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カテゴリ:債券市場( 724 )

日本国債は日銀の手の平のなかで動いている孫悟空か

 大阪取引所に上場している日本の債券市場のベンチマークともいえる長期国債先物(以下、債券先物)は、10日のナイトセッションで151円89銭まで上昇した。今回の債券先物の上昇の起点は10月23日あたりで、この日の引けは150円29銭の高値引けとなっていた。これ以降、ほぼ一本調子の上昇となっていた。債券先物の出来高も次第に増加し、株安などを背景とした仕掛け的な動きが強まりつつあった。

 その後の債券先物の上昇の原動力となったのは米国債の上昇といえるが、こちらは少しタイムラグを置いて11月8日あたりから上昇基調となっていた。米債の上昇の背景となっていたのは、米中貿易摩擦を巡る懸念、英国のEU離脱問題などの国際情勢を受けたリスク回避の動きもあったが、来年の世界的な景気減速懸念も背景となっていた。FRBの利上げペースを巡る思惑なども次第に強まってきた。

 この米債高もあり、債券先物は日々の値動きも大きくなってきた。出来高も多い状態が続いたが、なかでもナイトセッションの出来高の多さが目立っていた。これは10月あたりから始まっており、ナイトセッションの出来高が1兆円を超す日も出てきていた。これは時間帯からみて海外投資家の動き、もしくは一部ディーラーがデイトレードを増加させていた可能性がある。

 ただし、現物債の商いはそれほど多くはない。10年債利回りは0.10%どころか0.05%も割り込んできたものの、これは債券先物に引っ張られたともいえる。

 12月13日の債券先物12月限の最終売買日に向けた中心限月の移行も睨み、踏み上げ圧力も意識されて、10日のナイトセッションで直近の高値を取りに来た格好となった。日銀の大量の国債買入でチーペストと呼ばれる債券先物と連動する銘柄の品薄感などから、先物は買い戻しが入りやすい。今回は米債高もあり債券先物の踏み上げ圧力が強まったと言える。

 債券先物の中心限月が実質的に3月限となってからも、相場は米債の動き次第となるとみられる。特に米債も動いている時間帯のナイトセッションの仕掛け的な動きはまだ続く可能性はある。

 これによって債券の機能が回復しているように見えなくもない。現物債市場が動きが取りづらい分、債券先物を使ったディーリング的な商いが増えることは好感したいが、それでも日銀の手の平のなかで動いている孫悟空に過ぎないことも確かである。昔のように自由に空を飛べない限り、本来の意味での債券市場の機能が回復したとはいえない。


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by nihonkokusai | 2018-12-13 09:56 | 債券市場 | Comments(0)

米国での逆イールドの発生は景気減速の兆候なのか

 3日の米国債券市場では、3年債利回りが5年債利回りを上回り、2007年以来の逆転となり、米2年債と10年債の利回り較差も約10年ぶりの水準に縮小した。5日には2年債利回りが5年債利回りを上回った。

 縦軸を債券の金利、横軸を債券の期間として期間ごとの利回りをプロットすると曲線が描かれる。これがイールドカーブである。イールドカーブは通常、右肩上がりになりやすい。これは順イールドと呼ばれる。右肩上がりの傾斜がきつくなることをスティープ化と呼んでいる。

 これに対して短い期間の債券の金利が長い期間の債券の金利を上回るようなカーブが描かれることがある。これを逆イールドと呼んでいる。長い期間の金利と短い期間の金利の較差が縮小することをフラット化と呼んでいる。

 通常は長い期間の債券のほうが所有期間リスクが高くなることで、その分のリスクプレミアムが金利に上乗せされる。このため、イールドカーブはスティープ化していることが多い。

 ここに何らかの要因が加わって、フラット化が進み、逆イールドとなるケースがある。過去に逆イールドとなった際は景気後退局面が多かったこともあり、イールドカーブが逆イールドとなるのは景気後退を示唆しているとの見方がある。

