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FRBが創立100周年

 2013年12月23日で米国連邦準備制度理事会は100周年を迎える。1895年にアメリカの金準備が大きく落ち込み、これ対して銀行シンジケート団を動かしてアメリカからの金流出を阻止したのがJ・P・モルガンであった。銅に対する大規模な投機の失敗が銀行取り付けを誘発し、それによって迎えた1907年の金融危機に際してもきわめて重要な働きをしていた。この危機に際してJ・P・モルガンが出した提案が1913年の連邦準備制度設立のきっかけとなったとされる。

 米国は連邦制を採用し、さらに東部と西部、北部と南部といった地域的な対立などがあったことで、中央銀行の設立には大きな抵抗があった。しかし、19世紀から20世紀にかけて幾度も恐慌が発生し、銀行の倒産や企業の倒産などにより深刻な不況が生じた。このため「金融システムの安定化」が求められ、中央銀行の設立の機運が高まったのである。

 1913年に12の地区連邦準備銀行と、これを監督する連邦準備委員会がワシントンに設立された。中央銀行の設立には引き続き反対意見も多かったことから、全米の12地区に地区連邦準備銀行を設立し、それぞれの地区で銀行券である連邦準備券が発行され、各行ごとに公定歩合が設定されることになった。

 この大きな節目の年に、FRBも金融政策や人事面において、マイナーチェンジを迎える。12月17日、18日FOMCにおいて、テーパリングと呼ばれるFRBの量的緩和策の縮小開始が決定される可能性が出てきている。

 さらに人事面では、来年1月末でバーナンキ議長の退任が決まっており、後任の議長にはイエレン副議長が就任する見込みとなっている。そのイエレン副議長の最有力候補にスタンレー・フィッシャー氏の名前が挙がっている。フィッシャー氏は、現代を代表するマクロ経済学者のひとりであり、バーナンキFRB議長やドラギECB総裁は同氏の教えを受けている。米国とイスラエルの両国籍を持ち、大統領はすでに副議長指名を提案し、フィッシャー氏は受け入れたとされている。

 フィッシャー氏がもしFRBの副議長となれば、その影響力は無視できなくなるのではなかろうか。議長となるイエレン氏はハト派の代表格ともいえるが、金融政策運営については、みずからの主張よりもメンバーの意向をより強く反映させてくるとみられる。そのなかでもフィッシャー氏の存在感は強くなることが予想される。フィッシャー氏は大学教授だけでなく、世界銀行チーフエコノミスト、IMF筆頭副専務理事、民間銀行、さらに今年6月まではイスラエル銀行の総裁だったのである。

 FRBはバーナンキ体制から、実質的にイエレン議長とフィッシャー副議長のツートップ体制に移行する可能性もあり、来年2月からの政策運営はたいへん興味深いものとなる。非常時から平時の対応に移行するにあたり、出口に向けてどのような政策手段を講じてくるのか。テーパリング開始のあとは、フォワード・ガイダンスを政策手段の柱にするとみられていたが、バーナンキ路線をそのまま引き継ぐとも考えづらい。100周年を迎えたFRBは来年2月から人心も一新し、より現実的な金融政策に移行してくる可能性がある。

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by nihonkokusai | 2013-12-16 09:46 | Comments(0)

ECBは立ち止まって様子見のタイミングか

 12月6日の日経電子版の清水功哉編集委員の記事「ECB緩和「予告」した黒田総裁 QQE2もサプライズ型に?」は次のような書き出しで始まっていた。

 『「私は欧州中央銀行(ECB)が今回動くような気がしますが……」。市場を驚かせた11月7日のECBによる利下げの前に、そんな言葉を発していた人物が日銀内にいた。誰か? 実は黒田東彦総裁だったというのが関係者の話だ。』

 「兵は拙速なるを聞くも、いまだ巧久なるを睹ざるなり」との孫子の言葉があるが、金融政策において、特に緩和についてはサプライズ効果も意識して行う方が効果的である。黒田日銀総裁も、日銀プロパーではない黒田氏が総裁就任から短期間で追加緩和策をまとめ上げ、他の委員の同意を得るのは難しいとの市場の見方を覆し、3月20日の就任から2週間程度で異次元緩和策を決定した。これはサプライズ効果も多分に意識したものとみられる。11月7日のECB理事会で決定した追加緩和もタイミングとしては面白いと黒田総裁は意識していたのではなかろうか。

 私の個人的な見方としては、ECBは残り少ないカードを使うタイミングを計っていたと思う。それが11月の追加緩和となった。ただし、できればそれで打ち止めとしたいとの意向もあったのではなかろうか。

 11月のサプライズ緩和により、市場ではマイナス金利を含めた追加緩和への期待も出ていた。しかし、12月5日のドラギ総裁の会見内容などから見て、早期の追加緩和に対して過剰な期待は抱かないほうが良いのではないかと思われる。

 12月5日のECB政策理事会後の記者会見で、ドラギ総裁はECBにはユーロ圏経済を支えるために新たな政策措置を導入する用意があると述べたものの、どの政策措置を利用するかについては具体的に決めていないと発言した(ロイター)。

 一部の市場参加者が期待している追加長期流動性供給オペ(LTRO)についても、供給される資金が景気支援に使われると確信できるまで実施しないとの考えを示した。さらに、この日の理事会では特定の政策措置に関する討議は行われなかったものの、銀行の融資拡大を促すため、預金金利をマイナスに引き下げる案について「簡単に議論」したことを明らかにした。マイナス金利については毎回、簡単な議論は行われていると思うが、ある意味、非常時の対策ともなるマイナス金利やLTROを実施しなければならないほどの危機的状況にはない点にも注意すべきである。

 今回のECBの金融政策の据え置きについては、11月のユーロ圏消費者物価指数速報値が前年比0.9%上昇と10月の0.7%の上昇から伸びが加速し、10月のユーロ圏失業率が低下したことで市場では金利据え置くとの見方が多かった。ただし、金融政策は足下の経済指標で毎度のように変更するようなものではない。もちろん、リーマン・ショックや欧州の信用不安のような金融危機時に、何かの要因で金融市場が動揺を示したような場合には、市場安定の目的で金融政策を変更せざるを得ないような場面もあった。それはあくまで非常時の対応であり、現在の市場をみても危機的状況からはすでに脱しており、金融政策も平時の対応に戻りつつある。

 12月のECB理事会では、追加緩和の要請は誰一人として提案が無かったそうである。今後の追加緩和については含みを持たせており、可能性がないとは言えない。もしかするとあらたなドラギ・マジックを見せるかもしれない。しかし、すでに1年前とは金融政策を取り巻く環境は大きく変化している。FRBもテーパリング開始のタイミングを伺っている。イングランド銀行も軸足を出口に向け始めた。欧州はまだかなり問題を抱えているのも事実であり、出口に向けての方向転換は時期尚早ではあろうが、そろそろ立ち止まって様子をみるタイミングに入っているのではないかと思われるのである。

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by nihonkokusai | 2013-12-08 09:02 | Comments(0)

投資家の国債市場に対する見方

 11月25日に財務省で開催された国債投資家懇談会(第52回)の議事要旨が公表された。国債投資家懇談会とは、「国債の消化を一層確実かつ円滑なものとするとともに、国債市場の整備を進めていくため、国債の投資家と直接かつ継続的に意見交換を行う」(財務省)会合である。こちらは国債市場特別参加者制度に基づく国債市場特別参加者会合とは異なり、特に一定の優遇措置といった意味合いではないが、国債を購入している投資家と国債を発行している財務省が意見交換をすることも重要であり、このような場が設けられている。

 ちなみに国債市場特別参加者会合と国債投資家懇談会の参加者は、何がどう違うのか。債券市場関係者以外の方には、わかりづらいかもしれない。国債市場特別参加者とは、そのメンバー表を見てわかるように証券会社とメガバンクである。このメンバーは業者と呼ばれ、国債を発行する際には、発行体の財務省と国債を保有する投資家の間を取り持つ存在となる。簡単に言えば、生産者と消費者を結ぶ流通業者と同様である。投資家が国債を売買する際もこの業者が頼りとなる。国債の「相場の動向」については業者が専門家となるが、最終的には需給が大きく影響することで、投資家の動きが直接、市場に影響を及ぼすことになる。業者と投資家は発行体の財務省とともに、国債市場を形成している大きな存在となっている。もちろん別途、日銀のような存在もあるが。

 その投資家が現在の国債市場をどのように見ているのか。最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについての意見では、「最近金融機関の貸出が多少伸びてはいるが、民間の資金ニーズは本格化していない」との意見が複数出ていた「製造ラインを増やす等の設備投資につながるまでには至っておらず、金融機関としては資金需要が見出せない状況である」との意見もある。このため銀行などは債券で運用せざるを得ない状況が継続している。ただし、金利水準が低いため積極的に購入する状況ではないとの意見も出ていた。

 「債券運用にならざるを得ないが、積極的に投資できる環境ではないため、余資を日銀当座預金に積み上げ金利上昇を待つ状況となっている」との声もあった。金融機関は日銀の異次元緩和に積極的に協力しているわけではなく、当座預金口座に資金を置いておかざるを得ない状況にあるとも言える。ただし、このような意見もあった。

 「当社は、ALMの観点から超長期債の購入ニーズは潜在的にあるものの、資金コストを下回るような金利水準であり、流動性も低いことから投資を見送っている。そのような中、日銀当座預金ではなく、為替ヘッジ付き外債への投資を行っているほか、金利上昇時には再度長期化を行えるよう年限の短い国債を購入しているところである。」

 金利水準の低さや流動性の低下も指摘されている。金利水準が上昇すれば購入したいという声も出ており、その分、押し目買いニーズも強い。ただし、どのような理由で金利が上昇するかによって、その押し目買いスタンスにも変化が生じることが予想される。

 「きっかけは分からないものの、現在の相場は、今後大きく反転する可能性も十分考えられることから、引き続き警戒感を持っている。」

 これは投資家のみならず業者も含めて、その警戒心は強いと思われる。リーマン・ショックや欧州の信用不安により、世界的な金融経済危機が生じていた際には、リスク回避から国債に資金を振り向けざるを得なかったが、その世界的なリスクは大きく後退してきた。株価も上昇しており、円安の進行など外部環境はかなり変化してきている。

 ただし、「日銀がインフレ率2%を達成するのはまだ先であり、金利が上昇するまでには時間がかかるだろう」との見方もあり、金利は低水準を維持している。

 「金利が非常に低い今こそ、財政の健全化を進めないと、長期的な意味で我が国の経済・国民生活を維持することは非常に困難」

 投資家もこのあたりに目を配っていることにも注意しておく必要がある。

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by nihonkokusai | 2013-11-29 09:37 | Comments(0)

日銀が出口に向かう時

 日本の金融市場の行く末を見るとき、日銀の動きが非常に重要視されるであろうことは間違いない。昨年のアベノミクスの登場をきっかけとした円高調整と株高については、日銀の大胆な金融政策が多少なりとも影響したことも確かである。ただし、ここにきて米国株式市場が過去最高値を更新しているのは、アベノミクスや日銀の異次元緩和に依るものではない以上、東京株式市場の上昇要因は海外情勢の変化にかなり依存していることも確かであろう。

 日銀の黒田東彦総裁は11月22日の衆院財務金融委員会で、FRBが議論している量的金融緩和の縮小などの出口戦略について「現時点で具体的なイメージをもって話すのは適当でないが、私どもとしても将来十分参考にさせてもらえる」との考えを示した(日経新聞)。

 FRBは早ければ12月、場合によると1月のFOMCで量的緩和の縮小開始を決定してくることが予想している。雇用等の数字次第ではあるが、バーナンキ議長の任期中にとにかく出口に向けた道筋をつけてこよう。いったん縮小が開始されると、意外に早い段階で国債やMBSの新規の買い付け額をゼロに落としてくることが予想される。これにより、まず第一段階が終了する。次にFRBは保有する国債やMBSの残高縮小に動くであろう。ただし、こちらはゼロまで落とす必要はない。市場、特に米国債市場に悪影響を与えかねない国債の「売りオペ」についても慎重になると予想され、償還された国債を乗り換えないなどで自然に残高を落としてくるのが、第二段階となろう。最終的な利上げという第三段階までにはインフレ等の懸念が出ない限り、かなり時間を使ってくることが予想され、その分、緩和効果を発揮させて市場のマインドに働きかけようとしてくるのではなかろうか。

 それに対して日銀の出口政策はどうするのか。日銀が出口に向けて姿勢を変えることそのものがかなり見通しづらい。今後は日銀が国債を大量に購入することで物価が上がるわけではないことが、徐々に理解されはじめてこよう。それがより明らかとなりそうなのが、来年4月の異次元緩和一周年の中間報告ともなる展望レポートの見通しか。

 ただし、物価については4月からの消費増税の影響を受ける。このため物価そのものは上昇していることが予想され、異次元緩和効果と消費増税の影響をはっきり峻別ができなくなることも予想される。消費増税による景気への悪影響を意識して、日銀は追加緩和を行ってくるとの予想も強いが、そもそも異次元緩和が物価上昇には寄与しないことがはっきりすれば、さらなる異次元緩和の意味がなくなる。また、欧米の中央銀行とベクトルが異なることの影響も気になる。このあたり、なかなか興味深い事例ともなりうる。

 いずれにしても日銀が出口を模索するのはかなり先と思うが、来年4月からは、このあたりの空気が変化してくることも予想される。大胆な国債買入が物価に直接影響を与えないとなれば、それを削減することによる「物価や景気への影響」はかなり限定的となろう。それよりも、債券市場への影響や財政との兼ね合いの方が意識されるかもしれない。こちらも元に戻るだけとなれば、国内を中心に国債の買い手はいる以上、むしろ債券市場からクジラがいなくなる分、流動性も以前のように回復してくることも考えられる。

 ただしこれは物価の上昇等を背景に長期金利が2%を大きく超えるようなことはなく、長期金利の低位安定が継続していたのならばという前提条件が付く。実は日銀の目指す消費者物価指数(除く生鮮)の消費増税の影響を差し引いた2%という目標が本当に達成されて、それにより長期金利が2%を超えて上昇してきたときこそ、日銀の出口政策をかなり困難にさせることが予想されるのである。

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by nihonkokusai | 2013-11-26 09:58 | Comments(3)

注目度が低い日銀金融政策決定会合だが

 11月20日から21日にかけて日銀の金融政策決定会合が開催される。11月7日のECB政策理事会ではタイミングとして意外感のあった利下げを実施した。13日にイングランド銀行のインフレレポートが発表され、イングランド銀行のカーニー総裁は、必要なら2015年の選挙前に金利を引き上げる用意があると言明した。11月14日のイエレンFRB副議長の議会証言では、米国経済や雇用情勢に対して慎重な姿勢を示し、テーパリング開始時期が先送りとの認識が強まった。

 このように欧米の中央銀行の金融政策に注目が集まるなか、日銀の金融政策の行方については、さほど関心が高まっていない。為替市場や株式市場の一部では、毎回の決定会合で追加緩和への期待も出ているようだが、まさに期待と言うより願望に近い。現状、日銀が動く気配はない。まさに動かざる事、日銀の如しである。

 日銀は4月4日に異次元緩和を決定した。その規模は確かに大胆なものであり、アベノミクスの最初の矢が放たれた。その後、黒田総裁は「戦力の逐次投入をせず、現時点で必要な政策をすべて講じた」とコメントしていたように、かつての日銀が行っていたような微調整のようなことは行わないと宣言している。

 アベノミクスの登場から1年が経過したが、日銀の異次元緩和というバズーカ砲を打つ前に、安倍首相のリフレ政策宣言をきっかけに急速な円高調整が進み、東京株式市場も上昇した。円安の影響もあり、景気は回復基調となり、日銀が目標としている物価についても、0.7~0.8%近辺まで上昇してきている。この結果を見ても、日銀が特に金融政策を変更する必要性は見当たらない。

 今回の金融政策決定会合でも金融政策については現状維持が決定されよう。しかし、このような環境が今後も続くわけではない。うまく行っている間は特に問題は表面化せずとも、日銀が動かざるを得ない状況に追い込まれたときが問題となる。

 歴史上まれにみる大胆な金融緩和政策を行ってきた日米欧の中央銀行は、ここにきて足並みが乱れてきている。その背景には非伝統的手段を講じなければならなかった世界的なリスクの後退がある。イングランド銀行はいち早く向きを変え、FRBも向きを変えるタイミングを計っている。ECBはまだ慎重ながら、アイルランドは金融支援を脱却すると宣言し、14日にはスペインの支援脱却も決まった。足下景気の動向は気になるが、少なくともユーロ圏の信用不安による非常事態宣言はそろそろ解除されてもおかしくはない。

 このような状況下、日銀だけが非常時の対応を倍返しで行っている状況にある。すでに舵は取り払われて、目的地(コアCPI2%)に到達するまでは、突っ走るしかない。必要となれば追加緩和を行うとしているが、残念ながら異次元の緩和は2度はできない。

 まだ先の話ではあるが、来年4月には消費増税がスタートするとともに、異次元緩和から1年が経過し、中間報告も必要となる。すでにアベノミクスの仕掛け人の一人、浜田宏一・内閣官房参与(イエール大学名誉教授)は15日の都内の講演で2%の物価目標が達成できなくとも景気への好影響が確認できればよいとし、岩田規久男・日銀副総裁が物価目標未達を理由に辞任する必要はないと指摘した。2%という錦の御旗を下ろしてもよいとの指摘である。しかし、そう簡単に下ろせるものでもないはずである。

 日銀は現在、何もしなくても良く、帆を上げていれば風が押してくれている。その風向きが変わったり、さらに目標が遠ざかったときに何をしてくるのか、何ができるのか。現在は注目度が低下しつつある日銀の決定会合ではあるが、実はかなりの不透明な材料を抱えていることもまた事実であり、それは時が経つにつれてさらなる矛盾を抱え込み、政策変更をより困難にさせる可能性がある。



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by nihonkokusai | 2013-11-20 09:59 | Comments(0)

アベノミクスがスタートして1年

 アベノミクスがスタートしたのは、衆院解散が正式に表明された2012年11月14日とされている。当時の野田首相は11月14日に国会で行われた党首討論で安倍晋三自民党総裁に対し、当国会中の議員定数削減法案可決に協力することを確約し、16日に衆議院解散を行うと明言した。解散が正式に表明されたことで、安倍首相誕生への期待から円安・株高の動きが強まる。この急激な円高調整とそれによる株式市場の上昇は、新たな政権による金融経済対策への期待が背景にあり、その新たな金融経済政策がいつしかアベノミクスと呼ばれるようになった。(拙著「聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓」より)

 アベノミクスはどのようにして生まれたのかを覚えているであろうか。11月16日の衆院解散の翌11月17日における熊本での街頭演説において安倍自民党総裁は、衆院選後に政権を獲得した場合、金融緩和を強化するための日銀法改正を検討する考えを重ねて表明した上に、建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう、新しいマネーが強制的に市場に出ていくと述べた。さらに同日の山口市での講演では、安倍総裁は、輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう、と発言したのである。

 政府と日本銀行が政策協調してデフレ脱却をして円高を是正し、経済を成長させていく新しい成長戦略を前に推し進めて行かなければいけません、との発言もあったが、要するにデフレの原因は金融政策にあるとして、その対策をまず日銀に押しつけたのである。衆院が解散されたとなれば、民主党への支持率の低下により、安倍自民党総裁が次期首相となる可能性が極めて高くなる。そのタイミングで安倍氏から、財政ファイナンスを意識させるような発言が飛びだした。

 これを受けて急速な円高調整が始まり、その円安が株高を招き、スパイラル的な円安株高を演出した。そこにはジョージ・ソロスなど有力ヘッジファンドがかなりの金額による円売り日本株買いを仕掛けたことも影響した。この円安株高がいわゆるアベノミクスという言葉を生み出した。のちに安倍首相はあらたな金融経済政策について「三本の矢」という表現を使った。一本目の矢は日銀が大胆な金融緩和をする。二本目は、政府が財政政策で実需を生み出す。三本目は、TPPや大胆な規制改革などを含む成長戦略で、成長を持続的な軌道に乗せることである。しかし、財政政策も補正予算を主体とした公共投資の一時的な拡大に過ぎず、成長戦略もTPPはさておき、特に目新しいものではない。アベノミクスとは、結局、第一の柱である金融政策に負うところが大きい。

 日銀法は結局、改正されなかったが、これは日銀総裁・副総裁人事でアベノミクスを実現してくれるであろう自分を選んだことによる。黒田総裁は安倍首相の意思をほぼ100%反映した異次元緩和策を就任からさほど時をおかず、4月4日の最初の金融政策決定会合で決定したのである。

 問題はこの異次元緩和策がどのような効果があり、どのような副作用をもたらすのかという点にある。効果といっても、円安の動きはそれまでにいったんピークアウトし、日銀の大胆な緩和があらためて円安を演出したようには見えない。株式市場も同様ではあったが、米国の株式市場が過去最高値を更新するなどしたことで、底堅い動きとなった。しかし、実は円安も日本の株高もアベノミクスや日銀の異次元緩和が要因かといえばそうではない。ヘッジファンドの仕掛けのきっかけ等にはなったが、その背景には円が売られやすく、株が買われやすい環境にあったためである。それは言うまでもなく欧州の信用リスクの後退があった。

 日銀の異次元緩和はリフレ政策ともいえる。2年間で物価目標2%を達成するとしたが、そのために行ったのは年間発行額の7割も国債を買い入れるという手段である。果たしてゼロ金利という状況のなかで、大胆に国債を買い入れてどのようにして物価に働きかけるのか。その説明が皆目ほからない。期待や気合いでなんとかしようとしているらしいが、そんなもので物価が上がるとは到底思えない。しかし、日銀が異常に国債を買い入れていると言う事実は残る。これが財政ファイナンスではないと言っても、状況が変わればそのように写る懸念もある。だから黒田総裁は消費増税を予定通り行うことを要求していた。しかし、消費増税だけではなく、このままリフレ的な政策が続けばいずれ財政規律に対して懸念が強まることも予想される。それを見越してか、長期国債先物の海外投資家の売買シェアが5割を超えてきている。

 アベノミクスが1年経過した。国債への信用は何とか維持され、長期金利は0.6%近辺と低位で維持されている。この金利が低位で維持されていることこそ、物価は上がらないと市場参加者が予想していることを示している。しかし、物価が上がらずとも日本国の信用低下でも、長期金利は上昇する。また、リフレ派の言うとおりに仮に物価が本当に2%に向けて上昇してくれば、長期金利も上昇する。現在の長期金利の低位安定は結果としてそうなってはいるが、そうしようとしているわけではない。この妙な均衡が崩れるとアベノミクスのリスクが一気に顕在化しうる。



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by nihonkokusai | 2013-11-17 11:54 | Comments(0)

日米の長期金利の動きが異なる理由

 日本の長期金利は7月3日に0.9%をつけたあたりから低下傾向となり、10月23日に0.6%をつけてきた。この日本の長期金利低下の背景は何なのか。

 最も説明しやすいものとして、FRBのテーパリング開始を巡る思惑がある。米国の財政問題を巡る与野党の駆け引きにより生じた米政府の一部機関の閉鎖がひとつの決定打となり、年内の開始観測は急速に後退した。米連邦債務の引き上げ問題を巡るデフォルトへの懸念なども混乱を招く結果となった。それらが米国の長期金利の低下要因となっていた。低下要因というよりもテーパリングを織り込む格好で米長期金利が3%まで上昇していたことで、その反動が起きた。

 この米国の長期金利の低下が、日本の長期金利の低下を招いたとの見方が説明しやすいかもしれないが、日米の長期金利の5月あたりからの推移を見ると、その説明にはやや無理がある。

 日本の長期金利は5月2日に0.560%まで低下していた。ところが5月10日にドル円が100円突破したことで、債券先物はサーキット・ブレーカーが発動し、長期金利は0.7%台に乗せた。13日も先物は連日のサーキット・ブレーカー発動となり、長期金利は0.8%台乗せに。15日に長期金利は0.920%に上昇していた。このあたりの動きは米債に連動していたというよりも、国債の流動性そのものが低下し、それが嫌気されて長期金利が一気に跳ね上がっていたと言える。先物のサーキット・ブレーカーの発動がそれを物語っている。

 その後の日本の長期金利は0.8%台主体に方向感に乏しい動きとなっていたが、7月2日に長期金利が0.895%と0.9%近くをつけてから、低下傾向が続き10月23日に0.6%近辺まで低下したのである。

 この間の米国の長期金利の推移を見ると、5月に1.6%あたりにあった米長期金利はFRBのテーパリング開始が意識され、9月5日に3%をつけたところがピークとなった。そこからは低下傾向となったものの、22日現在の米長期金利はまだ2.5%近辺にいる。日本の長期金利は5月の水準近くまで低下していても、米長期金利は5月の1.6%近辺からはまだ遠い位置にいる。米国の長期金利の低下も要因のひとつではあろうが、日米の長期金利の推移を見る限り、別の要因がありそうである。

 それではこの日本の長期金利の低下はどのように説明すべきなのか。都銀による国債の売り越しは続いているが、その売越額はここにきて減少してきており、9月は超長期債を買い越すなどのスタンスの変化もみえる。都銀以外の銀行や、信託銀行を通じた年金、さらに生保などの買いが都銀の売り越し以上にカバーしている。貸出以上に預金が伸び、生保も引き続き国債運用を積極化するなど、この長期金利の低下の要因には投資家の需要が存在する。もちろん国債の需給には日銀の国債買入も大きく影響していることも確かである。

 さらに注意すべきは5月の日本の長期金利の上昇が、国債の流動性が低下していたことが背景にあったことである。6月の都銀の国債の売買高(除く短期)は3兆5165億円と2004年4月以降では最低となっていたが、ここにきて徐々に回復してきており、9月は10兆4974億円と4月以来の10兆円台となった。都銀の売買高の回復は、債券の流動性が徐々に回復しつつあることを物語っている。これも日本の長期金利の低下に少なからず影響を与えていると思われる。日銀の異次元緩和後の市場の混乱もあり、慎重になっていた投資家も徐々に動きを活発化してきたことも予想される。

 さらに物価についても、7月のコアCPIは前年比0.8%と上昇してきているが、今後はこの上昇ピッチは鈍ることが予想されている。円安一服、ここにきての原油価格の低下なども影響し、日銀が掲げた物価目標の達成は実現が難しいとの認識も日本の長期金利の低下の背景にあるのではなかろうか。



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by nihonkokusai | 2013-10-24 09:22 | Comments(0)

黒田日銀総裁の消費増税へのコメント

 内閣府が8月12日発表した2013年4~6月期実質国内総生産(GDP)は前期比プラス0.6%、年率でプラス2.6%となった。1~3月の年率プラス3.8%から減速し、前期比プラス3%台半ばあたりかとの事前予想も下回ったが、2期連続で2%以上の成長となった。名目GDPは0.7%(年率2.9%)となり、実質を上回った。

 成長に寄与したのは、前期と同様に民間最終消費支出で、前期比プラス0.8%。民間住宅は実質マイナス0.2%。そして民間企業設備は、実質マイナス0.1%と前期のマイナス0.2%からは回復したが、減少は続いている。

 これを受けて甘利明経済財政・再生相は、消費税率の引き上げに関して「判断する材料の一つとして、引き続きいい数字が出てきた」との認識を示した(ロイター)。注目すべきはGDP数値そのものよりも、これを受けての消費増税の判断となる。

 8月8日の金融政策決定会合後の日銀総裁会見でも、質問はこの消費税の引き上げに関して集中していた。

 「一般論として申し上げれば、大幅な財政赤字が続き、既に政府債務残高が極めて高い水準になっていることを踏まえると、政府において、今後の財政健全化に向けた道筋を明確にし、財政構造改革を進めていくことが極めて重要であると思っています。日本銀行としては、その着実な推進を強く期待しています。「中期財政計画」も示されたので、これに沿って、着実に財政健全化が推進されることを期待しています。」

 「日本銀行」として財政健全化推進を強く期待と表明している。さらに「脱デフレと消費税増税は両立するか」という質問について、黒田総裁は「私は、両立すると思っています。」と答えている。これがヘッドラインニュースとして流れていた。

 もし仮に脱デフレにリフレ政策が必要だとしても、財政ファイナンスと認識されないためには、政府が財政規律を厳守する姿勢を示す必要がある。この場合、両立するかどうかという以前に、脱デフレ政策としてのリフレ政策には消費増税を先延ばしすることは、その分のリスクを日銀や政府が背負い込むことを意味する。これは黒田総裁による次の発言にも現れている。

 「財政規律の緩みや、最近言われる「財政ドミナンス」、あるいは「財政ファイナンス」のような懸念が持たれ、その影響が長期金利に跳ね返るようなことがあると、せっかくの「量的・質的金融緩和」の効果が減殺される惧れがあります。」

 安倍首相の消費増税に対する曖昧な姿勢というか決断できない姿勢は非常に危険性がある。もちろん先送りされると財政ファイナンスと認識される懸念が生じ、それがわりじわりと株式市場や為替市場だけでなく、これまで日本国債への絶対的な信認を維持させてきた債券市場にも影響を与えかねない。このあたりのリスクを黒田総裁は意識しての発言かと思われる。

 消費増税への見解については財務省出身の黒田総裁らしい回答という見方がある。しかし、アベノミクスの片棒を担がされて壮大な実験を政府による依頼で初めてしまった以上は、依頼主が市場等の安定化をはかる装置を起動させないという選択肢はありえない。このあたりの意向が総裁会見に現れているように思われる。ここにきて黒田総裁の会見内容が面白くなってきたが、政府の意向をなぞるだけでなく、日銀としての主張が見え始めてきたことも影響しているのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2013-08-13 09:33 | Comments(0)

再びブレイナード米財務次官が外債購入を牽制

 2月のG7あたりを境に、政府からの為替に関する発言が明らかに変化していたが、その背景には米国の意向が強く働いていたとみられる。

 2月12日のG7による緊急共同声明について、円の過度な動きに懸念を表明することがG7の目的だったとの匿名のG7筋による発言があった。匿名のG7関係筋が「G7声明は誤って解釈された。同声明は、円の過度な動きに対する懸念を示すものだった。G7は円の一方的なガイダンスを懸念している。日本をめぐる問題は、モスクワで今週末開かれるG20会議で焦点になる」と発言した(ロイター)。

 「匿名のG7高官が声明は円の過度な変動への懸念を示唆したものだと語ったことについて、声明発表につながったやり取りに詳しい関係筋は、日本がすぐさまデフレ不況対策に理解が得られたとの認識を示したことへのいら立ちによるものだった可能性があると指摘した。」 (ロイター)

 この匿名のG7高官からの声明はワシントン発だそうである。そうであれば、米国の高官という可能性が高くなる。その米国からG20に出席するのは、サインが特徴的なルー次期財務長官ではない。ルー次期財務長官は議会での承認を待っている段階であり、代わりにブレイナード財務次官が出席した。

 11日に会見したブレイナード次官は、積極的な金融緩和と財政出動を打ち出した安倍政権の経済政策について、「成長力を取り戻し、デフレ脱却を目指す日本の努力を支持する」と述べ支持する考えを示した。ただし、「財政、金融政策は自国の景気回復を目的に使われることが重要だ」としたうえで、「為替相場は市場が決めるというのは先進国間のルールだ」と述べ、通貨を安く誘導することを目的にする政策は認められないという考えを強調した(NHKニュース)。

 このブレイナード次官の発言は円安容認と受け止められたが、この発言や共同声明を円安容認とする解釈は誤りだとの指摘もあった(FT)。カーニー・カナダ中銀総裁も日本の当局が為替相場の特定の水準を目標としているとの懸念が「一部」出ているとして、「G7はこの件に関して討議した。週末のG20財務相・中央銀行総裁会議でも議題として取り上げられる見通しだ」と述べていた。

 これらの状況から察するに、ワシントンの匿名のG7高官とは米国関係者であるとみられ、ブレイナード次官もしくはその関係者である可能性が高いと思われた。

 G7後、麻生財務相は為替に関することについての質問には一切答えなくなった。2月28日の国会で麻生財務相は、日銀の外債購入について、今の状況では為替介入するような結果になるため断固として回避すべきとの考えを示した。

 ところがその一方で、安倍晋三首相は、麻生財務相の発言に対して、今の時点では財務相は慎重な態度をとったのだろうとの解釈を示し、引き続き緩和手段の1つという自身の考えを否定しなかった(ロイター)。

 そして麻生財務相は3月5日の衆議院本会議で、金融緩和の手段として具体的にどの資産を買うかは日銀の判断だとしたうえで、外債購入という選択肢があることについては私と安倍晋三首相の間に不一致はないと語った(ロイター)。

 外債購入についてはかなりトーンダウンさせてきたものの、質問に答えざるを得なかったためか、再び外債購入の選択肢があると発言に、またあの人が登場してきた。

 米国のブレイナード財務次官(国際問題担当)は5日に、「G7加盟国は、外国資産の購入を通じてマクロ経済の緩和を目指すことを明確に排除している。こうした手段は、世界の需要増進に貢献しない」と述べた(ロイター)。今回は匿名ではなくてこのように言い切っていた。NHKも報じていたが、ブレイナード次官のこの発言は、改めて外国債券の購入をけん制したものと言える。ブレイナード財務次官はご主人がカート・キャンベル元東アジア・太平洋担当国務次官補で、親日家とみられているが、こと為替政策については、安倍政権の動きを牽制しているようである。今後の為替の動向を見る上でも、このブレイナード財務次官の発言には十分注意が必要と思われる。

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by nihonkokusai | 2013-03-11 11:17 | Comments(0)

