牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

カテゴリ:金融( 64 )

災害時に弱いキャッシュレス決済、その対策とは

 キャッシュレス決済の普及に向け企業や学識者、自治体などが設立した「キャッシュレス推進協議会」は、15日に初めて開いた総会で停電対策に協力して取り組むことになったとNHKが伝えている。

 北海道では先月6日の地震に伴う大規模停電で、電子マネーを使った決済が長いところでは数日間、できなくなった。電子マネーはコンピューター上で管理されているものであり、停電によりホストコンピューターとの接続が切れることで利用できなくなる。

 クレジットカードも現在では専用端末を通すことでリアルタイムでチェックが可能となるため、「インプリンター」と呼ばれる紙の伝票に印字する機器を使っているところは少なくなっている。

 レジについてもホストコンピューターと繋がっているレジがスーパーやコンビニなどで多く使われているかと思われる。そのため、停電となれば使用できなくなってしまう。非常用電源を準備していたところも、それで賄える数時間だけとなっていたようである。

 ただし、9月の北海道での地震の際に、コンビニのセイコーマートでは停電にもかかわらず、普通のガソリン車のシガーソケットから給電するなどして停電中もレジなどの利用を可能にしていたようである。

 停電時の決済への対応については、それを事前準備していたセイコーマートの事例も参考になろう。大手コンビニでは数時間は自家用発電でまかなっていたようだが、少なくとも数日程度はレジなどを動かせるような工夫も求められよう。

 停電の際の対策としては、決済データをやり取りをする専用の通信端末などに蓄電池を設置して電源を確保することがあげられているとか(NHK)。ただし、これについても災害時には携帯電話の回線が混雑することで通信がしっかりできるかどうかという問題もありそうである。

 そして決済だけでなく、キャッシュそのものを引きだそうとしてもATMが停電時には利用ができなくなってしまう。日本はキャッシュレス化が遅れているといわれながらも、電子マネーの普及やコンビニのATMの普及により、財布に多額の現金を持つことが少なくなっている。このため災害時にはこれも困った問題となる。

 店舗では釣り銭が足りなくなるという問題もある。小額硬貨、いわば小銭については電子マネーの普及で流通量はこの10年間に5%以上減少しているとされる。店側からすると、もしものことを考えて、ある程度小銭を蓄えるというのも難しい面があるが、多少多めに置いておくことも考慮すべきかもしれない。それとともに我々も、もしもに備えて財布にはやや多めに現金を忍ばせることも対策として必要になろう。


[PR]
by nihonkokusai | 2018-10-17 09:58 | 金融 | Comments(0)

日本でのキャッシュレス化を阻んでいるものとは

 日本でも電子マネーなどを通じたキャッシュレス化は進んでいるものの、中国や韓国などに比べるとたしかに遅れている。2018年に経済産業省が策定した「キャッシュレス・ビジョン」では、2025年までに「キャッシュレス決済比率」を40%程度とし、将来的には世界最高水準の80%を目指すとしている。

 日本で現金志向の強い要因としては、現金をいつでもどこでも使えるインフラが整備されているためといえる。いつでも、というのは災害時を含めてとなる。反対に災害時の停電などにより、ネットを使ったキャッシュレス決済は行えなくなる。これも現金決済の大きな強みとなっている。

 ただし、現金決済のためには、偽札などの利用を防ぐための高度な印刷技術、それを大量に保存、輸送するための費用負担が発生する。ATMにも設置やメンテナンス費用が発生する。それに対してQRコードなどを通じた決済については、それほど大きな費用負担はからない。ただし、QRコード決済などでは使う側にとってはスマートフォンという道具を所持していることが前提となる。

 経済産業省がキャッシュレス化を促進させようとしている背景のひとつは、キャッシュレス化による電子決済の情報利用も念頭にあろう。すでにアマゾンなどでは日本人の購買活動の膨大なデータを掴んでいる。このビッグデータの価値は非常に大きい。できれば電子決済を通じたデータ利用も国内企業が活用できるようにすることも意識したものではなかろうか。

