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カテゴリ:金融( 72 )

一難去ってまた一難、ファーウェイ・ショックなどから金融市場はさらに不安定に

 12月1日の米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席による首脳会談を受けて、米中貿易戦争は一時的な休戦条約を締結した格好だが、貿易戦争を仕掛けたトランプ政権内で、主戦派と和平派が存在していることで、終戦に至る見込みはたっていない。米国は、中国が米国の先端技術を不当に奪って次世代産業を育成し米国の覇権を脅かそうとしている、との危機感を抱いているとされている。交渉にあたって主戦派が前面に出てきているようである。

 そこにあらたな火種が発生した。中国の華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)が米中首脳が休戦条約を締結した1日にバンクーバーで逮捕されていたのである。イランとの金融取引を禁じた米国の制裁を回避するための仕組みづくりに関った疑いがあるという(ロイター)。

 ファーウェイは中国最大の民営企業で、習近平指導部が進めるハイテク産業育成策「中国製造2025」で重要な役割を占める。ただし、日本でも各府省庁や自衛隊などが使用する情報通信機器から、安全保障上の懸念が指摘されるファーウェイとZTEの製品を事実上、排除する方針を固めたと伝えられたが(読売新聞)、米国はファーウェイなどの製品などについて注意喚起を行っている。ファーウェイを巡って、さらに米中の対立が深まる懸念がある。

 ここにきての株式市場の動向などをみても、米中貿易摩擦の激化などを受けての景気減速の懸念がかなり意識されはじめているといえる。日経平均やダウ平均は不安定な動きとなっているが、チャートからはレンジ相場を下抜ける可能性もありうる。

 債券市場をみると、日本の債券市場は先物の中心限月を見越しての踏み上げ的な動きとも取れるものの、米債の動きにも連動している。米10年債利回りは節目とみられた3%をあっさり下回り低下傾向となり、米国の長短金利スプレッドは縮小した。

 これには米中の問題などからのリスク回避による動きもあるが、原油価格の下落も影響していた。原油先物のチャートをみるとWTI先物の50ドル近辺でひとまず大きな下落相場は小休止となった。しかし、こちらもまだ予断を許さない。ロシアが減産に難色を示し、協調減産の行方に不透明感が強まるなどしている。

 OPEC総会などの動向も気になるものの、英国のEU離脱問題についても懸念材料となる。11日の採決を控えてメイ首相は苦境に立たされている。予想通り、否決されたとして、議会での動き次第では、再度、国民投票の実施の可能性も出ている。いずれにしても英国も不安定要素ではある。

 米中貿易摩擦も加わって、世界的な景気減速の懸念が強まり、それが日米欧の株価下落の要因となりつつある。米国経済を牽引してきたハイテク株にもアップルなどを主体に陰りも見えてきている。今回の株価の調整は一時的なものではない可能性も意識しておく必要があるように思われる。


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by nihonkokusai | 2018-12-07 10:36 | 金融 | Comments(0)

キャッシュレス化に潜む災害時リスク、韓国の事例

 11月24日に韓国のソウル中心部で通信最大手KTの通信ケーブルが焼ける火事があり、3日間にわたって一部地域で同社の携帯電話やインターネットが使えなくなり、カード決済もできなくなった。キャッシュレス決済の比率が9割に達する韓国では現金を持ち歩かない人も多く、混乱が広がった(26日付朝日新聞)。

 韓国では買い物の際、現金ではなく、クレジットカードや日本のデビットカードに似た「チェックカード」を使って決済するのが一般的とされている。「チェックカード」とはいわゆる銀行ATM用のカードで、日本ではこの銀行カードで現金の出し入れ、振込みなどを行なうが、韓国ではこのカードそのもので支払いができる。

 キャッシュレス化については、国によって何が主体となっているのか異なっている。中国などではQRコードを利用したスマホ決済、韓国ではチェックカード、そして香港ではオクトパスカードなどとなっている。

