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カテゴリ:為替( 22 )

日銀だけではなかった円高の背景

 28日の日銀金融政策決定会合で金融政策は現状維持となった。市場が予想というか期待した追加緩和は見送られ、これをきっかけにドル円は111円台後半から108円を割り込むなど、円高が急速に進行した。29日の東京市場は昭和の日で休日となり、この日からいわゆるゴールデンウイークがスタートした。過去にも日本が年末年始や盆休み、ゴールデンウイークなどの大型連休の間に外為市場が大きく動くこともあったが、今回もさらに大きく動く結果となった。円高に歯止めが掛からず、ドル円は29日のニューヨーク外為市場で106円台前半まで下落した。

 今回の急速な円高の背景としては、22日のブルームバーグの記事をきっかけとした日銀の追加緩和観測による円の急速な買い戻しの反動が起きた事があげられる。CFTCが発表しているIMM通貨先物の集計によると投機筋の円の買越額が4月19日の時点で過去最大水準となっていたが、26日の発表分ではそれが減少していた。ヘッジファンドなどが日銀の追加緩和観測により、いったん円買いのポジションを外していたことが伺える。ただし、ドル円は22日に反発した分の幅の倍近い下げとなっている。東京市場が開いておらず日本の投資家が動けず、実需の円売りドル買いなども入りにくかった面もあろうが、改めて円買いを仕掛けてきた可能性がある。

 そもそも何故、ヘッジファンドなどは円買いを仕掛けてきているのか。ここにきては、年初からの原油安とその要因のひとつでもあった中国などの景気減速への懸念によるリスク回避の動きは弱まってきたはずである。このリスク回避の動きもあり、円買いが仕掛けられたことは確かであるが、別な要因も働いていたとみられる。

 それがまず、日米欧の中央銀行の金融政策に対する反応の変化ではなかろうか。日銀やECBの追加緩和に対して外為市場はポジティブな反応を示さなくなってきた。これが顕著となったのが昨年12月3日のECB理事会で包括的な追加緩和策を決定した後や、今年1月29日に日銀がマイナス金利を導入後の市場の動向に現れている。一時的に株高・通貨安となったものの、その後再び株安・通貨高となっていた。

 金融経済危機も去り、FRBが正常化路線を着々と進めるなか、日欧の異常ともいえる金融政策に対して、市場も次第に冷めた目で見るようになってきているとも言える。それとともに日欧の金融緩和が通貨安を経由して効果をもたらそうとしていることも明らかであり、それに対して米国がかなり批判的な見方をしていることも、今回の円高の背景にあると思われる。その米国の動向が今年のG20からも垣間見えていた。

 4月14日から15日にかけてワシントンでG20が開催されたが、開幕に先立って、麻生太郎財務相は米国のルー財務長官と会談して為替政策を協議し、通貨安競争や過度な相場変動の回避を原則とするG20合意を「すべての国が尊重することが重要」との考えで一致した(以上、日本経済新聞の記事より)。また、麻生財務相はG20に出発する前に、「為替相場の急激な変動や無秩序な値動きは望ましくないことははっきりしていて、それに対してしかるべき対応を取ることをG20でも合意している」と述べて、急な円高の動きに対しては必要な措置を取る考えを改めて示した(NHK)。ところが16日の日経新聞電子版によると、ルー米財務長官は15日、米ワシントンで開いたG20後の記者会見で「最近は円高が進んだが、為替市場の動きは秩序的だ」と述べていた。これはつまり、日本政府が円安誘導策に動くことをけん制した格好となったのである。

 そして、米財務省は29日に貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書において、対米貿易黒字が大きい日本や中国、ドイツなど5か国・地域を監視リストに指定したのである。「米当局は相手国が不当な通貨切り下げなどを強めれば、対抗措置がとれるとしている。年明け以降の円高・ドル安については、市場は秩序的だと評価し、日本の円売り介入を改めてけん制した。」(日経新聞電子版)。

 今回の急激な円高は、そもそも日欧の中央銀行の金融緩和策に対する感応度が変化してきたこと、米国の金融政策の正常化に対して過度な警戒が後退してきたこと、日本に対しては通貨安を主軸としたアベノミクスに対して米国政府を中心に批判的な見方が強まってきたことなどがあり、日銀の追加緩和観測を巡っての反動のような動きが、ゴールデンウイークと重なって大きくなったのではなかろうか。

