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QRコード決済における統一規格の動き

 19日付けの日経新聞によると、経済産業省と産学官が立ち上げたキャッシュレス推進協議会が29日にもQRコード決済の統一規格を発表するそうである。

 ここにきてQRコードの決済方式が乱立している。LINE Pay、PayPay、楽天ペイ、Origamiなどに加えて、みずほ銀行は2019年3月にJコインペイを開始する予定で、7月ごろにファミマペイ、セブンペイとコンビニ系、またヨドバシカメラもヨドペイを開始するとの観測も出ている。

 現在、日本の事業者が行っている上記のQRコード決済では、どのように数字を発行するかの決まりはない。QRコード決済とは、店舗か顧客が提示するQRコードに12桁前後の数字などの情報が埋め込まれており、それを読みとることで支払いが完了する。異なる事業者が顧客に対して同じ番号のQRコードを発行していれば、誤請求が起きる危険性が発生する。

 クレジットカードなどでは、決済事業者ごとに他社と重複しない番号を割り当てた上で、事業者は利用者ごとに下何桁かの数字を加えた番号を決める形式となっている。

 クレジットカードの番号は、ISO/IEC 7812という国際規格に定められた規則に基づいて決められている。先頭の6桁の番号はプレフィックスと呼ばれ、カードの属性を表している。つまり最初の6桁でカードの種類を区別や分類ができる。これはIIN (Issuer Identifier Number、発行者識別番号)、またはBIN (Bank Identification Number、銀行識別番号) であり、クレジットカードを発行した企業や団体が識別可能となる番号となっている。そして、7桁目から最終2桁目までは、個別の口座番号が割り振られている。

 JCBなどの国際ブランドのカードを発行している事業者はすでに割り振られた番号を持っているが、新規参入の事業者は手数料を支払って新たに番号を発行してもらう必要がある。システムにかかる費用を安価に抑えてこれを実現してきた日本の事業者は、クレジットカードと同等の仕組みを求められることに反発していた。(日経新聞)。

 QRコード決済の発達した中国でも結局は、不正利用を防ぐために、クレジットカードなど既存の決済事業者の意見が採用されて、高コストながらセキュリティーを重視する仕組みとなったそうである。

 ただし、統一したQRコードであれば、すべての事業者のQRコード決済が使えるわけではなく、加盟店がそれぞれの事業者と契約を結ぶ必要がある。これはクレジットカードも同様で、たとえば、この店ではVISAは使えるがJCBは使えないといったことと同様となる。

 今回の統一規格を事業者が採用する義務はまだない。費用負担を嫌がり採用しない事業者が出てくれば、規格の統一も骨抜きになる可能性があると、日経新聞は指摘している。

 中国も乱立していたQRコード決済が2つ程度のQRコード決済に絞られてきたことで使い勝手が向上したとみられる。日本ではまだQRコード決済の普及については過渡期にあるともいえる。


# by nihonkokusai | 2019-03-20 09:16 | キャッシュレス | Comments(0)

日本のキャッシュレス決済比率は本当に20%程度なのか

 政府は「未来投資戦略 2017」にて、KPI(Key Performance Indicator:重要な評価指標)として2027年までにキャッシュレス決済比率を4割程度とすることを目指すとしている。

 4割程度という数字は、2016年の日本におけるキャッシュレス決済の比率が2割程度であったことで、その「2倍」を意識しているとみられる。

 キャッシュレス決済の比率が2割程度という元になっているデータは下記の経済産業省や日銀の資料に出てきている。

経済産業省「キャッシュレスの現状と推進」2017年8月

経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」2018年4月

日本銀行「キャッシュレス決済の現状」2018年9月

 上記の資料によると、2015年現在のキャッシュレス決済比率の各国比較をみると日本が18%、韓国が54%、中国が55%、米国が41%となっていた。

 上記の数字は、日本以外については、EUROMONITOR INTERNATIONAL年次レポート(クレジットカード、デビットカード、プリペイドカード(電子マネー含む)を含む。)による。

 日本については、内閣府「2015年度国民経済計算年報」民間最終消費支出によるもので、クレジットカードの決済については、2012年までは加盟クレジット会社へのアンケート調査結果を基にした推計値、平成25年以降は指定信用情報機関に登録されている実数値を使用。デビットカードについては、日本デビットカード推進協議会(J-debitのみ)。電子マネーについては日本銀行「電子マネー計数」と脚注にある。