 方式は異なっても、いずれのキャッシュレス決済においても電子取引となっていることで災害時には弱い。今回の韓国の事例でも、それを浮き彫りにしたといえる。韓国のように9割近くまでキャッシュレス化が進んでしまうと、通信ができなくなったり、停電などによってキャッシュレス決済ができなくなってしまう。これは消費者だけでなく、店舗側にも大きな影響を与えかねない。

 通産省は日本のキャッシュレス化について80%あたりまで引き上げたいとしているようだが、そこまで引き上げる必要があるのかも再考する必要もあるのではなかろうか。給与振り込みやカードの引き落としなども電子決済とすれば、日本のキャッシュレス化は進んでいるとの見方もある。それでも現金利用が多いことも確かである。それには現金の利便性だけでなく、「もしも」の時の現金利用も意識されているのではなかろうか。

 日本では地震などの自然災害が多く、停電などが続くと電子決済はできなくなる。それに対して現金の決済は災害時でも可能となる。しかし、レジが使えなくなるなど現金も利用できないケースもあり、災害時の停電なども想定した対応が求められる。

 現金利用を抑えることで、ATMの設置やメンテナンス費用、現金の保管や移動時のセキュリティ費用などを削減することも必要ながらも、ある程度の現金決済は残しておくことも必要なのではなかろうか。「もしも」の際にどうするか。そちらへの対応を考慮した上での、キャッシュレス化を考えることも必要と思われる。


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by nihonkokusai | 2018-12-02 09:54 | 金融 | Comments(0)

チューリップ・バブルの最終章とビットコイン・バブルの行方

 映画「チューリップ・フィーバー」のサイトには、各界のエキスパートによる「絶賛の声」というページがある。エキスパートであるかどうかはさておき、ここに私のコメントを掲載していただいてている。それが下記となる。

 「バブルという言葉が生まれる以前にオランダで起きた歴史的なチューリップ・バブル。現在にも続くバブルの狂気が美しい映像で表現されている。」(金融アナリスト 久保田博幸)

 ヨーロッパで最も経済が発達した国となったオランダは、所得水準がヨーロッパで最高となり、消費や投資が活発化して行く。オランダのその地形や気候により花の栽培に適しており、特に好まれたのがチューリップ栽培であった。オスマン・トルコからチューリップが持ち込まれた当初は、貴族や商人など一部の収集家だけで取引されていたが、1634年あたりから一般個人も値上がり益を狙って、チューリップ市場に参入するようになったのである。

 珍しい品種が高値で取引されるようになり、1636年から1637年にかけて投機熱は最高潮に達した。居酒屋などで行われた先物取引などが主体となり、次第に実態のない取引が行われるようになる。珍しい球根は家一件分といったように、すでに価格は現実からかけ離れたものとなり、貴重品種以外の品種も高値で取引されるようになった。このあたりの状況も映画「チューリップ・フィーバー」でも描かれていた。

 1637年2月にチューリップ市場は突然暴落した。暴落の理由らしい理由はなかったものの、春になると受け渡しの期日が来ることで、その前に売ろうとしたところ買いが入らず、売りが売りを呼ぶ展開となったのではないかといわれる。先物の決済が行われず、債務不履行が次々に起こる。混乱が収まったのはやっと政府が乗り出した1638年5月である。

 数千人規模で支払いきれない債務者がいたといわれたオランダのチューリップ・バブルであるが(バブルという言葉そのものはのちの南海バブルから)、そのバブル崩壊による実態経済への影響はほとんどなかったといわれている。このためチューリップの熱狂が本当にあったのかどうか疑問視する見方もあるが、これをきっかけにオランダのチューリップが世界に広く認識され、花卉産業が発達していったことも事実である。

 このチューリップ・バブルを彷彿させたのが、ビットコイン・バブルとなる。その値上がりペースはチューリップ・バブルをも超えたともされた。しかし、チューリップ・バブルと同様に急激な下落を迎えた。

 映画にも描かれていたようなチューリップバブルほどの混乱はいまのところビットコインを中心とする「暗号資産」(すでに仮想通貨との表現は適切ではないとの見方も)では起きていない。しかし、結果としてはビットコインの価格変動はバブルであったとみられ、その結果はどうなるのかは、やはり過去の歴史が示しているのではないかとも思われるのである。


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by nihonkokusai | 2018-11-23 11:36 | 金融 | Comments(0)

見方を変えると日本のキャッシュレス化は進んでいた?

