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今年は注目度の低いジャクソンホール

 FRBは16日、パウエル議長が8月24日にワイオミング州ジャクソンホールで開かれる経済シンポジウムで講演すると発表した。変化する経済情勢における金融政策について講演するそうである(ロイター)。

 この記事を読んで、そういえばジャクソンホールの季節なのかと思い出した。というよりも、ジャクソンホールのことをすっかり忘れていた自分に驚いた。市場でもほとんど話題にならなかったこともあるが、市場における金融政策への関心度が、ここにきてかなり低下してしまったのであろうか。

 米国ワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムは、本来であれば市場参加者にとり大きな注目材料となる。

 ジャクソンホール (Jackson Hole) とはワイオミング州北西部に位置する谷のことを意味する。このシンポジウムには著名学者などとともに、日銀の黒田総裁など各国の中央銀行首脳が多数出席することで、金融関係者によるダボス会議のようなものとなっている。

 ロシア危機とヘッジファンド危機に見舞われた1998年に、当時のグリーンスパンFRB議長がこのカンザスシティ連銀主催のシンポジウムの合間に FRB理事や地区連銀総裁とひそかに接触し、その後の利下げの流れをつくったとされている。

 2010年8月27日にはバーナンキ議長(当時)がQE2を示唆する講演をジャクソンホールで行った。2014年8月22日のジャクソンホール会議でECBのドラギ総裁は、資産購入プログラムの導入を示唆したとされた。

 今年のカンザスシティ連銀主催のシンポジウムは8月23日から25日にかけて開催される。

 FRBに関しては、今年は年4回程度の利上げが予定されているが、その後の利上げについては限界があるとの見方も出ている。ECBも年内に資産買入は停止し、ある程度の期間を置いてから利上げを模索する。イングランド銀行も出口戦略をとしつつあるが慎重である。日銀は政策の柔軟化を決定した。

 むろん、市場もこれらの中央銀行の動向を無視しているわけではない。しかし、それ以上に米国と中国との貿易摩擦やトルコの状勢、英国のEU離脱、イタリアの政局などの動向の方が気掛かりとなり、リスクオフとリスクオンの相場が交互にやってくるような状況になっている。

 市場はその時々で注目すべき材料とその材料に対する比重が変化する。その変化を感覚で見極められるかどうかも市場での生き残るためには必要なものとなる。それにはある程度の経験の積み重ねが必要となり、それが勘として機能するようになれば、マーケットでサバイバルすることも可能となる。

 少し話しが逸れてしまったが、いまのところ注目度は低いとはいっても、8月23日から25日にかけて開催されるジャクソンホール会議が突如、注目されるかもしれない。念のためそこからの当局者からの発言内容についても注意する必要がある。もしかすると何かしらの示唆があるかもしれない。


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by nihonkokusai | 2018-08-19 10:51 | Comments(0)

原油先物価格が3年7か月ぶりの高値をつけ、80ドルが視野に

 6月29日のニューヨーク・マーカンタイル取引所で原油先物相場は4日続伸となった。WTI先物8月限は70セント高の74.15ドルとなった。一時74.46ドルと期近物として約3年7か月ぶりの高値を連日で更新した。

 原油先物は5月21日に72ドル台に乗せ、2014年11月以来の高値をつけた。これは米国によるイラン制裁再開に加え、米国がベネズエラに対し制裁を発動する確率が高まったとの観測が影響した。これに対して主要産油国のサウジアラビアとロシアのエネルギー担当相が協調減産の緩和を巡り協議したことをきっかけに原油先物価格はいったん下落し、調整局面入りした。

 その減産協議が行われたのが6月22日のOPEC総会となった。OPEC総会では、昨年始めた協調減産を7月から弱めることで合意したものの、実際の増産は緩やかに進むとの見方が強まった。これを受けて22日の原油先物は大幅反発し、WTI先物8月限は前日比3.04ドル高の65.58ドルとなった。これをきっかけに原油先物は再び上昇基調を強めることになる。

