調が景況感を押し上げた」との説明があった。実際には日銀の緩和効果よりも世界経済の回復が日本経済も支えているとみたほうが説明がつく。

 アベノミクスやその中心となった日銀の異次元緩和が即、景気や物価に影響を与えたかにみえたのは、あくまでタイミングが良かったに過ぎない。そもそもアベノミクスがスタートする前の2012年11月から景気が改善した背景は、欧州の信用不安という世界的な金融経済リスクの後退によるものとみた方が自然である。金融市場でもリスク回避の巻き戻しが起きつつあるところに、安倍氏の輪転機発言があり、ヘッジファンドが仕掛けて急激な円安・株高が生じ、あたかもアベノミクスが景気に大きく影響したかに見えることとなる。

 今回の日銀短観の水準が2007年9月の水準に戻ったということも、ある意味象徴的な出来事といえる。2007年8月に起きたのがパリバ・ショックであった。つまりリーマン・ショックに繋がる一連の金融経済危機がこのころ発生していたのである。リーマン・ショックとギリシャ・ショックに代表される百年に一度とされる2度の危機が収まってきたのが、2012年11月あたりからであり、時間をかけてやっとそれらの危機以前の水準にまで景気が回復してきたといえる。

 これについて日銀の異次元緩和がまったく効果はなかったとは言わないまでも、そこまでやる必要性はまったく認められないし、現実に物価に影響を与えていない。FRBはすでに正常化に向けた動きを本格化させているが、日銀は物価目標に縛られて身動きが取れなくなっている。本当にこれで良いのであろうか。


by nihonkokusai | 2017-10-03 09:37 | アベノミクス | Comments(0)

生活改善はアベノミクスの成果なのか

 内閣府が行った「国民生活に関する世論調査」によると、現在の生活に「満足している」か「まあ満足している」と答えた人の割合が、1963年以降で最も高くなったそうである。所得・収入について、21年ぶりに「満足」と答えた人が「不満」と答えた人よりも多くなったとか(NHKニュースより)。

 所得・収入がそれなりに伸びてくるなど雇用環境が改善し、生活そのものにも満足している人々が増えているそうである。これはアベノミクスによる恩恵と指摘する向きもあるかもしれない。

 しかし、アベノミクスが目指したものは、直接、雇用環境の改善や生活向上に働きかけるというものではなかったはずである。日銀がリフレ政策を行うことで、人々のインフレ期待を高めさせ、日本の物価水準を欧米並みの2%まで高まれば、雇用も改善し、景気も良くなり、人々の生活も豊かになるとの発想であったはずである。

 しかし、現在の生活に「満足している」という結果だけをみて、これがアベノミクスの成果とするのであれば、途中にあったはずの物価目標達成がなされていないことをどのように解釈すべきなのか。

 今回の生活水準の改善は日銀の過度の金融政策によるものではない。まったくないとはいえないが、負債の多い企業や、なにより国の財政が助かっており、その意味での不安は後退しているといえるかもしれない。しかし、それはつまり我々が本来収入として得られるはずの利息収入が犠牲になっていると思えば、低金利政策そのものにより我々の消費が押さえ込まれているとの解釈もできよう。

 なにより物価が低位安定していることそのものも、我々の生活の満足度に繋がっているのではなかろうか。伸びは緩やかながらも賃金の伸びが改善し、物価が抑えられていれば当然、生活の満足感に繋がる。デフレを解消しない(物価が2%に上がらない)と景気は回復せず、我々の生活も豊かにならない、わけではない。

 いったい日銀は異次元緩和で何をしようとしていたのか。今回の「国民生活に関する世論調査」だけで判断すべきではないとは思うが、異次元緩和の前提にあったものが本当に正しいものであったのか。それをしなければ現在の生活満足度は得られなかったのか。異次元ではなく通常の緩和の延長線でも現在の環境は維持できたのではなかったのか。アベノミクスによる円高調整と株高をもってその成果とするのも勝手ではあるが、それがどれだけアベノミクスによるものだったのかついても検証する必要もあるのではなかろうか。少なくとも現在の環境がアベノミクスによってもたらされたものと結論づけることには無理があると思う。


by nihonkokusai | 2017-08-29 10:04 | アベノミクス | Comments(0)

アベノミクスに相当な成果があったとする見方への疑問

 10日の日経新聞の大機小機に次のような記述があった。

 「アベノミクスの4年半を振り返ると、景気回復と脱デフレという面では相当の成果を上げたと評価できる。非伝統的な金融政策が威力を発揮したといえる。」

 2013年4月に安倍政権の意向を汲んで決定されたのが、日銀による大胆な緩和策、量的・質的緩和策である。これは異次元緩和とも称され、出口政策のことなどはおかまいなく、大胆に国債を大量に買い入れて、マネタリーベースを増加させて、物価目標を2年程度で達成しようとしたものである。