 金融庁が9日、国内のキャッシュレス決済に関する独自の試算結果を明らかにした。三菱UFJ、三井住友、みずほの3銀行の個人給与受取口座を対象に、1年間に出金された85兆円の行き先を分析したところ、クレジットカードや家賃、公共料金、ローン返済金などが口座から自動に引き落とされる口座振替が32%。さらにインターネットバンキングやATMなどによる振り込みが22%強。実際に現金を引き出さずに決済・出金する「キャッシュレス」比率は54%に上った(9日付け日経新聞)。

 経済産業省が今年3月に発表したキャッシュレスビジョンによると、世界各国のキャッシュレス決済比率(2015年)の比較を行うと、韓国の89.1%を始め、キャッシュレスが進展している国では軒並み40%~60%台であるのに対して、我が国は18.4%にとどまるとしている。このため、2025年までに日本の「キャッシュレス決済比率」を40%程度とし、将来的には世界最高水準の80%を目指すとしている。

「キャッシュレスビジョン(要約版)」経済産業省

 上記のキャッシュレスの主な支払手段として、電子マネー、デビットカード、モバイルウォレット、クレジットカードが挙げられている。

 これに対して金融庁の試算は、銀行口座を利用した口座振替なども加味したもので、経産省のキャッシュレスビジョンと視点は異なるものの、現金を使わないという意味ではキャッシュレス決済であることに変わりはない。

 日本では国民のほとんどが銀行口座を保有しているとされる。さらにそこからクレジットカードの決済を含め、公共料金等の自動引き落としなどキャッシュレスでの決済が行われている。

 我が家をみてみると、口座をひとつにまとめきれていない面もあって、いったん現金化している部分はあるが、それをまとめれば現金の利用はかなり限られることになる。しかも、食料品などではスーパー系の電子カードを利用することが多く、それもキャッシュレス決済と見なせば、たしかに現金の決済比率はかなり低下する。日用品や書籍などはアマゾンでの利用も多く、こちらはクレジットカード決済となる。電車等の利用時も電子カードを使う。そうなると純粋な現金決済は主に私のお酒の代金などに限られるような気もする。

 たしかに電子マネー、デビットカード、モバイルウォレット、クレジットカードの利用では海外に比べて、日本の普及比率は相対的に低いかもしれない。しかし、電子決済化という面では、むしろ進んでいるとの見方もできるのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2018-11-13 09:36 | 金融 | Comments(0)

日本のキャッシュレス化はカードによる電子マネーが主導しても良いのでは

 日本のキャッシュレス化はカードによる電子マネーが主導しても良いのでは、とのタイトルではあるが、何を今更と指摘されるかもしれない。それほど実は日本でもカードでの電子マネーを使ったキャッシュレス化は浸透している。しかし、それでも現金利用の比率が大きいことや、中国などではQRコードとスマートフォンを使った決済が進んでいることなどから、日本でもキャッシュレス化が遅れていると指摘されている。

 しかし、海外でのキャッシュレス化はQRコードを使ったものだけが浸透しているわけではない。韓国ではデビットカードが主流とされており、香港では日本の電子マネーと同じ機能を持つオクトパスカードの利用が進んでいる。香港のオクトパスカードはタクシー以外の乗り物、さらにはスーパーやコンビニ、ファーストフード店、自販機などあらゆるところで使える。

