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カテゴリ:金融( 29 )

現金主義のドイツと日本におけるキャッシュレス化

 現金主義で知られるドイツで、決済に占める現金の割合が半分以下に下がったことが、ドイツ連銀が14日公表した調査結果で明らかになった。約2000人を対象にした調査によると、2017年の取引に占めた現金の割合は47.6%で、2014年の53.2%から低下した。(ロイター)。

 世界的にキャッシュレス化の動きが進んでいると言われるなかで、このドイツや日本ではそれほど進んでおらず、現金主義となっている。これはドイツや日本が遅れているというよりも、それだけ現金利用に障害がなく、どこでも安全に現金が使えるシステムが存在していることなども要因かと思われる。

 そうはいってもコンピュータでの決済が進み、電子マネーの利用が拡大していることで、日本とドイツも少しずつキャッシュレス化は進んでいる。日本でもすでに現金決済の割合は50%を割り込んでいる。

 ドイツではカードの中では特にデビットカードが人気となり、昨年の決済の4分の1余りを占めていた。クレジットカードもじわじわと普及しているそうである(ロイター)。

 日本ではカード決済のウエイトが相対的に小さく、支払手段として現金が幅広く使われているが、各種カードの一人当たり合計保有枚数をみると、日本では一人当たり平均で7.7枚とかなり多い。ただし、クレジットカードの利用は多くてもデビットカードの利用は少なく、このあたりドイツと対照的な面がある。

 日本におけるカード決済金額をみると次のような特徴がみられると日銀のレポートが指摘していた。

・電子マネーによる決済金額は、各国平均を大きく上回っている。

・クレジットカードは、概ね各国平均並みに利用されている。

・デビットカードによる決済金額は、各国平均を大きく下回っている。

 現金の利用ではどうしてもコストが掛かることで、いずれ電子マネーを主体とした決済が進むとみられるが、現金決済に何かしら支障があるわけでもなく、今後の日本やドイツのキャッシュレス化の進行度合いは緩やかなものとなると思われる。

 自分でもカードなどは保有しているものの、財布に現金がないと不安である。クレジットカードや電子マネーがどこでも使えるわけではなく、外出の際には、ある程度の現金を保有していないと何かしらのときに決済できないリスクも意識してしまう。

 東日本大震災などを経験し、携帯電話が通じず、電気が止まってしまった際には、やはり現金が決済手段として有効になることを身にしみて感じていたこともあり、もしもの決済リスクも意識して現金を保有している面もある。


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by nihonkokusai | 2018-02-19 09:10 | 金融 | Comments(0)

世界的な株価急落となった今回のVIXショックはリーマン・ショックなどとは異なる

 2月5日のニューヨーク株式市場でダウ平均は取引時間中に1597ドル安と過去最大の下げ幅となり、引け値でも1175ドル安となって過去最大の下げ幅を記録した。これを受けた6日の東京株式市場では一時1600円を超す下げとなり、1071円安で引けた。

 このニューヨーク株式市場の急落の要因としては、2日の米雇用統計を受けた米長期金利の上昇とされるが、その米長期金利は2.88%あたりまで上昇したあと、5日には株安によるリスク回避という理由で2.70%に低下した。しかし、この長期金利の低下そのものは5日の米国株式市場は好材料視していない。6日のダウ平均は567ドル高と反発したが、この日の米長期金利は2.80%に上昇していた。これを見る限り、米長期金利の動向が米株に影響を与えたというのはむしろ考えづらい。

 そもそも2日の米長期金利の上昇は、1月の米雇用統計で非農業雇用者数は20万人増と予想を上回り、平均時給も前年比2.9%の上昇と高い伸びとなったことにより、FRBの利上げペースの加速観測が背景にあったとされる。FRBはすでに慎重に利上げを継続させているが、この日に就任したパウエル議長が米雇用統計を受けて、利上げベースを速めると指摘していたわけではない。あくまで市場の思惑であったが、その思惑が出た理由は米景気の拡大という、米株にとってはプラス要因であった。