アベノミクスを理解するための日銀入門 「第四話 金融政策とはそもそも何でしょうか」

猫 それではあらためて、アベノミクスでも注目されている日銀の金融政策について、お話を伺いたいと思います。そもそも中央銀行の金融政策というのは何ですか。

牛 日銀法にもあるように、通貨の価値の安定や金融システムの安定をはかることが日銀にとって大きな目的となっていますが、そのために行う政策が金融政策です。

猫 それではよくわからないので、もう少しわかりやすい説明をしていただけませんか。

熊 中央銀行は発券銀行として通貨を供給できることに加え、銀行の銀行として民間銀行との資金のやり取りを行うことができる。資金を調達したり運用したりする取引が行われる市場を金融市場と呼ぶが、特に短期間の資金のやり取りをする市場では、日銀が大きな影響力を持っておる。

猫 短い期間の資金をやり繰りする市場とは何ですか

牛 主に期間1年未満の資金をやり取りしている市場が短期金融市場と呼ばれる市場です。短期金融市場は、銀行などの金融機関や一般の事業法人などが、短期の資金を調達・運用する場となっています。さらに日銀がオペレーションや貸出等の金融調節を通じて、市場の日々の資金過不足を調節する場でもあるわけです。

熊 金融機関が、お互いに短期的な資金の過不足を調整するための取引が行われている市場をインターバンク市場と呼んでおる。銀行などの金融機関は営業活動を通じて日々、資金の余裕や不足が生じる。預金の受払いや貸出しがあり、市場を通じて国債や株そして為替等の売買も行っており、常に資金ポジションを調節する必要があるわけだ。

牛 この短期金融市場にあって個々の銀行のやり取りというより、資金全体の過不足を調節しているのが日銀なのです。たとえば、「税揚げ」と呼ばれる法人税の国庫納付に伴う資金不足日には、日銀がオペを通じて資金を放出しなければコールレートは無制限に上昇してしまう可能性があります。

猫 年金の支払日とか、ボーナス支給日とか、確かに特定の日に資金の出し入れが集中する日もありますね。

熊 日銀は市場において債券などの売買を行うオペによって資金量を調節し、その結果コールレートを適切な水準に誘導し、日銀当座預金残高の調節も行っている。

猫 そうか、そのオペの正式名称がオープン・マーケット・オペレーションで公開市場操作と呼ばれるものですね。

牛 中央銀行はその資金調節による短期金利の操作が可能となります。短期金利をどの水準に持ってくるのか、その水準こそが金融政策の目標となるわけです。金融政策において操作目標となるのが、日銀では以前は貸出金利であった公定歩合であり、その後は無担保コール翌日物の金利になっているのです。

猫 あれっ、公定歩合ではないのですか。その無担保コール翌日物というのはいったい何ですか。

熊 まったく勉強不足にもほどがある。日銀はもう公定歩合という言葉はお蔵入りさせると言っているぐらいだが、まだ日銀の金融政策は公定歩合の上げ下げと思っておる人がいるとは。

牛 まあまあ。意外にまだ公定歩合操作が行われていると思っている人は多いようですよ。日銀の政策金利は長らく公定歩合でした。公定歩合とは日銀が民間銀行に貸し出しを行うときの基準金利です。以前は預金金利等の金利が公定歩合に連動していたため、公定歩合を変動させることで、日本の市中金利を変動させることと等しくなっていたことで、金融政策を行うことができたのです。ところが金利の自由化などもあって、この公定歩合操作は次第に形骸化してしまったのです。

熊 日銀は1995年3月の短期金利低め誘導あたりから、コールレートを操作目標にしておる。コールレートのなかでも「無担保コール翌日物」はその取引量も多く、また日銀としてもオペレーションなどによってコントロールしやすいため、この「無担保コール翌日物」の金利が金融政策における操作目標とされているわけだ。

牛 そのコール市場とはその名の由来が「money at call」、つまり「呼べば直ちに戻ってくる資金」と言われ、民間金融機関が短期的な手元資金の余剰や不足を調整するための市場で、一般の人にはあまりなじみがない市場かもしれませんね。

猫 でもいま日銀が行っている金融政策は基金によるなんとかで、コールレートの操作ではないんじゃないですか。

熊 これまた勉強不足だな。たまには日銀のホームページを見てみなさい。金融政策を決めたあと公表される「当面の金融政策運営について」などをみると、たとえば「次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促す。」とあるじゃろう。

猫 あっ、本当だ。何か勘違いしていたのかな。

牛 いやいや、そうではなくて、すでに無担保コールの誘導目標値がゼロ近辺に下げてしまって、もうこれ以上は下げられなくなってしまった。それで違うことで金融緩和を行っているんだ。金利を操作して金融を緩和したり引き締めたりするのが、伝統的な金融政策と呼ばれるのに対し、それとは違うもので金融緩和をしようとしているのでこれは非伝統的手段と呼ばれている。

「第五話 基金による何とかとは何だ」に続く。(第二話・第三話、第五話以降は来週発行予定のキンドル本でお読みいただけます)

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by nihonkokusai | 2013-03-10 17:16 | Comments(0)
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