 日本でもQRコード決済利用には躊躇しても、カードを使った電子マネーは交通機関やコンビニ、スーパーなどでも頻繁に利用されている。問題は発行体がバラバラであり、香港のオクトパスカードのような単一化が進んでいない点である。このため財布やカード入れがパンパンになってしまっている人も多いのではなかろうか。

 それでも日本でのカード型の電子マネーの利用がさらに便利になりつつある。たとえばセブン銀行ATMにて10月15日からSuicaやICOCAなどの交通系電子マネーと、楽天Edyなどへのチャージ・残高確認のサービスが開始された。チャージは1000円単位となり、交通系電子マネーでは最大2万円までチャージが可能となり、おつりが発生する金額指定のチャージもできるそうである、

 さらに東京ディズニーリゾートでも交通系電子マネーのSuicaやPASMOなど、さらにはQUICPayやiDを使った決済が一部の店舗で利用できるようになったそうである。

 日本でQRコードを使ったスマホ決済を拡大させることは現状、なかなか難しい面がある。しかし、カードを使った電子マネーならば年配者を含めて利用経験者はかなり多いのでなかろうか。ただし、それぞれのカードによって利用できるものが限られることで、何枚も持ち歩くか、特定のカードだけで利用しているケースも多いのではなかろうか。

 2018年に経済産業省が策定した「キャッシュレス・ビジョン」では、2025年までにキャッシュレス決済比率を40%程度とし、将来的には世界最高水準の80%を目指すとしている。このためには、すでに使われているカード型の電子マネーを香港のように統一した上で、端末の普及を政府なりが支援するのが、意外に手っ取り早いかもしれない。


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by nihonkokusai | 2018-11-10 10:09 | 金融 | Comments(0)

キャッシュレス化で失われる現金が持つ匿名性

 日本でキャッシュレス化が遅れているのは、通貨への信認が高く、また全国どこでも気軽に使えるインフラが整備されていることなどがあげられる。さらに現金にある匿名性も影響しているのではなかろうか。

 我々が現金を使うときには、使った紙幣の保有者が特定されるようなことはない。クレジットカードを利用すれば、当然ながら記録が残る。預金口座からの引き出しもその金融機関のデータは残るが、その現金をどこで何に使ったまではトレースできない。ただし、ポイントカードなどを使用すると誰が何を購入したのかのデータが残る。

 アマゾンを頻繁に利用している人も多いと思われるが、そのではすべての購買データが残っている。それはアマゾンの画面上で簡単に調べることができる。アマゾンとしては個人の購買データが蓄積され、それがいわゆるビッグデータとなり、利用価値の高いものとなる。

 アマゾンで配送料が低く抑えられているのは、膨大が数量を扱えることや、アマゾンプライムの会費なども原資となっていると思われるが、蓄積される消費のビックデータも大きな価値を持ってきているためといえるのではなかろうか。

 中国などでのQRコードを使った決済は、現金取引に制限があったりすることで急速に拡大した。それとともにそのキャッシュレス決済がもたらすビッグデータの価値そのものが大きく、その分、店舗の手数料を引き下げるなどしたことで拡大した面もある。

 このようにキャッシュレス化によってもたらされるビックデータの価値によってもキャッシュレス化による手数料等の負担は軽減できる。しかし、それはつまり我々の商取引データが使われることになる。それに対して現金はそもそも手数料は発生しない上に、常に匿名性が維持される。

 日銀の雨宮副総裁は10月20日の「マネーの将来」と題する講演で次のようなコメントがあった。

 「現在、多くの巨大IT企業がキャッシュレス決済の分野に参入するとともに、これらのサービスを安価、ないし時に無料で提供できているのは、企業側が支払決済サービスをデータ収集のプラットフォームと捉え、集めたビッグデータを様々な用途に活用できるためと考えられます。これらのサービスのユーザーは、サービス利用の対価を、自らのデータを提供する形で支払っているとみることもできます。」