 米政府がイラン産原油の輸入を停止するよう日本などに要求していることやカナダやリビアの減産懸念なども加わり、26日の原油先物も大きく上昇し、WTI先物7月限は2.45ドル高の70.53ドルとあっさりと70ドルの大台を回復した。

 27日には米国の原油在庫が約2年ぶりの大幅減となったことから原油先物は大幅続伸となり、WTI先物8月限は2014年以来の73ドル台に上昇した。

 イラン産原油の問題だけでなく、カナダのオイルサンド施設の操業停止が続いていることや、リビアの原油輸出が滞る可能性などもあり、需給の引き締まりも意識されている。これらが今回の原油価格の大幅反発の要因ではあるが、米国を中心に世界的な景気拡大が続いていることでの需要の強さも背景にあろう。

 WTIのチャートをみると2014年7月に100ドルを割り込んでから、2015年1月に50ドル割れとなるまで、ほぼ一本調子で下落した。2016年2月に26ドル台まで下落したところで底打ちとなり、そこからじりじりと値を戻している。このためチャート上からは90ドルあたりまでは節目らしい節目がない。ひとまず75ドルを抜いてくるのは時間の問題となり、80ドルが視野に入りつつある。

 米中の通商問題などを含め、トランプ政権の動向などが引き続きリスク要因となってはいるものの、原油先物価格の上昇圧力が再び強まりつつある。これによりガソリン価格の上昇などから物価にも影響を与えることが予想される。


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by nihonkokusai | 2018-07-01 18:08 | Comments(0)

日銀の政策委員からも国債市場の機能低下を危惧する声が。日銀はコミットメントよりも副作用を注視すべき

 日銀は6月14、15日に開催された金融政策決定会合における主な意見を公表した。このなかから「金融政策運営に関する意見」をみていきたい。

 「現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが適当である。」

 との毎度の意見はさておき、

 「物価の伸び悩みの理由は、単純な需要不足とは考え難いことから、短期間で需要を無理に押し上げるような政策は適当ではない。現在の緩和的な金融環境を粘り強く維持していくことが 重要であり、そのためには、経済・金融環境に深刻な歪みが生じることがないよう注意しながら、持続性に十分配慮した政策運営がなされるべきである。」

 「短期間で需要を無理に押し上げるような政策」とはサプライズも意識した異次元緩和そのものを指しているようにもみえなくもないが、さらなる追加緩和については反対のようである。そして、注目すべきワードは「深刻な歪み」と「持続性」となる。いまの政策が持続不可能なほど深刻な歪みが生じるリスクを意識し始めたか。

 「金融機関では、保有有価証券の評価損益の悪化に加え、低収益店舗の減損リスクも生じてきている。金融政策の継続にあたっては、その効果と副作用の二つの時間軸を意識し、副作用が顕在化する前から対応を検討しておくことが必要となる。」

 こちらでは経済・金融環境に深刻な歪みとされるものが具体的に示されている。この危惧は時間の経過とともに強まっていく。

 「低金利が銀行経営の悪化を通じて金融仲介機能を低下させ、却って金融緩和効果を削ぐという議論がある。こうした金融仲介機能の中核は、預金を集めて返済可能性を考慮しながら貸し出すことであるが、国内銀行の平均預貸率は7割以下であり、残りは債券運用である。この点を考慮すれば、銀行の金融仲介機能にはそもそも改善の余地があるのではないか。」

 例によって「という議論がある」という発言をする方の意見であるが、これは金融政策決定会合という場の金融政策運営に関して発言すべき意見であるのであろうか。

 「足もとの国債市場では、米国金利等の動きに対する感応度が低下しているほか、新発債の業者間取引が不成立となる日もみられる。本来の市場機能をできるだけ維持する観点から市場調節を運営していくことが重要である。」

 日銀の長短金利操作付き量的・質的緩和の副作用の指摘であるが、どの委員による意見なのであろうか。佐藤委員と木内委員が任期を迎えたあとは、債券市場関係者は政策委員にはいない。これは債券村の住人はリフレ派の意見を理解していないためかどうかはしらないが、このようななかにあって、債券市場動向を気にしてくれる委員がいるのは心強い。日銀の国債買入について何らかの修正が入るかもしれないという期待をしても良いのであろうか。