 日本銀行「電子マネー計数」については、日銀のサイトの決済動向にデータが記載されている。

日本銀行 決済動向

 この電子マネーについては、下記のようになっている。

 プリペイド方式のうちIC型の電子マネーが対象。本調査は、調査対象先8社(具体的には、専業系:楽天Edy株式会社<楽天Edy>、鉄道会社などが発行する交通系:九州旅客鉄道株式会社<SUGOCA>、西日本旅客鉄道株式会社<ICOCA>、株式会社パスモ<PASMO>、東日本旅客鉄道株式会社<Suica>、北海道旅客鉄道株式会社<Kitaca>、小売流通企業が発行する流通系:イオン株式会社<WAON>、株式会社セブン・カードサービス<nanaco>)から提供されたデータを集計したもの。交通系については、乗車や乗車券購入に利用されたものは含めていない(日本銀行のサイトより)。

 日本のキャッシュレス決済比率が2割という数字は2015年現在のものであり、やや古い。それだけでなく、あくまで消費に関わる決済においてのカードや電子マネーの利用額となっている。交通系電子マネーに関しては、乗車や乗車券購入に利用されたものは含まれていない。

 これには銀行口座による口座振替分について含まれているのかは現状はわからないが、2018年11月9日付け日経新聞によると、金融庁が国内のキャッシュレス決済に関する独自の試算結果を明らかにし、これによると、3メガ銀行に給与振込口座を持つ会社員らのお金の流れをみると、クレジットカード代金などの口座振替や振り込みが54%を占め、現金の引き出しは45%にとどまることが分かったとしている。

 上記の金融庁の資産のほうが実態に近く、日本のキャッシュレス決済比率については、銀行振り込みや口座振替、交通系電子マネーによる乗車や乗車券購入などを含めた、もう少し広範囲の捉え方をすれば、2割という数字は小さすぎるようにも思われるのだが。


# by nihonkokusai | 2019-03-19 09:43 | キャッシュレス | Comments(0)

独自通貨を持つ国はいくらでも借金できるとの理論は正しいのか

 MMT(Modern Monetary Theory、現代金融理論)と呼ばれる理論が注目を集めているそうである。

 MMTの提唱者の1人である、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授によると、ユーロという共通通貨があり、独自の通貨を持たないギリシャなどは、独自の判断で無制限の流動性供給を行うことはできない。それゆえデフォルトリスクがある。しかし、独自通貨を持つ米国のような国では、政府債務の増加がマクロ的な供給不足からインフレを起こすような場合でなければ、経済成長と雇用の増加が続いている限り、政府債務の増加自体は問題ないというのが、ケルトン教授の説明するMMTのコア部分だとか(3月8日のロイターの記事より)。

 この理論は米国だけでなく日本の状況も意識したものではなかろうか。日本の債務残高はすでにGDP比で200%を超えている。日銀は大胆な金融緩和策として大規模な国債の買入を実施しており、年間の国債発行額を買い入れるといった財政ファイナンスに近い政策を行っている。それにもかかわらず、物価は上がらず、長期金利も日銀の政策で低位に操作されている。

 これが永遠に続けられるとするのがケルトン教授の理論であろう。リーマン・ショックやギリシャ・ショックによって財政政策に限界が来て金融政策に比重が移り、金融政策も限界が見えたら今度は財政政策と、これはフリーランチ・セオリーの延長ともいえる。

 問題となっているのが、ケルトン教授は2016年の米国大統領選では、バーニー・サンダース上院議員の顧問を務めており、さらに昨年11月にニューヨーク州から連邦議会下院選に立候補し、女性として史上最年少の米下院議員となったアレクサンドリア・オカシオコルテス氏がMMTを支持したことである。

 これによってMMTに対して注目が集まり、FRBのパウエル議長は2月26日の議会証言で「自国通貨での借り入れが可能な国にとって赤字は問題でないという人もいるが、私は間違っていると思う」と明確に否定することになる。クルーグマン氏もMMTに対し「支離滅裂」と一蹴し、サマーズ氏もワシントン・ポストのコラムで新たな「ブードゥー経済学だ」と批判した(ロイター)。

 MMTの考え方が正しいとすれば無税国家が成立しうる。しかし、現在の日米の長期金利が低位安定しているのは、政府や中央銀行に対する信認があればこそである。その信認がいったん毀損すると市場は安定感を喪失することになる。信用は築くのはたいへんだが、いったん崩れると取り戻しがきかなくなる。ギリシャは自国通貨でなかったので危機が生じたのではなく、信認が毀損したために危機が起きたのである。

