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都議選受けての安倍政権の行方が日銀にも影響か

7月2日の東京都議会選挙の結果は、小池知事の支持勢力が79議席を獲得し圧勝となった。自民党は選挙前の57議席から23議席となり、歴史的な敗北を期した。都知事選の勢いにのって新党を立ち上げ、新人候補を中心に大量の当選者を獲得するというパターンは、今年のフランスの大統領選挙でのマクロン氏の勝利とその後の国民議会(下院)選挙でマクロン大統領の新党「共和国前進」グループが大勝した流れにも通じる。

都議会議員選挙の結果がそのまま国政選挙にも影響するのか。今回の都議選を見る限り、受け皿さえあれば安倍一強と言われた安倍政権を揺るがす可能性があることを示した。現在の自民党政権の強さは、野党の敵失の面も大きく、野党よりもまだましな政権なのでとの認識も強いための支持ではなかろうか。しかし、ここにきてその支持率も低下基調となっており、都議選の結果がその傾向を顕著に示すことになった。

今後は安倍政権の求心力の低下により、じわりじわりと影響が出てくることが予想される。安倍政権の支持率低下が自民党の支持率低下に影響を及ぼすことになれば、自民党内で対策を講じる必要性が意識されるかもしれない。フランスで若手の大統領が出たように、日本でも若い首相の誕生を期待する声も上がるかもしれない。あくまでいまのところは憶測に過ぎないが。

今後の安倍政権の求心力の低下が金融市場にどのような影響を及ぼすのか。安倍首相は都議選の結果を受けて、初心に帰ると発言していた。まさか2012年11月の輪転機発言に戻るわけではないと思うが、新アベノミクスを掲げるのではないかとの期待もあるようである。

すでに日銀は使えそうなあらゆる手段を講じてしまった。ここで政権による意向でさらに強力な金融緩和策を依頼されても、それに答えることは難しい。マイナス金利の深掘りもできなくはないが、期間の長い国債利回りが再びマイナス化してしまうと、以前に増しての金融機関からの反発が予想される。国債をさらに大量に買い入れることも数字上はありうるとしても現実的ではない。それ以前に、あれだけの緩和をしておきながら、物価目標達成がいっこうに見えない原因についてしっかり説明しなければ、追加緩和の必要性を納得させられまい。

それでは金融政策がだめなら財政政策か。国債残高が1000兆円に膨れあがったのは何が要因だったのか。これは特に自民党政権下での度重なる経済政策による影響が大きかったはずであり、社会保障費の抜本改革を進めなかったことによるものではなかったのか。

ここでさらなる財政政策を講じるのであれば、かなり効果的なものを打ち出さなければ、日本の財政悪化による悪影響の方がクローズアップされる懸念がある。いずれにしても新アベノミクスというよりも、当初のアベノミクスが何であり、その効果が具体的にあったのかを立証する必要も出てこよう。

安倍政権の求心力が落ちるとなれば、日銀にとっては突貫工事で作り上げたバベルの塔のような金融政策、「長短金利操作付き量的・質的緩和」を調整するチャンスなのかもしれない。欧米の中央銀行も出口に向けて歩き始めており、日銀も早めにリフレ的な発想を排除し、より現実的な政策に戻し、市場と向き合う必要があるのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-07-05 09:50 | Comments(2)

欧州中央銀行(ECB)も軸足を金融緩和縮小に修正か、取り残される日銀

27日にポルトガルで開催されたECBの年次政策フォーラムで、ECBのドラギ総裁は「景気回復が続く中、政策スタンスはより緩和的になる。ECBは政策手段のパラメーターを調整することで景気回復に対応することが可能だ。これは政策スタンスを引き締めるためではなく、ほぼ同じに維持することが狙いだ」と語った。

かなり回りくどい発言ながら、「今は全ての兆候がユーロ圏の回復の強さが増し、裾野が広がっていることを指し示している。 デフレ圧力はリフレの力に置き換わった」とも語っており、つまり景気回復が続くと金融緩和の効果がより大きくなるとし、その効果を一定に保つには緩和そのものを調整、つまり緩和策を縮小することを示唆した格好となった。