 ただし、注意すべきは短期金利と長期金利は同じ金利ながらも、変動要因が異なる場合があることである。短期金利と長期金利のスプレッドだけをみて、それが景気後退を意味すると採るのはやや早計な見方となる。

 今回の長短金利のスプレッドの縮小について、特に短期金利の上昇の背景は明確である。短期金利は中央銀行の金融政策によって決定されるものであり、FRBが正常化にむけた利上げを行ってきたことで短期金利が上昇した。それが中期ゾーンの金利にも影響を与えている。

 しかし、長期金利は利上げにも関わらず上昇は限られたものとなっていた。これは景気後退によるものではないはずである。もしそうであれば、利上げを進められる環境にはないということになる。米長期金利が短期金利に比べて上昇速度が鈍っていたのは、景気の回復が比較的緩やかで、長期金利にも影響を与える物価の上昇も鈍く、インフレを連想させるようなものとなっていなかったことによる。

 さらに米長期金利、つまり米10年債の利回りになるが、その米10年債は何かしらのリスクが発生した際にリスク回避として買われることがある。もちろんその際は10年債だけでなく中期債なども買われようが、FRBの利上げによる短期金利の水準も意識されることで、長期債ほど買い進まれないということも考えられる。

 結果としては今回の米国でのイールドカーブの逆イールドの形成と、世界的な景気減速が同時進行する可能性はある。しかし、米国のイールドカーブの動きは少なくとも、11月あたりまでは景気というよりFRBの利上げや物価動向の影響を受けていたとみるべきではなかろうか。

 ただし、ここにきての米長期金利の低下が、景気減速を背景としたリスク回避の動きであるとすれば、逆イールドというか、ここにきてのイールドカーブの平坦化は、目先的に世界経済の減速を見越したものとの見方もできなくはない。


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by nihonkokusai | 2018-12-06 09:38 | 債券市場 | Comments(0)

10年債利回りが0.1%割れとなった背景

 19日の債券市場では10年債利回りが0.090%まで低下し、8月28日以来の0.1%割れとなった。10年債利回りの0.1%という水準は市場でもかなり意識されている。

 7月の日銀の金融政策決定会合において、「金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし」との微修正を行い、指し値オペの水準レンジを拡げることを示した。この水準は黒田総裁の会見から、これまでの「倍」との表現がでており、つまりマイナス0.1%からプラス0.1%とのレンジが、マイナス0.2%からプラス0.2%ということになる。

 この微修正の目的は債券の市場機能を少しでも回復するためとみられ、その見方からすれば長期金利が0.1%以内に抑え込まれるのではなく、0.2%までの変動を容認するということになる。つまりは0.1%を超えた動きを期待というか、想定してのものと見方もできる。このため、0.1%がひとつの抵抗線として意識されていた。

 ただし、レンジ拡大の背景には少しでもファンダメンタルズや海外金利動向などにも影響を受けやすくさせる狙いもあるとみられ、今回の10年債利回りの0.1%割れは米債の動きなどにも影響を受けた素直な低下ともいえる。

 原油先物価格の下落などから、世界的な景気減速懸念が出ており、それがアップルなどを主体に米株の下落トレンドを形成しつつある。米中の貿易摩擦や英国のEU離脱問題、イタリアの財政問題などのリスク要因も金利低下要因となりつつある。原油価格の下落そのものも物価の低下要因となり、金利にとっても低下要因となる。

 18日の米長期金利の低下は、これらのリスク要因も念頭に置いた上で、今後の利上げ減速を示唆したFRBのクラリダ副議長の発言が材料視された格好となった。

 これに加え、19日の引けあとに報じられた、財務省は2019年度の国債発行計画で満期20年以下の固定利付債について全て減額対象の候補とする方針との観測も19日の日本の国債の利回り低下に影響していたかもしれない。

 ここにきての日本の国債利回りの低下により、日銀は今後、国債買入の調整を行ってくる余地が生まれる。超長期ゾーンの減額観測が出ているが、長期ゾーンのさらなる減額もありうるか。