 我々は現金決済の匿名性を重視するのか、それともデータ利用を承知の上で匿名性を捨ててキャッシュレス決済にするのか。日本でのキャッシュレス化の浸透には、匿名性を失うことによる何かしらの対価も必要となるのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2018-11-03 09:45 | 金融 | Comments(0)

政府主導の無理矢理なキャッシュレス化促進への違和感

 来年10月の消費税率10%への引き上げにあわせて「酒類及び外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が結ばれた週2回以上発行される新聞」に限り、税率を8%に据え置く「軽減税率」を導入する。その際にキャッシュレス決済で買い物をした人に対してポイントで還元する制度の導入も検討されている。

 「酒類及び外食を除く飲食料品」の区分けの面倒や何故新聞がという疑問はさておき、キャッシュレス決済でのポイント還元というのにも、かなり違和感がある。

 2018年に経済産業省が策定した「キャッシュレス・ビジョン」では、2025年までに「キャッシュレス決済比率」を40%程度とし、将来的には世界最高水準の80%を目指すとしている。

 たぶんこの消費増税に絡んだキャッシュレス決済でのポイント還元もそれを意識したものかと思われる。しかし、これによりキャッシュレス化の利用を大きく拡大させることができるとは思われない。そもそも対象となる中小の小売店でキャッシュレス化の普及を促すには、機器の導入費用などとともに、カード会社などに支払う手数料などの負担が大きい。

 手数料については3%の上限を設けようとの動きもあるようだが、3%でも負担は大きい。スマホ決済などによるキャッシュレス化において、海外ではそこから得られるデータの利用価値を意識して手数料は抑えられている。キャッシュレス化への普及には利用者にとって現金同様の使い勝手の良さとともに、商店側の負担軽減が大きな課題となる。

 そして、今度は厚生省が企業などがデジタルマネーで給与を従業員に支払えるよう税制を見直す方針を固めたとも伝えられた。これも意図が良くわからない。こちらもキャッシュレス化の促進ありきのように思える。

 海外でのキャッシュレス化拡大の動きの要因のひとつに、銀行口座を持たない層の利用が挙げられている。しかし、日本での給与はほとんど銀行などへの振り込みになっていると思われ、それに対して特に弊害等は感じられない。給与が直接、スマホのアプリに振り込まれるような格好になったとして、果たしてそれを利用するというインセンティブは働くであろうか。

 銀行の口座に現金があるというのは仮にそれがデータ上であろうとかなりの安心感がある。しかし、銀行ではないポイントのような格好でアプリ内にかなりの金額が置かれる事への抵抗感は強いのではなかろうか。私はコンピニの電子マネーに現金をチャージする際には数千円に止めており、1万円をチャージするのにも躊躇してしまう。

 どうもキャッシュレス化促進ありきで、我々のニーズや店側の事情などは置いといて、進められている気がしてならない。キャッシュレス化を進めるには、使う側のインセンティブを引き出す必要があり、ある意味強制的に拡げようとしても無理があろう。


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by nihonkokusai | 2018-10-27 11:07 | 金融 | Comments(0)

キャッシュレスはマネーのペーパーレス化と考えれば普及は進むか

 日本金融学会2018年度秋季大会における日銀の雨宮副総裁の特別講演「マネーの将来」が日銀のサイトにアップされた。この内容がいろいろと興味深い。

 たとえばビットコインなどの「暗号資産」が円などのいわゆるソブリンマネーを凌駕するのかについては下記のように雨宮副総裁は指摘している。

 「暗号資産がソブリン通貨を凌駕して使われるためには、既に確立されている中央銀行の信用と競わなければなりません。しかしながら、暗号資産は、信用をゼロから築き上げるために、取引の検証 ― マイニング ― のための膨大な計算や、これに伴う大量の電力消費などのコストがかかります。このような制約を持つ暗号資産が支払決済に広く使われていく上でのハードルは、相当高いように思われます。現在、暗号資産が日常の支払決済手段としては殆ど使われず、専ら投機的な投資の対象となっている姿も、このことを裏付けているように思います。」