ドラギ総裁は、インフレ基調が持続的かつ自律的になるためには、かなりの金融緩和が依然必要だとも述べているが、引き締めではなく景気回復に即した緩和策の調整であるならば、それがありうることを示した。

6月8日のECB理事会では政策金利の据え置き、量的緩和プログラムの現状維持を決定した。政策に関する声明では、追加利下げに関する文言を削除し、追加緩和に前向きの姿勢から中立姿勢に修正した。ただし、基調的インフレの指標は引き続き弱い状態にとどまっていると慎重姿勢は維持しており、大規模な刺激策を維持すると表明していた。債券購入プログラムの縮小について話し合われなかったとされている。

この時点で市場は、ECBはひとまず「追加緩和」に向けた前傾姿勢から中立姿勢に戻しただけと判断していた。テーパリングなどの緩和策の縮小にはまだ距離があるのではとの見方も強かった。しかし27日のドラギ総裁の発言から、9月の理事会あたりで緩和策の縮小を検討するのではとの観測が出てきた。

市場はこれに反応し、27日のドイツの10年債利回りは0.37%と前日の0.24%から大きく上昇した。フランスの10年債利回りも0.73%と前日の0.59%から大きく上昇し、英国10年債利回りも1.09%と前日の1.01%から上昇した。欧州の国債安を受けて米国債にも売りが波及し、10年債利回りは2.20%と前日の2.13%から上昇した。

ただし、複数の関係筋からとして、この総裁の発言について、総裁は弱めのインフレ期間への容認を示したものであり、差し迫った政策引き締めを意図していないとの見方を示した(ロイター)。これは急激なユーロ安や欧州の長期金利の上昇をみて、少しブレーキを掛けておこうとの意図も働いたとみられる。

FRBはすでに正常化路線を歩んでいる。27日の講演でイエレン議長は、少なくとも自分が生きているうちに再び金融危機が起きるとは考えていないと語っていたが、これこそFRBの正常化に向けた動きの背景にあろう。いまは非常時ではない。それにも関わらず非常時の対策を続けるのはやはりおかしい。

カナダの中央銀行であるカナダ銀行は利上げを模索しており、ポロズ総裁は次回7月の会合での利上げの可能性に言及した。イングランド銀行でも利上げ派が増えてきていたが、ついにカーニー総裁も今回のECBのフォーラムで中銀は利上げを実施する必要が出てくる可能性があり、MPC(イングランド銀行の金融政策を決める金融政策委員会)はこの件について向こう数か月以内に討議すると述べた。そして、最も緩和に積極的であったECBも慎重ながら大胆な緩和策の調整を準備しはじめた。

日銀もステルステーパリングは国債需給の関係から行っているとはいえ、物価目標にはかなりの距離があり、考え方を大きく変えない限り、異常な建て付けとなってしまった金融緩和策を継続せざるを得ない状況にある。いずれ日銀だけが取り残され、緩和することだけに意義があるような状況に追い込まれるリスクも出てこよう。


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by nihonkokusai | 2017-06-30 10:05 | Comments(0)

FRBの正常化のゴールは政策金利の3%としているが、それは可能なのか

FRBのイエレン議長は今年1月18日の講演で、米雇用の回復とインフレ基調の継続を受け、「2019年末まで、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利を年2、3回のペースで引き上げる」との見通しをFRB内でおおむね共有していると述べていた。政策金利が長期の中立金利見通しである3%に近づくとの見方も示した。

今年3回の利上げと、2018年と2019年も0.25%刻みでそれぞれ3回ずつ引き上げるとすれば2019年末までには3%に届く計算となる。ちなみに6月13、14日でのFOMCで政策金利は0.75~1.00%から1.00~1.25%に引き上げられる見込みとなっている。

FRBの物価目標はPCEの物価指数(PCEデフレーター)の総合指数の2%としているが、今年4月のPCEのデフレーターは前年同月比1.7%の上昇となっており、FRBの目標には届いていない。それでもFRBの年内3回程度とする利上げに意向は変えていない。