 これだけキャッシュレス化が叫ばれ、政府も力を入れても、日本ではキャッシュレス化が浸透する気配はいまのところない。クレジットカードや電子マネー、さらには日本でもデビットカードの利用は伸びてきているものの、キャッシュレス化のキーともいえそうなQRコード決済の利用はそれほど伸びていない。

 これには国内の消費者の決済のなかで、ネットショッピングでのクレジットカード、買い物や電車の利用の際の電子マネーカード、もしものことを含めどこでも利用可能な現金の棲み分けがはっきりとして、それらをうまく使い分けができてしまっていることも、さらなるキャッシュレス化を阻む要因となっているのではなかろうか。

 当然ながら日本でネットの利用が遅れているわけではない。スマートフォンは一人一台あるのが当然のごとくなっている。そしてネットで買い物はするがアマゾンなどではクレジットカード利用が多い。ポイントがほしければ専用カードを利用する。そうなるとなぜスマホで決済しなければならないのか。そのためのインセンティブがそれほど大きくないことが、日本でのキャッシュレス化を阻んでいる大きな要因となっているのではないかと思われる。


[PR]
by nihonkokusai | 2018-10-13 10:55 | 金融 | Comments(0)

株式市場のゴルディロックス(適温)相場に変調も

 ゴルディロックスとは、英国の童話「ゴルディロックスと3匹のくま」に登場する少女ゴルディロックスが熊の家で飲んだ熱すぎず冷たすぎない、ちょうど良い温かさのスープにちなむ言葉で、適温相場とも呼ばれる。

 これまで米国を中心として、ほどよい景気のなか、株式市場もほど良い上昇を続けてきた。米国の株価指数が過去最高値を更新しても、加熱感はなく相場が大きく崩れるようなこともなかった。

 これには米景気の拡大が続いていたこと、そしてFRBが正常化を進め、利上げを行っていたものの、長期金利は物価を重視するあまり、低位で安定していたことも背景にあった。このため、長短金利スプレッドが大きく縮小していた。

 しかし、物価の先行きに対する見方に変化が生じてきた。中国からの輸入品への課税や原油価格の上昇などによる物価上昇圧力が意識されはじめたのである。物価上昇観測により、米長期金利は3%や3.1%あたりにあった壁を突破してきた。

 これによって米国株式市場はゴルディロックス相場に変調を来すことになった。米国株式市場の代表的な指標のひとつであるナスダック指数をみると、2016年11月あたりからほぼ一方的な上昇相場となっていたものが、久しぶりに大きな調整を迎えたことが窺える。

 これが一時的な調整なのか、それともここでピークアウトするのか。それはまだわからない。米国の景気に対する見方が大きく変化してきたわけでもない。ただし、株式市場が景気の先読みをすることはある。

 日経平均が1989年12月に4万円に迫ったあと、ここが過去最高値となり、ピークアウトして、その後バブル崩壊と呼ばれた大きな下げがきた。これを例えば1990年初等の段階で予想できた人はほとんどいなかったのではなかろうか。もちろん日本のバブル崩壊と、今回の米国株式市場の下落を比較すべきではないとのご意見もあるかとは思うが、ゴルディロックス相場の反動から、いずれ大きな調整が入るであろうことも確かである。


[PR]
by nihonkokusai | 2018-10-12 09:41 | 金融 | Comments(0)

9日から24時間365日「即時振込」のサービスが開始、それを可能にしたモアタイムシステムとは

 全国銀行協会(全銀協)は9日から、24時間365日いつでも他行口座にお金を即時に振り込める新システムを稼働させる。全銀協に加盟する全国の金融機関の約500行が参加する(毎日新聞)。

 我々は銀行などの窓口、もしくはATM、さらにネットを使って自分の口座のお金を他行の口座に振り込むことができる。これを可能にしているのが1973年4月に稼働した「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」である。全銀システムは国内の金融機関相互の内国為替取引をコンピュータと通信回線を用いてオンライン処理を行えるようにしたものであり、現在では銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合などのほとんど全ての民間金融機関を網羅している。

 ただし、このシステムには時間的な制限があった。各金融機関からのシステムへの接続時間は、民間金融機関の営業する営業日の日中のみとなっている。それ以降の時間帯や土日祝日の振り込みは翌営業日の朝8時30分になるまで振込処理は完了しない。