 日本政府は今回の米財務省のレポートにより、介入等の手段が余程の事態でない限り、さらに取りづらくなったことは確かである。しかも5月には伊勢志摩サミットも控えている。日銀の追加緩和に対しても一時的に円安を招く可能性は22日の相場を見ても明らかではあるが、それが長続きすることはむしろ考えづらい状況にある。今後、ドル円は目先の節目の105円も突破して、2012年11月にアベノミクスがスタートしての急速な円高調整が一息ついた水準でもある100円台あたりを目指して下落してくる可能性がありそうである。

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by nihonkokusai | 2016-04-30 10:56 | 為替 | Comments(0)

東京株式市場が乱高下した理由

 4月18日の東京株式市場で日経平均は大幅下落し、500円を超す下げとなった。この株価下落の要因としては大きく3つ存在した。そのひとつは米国のルー財務長官が15日のG20財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、為替市場の動きは秩序的だと述べ、日本政府が円安誘導策に動くことをけん制したことによる円高である。

 G20の開幕に先立って、麻生太郎財務相は米国のルー財務長官と会談して為替政策を協議し、通貨安競争や過度な相場変動の回避を原則とするG20合意を「すべての国が尊重することが重要」との考えで一致したとの報道があった。しかし、これはそれぞれ都合良い解釈によるものではないかと私はみていた。

 ただし、IMFのラガルド専務理事が14日の記者会見で、足元で進む円高について「日本の市場を注視している」と述べた事が気になっていた。急激な為替変動があった場合には「為替介入は正当化される」と指摘しており、日本の為替介入について同意を示すような発言があったのにむしろ違和感を覚えていた。

 IMFの対日審査責任者を務めるリュック・エフェラールト氏が「為替レートが極めて無秩序な動きを示さない限り、現時点での日本の介入には正当な理由はない」と発言していたこともあるが、少なくとも米国が日本の為替介入を認めるようなことは、これまでの経緯からは考えられないと見ていたからである。現実に米国はルー長官が自ら念を押すような発言をしてきたと言える。これにより外為市場でドル円は107円台をつけてきた。

 そして、もうひとつ注目されていたのが17日の産油国会合で増産凍結合意できずとの報である。イランが凍結に応じず、サウジアラビアがイラン抜きでの増産凍結に反対し、原油価格押し上げに向けた増産凍結の見送りが決定された。

 市場では増産凍結にはなんとか合意に持ち込めるのではとの希望的観測が強まっていた。原油先物も40ドル台で推移し、市場も原油価格の動向に一喜一憂することがなくなりつつあった。ところが、増産凍結合意ができなかったことにより、時間外取引で原油先物は大幅下落となった。この円高と原油安によって、東京市場ではリスク回避の動きを強めることとなった。

 これに加わったのが熊本地震による影響で、部品供給が滞っているトヨタが18~23日に全国の完成車工場の生産を段階的に停止すると発表したことである。トヨタだけでなく、ルネサスやソニーも熊本などの工場停止が相次いでいるが、あらためてサプライチェーンの問題が浮上し、これも株式市場などにインパクトを与えたといえる。

 東京株式市場の大幅な下落や原油安を受けて18日の欧米の株式市場も売りが先行した。18日の原油先物も下落したが、その後下げ幅を縮小させた。欧米の株式市場は結局買い戻されたが、これは原油価格の下げ幅縮小によるというよりは、以前に比べて原油価格に対する市場の感応度が低下したという見方の方が良いのではなかろうか。18日の東京株式市場は円高が進行したが、つまりドルやユーロは円に対しては下落しており、これは欧米の株式市場では売り要因とはならない。また、18日の東京株式市場はやはり熊本地震の影響が強く意識されていた側面があり、そこに円高と原油安が加わっての大幅下落となったものとみられる。

 しかし、18日の欧米の株式市場の上昇を受けて、19日の東京株式市場でもやや不安感が払拭された。ショートカバーも入り、ほぼ前日の下げ分を取り戻す格好となっている。東京株式市場が大きく値を戻したこともあり、外為市場でドル円はあっさりと109円台に戻している。これはいまだに株とドル円はセットで動いているためとみられる。どうやら欧米の株式市場が大きく崩れない限りは東京株式市場もしっかりした地合は継続しそうな感じである。

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by nihonkokusai | 2016-04-19 09:43 | 為替 | Comments(0)

日本の為替介入への牽制

 IMFのラガルド専務理事は14日の記者会見で、足元で進む円高について「日本の市場を注視している」と述べた。そのうえで急激な為替変動があった場合には「為替介入は正当化される」と指摘した。

 14日から15日にかけてワシントンでG20が開催されたが、開幕に先立って、麻生太郎財務相は米国のルー財務長官と会談して為替政策を協議し、通貨安競争や過度な相場変動の回避を原則とするG20合意を「すべての国が尊重することが重要」との考えで一致した(以上、日本経済新聞の記事より)。