米国の経済指標は、6月2日に発表された米雇用統計の非農業雇用者数が予想を下回ったが、失業率は4.3%に低下するなど、ややまだら模様となってはいる、しかし総じてしっかりしており、それが米国株式市場にも反映されて、ここにきてS&P500やダウ平均、ナスダックは過去最高値を更新していた。

ハト派の代表格であるはずのブレイナード理事も5月25日に世界経済について「ここ数年で最も明るい」との認識を示し、「欧州経済の成長が堅調なうえ、日本は安定し、新興国も良好になりつつある」と説明した。そのうえで「FRBの経済見通しに対する下振れリスクは軽減された」と述べていた。

トランプ政権の誕生や欧州での選挙などがリスク要因となり、米利上げペースを遅らせる懸念はあったが、いまのところはそのリスクは顕在化していない。欧州ではオランダの総選挙、フランスの大統領選挙でもポピュリズムの台頭は抑えられた。今後、ドイツ、イタリアでの選挙も予定されているが、ユーロというシステムは維持されていくものとみられる。中東や北朝鮮などの地政学的リスクも残るが、こちらも金融市場を混乱させるほどの影響を与えうる可能性はいまのところ小さい。

もちろんこれまで百年に一度とされた金融危機が立て続けに起きるなどしており、油断は禁物ではある。しかし、むしろその歴史的なリスクの後退が、FRBの正常化を可能にさせているともいえる。それでも本当に政策金利を3%にまで引き上げられるのかといえば、低位安定している米長期金利の動きをみても容易ではないようにみえる。個人的にはせいぜい2%あたりが限度かなと思うのであるが。



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by nihonkokusai | 2017-06-12 09:29 | Comments(0)

FRBの正常化のゴールは政策金利の3%としているが、それは可能なのか

FRBのイエレン議長は今年1月18日の講演で、米雇用の回復とインフレ基調の継続を受け、「2019年末まで、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利を年2、3回のペースで引き上げる」との見通しをFRB内でおおむね共有していると述べていた。政策金利が長期の中立金利見通しである3%に近づくとの見方も示した。

今年3回の利上げと、2018年と2019年も0.25%刻みでそれぞれ3回ずつ引き上げるとすれば2019年末までには3%に届く計算となる。ちなみに6月13、14日でのFOMCで政策金利は0.75~1.00%から1.00~1.25%に引き上げられる見込みとなっている。

FRBの物価目標はPCEの物価指数(PCEデフレーター)の総合指数の2%としているが、今年4月のPCEのデフレーターは前年同月比1.7%の上昇となっており、FRBの目標には届いていない。それでもFRBの年内3回程度とする利上げに意向は変えていない。

米国の経済指標は、6月2日に発表された米雇用統計の非農業雇用者数が予想を下回ったが、失業率は4.3%に低下するなど、ややまだら模様となってはいる、しかし総じてしっかりしており、それが米国株式市場にも反映されて、ここにきてS&P500やダウ平均、ナスダックは過去最高値を更新していた。

ハト派の代表格であるはずのブレイナード理事も5月25日に世界経済について「ここ数年で最も明るい」との認識を示し、「欧州経済の成長が堅調なうえ、日本は安定し、新興国も良好になりつつある」と説明した。そのうえで「FRBの経済見通しに対する下振れリスクは軽減された」と述べていた。

トランプ政権の誕生や欧州での選挙などがリスク要因となり、米利上げペースを遅らせる懸念はあったが、いまのところはそのリスクは顕在化していない。欧州ではオランダの総選挙、フランスの大統領選挙でもポピュリズムの台頭は抑えられた。今後、ドイツ、イタリアでの選挙も予定されているが、ユーロというシステムは維持されていくものとみられる。中東や北朝鮮などの地政学的リスクも残るが、こちらも金融市場を混乱させるほどの影響を与えうる可能性はいまのところ小さい。

もちろんこれまで百年に一度とされた金融危機が立て続けに起きるなどしており、油断は禁物ではある。しかし、むしろその歴史的なリスクの後退が、FRBの正常化を可能にさせているともいえる。それでも本当に政策金利を3%にまで引き上げられるのかといえば、低位安定している米長期金利の動きをみても容易ではないようにみえる。個人的にはせいぜい2%あたりが限度かなと思うのであるが。