 これに不便を感じていた方は多いのではなかろうか。特に平日の15時30分~18時あたりまでのニーズは法人、個人を問わず高いとされている。さらにネット通販の普及などもあって即時入金のニーズは高まっている。

 そこで開発されたのが「モアタイムシステム」と呼ばれるものである。全銀システムを運営している一般社団法人全国銀行資金決済ネットワークが、全銀システムの「現行の稼動時間帯」(平日8時30分~15時30分、12月を除く月末営業日7時30分~16時30分)以外の時間帯をカバーするために本体システムとは別に構築した新たなサブシステムである。

 これにより「平日夕方~朝」と「土日祝日」の他行宛振込のリアルタイム着金を可能とし、24時間365日の即時振込のサービスが可能となる。

 これが9日の15時30分から開始されるのだが、注意点もある。新たに拡大する時間帯において、リアルタイム着金が可能となるのは、我々が振込を依頼する銀行と振込先の銀行の双方が、振込を依頼された時間にモアタイムシステムに接続している場合となる。

 9日からモアタイムシステムに参加するのは大手や地方、ネット系銀行、信用金庫、信用組合などとなるが、全銀システムに参加しているすべての金融機関ではない点にも注意が必要となる。

 「準備が整った三菱UFJ銀行や三井住友銀行など一部で24時間365日即時振り込みが実現する。他の地方銀行などは準備が整うまで受付時間を夜間に延長するなどして対応する。みずほ銀行は自行システムの更新作業中で当面参加を見送る。」(毎日新聞)

 参加する金融機関とその稼働時間は下記の「全国銀行資金決済ネットワーク」のサイトで確認することができる。また、企業などで平日にのみ入金されることを想定している場合に業務の見直しが必要となることなどの注意点については「全銀システム稼動時間拡大に係る周知・広報用チラシ」の内容なども確認していただきたい。

「モアタイムシステム参加金融機関の全銀システムの接続予定時間一覧」

(参考)全銀システム稼動時間拡大に係る周知・広報用チラシ]

 振り込みの24時間365日化は英国など各国で導入され、携帯電話の番号を入力するだけで決済できるサービスなどキャッシュレス化を促している(毎日新聞)。日本でもこのシステムの稼働がキャッシュレス化の促進を促すための基盤のひとつとなる可能性がある。


[PR]
by nihonkokusai | 2018-10-09 09:17 | 金融 | Comments(0)

天丼の「てんや」でインバウンドを睨んだキャッシュレス化の試みが始まる

 日銀は9月28日に「キャッシュレス決済の現状」というレポートを発表した。この要旨のなかに次のような指摘があった。

 「日本は従来から、ドイツなどと共に、現金志向の強い国と捉えられてきた。もっとも日本でも、支払決済の効率化やデータの活用、インバウンド消費の取り込みなどを企図した、キャッシュレス決済推進の取り組みが活発化している。政府も、キャッシュレス化に向けた取り組みを進めている。」

 訪日外国観光客の増加や2020年のオリンピック・パラリンピックなどを控え、インバウンド消費の取り込みなどを企図したキャッシュレス決済推進の取り組みの事例として、天丼チェーンの「てんや」が完全キャッシュレスの店を試験導入することも挙げられよう。

 朝日新聞の記事によると、客の9割が訪日外国人という東京・浅草雷門店を改装し、2日に開いた「てんや」では、注文は、入り口近くのタブレット端末で行い、会計には、クレジットカードや電子マネー、QRコードなどを利用する。主に中国で使われる決済サービス「アリペイ」や「ウィーチャットペイ」も使うことができるようである。

 国内でのQRコードを使ったキャッシュレス化は、いろいろと進められているが、普及についてはいまひとつといったところとなっている。しかし、キャッシュレス化が進んでいる中国などの観光客にとっては、現金利用が主体の日本での買い物は不便なものとなっていよう。

 Origamiは銀聯国際と資本業務提携し、アジア太平洋地域、北米、中央アジア、中東、アフリカなど24の国と地域の750万を超える店舗で、銀聯QR決済のネットワークを利用したOrigami Payでの決済を実現すると発表した。国内においても、Origami加盟店での銀聯QR決済の利用を可能とするそうである。このように、インバウンドだけでなくアウトバウンドも睨んだ動きも出ている。

