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カテゴリ:中央銀行( 281 )

ECB総裁とドイツ連銀総裁の決戦は木曜日

 「ドラギ対バイトマン」というと、まるで怪獣映画のようなタイトルになってしまうが、この映画(?)には前作があり、そのタイトルは「トリシェ対ウェーバー」であった。

 ECBのトリシェ前総裁の後任には当初、ドイツ出身者が就任するであろうことが暗黙の了解のようになっており、ドイツ連邦銀行(ブンデスバンク)のウェーバー総裁(当時)が最有力視されていた。しかし、そのウェーバー総裁は、「個人的な理由」で2011年4月末にドイツ連銀総裁を辞任した。

 ウェーバー総裁は、ECB理事会において、インフレを加速し中央銀行の政治的独立性を損なうとして加盟国の国債買い入れに強硬に反対しており、それがドイツ連銀総裁を辞任し、つまりは次期ECB総裁候補から降りた要因となった。歴史にもしもは無いが、ウェーバー総裁が辞任せずに、ECB総裁となっていたならば、ECBの政策は大きく変わっていた可能性がある。

 今年8月2日のECB政策理事会後のドラギ総裁の会見で、イタリアやスペイン国債の買い入れの準備を進めていることは表明したが、国債の買い支えの時期等や新たな政策の詳しい内容は明らかにされなかった。さらにドラギ総裁は、ドイツ連銀のバイトマン総裁一人が国債買入に反対したことを明らかにした。

 ドラギ総裁はワイオミング州ジャクソンホールに参加予定で、講演も予定されていたにも関わらず直前になってシンポジウムへの参加を取りやめた。その理由として、向こう数日に多忙を極めると予想されるためとECB報道官は語っていた。

 ECBが検討しているとされる短期国債主体としたスペインやイタリアの国債を買い上げるための非公表の利回りターゲット設定が完全に詰められていない可能性がある。ECBとEFSFとの役割分担、さらにEFSFが銀行免許を得て国債を購入するとの方式等もあるが、このあたりの対策を協議するためなのか、ドラギ総裁だけでなくECB理事もジャクソンホールには出席しなかった。

 ブンデスバンクのバイトマン総裁は、引き続き国債買入再開に反対の姿勢を示していることも影響し、最終的な落としどころをいまだ探っている可能性もある。このバイトマン総裁はジャクソンホールのシンポジウムに参加するようであるが、予定されていた3日の滞在を1日に短縮するようである。

 ECBが2011年8月に国債買い入れを再開した際には、バイトマン総裁やシュタルク専務理事ら4人が、債券買い入れに反対したとも伝わった。今回はいまのところバイトマン総裁のみが反対を表明している。ドイツのメルケル首相はECBの国債買入に対しては賛成しているようで、ドイツの元財務次官であったアスムセンECB理事も賛成に回るであろうとの見方が強い。ただし、アスムセン氏は、ウェーバー前ドイツ連銀総裁の影響を強く受けているとも言われている。

 さらに、9月12日のドイツの憲法裁判所が欧州安定化メカニズム(ESM)の合憲性をめぐる判断を確認しないことには国債買入を再開することはできず、もしECBが短期債の非公表の利回りターゲット設定による買入を行うにしても、9月6日には具体的な発表はできず指針を示すのみではないかとみられている。

 ウェーバー前ドイツ連銀総裁が加盟国の国債買い入れに強硬に反対し辞任していたことで、ECBの国債買い入れは薬物に似ており、政府が依存症に陥るリスクがあるとの認識を示したバイトマン総裁も辞任するのではないかとの観測も出ていた。実際にバイトマン総裁はECBの国債買入への反対を理由に何度か辞任を検討との報道もあった。しかし、反対を貫くために辞任せずにいるとの見方もある。

 これについては、9月6日の木曜日に開催されるECB政策理事会でいったいどのような決着が付くのか。イタリア出身のドラギ総裁もドイツ出身者以上にブンデスバンクの流れを引き継いでいる総裁とみられ、バイトマン総裁の指摘も理解しているはずである。中央銀行がそこまで首を突っ込むことには大きなリスクを伴うが、現在、ユーロ圏の危機を救えるのはECBとの認識もあろう。ドラギ対バイトマンという映画は、まさに現在のセントラルバンカーが抱える大きな矛盾を示す戦いであるようにも思われるのである。

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by nihonkokusai | 2012-09-03 09:53 | 中央銀行 | Comments(0)

ドイツのESMの違憲判決とECBの新たな国債買入策の関係

 報道によると、ECBのドラギ総裁は、9月12日にドイツの憲法裁判所が恒久的な救済基金である欧州安定化メカニズム(ESM)の合憲性をめぐる判断を下した後に、ECBによる国債買い入れ計画の詳細を発表する見込みだと伝えられた(ブルームバーグ)。

 欧州金融安定ファシリティー(EFSF)に代わるESMはドイツで違憲性が問われたことから、7月に予定されていた本格稼働が遅れている。

 EFSFとは「European Financial Stability Facility」の略で、日本語では「欧州金融安定基金」とも呼ばれているものである。この欧州金融安定基金は、2010年5月のギリシャ危機を踏まえて、EU(欧州連合)の加盟国によって合意されたユーロ圏諸国の資金支援を目的とした基金である。ルクセンブルクに本部を置き、株式会社として登録されている。ただし、2013年6月までという期限が設けられ、その後は恒久的な危機対応の機関として、2013年に欧州版のIMFともいえるESM(欧州安定メカニズム、European Stability Mechanism)がEFSFの業務を引き継ぐ予定となっていた。

 ESMの発足には出資比率で9割の国の批准が必要となり、6月29日にドイツ連邦議会はEFSFの機能拡充案を賛成523票、反対85票で可決した。ところが、野党議員や学識経験者などが、他国を救うために税金を投入する権限は議会に与えられていないとして提訴した。ESMについて国内法に反するとして訴訟を起こしたのである。このため大統領の署名は見送られ、憲法裁判所が合憲か否か審議する事態となり、その発表は9月12日に持ち越されたのである。

 ただし、ユーロ危機が渦巻く中にあり、その影響の大きさから見て、違憲判決が下される可能性は低いとされる。しかし、ECBによる国債買い入れについては、この判決を確認したのちに正式に発表されるとみられる。

 これは前回のECBによる流通市場における国債買入(証券市場プログラム、SMP)と異なり、今回のECBによる新たな国債買入計画には明確な条件が付けられているためである。国債買入の対象となる国は、まずユーロ圏諸国に対しEFSF・ESMによる支援を要請し、その支援を受けるための財政再建等に取り組む必要がある。つまりECBによる国債買入を実施するには、対象となる国がEFSF・ESMによる支援を受けることが前提となる。

 このため9月6日のECB政策理事会では、国債買い入れ計画の詳細までは明らかにされないのではなかろうか。ESMが仮にドイツで違憲となれば、最大の出資国であるドイツによる出資が不透明となりかねず、このためECBは判決を確認した上で、もちろん合憲判決が前提だが、新たな国債買入策の詳細を発表するものと思われる。

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by nihonkokusai | 2012-08-30 09:16 | 中央銀行 | Comments(0)

ドラギ総裁はジャクソンホールに急遽欠席、その理由とは

 8月31日に米国ワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムが市場参加者にとり大きな注目材料となっている。まず、注目されているのがバーナンキFRB議長の講演内容である。これは2010年の同シンポジウムの講演で、バーナンキ議長がQE2を示唆したため、今回も何らかの追加緩和を示唆するのではないかとの期待があるためである。

 実際に7月31日・8月1日に開催されたFOMCの議事要旨では、経済が大幅に改善しないかぎり、かなり早期に追加緩和を行うとの姿勢が示された。また、バーナンキFRB議長が8月22日付で下院委員会に出した書簡で、追加措置をとる余地があるとの姿勢を示していたようであり、9月12日から13日にかけて開催されるFOMCでの追加緩和期待は強まっており、可能性はさておき、QE3を期待する声もある。

 過去の歴史を見ても、ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムでは興味深い出来事が多かったため、市場関係者からの注目度が高い。このシンポジウムは、ある程度マスコミ等から遮断されての意見交換の場もあるとみられている。これには著名学者などとともに、日銀の白川総裁など各国の中央銀行首脳が多数出席することで、金融関係者によるダボス会議のようなものになっているためである。

 なぜこのようなシンポジウムが、ワイオミング州ジャクソンホールという小さな町で行なわれるかといえば、FRB議長だったポール・ボルカー氏がフライ・フィッシングの趣味があり、この街を良く訪れていたお気に入りの場所であったからという説がある。

 ロシア危機とヘッジファンド危機に見舞われた1998年に、当時のグリーンスパンFRB議長がこのカンザスシティ連銀主催のシンポジウムの合間に FRB理事や地区連銀総裁とひそかに接触し、その後の利下げの流れをつくったと言われた。また、1999年には日銀の山口副総裁(当時)と、バーナンキ・プリンストン大学教授(現FRB議長)が、日本のバブルに対する日銀の金融政策の評価をめぐり、論争を行ったことでも知られる。

 今回は、FRBが次の一手として行う緩和の内容も気になるところではあるが、それとともにドラギECB総裁の言動も注目されていた。

 ドイツ週刊誌シュピーゲル(電子版)は8月19日に、欧州中央銀行(ECB)がスペインなど債務危機に陥ったユーロ圏諸国の国債利回りに目標水準を設定し、この水準を下回るまで流通市場で国債を買い上げることを検討していると報じた。さらにイギリスのデーリー・テレグラフ紙もこのシュピーゲル誌の記事の内容を確認することができると報じている。

 その後もECBが債券買い入れ計画で、利回り幅の目標設定を検討しているとあらためて報じられるなど、どうやら実際に検討していることは確かなようである。ただし、ここで問題となるのは、国債買入に反対しているドイツ連銀総裁の動向ともなる。ECBの政策理事会が9月6日に迫っているだけに、ジャクソンホール内での関係者達の動向にもかなり関心が高まっていた。

 ドラギ総裁は9月1日に講演をする予定であり、さすがにドラギ総裁は具体的な国債買入等の示唆はないと思われるが、その講演内容は良く吟味して9月6日のECBの動向を確認したいという投資家も多かったのではなかろうか。

 ところが、そのドラギ総裁は直前になってシンポジウムへの参加を取りやめたと発表された。その理由として、向こう数日に多忙を極めると予想されるためとECB報道官は語っていた。確かにドラギ総裁は9月3日に欧州議会の経済金融委員会で銀行同盟について証言する予定だそうで、9月6日には定例理事会も控えている。しかし、今回のジャクソンホールで開催されるシンポジウムやECB定例理事会の日程はかなり以前から決められていたものであり、9月1日にはドラギ総裁のパネルディスカッションの出席も予定されているなど、ある程度スケジュールは詰められていたはずなのに、今回の直前の欠席はやや不可解であり、何かしら別の理由があったとみられる。

 9月6日のECB政策理事会や9月12日・13日のFOMCを前にして、日銀を含め他の中央銀行も、その動向を探ろうしていたと思われる。今回のジャクソンホールはこの情報収集のための絶好の場とも言える。ECBとFRBが追加緩和を実施し、それにより円高圧力が強まるような事態となった際には、9月18日・19日の金融政策決定会合で日銀も動かざるを得なくなる。しかし、どうやらECBの動向については、探りが入れられない状況となってしまうようである。

 ちなみに、2010年8月27日にバーナンキFRB議長はQE2を示唆するカンザスシティ連銀主催のジャクソンホールでの講演を行った際、このシンポジウムに出席のため米国出張中であった白川総裁は予定を1日に早めて急遽帰国し、8月30日の9時から臨時の金融政策決定会合を開催し、新型オペの拡充策を決定した。すでに外為市場ではQE2を期待して円高圧力が強まっていたが、民主党の代表選に小沢氏が出馬を決定したことで、当時の菅総理が円高と景気への対策をアピールする必要もあり、日銀も急遽動かざるを得なかったものとみられる。

 今回はドラギ総裁が、2010年のジャクソンホールでの白川総裁のように仲間の集まる集会にのんびりと出席できる状況ではなくなってしまったようである。これはつまり現在、ECBが検討しているとされる短期国債主体としたスペインやイタリアの国債を買い上げるための非公表の利回りターゲット設定が完全に詰められていない可能性がある。特にブンデスバンクのバイトマン総裁が国債買入再開に反対の姿勢を示しており、最終的な落としどころをいまだ探っている可能性がある。 さらにドイツの憲法裁判所が欧州安定化メカニズム(ESM)の合憲性をめぐる判断を9月12日に行うことなども影響している可能性がある。

 今回のジャクソンホールでのシンポジウムにはドラギ総裁とともにECBの理事は出席しないそうであるが、バイトマン総裁は出席するそうである。こうなるとシンポジウムにおけるバイトマン総裁の言動にも注目が集まりそうである。

 毎年のジャクソンホールでは何かが起こりうる。今年はバーナンキ議長の発言内容に注目が集まっているが、個人的にはECBの動向に関心がある。しかし、肝心のドラギ総裁は参加しない。これは何かと注目が集まり過ぎているシンポジウムで、まだ固まり切れていない次の手について、自らのコメント等により市場に期待感や失望感を生むことを避けるためではないかとも思われるのである。


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by nihonkokusai | 2012-08-29 09:49 | 中央銀行 | Comments(0)

QE3という最終兵器は温存したほうが賢明か

 「宇宙戦艦ヤマト2199」というタイトルのアニメがある。我々の年代にとって「宇宙戦艦ヤマト」というアニメは強烈なインパクトを残している。次々と続編が生まれ、実写版が映画化されるなどしたが、あまり評判は良くなかった。しかし、今回の「宇宙戦艦ヤマト2199」については昔からのファンもそれなりに満足したものとなっているようである。元になっている「宇宙戦艦ヤマト」に忠実に、さらに現在のアニメの技術等も生かして、リアリティのある内容となっている。

 「宇宙戦艦ヤマト2199」の最新作では冥王星にあるガミラス基地を破壊し、いよいよ太陽系を脱するところまで描かれている。その冥王星のガミラス基地を攻撃する際、ヤマトの最大の武器である波動砲を打つかどうかでもめるシーンがあった。結局、波動砲は使わずに通常兵器で攻撃することになるが、波動砲はあまりに攻撃力が強く、冥王星そのものを破壊しかねないためというのが理由であった。

 米FRBは追加緩和策として、「a new large-scale asset purchase program」(新たな大規模資産購入プログラム)という名の最終兵器を用意している。これを市場ではQE3と呼んでいる。

 果たしてこの武器が市場に向けて使われるかどうかが、ひとつの焦点となっている。7月31日から8月1日にかけて開催されたFOMCの議事要旨をみると、現場スタッフは使用は可能との認識を示してはいたが、決定するメンバー達からはそれによる弊害を意識した発言が出ていた。

 現在の日欧米の中央銀行は、短期金利がゼロ水準となっているため、すでに通常兵器では市場に対する有効な手段を持ち得ていない。このため、非通常兵器が用いられることになったが、そこには数々の弊害もある。特に気にすべきは日銀が量的緩和を行った際に問題となった市場機能の低下である。

 QE3は市場にとり、破壊力のある兵器となりうるが、それによって債券市場での価格発見機能の喪失等が懸念される。連銀という大きな買い手の存在に市場が依存してしまいかねず、市場機能そのものを破壊しかねない。

 それ以前に、本当に市場に大きな影響を及ぼせるのかという問題もある。すでに市場では2回のQEを経験している。3度目ではさほどインパクトがなくなる可能性もある。

 そもそも米国の長期金利は一時よりも上昇したとはいえ歴史的低水準にいることで、ここからの金利低下を促すといっても限界はあろう。また、それにより影響を及ぼそうとしている住宅市場そのものも回復基調にある。

 さらにまたQE3が使いづらい要因がほかにもある。米大統領選挙と財政の崖の問題である。米大統領選挙中はよほどのことがない限り、金融政策は変更しづらい。このため、予防的な意味で9月6日のFOMCで何らかの追加緩和策を決定してくるかもしれないが、そこでQE3は使いづらい。

 その理由のひとつが、米大統領選候補となるロムニー前マサチューセッツ州知事による発言である。ロムニー氏は、FRBはQE3の実施を回避すべきだとテレビで語っていた。QE1はプラスの効果があったかもしれないが、新たな量的緩和は米経済の役に立たないだろうとの認識を示したのである。ここで無理にQE3を使い、共和党とFRBの対立を深めさせる必要もないはずである。

 さらに財政の崖の問題もある。これについては、さすがに米経済を大きく悪化させるようなことは避けられると期待したいが、何が起きるかは予測できない面もある。例え実質的な効果は少なくても、市場での期待度が高いということは、心理的なインパクトはそれなりにあるとみられるQE3は、もしものときの切り札として温存しておいた方が賢明ではないかと思われるのである。


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by nihonkokusai | 2012-08-25 10:39 | 中央銀行 | Comments(1)

FOMC議事要旨に見るQE3の可能性

 8月22日に公表された7月31日から8月1日にかけて開催された、連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨から、特にQE3の可能性について探ってみたい。

 ちなみに「minutes」は議事録と訳されることが多いが、FOMCの約3週間後に発表されるものは日銀が会合の約1か月後に発表する議事要旨に内容が近い。日銀は10年後に精細な内容が記された議事録を発表するが、米国も議事中のジョークまでも含めた議事録(Transcript)を5年後に公表しているため、ここでは日銀に合わせる格好で議事録ではなく「議事要旨」としたい。

 そしてQE3という表現についてだが、市場ではFRBによる大規模資産購入を量的緩和(Quantitative Easing)として、その頭文字をとってQEと呼んでいる。しかし、バーナンキ議長などは自らの政策を「量的緩和(QE)」とは呼んでいない。今回の議事要旨内でも、QE3という用語を見つけようとしても出ていない。それに該当するのは「a new large-scale asset purchase program」、つまり「新たな大規模資産購入プログラム」である。

 この大規模資産購入プログラムについては、多くの参加者(投票権を持つメンバー以外の参加者含む)が、長期金利に低下圧力を加え、金融環境を緩和する効果を持つことで、景気回復へのサポートになることは明らかであるとした。

 加えて、何人かの参加者からは新たなプログラムが、企業や家計の信頼を得ることで、デュアル・マンデート達成に向けの委員会の姿勢が強化される効果もあるとの指摘もあった。

 しかし、他の参加者からは、現状ではそのプログラムの有効性について疑問視しており、さらに、経済活動への影響は一時的なものかもしれないと指摘する参加者もいた。

 さらに何人かの参加者から、米国債やMBSの市場機能を阻害するのではとの懸念が示されたが、連銀スタッフは機能を阻害せずに買い入れる余地はまだあるとの分析を行っていたようである。

 しかし、いずれFRBのバランスシートを正常化させる際に詐害要因になるとの懸念も示され、数人の参加者からは中期的なインフレ期待を引き上げてしまうのではないかとの懸念も示された。

 今回の議事要旨では、経済が大幅に改善しないかぎり、かなり早期に追加緩和を行うとの姿勢が示されたと受け止められた。しかし8月1日の声明文で、「必要な時に適切な追加の緩和策を行う」として、前回の「さらなる措置を適切な時に行う用意がある」との表現からやや踏み込んだ格好となっていた。このため、9月12日から13日にかけて開催されるFOMCでの追加緩和期待は、すでに出ていたが、それをあらためて今回の議事要旨で裏付ける格好となった。ただし、問題はその手段である。

 以前、議会証言でバーナンキ議長が示唆した追加緩和として、米国債やモーゲージ担保証券(MBS)などの追加債券買い入れ、つまりQE3。そして、連銀窓口貸出や超過準備金利引き下げ。さらに超低金利政策の継続期間についていつまで続けるかの予想期間の先延ばしなど時間軸の強化を指摘していた。

 このうち市場ではQE3を最も期待していると思われる。また、連銀スタッフもゴーサインを出しているかのように思われる。しかし、今回の議事要旨の内容をみると、FOMCの参加者の間からはその効果に疑問を呈し、さらにはそれによる弊害も意識した発言が出ていた。この参加者の発言内容を見る限り、かなり米経済もしくは金融システムに危機的な状況にでも陥らない限りは、QE3の可能性はさほど高くはないのではないかとも考えられる。

 今回は、経済が大幅に改善しない限り、という条件がついたが、会合後に発表された米雇用統計などでは改善が示されていることで、少なくともQE3の可能性はさほど高くはないのではなかろうか。加えて、年末に向けては財政の崖への懸念もあり、これに備えてむしろQE3という切り札は温存しておく可能性が高いと思われる。

 ただし、米大統領選挙も意識すると今回手を打たなければ、年末まで動きづらくなる。このため、QE3ではなく他の手段、特に「時間軸の強化」あたりが実施される可能性がありそうである。


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by nihonkokusai | 2012-08-24 09:30 | 中央銀行 | Comments(0)

ブンデスバンクがECBの国債買入に反対する理由

 ECBのトリシェ前総裁の後任には当初、ドイツ出身者が就任するであろうことが暗黙の了解のようになっており、ドイツ連邦銀行(ブンデスバンク)のウェーバー総裁(当時)が最有力視されていた。しかし、そのウェーバー総裁は、「個人的な理由」で2011年4月末にドイツ連銀総裁を辞任した。

 ウェーバー総裁は、ECB理事会において、インフレを加速し中央銀行の政治的独立性を損なうとして加盟国の国債買い入れに強硬に反対しており、それがドイツ連銀総裁を辞任し、つまりは次期ECB総裁候補から降りた要因となった。

 ドイツ連銀でウェーバー総裁のあとを継いだバイトマン総裁も、メルケル首相の経済顧問を退いて以降は、国債買い入れに強く反対するようになった。

 また、2011年9月には、ユルゲン・シュタルクECB専任理事が「個人的な事情」を理由に辞意を表明した。辞意の理由についてはユーロ圏諸国の国債買い入れに反対したものではないかとの観測が流れた。

 シュタルク氏はドイツの財務次官やドイツ連銀副総裁を経て、2006年6月からECB理事に就任した。ECBが2011年8月に国債買い入れを再開した際に、バイトマン総裁やシュタルク専務理事ら4人が、債券買い入れに反対したとも伝わった。

 シュタルク専任理事の辞意を受けて、ドイツ政府は後任にヨルグ・アスムセン財務次官を指名した。アスムセン氏は、ウェーバー前ドイツ連銀総裁の教え子だそうである。

 今年8月2日のECB政策理事会後のドラギ総裁の会見で、イタリアやスペイン国債の買い入れの準備を進めていることは表明したが、国債の買い支えの時期等や新たな政策の詳しい内容は明らかにされなかった。さらにドラギ総裁は、ドイツ連銀のバイトマン総裁一人が国債買入に反対したことを明らかにしている。

 そもそも何故これほどまでに、ドイツ連銀がECBによる国債買入に反対するのか。それは言うまでもなく、ライヒスバンク(ドイツ帝国銀行)の亡霊がつきまとっているためであろう。

 第一次世界大戦の敗戦により、ドイツは天文学的な賠償金を背負わされ、財政支出の切り札になったのが、国債を大量発行しライヒスバンクに買い取らせるという手法であった。その結果、ドイツはハイパーインフレに見舞われ、ライヒスバンクの後継者であるブンデスバンク(連邦銀行)は、インフレに対して極度に神経質となり、その要因となった中央銀行による国債買入に対して警戒感というか嫌悪感を強めたのは、この歴史が背景にある。

 7月26日にECBのドラギ総裁はロンドンでの講演で、(ソブリン債の)高利回りの問題はECBの責務の範囲内にあるとし、ECBは責務の範囲内で、ユーロ存続のために必要ないかなる措置をも取る用意があると表明した。またドラギ総裁は、数週間以内に、これまで行ってこなかった非伝統的な金融政策の追加の枠組みを準備するとの発言もあった。

 ドイツ週刊誌シュピーゲル(電子版)は19日、欧州中央銀行(ECB)がスペインなど債務危機に陥ったユーロ圏諸国の国債利回りに目標水準を設定し、この水準を下回るまで流通市場で国債を買い上げることを検討していると報じた。さらにイギリスのデーリー・テレグラフ紙もこのシュピーゲル誌の記事の内容を確認することができると報じている。

 これに対しECB報道官は、未決定の計画やまだ理事会で協議されていない特定の見解について報道することは誤解を招く恐れがあると発言した。これは、当然の発言である。さらにドイツ財務省の報道官も、そうした計画は認識していない、聞いたこともないと発言したそうである。

 ただし、火のないところに煙は立たぬ。今回のシュピーゲルやデーリー・テレグラフの報道は意図的なリークではなかったかとの観測すら出ていた。ドラギ総裁のこれまでの発言内容からは、9月6日の政策理事会でECBが利回りスプレッド目標を設定して国債を買い上げるという手段をとってくる可能性はまだ完全に否定もできない。

 しかし、単純な国債買入に対してもドイツ連銀は反対の意向を示し、過去にはドイツ連銀総裁や専任理事の辞任まで招いている。今回、もし報じられたような方式での国債買入が検討されるようなことになれば、ドイツ連銀は国債買入に対してはさらに強行に反対姿勢を示すことが考えられる。これにより再びECB内に大きな亀裂が生じる懸念がある。

 それでもイタリア出身のマリオ・ドラギ総裁は強行突破をはかってくるのかもしれない。その際には、ドイツ出身のアスムセン理事の対応も気になるが、アスムセン理事はインタビューで、ドイツ連銀がECBの国債購入への反対で孤立しているとの観測を否定していた。

 ECBはブンデスバンクの影響を強く受けていると言われていたが、その影響下からむしろ脱しようとしているかに思える。ブンデスバンクが神経質すぎるのか、それともドラギ総裁一派が足下の危機回避を優先するあまり、国債買入の弊害を甘く見過ぎているのか。その結果が出るのはまだ先のことである。

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by nihonkokusai | 2012-08-23 09:33 | 中央銀行 | Comments(0)

ECBによる一定利回りでの国債買い支えは劇薬

 ドイツ週刊誌シュピーゲル(電子版)は19日、欧州中央銀行(ECB)がスペインなど債務危機に陥ったユーロ圏諸国の国債利回りに目標水準を設定し、この水準を下回るまで流通市場で国債を買い上げることを検討していると報じた(時事通信)。

 8月2日のECB政策理事会で、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.75%に据え置いたが、記者会見でドラギ総裁は、利下げの可能性について討議したことも明らかにし、数週間以内に、非伝統的な金融政策の追加の枠組みを準備するとも発言、そしてイタリアやスペイン国債の買い入れの準備を進めていることも表明した。

 7月26日にECBのドラギ総裁はロンドンでの講演で、(ソブリン債の)高利回りの問題はECBの責務の範囲内にあるとし、ECBは責務の範囲内で、ユーロ存続のために必要な、いかなる措置をも取る用意があると表明していた。

 戦後、日米欧の中央銀行が自国の国債の利回りに上限を設け、それを越えてきた際に買入を行い利回り低下をはかるといった措置が講じられたケースはたぶんないはずである。

 シュピーゲル誌によると、今回ECB内で検討されているのは、各国の国債利回りとドイツ国債利回りスプレッドに目標を設定し、このスプレッドが目標に収まるようECBは随時、国債を買い上げるそうである。

 2011年11月にスイス中銀は、スイスフラン高を抑制するため、スイスフランの対ユーロレートの下限を1ユーロ1.20スイスフランに設定すると発表し、この水準を守るために無制限に外貨を購入する、つまりスイスフランを売る用意があると表明した。今回のECBが行うかもしれない政策は、このスイス中銀が行ったものの国債版となり、まさに国債市場への介入となる。

 これに対しECB報道官は、未決定の計画やまだ理事会で協議されていない特定の見解について報道することは誤解を招く恐れがあると発言し、この報道内容については否定した。さらにドイツ財務省の報道官も、そうした計画は認識していない、聞いたこともないと発言したそうである。

 たしかに中央銀行による国債市場への介入となれば、様々な弊害も生じよう。そもそも国債市場がそのターゲットを意識した動きとなってしまいかねず、正常な利回り水準を探る動きを阻害する可能性がある。ある意味、投機筋の動きを牽制する機能もあろうが、むしろ為替介入の際などの時のようにヘッジファンドなど投機筋の仕掛けの標的にされる可能性もある。1992年にジョージ・ソロス氏の標的にされたイングランド銀行の二の舞になりかねない。

 さらに中央銀行は無尽蔵に紙幣を発行できるため、国債の介入も可能との見方も非常にリスクがある。そもそもドイツ連銀(ブンデスバンク)がタカ派的なイメージを強めたのは、中銀の国債引受により、第一次大戦後にハイパーインフレを招いてしまった歴史の教訓による。

 8月2日にドラギECB総裁は会見で、ドイツ連銀のバイトマン総裁一人が国債買入に反対したことを明らかにしている。ECBが採決の内容を外部に公表するのは日銀やFRB、ECBなどと異なり、極めて異例であった。また、ドイツ連銀は最新の月報でもユーロ圏ソブリン債の買い入れには引き続き批判的だとの見方を示した

 8月2日の政策理事会で反対したのはバイトマン総裁だけで、過去に同様なことがあった際にドイツ連銀に組みしたルクセンブルグやオランダの中銀総裁、さらにドイツ出身のアスムセン理事(ドイツの前財務次官)もドイツ連銀側には付かなかった。ただし、アスムセン理事はその後のインタビューで、ドイツ連銀がECBの国債購入への反対で孤立しているとの観測を否定している。

 9月6日のECB政策理事会では、ドイツ連銀の反対を押し切って、して何らかのかたちでの国債買入を決定するものと予想される。ただし、今回報じられたような国債利回りスプレッドに目標を設定するようなことになると、ECBは無制限にリスクが高い国債が資産に積み上がり、状況次第ではインフレ圧力を強めさせかねない。ECBの信認への懸念が出れば、ユーロそのものが売られ欧州危機をさらに深刻化させかねない。これはかなりリスクの伴う手段であり、ここまで踏み込む必要はないであろう。

 もちろんあまり中途半端な政策では、投機筋の動きが牽制できないとの意識もあろうが、劇薬を使うならばその副作用も意識しなくてはいけない。ちなみに、スペインのデギンドス経済相は、スペインの借り換えコストを圧縮し、ユーロ圏の今後に関する懸念を払しょくするため、ECBが効果的で無制限の国債買い入れに踏み切るべきと発言していたようである(ロイター)。

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by nihonkokusai | 2012-08-21 10:09 | 中央銀行 | Comments(0)

ドラギ対バイトマン

 8月2日のECB政策理事会では、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.75%に据え置いた。これは予想通り。下限金利の中銀預金金利もゼロ%に、上限金利の限界貸出金利も1.50%に据え置いたが、これについては下限金利をデンマーク中銀のようにマイナスにするのではないかとの期待が一部にあったようである。

 記者会見でドラギ総裁は、利下げの可能性について討議したことも明らかにした。このため9月に主要政策金利を0.25%引き下げ0.5%にするとの見方が強まっている。ECBはこれまで政策金利を動かす際には、前回の会合でそれを示唆するようなことが多い。ちなみにマイナス金利については、「未知の領域だ」との答えがあったそうである。

 市場が期待していたのは、利回りが大きく上昇していたスペインやイタリアの国債への対策であった。7月26日にECBのドラギ総裁はロンドンでの講演で、(ソブリン債の)高利回りの問題はECBの責務の範囲内にあるとし、ECBは責務の範囲内で、ユーロ存続のために必要ないかなる措置をも取る用意があると表明していた。このため、何かしらの対策が講じられ発表されると期待されたが、結果として具体策の発表はなかった。

 ドラギ総裁の会見では、イタリアやスペイン国債の買い入れの準備を進めていることは表明したが、国債の買い支えの時期等や新たな政策の詳しい内容は明らかにされなかった。国債買入は9月以降となりそうで、さらに新たな債券買い入れに際しては、これまでのプログラムと異なり、厳格な条件が付くようである。短期債が主体で、債券が不胎化されるかどうかもはっきりしていない。

 このように債券買入について具体的な発表がなかったのは、ドイツ連銀(ブンデスバンク)のバイトマン総裁が国債買い入れプログラムに疑念を抱いていることが大きな要因になっている可能性がある。実際にドラギ総裁はバイトマン総裁一人が国債買入に反対したことを明らかにしている。ECBが採決の内容を外部に公表するのは日銀やFRB、ECBなどと異なり、極めて異例と言える。ただし、反対したのはバイトマン総裁だけで、過去に同様なことがあった際、ドイツ連銀に組みしたルクセンブルグやオランダの中銀総裁、さらにドイツ出身のアスムセン理事(ドイツの元財務次官)も今回ドイツ連銀側には付かなかったことは興味深い。

 ECBによるイタリアやスペイン国債の買い入れはいずれ実施される可能性はあるが、その内容はドイツ連銀の反対も影響し、これまでに比べて消極的なものになる可能性がある。またドラギ総裁は、数週間以内に、これまで行ってこなかった非伝統的な金融政策の追加の枠組みを準備するとの発言もあった。これはやや気になるところでもあるが、こちらもどれだけ踏み込んだ政策になるのかはわからない。

 今回のECBの対応については、事前のドラギ総裁発言を受けてもう少し踏み込んだ内容を市場では期待していた。このため、外為市場でのユーロや欧米の株式市場、そしてスペインやイタリア国債などへの失望売りを招き、ドラギ・ショックともいえるような動きとなった。

 マリオ・ドラギ総裁はイタリア出身ではあるが、ドイツ連銀の伝統を受け継いだ総裁とも見なされており、欧州危機に対しては積極的な対策を講じる必要性は認識していながらも、それに対して慎重なドイツ連銀のバイトマン総裁の考え方も十分理解しているとみられ、それが会見内容にもところどころ現れている。

 8月1日の米FOMCでは追加緩和については次回の可能性を示唆するような格好となり期待感は残したが、昨日コメントしたように実際に追加緩和が実施される可能性はむしろ低いようにも思われる。それよりもスペインやイタリア国債が再度売られてきたことでの、ECBへの対応の方が期待されたが、これも簡単には踏み込めず、何かと言えば中銀頼みとなっている状況で、その中央銀行による対応にも自ずと限界があることが見えてきつつある。

 外為市場ではECBは追加緩和をしなかったことで、ユーロが下落しているように、金利差などよりもリスクが大きな注目材料ともなっている。もしユーロに対しての円高を阻止しようとするならば、現状ではユーロへのリスクを後退させるか、円のリスクを増加させるしかない。もし為替介入により阻止しようとしても、市場の大きな流れを逆流させることはかなり困難である。

 同様にECBによる国債市場への介入も、スペインやイタリアのリスクそのものを後退させるわけではない。さらに、中銀のポートフォリオそのものへの警戒とともに、先々のインフレリスクも意識されよう。市場などではECBによる積極的な対策を望んでいようが、積極的に踏み出せないというのがECBの現状であり、それが今回市場で見透かされた格好となったものと思われる。

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by nihonkokusai | 2012-08-04 11:31 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBの次の手とそのタイミング

 7月31日から8月1日に開催したFOMCにおいて、政策金利であるフェデラルファンド金利の誘導目標を0~0.25%に据え置いた。QE3とか超過準備の付利の引き下げもなく、超低金利政策の継続期間についても2014年の後半までとの表現を据え置いた。  FOMC後に発表された声明文では、景気認識について、前回の「今年の景気は緩やかに拡大する」から「今年の前半を経過した時点で経済活動がやや減速している」と下方修正している。

 さらに声明文では、「必要な時に適切な追加の緩和策を行う」として、前回の「さらなる措置を適切な時に行う用意がある」との表現からやや踏み込んだ格好となった。

 これにより9月12日から13日にかけて開催されるFOMCでの追加緩和期待も強まったようである。果たして9月の追加緩和の可能性はどの程度あるのか、またその手段はどのようなものがあるのか。

 その手段としては、7月17日のバーナンキ議長の議会証言の内容からある程度推測が可能となる。

 議会証言でバーナンキ議長が示唆した追加緩和として、米国債やモーゲージ担保証券(MBS)などの追加債券買い入れ、つまりQE3。そして、連銀窓口貸出や超過準備金利引き下げ。さらに時間軸の強化、つまり超低金利政策の継続期間についていつまで続けるかの予想期間の先延ばしがある。

 このうち市場が最も期待しているのはQE3であろうが、この手段はFRBとしては最後の有力カードとして温存していたいものと考えられること以上に、いくつか実現を難しくさせる理由が存在する。

 そもそもQEの目的は長期金利を低下させ、住宅投資を活発化させるものであろうが、すでに米国長期金利は歴史的低位水準にあるとともに、住宅市場に関してはやや回復基調ともなっており、ここで無理にQEを行う必要性はない。アナウンスメント効果を意識しても、すでに国債市場にかなり踏み込んでしまっており、余程の事態とならぬ限りは、QE3については実現性はかなり低いのではないかと思われる。技術的な問題としてツイスト・オペを実施している中での、追加債券の買入も難しい面がある。

 次に連銀窓口貸出や超過準備金利引き下げであるが、7月5日に開催されたECB政策理事会で、預金ファシリティ金利をゼロ%としたことで、FRBが超過準備の付利引き下げを行うのではとの思惑もある。しかし、日銀は市場機能を維持させるため、付利を引き下げることはしないとみられるのと同様に、バーナンキ議長としても付利の引き下げ効果と付利を維持することでの市場機能維持を秤にかければ、付利の維持を選択するのではないかと思われる。

 このため、予想される緩和策としては9月のFOMCでは、経済物価情勢見通しも発表されることで超低金利政策の継続期間の予想をさらに引き延ばす、いわゆる時間軸強化あたりにしておくのではないかと考えられる。これもあくまでアナウンスメント効果でしかないが、市場からの追加緩和期待に応えなければならないとすれば、このあたりの選択となる。ただし、これにしてもあくまで約束ではなく予想である。しかも、先に延ばすほど、現在行っている緩和策の効果はないことを自ら明らかにしてしまいかねない。この選択肢もなかなか難しい面がある。

 11月には米国では大統領選挙が予定されていることで、現政権に有利とされるような政策はその直前には行いづらい。つまり、10月23日から24日にかけてのFOMCでは、余程のことがない限り政策変更が行いづらい。このため、早期に市場の期待に応えておくのであれば、9月のFOMCでしかない。ただ、9月のFOMCで時間軸強化あたりでお茶を濁すのであれば、むしろ何もせず先々の追加緩和の期待をつなぎ止めておくだけという手段もありうるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2012-08-03 09:52 | 中央銀行 | Comments(0)

今年上半期の日米欧の金融政策の動向

 2012年1月25日のFOMCでは、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導レンジを0-0.25%に据え置くことを決定し、「異例に低いFF誘導水準の維持が2014年後半まで続く事が正当化されるとFOMCは予想している」とした。つまり、事実上のゼロ金利政策を解除する時期を、これまで公表してきた来年の半ばから1年余り先延ばしし、少なくとも2014年の遅い時期まで続ける方針を示した。

 さらにFRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%としたのである。これは実質的なインフレ目標値の設定とも言えるものである。

 2月9日のイングランド銀行のMPCでは、資産買い取りプログラムの規模を500億ポンド拡大することを決めた。その際に購入対象となる償還期限を変更し、従来よりも3~7年物の購入を増やすことにした。

 2月9日のECB政策理事会では政策金利は据え置かれたが、今月の3年物資金供給オペで、7か国の中銀が受け入れ担保の基準を引き下げることを明らかにした。これら一連の動き、なかでもFRBによる物価目標の設定と時間軸の長期化は日銀にも大きな影響を与えた。

 2月14日の日銀の金融政策決定会合では、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率として「中長期的な物価安定の目途」を示すことを決定した。「中長期的な物価安定の目処」とは、消費者物価指数の前年比上昇率で2%以下のプラス領域にあるとある程度幅を持って示すこととした。その上で、「当面は1%を目途(Goal)」として、金融政策運営において目指す物価上昇率を明確にした。

 当面、消費氏や物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入措置により、強力に金融緩和を推進していく。ただし、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じないことを条件とするとした。

 また、資産買入等の基金をこれまでの55兆円程度から65兆円程度に10兆円増額することも決定した。この買入の対象は長期国債とするとしたが、日銀はデフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けて、日銀の政策姿勢をより明確化するとともに、金融緩和を一段と強化することを決定したのである。

 3月13日の日銀金融政策決定会合では、政策金利や資産買い入れ基金の規模の変更はなく現状維持としたが、成長基盤強化を支援するための資金供給(成長支援資金供給)を拡充することを決定した。

 2010年6月に日銀は成長支援資金供給を導入した。これは成長分野への投資促進に向け、民間金融機関に政策金利の0.1%で貸し出すものである。この貸付総額の残高上限は3兆円としていたが、新規貸付の受付期限を2014年3月末まで2年延長するとともに、貸付枠も3.5兆円に5千億円増額することとした。

 昨年6月に出資や動産・債権担保融資など、不動産担保や人的保証に依存しないABLと呼ばれる融資を対象に、5000億円を上限として、年0.1%の金利で原則2年とし1回の借り換えを可能とした最長4年の貸し付けを行う新しい枠組みを導入していたが、これについても、5000億円の貸付枠のもとで、新規貸付の受付期限を 2014年3月末まで2年延長することとした。

 さらに成長支援資金供給では対象としていない小口の投融資を対象に、新たに5000億円の貸付枠(小口特則)を導入することも決定した。対象となるのは、日本経済の成長に資すると認められる1件当たり100万円以上1000万円未満の投融資。対象先金融機関は成長支援資金供給の対象先金融機関。有担保貸し付けで、貸付期間は1年とし3回の借り換えを可能とする(最長4年)。貸付利率は貸付実行日における誘導目標金利、つまり現行では年0.1%となる。

 そして、成長に資する外貨建て投融資を対象に、日銀が保有する米ドル資金を使い、新たに1兆円の貸付枠(米ドル特則)を導入することも決定した。対象先金融機関は、成長支援資金供給の対象先金融機関のうち、ニューヨーク連邦準備銀行に米ドル口座を保有する先および同行に口座を保有する先へ米ドル決済を委託している金融機関。米ドル資金の有担保貸し付けとなり、貸付期間は1年、こちらも3回の借り換えを可能とする(最長4年)。貸付利率は市場金利となる。

 4月27日の金融政策決定会合では、資産買入基金の増額というかたちで追加緩和を決定した。資産買入等の基金を65兆円程度から70兆円程度に5兆円程度増額する。内訳としては、長期国債(残存1年以上3年以下)を10兆円程度増額し、期間6か月の固定金利式・共通担保供給オペは応札額が未達となるケースが発生しているため、これを5兆円程度減額する。そしてETFの買入を2千億円、J-REITの買入を百億円程度増額する。

 買入対象となる長期国債の残存期間は、多額の買入を円滑にすすめ、長め金利に効果的に働きかける観点から、これまでの「1年以上2年以下」から「1年以上3年以下」に延長する。社債についても、国債と同様に、買入対象の残存期間を延長する。

 基金の70兆円程度への増額は2013年6月末を目途に完了する予定。今年末までの基金の規模は65兆円とする。つまり、今年末までの国債買入は5兆円程度増額するが、期間6か月の固定金利式・共通担保供給オペの残高は今年末に15兆円規模であったものを10兆円に減額した。さらに2013年6月までに基金による国債の残高をあらたに5兆円積み増すことになった。

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by nihonkokusai | 2012-07-03 10:51 | 中央銀行 | Comments(1)
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