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by nihonkokusai | 2017-06-12 09:29 | Comments(0)

ドイツのメルケル首相がECBの緩和策を遠回しに批判

ドイツのメルケル首相は22日、ベルリンの学校で開かれたイベントで学生たちに「ユーロは弱過ぎる。これは欧州中央銀行(ECB)の政策が理由だ。これによってドイツ製品が相対的に安くなっている。従って、ドイツ製品はよく売れている」と語ったそうである(ブルームバーグ)。

また原油安も輸入価格の低下を通じてドイツ貿易黒字の一因になっているとして、原油価格が今の1.5倍ならドイツの輸入額は増えると指摘。「ではどうしたらよいのか。我々にできるのは国内で投資を増やすことだ」と語った。

中央銀行の金融緩和によって通貨安にし、通貨安によって国内製品の輸出を促進させて国内景気を回復させ、ついでに物価も上昇させるというのは、我が国ではアベノミクスと呼ばれている。ところが今回のメルケル首相の発言はメルケルミクスを意識した発言などではない。

むしろドイツの貿易黒字の拡大が米国などから批判されており、そのドイツの貿易黒字問題についてメルケル首相はユーロ相場と原油価格の2つが押し上げ要因となっており、これらはいずれも政府の管轄外だとも指摘したのである。

今週開催される主要7か国首脳会議(G7)で、米国政府がドイツの貿易黒字問題について一段の対処を求めることが予想され、それに対して予防線を張ったとも言えよう。また、こういった批判の矛先をECBに向けさせようとしているようにも見受けられる。今回のメルケル発言を受けて、市場ではドイツが欧州中央銀行(ECB)に対し緩和解除への圧力を強めるのではないかとの観測も広がっていた。

そもそもドイツ関係者はECBの緩和政策に対して批判的な見方をしてきた。ドイツの中央銀行(ブンデスバンク)は過去の教訓から金融緩和による国債買入等に対して反対の立場を取ってきた。それは下記のような歴史の教訓によるものである。

第一次世界大戦の敗戦により、ドイツは天文学的な賠償金を背負わされ、財政支出の切り札になったのが、国債を大量発行しライヒスバンクに買い取らせるという手法であった。その結果、ドイツはハイパーインフレに見舞われ、ライヒスバンクの後継者であるブンデスバンク(連邦銀行)は、インフレに対して極度に神経質となり、その要因となった中央銀行による国債買入に対して警戒感というか嫌悪感を強めることになる。


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by nihonkokusai | 2017-05-24 09:26 | Comments(0)

4月に地銀などが米国債やフランスの国債を過去最大規模で売り越しか

5月11日に公表された4月の対外対内証券投資売買契約の状況によると、居住者による対外債券(中長期債)投資は4兆2559億円の処分超となり、月次の売り越し額としては過去最大規模となったようである。

「4月の対外対内証券投資売買契約の状況」財務省

http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/itn_transactions_in_securities/month.pdf

11日の発表には国別の状況は記載されておらず、これは6月に公表される国際収支の付表で確認するほかない。

国際収支の付表がアップされるサイト

http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/release_date.htm

上記のサイトでは3月の数字まで確認できるが、対外証券投資(中長期債)に関しては、昨年11月までは全体での買い越しが続いていたのが、12月に2兆1136億円の売り越しとなり、今年1月も1兆2593億円の売り越し、2月が2兆1164億円の売り越しと大量の売り越しが続いていた。3月は3727億円の売り越しとなり、売り越し額は減少していた。

昨年12月からの売り越しの内訳を「主要国・地域ソブリン債への対外証券投資」で確認してみると12月は米債を2兆3894億円、フランスの債券を1483億円売り越していた。1月は米債を1兆6298億円、フランス国債を1894億円売り越し、2月は米債を1326億円、フランス国債を1兆5180億円売り越し。3月は米債は1兆398億円の買い越しとなっていたが、フランス国債を9428億円売り越していた。