 現金志向の強い日本ではなかなかQRコードを利用したスマホ決済の利用が拡大してこない。しかし、国内の海外観光客向けとしてインバウンドを睨んでのキャッシュレス化が進み、今度は海外での日本人観光客がキャッシュレス決済の便利を体験してくるとなれば、いずれ日本でのスマホを利用してのキャッシュレス決済が一気に拡大してくる可能性はあるのではなかろうか。


[PR]
by nihonkokusai | 2018-10-03 09:42 | 金融 | Comments(0)

日経平均はバブル崩壊後の高値を更新。25000円も視野に入るが、慎重にみる必要も

 9月28日の東京株式市場で、日経平均は先物への買いなどから上げ幅を拡大させ、1月23日の日中(ザラ場中)での年初来高値を更新し、1991年11月以来の水準まで上昇し、バブル崩壊後の戻り高値を付けた。

 そして10月1日には、ドル円は114円に接近したことや、カナダと米国が北米自由貿易協定枠組みで合意したことにより、米株指数が上昇。これを受けて、日経平均の引けは125円高となり、引け値でも約27年ぶりにバブル崩壊後の高値を更新した。

 日経平均が年初来高値を更新し、約27年ぶりにバブル崩壊後の高値をつけたのは何故か。これは日経平均の日足チャートと米国のダウ平均やドル円の日足チャートを比べるとその理由が見えてくる。

 起点となったのは9月18日の東京株式市場となる。この日、トランプ政権は2000億ドル相当の中国製品への追加関税を24日から課すと発表。中国も報復措置として600億ドル相当の米国製品に関税を24日から課すと発表した。しかし、18日の日経平均は米中の貿易摩擦激化を悪材料視して売られたのは一時的で、むしろ大きく上昇したのである。これは日経平均が23000円という大台を超えていたことで、テクニカル的な先物への買い戻しの動きが入ったともいえるが、米中貿易摩擦による日本経済への影響はそれほど大きくはなく、米国を主体とした景気拡大が続くとの見方が背景にあった。

 18日の東京市場を含めてアジアの株式市場がしっかりしていたことで、18日のダウ平均は184ドル高となり、ここから再び上昇トレンドを形成した。20日のダウ平均は8か月ぶりに最高値を更新。米長期金利が3%台で推移していたこともあり、ドル円も上昇基調となり、これも東京株式市場の押し上げ要因となった。

 米長期金利の背景には9月26日のFOMCで今年3回目の利上げが決定されたことや、その背景となっていた「とりわけ輝かしい局面にある米経済」(パウエルFRB議長)がある。

 出遅れ感もあった東京株式市場もここにきて息を吹き返してきたのは、米国を主体とした米経済の拡大傾向や、米長期金利上昇などを背景とした円安などがあろう。

 ただし、注意すべきは10月1日の日銀短観で大企業・製造業DIがプラス19と、前回6月調査のプラス21から2ポイント悪化した点である。日経平均のトレンドには、この日銀短観の大企業・製造業DIと重なり合うことが多い。日経平均のトレンド変化から日銀短観も前回から改善かとみていたが、むしろ悪化した。台風21号や北海道地震など相次いだ自然災害などによる影響も考えられるものの、米国などに比べ日本の景気はそれほど輝かしいわけではなさそうである。このため、ここからの日経平均の動きは慎重にみる必要はある。ただし、チャートなどからみてのテクニカルな動きを背景に、ひとまず25000円あたりまでの上昇ならば十分にありうるではないかとみている。


[PR]
by nihonkokusai | 2018-10-02 09:08 | 金融 | Comments(0)

米国のダウ平均は連日の最高値更新、日経平均の年初来高値も視野に。この株高の背景とは

 20日の米国株式市場でダウ工業株30種平均が前日比251ドル高の26656ドルとなり、引け値で今年の1月26日以来、約8か月ぶりに史上最高値を更新した。21日もダウ平均は86ドル高となり、連日の最高値更新となった。

