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カテゴリ:金融( 39 )

日銀レポートにみる日本でのキャッシュレス化の現状

 あらためて日本でのキャッシュレス化の現状についての論点整理を試みたい。今回は「BIS決済統計からみた日本のリテール・大口資金決済システムの特徴」という今年2月に日銀が出したレポートを参考にして見ていきたい。

 日本における現金流通残高の対名目GDP比率は突出して高く、キャッシュレス化が急速に進行しているスウェーデンの約11倍にも達する。日本では「国内の治安が相対的に良く、盗難等により現金を失うリスクが他国対比では低いこと、偽造された銀行券が相対的に少なく、銀行券に対する国民の信認が高いこと、低金利環境により現金保有の機会費用が小さいこと」等から法定通貨である円という現金の利用が多くなっているとしている(上記レポートより)。

 現金の支払手段としての側面からみてみると、法定通貨としての強制通用力や一般受容性といった性質に加え、支払完了性を有すること、価値以外の情報が切り離されているという意味で「匿名性」を有することといったメリットが挙げられている(上記レポートより)。

 電子通貨ではこの「匿名性」が失われる可能性がある。また支払可能な金額が額面金額に限定されていることも、むしろメリットと捉える向きもあると指摘されている。

 日本ではカード決済のウエイトが相対的に小さく、支払手段として現金が幅広く使われているが、各種カードの一人当たり合計保有枚数をみると、日本では一人当たり平均で7.7枚とかなり多い。実はデビットカードの保有枚数も日本は多いものの、それはデビットカードの保有枚数には「J-Debit」が計上されているためで、使わなくてもデビットカードの機能もあるカードを複数枚所持していることが要因となっている。

 そして、日本におけるカード決済金額をみると次のような特徴がみられるとレポートでは指摘している。

・電子マネーによる決済金額は、各国平均を大きく上回っている。

・クレジットカードは、概ね各国平均並みに利用されている。

・デビットカードによる決済金額は、各国平均を大きく下回っている。

 電子マネーのカード利用に関しては、交通系カードが広く普及していることやポイントの付加などが日本で多く利用されている要因となっている。電子マネーによる決済は、小売店等における少額決済を中心にかなり急速に増加しているようである(nanacoやWAON等々)。このため日本における少額貨幣の流通残高は減少している。

 デビットカードに関しては、日本における一人当たりの保有枚数は非常に高くなっている一方で、カード決済金額の対名目GDP比率は極めて低い。日本では人々が預金引き出し等のためのキャッシュカードをデビットカードとしてはほぼ全く使わないまま複数枚持ち歩いていることになるが、なぜデビットカードが普及していないのか。日銀のレポートは次のように指摘している。

 「日本においてデビットカードの利用が広まっていない理由としては、米国では銀行業界が、大量の小切手処理に伴うコスト削減の観点から、小切手を代替するデビットカードの普及に努めたのに対し、日本ではもともと小口決済において小切手の利用が普及していなかったことや、クレジットカードの発行に伴う審査が諸外国に比べ厳しくなく、比較的多くの人々がクレジットカードを持てること、さらには、このようなクレジットカードが利用される際、一回払いが選択される場合が多く、機能的にはもともとデビットカードに類似した使われ方がなされていることなどが挙げられる。」(日銀レポートより)

 海外でのキャッシュレス化の普及状況をみると、たとえばスウェーデンでは同国の複数の有力銀行が共同で開発したスウィッシュ(Swish)と呼ばれるモバイル決済が広く使われている。中国でのモバイル決済は「支付宝(アリペイ)」と「ウィーチャットペイ」の2強に延べ12億人が登録している。このように使い勝手の良い限られたモバイル決済が大きく普及している。これに対して日本では日銀が発行した日銀券という使い勝手の良い決済が多く利用されているものの、電子決済に関しては事業会社ごとに異なるものとなっており、単一性が図られていない。これは利用者にとっても不便であり、それぞれの端末の設備投資が必要となる小売業などにとっても不便と言えよう。