 ただし、世界的なリスク回避の動きにより、これまでのゴルディロックス(適温)相場といわれた相場が終焉することも想定される。そうなると米国の金利の上昇も頭討ちになる可能性がある。これはつまり日銀による現在の緩和策の本格的な修正がより難しくなるともいえる。


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by nihonkokusai | 2018-11-21 09:37 | 債券市場 | Comments(0)

シャッター街化する日本の債券市場、これを阻止するには日銀の異次元緩和を止めるべき

 10月22日の日本の債券市場は、まれにみる商いの細さとなった。業者間での現物債の取引を行っている日本相互証券で、前場に現物債の取引がゼロとなっていた。これは長期債だけでなく短期債も含めてであり、過去にシステム障害などを除いて、前場に取引量がゼロというのは、30年以上債券市場を見てきた私にも記憶にない。

 結局、22日は15時あたりまでの日本相互証券で商いは300億円程度となり、後場に出合ったカレントは20年の5億、40年の15億のみ。10年債のカレント含めて、2年、5年、30年カレントは日中出合いなしとなった。

 22日の債券先物の日中出来高は1.1兆円程度あり、値幅は6銭となっていた。なぜか先物は現物債がこのような状態でもそこそこ商いがある。これも不思議ではあるものの、裏を返せば、もし債券先物も完全に動きがなくなってしまうと、日本の債券市場はまさに開店休業となり、完全にシャッター街化する。

 22日の債券市場が何故、異常なほど低迷していたのかといえば、いくつかの要因が絡んでいた。月曜日は週初ということもあり、会議などを行っているところも多いとみられるなど特に材料がない限り、他の曜日にくらべて相対的に商いは少ない。

 この日は国債入札や決定会合などは予定されておらず、日銀の国債買入も予定されていなかった。これも商いが低迷するひとつの要因となる。膠着相場となっている債券市場にとって数少ないイベントが日銀の国債買入である。

 その日銀の国債買入に絡んで、23日に日銀で「市場調節に関する懇談会」が開催される。ここで日銀の国債買入について何らかの修正が出てくるのではとの思惑が出ていた。このため動きづらくなっていた面もある。この懇談会で国債買入に関して量や日程などについての修正が出てくるのではないかとの見方が出ていた。なにせ日本の債券市場は日銀の強力な国債買入とイールドカーブコントロールによって、封じ込められてしまっているため、その細かな修正にすら気を配らなくてはいけない状態となっている。ただし、実際には懇談会において、特に新たな発表などはなかったようである。

 そもそも非常時対応のはずの異常な金額の国債買入と、結果として戦時下のような長期金利の抑圧、さらには必要のないマイナス金利そのものが、日本の債券市場を機能不全状態に追い込んでいる。こちらを修正しない限りは日本の債券市場が活性化することはない。


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by nihonkokusai | 2018-10-24 09:52 | 債券市場 | Comments(0)

債券市場の機能低下が心配と言うのであれば、長期金利操作そのものを止めるべき

「日本銀行が量的緩和策の長期化で低迷する国債取引を活性化するため、実施日の非公表化など市場が予想しにくい買い入れオペの手法に変えていくとの見方が浮上している。」とブルームバーグが伝えた。

 これは本末転倒とも言わざるを得ない。財務省の国債入札や日銀のオペレーションなどは債券市場参加者への情報の透明度を強めるために、事前のスケジュールの公表や、結果発表時間の繰り上げ等の工夫が行われてきた。これが当然の流れかと思う。

 日銀は量的・質的緩和で物価が上がらなかったために、いろいろと創意工夫というか手当たり次第に新たな政策をくっつけて、「長短金利操作付き量的・質的緩和」というペンとアップルをくっつけたような政策まで打ち出した。

 日銀が大量に国債を買い入れるだけでなく、市場で決まるべき長期金利そのものまでコントロールしようとした。その結果、債券市場の機能は低下してしまい、債券市場でファンダメンタルに応じた適正な利回り形成ができないだけでなく、財政への警戒信号の役割もできず、市場機能そのものをなくしてしまった。