 米中の貿易摩擦が激化するなかにあっての株高だけに、違和感を持つ方も多いかもしれない。しかし、米中貿易摩擦による経済への負の影響を考慮しても、米国経済は力強く拡大トレンドを継続させているとの見方が、今回の米株上昇の背景にあるかと思われる。

 トランプ大統領はOPECは今すぐに価格を引き下げるべきだとツイートしたようだが、原油先物価格がWTIで70ドル台を維持しているのは、OPECなどによる生産調整だけでなく、米国を中心として世界的な貿易拡大も背景にあろう。

 20日の自民党総裁選の結果は予想通りに安倍首相が3選を決めたが、日本株はアベノミクスそのものに対しては冷えた目でみている。安倍政権が円安株高を意識して、アベノミクスと呼ばれる政策を行ってきた。しかしそれが効いたのは、欧州の信用不安の後退期というタイミングに、禁断の政策といえるリフレ政策を行うというサプライズが市場を動揺させた当初の時期に限ったものとなった。

 いやいやその後もアベノミクスによって、雇用は改善し景気も回復したとの見方もある。しかし、アベノミクスの柱である異次元緩和で物価目標は達成されておらず、アベノミクスが効いたとの見方はその意味ではおかしい。リーマン・ショックと欧州の信用不安という世界的な大きなリスクの後退と、それによる世界経済の回復の波に日本も乗っていたといえる。ただし、日本が世界的な景気拡大に対して自ら先導してはいないことで、例えば日本の株価の上昇は米国などに比較すれば遅れている。

 それでも再び米国株式市場のシンボル的な指標であるダウ平均が最高値を更新してきたことで、それに引っ張られるかたちで日本株の上昇にも弾みがつくことが予想される。株価の上昇はリスクオンも意識されることで円安要因となる。米長期金利が3%台を回復してきたことも米景気の回復などが背景にあり、この米長期金利の上昇もドル円の上昇を促すことになる。

 日経平均の年初来高値は引け値ベースで1月23日につけた24124円である。日経平均はここが目先のターゲットとなり、ここを抜けてくれば25000円を伺うような動きとなろう。

 ただし、米中の貿易戦争の行方、英国のEU離脱問題、中東情勢、北朝鮮問題、新興国経済の動向等々のリスク要因もあり、これらの動向も注意しておく必要はある。最も注意すべきはトランプ大統領のツイートなのかもしれないが。

[PR]
by nihonkokusai | 2018-09-22 07:56 | 金融 | Comments(0)

リーマン・ショックから10年。何故、世界的な金融危機が訪れたのか

 10年前に発生したリーマン・ショックとは、ひとつの金融機関が破綻したことで、世界的な金融危機を生んだわけではない。潜在的なリスクが顕在化し、それが金融機関の経営を脅かし、多くの大手金融機関が危機的状況追い込まれた。その原因といえるのが、金余りといった現象だけでなく、金融機関の利益優先主義、さらにはリスクは自在に操れるという妄想があったと思う。今回はリーマン・ショックに至る経緯をみてみたい。

米国の住宅バブル

 米国経済は2000年のITバブルの崩壊などがあったものの、その後も個人消費に支えられ、高い成長率を維持した。この消費を支えたのが住宅バブルとなった。

 1990年代に移民の増加による人口の増加に加え、低所得層に対する住宅金融制度が整備され、返済方法についての規制緩和が行われたことなどから、低所得者層にも住宅ブームが波及した。また低金利に加え、持ち家比率の高まりなどが住宅価格の高騰を招いた。米国では住宅価格の値上がり分を担保による貸し出し(ホーム・エクイティ・ローン)が伸び、住宅価格の値上分がり分の消費が可能となり、消費を底上げした。

 低所得者向けの住宅ローン(サブプライム・ローン) は、そのリスクを減らすために証券化され、リスクをより分けるために金融理論で構築された価格と格付会社による高格付けを得て債務担保証券(CDO)という新たな金融商品に組成された。

 欧州や産油国だけでなく、中国や台湾といったアジア勢、そして日本からなどから大量の資金が米国に流入するなどの金余りブームも加わり、このような金融化商品へのニーズは高まり、サブプライム・ローンが組み込まれた証券化商品は世界各国の金融機関やファンドに売却された。