 日本では脱税やマネーロンダリング防止目的での高額紙幣の廃止の必要性は感じられないが、モバイル決済については今後、さらなる普及が見込まれる。しかし、その障害となっているのが、単一性が図られていない面ではなかろうか。たとえばではあるが、スウェーデンのように日本の大手銀行がスウィッシュ(Swish)のような統一したモバイル決済を行うようになれば、電子決済の普及がさらに高まる可能性がある。


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by nihonkokusai | 2017-12-01 09:29 | 金融 | Comments(0)

株高なのに円高の理由

 11月22日の東京株式市場は前日の米国株式市場で久しぶりに主要3指数が史上最高値を更新したことなどから、買いが先行し日経平均は一時22600円台後半まで上昇した。ここにきて、利益確定売りなどに押されていた東京株式市場であったが、米株の回復なども手伝い日経平均は再び23000円も視野に入ってきそうである。

 これに対して外為市場ではドル円の上値が重くなっている。上値が重いというより、ドル円はダウントレンド入りしているようにも思われる。ドル円は11月6日に114円70銭台まで上昇していたが、そこから下落基調となり、11月17日には一時111円台を付けていた。22日のドル円も戻りが鈍く、112円台前半での推移となっていた。

 日経平均とドル円が常にリンクしていねわけではないが、リーマン・ショックやギリシャ・ショックに代表される世界的な金融経済危機が生じた際には、リスク回避の動きから日経平均は下落し、ドル円も下落(円高)となっていた。ところがこの危機の後退時に登場したアベノミクスをきっかけに、リスク回避の反動が一気に生じ、今度は日経平均は急反発し、ドル円も上昇(円安)となった。

 その後も比較的、日経平均とドル円はリスクオンやリスクオフに絡んだ材料に同様の反応を示していた。しかし、ここにきてあらためて日経平均とドル円の動きに連動性がみられなくなっている。

 このひとつの要因として米長期金利の動きが影響しているように思われる。米国の10年債利回りは10月26日に2.46%あたりまで上昇後、上値が重くなり、ここにきて2.3%台主体での推移となっている。12月のFOMCでの利上げの可能性は市場でも意識されており、それを織り込んでの動きでもある。

 この米長期金利がそれほど上昇していない背景としては、FRBの正常化が慎重に進められている面もあろうが、米国の物価がさほど上昇していない面が大きい。原油先物などをみるとWTIは50ドル台に乗せるなどしているものの、10月の米消費者物価のコア指数は前年比1.8%増となっている。FRBの物価目標はPCEデフレータであるが、このコア指数も2012年半ばあたりからFRBの目標である2%を下回り続けている。

 つまりは米国の物価が思うほど前年比で上昇しておらず、その結果、米長期金利の上昇が抑制され、それによってドル円の上値が抑えられ、株式市場の動きと乖離を見せているように思われるのである。


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by nihonkokusai | 2017-11-23 08:52 | 金融 | Comments(0)

災害時の金融機関などのパックアップ体制

先日、映画シンゴジラでゴジラが東京駅周辺の建物を破壊し、大手町や日本橋などに避難勧告が出された際の金融市場への影響を想定してみた。この際に日本取引所グループの取引所取引専門部会報告書なども参考にさせていただいたが、日銀をはじめ金融機関も災害時における対応は進めており、それをネットで公開されている資料からあらためて確認してみたい。

 「日本銀行の業務継続体制の整備状況とその評価」とのファイルが日銀のサイトにアップされている。ここで「日本銀行は、災害対策基本法等の関連法令等において、災害時等にも業務を継続すること等を求められている」とある。脚注には下記の説明があった。

 「日本銀行は、災害対策基本法(昭和37年施行)、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)(平成16年施行)などにおいて「指定公共機関」とされており、業務にかかる防災計画を作成し、災害発生時には同計画を実施すること等が求められている。また、首都直下地震対策大綱(平成17年)では、「首都中枢機関(経済中枢)」として位置付けられており、重要な金融・決済機能の当日中の復旧等が求められている。」

 「日本銀行では、重要な経営資源が損なわれる場合に備えて、被災想定に応じた業務継続体制を整備している。具体的には、本店(東京都中央区)、システムセンター(東京都府中市)、役職員といった経営資源が機能不全になったケースに応じて、場合分けしている。そのうえで、大阪に所在するシステム・バックアップセンター、本店の代替業務拠点、大阪支店、業務継続要員などを活用することにより、業務継続を図る体制としている。」