フランスの10年債利回りの推移をみると、昨年11月の米大統領選挙を受けての米10年債利回りと連動するかのようにフランスの10年債利回りも上昇してきた。米大統領選挙前に0.5%割れとなっていたフランスの10年債利回りは、今年1月末に1%台に乗せてきた。米10年債利回りが12月のFOMCでの利上げ決定を受けていったんピークアウトしていたにもかかわらず、フランスの10年債利回りは3月半ばあたりまで上昇を続けた。この背景にあったのは今年4月、5月のフランス大統領選挙に向けた思惑であった。

国内投資家による12月以降の米国債の売却の要因のひとつとしては、米大統領選挙の結果を受けたトランプ政権の経済政策への思惑やFRBによる昨年12月と今年の3月の利上げにみられる正常化を睨んだものであったとみられる。

またフランス国債についてはフランスの大統領選挙を睨んだものであったとみられ、4月と5月の大統領選挙を前にして、4月もフランス国債を大量に売り越していた可能性はある。また売り越し規模からみても米国債も大量に売り越していた可能性がある。

さらに別の要因が影響していた可能性がある。5月16日の日経新聞の記事によると、昨年12月以降のフランス国債の売却は地銀などの売りではないかとの指摘があった。地銀などは日銀のマイナス金利政策の影響で日本国債などでは運用益が稼げず、外債投資を活発化させていた。しかし、上記のような米国債やフランス国債の利回りの上昇などもあり、金融庁が外債運用を拡大させている一部の地域金融機関を対象に米国債などの価格下落が経営に与える影響などの立ち入り検査を実施することになったと3月に報じられた。このため特に4月に地銀などが保有する米国債やフランス国債のポジションを大きく削減させていた可能性がある。いずれにしても来月発表される国際収支の付表にて確認してみたい。


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by nihonkokusai | 2017-05-16 09:41 | Comments(0)

個人向け国債の発行額が9年ぶりの高い水準となった理由

財務省は6日に3月15日発行分の個人向け国債の応募額を発表した。3月の個人向け国債の発行予定額は9315億円となり、2月の5727億円から大きく増加した。

3月発行分がわかったことで、2016年度の個人向け国債の発行予定額が算出できる。2016年度の個人向け国債の発行予定額は3種類合計で4兆5556億円となり、2015年の2兆1367億円から倍増し、2007年度の4兆6617億円以来、9年ぶりの高い水準となった。

2008年度以降、低迷し続けていた個人向け国債の発行額が何故、2016年度は大きく増加したのか。個人向け国債の発行額が低迷していた最大の理由が利率の低さにあった。利率の低い状態は2016年度も続いたが、日銀が2016年1月にマイナス金利政策を導入したあたりから状況が変わってきた。

さすがに預貯金金利はマイナスになることはなかったものの0.01%程度に低下したままとなっていた。周りの金利が下がったことで、個人向け国債の最低保証金利の0.05%が相対的に魅力的なものとなったのである。これが個人向け国債発行額増加の最大の理由となろう。

さらに今年3月の発行分の募集は2月であり、ボーナス月でもなんでもないときに大きく増加した理由については、販売する金融機関の事情もあったようである。

個人向け国債は金融機関を通じて販売される。米国では米財務省から直接購入できるが、日本では日銀に個人が口座を持てない等の理由もあって財務省ダイレクトといったものはない。このため証券会社やゆうちょ銀行を含む銀行などが販売している。その際に販売額に応じて、財務省は金融機関に募集発行事務取扱手数料を支払っている。それが2017年4月発行分(3月募集分)から下記のように引き下げられる。

固定3年額面100円あたり40銭が20銭に

固定5年額面100円あたり50銭が30銭に

変動10年額面100円あたり50銭が40銭に

このため金融機関は、個人向け国債が人気化しているタイミングで、しかも手数料が高いうちに積極的に大量に販売しようと、現金を贈呈するといったキャンペーンを強化したものとみられる(キャンペーンの原資は上記手数料となる)。