サブプライム・ローン問題

 2006年半ばに、それまで高騰を続けていた米国の住宅価格が下落に転じ、一部の住宅ローンが担保割れとなった。担保割れにより融資の回収不能リスクが高まることで、それを担保とした証券化商品の損失リスクが高まり、証券化商品そのものの価格が下がる結果となった。

 米国住宅バブルの崩壊により、信用力の低い個人向けの住宅資金貸し付けであるサブプライム・ローンで焦げ付きが増加した。格付会社がそれを組み入れた住宅ローン担保証券(RMBS)や債務担保証券(CDO)を格下げしたことで、時価評価の必要に迫られ、CDOなどを保有していた欧米の金融機関での巨額な損失が表面化した。

 サブプライム・ローン問題による最初の危機は欧州で発生した。2007年8月9日にドイツ連邦銀行は、IKB産業銀行がサププライムでの投資に伴う損失発生に対しての救済策を協議するため、緊急会合を開催。さらに同日、仏銀最大手BNPパリバは傘下ファンドの償還停止を発表し、次はどこかとの連想も加わり、欧州銀行向け資金の出し手が急速に限られてしまい、これはパリバ・ショックとも呼ばれた。

 米国のダウ平均は、2007年10月に過去最高値の14164ドルの高値をつけたが、危機の発生により、その後は下落基調となった。

 危機は資金繰りの困難化の問題から始まったことから、各国中央銀行は大量に資金供給を実施。2007年12月にFRBが欧州中央銀行(ECB)、スイス国民銀行(SNB)とスワップ取極を結んで欧州でのドル資金供給を始めた。

 証券化商品は欧米の大手金融機関が大量に保有していており、証券化商品格下げに伴い、評価損失が雪ダルマ式に膨れ上がった。これによって米国の大手金融機関のトップが相次いで辞任するといった事態となった。

リーマン・ショック

 2008年1月18日に、証券化商品を保証していたモノラインと呼ばれた金融保証会社が資本調達難から格下げされ、証券化商品全体の価格下落に拍車をかけた。世界的な株安連鎖による市場の混乱に対し、1月22日にFRBは0.75%の緊急利下げを実施し、さらに0.5%の追加利下げを実施しFF金利の誘導目標は年3%となった。

 3月14日に証券化商品を大量保有していた投資銀行のベア・スターンズが資本調達の失敗から資金繰りに行き詰まり、FRBの資金支援のもとJPモルガン・チェースに買収された。

 6月に入り米株式市場は金融機関の損失拡大への懸念や大手自動車メーカーなどの業績悪化見通しなどにより売り圧力を強めたことで、金融株に対して空売り規制が強化され、これをきっかけにヘッジファンドが組んでいた米金融株売り、原油先物買いといったポジションの撒き戻す動きが一気に強まった。このためニューヨーク原油先物価格は7月11日につけた147.27ドルをピークに急落。7月13日には政府系住宅金融公庫が経営危機に陥り、政府の資本注入などで経営再建を図ることになった。

 そして2008年9月15日に、証券化商品により大きな損失を抱えていた投資銀行のリーマン・ブラザーズが、資本調達や身売りに失敗し経営不安に陥り破綻した。リーマン・ブラザーズのような大規模金融機関が破綻したことにより、世界の金融市場は極度の不安に陥り、これがリーマン・ショックと呼ばれた。金融市場では取引相手のリスク、いわゆるカウンター・パーティーリスクが強まり、各国の中央銀行は大量の資金供給を行った。

 リーマン・ショックにより、巨大金融機関の破綻がもたらす影響を懸念した米国政府は金融機関を破綻させない方針に転じ、FRBは9月16日に米国の大手保険会社AIGに対して緊急融資を行うことを表明した。

 金融機関の不良債権と資本不足の問題に対し、米国財務省は最大7千億ドルを投入して、幅広く金融機関の不良債権を買い取る「緊急経済安定化法案」を議会に提出したが、9月29日に下院で否決された。これは金融市場に再び大きなショックを与え、29日のダウ平均株価は終値で777ドル安と史上最大の下げ幅を記録した。