 今回の米株の大きな調整はあくまでテクニカル的な動きとみておいた方が良いと思われる。2009年あたりを起点とし、2016年初当たりからやや上昇ピッチを加速させていたダウ平均であったが調整らしい調整が入っていなかった。このため、今回の米国株式市場の大幅調整の要因のひとつとして、ボラティリティインデックス(VIX)の空売りの解消などが指摘されている。米株はボラティリティが低い状態で長らく上昇基調が継続していたことも確かで、これはゴルディロックス相場(適温相場)とも呼ばれていた。その反動が一時的に起きた可能性がある。VIXという要因もひとつの象徴的なものであり、VIXショックが起きたともいえる。ここにアルゴリズムも絡んでフラッシュ・クラッシュを起こし、予想以上の下げを記録した。

 ボラティリティが低い状態で上昇相場が続き、何かしらのきっかけで急激な変動が起き、この場合は急落というケースが多いが、その後はボラタイルな相場、つまりボラティリティが高く値動きが荒くなることがある。1987年のブラックマンデーや2006年の日本の債券市場でのVaRショックなども類似している。このため、今後の値動きにも注意する必要はある。

 ただし、今回の下げをリーマン・ショックと比較してみると、市場の地合いは正反対である。リーマン・ショックの際には市場で不安が渦巻いており、これから特に金融機関で何が起きるのか先が見通せないという、最悪の環境下にあった。

 今回は景気が予想以上に拡大している状況であり、金融機関に対する不安視などが出てきているわけではない。むしろ、順調な景気回復で利上げ加速の心配をするぐらいである。米長期金利が上昇したと騒いでも3%にすら届いていない。参考までにリーマン・ショック時の米長期金利は3.4%近辺となっていた。


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by nihonkokusai | 2018-02-08 10:03 | 金融 | Comments(0)

デジタル通貨に向けたあらたな試み

 25日のNHKニュースによると、通信、銀行、保険、小売り、商社、物流に不動産…。幅広い業種から有力企業19社が集結し、「デジタル通貨」に関する包括的なサービスを手がけることになったそうである。

 25日にデジタル通貨に関するサービスを一元的に手がける新会社「ディーカレット」の設立が発表された。この新会社を仕掛けたのは、日本でインターネットサービスを始めた先駆けとして知られる通信会社のインターネットイニシアティブ(IIJ)。そして、新会社に参加する企業は下記となる(NHKニュースより)。

 IIJ、伊藤忠テクノソリューションズ、QTnet、ケイ・オプティコム。三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、大和証券グループ本社、野村ホールディングス。第一生命、日本生命、SOMPOホールディングス、東京海上日動、三井住友海上。伊藤忠商事、JR東日本、ヤマトホールディングス、ビックカメラ、三井不動産、電通の合わせて19社。

 まさに名だたる企業が集合した格好となった。この新会社が目指すのは、デジタル通貨を包括的にカバーするサービスだそうである。

 デジタル通貨といえば、ビットコインに代表される仮想通貨を思い浮かべるかもしれないが、この新会社はある意味ブームとなっている仮想通貨を追いかける会社ではないと思われる。むしろ、想定しているのは中国のスマホ決済の「支付宝(アリペイ)」や「ウィーチャットペイ」、スウェーデンでは複数の有力銀行が共同で開発したスウィッシュ(Swish)と呼ばれるモバイル決済ではなかろうか。

 ビットコインの価格の乱高下をみてもわかるように、仮想通貨は通貨としては流動性リスク、価格変動リスク、そして取引所などを含めての信用リスクがあまりに高すぎることで、通貨としての利用は考えづらい。

 しかし、デジタル通貨を店での支払いに使える決済サービスについては今後、日本でも普及する可能性は十分ある。少額貨幣については日本でもキャッシュレス化は進んでいる。しかし、SuicaなどJRのカードやnanacoなどのコンビニのカードなど複数のデジタル通貨が混在していることで、それが普及を妨げている面もある。そういえば今回の19社に小売りが含まれていないのが、やや気掛かり。

 今回のIIJが始めるデジタル通貨がどのようなものであるのか、まだ具体像は見えていないが、これだけのビックネームの企業が参加するとなれば、デジタル通貨というかデジタル決済の基盤が整う可能性がある。ただし、それはあくまでビットコインに代表される仮想通貨などではなく、法定通貨と互換性のあるものでなければならない。デジタル通貨というよりもデジタル決済の利便性を高めれば、アリペイやスウィッシュのような普及が見込めるのではないかと思われる。


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by nihonkokusai | 2018-01-29 09:12 | 金融 | Comments(0)