 また麻生財務相はG20に出発する前に、「為替相場の急激な変動や無秩序な値動きは望ましくないことははっきりしていて、それに対してしかるべき対応を取ることをG20でも合意している」と述べて、急な円高の動きに対しては必要な措置を取る考えを改めて示した(NHK)。

上記の記事からは、今回のようにドル円が120円から110円割れに大きく切り下がるようなケースの場合には、為替介入もありうることを示したかにみえるが、これは通貨安競争や過度な相場変動の回避を原則とするG20合意を確認したものである。しかし、これで本当に為替介入は可能なのかといえば、疑問が残る。ラガルド専務理事がわざわざ日本について言及した背景には、何かしら理由もありそうだが、そのIMFの関係者からは下記のような発言も出ていた。

 IMFの対日審査責任者を務めるリュック・エフェラールト氏は12日、ワシントンでのインタビューで、「為替レートが極めて無秩序な動きを示さない限り、現時点での日本の介入には正当な理由はない」と発言していたのである(ブルームバーグ)。

 要するに「過度な相場変動」という表現に対する解釈の違いがここには存在する。G20では「過度な相場変動」に対する介入の必要性は認めており、その解釈の上で今回のような円高にも介入で対応できるかといえば、現実にはかなり難しいといえる。

 エフェラールト氏の発言にもあったように「極めて無秩序な動き」、つまりは過去のイングランド銀行を狙い撃ちにしたような動きや、百年に一度といった金融不安による通貨の急落などに対しては介入の必要性は認める。しかし、今回の円高は円安がやや進みすぎたことの調整ともいえるため、無秩序な動きに該当するとは思えない。

 16日の日経新聞電子版によると、ルー米財務長官は15日、米ワシントンで開いたG20財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で「最近は円高が進んだが、為替市場の動きは秩序的だ」と述べた。これはつまり、日本政府が円安誘導策に動くことをけん制した格好となった。

 このように米国やIMFが今回のような円高の是正に対して、介入もありうるとした日本の意向に賛同するとは考えづらい。このため、日本での為替介入、特に通貨安となる円売り介入についてはかなり困難ではないかとみている。

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by nihonkokusai | 2016-04-16 12:25 | 為替 | Comments(0)

急激な円高の背景

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 4月7日のニューヨーク外為市場では円高の流れが強まり、ドル円は一時107円67銭まで上昇し、2014年10月29日以来の108円割れとなった。しかし、8日には「場合によっては必要な措置取る」との麻生財務相の発言をきっかけに、ドル円は109円台まで買い戻された。

 7日にも菅官房長官が「場合によっては必要な措置」と発言したにも関わらず、円高基調は変わらなかった。これは為替介入の権限を持つ財務大臣の発言なのでドル円が巻き戻されたというよりは、そろそろ買い戻されそうなタイミングでの麻生財務相の発言であったため、反応したような格好となったのではなかろうか。

 4月14、15日にはワシントンでG20財務相・中央銀行総裁会議が開催される。麻生財務相や菅官房長官が「場合によっては必要な措置」と発言しようとも、G20も控え、さらには5月の伊勢志摩サミットも控え、自国通貨安を防止するための円売り介入は現実としてはかなり無理があろう。

 今回の急激な円高の背景には、FRBの利上げが緩やかになることで日欧の中央銀行による積極的な金融緩和策よりも、基軸通貨を有する米国の中央銀行の政策に影響した面はあろう。しかし、それよりも米国サイドがFRBの利上げが意識されるなかでのドル高の動きを牽制していた側面も大きいと思われる。

 日米欧の中央銀行による積極的な金融緩和策は、百年一度という非常時ならば市場を安定させ金融不安を後退させるために有効であったとしても、平時となるとそれは通貨安を意識した政策に捉えられてしまう。

 日欧の異常な金融緩和は一時的にせよ、中国などの新興国経済の悪化を見えにくくさせていた面もあった。しかし、原油安が象徴するように新興国経済の悪化は顕在化しており、それが昨年8月あたりからの市場のリスクオフの動きとして現れた。

 リスクオフの動きは東京市場では円高株安圧力となるため、日銀がマイナス金利政策を導入しても、ECBが追加緩和を行っても、すでに世界的なリスクオフの動きを止めることはできなかった。これはいずれ起こるであろうことが、日欧の異次元緩和で先延ばしされた分、変動幅が一時的せよ大きくなった面もあると思われる。