 ビットコインなどがソブリンマネーに置き換わる可能性は、ソブリンマネーの信用力が著しく低下した国などではさておき、日本などで起きることはまずあり得ない。ただし、暗号資産ではなく決済としてのキャッシュレス化については今後、進展するであろうことは確かである。

 「マネーの本質が信用にある以上、それが必ずしも金属や紙という形をとる必然性はないと考えられます。・・・これまでマネーの媒体として広く使われてきた「紙」は、情報やデータを「書き込み」、「伝達し」、「表示する」という機能を併せ持つ、人類の偉大な発明の一つであり、だからこそマネーや証券の媒体として広く使われてきました。しかし現在では、情報やデータの書き込みや伝達をデジタル技術で行い、これをスマートフォンやPC上に表示することが、より容易になっています。」

 いわゆるペーパーレス化がマネーの世界でも起きつつあることが示されている。すでに国債などの債券、株式などではペーパーレス化は進んでいる。さらにここにきて公的文書などでもペーパーレス化が検討されている。

 自民、公明両党は19日、参院の経費削減策を検討する作業チームの会合で、文書のペーパーレス化を進める方針で一致したと報じられた。実は日銀そのものもペーパーレス化が遅れているとの指摘もあるが、文書のペーパーレス化は今後、公的なものを含めて進展すると予想され、それがマネーの世界でも同様の動きとなってもしかるべきか。それは下記のような雨宮副総裁の指摘のように利便性ももたらす。

 「技術革新や、eコマースなどデジタル・ベースで行われる経済取引の発達などに伴い、キャッシュレス化が人々の生活の利便性向上に結び付く局面も増えています。例えば、電子マネーやETCの普及により、駅の改札や券売機、料金所などの混雑は、かなり緩和されたように思えます。現金からキャッシュレス手段への移行局面では様々なハードルもある訳ですが、人々が、例えば「支払のために列を作って待たなくても良い」といった利便性を実感するにつれ、キャッシュレス化の勢いは増していくでしょう。」

 それだけではなく、キャッシュレス化によって蓄積されるデータが「21世紀の石油」として、付加価値を生み出すアセットとしての性格を強める点も雨宮副総裁は指摘している。ただし、災害時における停電などによってキャッシュレス決済ができなくなる恐れもあるなど、特に自然災害の多い日本では、ある程度の現金決済は残っていくことも予想される。


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by nihonkokusai | 2018-10-23 10:04 | 金融 | Comments(0)

災害時に弱いキャッシュレス決済、その対策とは

 キャッシュレス決済の普及に向け企業や学識者、自治体などが設立した「キャッシュレス推進協議会」は、15日に初めて開いた総会で停電対策に協力して取り組むことになったとNHKが伝えている。

 北海道では先月6日の地震に伴う大規模停電で、電子マネーを使った決済が長いところでは数日間、できなくなった。電子マネーはコンピューター上で管理されているものであり、停電によりホストコンピューターとの接続が切れることで利用できなくなる。

 クレジットカードも現在では専用端末を通すことでリアルタイムでチェックが可能となるため、「インプリンター」と呼ばれる紙の伝票に印字する機器を使っているところは少なくなっている。

 レジについてもホストコンピューターと繋がっているレジがスーパーやコンビニなどで多く使われているかと思われる。そのため、停電となれば使用できなくなってしまう。非常用電源を準備していたところも、それで賄える数時間だけとなっていたようである。

 ただし、9月の北海道での地震の際に、コンビニのセイコーマートでは停電にもかかわらず、普通のガソリン車のシガーソケットから給電するなどして停電中もレジなどの利用を可能にしていたようである。