# by nihonkokusai | 2019-03-17 10:32 | アベノミクス | Comments(0)

仮想通貨の呼び名を「暗号資産」に変更する理由

 政府は15日の閣議で、仮想通貨の交換業者や取引に関する規制強化策を盛り込んだ金融商品取引法と資金決済法の改正案を決定した。20か国・地域(G20)会議などで使われる国際標準に表現を統一し、仮想通貨の呼び名を「暗号資産」に変えるほか、サイバー攻撃による流出に備えて顧客に弁済するための原資を持つことを義務づける(15日付日経新聞電子版)。

 すでに、これまで仮想通貨と呼ばれていたものは、G20をはじめ国際会議で「暗号資産(crypto-assets)」という表現が主流になりつつあり、日本もそれに合わせて呼び方を変えることになる。

 円やドルなど法定通貨との混同を防ぐため明確に区別する必要性に加え、交換の容易性、価値の安定、保管の安全性などにおいて欠点も露出しており、通貨と呼ぶにはふさわしくないとの判断とみられる。

 仮想通貨はキャッシュレス化の旗頭的な存在ともいわれていたときがあったが、キャッシュレス化がすなわち仮想通貨ではない。既存の法定通貨に取って代わり、国に縛られずに資金の移動も可能となる未来の通貨といった認識もあったが、通貨にとって必要な信認そのものが得られることがなかった。

 キャッシュレス化の推進の理由として、現金はマネーロンダリングなど通じて犯罪にも使われるために必要との意見もあった。ところが、結果として仮想通貨の持つ不備をつかれ、北朝鮮が仮想通貨の630億円あまりを盗んでいたとの報告書も出ていた。むしろマネーロンダリングなどに使われやすいものであった。

 石でも貝でも紙でも金でも通貨として使うことはできることを歴史が証明している。しかし、それはあくまで使う人達の相互の信認があっての利用となる。ハイパーインフレが起きているベネズエラなどでは自国通貨への信認が失墜し、それよりは仮想通貨の方が相対的に安心とされるかもしれない。しかし、管理通貨制度がしっかりし、国や中央銀行への信認が得られている国の通貨は、やはり使いやすい。その通貨への信認が続く限りは、法定通貨による決済のキャッシュレス化は進められても、通貨そのものが仮想のものに取って代わるという事態は考えづらい。


# by nihonkokusai | 2019-03-16 10:09 | キャッシュレス | Comments(0)

プレミアム「キャッシュレス」フライデーを始めるとか

 経済産業省とキャッシュレス推進協議会は13日にキャッシュレス決済の認知や利用を拡大するための施策を始めると発表した。3月29日の「プレミアムフライデー」に合わせて、プレミアム「キャッシュレス」フライデーと位置付け、キャッシュレス推進協議会に参加する各社が、「キャッシュレス決済」の周知・告知を店頭のポスターなどを通じて行うそうである。

 4月26日の「プレミアムフライデー」と4月27日からはじまる10連休を「キャッシュレスウィーク」と位置付け、各社が一斉にキャンペーンを実施するとか。キャンペーンの内容は、別途発表されるようである。

 そもそもプレミアムフライデーが浸透しているのかどうかも不透明なところ、その不透明なプレミアムフライデーを浸透させるためにもキャッシュレスを組ませてきたようである。

 経済産業省の永井武彦消費・流通政策課課長によると、現金決済インフラを維持するためにATM設置費用で4120億円、レジ締めの人件費で5000億円など、年間1兆6000億円を超えるコストが発生しているとか。キャンペーンを通じて、消費者にキャッシュレス決済のお得さを伝えるとともに、人手不足に悩む事業者の生産性向上につなげたい」とか(流通ニュースの記事より引用)。

 すでにPayPayなどが大規模なキャンペーンを行っているが、プレミアムフライデーの認知度の向上や大型連休に合わせて、経済産業省とキャッシュレス推進協議会があらたな仕掛けを行うようである。

 キャッシュレス推進協議会の福田好郎事務局長も「キャッシュレスという言葉は知られてきたが、実際に利用するところまで至らない人も多い。全国で一斉に積極的なキャンペーンを行うことで『やってみよう』と思わせることができれば」とコメントも紹介されていた(IT Media NEWS)。

 日本ではそれほどキャッシュレスの認知度は低いのであろうか。老若男女を問わず、財布のなかにはクレジットカードやコンビニ・スーパーなどで使える電子マネーカードが数枚は入っていると思われる。電車を使うためには定期などでも交通系カードを使い、駅の売店でも利用しているのではなかろうか。お年寄りも電車を使うときに切符を買うよりも交通系カードを使う機会が多いはず。

 給与所得者の給与、フリーランスの報酬、年金生活者の年金も銀行振り込みが中心のはず。その銀行口座からアマゾンなどでのネットストアーで買い物した代金がクレジット会社経由で引き落とされる。給与所得者は年金や健康保険の料金も自動的に支払っており、公共料金も引き落としで行っている人も多いはず。

 たしかに日本人の現金保有高は異常に高いとされている。消費財の購入の際の現金決済比率もそこそこ高い。災害時も意識して一定の現金保有をしていることも確かである。しかし、だからといってキャッシュレス決済が普及していないわけではない。

 災害時や停電時にも使える現金のありがたさ、現金の持つ匿名性なども知らずに意識されて、現金決済が残っている面もある。その現金決済を少しでもキャッシュレスに振り向けようとのキャンペーンのようではあるが、訪日観光客まで意識したものだとすれば、今後、日本でいったいどのようなキャッシュレス化を促進していきたいのかという具体的な姿も見えてこないのも事実である。


# by nihonkokusai | 2019-03-15 10:11 | Comments(0)

麻生財務相が日銀の物価目標の柔軟化に言及

 日本商工会議所の三村明夫会頭は7日のインタビューで、日銀が黒田東彦総裁の下で2013年4月から実施している異次元緩和について「非常に効果があった」と評価する一方で、長期化に伴い「弊害もいろいろ出てきている」と指摘。「もうそろそろ2%物価上昇にこだわらない、もう少し柔軟な金融政策をとってほしい」と述べた(ブルームバーグ)。

 そして、麻生太郎財務相は12日の参院財政金融委員会における共産党の大門実紀史氏への答弁において、日本銀行が達成を目指している2%の物価目標について「もう少し考えを柔軟にやってもおかしくないのではないか」と語った(13日付日経新聞)。

 三村会頭は2013年4月から実施している異次元緩和について「非常に効果があった」と評価しているそうだが、そもそも2013年4月から実施した異次元緩和は2%という物価目標を2年で達成するというものであり、何の効果があったというのてあろうか。

 日銀の異次元緩和によって日本の雇用が回復し、息の長い景気回復が実現されたというのであれば、それは日銀の掲げた物価目標は達成されずとも、日本経済はどういうわけか回復してきたということになる。これは手段とその効果の関係からはおかしな見方となる。

 日銀の異次元緩和は物価目標達成を掲げたが、その目標は達成しなかった、それでも効果があったと判断される理由を述べよと大学入試の問題で出されたとすれば、どのような解答が得られるであろうか。

 また、麻生財務相は「2%と最初に目標に掲げたのでどうしてもそれをやらざるを得ないという形になっている」と指摘。「2%に行っていないからといって怒っている一般庶民がいるか、私の知っている範囲では1人もいない」と語った(日経新聞)。

 政府が日銀に2%という物価目標を押しつけ、そのために日銀に財政ファイナンスに近い政策を取らせ、そこまでしても結果として物価は日銀の過度な緩和でも動かせなかった。そもそも2%という物価が日本に本当に必要なのか。そう思っている「庶民」は麻生大臣ではないが、ほとんどいないと思う。2%はグローバルスタンダードというが、日本の物価指数そのもののクセなどもあるが、これまでの推移をみてみると、日本の消費者物価指数はせいぜい1%程度あたりが適切な水準との見方もできよう。無理矢理2%に引き上げる必要はないというか、金融政策で引き上げようとの考え方はおかしい。

 三村会頭は異次元緩和の長期化に伴い「弊害もいろいろ出てきている」と指摘した。その具体的な弊害としては、超低金利の長期化で中小企業の資金繰りを支える地域金融機関の経営悪化を招いていることや、国債の発行コスト低下で政府の財政規律を緩めていることに加え、企業が設備投資や賃上げを行うインセンティブを削いでいる可能性があることを挙げた(ブルームバーグ)。

 特に金融機関への副作用は今後、じわりじわりと表面化してくることも予想される。これは金融機関の経営だけに止まらず、日本経済そのものを悪化させかねず、状況によっては日本発の金融危機を招きかねない。