 中央銀行の金融政策は、あくまで金融市場を通じて経済や物価に働きかけるものである。その甲斐あってか長期金利は低位のまま推移し、マイナス金利政策により一時マイナス圏にまで低下した。外為市場にも働きかけた格好となり、ドル円は急減に上昇し、これが株高を誘発した。

 しかし長期金利は抑えられても、外為市場での円安に対する働きかけは一時的なものとなった。財務省が管轄の為替介入も実施されず、日銀の大胆な緩和策により、欧州不安の後退のタイミングで、大きな円買いポジションがひっくり返されての投機ポジションを含む、一時的な円安にすぎなかった。

 それでも雇用は大きく改善している。物価も一時のマイナスからプラスを回復している。景気についても低空飛行ながら改善している。それは果たして日銀の異次元緩和による効果と言えるのだろうか。

 原因と結果を結びつけるには、その間にある経路についてもしっかりした説明が必要になろう。アベノミクスの大きな柱となっていた日銀の異次元緩和は、どのようにして雇用の回復に影響したのか。大きな金融経済危機の後退含めた海外要因、さらには2020年のオリンピックを睨んだ国内要因など、日銀の金融政策以外の要因を除いて、金融緩和効果がどれだけ残っているといえるのか。

 そもそも日銀は物価目標を達成させることで、デフレを解消させ、それが景気回復要因となり、雇用も改善し、賃金も上昇するというシナリオを描いていたのではなかったのか。

 肝心の物価目標2%がまったく達成の兆しがないことは、それはつまりアベノミクスの中心となっていたリフレ政策が雇用を含めて景気を改善させるというシナリオそのものに間違いがあった可能性はなかったのか。

 アベノミクスが景気回復と脱デフレという面では相当の成果を上げたと評価するのも勝手ではあるが、非伝統的な金融政策が威力を発揮したとの結論はどこからくるのか。少なくとも物価目標を達成していないという事実はどのように評価するのか。

 安倍政権の支持率低下には、いろいろな要因があると思われるが、そのひとつとしてアベノミクスという経済政策への疑問も含まれているのではなかろうかと思う。当初は華々しく見えたものが、日銀は無理に無理を重ねる結果となっており、むしろその副作用も意識されつつある。そのあたりも支持率に影響を与えていると見てもおかしくはないと思われる。


by nihonkokusai | 2017-08-11 09:27 | アベノミクス | Comments(2)

トランプ政権の減税策に過度の期待は禁物か

26日にムニューシン財務長官とコーン国家経済会議(NEC)委員長は記者会見で、トランプ政権の大型税制改革の基本方針を発表した。

法人税制改革では、連邦法人税率を35%から15%に引き下げるとし、約30年ぶりの大型減税を目指す。米企業が海外に保有している利益約2兆6000億ドルに対する1回限りの課税も提案された。輸出を免税して輸入を課税強化する「法人税の国境調整」は今回は導入が見送られた。

個人税制は最高税率を39.6%から35%に下げ、7段階ある税率構造も10%、25%、35%の3段階に簡素化する。基礎控除も2倍に引き上げて低中所得層の減税幅を広げる。主に富裕層にかかる相続税は廃止すると明記された。株式などへの譲渡益に課税するキャピタルゲイン税は税率を23.8%から20%に引き下げる。

ムニューシン長官は「われわれはできるだけ迅速に動き、年内に実現させる決意だ」と語ったそうだが、米国では税政の立案・決定は議会に権限があり、ホワイトハウスには法案提出権はない。トランプ政権は29日に発足100日を迎えるが、今回の税制改革案の発表はその実績づくりとの見方が強い。トランプ政権のスタッフもいまだ固まっておらず、財政規律を重視している議会との調整に対しても不透明である。

ムニューシン長官は「目的はアメリカの企業の競争力を世界で最も高くすることだ。GDPの伸び率を3%かそれ以上に戻すことができる」と述べたそうだが、減税分のカバーはどうやら3%成長が維持されることが前提となっているようである。減税によって3%成長が果たして維持されるのかとの疑問も残ろう。

成長力を促すためとして、FRBの出口政策にともなう利上げに対してトランプ政権が今後牽制してくることもありうるか。日本でもアベノミクスの前提が日銀の異次元緩和による物価目標達成であった。減税にしろ金融緩和にしろ、それが予想された経済成長を促すことができるのかは疑問であるのは、日本の事例を見ても明らかである。

今回の減税策の発表を受けての米国市場はドル安、株安、債券高との反応であったが、それほど大きく動いたわけではない。市場は現実としてあまり過度の期待は抱いていなかったとみられ、こんなものだろうとの反応であったかに思われる。


by nihonkokusai | 2017-04-28 09:56 | アベノミクス | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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