 ただし、米国経済は緩やかな利上げを許容できるぐらいの回復地合を見せており、その分、米国株の戻りは早かったとも言えるのではなかろうか。それではどうしてなぜ、日本の株価の戻りは鈍く、円高もさらに進んでいたのか。

 これは異常ともいえる日銀の金融緩和策によって持ち上げられた株価やドル円が、金融政策のイリュージョンによって実態経済以上の底上げが生じたことで、その分がそげ落ちてきたためとも言えるのではなかろうか。それを演出したのが海外投資家でもあった。

 いずれ東京株式市場もドル円も落ち着きどころを探る展開が予想されるが、さらに一段安となる懸念も存在する。

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by nihonkokusai | 2016-04-10 10:13 | 為替 | Comments(0)

実務者会合の目的は為替の協議か

 金融庁、財務省、日銀は2日の午前、世界的に金融・資本市場が変動している現状に関して意見交換したそうである。会合に出席したのは金融庁の森信親長官、河野正道金融国際審議官、財務省の浅川雅嗣財務官、太田充総括審議官、日銀の雨宮正佳理事、門間一夫理事の6人(ロイター)。

 この日の会合は第1回との位置付けで、都内で1時間程度、意見交換したとか。具体的な議論の内容は明らかにされていないが、政策当局がより緊密に連携することが狙いであり、市場動向に応じて今後も月次で開催するそうである。

 これに関して菅義偉官房長官は2日午後の記者会見で、同日午前に金融庁と財務省、日銀の幹部が金融資本市場に関して意見交換したことを巡り、「必要であれば適切に対応できるように、より緊密な連携を目的に実施した」と説明した。その上で、当局間で「情報交換を強化しながら、国際社会と連携して市場の動きを注視する」と述べた(日経新聞電子版)。

 なぜこのタイミングで金融市場に関する実務者のトップレベルでの会合が持たれたのであろうか。かなりの豪華メンバーであることは確かであり、ひとつには日本で5月に開催されるサミットを睨んでのものとの見方もできよう。しかし、このメンバーを見る限り別な要因が働いた可能性がある。

 金融庁からの出席者が長官と金融国際審議官であり、財務省からは財務官となれば金融市場のなかでも特に外国為替市場に関する議論が中心ではなかったかと推測される。たとえばこれが国債に関するものであったのであれば理財局から出席者が出たはずである。

 日銀からの出席者は異次元緩和の生みの親ともいえる企画担当の雨宮正佳理事であり、その異次元緩和の大きな目的のひとつが円安であったことを考慮すると雨宮理事の出席は納得できる。そして、門間理事の担当は国際局、国際関係統括である。

 柴山昌彦首相補佐官は2日にロイターとのインタビューの中で、2月26~27日に中国・上海で開かれたG20では、日本の金融政策の手を縛るような議論はなかったとの見解を示し(ロイター)、また財務省の浅川財務官も時事通信に対し、2月に中国・上海で開かれたG20について、「円の議論は全くなかった」と語っている。デイセルブルム議長(オランダ財務相)が、人民元に加えて「日本円も議論された」と発言したと報道に対して浅川財務官は、こうした報道を明確に否定した。また、デイセルブルム議長も「誤った引用だ」と釈明したそうである(時事通信)。

 しかし、このタイミングで日本の為替政策を巡って何かしら協議が必要になったことは確かなのではなかろうか。為替市場に影響を与える日銀の追加緩和策や財務省による為替介入などに関して意見交換し、これに対する米国の動向などもあらためて確認した可能性もある。さらに市場そのものが日銀の追加緩和などに対してポジティブな反応をしなくなったことの要因なども議論されたのかもしれない。ただし、これらはすべて私の憶測に過ぎないことも確かである。

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by nihonkokusai | 2016-03-04 09:14 | 為替 | Comments(0)

通貨安を仕掛けるには無理がある

 今回の中国人民元の引き下げについて、作為的に人民元の下落を狙ったものとの見方もできるが、そうせざるを得なかった事情も存在する。人民元についはドルペッグ制を取っている。つまりドルに連動する仕組みとなっている。そのドルがFRBの利上げ観測で上昇し、それにより人民元も引き上げられた格好となり、それでなくても減速傾向にあった中国経済の追い打ちを掛けた。IMFが設定している特別引き出し権(SDR)の構成通貨入りを目指していたこともあり、本来であれば元の引き下げはしたくはなかったところが、やむを得ず引き下げざるを得なくなったとみられる。つまり今回の元の引き下げは、そうせざるを得ない状況に追い込まれたとの見方ができる。