今年の金融市場のびっくり予想を総括、日経平均の3万円や米長期金利の3%はあるのか

 今月のこのコラムでは、いくつかの今年のびっくり予想を書いてみた。今回はそれらをまとめて見てみたい。コラムのタイトルは以下の通り。

「マイナス金利政策の修正の可能性」

「もし原油先物が100ドル台回復となれば日銀の物価目標達成も?」

「2018年のビックリ予想、日銀の物価目標達成!」

「2018年のビックリ予想、日経平均の3万円台達成!」

「今年のびっくり予想?米国の長期金利の3%台回復」

 実はこれらはひとつの大前提に基づいた予想となっている。それは世界経済の拡大に伴うものとなる。その前提通りとなれば、これらはびっくり予想というよりも、メインシナリオとなりうる。

 米国の株式市場は主要3指数が最高値を更新するなど絶好調。FRBが利上げをしているにも関わらずである。というよりも、FRBが利上げを含めた正常化に着手できるほど景気が回復しており、それが株価に反映されているといえる。FRBも金融引き締めというよりも、あくまで非常時の対応としていた過度の緩和策からの脱却といえることで、景気も正常化してきたと言える。それが今年は更に拡大傾向にある。

 東京株式市場も世界的な景気拡大を背景に日経平均は1991年11月18日以来の24000円台回復となった。新元号のスタートや東京オリンピックという大きなイベントも控え、このまま日経平均が上昇基調を継続させて、30000円の大台を回復するというシナリオもサブというよりも現状、メインシナリオにもなりうるのではなかろうか。

 この世界経済の拡大とOPECなどの減産などを受けて、じりじりと上昇しているのが原油価格である。原油価格の上昇は物価の上昇要因ともなる。WTIのチャートからは次の節目は100ドルあたりとなり、そこを目指して上昇する可能性がある。

 景気の回復とともに物価が上昇してくれば、正常化に慎重となっていたECBも舵を切り替える可能性があり、資産買入の終了とともに利上げの可能性も指摘されている。

 日本の物価に関しても、内閣府は18日に発表したミニ白書で、需給ギャップがプラスに転じ、企業物価の「消費財」が大きく上がった昨年夏から半年後の今年前半にも物価がさらに上昇するという可能性を指摘している。ここに原油価格の上昇も加われば、消費者物価指数が2%に向けて上昇してくるというシナリオも描けないわけではない。もし1%台後半あたりまでCPIが上昇するとなれば、日銀は引き締め策というより、微調整という意味で、マイナス金利政策の修正などを行ってくることも期待したい。そうなれば銀行の業績にも好影響を与える可能性が出てくることで、株式市場はこれを好感することも予想される。

 世界経済の拡大と物価が上昇するとなれば、なかなか上がりそうで上がらなかった次の節目となる3%に向けて上昇してくることも予想される。すでに米国の長期金利は2.62%の節目を突破してきている。米長期金利の上昇は欧州の長期金利にも影響を与えるだけでなく、日本の債券市場にも影響を与えよう。そうなると日本の債券市場も日銀のコントロール下での落ち着いた動きが今後も継続するのかどうかは、かなり怪しくなってくる。


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by nihonkokusai | 2018-01-20 11:19 | 金融 | Comments(0)

お金とは何か、その歴史を探る

 原始時代を描いたマンガによく出てきたお金は石である。古代においては、石も実際に使われた。また、古代中国やインドではお金として「貝」が使われていたことが知られている。ほかの国では「骨」や、「家畜」、「毛皮」、「穀物」、「塩」などが貨幣として使われていた。

 古代にお金として使われていたものは、共同生活において利用価値が高いこと、貴重なもの、さらに保存がきくといったものが選ばれた。これらは「物品貨幣」と呼ばれている。

 文献などに残っている世界最古の貨幣は、古代中国の殷王朝(紀元前1600~1046年)で貨幣として使われた「子安貝」である。「子安貝(タカラガイ)」は、当時たいへん貴重な貝の種類であった。貝という漢字も、タカラガイのなかの「キイロダカラガイ」という種類の形から生まれた象形文字だそうである。このキイロダカラガイやハラビラダカラガイが古代中国の殷王朝で「貝貨」として使われていた。

 貨幣とか経済に関しての漢字には、「買」「財」「貴」「賓」などのように貝のつくものが多いことも、古代中国で貨幣として使われていたことに由来する。ちなみに「売」という漢字も元々は「賣」(旧字)である。