 世界第二位の規模を誇る日本の債券市場が機能不全となり、金利変動という経験が債券市場参加者の若手に与えられず、市場そのものの衰退で債券関係者そのものも減少しつつある。

 それならば、市場の活性化を促すと言う目的で、日銀の買入でこれまで事前に通達していたオペ日程を非公表化に戻そうなどということは、透明度を高めるという流れに逆行し、市場の不安要因を増加させ、市場への参加意欲をさらに後退させかねない。

 もしそれほど債券市場の機能低下が心配というのであれば、いますぐにでも長期金利操作、イールドカーブコントロールを止めるべきである。


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by nihonkokusai | 2018-10-11 09:51 | 債券市場 | Comments(0)

9月の米雇用統計受けて米株は大幅続落、物価上昇観測による米長期金利の上昇を警戒

 FRBのパウエル議長は3日、「中立的な金利水準へとわれわれは徐々に向かっている」と指摘。「われわれは中立を超えるかもしれない。しかし、現時点では恐らく中立金利まで長い道のりがある」と述べた(ブルームバーグ)。

 9月26日のFOMCにおいて、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年1.75~2.00%から2.00~2.25%に0.25%引き上げることを、投票メンバー9人の全員一致で決定した。FOMC参加者の金融政策見通しによると、今年の利上げ回数は4回と前回予測と変わらず。2019年は計3回、2020年は1回。2021年はゼロとの予測となっていた。FRBは長期の中立金利を3%とみているようで、来年までにあと0.25%の4回程度の利上げによって中立金利に達することになる。

 米10年債利回りは4日に一時3.2%台に上昇した。この背景にはFRBの正常化にともなう利上げとともに、物価上昇圧力が意識された。米国債券市場では物価が比較的安定しているなか、正常化に伴う利上げによって長期と短期の金利差が縮小していた。しかし、今後は物価動向も意識されて、この長短スプレッドが拡大してくる可能性もある。

 いまのところ米国の足元の物価は落ち着いているようにみえる。しかし、原油価格の上昇による影響、さらには中国からの輸入品に関税を課すことによる消費財の値上がりが予想されている。アマゾンが米国内の約25万人の従業員と、約10万人の季節従業員の最低賃金を引き上げるなどの動きも出ており、賃金上昇による物価の上昇圧力が加わることも予想される。

 5日に発表された9月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は13.4万人増と予想の18.5万人増を下回り、注目された平均時給は前年比2.8%増と8月の2.9%増からは伸びが鈍化していた。しかし、失業率は3.7%と1969年12月以来の低水準となったことで、労働需給の引き締まりが物価上昇圧力につながるとの見方から、この日の米10年物国債利回りは一時3.24%に上昇した。この長期金利上昇が嫌気されて、ダウ平均は180ドル安となった。

 物価上昇圧力が加わり、それがFRBの想定ペースを上回るようなことになると、これまで抑制されていた長期金利にさらなる上昇圧力が加わることが予想される。緩やかな上昇であれば、市場への影響も軽微となろうが、節目を抜けたこともあり、米長期金利がさらに大きく上昇してくる可能性もありうる。

 日本では長期金利を日銀がコントロールしている格好ながら、これは極めて異例の措置であり、FRBは長期金利をコントロール下に置いているわけではない。しかし、米長期金利が荒れた動きとなれば、FRBも慎重な対応を行う必要も出てこよう。また、日本ではどこまで長期金利がコントロールできるのかを試されることもいずれ予想される。


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by nihonkokusai | 2018-10-06 10:54 | 債券市場 | Comments(0)