 通貨安戦争といった用語もあるが、通貨安は自国の経済を有利にさせるため作為的に引き下げることは実は容易ではない。日本はアベノミクスで円安を招いたとか、リーマン・ショックの頃に日銀の政策が甘かったことで通貨戦争に負けて円高を招いたとの見方も一部にあるが、それは違うと思う。

 そもそも外国為替市場は相手国が存在するものであり、変動相場制を取っている限りはその水準は市場で決定される。自国の経済や物価のために通貨を上げ下げして操作しようとしても、市場や相手国は簡単にそれを許さない。

 通貨安にも当然、弊害がある。今回の元切り下げによる市場の混乱のような事態も招きかねない。また、過度の円安となれば、輸出企業以外には材料費の高騰等などのマイナス要因があるとともに、個人にも商品の値上げ等で不利益を被る。

 通貨は介入等によって操作は可能との見方もいまだあるようだが、それは疑問である。イングランド銀行はジョージ・ソロスに負けているし、スイスの為替介入も途中であきらめざるを得なくなった。日本の財務省による過去の介入も決してうまくいったようには思えない。

 リーマン・ショックの際の通貨の動きについて、日米欧の金融緩和の度合いの違いで説明することもかなり無理がある。リーマン・ショックが起きたのは米国であり、サブプライムローン問題を起点に米国などの大手金融機関の経営危機が世界の金融市場を混乱させた。これは中央銀行の政策うんぬんなどではなく、そもそもドル売り要因である。その後の欧州の信用危機は同様にユーロ売り要因となる。つまり中央銀行の政策とかではなく、ドル、ユーロに次ぐ通貨として円が過度に買われたのはリスク回避のためである。危機が後退しつつあるとき、過度に買われすぎた円が、安倍総裁の輪転機ぐるぐる発言を「きっかけ」として反落した。これは日銀が行動を起こしたからではない。

 確かに二度目の異次元緩和の際には再び円安が進行したが、この際には円売りというよりドル買いが存在した。為替市場ではその時々により短期的に反応する材料が異なるが、この際には中央銀行の金融政策の行方が最近の注目材料となっていたことは確かでそれは否定できない。ただし、FRBの利上げ観測によるドル買いに日銀の異次元緩和の二段目が、タイミング良く重なったとの見方が素直ではなかろうか。

 中央銀行の金融政策に為替市場関係者の目が向けられている際には、短期的に追加緩和で通貨安を導くことはできるかもしれないが、それをしてしまうと相手国からクレームが付くことも予想される。政府や日銀が為替のコメントについて神経質になっているのは、それも要因とみられる。

 為替介入もトレンドやポジションの傾きを意識したものであれば、効果的なこともあるが、通常は逆張りのようなケースも多くなり、市場参加者の格好の餌食となってしまうことが多い。

 このように自国のために通貨安を招く政策はかなり無理がある。元安に対抗して日銀も追加緩和を行って円高を阻止すべきとの意見もあったようだが、日銀の金融政策はそもそも為替水準を操作させるものではないし、仮にそのために緩和を行っても、相場である以上はそれがうまく行く保証もない。

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by nihonkokusai | 2015-08-14 09:23 | 為替 | Comments(0)

円安で困るのは誰なのか

 日銀の黒田総裁は6月10日の衆院財務金融委員会で民主党の前原氏への答弁において、「実質実効為替レートがここまで来ているということは、ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れるということは、普通に考えればありそうにない」と語った。実質実効為替レートは昨年、すでに1973年以来、42年ぶりの水準となっている。何を今更との発言であったものの、市場は「ここからさらに(実質実効為替レートが)円安に振れるということは、普通に考えればありそうにない」と()の部分を無視して反応してしまったのか。黒田総裁は「米連邦準備制度理事会(FRB)が金利引き上げプロセスに入るから、今後、さらに円安・ドル高が進むと決めつけるのは難しい」とも発言していた。

 この黒田総裁の発言をきっかけに10日のドル円相場は124円台半ばから122円台半ばに急落したとなれば、市場の早とちりとなろう。黒田総裁は16日の参院財政金融委員会において、10日の衆議院財務金融委員会での実質実効為替レートに関する発言について「名目為替レートへの評価や先行きについて申し上げたわけではない」との認識を示した。黒田総裁は、「あくまで(実質実効為替レートについての)質問があったので、それに沿って理論的な説明をした」と指摘した。

 円安になって誰が困るのか。まずは一部の政治家が困る。米議会で環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の合意に欠かせない米大統領貿易促進権限(TPA)法案の審議が重要な局面を迎えていたことで政治的な配慮があった可能性もある。