 貝殻のように保存がきくということが、「お金」の重要な機能のひとつである。保存が効くということは、価値を貯蔵することが可能となる。

 その後、お金の役割をしていた貝は、やがて自然のものから貝を真似て作られた銅製品に変化した。銅や銀は貝などに比べて耐久性が優れ、運搬性にも優れているため、次第に金属が貨幣素材に利用されるようになった。

 その後も商工業などの発達に加え、銅や銀の産出や加工といった技術の向上により、金属貨幣が幅広く使われ始めた。メソポタミアでは銀を貨幣の代わりとしたとの記録が残っている。

 金や銀、銅などの貴金属金属は腐ったりすることがなく耐久性があり、他の金属を加えることで硬くなり、また分割したり足し合わせたりすることが比較的簡単にできる。さらに少量でも交換価値が高いことで持ち運びにも便利となる。

 しかし、「お金」という言葉に含まれている価値の高い「金(きん)」の場合は、王家など支配者の政治的権威を示す装飾品として利用される傾向が強かったため、昔は貨幣素材に使われることは案外と少なかった。

 当初使われた金属貨幣は貴金属の固まりや砂金など計量を計って用いられたことで、「秤量貨幣」と呼ばれた。ただ、秤量貨幣は、その品質を調べたり、重さを量る必要があるなど不便な面がある。そのため大きさや重さ、さらに混合物の量がきちんと決められたお金である「鋳造貨幣」が造られるようになった。

 鋳造貨幣は秤量貨幣と異なり、重さによって価値が決められるのではなく、個数によって価値が決められる貨幣である。それゆえに鋳造貨幣は個数貨幣、又は計数貨幣とも呼ばれている。鋳造とは鋳型に融かした金属を流し込んで製造ことで、量産がしやすく複雑な形状のものでも作る事が可能となる。こうして現在、使われている貨幣の原型が生まれたのである。

 世界における最初の鋳造貨幣は、紀元前7世紀ごろに現在のトルコ西部に位置するリディアで発行されたエレクトロン貨とされている。この素材となったのはエレクトラムと呼ばれた金銀の天然合金である。自然の中で採掘される金にはいくらかの銀などが混ざっているが、その中でも銀の含有量が20%を越えるものをエレクトラムと呼んでいる。これは普通の金と明確に区別されて「琥珀金」と呼ばれているが、その色彩や輝きといったものが琥珀に似ていたためである。

 琥珀を意味するギリシア語の「エレクトロン」は半透明で黄金色のコハクが太陽(エレクトル)を連想させることから命名された。こうしてこのエレクトロン貨は、金塊に人物や動物の絵を打刻してつくられ、この様式がギリシアやローマ以降の西洋式貨幣の基礎となった。


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by nihonkokusai | 2018-01-18 09:49 | 金融 | Comments(0)

2018年のビックリ予想、日経平均の3万円台達成!

 2018年の東京株式市場は4日の大発会で、抜けそうで抜けなかった23000円をあっさりと抜いてきた。昨年末は大納会で年内の最高値を更新し、いわゆる「掉尾の一振」になるかと期待されたがそれは叶わなかった。しかし、新年早々にこの23000円をクリアしたことは、むしろ今後さらに日経平均が上昇してくることを予感させるものとなった。

 日経平均の23000円台達成は単に節目を抜いただけということだけでなく、実はチャート上、なかなか破壊力のある水準を抜いたことになる。

 株式市場では「掉尾の一振」といった相場格言のようなものが数多くある。それは江戸時代の大阪堂島での米相場当たりから続くものも多い。堂島での米の先物取引は現在の金融先物取引の原型となっているだけでなく、値動きもあり、ローソク足などを使ったテクニカル分析もすでに行われていた。本間宗久によって編み出された酒田五法はテクニカル分析のバイブルとも言える。

 そんな相場格言のひとつに「半値戻しは全値戻し」というものがある。大きな相場下落があり、その後回復基調となり、相場下落時の高値から安値の半値まで戻ると、相場は再び下落前の高値まで戻るという習性があることを示すものである。ただし、相場に絶対はなく、半値に戻せば絶対に全値戻しとなるわけではない。しかし、その確率が比較的高いとの過去の相場体験に基づいた格言といえる。