米国の長期金利が3.2%台に急上昇、市場は警戒モードに

 3日の米国債券市場では、米10年債利回りが3.18%と、前日の3.06%から大きく上昇した。4日には一時、3.23%まで上昇し、2011年5月以来の水準に上昇した。米10年債利回り(長期金利)は3%がひとつの壁となっていた。今年4月24日に3%台をつけて、5月17日に一時3.11%まで上昇したことで、ここがあらたな壁と認識された。9月18日に再び3%台に乗せたあと、3.10%近くまで上昇したが抜けきれなかった。しかし、その後は3%台をキープしていたことで、3.11%の壁を突破するタイミングを睨んでいたようにも思われる。

 3日の米国債券市場では、いくつか複合的な材料が出たことで、3.11%の壁を一気に突破したともいえた。イタリアのコンテ首相が今後3年間で債務を圧縮する方針を明らかにしたことで、イタリアの財政懸念が後退し、リスク回避の巻き戻しによる動きとなったこと、9月のADP全米雇用リポートで非農業雇用者数の増加幅が市場予想を上回り、9月ISM非製造業景況指数が公表開始以来の最高を記録したことなど米景気の回復を示す経済指標が相次いだこと、原油価格が大きく上昇したことによる物価への影響も意識された。さらにパウエルFRB議長による中立金利水準を超えて利上げを進める可能性あるとの発言も影響した可能性がある。

 ただ、このうちのどれかが大きく材料視されたというよりも、ヘッジファンドなどが米債を売るきっかけとして使われたように思われる。利上げ圧力が強まったというよりも、なかなか抜けきれなかった水準を抜いてきたことで、テクニカル的な売り圧力が加わり、米債は売られ、3.2%台までに米長期金利は上昇したのである。

 チャートからは次の米10年債利回りのメドは3.5%あたりとなる。FRBのパウエル議長からは「とりわけ輝かしい局面にある米経済」との発言もあり、足元の米国のインフレ圧力は加わっていないものの、今後は物価上昇圧力が掛かってくる可能性もありうる。

 FRBの利上げは今年はあと1回、来年も3回程度が見込まれており、この利上げペースに応じた長期金利の上昇もあっておかしくはない。ただし、米長期金利の上昇ピッチが早まると、それは景気の阻害要因にもなりかねない。3日の米国株式市場は米10年債利回りの上昇を好感して金融株が買われ、当初は買い材料となっていた。ところが、その後は金利上昇によるマイナスの影響も意識されてダウ平均の上値を重くさせた。4日には金利上昇が警戒されてダウ平均は200ドル安と大きく下げていた。

 米10年債利回りは、3.5%あたりを見据えて、緩やかな上昇トレンドを描くことになれば、米景気に対する影響を軽減させるのではないかと思うが、市場が今後、動揺してくる可能性はある。今年2月5日に米国株式市場でダウ平均は一時1597ドル安となり、取引時間中として過去最大の下げ幅を記録したきっかけも、米長期金利の上昇とされた。

 また、米10年債利回りの上昇による日本の債券市場への影響も意識しておく必要はありそうである。4日に日本の10年債利回りは0.155%と8月2日の0.145%を超えてきた。超長期債と呼ばれる20年、30年、40年の国債利回りも大きく上昇してきている。


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by nihonkokusai | 2018-10-05 10:05 | 債券市場 | Comments(0)

将来の日本の国債市場を見据えて、物価目標の再考を

 7月30、30日の日銀金融政策決定会合の議事要旨には次のような指摘があった。

 「何人かの委員は、わが国の国債市場では、このところ長期金利の変動幅がさらに縮小し、取引高の減少傾向が目立っていると指摘した。」

 7月31日の金融政策決定会合では、金融緩和策の柔軟化というか弾力化が図られた。現在の金融緩和の持続性を強化する措置として、「長期金利の変動幅として、これまでの概ね±0.1%の幅から、上下その倍程度に変動しうることを念頭に置くことが大方の委員の合意となるのであれば、本日の議長による記者会見でこれを明らかにしてはどうかと提案した。」とある。実際に31日の黒田総裁の記者会見では、「上下その倍程度」という認識が示された。