個人向け国債の販売額の増加は一時的なものとなるのか。それはこの手数料よりも、金利の動向にかかっていると思われる。日銀による長短金利付き量的・質的緩和政策を受け、特に10年変動タイプに影響する10年債利回りは当面、ゼロ%近辺に押さえ込まれることになる。預貯金金利も0.01%近辺のまま推移するとなれば、個人向け国債の最低保障利回りの0.05%の見直し等がない限りは、相対的な優位さは継続する。

しかし、本当に日銀は長短金利を現在の水準のまま、いつまでも押さえ込めるのかという疑問もある。米国はまもなく追加利上げを決定するとみられ、日本の物価もプラスに転じている。金利を取り巻く環境が変わると金利が動き出し、個人向け国債の優位性が薄れる可能性もないとは言えない。それでも安全性が高く、1年という売却できない期間はあれど元本が保証されるなど、個人向け国債は魅力的な金融商品であることに代わりはない。


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by nihonkokusai | 2017-03-09 10:08 | Comments(0)

利上げに前向きなイエレン議長

 FRBのイエレン議長は14日、米上院銀行委員会で証言し、「追加利上げの条件は、雇用と物価が想定通りに改善するかどうかだが、今後数回の会合で判断するつもりだ」と主張した。緩和措置の解除を待ち過ぎることは賢明ではないとも指摘。利上げするに当たってトランプ政権による財政刺激策の計画を待つ必要はないと指摘した。


 FOMCの今後のスケジュールは下記の通り。
3月14、15日(イエレン議長の会見有り)、5月2、3日(議長会見なし)
6月13、14日(イエレン議長の会見有り)、7月25、26日(議長会見なし)
9月19、20日(イエレン議長の会見有り)、10月31日、11月1日(議長会見なし)
12月12、13日(イエレン議長の会見有り)


 FRBは毎年3、6、9、12月にFOMCメンバーによる米国経済と政策金利の見通しを公表しており、政策金利の見通しは「ドット・チャート」と呼ばれている。これは今後の政策金利の予定を示すものではなく、あくまでFOMCメンバーの予想の集合体にすぎない。実際に2016年の利上げは年4回とドット・チャートで予想されていたが、現実には12月の1回だけであった。


 2017年のドット・チャートでの予想は年3回となっているが、これでFRBが3回利上げをしてくる予定だということではない。現実の利上げはかなり慎重に行ってくることが予想され、市場を取り巻く環境など次第の面がある。昨年は年末まで利上げを見送ったのは、年初からの新興国経済減速などによるリスクオフの動きや、英国のEU離脱などが影響していた。


 今年に関していえば、いまのところ利上げを躊躇させるようなリスク要因が表面化しているわけではない。トランプ政権の経済政策の行方が不透明材料ながら、これは景気や物価にはプラスに作用する可能性もあり、むしろFRBにとっては利上げを急ぐ要因ともなりかねない。また、15日に発表された1月の米消費者物価指数は前月比で0.6%もの上昇となった。市場予想を上回り、2013年2月以来最大の伸び。1月の総合は前年比では2.5%上昇、コアCPIは前年比2.3%の上昇となっている。FRBの物価目標はCPIではないものの、物価が予想以上にしっかりしているとなれば、早期の利上げという可能性も排除はできない。


 しかし、それでも慎重姿勢に変わりはないとみられる。このため、多くても年2回程度の利上げを想定している可能性があるのではなかろうか。3月のFOMCでの利上げの可能性は排除していないようだが、市場の予想は3月よりも6月となっているようである。6月に追加利上げを行って様子を見た上で12月に再利上げの判断をするのではないかと、今回のイエレン議長の発言からは予想される。


 それでも今後、何が起きるのか予想することは難しい。オランダを皮切りにフランスやドイツの選挙次第では、ユーロというシステム崩壊の危機が訪れる可能性もある。ギリシャも引き続きリスク要因となる。中国やロシアの動きなども気になるところ。物価をみる上では原油価格の動向も注意する必要があろう。



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by nihonkokusai | 2017-02-16 09:18 | Comments(0)