 日経平均株価の最高値は1989年12月末大納会につけた38915円となっている。1989年はまさに掉尾の一振となったが、ここがピークとなり、いわゆるバブル崩壊が始まる。そのバブル崩壊後の安値が、2009年3月10日の7054円となった。38915円から7054円下落の半値戻しが、22984円となる。つまり日経平均で抜けそうで抜けなかったのは23000円というよりも、この半値戻しの水準と言えた。

 これを年が変わって抜けてきたことの意味は大きい。「掉尾の一振」となれば、1989年の相場を思い出されて目先のピークアウト感が出てくる可能性もあった。しかし、新年早々に直近の高値を更新してきたことは、今年の相場そのものの動きを予感させるものとなる。さらに半値戻しを達成したとなれば、全値戻しを連想させることになる。

 日経平均はこれにより30000円が視野に入り、全値戻しとなる可能性も見えてきた。すでに米国などの株価指数は過去最高値を更新しており、日本の株価指数が最高値を更新してもまったく不思議はない。世界経済の拡大傾向は当然、日本国内の景気にも好影響を与えよう。国内要因としても、新元号のスタートや東京でのオリンピック・パラリンピックの開催など大きなイベントも控えており、国内景気がさらに拡大し、株価はこれから本格的に上昇トレンドを迎える可能性も十分にありうるのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2018-01-10 09:19 | 金融 | Comments(0)

高額紙幣廃止論のここがおかしい

 元イングランド銀行金融政策委員のブイター氏は11月20日付けの日本経済新聞において、現金の撤廃について下記のようにコメントしていた。

 「第1に現金をすべて廃止すれば、金利のゼロ下限(または実効下限)制約がなくなる。」

 中央銀行がマイナス金利政策を行って、預金金利をマイナスとしても、現金には当然ながらマイナス金利は適用できない。だからマイナス金利政策の効果が出にくい。このため、現金を廃止すれば、その効果が高まるとの見方である。しかし、本当にマイナス金利政策が需要を刺激できるのについては、かなり疑問が残る。

 「第2に現金は決済手段として非効率だ。金融の発達した国では、もっと効率的な様々な決済手段が存在する。」

 金融が極度に発達し、現金が国内であればどこでも安心して利用できるシステムが日本で構築されている。偽札の横行もほとんどなく、その意味では日本は金融の後進国ではありえない。日本では現金決済というシステムが高度に発達し、匿名性もあることで多少のリスクや費用が掛かっても現金を保有するというインセンティブが働き、その結果が100兆円もの現金流通量となっている。

 効率的な決済とは、スマートフォンを使った非接触型決済などであり、中国でのアリペイなどを指そうが、中国は金融システムの発達が遅れ、現金が利用しにくいために、インフラ整備の遅れが、新技術の普及を広めていったとは言えまいか。

 日本でもプリペイドカードを利用した少額貨幣での取引についてはキャッシュレス化は進んでいる。ただし、スウェーデンのスウィッシュや中国のアリペイやウィーチャットペイのように特定のアプリに集中していない。利便性の高くシェアの大きなアプリが出てくれば、一気に普及する可能性がある。

 「第3に現金には匿名性が備わっているため、非合法取引の決済や犯罪者の価値貯蔵の格好の手段となっている。また脱税、資本規制逃れ、資金洗浄(マネーロンダリング)、犯罪やテロの資金調達が容易になるという弊害もある。」

 現金は確かに匿名性を有しており、それが日本人の現金保有の要因のひとつになっている可能性はある。しかし、日本が脱税天国であり、マネーロンダリングやテロの資金調達に日銀券が大量に利用されていることは考えづらい。

 「日本は先進国の中で現金決済の占める比率が極めて高いので、特に問題が大きいと考えられる」とブイター氏は指摘するが、日本の現金比率の高さは犯罪に使われているというより、発達した金融システムにより、現金利用が便利なためとも言えるのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-12-11 10:08 | 金融 | Comments(0)

FinTech(フィンテック)とは何か

 いまさらではあるが、FinTech(フィンテック)と呼ばれる用語について考えてみたい。FinTechとは金融を意味するファイナンス(Finance)と、技術を意味するテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語である。情報技術を金融サービスに利用して新しいサービスを生み出す動きともされている。