 それよりも6月17日のFOMC後の会見で、イエレン議長は「ドル相場の上昇にもかかわらず、年内にある程度の引き締めを行うことを正当化するほどに経済は良好に推移するとFOMCは見ている」と発言していたが、利上げを控えて思惑的なドル高については牽制したいところが本音であろう。特に昨年10月の日銀の異次元緩和パート2ではFRBのテーパリング終了にタイミングを合わせた格好となり、その後のドル円の110円割れから120円台の上昇を招いている。さらに今年1月のECBの量的緩和の狙いはユーロ安であった。

 日本の消費者物価指数は5月はコア指数プラス0.1%となっていたが、いずれマイナスになる可能性がある。年末に向けての回復を期待しているとしても、2%という物価目標にはほど遠い。その物価上昇には円安が直接的な影響を与えうる。それにも関わらず、FRBが金利引き上げプロセスに入るから今後、さらに円安・ドル高が進むと決めつけるのは難しいと黒田総裁の発言には違和感を覚える。日銀の物価目標達成のためにはアナウンスメント効果を狙い、FRBの利上げに向けた動きと日銀の大胆な金融緩和は円安・ドル高要因にもなりうる、との発言があったとしてもおかしくはない。

 この背景には、今年1月に「為替に過度に依存すれば長期的な成長はない」とし、日本の為替政策を「注視し続ける」と述べた米国のルー財務長官の存在に加え、イエレン議長あたりからも何かしらの円安への牽制の動きがあったみてもおかしくはないのではなかろうか。

 円安は輸入品の価格上昇により中小企業や我々の消費にも悪影響を与えるが、それ以上に米国政府やFRBにとってもこれ以上の円安は望ましくないとの認識ではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-06-27 09:12 | 為替 | Comments(0)

ドル円が124円台を付けた要因とその影響

 5月26日の引け後、外為市場ではドル円が年初来高値であり、テクニカル上でも大きなポイントとなっていた今年の高値122円04銭を抜けてきた。さらにショートカバーを誘うような仕掛け的なドル買い円売りが入り、ストップロス等も巻き込み、この日の9時半頃には123円台を回復した。27日のニューヨーク市場では2007年6月以来の124円台を一時付けた。
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 前回、124円台をつけていた2007年にはいったい何が起きていたのか。2006年半ばに、それまで高騰を続けていたアメリカの住宅価格が下落に転じ、一部の住宅ローンが担保割れとなるなど、アメリカ住宅バブルが崩壊し、信用力の低い個人向けの住宅資金貸し付けであるサブプライム・ローンで焦げ付きが増加した。

 サブプライム・ローン問題による最初の危機は欧州で発生した。2007年8月9日にドイツ連邦銀行は、IKB産業銀行がサププライムでの投資に伴う損失発生に対しての救済策を協議するため、緊急会合を開催した。さらに同日、仏銀最大手BNPパリバは傘下ファンドの償還停止を発表し、次はどこかとの連想も加わり、欧州銀行向け資金の出し手が急速に限られてしまい、これはパリバ・ショックとも呼ばれた。

 アメリカのダウ平均は、2007年10月に過去最高値の14164ドルの高値をつけたが、危機の発生により、その後は下落基調となった。

 つまり世界を揺るがした最初の危機の発生が2007年に起きていた。日本では「リーマン・ショック」と呼称されているが、米国初の世界的な金融経済危機の発端は2007年に入り顕在化したサブプライム・ローン問題であった。

 米国のダウ平均は2007年10月につけた過去最高値はすでに抜いているが、ドル円も本当の意味での危機以前の水準に戻ったとは言えまいか。日米欧の金融政策の正常化は、米国で始まろうとしているところだが、ドル円は先に危機前の水準に戻ったと言える。

 今回のドル円の動きの背景は過去のチャートも意識した上で、テクニカルなドルの買い戻しも誘った動きとみている。ただし、その理由付けとして、あらためてFRBと日銀の金融政策の方向性の違いも意識された可能性はある。FRBは早ければ9月にも利上げというかたちでの正常化の道を探る。参考までにイエレン議長は8月27~29日に開かれるジャクソンホール会合を欠席するそうである。

 ただし、FRBの年内利上げはかなり織り込まれており、日銀の出口が見いだせない状況も市場は理解しているはずで、これを材料にして、さらなる円売りドル買いは仕掛けづらいのではなかろうか。ドル円は120円台前半あたりが居心地が良く、当面は値動きは荒いものの方向感の乏しい動きを予想する。