日本初の鉄道と国債、あさの炭鉱との関わり

 江戸時代には江戸や大阪の商人から半ば強制的に御用金と呼ばれるものを徴収していていました。御用金とは幕府が慢性的な財源不足や臨時の支出を補填するために発令したもので、江戸や大阪の商人などから半ば強制的に金銀を徴収していたものです。利子付きであり、元金返済を前提としているので強制的な「公債」という性格を持っていました。その利子も年利2~3%という超低利であり、現在の国債と同様のものとなっていたのです。

 この御用金は1761年大坂の商人205名に対し170万両を命じたのが最初と言われます。当初は大坂や江戸の豪商に対して課せられたものでしたが、その後は堺、兵庫、西宮などの富裕町人、さらには一般町人や農村の富裕層にも命じられるようになりました。幕末に近づくほど頻繁に発令されたのです。特に1866年第2次幕長戦争の際には、大坂・兵庫・西宮の商人に700万両の御用金が指定されました。ただし、利子がしっかり支払われたのは最初の数年間のみで、幕末になるにつれ、利子はもちろん元金もほとんど償還されなくなっていったのです。あさの嫁ぎ先など、当時の大阪の両替商が苦労したのはこのようなことも要因にありました。

 明治政府も当初、財政確保のためしばしば御用金を課したのですが1869年に廃止され、国債制度に切り替えられていったのです。その国債が日本ではじめて発行されたのが1870年です。

 日本で最初に発行された国債は、鉄道敷設を目的とした九分利付外貨国債をロンドンにおいてポンド建てで発行されたものです。

 岩倉具視、大隈重信、伊藤博文などの明治政府の関係者は鉄道建設の必要性を提唱し、「日本人によって鉄道建設が可能である」としたイギリス駐日大使パークスの意見もあり、鉄道建設に向けての企画が進められました。

 しかし、国内で資金調達をしようとしても、明治政府は財政的基盤が固まっていなかったのです。金銀貨による幣制の統一を目指していたものの、貨幣素材の不足や造幣能力の不十分さもあって、金銀貨の鋳造すらなかなか進まなかったぐらいです。明治政府は資金の調達のために金銀貨に代わる支払手段として、政府紙幣や国立銀行券といった不換紙幣の発行に依存せざるを得ない状態となっていました。

 商人への借入といった手段も考えられたのですが、あさの家の状況を見てもおわかりのように、当時の商人たちにも余裕はありませんでした。そこでパークスの紹介もあり、来日していた英国人資産家ハラチオ・ネルソン・レイを通じた私的な借入の契約を結ぶことにしたのです。しかし、レイによる資金調達が困難となったことから、ヘンリー・シュローダー商会を通じた「公募債」として調達されることになりました。

 公債収入金の取り扱いについての日本政府の代理店としてオリエンタル銀行という銀行が指定され、ロンドン証券取引所で公募されることとなり、1870年4月23日に九分利付きで外債100万ポンドの日本国債が発行されました。これが日本初の国債発行であり、最初は外貨建てで発行されたのです。現在では日本国債の発行はすべて円貨建てとなっており、外貨建ての国債発行はされておりません。

 この国債発行で得た資金を元に、必要な技術に加え、機関車や客車、線路、枕木、燃料の石炭などをイギリスから輸入し、1872年9月に新橋と横浜の間に日本初の鉄道が開通しました。1874年5月には日本で2番目の鉄道である神戸と大阪間が開通しています。

 広岡浅子が石炭事業で頑張っていたのがこの時代となるのです。まさに時代の流れを読んでいたものといえるでしょう。また、鉱山王とも呼ばれた五代友厚は炭鉱ではなく金山や銀山の開発をしていました。こちらは明治政府が新貨幣の発行のために大量の金、銀を必要とすることを見越してのものと言えるでしょう。

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by nihonkokusai | 2015-12-03 10:09 | Comments(0)