 欧州各国も預金の全額保護や金融機関の国有化・資本注入、短期債務保証など、様々な施策を迅速に打ち出した。金融グローバル化のもとで、問題解決に向けた国際協調も行われ各国中銀が一斉に利下げを行った。10月8日に欧米の中央銀行に加え一部新興国も含め、10の中央銀行が同時に0.5%の緊急利下げを実施した。

 実体経済への影響も深刻化し、特にアイスランド、ハンガリー、南アフリカなど、経済が米欧金融機関からの借入に過度に依存していた国では経済危機に陥り、IMFなどからの緊急融資を頼ることになった。


[PR]
by nihonkokusai | 2018-09-19 09:56 | 金融 | Comments(0)

仮想通貨が通貨ではない理由

 今年2月にマーシャル諸島共和国において、「世界初の政府発行仮想通貨を法定通貨にする」という法案が可決されたそうであるが、この発表に対してIMFが、「仮想通貨を法定通貨にするのは考え直すべきだ」と提言したそうである。

 そもそも、ビットコインなど仮想通貨と呼ばれているものは、果たして通貨と呼んで良いものなのかどうかをあらためて考察したみたい。

 現在の通貨や貨幣と呼ばれるものについては、本質的な価値があるわけではない。通常は紙や金属の塊を加工したものである。貨幣や通貨のもとになったものとして、大昔は希少な貝殻、もしくは貴金属などが使われた。石そのものが通貨として使われた例も実際にあったようである。

 貨幣そのものの価値というよりも、それを一定の価値のあるものとして流通させてきたのが、通貨の歴史となる。その信用の裏付けをするために、徳政令などで勝手に借金をなくしてしまいかねない王様の信用などではなく、徴税権などを担保にして発行されるようになった。

 狭いところであれば、たとえば刑務所内でタバコが貨幣となったりすることはできる。目に見える仲間内だけであれば、約束事が成り立つ。しかし、不特定多数が使うとなれば、政府なりが一定のルールを設けて通貨に信用を寄与する。ただし、通貨発行権のおいしさのあまり、シニョリッジを得ようとして通貨価値というか信用を毀損してしまう例も歴史上、多くあった。

 現在の通貨もあくまでその価値を認めているのは発行している中央銀行、さらには政府である。国に対する信認が得られている限り、法律で守られた貨幣価値が存在することになる(法定通貨)。

 これに対し、ビットコインなど仮想通貨と呼ばれているものは、ネットを使ってその信用を寄与しようとしたものではあるが、法律などによって守られているものではない。マーシャル諸島共和国の法案に関しても、自国の通貨として米ドルを使用しており、その代替として仮想通貨に目を付けたようだが、米国が信認を与えているドルに対し、仮想通貨は国などが信認を与えているものではない。

 仮想通貨はあくまで仕組み上で、発行形態や保有形式が整えられている。あくまでそれを売買している人達が価値があると信じて売り買いを行っているにすぎない。

 日本の中央銀行である日銀の仕事は、日銀法上では「日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする」とあり、「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」とある。

 この場合の「物価の安定」とは「通貨価値の安定」である。それでは現在、通貨価値は不安定であろうか。2%と言う物価目標が達せられなければ、日本円の通貨価値は適正ではないのか、あらためて日銀に問いたいが、それは別のところで議論するとして、日銀は円という通貨価値を安定させることが仕事となっており、そのためにはいろいろな仕組みとともに信認を得るための努力が積み重ねられている。

 これに対し、ビットコインなど仮想通貨と呼ばれているものには、その価値が法律で守られたり、価値を安定されるための組織があるわけでもない。人々の思惑だけでその価値が乱高下している。その乱高下だけみても安定した通貨として使えるものとは言えない。

 いやいや、ビットコインなど仮想通貨は世界のいたるところでネット上で利用できる通貨であり、通貨の革命だ、との主張があるかもしれない。

 ひとつ気をつけなければならないのは、ネットでの決済は円などの法定通貨も利用できるため、仮想通貨だけに利点があるわけではない。QRコードなどを使ってネットでの決済に使われる通貨については、我々が銀行などの口座に置いてある法律で価値が守られた円である。