 今回の123円台に乗せた円安による影響については、輸出企業は恩恵を被ることになろうが、海外への生産移転も進み以前ほどは景気に与える影響は大きくない。むしろ、燃料などの輸入品の値上がりにより、国内の中小企業や家計に与えるマイナスの影響も考慮する必要がある。

 日銀にとっては原油先物が60ドル近辺に上昇した上での円安となれば、これによる物価の上昇も期待したいところではなかろうか。しかし、2012年11月のアベノミクス登場時の円安に比べるとインパクトは小さく、その効果も限定的と思われる。

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by nihonkokusai | 2015-05-28 09:18 | 為替 | Comments(0)

ここにきての円高回帰の要因

 新年度入りしてからの東京株式市場は大きく下落し、4月1日に日経平均は262円安となり、2日には一時12000円割れとなっていた。この下落の背景には、期初の売りとかが指摘されている。当然その影響も大きいと思うが、それだけではないと思われる。

 そのひとつの要因として、1日に発表された日銀短観がある。この日銀短観によると、大企業の製造業DIはマイナス8ポイントとなり、前回の調査を4ポイント上回り、3期ぶりの改善となった。海外経済の回復や、円安により輸出関連企業の業績改善などが背景にある。アベノミクスの影響も少なからずあったとみられ、3か月後の先行きについても、大企業の製造業で7ポイント改善しマイナス1ポイントとなっていた。

 ところがNHKなどでも報じられたが、大企業の経常利益は、今年度、3年ぶりに増加に転じる見通しとなった一方で、設備投資計画は4年ぶりの大きな減少となり、景気の先行きにまだ慎重な企業の姿勢が反映される格好となった。さらに大企業の製造業が想定する為替レートの平均は今年度は85円22銭で、昨年度に比べて5円近く円安になっているものの、93円近辺にいる現在の水準からみて、かなり抑え気味の予想となっている。

 今後は再び円高に振れることも視野に入れている可能性がある。現実に外為市場の動きをみると、円安の動きはすでにブレーキが掛かり、円高が進みそうな地合になりつつある。

 2012年7月にECBのドラギ総裁はユーロ存続のために必要ないかなる措置を取る用意があると表明し、欧州の信用不安を後退させようとした。9月のECB理事会では、市場から国債を買い取る新たな対策を打ち出し、これをきっかけに欧州の信用不安が後退した。償還期間が1~3年の国債を無制限で買い入れるとしたのだが、実際には買入はされずその期待感だけで市場は反応した。

 このようにして、昨年の9月あたりから外為市場では円高調整が始まった。その後、11月あたりから円安の速度が加速したのは、アベノミクスをきっかけとしてヘッジファンドなどが円売りを仕掛け、流れが一気に加速したことによる。ところが、この円安の流れはユーロ円でみると今年2月上旬、ドル円でみると3月半ばあたりでいったんピークアウトした。

 これには2月12日にG7が緊急共同声明を発表し、為替レートを政策の目標にはしないと明記したことがひとつのきっかけになったと思われる。少なくとも日銀による外債購入というかたちでの円安誘導は封印された。そして、3月に入るとギリシャ財政危機の影響でキプロスの金融危機が深刻化した。キプロス政府は3月16日に全銀行口座からの引き出しを制限する預金封鎖を開始したことなどがきっかけとなり、一時不安感も強まった。つまりアベノミクスの手段のひとつが封じられ、さらに円安の根本的な要因となっていた欧州の信用不安が再燃したことで、円安にブレーキが掛かり、再び円高の動きが出てきたといえる。

 もうひとつ、アベノミクスへの過度の期待が剥がれてきたことも、要因としてあげられよう。アベノミクスは三本の矢というが、一本目の次元の違う大胆な金融緩和という期待に負うところが大きい。実際、日銀総裁・副総裁人事では安倍首相の意向に沿う人物が選ばれた。ところが、新体制となって初の金融政策決定会合を控え、出てきた観測は次元はあまり違わず、これまでの路線の延長上にあるものばかりとなった。むろん、あまり大胆なことをすると財政ファイナンスと市場で認識されかねず、このあたりのバランスを取るのが難しく、現実にはあまり大胆な政策は困難であったはずで、このあたりも認識されての円高の動きの可能性もある。

 期待で動いた相場は、期待が後退してしまうと当然反動がくる。その期待感を維持させるにはどうしたら良いのか。そもそも期待だけでデフレが解消、というよりは成長率が上がり、雇用も回復し、賃金も上昇し、その結果として物価が上がるとの考え方そのものに、やはり無理があるとの認識も次第に出てくるのではないかと思われる。

アベノミクスを理解するための日銀入門

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by nihonkokusai | 2013-04-03 09:00 | 為替 | Comments(0)

昨年からの円安の流れの根底にあるもの

 日銀の正副総裁人事は政府による正式な提示、さらには国会の同意が必要となるが、日銀の白川方明総裁の後任にはADB総裁の黒田東彦氏、副総裁には学習院大学の岩田規久男教授と日銀から中曽宏理事を昇格させる方向で決まりそうである。

 いわゆるリフレ派というかアンチ日銀派とも呼ばれる黒田氏と岩田氏の起用により、アベノミクスへの期待があらためて強まり、25日にドル円は94円台をつけるなど円安が進み、日経平均も11600円台に乗せるなど東京株式市場も大きく上昇した。

 ところがイタリアの選挙の情勢が伝わると状況が一変し、ドル円は一時90円台、ユーロ円は118円台をつけるなど急激な円高が進行した。その後ドル円は92円台、ユーロ円は121円近くまでそれぞれ戻してはいるが、ここでいったん円安の流れは一服する可能性がある。

 昨年からの円安の流れの根底にあるのは、欧州のリスク後退によるものである。これは外為市場でのユーロそのもの動きや、スペインやイタリアの長期金利の動向などを確認すれば明白である。円高基調が変化していたところに、日本では安倍政権の登場で、次元の違う金融政策に対する期待が出たことで円安が加速した。そこにはヘッジファンドなどの動きも加わっていたが、これは流れに乗って仕掛けてきたと言える。いわばギリシャ・ショックの際にギリシャ国債をとことん売り込んだように、流れに乗れとばかりに今度は円売りの動きを強めたのである。

 この円安というか円高調整の動きは当然ながら国内では歓迎され、それにより株も買われた。政府関係者などからも為替に関する発言も相次いだ。ところが円高調整ならばしかたないとしても、円安に誘導するかのような動きに対しては、欧米などから懸念の声もあがり、それがG7とG20の声明という結果に繋がった。為替に関する責任者といえる麻生財務相はG7あたりから為替に関するコメントは一切控えるようになってきたことからも、そのプレッシャーの大きさが伺える。

 円の動きだけを見ると、アベノミクスへの期待という材料を元に仕掛け的な動きも入った事で、相場の変調が見極めづらかった。これに対し、たとえばユーロドルの動きをみると、あきらかに2月初めあたりからトレンドが変化していた。つまりユーロの買い戻しがいったん止まっていたのである。

 昨年、11月あたりからの外為市場の「ユーロ」や「米株」などの動きをみると、リスクオンの動きが続いていたことがわかる。これらは当然ながらアベノミクスへの期待が背景にあるわけではない。このリスクオンの動きにいったんブレーキが掛かり、今回のイタリア選挙が材料視され、再びリスクオフの動きが出たものと思われる。ユーロの信用不安は一時期よりは後退したことは市場のマインドを見ても明らかではあるが、完全に払拭されたわけではない。

 アベノミクスという言葉が一人歩きしているようだが、現実には安倍政権も日銀も何ら具体的な政策を実行しているわけではない。今年度の補正予算が成立したのは昨日26日であった。日銀が2%の物価目標を決めても本当に物価が上がる確証も、それに至る道筋も明らかにされているわけではない。つまりは期待感のみが先行している。これについては欧州の信用不安の沈静化にあたって、具体的に行動を起こさずとも政策を打ち出したことで市場に安心感を与えたドラギECB総裁の政策に似たものと言えるかもしれない。ただし、それぞれ絶好のタイミングであったためとも言えるのではなかろうか。

 欧州にしても本当に信用回復となるためには、もう少し具体的な行動も必要となる。イタリアの選挙の結果次第では財政再建の後退が意識され、再び不安感の方が強まる可能性がある。日本ではリスク後退による円安の流れをうまく捕まえたものの、欧州のリスク後退の流れが止まれば、円安の流れもそこでブレーキが掛かり、アベノミクスという魔法の言葉による効果も限定的になる。今後の為替の動きを見る上では、再び欧州の動向が焦点となる可能性もある。

 この流れのなかでの円債の動きについてだが、円安株高の最中でも円債は日銀の追加緩和期待による買いなどから強含みで推移している。5年債利回りはここにきて連日のように過去最低利回りを更新し、長期金利も0.7%を割り込んできた。今のところは、円債が大きく崩れる要因は見当たらない。債券先物も過去最高値を再度伺う位置にきている。ただし、このように売る材料が見当たらないという好環境そのものに、ある種のリスクも感じる。念のための警戒も必要かと思われる。

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by nihonkokusai | 2013-02-27 09:15 | 為替 | Comments(0)
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