 停電時の決済への対応については、それを事前準備していたセイコーマートの事例も参考になろう。大手コンビニでは数時間は自家用発電でまかなっていたようだが、少なくとも数日程度はレジなどを動かせるような工夫も求められよう。

 停電の際の対策としては、決済データをやり取りをする専用の通信端末などに蓄電池を設置して電源を確保することがあげられているとか(NHK)。ただし、これについても災害時には携帯電話の回線が混雑することで通信がしっかりできるかどうかという問題もありそうである。

 そして決済だけでなく、キャッシュそのものを引きだそうとしてもATMが停電時には利用ができなくなってしまう。日本はキャッシュレス化が遅れているといわれながらも、電子マネーの普及やコンビニのATMの普及により、財布に多額の現金を持つことが少なくなっている。このため災害時にはこれも困った問題となる。

 店舗では釣り銭が足りなくなるという問題もある。小額硬貨、いわば小銭については電子マネーの普及で流通量はこの10年間に5%以上減少しているとされる。店側からすると、もしものことを考えて、ある程度小銭を蓄えるというのも難しい面があるが、多少多めに置いておくことも考慮すべきかもしれない。それとともに我々も、もしもに備えて財布にはやや多めに現金を忍ばせることも対策として必要になろう。


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by nihonkokusai | 2018-10-17 09:58 | 金融 | Comments(0)

日本でのキャッシュレス化を阻んでいるものとは

 日本でも電子マネーなどを通じたキャッシュレス化は進んでいるものの、中国や韓国などに比べるとたしかに遅れている。2018年に経済産業省が策定した「キャッシュレス・ビジョン」では、2025年までに「キャッシュレス決済比率」を40%程度とし、将来的には世界最高水準の80%を目指すとしている。

 日本で現金志向の強い要因としては、現金をいつでもどこでも使えるインフラが整備されているためといえる。いつでも、というのは災害時を含めてとなる。反対に災害時の停電などにより、ネットを使ったキャッシュレス決済は行えなくなる。これも現金決済の大きな強みとなっている。

 ただし、現金決済のためには、偽札などの利用を防ぐための高度な印刷技術、それを大量に保存、輸送するための費用負担が発生する。ATMにも設置やメンテナンス費用が発生する。それに対してQRコードなどを通じた決済については、それほど大きな費用負担はからない。ただし、QRコード決済などでは使う側にとってはスマートフォンという道具を所持していることが前提となる。

 経済産業省がキャッシュレス化を促進させようとしている背景のひとつは、キャッシュレス化による電子決済の情報利用も念頭にあろう。すでにアマゾンなどでは日本人の購買活動の膨大なデータを掴んでいる。このビッグデータの価値は非常に大きい。できれば電子決済を通じたデータ利用も国内企業が活用できるようにすることも意識したものではなかろうか。

 これだけキャッシュレス化が叫ばれ、政府も力を入れても、日本ではキャッシュレス化が浸透する気配はいまのところない。クレジットカードや電子マネー、さらには日本でもデビットカードの利用は伸びてきているものの、キャッシュレス化のキーともいえそうなQRコード決済の利用はそれほど伸びていない。

 これには国内の消費者の決済のなかで、ネットショッピングでのクレジットカード、買い物や電車の利用の際の電子マネーカード、もしものことを含めどこでも利用可能な現金の棲み分けがはっきりとして、それらをうまく使い分けができてしまっていることも、さらなるキャッシュレス化を阻む要因となっているのではなかろうか。

 当然ながら日本でネットの利用が遅れているわけではない。スマートフォンは一人一台あるのが当然のごとくなっている。そしてネットで買い物はするがアマゾンなどではクレジットカード利用が多い。ポイントがほしければ専用カードを利用する。そうなるとなぜスマホで決済しなければならないのか。そのためのインセンティブがそれほど大きくないことが、日本でのキャッシュレス化を阻んでいる大きな要因となっているのではないかと思われる。


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by nihonkokusai | 2018-10-13 10:55 | 金融 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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