日銀が国債を買えば物価が上がる仕組みに迫る

 昨日は日銀の国債買入に関わる日銀券の発行の仕組みについて解説したが、今回は日銀が国債を大量に買い入れるとなぜ物価が上がるのか、その謎に迫ってみたい。

 日銀の国債買入と日銀券の発行の仕組みについておさらいしたい。日銀が市中、すなわち銀行などから1兆円の国債を買う時に、日銀券を刷る輪転機は動かない。日銀のバランスシート上では日銀の資産として1兆円の国債が増加するが、反対側の負債も1兆円増加する。この場合は日銀にある民間銀行の当座預金に1兆円計上され、このままでは日銀券は発行されていない。民間銀行が日銀の当座預金から必要に応じて、自分の預金を引き出してはじめて日銀券は発行される。その日銀券も日銀のバランスシート上では負債として計上される。

 日銀が市場から大量に国債を買うということは、日銀のバランスシートの資産として国債が増加し、反対側の負債として主に民間銀行の当座預金がその分増加する。これによってどうやら物価が上がる・・・らしい。長期金利を含む金利の引き下げ効果は、すでにここまで金利が下がっているなかで限定的と思われるが、果たしてそれ以外にどのような効果が存在しているのか。

 日銀にある民間銀行の当座預金が増えると、どうして物価が上がるのか。ちなみに2001年から2006年のときの日銀の量的緩和時には、資産側には短い期間の国債など短期で運用される金融商品が大量に計上されていた。今回はここの期間が長めで量が多いだけの違いである。短いものを長くすると、より物価への期待が強まると言っている人もいるが、日銀のバランスシート上ではあまり意味をなさない。

 民間銀行側からみてみると、大事に抱えていた国債を日銀に売却してしまったことで、日銀の当座預金の残高が増える。昔ならば利子のつかない日銀の当座預金に置くよりも、少しでも運用益が出るようにほかの資産、たとえば外国債券や株式などに資金を振り向けるか、本業であるところの貸し出しに回す。ただし、貸し出しは借りてくれる人がいなければ増加できないという事情もある。民間銀行側の主な行動パターンとしては、他のリスク資産への移行が想定され、これがポートフォリオのリバランス効果となる・・・はずであった。ところがいまならば、日銀の当座預金の法定準備金を超える部分(超過準備)には0.1%という利子が、もれなく付いていくるのである。

 0.1%といっても、いまではたいへん貴重な利子である。日銀がせっせと国債を買ってくれるので国債の利回りは低下し、一時は5年国債の利回りもマイナスになっていた。5年国債など買うよりも日銀の当座預金に置くだけで、なんと0.1%の利子が付いてくるのである。ただし、日銀の当座預金に置くだけは運用にはならない、としている銀行もあるそうだが、それはさておき0.1%もつくならここに置いとくに限る。ノーリンク、そこそこリターン。

 0.1%という超過準備に付く利子は日銀の当座預金口座を持つ銀行への補助金ではないかとの議論もあるが、日銀としては当座預金に残してほしいという事情も存在する。なぜならば、日銀の現在の政策目標がこの当座預金残高を含めたマネタリーベースとなっているためである。

 それはさておき、本題に戻り、どうして日銀が国債を大量に買うと物価が上がるのか。ひとつはポートフォリオのリバランス効果があり、株高や円安要因となること。また、外為取引において、どういうわけか、どこの中央銀行が積極的に金融緩和をしているのかで、円やドル、ユーロなどの相対的な弱さを意識している面がある。つまり大胆な緩和という結果となる大量の国債買いを日銀が決めると、条件反射のように円を売ってくれる人が増えるとの期待もある。

 日銀のバランスシートが大きくなると予想物価が上昇すると言う人もいるようだが、予想物価の計り方も良くわからないところに、現実の物価と日銀のバランスシートの増減に相関関係は見当たらない。

 ただし、日銀が期間の長い国債を買うことで、財政ファイナンスをしているとアピールすると、物価と長期金利は一気に跳ね上がる期待、いやこの場合は懸念がある。まさかそれを期待しているわけではないと思うが、日銀が思い切った国債を買えば物価が上がるとのカラクリは日銀のバランスシート上からは、その理由はあまり見えてはこないのである。

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by nihonkokusai | 2015-03-04 09:42 | Comments(0)
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