 「ETFなどリスク性資産の買入れは、「物価安定の目標」を実現するための政策パッケージの一要素として行っているが、政策効果と考え得る副作用についてあらゆる角度から検討を続けるべきである。」

 こちらも副作用に関する指摘であり、ターゲットは国債ではなくETFなどリスク性資産の買入に関するものである。この環境下で日銀が株価を買い支える必要性はない。事前に市場にしっかり織り込ませるかたちで、ETFなどの買入は早めに停止すべきと個人的には思っている。

 「他の先進国では、2%程度の物価上昇が当然とされ、そのもとで3~4%程度の名目成長が達成されてきた。2%の「物価安定の目標」は、国際社会に対して日本が他国並みの名目成長を実現するという決意の表れである。」

 何を言っているのかわからない。

 「予想物価上昇率がなかなか上がらない現状を考えると、場合によっては、民間主体の期待形成に働きかけるべく、2%に向けたコミュニケーションと広い意味でのコミットメントを改善する工夫を講じることが望ましい。」

 広い意味でのコミットメントの改善とは具体的などのようなものなのかの説明がほしい。

 「足もとの物価上昇率が高まっていないため、予想物価上昇率も伸びにくくなっている。予想物価上昇率に働きかける追加的なコミットメントが必要である。」

 予想物価上昇率に働きかける追加的なコミットメントって何だろうか。

 「共同声明で謳われた政府・日本銀行のコミットメントに揺らぎがないと理解されることが大切である。」

 コミットメントと言う用語が乱発されており、どうやら日銀の金融政策は精神論に走りつつあるようにも思われるのだが。それよりも現実の副作用に目を向けたほうが良いと思う。


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by nihonkokusai | 2018-06-26 09:43 | Comments(0)

ドル円は110円の壁を突破できるのか

 外為市場での円の動きについては、ドルやユーロに対して円が買われた際を円高、反対に円が売られた際を円安と呼んでいる。ただし、例えば円安が進み、ドルは円に対して売られドル/円(以下、ドル円)は110円台をつけたとニュースなどでは報じられる。しかし、数字上からみると例えばドル円が109円80銭から110円台に上昇することを円安が進行すると表現することになり、数字の高い安いという方向性と言葉の表現が異なることになる。このため個人的には、円安ではあるものの、あくまで円に対するドルの価値として、ドル円は110円に上昇したとの表現を使っている。

 これについては債券の利回りと価格の表現も同様に混乱してしまうものではある。債券の場合は、利回りをベースに見ることになるため、債券は売られ10年債利回りは上昇したとの表現となる。このあたり、多少の慣れも必要なところとなる。それはさておき、ここにきてドル円が110円手前で足踏み状態にある。

 東京時間外でドル円は110円を超す場面はあったが、東京時間ではいまのところ110円は突破していない。だからといって、ここでドル円がピークアウトして、下落トレンドに転じたわけでもなく、109円台でのもみ合いとなっている。

 ドル円が動く理由としては、いろいろな要因が絡み合うが、為替を動かしている市場参加者がどの要因に比重を置いて見ているのかを捉える必要がある。政治なのか物価なのか、特定の経済指標なのか、中央銀行の動向なのか、株や債券の動きなのか。

 いまのドル円の動きをみると、とりあえず北朝鮮の問題はリスク回避からの状況から、その後巻き戻しに転じ、ドル円にとっての売り要因(円高)から、買い戻し(円安)の要因とされた。米朝首脳会談が大きなイベントとなるが、ドル円の買い戻しの動きはとりあえず一巡した可能性はある。

 ここにきてドル円を110円近くまで押し上げたのは、米国の長期金利の上昇による影響が大きい。日本の長期金利がほぼ固定されているので、米長期金利の上昇による日米金利格差の拡がりによってドル円も買われたとの見方ができる。その米長期金利が3%台に一時乗せたものの、3%が壁のようになり、いったん跳ね返され、ドル円も同様に110円が壁となったようにみえる。

 米長期金利の上昇の背景としては、FRBの正常化に伴う利上げもあるが、これは相当程度織り込んでおり、利上げが加速されるのかどうかが焦点となっている。いまのところFRBが利上げを急ぐような姿勢は見せていないが、市場は年4回の利上げを織り込みつつある。

 そして、注意すべきは原油価格の動向となるのではなかろうか。WTIは70ドル台に上昇し、この原油価格の上昇に伴う物価上昇観測が、ここにきての米長期金利の押し上げ要因のひとつとなっている。それがドル円の押し上げ要因ともなっていた。このため、このままWTIが70ドルを大きく超えて80ドル台に向けて上昇してくるとなれば、それをひとつのきっかけとして米長期金利が3%の壁を大きく抜けて、ドル円も110円の壁を大きく抜けて可能性が出てくる。


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by nihonkokusai | 2018-05-15 09:45 | Comments(0)

日銀の総裁副総裁人事が国会で承認

 16日に衆参両院の議院運営委員会は日銀正副総裁などの同意人事案を本会議で採決、日銀の正副総裁人事が国会で承認された。

 学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる財務省の決裁文書書き換え問題で、国会が停滞し、日銀総裁と副総裁の国会同意人事にも影響が出ている可能性があった。副総裁の任期は3月19日まで、総裁の任期は4月8日までとなっている。もし国会での承認が4月8日以降まで得られないとなれば、日銀の総裁と副総裁が不在となり、その際の総裁代行は原田審議委員となるという事態もあり得た。

 しかし、野党側も国会の停滞で日銀の重要人事を採決させない事態が続けば、国民生活に影響を及ぼし、自らも世論の批判を浴びかねないとの判断から本会議開催を了承したようである(日経QUICKニュースより)。

 これにより3月20日に日銀副総裁として、若田部昌澄氏と雨宮正佳氏が就任する。4月9日から黒田総裁が続投となる。

 市場にとっては不透明要因がこれでひとつ後退したことになるが、それほど懸念材料視されていたわけでもない。次回の金融政策決定会合は4月26、27日の開催となることで、日銀の金融政策の決定に影響が出る可能性もそれほど高くはなかった。ただし、それまでに承認が遅れ、もし原田審議委員が議長となったら、とのような決定を下すのかというのも、恐いながらも見てみたい気がした。

 ただし、来週、アルゼンチンで開催される20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に麻生財務相が出席できない事態となり、、G20における日本の発言力の低下なども危惧されている。今回、日本からは黒田日銀総裁と木原稔副財務相が出席する。すでにG20での古株もなっている麻生氏の欠席による影響は大きいとみられる。


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by nihonkokusai | 2018-03-19 14:38 | Comments(0)

2017年の米国債保有高、中国が前年比で1265億ドル増と大きく増加

 今年1月に中国当局が米国債の購入縮小もしくは停止を検討していると報じられたが、その後、中国当局が米国債購入の縮小または停止を検討しているとの報道について、誤った情報に基づいている可能性があるとの見解を示した。

 中国の米国債保有に何かしら動きがあったのか。米財務省が2月15日に公表した米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)を確認してみたい。

 これによると、昨年12月の国別の米国債保有高のトップは引き続き中国となっている。昨年12月時点の中国の米国債保有額は1兆1849億ドルとなり、11月比では83億ドル増加していた。年末ということで前年比と比較すると1265億ドルの増加となっていた。

 これに対して今回も2位となっていた日本は昨年12月の米国債保有額は1兆615億ドルとなり、前月比では226億ドルの減少となっていた。前年比では293億ドルの減少となる。

単位、10億ドル、()内は前年比増減

中国(China, Mainland)1084.9、+126.5

日本(Japan)1061.5、-29.3

アイルランド(Ireland)326.5、+38.3

ケイマン諸島(Cayman Islands )269.9、+6.2

ブラジル(Brazil)256.8、-2.4

英国(United Kingdom)250.0、+32.8

スイス(Switzerland)249.6、+19.6

ルクセンブルグ(Luxembourg )217.6、-6.7

香港(Hong Kong)194.7、+3.3

台湾(Taiwan)180.9、-8.4

 この数字を見る限り、中国が政策的に米国債保有額を減少させているとは言えない。2月7日に中国人民銀行が発表した今年1月末の外貨準備高は216億ドル増の3兆1600億ドルとなった。中国の外貨準備は12か月連続で増加しており、その結果、米国債の保有高が増加しているともいえそうである。

 昨年5月までは米国債保有高のトップは日本となっていたが、昨年6月に中国に逆転されて、その差が広がっている。米国債相場は今年の1月以降は下落トレンド(米長期金利は上昇)となっており、日本などはさらに保有額を減少させてきた可能性がある。

 米国の2018会計年度(2017年10月~2018年9月)と2019会計年度の歳出上限は合計3千億ドル程度引き上げられた。これにより米国の債券市場では米国の財政への懸念に加え、FRBの米国債保有額の減少も加わっての需給への懸念も出てきている。

 今後の中国や日本の米国債投資のスタンスが米長期金利の動向に影響を与える可能性もある。今のところ米長期金利が3%を大きく超えてくることは考えづらいが、サブシナリオのひとつとして考えておく必要があるのかもしれない。


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by nihonkokusai | 2018-02-26 09:57 | Comments(0)

物価目標の呪縛から日銀を解き放つ必要も、見えない我々への負担も意識すべき

 新年早々の東京株式市場は米国主体にロケットスタートとなっており、日経平均株価があっさりと23000円台に乗せて、上げ幅を拡大させてきている。この背景にあるのは、世界的な景気の回復である。リーマン・ショックやギリシャ・ショックに代表される世界的な金融経済危機が終焉し、新たなステージに入ってきたとも言えよう。

 2度の世界的な金融経済危機に際して、日米欧の中央銀行は過去に例のない大規模な金融緩和策を講じてきた。米国の中央銀行であるFRBはすでに正常化に着手しているものの、それも極めて慎重に行っている。英国の中央銀行のイングランド銀行も同様であり、欧州中央銀行(ECB)も正常化に向けた動きは極めて慎重である。日銀は表面上は向きさえ変えていないものの、とりあえず追加緩和に目を向けることはなくなりつつある。

 いずれにしても日米欧の積極的な金融緩和策により、大量の資金が金融市場で渦巻いており、その資金が米国の株式市場に向けられ、日本の株式市場にも入り込んでいる。もしかすると今後はコモディティと呼ばれる商品にも向けられる可能性もあり、原油価格が思わぬ上昇となる可能性もないとはいえない。

 見方によればこの状況はバブルの様相に見えなくもない。しかし、特に日本をみると来年の新元号のスタートや2020年の東京でのオリンピック・パラリンピックの開催なども控え、国内景気がさらに拡大し、株価はこれから本格的に上昇トレンドを迎える可能性も十分にありうる。

 あまり楽観的な見方も禁物であり、北朝鮮の地政学的リスクや中東リスク、欧州の政治動向などリスク要因にも目を配る必要はある。しかし、2007年あたりから2012年あたりにかけての世界的な危機的状況が再来する可能性は極めて低いことも確かである。

 このような好環境にあって、実は景気そのものの足を引っ張りそうなのが、日銀の異次元緩和ではなかろうか。経済・物価動向に沿った金利水準を市場で形成させず、日銀が無理矢理金利を押さえ込む必然性がますます見えてこない。国民に金利を与えずその分が我々の負担ともなっており、結局、日銀の異次元緩和政策は膨大な債務を抱えた国の財政には貢献する格好となっている。この状態で本当に良いものなのか、我々がよく考える必要があろう。もし金利が動けば金融機関も資金運用がやりやすくなり、その結果収益が改善し、これが金融株の上昇要因となり、株価をさらに上昇させる要因にもなりうる。潤沢な資金を抱える企業も多く、金利の上昇は以前に比べてそれほどのマイナス要因にならない。

 もしかすると今年は順調に物価が上昇してくる可能性もありうる。そうなれば、日銀は2%という物価目標に固執せずに、柔軟に政策金利、つまり長短金利の目標水準を変更させ、それにより景気や物価に好影響を与えるようにすべきではなかろうか。非常時の対策を現在のような好況時まで続けるのは極めておかしい。その分の負担がどこかに掛かることになり、それが実は我々国民に掛かっていることも認識すべきである。そろそろ物価目標の呪縛から日銀を解き放つ必要がある。今年は意外にそのチャンスなのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2018-01-07 11:13 | Comments(0)

もし原油先物が100ドル台回復となれば日銀の物価目標達成も?

 1月3日のニューヨーク原油先物市場でウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は大幅反発となり、中心限月の2月限は前日比1.26ドル高の1バレル61.63ドルで引けた。中心限月ベースでは2014年12月初旬以来、約3年1か月ぶりの高値を付けた。この水準は新たなシェール掘削が正当化されるために必要とされる水準の61ドルを上回っているとされる。

 ここにきての原油価格の上昇は、米北東部を寒波が襲っているためにヒーティングオイルの需要が高まったことなどによる短期的な要因も背景にあるものの、世界的な景気拡大による需要増加などが大きな要因である。

 それだけでなく過剰供給の緩和も当然ながら背景にある。石油輸出国機構(OPEC)とOPEC非加盟国のロシアなどの主要産油国による協調減産の効果が出ている。また、イラクのルアイビ石油相が、世界の原油在庫が減少している一方で、中国とインドの需要が増加していることから、2018年に原油価格が上昇すると楽観視していると述べていた(ブルームバーグ)。

 WTI先物のチャートをみるとすでに4日に62ドル台を付けて、節目とされる2015年につけたの目先の高値を抜けてきた。ただし、原油の需要が急激に増加したわけではなく、ここにきてややショートカバー的な動きも出たとみられ、いったんはこの水準が目先高値となる可能性も高いとみている。

 それでも、もしこのまま原油先物の上昇基調が止まらないとなれば、次の節目は100ドルあたりまで特にない。チャートを見る限りにおいてWTIの100ドル台回復は十分ありうる。ただし、シェールオイルとの兼ね合いなどもあり、WTIが100ドル台を回復する理由はいまのところ見い出せない。それでも2017年12月の世界の製造業購買担当者景気指数(PMI)が、約7年ぶりの水準になるなど、さらに世界的に景気が拡大する可能性もあり、WTIの100ドル台回復が絶対にないとも言い切れないことも確かである。

 景気の回復とそれに伴う原油価格の上昇となれば、日本の物価にも当然影響が出てくる。日銀の物価目標である消費者物価指数(除く生鮮食料品)は、日銀の金融政策などよりも原油価格の影響を受けやすい。原油価格の上昇などを背景に11月の消費者物価指数(除く生鮮食料品)は、すでに前年比プラス0.9%まで上昇してきている。

 ちなみにWTIが100ドルを超えるとなれば2014年7月以来となる。2014年7月の日本の消費者物価指数(除く生鮮食料品)は前年比プラス1.3%、同じ年の4月に直近のピークとなる前年比1.5%をつけていた。これには急激な円安調整、さらにはこの年4月の消費増税を控えての駆け込み需要や便乗値上げなども影響していたことも確かである。

 ただし、今回は2017年のような原油価格の高止まり状態継続ではなく、100ドルに向けた上昇基調となれば、消費者物価指数(除く生鮮食料品)の「前年比」への影響はさらに大きくなる。円安などにはあまり期待はできないものの、世界経済の回復により国内景気も好調を持続し、雇用のタイト化などの物価上振れ可能性要因もあり、これによって日銀の物価目標が達成される可能性もないとは言い切れなくなってきている。。

 そうは言っても、いまのところWTIの100ドル台を正当化しうる材料も見当たらないため、あくまでこれはいまのところ初夢というか、仮定・想定の話ではある。ただし、この点だけは強調しておきたいが、もし仮に原油価格の上昇を背景に日銀の物価目標が達成されたとしても、日銀の異次元緩和が主要因ではない。


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by nihonkokusai | 2018-01-05 10:17 | Comments(0)

韓国の利上げを指摘した日銀の政策委員の意図とは

 12月20、21日に開催された日銀の金融政策決定会合における主な意見が28日に公表された。このなかで「金融政策運営に関する意見」をピックアップしてみて行きたい。

 「現在の金融緩和政策のもとで、企業や家計の支出活動を支える金融環境は、きわめて緩和した状態にある。」

 これについては異論はない。

 「当面の金融政策運営については、これまでの方針を維持し、2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、現在の政策枠組みのもとで、強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが適当である。」

 このときの決定会合でも金融政策は現状維持となったが、それについての説明といえる。

 「息長く経済の好循環を支えて「物価安定の目標」の実現に資するべく、現在の金融政策を継続するべきである。」

 現状維持派の意見が続く。ただし、「息長く経済の好循環」を何故、非常時の対応の拡大版ともいえる異次元の緩和政策で支えねばならないのかはわからない。

 「2%の「物価安定の目標」達成にまだ距離がある現在は、金融政策は現状維持が妥当である。」

 つまりまだ出口の議論は早いぞということであろうか。

 「物価上昇の勢いが増す状況には距離があることから、腰を据えて、きわめて緩和的な金融環境を維持すべく、金融政策を運営していくことが必要であると判断している。」

 こちらも同様。

 「2%の「物価安定の目標」を実現するためには、適合的期待による予想物価上昇率の引き上げに時間がかかる可能性があることを踏まえ、強力な金融緩和を息長く続けることが重要である。」

 あれほどの緩和策を打ち出したにもかかわらず、適合的期待による予想物価上昇率の引き上げに時間がかかり過ぎていることについては、どのように説明するのであろうか。

 「今後、2%に向けて物価が上昇し、経済の中長期的な成長力が高まるもとでは、金融緩和政策の効果は強まることになる。そうした環境変化や政策の副作用も考慮しながら政策運営にあたることが必要である。」

 「政策の副作用」という言葉が出てきた。

 「海外の状況をみて「量的・質的金融緩和」の出口を求める議論が盛んである。しかし、直近の韓国の政策金利引き上げの背景を考えた場合、物価は 1.5%程度でアンカーされているといえ、実質GDPは平均3%以上で成長している。さらに、家計の債務残高はGDPの90%にもなっている。韓国の状況と比べても、日本の金融政策の転換は時期尚早である。」

 なぜ、突然、韓国を事例に持ってきたのであろうか。この発言は原田委員からのものとみられるが、日本の金融政策の転換は時期尚早であることを示すのに、韓国の事例を持ち出してくる必要があるのかががわからない。

 「先行き、経済・物価情勢の改善が続くと見込まれる場合には、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みのもとで、その持続性を強化する観点も含め、金利水準の調整の要否を検討することが必要になる可能性もあるのではないか。」

 内容からみて銀行出身の鈴木委員あたりからの発言か。今後、金利水準の調整の要否を検討してくるのかどうか。副作用についての発言とともに、金利水準の微調整についての意見が出てきたことはかなり興味深い。

 「消費税増税や米国景気後退などのリスク要因を考慮すると 、2018年度中に「物価安定の目標」を達成することが望ましく、10年以上の国債金利を幅広く引き下げるよう、長期国債の買入れを行うことが適当である。」

 片岡委員の発言であろう。10年以上の国債金利を幅広く引き下げれば、物価目標が達成できる仕組みについて具体的に説明してほしい、気がする。

 「ETFをはじめ各種リスク資産の買入れについては、株価や企業収益などが大きく改善していることや、今後も堅調に推移すると見込まれることを踏まえると、政策効果と考え得る副作用について、あらゆる角度から検討すべきである。」

 こちらでも「副作用」という表現が出ている。トヨタ出身の布野委員の意見のようにもみえる。ETFの買入に対しても調整する必要はあると思う。これについては市場との対話を重視すればできないことではないと思う。

 「現在の金融緩和政策は、企業の新陳代謝や規制改革によって労働生産性が高まる過程で増大する失業を吸収しうる経済環境を整えることで、労働生産性引き上げにも貢献する。」

 物価はどこに行ってしまったのか。労働生産性引き上げが物価にも影響するということなのであろうが、そもそも現在の金融緩和政策、つまり国債をたくさん買っているような政策がどのように雇用に働きかけているのか。まったく影響はないとは言わないまでも、あくまで金融政策は後方支援的なものではないのかと思うのだが。


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by nihonkokusai | 2017-12-29 09:30 | Comments(0)

紙幣はどのようにして誕生したのか

 中国の唐の時代の後期には、茶・塩・絹などの遠距離取引が盛んになるなど商業の発達に伴い銭貨の搬送を回避する手段として「飛銭」と呼ばれた送金手形制度が発生した。高額商品の売買には銭貨の「開元通宝」などでは量がかさんでしまう上、途中での盗賊などによる盗難の危険もあった。このため、長安や洛陽などの大都市と地方都市や特産品の産地などを結んで、当初は民間の富商と地方の商人との間によって「飛銭」という送金手形制度が開始された。

 これはたいへん便利なものであるとともに、手数料収入に目を付けた節度使(地方の軍司令官)や三司(財政のトップ)などもこれを模倣した。飛銭を利用する際に使われた証明書(預り証)が、宋代になると交子・会子・交鈔・交引などと呼ばれ、証明書それ自体が現金の代わりとして取引の支払に用いられるようになった。特に四川地方で発行された交子は世界史上初の紙幣とされている。

 紙幣はたいへん便利なものであったことで、その需要が増え、それに目をつけた政府は軍事費に当てるための財源として交子を乱発し、その価値を失ってしまった。政府に発行をまかせると紙片を乱発しかねないのは歴史が証明している。その後、新たな紙幣を発行するものの、やはり信用を落としてしまい、最終的には銅銭が復活することになった。

 しかし、なぜ中国で世界最初の紙幣が誕生したのであろうか。貨幣の材料となる貴金属などの産出が限られていたこともあるが、宋や元の時代の国家権力が強かったことも要因であろう。それとともに遠隔地との交易など商業の発達がそれを促したものといえよう。忘れてならないのは、紙そのものが中国で発明されたものであり、さらに印刷術も発達していたことが、紙幣の発行を可能にしたといえる。マルコ・ポーロの「東方見聞録」には、元で通貨ではなく紙幣で買い物をする様子を見て驚く場面が登場する。

 日本における現存する最古の紙幣は、1610年に伊勢の山田において、支払いを約束する預り証の形式をとって発行された山田羽書(はがき)とされる。

 伊勢神宮に仕える有力商人が、高い信用力と宗教的権威を背景に、釣銭などの煩わしさを少なくするために発行された紙幣であり、額面金額も銀1匁以下の小額となっていた。形や文様が統一されたことで、不特定多数の人々に交換手段として利用が可能なように作られており「紙幣」として利用されたのである。

 世界で最古の紙幣は10世紀に四川地方で発行された交子とされるが、日本はこれに次いで世界で二番目に古く紙幣を発行していたことになる。

 その後、私札は伊勢国、大和国、摂津国など近畿地方を中心に、有力商人がその「信用力」を元に発行し、室町時代末期から江戸時代初期にかけて約60年の間、流通した。

 こうした私札に目をつけた各藩が発行したのが「藩札」と呼ばれる紙幣である。藩札の最初は1630年に始まった備後の福山版のものと言われているが現物は残っておらず、現存するものとしては1661年の福井藩の札が最古のものとなっている。

 私札も藩札も江戸時代後期まで、ほとんど銀立の額面で発行されていたが、これは西日本では銀が経済の主流であったことが要因である。

 紙幣については乱脈な発行によるインフレへの懸念とともに、偽札の問題が生じる。世界で最初に紙幣を発行した中国では、偽札防止のため細かな文字や文様などを組み合わせ簡単には真似のできない工夫がされていたが、日本の藩札も同様に色刷りや透かしなどが実用化されていた。1856年に浜松藩が出した銀札にはオランダ語を入れるなどの工夫も行っていたのである。


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by nihonkokusai | 2017-12-14 09:36 | Comments(0)
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