 仮想通貨の本源的価値についても、一定のルールはあり、機械的に作られていようが、それが一般に信用価値が認められているとは思えない。少なくとも金には金の価値はあり、チューリップにはチューリップの価値はあった。仮想通貨と呼ばれるものの価値はまさに仮想である。

 仮想通貨は仮想資産と呼ぶべきとの意見も出ている。そもそもコインとか仮想「通貨」と名付けられてしまったことで、円などと同様の通貨のように勘違いしてしまいかねないが、残念ながら通貨と呼べるものではない。


[PR]
by nihonkokusai | 2018-09-13 09:34 | 金融 | Comments(0)

目にも止まらないスピードの取引(HFT)による株式市場や債券市場への影響とその限界

 株価指数先物30周年記念シンポジウムにおける日銀の黒田総裁の基調講演において、HFTに関しての指摘があった。日銀のサイトにアップされた黒田総裁の講演要旨から見てみたい。

 「東京証券取引所の株式市場においては、2010年1月に稼働したアローヘッドと呼ばれる新取引システムにより、1000分の1秒という、人間の能力ではとても追い付かないスピードで注文処理を行うことが可能となりました。こうした技術革新を背景に、自動化されたアルゴリズムに従って、きわめて高速・高頻度で小口売買を繰り返す取引、いわゆるHFT(High Frequency Trading)を行うプレイヤーのプレゼンスが高まっています。」(日銀のサイトの講演要旨より)

 はっきり言って私は目に見えないようなスピードで先物が取引されることには反対である。金融市場は人と人が競い合って価格を形成すべきものと思っている。しかし、そんなことは言えなくなっているのがご時世であり、すでにHFTのシェアは米国では5割程度、欧州は4割程度に達しているとされる。東京証券取引所の株式市場において、コロケーションエリアからの約定件数は4割程度を占めているとされる。

 ちなみに、債券先物の場合は現物債の取引が外部から見づらく、業者間取引も取引所では日本相互証券で行っていることで、裁定取引なども難しく、さらにかなりドメスティックな市場であるため、HFTは入りづらいとされていた、しかし近年、債券先物でも頻繁に取引されるようになってきたそうである。

 黒田総裁は市場流動性の向上などHFTの利点を述べるとともに、次のようにも述べている。

 「一方、アルゴリズムが想定しないような急激なショックが生じた場合において、HFTは市場流動性の供給を不安定化させ、むしろボラティリティの拡大を助長するとの見方があるのも事実です。さらに、アルゴリズムのヒューマンエラーなどをきっかけに、合理性を欠いた取引が大量に実行されてしまうリスクを懸念する声も聞かれます。」(日銀のサイトの講演要旨より)

 今回は株価指数先物の講演であるものの、HFTについては債券先物も同様のことが言える。その上でそれでは、7月31日の債券先物が日銀の金融政策決定会合の結果を受けて大きく債券先物が反発したのは何故なのか。翌日から再び下げたのは何故だったのか。

 31日の債券先物の動きはHFTのように思えた。これはAIが決定会合の声明文のタイトル「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」と政策金利のフォワードガイダンスも導入したことで、追加緩和と勘違いしたためではなかったのか。しかし、実は柔軟化であったとの見方で再び売られたとしたら、アルゴリズムが想定できなかった事例とはなるまいか。

 AIがどれだけ進化しようとも、集団で形成される市場心理の移り変わりまで読み込んで、的確な取引が出来るようになるとは思えない。金融市場では将棋のように勝ち負けがはっきりするものではない。市場参加者が何をみているのかで材料が買わり、材料の比重も常に変化し、その結果として市場価格が乱高下する。年末の日経平均やドル円の居所を当てたとしても、そこに至る過程まで見通せるわけではない。つまりAIを使おうが市場で勝てるとは限らない。いち早くニュースを捉え、わずかなスピードの優位性で利益を獲得することは技術的に可能でも、そのニュースが市場でどのように理解されるのかまで予測することも難しい。


[PR]
by nihonkokusai | 2018-09-10 10:12 | 金融 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー