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カテゴリ:中央銀行( 281 )

米国は今頃になって物価目標を達成

 米商務省が29日に発表した5月の個人消費支出(PCE)価格指数は前年同月比で2.3%の上昇となり、2012年3月以来6年2か月ぶりの大幅な伸びとなった。

 そして米国の中央銀行であるFRBが物価の目安としている、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年同月2.0%の上昇となり、6年ぶりにFRBの物価目標である2%を達成した。

 2012年1月25日のFOMCの終了後に発表された「長期目標と政策戦略」という声明文において、FRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%とした。

 米商務省が発表している個人所得、個人消費支出(PCE)、PCEデフレーターは米国の経済指標の中にあって、注目されるもののひとつである。

 これらは米国の個人の所得と消費について調査した指標であるが、このうち個人所得とは、社会保険料を控除し実際に個人が受け取った所得となる。個人消費支出とは1か月間に実際に米国の個人が消費支出した金額について集計したものである。そして、名目個人消費支出(名目PCE)を実質個人消費支出(実質PCE)で割ったものが、個人消費支出(PCE)物価指数もしくはPCEデフレーターと呼ばれる。

 2012年1月にFRBが物価目標目安としてコアPCEデフレーターの2%という数字を置いた後、コアPCEデフレーターは同年3月に前年比2.0%と目標値をつけたが、その後は2%を下回る月が続き、2013年3月に前年比1.1%となった。そしてやっとここにきてFRBの物価の目安が達成されたということになる。

 目安とか目標という表現が混在しているが、これは日銀が掲げた物価目標とは異なり、おおよその目安といったもので、その分柔軟性があり、このため目標は達成していなくても、FRBは正常化を進めてきたと言えるのである。

 FRBは2014年にテーパリングを終了させて、2015年12月から利上げを開始した。FRBの金融政策の推移とコアPCEデフレーターの推移をみてもかならずしもリンクしていない。FRBが正常化路線を進めるほどに、世界的なリスクが後退し、景気は拡大、それによって物価も回復してきたとみた方が良いのではかろうか。

 これはFRBの金融政策の効果がない、と言っているわけではない。リーマン・ショックや欧州の信用リスクに対する金融市場のリスクを後退させるためには、FRBの大胆な緩和策がそれなりの効果があったことも確かである。

 ただし、2%という絶対的な物価目標を政府の意向により掲げさせられ、世界的なリスク後退局面期にも関わらず、異次元緩和を実施した中央銀行があったように思うが、こちらはいったい何をしたかったのであろうか。

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by nihonkokusai | 2018-07-03 09:44 | 中央銀行 | Comments(0)

欧州中央銀行(ECB)は年内の資産買入停止を決定、利上げについては慎重姿勢を示し市場に配慮

 6月14日に欧州中央銀行(ECB)は、金融政策を決める政策理事会において、資産を大量に買い入れる量的緩和政策を年内に終了することを決めた。

 ECBの債券買入額は今年1月からそれまでの月600億ユーロから300億ユーロに減額し、債券買入は少なくとも今年9月末まで継続するとしていた。300億ユーロの買入は9月まで続け、10月から12月にかけては月間の資産買入額を150億ユーロに減らし、買入そのものは12月で停止することになる。

 年内の資産買入については、フランス中銀総裁などが量的緩和策を年内に終了させる公算が大きいことが示唆されていた。ECBのプラート専務理事も14日のECB理事会において、資産買い入れ策を年内に終了させるかどうか討議すると述べていた。ただし、年末までまだ期間もあり、今回の会合でそれが正式に発表されるのかどうかが、ひとつの焦点となっていた。

 市場はECBによる年内の資産買入停止をかなり織り込んできていたこともあり、ECBはこのタイミングで決定したとみられる。さらに次のステップとなり利上げの時期についての示唆があるのかどうかも、注目点となっていた。

 これについてECBは、現在の超低金利が「少なくとも2019年夏までは現在の水準にとどまる」とした。つまり主要政策金利となるリファイナンス金利は、少なくとも来年の夏まではゼロ%のままとし、利上げはそれ以降になることを示した。

 ECBはFRBとは異なり、正常化に向けた動きは極めて慎重である。このため、量的緩和政策の年内終了という正常化に向けたステップによる市場へ影響を軽減させるため、次のステップとなる利上げに向けては期間を置くこととし慎重姿勢を示した。さらに資産保有額は維持することも発表しており、これは国債の償還分についてはその分は買い入れることとなる。こういった正常化に向けての慎重姿勢は、イタリアの政治リスクや物価が目標を達成していないことも理由となろうが、市場に配慮していることも確かである。


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by nihonkokusai | 2018-06-16 11:34 | 中央銀行 | Comments(0)

米国の物価動向とFRBの利上げペース

 米労働省が12日に発表した5月の米消費者物価指数は前月比0.2%上昇した。前年同月比では2.8%の上昇となりガソリンなどエネルギー価格の上昇が全体を押し上げた。また、全体から食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比で0.2%、前年同月比で2.2%の上昇となった(日経新聞電子版の記事より)。

 米消費者物価指数は総合では、2012年2月に前年比プラス2.9%となって以来の大きな上昇となった。今年に入ってからは1月が前年比プラス2.1%、2月が同2.2%、3月が同2.4%、4月が同2.5%、5月が同2.8%となっていた。ここにきての前年比が大きく上昇したのは、原油価格の上昇に依るところが大きいとみられる。原油価格の指標となっているWTIは昨年末の60ドル近辺から、5月には70ドル台を回復していた。

 また、全体から食品とエネルギーを除いたコア指数も今年に入ってからは1月が前年比プラス1.8%、2月が同1.8%、3月が同2.1%、4月が同2.1%、5月が同2.2%となっていた。3月移行は2%台が定着している。この指数はエネルギーを除いているものの、原油を使った製品等などによって原油価格の上昇の影響も受けているとみられる。また、米国の景気そのものの拡大も寄与しているものとみられる。

 FFRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置いているが、それは消費者物価指数ではなくPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%としている。PCEデフレータも3月と4月は前年比2.0%となっている。PCEコアデフレータは3月が前年比1.9%、4月が同1.8%と2%には届いていないが、2%近辺にある。

 これをみてもFRBとしてもほぼ物価は目標値に近い位置におり、物価が利上げペースを阻害することはないとみられ、昨日のFOMCでも政策金利を年1.50~1.75%から1.75~2.00%に引き上げた。今年はあと2回の利上げとの見通しとなった。ただし、物価の上昇は緩やかなものであり、FRBとしても物価上昇を抑制する意味での利上げではなく、正常化を進めるためのものである以上、ここからの利上げの回数にも限度はあるとみられる。


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by nihonkokusai | 2018-06-14 09:57 | 中央銀行 | Comments(0)

民間銀行の信用創造をなくすという、なかなか過激なスイスのソブリンマネー構想

 スイスでは今月10日に中央銀行にのみ通貨創造を認めるという「ソブリンマネー構想(ソブリンマネー・イニシアチブ)」の是非を問う国民投票を実施する。ソブリンマネー構想とは、民間銀行によって行われている通貨の信用創造の仕組みをなくし、資金量の調節を中央銀行(スイス国立銀行)だけに任せるものである。

 銀行は預金者から預かった現金を準備預金として一定額を残し、残りを貸付にまわす。この貸付金が相手の口座に入金され、その預金のうち準備預金を除いた額が、さらに貸付にまわされることで、銀行全体とすれば預金が膨らむ格好となる。これが信用創造と呼ばれる仕組みである。

 信用創造と呼ばれるように民間銀行の信用を元に、経済規模にあった資金量が調節でき、信用創造そのものが景気の拡大に寄与しているといえる。

 しかし、その銀行がリーマン・ショックなどを経て信用がおけないとして、その機能を最も信用のおける中央銀行に集中させようとするのが、ソブリンマネー構想といえる。これはスイスの経済学者、金融専門家、企業が起草したとされる。

 スイスでは10万人以上の署名があれば国民投票にかけられることで、このような突拍子もない構想も国民投票にかけられる。国民投票にかけられたといえば、2016年に国民投票で否決されたベーシックインカム制度もあった。

 今回のソブリンマネー構想については「金融危機の発生を抑える」という名目であってたとしても、もし実施されると民間銀行ばかりでなくスイス経済そのものにも大きな打撃を与えかねない。世論調査の結果では、反対が賛成を大きく上回っており、圧倒的な反対過半数で否決される見通しとされている。

 しかし、ソブリンマネー構想が国民投票にかけられることそのものに注意する必要がある。マネーの動きを規制するにしても、ある意味、資本主義を支えている仕組みのひとつを透明性向上のためとして外してしまうと、金融システムにはかなりの混乱を招きかねず、スイス国内ばかりでなく海外の金融市場にも影響を与えかねない。

 しかも中央銀行が資金をコントロールすれば、リスクは後退し、適切な物価がコントロールできるのかといえば、現在の日本の動向を見ても限界があることがわかる。日銀による長短金利操作付き量的・質的緩和によって、物価を思うとおりに目標に向けては動かせなかったことからも、中央銀行の資金調節が万能というわけではないことを示している。


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by nihonkokusai | 2018-06-10 11:53 | 中央銀行 | Comments(0)

6月の米国の利上げは確実視、今年はあと何回利上げをするのか

 6月1日に発表された5月の米雇用統計では、非農業雇用者数が前日比22.3万人増となり、市場予想の19万人増を上回った。失業率は3.8%とこちらも予想に反して2か月連続で低下し、2000年4月以来、18年ぶりの低水準となった。時間当たり賃金(全雇用者ベース)は前月比がプラス0.3%、前年同月比でもプラス2.7%とこちらも市場予想を上回った。

 米国と中国やEUなどとの貿易摩擦問題、米国側からの米朝首脳会談の中止のアナウンス、さらにはイタリアやスペインの政治リスクの強まりなどによって、日欧米の金融市場はリスク回避の動きを強めた。

 しかし、6月12日の米朝首脳会談は開催されることになり、イタリアとスペインは新政権が発足し政治の混乱はひとまず回避された。米国発の貿易摩擦問題については、8日から9日にかけてカナダで開催される主要7か国首脳会議(G7サミット)でも、主要議題となりそうだが、一時期ほどリスク要因として認識されなくなってきた。雇用統計などからも米国経済がしっかりしており、悲観的な見方が再び後退しつつあるようにもみえる。

 いずれにしても6月12~13日に開催されるFOMCでは、余程の事態が発生しない限りは、3月に続いて今年2回目の利上げが決定される可能性が高い。

 それでは今年はあと何回の利上げが予想されるのか。これまでのFOMCでの政策変更のパターンからは、議長会見が予定されているFOMCでの政策変更がほとんどであった。そうなれば、6月以降は7月、9月、11月、12月のFOMCのうちの、会見が予定されている9月と12月での利上げの可能性がある。問題は9月と12月のどちらかなのか、それとも両方で利上げが実施されるのか。

 今年は11月6日に米国の中間選挙が実施される。選挙と利上げを結びつけるのもどうかと思うものの、年3回となれば中間選挙前の9月よりも12月の可能性が高いか。ちなみに2017年は3月、6月と12月に利上げを行っており、会見のあるFOMCとしては9月がスキップされていた。

 年4回の利上げの可能性もないわけではないものの、物価が落ち着いていることもあり、利上げペースを速める必要性もそれほどないのではなかろうか。原油価格の動向も注目されるが、こちらもここにきて上昇トレンドが崩れつつあり、WTIが一気に100ドルをつけるような勢いとはなっていない。

 いまのところFRBの今年の利上げ予想としては、6月に続いて12月に実施されて年3回とみている。


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by nihonkokusai | 2018-06-06 07:57 | 中央銀行 | Comments(0)

欧州中央銀行(ECB)は利上げのタイミングを来年にも模索か

 ECBの政策委員会メンバーであるビルロワドガロー・フランス中銀総裁は、14日にパリでユーロ圏経済の1~3月の減速について、一時的なものとの見方を示し、依然としてECBがQEを年内に終了させる公算が大きいことを示唆した(ブルームバーグ)。

 ちなみにユーロ圏の1~3月期の成長率は0.4%と、前四半期の0.7%から大きく低下していた。これについて欧州委員会は問題視せず、通年では10年ぶりの高水準だった2017年とほぼ同程度になるだろうと予測している(ブルームバーグ)。

 ECBの債券買入額は今年1月からこれまでの月600億ユーロから300億ユーロに減額した。そして、債券買入は少なくとも今年9月末まで継続するとしている。ただし、必要に応じて9月以降も延長するとしている。そして、インフレ率の2%近辺という物価目標に向けた調整の進展を確認したところで買入は停止するとした。その後の利上げについては、純資産買い入れの停止後、「十分な期間」を置いてから着手するとしていた。

 ECBはまずガイダンスの修正と資産買入の停止方法を模索している。3月の政策理事会では、債券購入を巡るフォワードガイダンスから、規模拡大の文言を削除した。つまり、金融政策の方向性としては追加緩和を探るのではなく、緩和にブレーキを掛けて出口を模索する方向に転じたともいえる。

 そして、4月のECB理事会では主要政策金利の据え置きを決定、ガイダンスも維持した。ドラギ総裁は会見で、先行きの金融政策について議論しなかったと述べ、市場では資産買入の停止には時間を掛けるのではとの観測が強まった。

 いまのところECBが今年、何をしようとしているのか筋書きが読めない。1~3月期のユーロGDPが予想以上に減速していたことで、慎重なドラギ総裁がより慎重になるのではとの見方も出ていた。

 そんなところに中核国のフランスの中銀総裁から、「初回利上げの時期についてガイダンスを付け加えれば、相当期間というのは少なくとも数四半期という意味で、数年ではない。またインフレ見通しに左右される」と述べ、「債券購入の終わりは近づいている。9月であるか12月であるかは重大な問題ではない」と付け加えた(ブルームバーグ)。

 ECBとしては債券買入停止後にあらためて利上げを検討するというのがシナリオではあろうが、「十分な期間」というのは数年ではなく、来年中という可能性が出てきた。もちろんインフレ見通しに左右されると述べていることで不透明感は残るものの、今年12月あたりまでには債券の買入を停止させ、来年には利上げのタイミングを模索するというのがメインシナリオになりつつある。


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by nihonkokusai | 2018-05-21 14:28 | 中央銀行 | Comments(0)

トランプ大統領はFRB副議長にクラリダ氏を指名

 米国のトランプ大統領は16日、米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)の副議長に、米債券運用大手パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)の幹部でコロンビア大学の教授でもあるリチャード・クラリダ氏を指名すると明らかにした。トランプ大統領はこのほか、FRB理事にカンザス州銀行監督当局のミシェル・ボウマン氏を指名する(ロイターの記事より引用)。

 クラリダ氏はジョージ・W・ブッシュ元政権で財務次官補(経済政策担当)を務め、10年余りにわたりPIMCO勤務で金融市場についての知見を培ってきたとされる(ブルームバーグ)。

 クラリダ氏は昨年10月に退任したフィッシャー前副議長の後任となる。こちらは金融政策全般を担当する副議長ポストとなる。もうひとりの副議長は昨年10月に就任したクオールズ氏(銀行監督担当副議長)。

 ダドリー氏の後任として6月18日付でニューヨーク連銀の次期総裁に就任するサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁と共に、クラリダ氏はエコノミストという立場から、2月に議長に就任したパウエル氏を支えることになる。

 FRBの正副議長を含む理事職(定員7)は現在、4つが不在という事態となっている。パウエル議長とクオールズ副議長(金融規制担当)が就任し、理事としてはブレイナード理事だけとなっている。昨年11月に理事に指名された米カーネギーメロン大教授のグッドフレンド氏は、議会の承認がまだ得られていない。

 もちろんクラリダ氏とボウマン氏も就任には上院の承認が必要となる。共和党が多数を占める上院ではあるが、FRBに対する風当たりも強いようで、すんなりと承認されるのかどうかは不透明。

 ちなみに2018年にFOMCで投票権を持つほかのメンバーは、ニューヨーク連銀総裁に加え、メスター・クリーブランド連銀総裁、ボスティック・アトランタ連銀総裁、ウイリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁(6月18日からの次期総裁は未定、メアリー・デイリー氏との見方も)、バーキン・リッチモンド連銀総裁となる。


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by nihonkokusai | 2018-04-18 09:44 | 中央銀行 | Comments(0)

米国の利上げペースは継続か

 米国の連邦準備制度理事会(FRB)が7日に発表した地区連銀経済報告(ベージュブック)によると、1月から2月にかけての米国経済は「全地区で緩やかに拡大した」と総括し、物価も「全地区で上昇した」と前回1月の報告より判断を引き上げた(日経新聞電子版)。

 ベージュブックでは米経済そのもの、そして物価、さらには雇用についても「緩やかに」拡大していることが示された。FRBにとってはいまのところ理想的な景気拡大となっており、これを見る限り今年も年3回としている利上げペースは維持されるよう。今年最初の利上げとなるのは3月20、21日に開催されるFOMCとみられる。

 2月にFRB議長に就任したパウエル氏にとって議長として初めて望むFOMCとなることもあり、無難に利上げを決定したいところであるのではなかろうか。

 ただし、トランプ政権で経済政策の司令塔だった国家経済会議のトップ、コーン委員長が辞任すると発表されるなど、米国の経済の先行きについてはやや不透明感を強めさせる出来事も起きている。

 コーン委員長は、トランプ大統領が表明している鉄鋼製品などに高い関税を課す異例の輸入制限措置に反対していたとされ、過去にもいろいろと対立していたとされるが、関税を巡る見方の相違が辞任のきっかけとみられる。

 ただし、ホワイトハウスはメキシコやカナダ、その他同盟国を課税対象から外す可能性にも言及し、貿易相手国に一律に関税を課すという強硬な政策は回避されるではないかとの観測も出ている。トランプ大統領が今週中に関税の詳細を発表するようである。

 米国市場が大きな動揺を示すようなことがない限りは、3月21日のFOMCで追加利上げが決定される可能性は高いと思われる。しかし、米株が再度、下落基調を強めるようなことがあると利上げそのものが先送りされる可能性もありうるか。


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by nihonkokusai | 2018-03-09 10:01 | 中央銀行 | Comments(0)

試されるパウエルFRB議長による市場との対話力

 米国の連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル新議長は27日の議会証言で、「年3回の利上げシナリオを提示した昨年12月に比べ、景気見通しは強まっている」と指摘した。停滞していた物価も「(2%の)目標に向かって上昇すると確信を深めている」とした(日経新聞の記事より)。

 バウエル議長が就任したのは2月5日である。この日の米国株式市場でダウ平均は1175ドル安となり過去最大の下げ幅を記録した。パウエル議長就任を嫌気した売りではなかったものの、パウエル新議長にとっては多難な船出となった格好である。

 5日の米株の急落については、VIXなどの影響もあったとみられるが、ボラティリティの低い状態のままの上昇相場が長く続いた反動とみて良いかと思う。パウエル議長もこれについては特に問題はないとしている。しかし、米国株式市場の急落後の状況を見る限り、FRBの利上げの行方に関してこれまで以上に敏感になってきているようにも思える。

 27日のパウエル議長の議会証言の内容を受けて、ひとまず3月のFOMCでの利上げがほぼ確実視された。それに加えて、年4回の利上げについても可能性が強まったのとの見方も強くなりつつある。27日の米国市場では米10年債利回りは2.89%と前日の2.86%から上昇し、この長期金利の上昇もあって、昨日の米国株式市場は下落、ダウ平均は299ドル安、ナスダックは91ポイント安となった。また、28日には米10年債利回りは2.86%と前日の2.89%から低下したものの、ダウ平均は大幅続落となり380ドル安、ナスダックも57ポイント安となり、やや荒れ模様の展開となった。

 そして、これまで二回に一回となっていたFOMC後の議長会見について、日銀の金融政策決定会合後の総裁会見などと同様に、毎回行うのではとの観測が出ている。これまでのFRBの政策変更は、特に正常化を進める際には、議長会見のあるFOMCに限られていた。そうなると政策の変更は年4回に限られるとの見方もできてしまう。このため、FRBも毎回にすることで、少し政策変更タイミングの柔軟性を取りにきた可能性もある。毎回会見があったほうが、より市場との対話も進むメリットあると思われる。

 FRBはタカ派色が強まったとか、利上げについてはもしもの際の利下げのための糊代作りとの見方もある。しかし、2013年末からのテーパリング開始決定からの一連の動きは、正常化とも呼ばれるように、非常時の危機対応から脱することにあった。危機の後退にともない世界経済は拡大傾向となり、ファンダメンタルに即した金利環境の構築を目指しているともいえる。

 米国市場はこの新たな金利環境の行方を注目しはじめており、その結果として米長期金利は3%近くまで上昇してきている。パウエル議長は現在の環境が継続すれば、年末にむけて物価は上昇し2%の水準で安定するとしている。このため、ある程度の長期金利上昇は容認しているとみられ、長期金利を0.1%以下に無理矢理抑え込んでいる某中央銀行とは異なった姿勢とみられる。

 緩やかな金利上昇とそれを可能にさせる経済環境が続けば、株式市場も上昇基調が維持されるとみられ、これはドル高要因ともなる。しかし、トランプ政権がドル高を望んでいないことから、外為市場の動きが読みづらい状況となっている。利上げはかなり織り込んできてはいるものの、市場はやや神経質ともなっており、今後はパウエル議長による市場との対話力も試されるものと思われる。


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by nihonkokusai | 2018-03-01 09:29 | 中央銀行 | Comments(0)

ECBの次期総裁はドイツから?

 ユーログループ(ユーロ圏財務相会合)は19日に、今年の5月末に退任するコンスタンシオECB副総裁の後任としてスペインのデギンドス経済相を選定した。これにより2019年に任期満了となるドラギ総裁の後任には、ドイツなどユーロ圏北部出身者が選ばれる公算が高くなった。ECBは総裁も副総裁も任期は8年と長い。

 3月の欧州連合(EU)首脳会議で正式決定し、デギンドス氏はコンスタンシオ副総裁の後任として6月1日に就任する予定となっている。

 日経新聞によるとECBの副総裁ポストはアイルランド中銀総裁のレーン氏とデギンドス氏が争っていたが、形勢不利とみたアイルランドがレーン氏の立候補を取り消したことで、デギンドス氏に決まった。欧州議会では「レーン氏の方がふさわしい」という意見もあったが、ドイツなどに押し切られたそうである。レーン氏はECBのチーフエコノミスト(専務理事)に就くとの見方がある。

 日銀も総裁と副総裁のポストはある程度、バランスが考慮される。総裁は財務省出身者と日銀プロパーの交替制の時期もあったが、現在はそのようなパターンではなくなっている。しかし、総裁と副総裁のポストは財務省と日銀出身者が分け合い、そこに学者が加わるといったパターンが多い。

 ECBは過去に例のない国を跨いだ中央銀行だけに、こちらは国同士のパワーバランスが影響する。特に中核国と周辺国が対立している構図となっている。ドラギ総裁はイタリア出身、つまり周辺国から選出されているが、今回、副総裁に周辺国のスペインから選出されたということは、次期総裁は中核国、そのなかでもこれまでいろいろあって総裁を送り込めなかったドイツが、ドイツ連銀総裁のワイトマン氏を送り込もうとしているように思われる。

 中央銀行の金融政策を決めるメンバーにタカ派とかハト派と区別することにあまり意味はないと個人的には思っている。タカ派では緩和をしなければならないときは緩和策に賛成し、ハト派でも正常化が必要となればそれを積極的にすすめる。ハト派とされたイエレン前議長など良い例ともいえる。日銀の政策委員にいたっては、リフレ派かそうでないかとの区分けになっているかのようにも思われる。

 それはさておき、少なくともドイツ連銀総裁のワイトマン氏はタカ派とされているように、ドラギ総裁とは対極的な立場となっている。ワイトマン氏は積極的な金融緩和政策に反対し続けてきた。ドラギ総裁は正常化にも極めて慎重であるが、これがワイトマン氏に変わればこれまでの慎重さはなくなり、正常化を進めてくることも予想される。


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by nihonkokusai | 2018-02-22 09:42 | 中央銀行 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
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