 日銀本店が機能不全となった際には、大阪で代替業務を行うようである。

 日本取引所グループのBCPフォーラム(取引所取引専門部会報告書)によると、こちらも業務オフィスが利用不能になった場合、関東近郊に代替オフィスを確保しているようである。

 それでは民間金融機関はどのような準備をしているのか。これについては日銀による「業務継続体制の整備状況に関するアンケート(2014年9月)調査結果」という資料があった。

 このなかでバックアップオフィスに関する部分を確認してみると「全体の8割強の先が、被災時の重要業務遂行のためのバックアップオフィスを保有しており、保有しているバックアップオフィスの数は「3か所以上」、「1か所」とする先が3割程度、「2か所」の先が2割台半ばとなった」

 「バックアップオフィスで行う主な重要業務としては、「決済関連業務」を挙げる先が最も多く、「資金繰り業務」、「為替業務」等がこれに続く」ともあった。

 これらを見る限り、ゴジラによる首都圏中央部の災害が発生しても、バックアップ体制が機能するであろうと予想される。ただし、システムのバックアップと代替オフィスが準備されていても、問題は「人」であるかと思う。こちらはさすがに完全なバックアップ体制は構築できないため、非常時の課題となる可能性がある。


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by nihonkokusai | 2017-11-16 09:43 | 金融 | Comments(0)

シンゴジラのヤシオリ作戦による金融への影響を想定してみた

 11月12日の地上波で初放映されたシンゴジラは大きな反響を呼んだようである。平均視聴率は15.2%と高かったようだが、それよりもネットでの反響が大きかった。すでに映画館などで見た人も多かったはずだが、ツイッターで地上波実況を共有するなどして、ネットも使って視聴者が同時にテレビでのシンゴジラを楽しむという新たな楽しみ方も注目されよう。

 このシンゴジラは日本の首都を直撃した大きな災害に対してどのように政府が対処するのかという面についても、妙にリアリティーがあった。首相官邸地下にある危機管理センターや、立川にある緊急災害対策本部など、実際にある施設の使用が想定された。

 シンゴジラの中での金融に絡んだコメントは限られていた。ただし、証券取引所で株価が急落し、急激な円安が進行するとともに、日本国債が暴落しているというコメントが会話にあった。

 ゴジラの都心に向けた襲撃進路をみると、最終的な対策が取られたのが東京駅であり、その周辺も大きな被害を受けた格好となった。かろうじて東京証券取引所や日本銀行の建物への直接的な被害は免れた格好となっていた。

 しかし、あれだけの大規模作戦(ヤシオリ作戦)が敢行されたとなれば、東京証券取引所や日銀、メガバンクの本店やプライマリーディーラーの本社なども避難対象となっていると想定される。それで果たして金融そのものにどのような影響を与えるのかもシミュレートしておく必要があるのかもしれない。

 有事の際の東京証券取引所などの取引については、「取引所取引専門部会」が4月に報告書を出していた。有事の際にはバックアップ体制に速やかに切り替えることで、清算・決済機能についてはおおむね2時間以内、約定機能についてはリスクとなる事象が発現してからおおむね24時間以内に復旧・再開させることを目標とする体制を構築するよう報告がなされていた。

 参考、「BCPフォーラム取引所取引専門部会 第二次報告書」http://www.jpx.co.jp/corporate/about-jpx/crisis-management/bcp-forum/tvdivq0000007c9r-att/1-1.pdf

 日銀についても非常時の対応は検討されていると思われ、バックアップ機能は当然想定されているとみられる。少なくとも金融インフラの基幹ともいえる日銀ネットは機能することが予想される。それでも日銀本店が使えないとなれば、それなりに金融取引に支障が出る可能性はあるかもしれない。大手町にあるメガバンクの本店機能も一時的に喪失するとみられ、こちらもシステム的にはバックアップはあるとしても、人的な作業面等である程度、金融取引に支障が出る可能性はある。

 国債を主体とした債券の取引についてはどうであろうか。国債の入札については日銀ネットが機能していたとしても、プライマリーディーラーの本店なども東京駅周辺にあるため、ある程度の期間は中止せざるをえないではなかろうか。ただし、国債の休債分については、前倒し発行枠などあるため、ある程度の期間であれば休債は可能とみられる。

 国債の取引そのものについても、売買だけでなく決済にも支障が出ることが予想される。日本証券クリアリング機構も東京証券取引所内にある。このため国債の取引は一時的に中止せざるを得ないかもしれない。それでも上記の取引所取引専門部会の報告書にあるように、停止期間がそれほど長期にわたることがないとなれば、市場の混乱も一時的なものとなろう。


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by nihonkokusai | 2017-11-14 09:56 | 金融 | Comments(0)

ビットコインと円との大きな違い

 円は日本の法定通貨である。国は法定通貨を定めることで、その通貨を「決済手段として使う権利」が定められる。通常、国はひとつの法定通貨を有している。法定通貨が持つ、この「決済手段として使う権利」は「強制通用力」と呼ばれる。日銀券を用いて支払いを行った場合には、相手がその受取りを拒絶することができないという「法貨としての強制通用力」を持っている。

 現在、日本で使うことのできるお札は22種類ある。この「使うことができる」ということを「強制通用力がある」と言い、日銀券は日銀法で法貨として無制限に通用すると定められている。ただし、補助貨幣などの貨幣には一定の制限があり、硬貨の場合は「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第7条」により、同じ硬貨は20枚まで強制通用力を有していると定められている。

 強制通用力を認められた貨幣による決済は、額面で表示された価値の限度で最終的な決済と認められ、受け取る相手側はこれを拒否できない。つまり、日本国内で円を使う場合に、日銀券は制限なく使用できる。反対に強制通用力の無いものでは、決済を拒否できることになる。

 日本における通貨の「円」とビットコインなどの仮想通貨などとの大きな違いは、この通貨の強制通用力の有無ということになろう。さらに法定通貨と強制通用力で守られた「通貨」は交換力が保証される。つまり流動性が保証される。これに対して仮想通貨はこういった交換力の保証がない。

 法律で守られていないビットコインと法定通貨である円が、もし同じような利用価値を有することになるとなれば、日本の国民が法律を遵守することがなくなり、法律というかそれを制定する国への信用度が極度に低下する場合となろう。

 いまの日本では日銀が国債を異常な規模で購入していようが、いまのところ国や国債、そして円に対する信認は非常に強い。日本国債の利回りが低位で推移し続けているのも国への信認が背後にあり、それは国の法律に守られた円に対する信認が強いことも示している。

 また、日本国内での商取引が極めて閉鎖的であることで、円の使い勝手が良いことなどがあり、国際的に流動性の高いドルなど他の通貨がそれほど流通していない要因となっている。日本の物価が安定していることで、円の価格変動リスクが極めて少ないことも大きく影響していよう。

 これに対してビットコインなどは極めて価格変動リスクが大きいこともあり、投機的な利用はさておき、通貨として利用が日本国内で拡がることは現状は考えづらいのである。


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by nihonkokusai | 2017-10-22 10:55 | 金融 | Comments(0)

「『円』対『仮想通貨』」

 ビットコインの価格が乱高下するなどしていることで、再びビットコインなどの仮想通貨がニュースなどでも取りあげられている。しかし、特に日本ではこの仮想通貨が法定通貨である円に取って代わるような事態となることは考えづらい。

 日本国内での「円」の利用については、まったく支障がない。それどころか日本人は特に現金主義であり、世界的に電子マネーや仮想通貨といった新たな決済手段が広がりつつあるなかでも、日本は引き続き他国と比べて現金を好む傾向が強いとされている。

 日銀が今年2月に発表したレポートによると、日本の現金流通高の名目国内総生産(GDP)比は2015年末時点で19.4%となり、日本の現金流通高のGDP比はユーロ圏の10.6%、米国の7.9%、英国の3.7%など他の主要国と比べて際立って大きい。

 この要因として日銀が指摘しているもののひとつは「タンス預金」として使わないまま滞留している現金が多いこと。日本は治安が相対的に良く、現金を保管しても盗難のリスクが低いこと、低金利が長く続いていることで、預金していても金利収入がほとんど得られないことなどとなっている(2月21日日経新聞記事より引用)。

 もちろん現金に慣れ親しんでしまっていることで、便利とはわかっていても電子マネーよりもつい現金を使ってしまう面もある。コンビニでの利用もいまだ現金の割合も多いようである。

 これは日本の円の決済のしやすさや、その価値が安定していることも影響している。電子マネーは便利ではあるが、ひとつの電子マネーが、すべての店で決済ができるわけではない。

 またビットコインなどを使った際のように、今日買ったコーヒーの値段が明日、大きく変動するようなこともない。

 同じ円で使える電子マネーの普及もなかなか進まないなか、日々値動きがあり、さらにその決算についても一定の手続きが必要な「仮想通貨」が日本国内で通貨として普及することは、円の信認や価値がこれまで通り維持されるという前提では考えづらい。  

 仮想通貨は通貨という名称はついていても、国内では投機的な対象物となっており、ブロックチェーンという仕組みは応用が可能で普及する可能性はあるものの、仮想通貨自体が「通貨」として普及する可能性は極めて低いと言えよう。


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by nihonkokusai | 2017-10-18 09:49 | 金融 | Comments(0)

硬貨を加工すると罰せられる

 手品用コインを製造するために硬貨を傷つけたとして、警視庁保安課は5日までに、男3人を貨幣損傷等取締法違反の疑いで逮捕した(日経新聞電子版より)。

 このように硬貨を加工すると法律で罰せられることをご存じであろうか。

 日本の通貨を規定している「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」、いわゆる通貨法によると、政府貨幣とは日本政府、この場合には財務省が発行する通貨となる。私たちが利用している一円、五円、十円、五十円、百円そして五百円の硬貨や記念硬貨などがある。これらの硬貨は、日銀が発行する日銀券、つまり千円、二千円、五千円、一万円という紙幣の補助通貨としての役割を持っている。

 通貨法の第4条には貨幣の製造及び発行について、「貨幣の製造及び発行の権能は、政府に属する」とあり、貨幣は政府が製造して発行している。さらに財務大臣は、貨幣の製造に関する事務を独立行政法人造幣局に行わせるとあり、製造は造幣局が担当している。貨幣の発行は財務大臣の定めるところにより、日銀に製造済の貨幣を交付することにより行うとされる。

 つまり硬貨は、政府が製造したあと日銀が引き取り、その後、金融機関が日銀に保有している当座預金を引出し、日銀の窓口から受取ることによって世の中に出回る仕組みとなっている。

 その硬貨はその目的にかかわらず、故意に損傷したり鋳つぶすことは「貨幣損傷等取締法」により禁止されている。一円貨幣であっても穴を開けるなどの損傷行為は同法に抵触し、罰則が適用される(財務省のサイト「一円硬貨に穴を開けても良いですか」より引用)。

貨幣損傷等取締法

第1項 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶしてはならない。

第2項 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶす目的で集めてはならない。

第3項 第1項又は前項の規定に違反した者は、これを1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

 この法律は昭和22年(1947年)に補助貨幣損傷等取締法として成立したものが、昭和63年(1988年)に通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律附則14条により「貨幣損傷等取締法」と改題された。

 昭和22年(1947年)と言えば終戦直後であり、ハイパーインフレが押し寄せ、物不足も加わり、当時は貨幣価値よりも金属としての原料価値のほうが高かくなったことから、貨幣価値を安定させて経済を復興させるべく、このような法律が成立したとみられる。

 ちなみに日銀が発行している日銀券(紙幣)については、同様の法律はないが、偽物のお金(偽札・偽貨)を作ったり、使用したりすると刑法で罰せられる。

通貨偽造・通貨変造罪(刑法第148条第1項)

偽造通貨・変造通貨の行使罪(刑法第148条第2項)


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by nihonkokusai | 2017-10-07 16:19 | 金融 | Comments(0)

約3京9000兆円の金融商品に関わる指標、LIBORの消滅問題

 英国金融管理庁(FCA)のベイリー最高経営責任者(CEO)は7月27日、ロンドン市内で講演し、短期金利の国際指標であるところのロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を2021年末に廃止する方針を明らかにした。

 LIBORとは「London InterBank Offered Rate」の略で、一般的には民間組織の英国銀行協会(British Bankers Association)が複数の銀行の金利を平均値化して、ロンドン時間午前11時に毎日発表するBBA LIBORのことを指している。金融自由化の流れの一環として、1986年に現行方式がスタートした。

 米ドルだけでなく英ポンド、日本円、ユーロ、豪ドル、ニュージーランドドル、スイスフラン、カナダドル、デンマーククローネの9通貨について発表され、歴史もあり短期金利の重要な指標となっている。

 LIBORは、英国の住宅ローンや預金金利などに直接影響する金利であるともに、国際的な融資などにおける国際金融取引の基準金利として、またスワップ金利などデリバティブ商品の基準金利としても利用されている。世界で350兆ドル(約3京9000兆円)余りの金融商品のグローバルな指標金利として利用されてきた。

 そのような重要な指標が何故、廃止されるのかといえば、LIBORをめぐっては、2012年に欧米主要金融機関が金利を不正操作していた問題が発覚したためである。

 そもそもの発端は2008年4月にウォールストリート・ジャーナルが、LIBORがもはや信頼できないかもしれないとの懸念を銀行家やトレーダーが抱いていると報道したことによる。これを受け、英国銀行協会(BBA)が調査に乗り出した。  英米当局は1年以上にわたる捜査で、バークレイズが2005~2009年に虚偽申告を繰り返し、経済の実態とかけ離れてLIBORを上げ下げしたと結論づけた。この調査では、バークレイズのトレーダーがLIBOR担当者に「1か月物と3か月物の数値をできる限り高くしてほしい」と頼んだメールも見つかったようだが、それとは反対に銀行協会に申告する数字が他行よりも高いことを経営陣が嫌がり、実態に比べて低い数字を出したケースもあったようである。これはサブプライム問題等からリーマン・ショックにいたる間、金融機関への懸念が極度に高まり、銀行数字が高いのは経営不安の裏返しだと市場に解釈されるのを恐れたためとみられる。

 2016年7月にロンドンの刑事法院の陪審は、詐欺罪に問われたバークレイズの元トレーダーら3被告に有罪の評決を下した。

 今後、5年間の間にLIBORは段階的に廃止される予定で、新たな取引の基準となる別の指標金利を見いだす必要がある。金融機関などではシステムそのものへの修正も余儀なくされることが予想される。いまのところ大きな混乱は出ていないものの、今後の動向には注意が必要となろう。


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by nihonkokusai | 2017-08-03 09:56 | 金融 | Comments(0)

日本でビットコインの利用は普及しないであろう理由

最近、ビットコインに関する話題も多く、世間の注目度も次第に高くなってきているように思われる。いろいろとビットコインに関するベンチャー企業も立ち上がっているようである。しかし、ビットコインが貨幣の代替品として日本で普及する可能性は極めて低いと見ている。

ビットコインはその名の通り、貨幣のような使い方ができる。しかし、円やドルのように政府や中央銀行などに保証された正式な通貨ではない。ブロックチェーンという仕組みそのものが存在の裏付けとなっているが、国といった組織によって保証されたものではない。

逆を言えばその国の信用力に問題がある場合や、国という枠を超えて取引を行う際には貨幣の代替品としてビットコインのニーズがある。これはある意味、国際基軸通貨のドルと似たようなところがある。ドルであれば世界各国との取引に使うことができる。そのようなメリットもビットコインは保持している。

確かに海外への送金ではかなり手数料が掛かるし面倒である。その点ではビットコインは便利ではあるが、それについてはブロックチェーン技術を使って日本のメガバンクなどでも円にリンクさせる電子通貨の実験を行っている。メガバンクの電子通貨は円に連動していることで国内で利用する際には価格変動リスクは存在しない。しかし、ビットコインの相場はかなり大きく変動するなど、常に価格変動リスクに晒される。投機的な目的でビットコインを利用する人はいても、日本人が国内の商取引でビットコインを利用する必要性はほとんどない。

日銀の金融政策の目的は円という価値を維持することであり、つまりは極度のインフレなどになって貨幣価値が急落してしまうことを避けようとするものとなる。ただし、対外的な価値、すなわちドルに対する円の価値を維持させることが目的ではない。為替介入は日銀の実行部隊が行うが、指示するのは財務大臣である。

日本では日銀という組織が金融政策のみならずインフラ整備等により円の価値を維持させている。ビットコインにはこのような信用を裏付ける組織が存在しているわけではない。裏を返せば国の通貨が信用ならない国、規制によって海外での通貨利用が制限されている国などでは利用価値はあっても、日本の一般国民がビットコインを使うインセンティブはなく、投機もしくは一部海外送金手段など以外には利用目的が存在しないと思われる。


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by nihonkokusai | 2017-06-04 08:51 | 金融 | Comments(0)

日米の株価上昇の背景

6月2日の東京株式市場では、心理的な壁とされていた日経平均の2万円をあっさりと抜けてきた。これまで付けそうで付けなかった2万円ではあったが、予想以上に強い米国株式市場の動向などを背景にあっさりと抜けてきた格好となった。

1日の米国株式市場では、本来あまり材料視はされないはずのADP雇用レポートが材料視されて、ダウ平均は3月1日以来の過去最高値更新となった。ADP雇用レポートで非農業雇用者数が市場予想を大幅に上回り、2日に発表される5月の米雇用統計でも非農業雇用者数(NFP)が、予想(+18.5万人程度)より上振れるのではとの見方が強まったためのようである。

しかしこのADP雇用レポートはさほど雇用統計とリンクしていないことでも知られており、通常であればあくまで雇用統計をみる上での参考数字の位置づけのはずで、ダウ平均の過去最高値をフォローするような経済データではなかったはずである。現実に2日に発表された5月の米雇用統計では非農業雇用者数は前月比13.8万人増と予想の18.5万人を下回っていた。

ところが2日の米国株式市場はこの数字を確認してもダウは続伸となり連日で最高値更新となった。FRBの利上げペースが緩やかになるとの見方もあるようだが、それでは強かったADP統計に反応したことに矛盾する。むしろ、FRBによる6月と9月の利上げ、年内の買い入れた資産の償還分の乗り換え縮小は織り込んでしまっているのではなかろうか。

この米国株式市場の強さの背景には、別の要因が絡んでいるように思われる。1日の米国株式市場ではナスダックも過去最高値を更新したが、ナスダックは5月26日にも過去最高値を更新するなどしていた。今回はダウ平均の高値更新が注目されたものの、米国株式市場はアップルやアマゾンなどハイテク株への買いがここにきての上昇の原動力となっている。2日もアマゾンやフェイスブックなどが最高値を更新した。

トランプ政権誕生によってハイテク産業に対する懸念も出ていたが、結局、米国経済を牽引しているのはハイテク産業となった。そのハイテク産業の株価上昇の背景にはAIなどの技術への期待などがある。AI技術によって雇用が縮小するとの懸念も出ていたが、ここにきての米国雇用の堅調さを見る限りは、むしろハイテク産業が米国の雇用を拡大させているとの見方も可能となる。ハイテク技術があらたな産業を生み出す可能性なども期待されていよう。

もうひとつ注意すべきは米長期金利の動向となる。米株やドルの上昇にも関わらず、2日の米長期金利は2.16%と低下していた。米債も年3回の利上げの可能性と年内のバランスシート縮小開始も織り込み済みとみられるものの、その後を含めて正常化に向けたFRBの動きはかなり慎重になるであろうとの期待もある。

足元の物価をみてみると4月のPCEのデフレーターが前年同月比1.7%上昇とFRBの目標である2%には届いていない。インフレの兆候はなく、これが米長期金利の上昇を抑えている。原油価格も減産合意によって、なんとかWTIは50ドル近辺にいるが、こちらの上値は重く上昇圧力は強まっていない。この物価の抑制により、FRBもより慎重に正常化に向けた調整を行うであろうとの期待も米長期金利を抑えている。長期金利が低位で安定していることも、株式市場にはプラス要因として働いているとみられる。


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by nihonkokusai | 2017-06-03 13:55 | 金融 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
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