 この代表例としてビットコインが挙げられている。その値上がりピッチの早さもあって、ニュースなどでも紹介されているビットコインではあるが、その位置づけがはっきりしているわけではない。法的に金銭と評価することは現時点では難しいと、日銀の「FinTech 勉強会」における議論でもなされている。この日銀での議論のなかでは次のような指摘もあった。

 「しかしながら、ブロックチェーンや分散型台帳技術を利用する分散管理型ネットワークの特性といった新しい要素は、従来のパラダイムを大きく転換し得る観点を孕んでおり近年、様々な議論が行われている。」

 確かにブロックチェーンや分散型台帳技術についてはいろいろな応用が期待できるが、それが金融そのものを根本的に変えるかどうかは不透明である。世間の注目度としては、あらたな通貨が生まれたことで、その行方と言うか価格動向のみに注目が集まっているかのように思われる。

 ビットコインがバブルであるかどうかは、弾けてみないとわからない。しかし、その値動きは17世紀のオランダでのチューリップ価格の動きを連想させるものとなっている。チューリップであれば、それが綺麗で珍しいものであるのかは視覚や聴覚などで確認できても、電子通貨には実態はなく、あくまで価格の動きでしかない。その価値を適切に把握する手段もない。オランダのチューリップもその希少性のみで価格が上昇し、買いが買いを呼ぶことになったことで、適正価格なるものがあったわけでもなさそうである。

 私自身はFinTech(フィンテック)という用語については、懐疑的というかそれが金融の未来を変えうるものといったイメージはない。そもそも金融の世界は情報技術とともに発展していたものであり、何をいまさらといった感もある。

 コンピュータが生まれ、それを真っ先に利用した業態といえるのが金融業界であった。証券取引所のシステム化の歴史、銀行や証券会社によるシステム化の歴史をみればそれが明らかであろう。金融取引と情報技術は極めて相性が良い。だからこそFinTech(フィンテック)という用語は決して新しいものとは言えないと個人的には思っている。その代表格がビットコインとあっては尚更感も強いのである。ただし、モバイル決済などについては金融決済を今まで以上に容易にさせうるものであり、それがさらに普及するであろうとは思う。しかし、これもあくまで新たな決済方式というよりも、情報技術を使っての利便性の向上にすぎないのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-12-09 14:27 | 金融 | Comments(0)

仮想通貨とモバイル決済と高額紙幣廃止議論

 ビットコインを代表とする仮想通貨、中国やスウェーデンなどで利用が拡大しているモバイル決済、インドなどでの高額紙幣廃止等々動きなどから、日本での1万円札廃止論なども出ている。これはハーバード大学のケネス・ロゴフ氏による日本での高額紙幣廃止論がひとつのきっかけとみられるが、仮想通貨とモバイル決済、高額紙幣問題は、キャッシュレス化社会としての動きとしてトータルで捉えるよりも、それぞれ切り離して考えるべきものではなかろうか。

 ビットコインを代表とする仮想通貨であるが、自国の通貨に信用のおけなくなった国であれば代替通貨としての利用も考えられるが、法定通貨である円に対する信認が強い日本では、通貨としての利用は考えづらい。仮想通貨は通貨と称しているもののネットを通じた仮想の金融取引手法であり、投機的に利用されているだけである。その値動きからも17世紀のオランダのチューリップバブルと類似しているものである。仮にビットコインバブルが弾けようと、実態経済への影響はほとんどないのではなかろうか。

 キャッシュレス社会が到来かと騒がれている中国などでのモバイル決済普及の動きについては、たとえば通常の電話網が整備されていないところで急速に携帯電話が普及したようなもので、現金利用に障害があることで、モバイル決済の普及が進んだといえる。さらに日本はモバイル決済の後進国などではなく、少額貨幣の利用ではキャッシュレス化は進んでいる。ただし、アプリなどの寡占化が行われず、各種のカードやアプリが乱立してしまっていることで、中国などに比べて普及が進んでいないかのような印象となっている。

 問題なのは高額紙幣問題であるが、ケネス・ロゴフ氏は日本での現金流通水準の高さ、1万円札など高額紙幣の利用度の高さの要因はマネーロンダリングや脱税などの犯罪行為に高額紙幣が利用されているためとしている。日本での1万円札など現金が異常に利用されているのは何故なのか。マネーロンダリングやテロの資金調達などに日銀券が使われている可能性は全くないとまでは言い切れないものの極めて低いと思われる。

 問題となるのは現金の匿名性を利用した脱税への利用であるが、これについては存在する可能性はある。昔の証券会社などにとっての金融商品販売の主力商品が割引金融債であったが、これは金融商品としてだけでなく、匿名性を利用した相続などでの脱税などにも利用されていた可能性があった。

 現在は中期ゾーンの国債の利回りもマイナスとなっているため、利息ゼロの現金のほうが中期債に比べれば利回りが高い状況となっている。保管費用はかかっても、多額の現金をしまい込んでいる富裕層がいる可能性は否定できない。ときおり所有者不明の多額の現金が発見されるが、それも税金対策などであった可能性はありうる。

 だからといって現金を廃止すべきというのはやや極論ではなかろうか。日本国内での現金利用率の高さは、決済等含めたその使い勝手の良さが大きく影響している。治安の良さ、現金をATMで引き出せる利便性、偽札が少ないこと、紙幣がクリーンであることなど、それなりの費用をかけて現金が利用されやすいインフラが整備されている。

 キャッシュレス化はその費用を軽減させることになるが、それには特定の使いやすいアプリなども必要となろう。ただ、高齢者にとってはモバイル決済は馴染みにくい面もある。脱税を防ぎ、キャッシュレス化を進展させるために高額紙幣を廃止するという議論は極端すぎるし、日本社会に混乱を招きかねない。いずれ否応なくモバイル決済などを通じたキャッシュレス化は進むであろうし、日銀がマイナス金利政策をやめれば、保管費用のかかる現金保有は減ることも予想される。


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by nihonkokusai | 2017-12-08 10:08 | 金融 | Comments(0)

中国のスマホ決済の急速な普及と日本の実情

 11月28日付けの日経新聞によると中国で「生活インフラ」として定着したスマートフォン(スマホ)決済が2年で6倍に増え、年間660兆円にも達したそうである。上海の一角に密集する八百屋や雑貨店など20店に聞くと、電子決済を使えないのは婦人靴店1店のみだとか。中国のスマホ決済は「支付宝(アリペイ)」と「ウィーチャットペイ」の2強に延べ12億人が登録しているそうである。

 北京や上海で財布から現金を出して払っている人といえば、老人か外国人旅行者ばかりだとの指摘もあり、中国は大都市だけでなく内陸部でも交通や食事など、どんな支払いでも決済アプリで簡単にできてしまうようである。

 なぜ中国ではこのように急速にキャッシュレス化が進んでいたのか。それに対して日本ではキャッシュレス化が遅れているようにみえるのか。

 それは日本では現金が全国で流通できる社会基盤が充実していたことで、現金での決済の利用が便利であったためといえる。これに対して中国では日本よりも偽札が多く、また治安も日本に比べて良くない面も指摘され、現金の利用が日本に比べてリスクが高いことがあった。そこに急速なスマートフォンの普及があり、アプリでの簡易決済が可能となったことで現金を持ち歩くリスクもなく、気軽に使える決済方式が急速に普及したものと思われる。

 インフラ整備の遅れが、むしろ新技術の普及を広めていった事例のひとつとも言えるのではなかろうか。それでは今後、日本でもスマートフォン決済、モバイル決済が普及する可能性はあるのであろうか。

 キャッシュレス化が進んでいる国としてはスウェーデンもある。スウェーデンでは複数の有力銀行が共同で開発したスウィッシュ(Swish)と呼ばれるモバイル決済が広く使われている。

 日本では現金の決済が便利なため、中国やスウェーデンのように一気にモバイル決済が普及することは現状考えづらい。しかしSuicaなどJRのカードやnanacoなどのコンビニのカードを使うことで小銭を持ち歩くことも少なくなった人も多い。少額貨幣についてはキャッシュレス化は進んでいる。

 スマートフォンの普及も中国ほどではないが、日本でも進みつつあり、今後、国内で使いやすいアプリが出てくれば一気に普及する可能性はある。国内大手銀行なども三菱UFJがMUFGコインを発表するなど、銀行口座のお金をスマートフォンで簡単に支払えるような仕組みが検討されている。銀行別のアプリとかではむしろ使いづらい面もあるが、スウェーデンのように複数の有力銀行が共同開発とかなれば使い勝手も良くなる可能性もあるのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-12-04 09:54 | 金融 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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