 これを受けて8月2日に日本の10年債利回りは0.145%まで上昇した。これに対して日銀は急激な金利変動を抑制するためとして、臨時の国債買入をオファーした。これは指し値オペではなかったものの、市場は0.150%以上の金利上昇までは容認していないのかとして、ここで10年債利回りの上昇はいったんストップした。

 その後の債券市場は再び7月31日以前の膠着相場に戻りつつある。

 9月25日の債券市場では、債券先物は8月3日以来の150円割れとなった。超長期債と呼ばれる残存20年、30年、40年の国債も売られた。

 この理由としては9月21日の日銀による国債買入で残存25年超の買入予定額を100億円減額したことが挙げられる。減額幅はわずか100億円といえども、米10年債利回りが3%を超えてきたり、ドル円が113円台をつけ、日経平均も13000円に迫るなか、債券売りはきっかけ待ちとなっていたともいえる。日銀の買入減額はちょうど良い売りのきっかけとなり得たといえる。

 しかし、それにより超長期債が年初来の最高利回りを更新したといっても、売買高そのものは限られた。25日の10年債カレントは前場に出合いはなく、中期ゾーン、つまり残存2年や5年の国債が日本相互証券で15時までに売買がないという異例の事態となっていた。債券先物も150円割れとなったといっても、日中値幅はわずかに8銭しかなかった。

 日銀が多少、長期金利の変動幅の拡大を容認しようとも、債券市場の機能低下に対しては根本的な解消要因とはならない。イールドカーブのスティープは市場参加者にとっては歓迎されようが、売買が盛り上がらない以上、債券市場への魅力は後退するばかりとなってしまう。

 こういったなか動かない債券市場の参加者が更に減っていくことも予想される。国債利回りが大きく動いたことを経験した我々世代はすでに引退世代入りしており、金利変動を経験した人も市場から自然といなくなってしまう。債券市場の機能回復には日銀の大きな政策変更という大きな壁があるのかもしれないが、達成できることは考えづらい物価目標達成というお題目のために、大きなものが失われかねない。それが将来の日本の国債市場に大きな影響を与えてしまうことも認識すべきときではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2018-09-27 09:30 | 債券市場 | Comments(0)

米長期金利が再び3%超え、ドル円や日本の長期金利の上昇圧力に

 9月18日の米国市場において米10年債利回り(米長期金利)は3.05%となり3%を再び超えてきた。

 18日の日本時間の朝方、にはトランプ政権が2000億ドル相当の中国製品への追加関税を24日から課すと発表し、これを受けて中国も報復措置として600億ドル相当の米国製品に関税を24日から課すと発表した。

 これに対して18日の東京株式市場は寄り付きこそ日経平均はマイナスとなったが、その後プラスに転じ、300円を超す上昇となった。中国株も同様に上海総合指数などは上昇していた。

 18日の米国株式市場もダウ平均は184ドル高、ナスダックも60ポイントの上昇となった。17日に売られていたハイテク株などに買い戻しの動きが入り、米長期金利の上昇から金融株が買われ、原油先物が上昇したことで石油関連株も買われた。

 トランプ大統領はさらなる追加関税も示唆したが、市場では米中を主体とした貿易戦争に対して冷めた目で見始めたとも言えるのかもしれない。税率が思ったよりも低いといった面もあったかもしれないが、そもそもこれによる米国経済への影響は限定的との見方もある。

 FRBのパウエルFRB議長は8月24日のジャクソンホールでの講演で、米経済の力強い成長が続くなかで、利上げペースを速めない姿勢を示唆していた。これもあり、米長期金利8月24日以降、じりじりと上昇し節目とされる3%を再び超えてきたと言える。

 さらに米長期金利の上昇を促すような材料も出てきた。日経新聞は19日、「米国内にインフレ圧力 対中関税5700品目追加で」という記事を伝えている。

 「トランプ米政権が示した対中制裁の第3弾では家具やカバンなどの消費財が多く加わった。また多くの自動車部品や電子部品、化学品も含まれ、米国内で完成品として生産される家電や自動車などもコスト上昇圧力にさらされる。」(日経新聞)

 今回の追加関税を受けての物価上昇圧力なども米長期金利がこれから織り込み始めるとなれば、米長期金利の3%という大きな壁から上抜けてくる可能性はないとはいえない。FRBも当面、利上げを続ける姿勢を示していることも米長期金利の上昇圧力ともなりうる。

 ただし、米国の足元の物価は落ち着いている。たとえば8月の米国の消費者物価指数は、変動の大きい食品・エネルギーを除くコア指数が市場予想に反して伸びが鈍化していた。これが米長期金利の上昇を抑制していた面もある。しかし、今後物価に上昇圧力が加わると、状況が変わる可能性がある。

 米長期金利の上昇は日米の長期金利差からみるとドル円にとっては上昇圧力となる。ドル円もここにきてじりじりと上昇してきているのも、米長期金利の上昇も影響していよう。そうなると、米長期金利の動き次第では、ドル円もあらためて戻りをトライする可能性もある。また、日本の長期金利もあらためて日銀のレンジの上限を試すようなことも予想される。


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by nihonkokusai | 2018-09-20 09:13 | 債券市場 | Comments(0)

日本の国債市場の機能が再び低下

 9月に入ってからの日本の債券市場の動きを確認してみたい。9月3日の現物債はカレント(直近発行された国債)が、2年、5年、10年、20年、30年、40年ともに一本値となっていた。この日の先物の日中値幅(前後場のみ)は9銭。

 4日に日銀は3年超5年以下の国債買入を月額ベースで減少させたが、この日の2年債と5年債、そして10年債カレントは一本値となっていた。先物の値幅は11銭。

 5日の10年国債入札は順調名結果となり、10年債カレントは久しぶりに動いたもののレンジは0.110~0.115%。5年債は一本値、2年債カレントは出合いなし。先物の値幅は10銭。

 6日に今度は日銀は5年超10年以下の国債買入を月額ベースで減額させた。この日の10年債カレントは一本値、2年債と5年債カレントも一本値。先物の値幅は10銭、

 7日は2年、5年、10年、40年カレントは一本値。先物の値幅は10銭。

 10日は月曜日で先物は中心限月の移行を控えていたこともあるが、2年と40年カレントは出合いなし。ほかのカレントは10年債含めて一本値。先物9月限の値幅は5銭となっていた。

 11日の30年債入札は順調な結果となっていたが、落札結果発表時間が何故か遅れていた。ただし市場への影響は限られ、2年と5年のカレントの出合いなく、10年と20年のカレントは一本値。先物値幅は実質的に中心限月となった12月限が7銭となっていた。

 12日は2年、5年のカレントは出合いなく、10年と20年カレントは一本値。先物の値幅は8銭。

 日銀は7月31日に政策の弾力化というか柔軟化を行った。それを受けて一時的に債券相場は動いたものの、再び膠着相場に戻りつつある。8月27日に債券先物の日中値幅が3銭と過去最低に並んだ。それ以降は10銭程度の値幅となっていたが、動きが乏しいことに変わりはない。

 現物債も2年と5年のカレントが出合わない日が多くなり、10年債カレントもかろうじて値がついている状況となっている。10年債カレントが出合わないとなれば一般のニュースともなってしまう懸念があり、なんとかそれは免れている格好となっている。

 日銀は長期金利の目標レンジをこれまでの±0.1%から±0.2%に拡げたとされる。さらに月額ベースの買入を減少させることで、10年債カレントの流動玉もそれなりに出てくることが予想されている。

 このように需給面では多少は緩和されているものの、それでも需給はタイトな状況に変わりなく、ある意味動きようがなくなっている。外部環境をみても米国10年債利回りが3%近くまで上昇してきたが、それもいまのところ材料視されず。10年債利回りはこの水準が居心地が良いのか、それとも中間決算期末なども意識して動きたくはないのか。ただし、このまま膠着相場が続くとも思えないのだが。


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by nihonkokusai | 2018-09-14 09:36 | 債券市場 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
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