 日銀は物価目標を柔軟化するとともに、マイナス金利の撤廃、長期金利の調節レンジの拡大、できれば長期金利操作そのものの停止を行う必要がある。

 すでに日銀の資産は膨大なものとなっており、それを維持することによって緩和効果が得られることを前面に打ち出し(いわゆるストック効果)、その緩和効果を今後も継続させることをあらためてガイダンスで示すことで、金融市場への影響を極力抑えることはできるのではなかろうか。そうすることによって金融機関への影響を軽減させ、結果としてこれは株式市場にもプラスの影響を与えうるのではなかろうか。


# by nihonkokusai | 2019-03-14 10:09 | 日銀 | Comments(0)

日本経済のぬるま湯状態はいつまで続くのか

 米商務省が11日発表した1月の小売売上高は前月比0.2%増となった。12月が1.6%減(今回1.2%限から下方修正)と大きく落ち込んでいたが、そこから回復し、市場予想も上回っていた。昨年12月の減少は政府機関の閉鎖や季節要因が影響した可能性が高いとされており、米経済は引き続きしっかりとの見方もできなくもない。

 これに対して欧州や中国の昨年あたりからの景気減速は続いている。ドイツの1月の鉱工業生産指数は前月比0.8%低下と、予想外のマイナスとなった。自動車生産の落ち込みが響いたようであるが、ストライキが発生するなど特殊要因が影響したとの見方もある。

 それでもECBは今年の成長率を前回12月における1.7%から1.1%に大きく下方修正し、これを受けて年内に利上げを予定しないことをガイダンスで示し、条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO3)を2019年9月に開始することも決定した。これらは政策変更ではないものの、より緩和的な姿勢を示したともいえる。

 FRBも年内利上げ観測を後退させ、保有資産の圧縮計画を早期に切り上げることも検討している。こちらも正常化にブレーキを掛け、緩和効果を醸し出そうとしている。

 国内の経済指標をみてみると内閣府が8日発表した2018年10~12月期GDP改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.5%増、年率換算では1.9%増となっていた。ただし、このプラスは前期の7~9月期に自然災害の影響で落ち込んだ反動が出た面もあることで、経済成長が力強さを欠く状況は変わらないとされている。

 内閣府は7日に発表した1月の景気動向指数では「下方への局面変化」があったと指摘しており、景気のピークは数か月前に過ぎ下り坂に入っていた可能性を示した(8日付東京新聞)。

 国内景気は欧州や中国の景気減速影響もあり、同様に減速傾向にある可能性が高い。そもそもが息の長い景気回復と呼ばれているものは、オリンピック需要などもあったろうが、世界経済の回復基調による影響が大きかったとみられる。

 日本では息の長い景気回復なか物価も抑制され、物価目標の達成はほぼ困難な状況となり、大胆な緩和策は継続せざるを得ない。国債の買入の量そのものは縮小させてはいるものの、マイナス金利は継続している。これは金融機関の体力をじりじりと奪っていることも確かであり、このため日銀としても副作用にも目を配らざるを得ない。

 日本経済のぬるま湯状態はいつまで続くのか。そして、日銀の異次元緩和もいつまで続けるのか。時間が何かを解決するというよりも、時間が日本経済や金融の潜在リスクをじわりじわりと高めているとの見方もできなくもない。


# by nihonkokusai | 2019-03-13 09:31 | Comments(0)

米雇用統計で非農業雇用者数の増加幅が急減したが

 米労働省が8日に発表した2月の雇用統計は、非農業雇用者数が前月比2万人増となった。増加幅は前月の31.1万人増から急減し、予想の18万人増も大きく下回る結果となった。

 2万人という増加幅は、ハリケーン被害があった2017年9月の1.8万人増以来、1年5か月ぶりの低さとなる。今回は米東海岸などで続いた降雪の影響で雇用の伸びが低迷したとみられる。このうち建設業は前月比3.1万人減と就業者数が2016年5月以来の純減に転じていた(8日付日経新聞)。

 ただし、2月の失業率は3.8%と前月から0.2ポイント低下しており、これは約50年ぶりの水準という歴史的水準を維持しており、さらに2月の平均時給は27.66ドルと前年同月比では3.4%増となっていた。

 非農業雇用者数はやや振れが大きく、のちほど大きく修正される可能性もあるため、今後の数字を確認する必要があり、単月の数字だけをみて悲観する必要はない。さらに失業率は低下しており、最近注目度が高い平均時給も上昇している。

 とはいえ、ECBはユーロ圏の2019年の成長率を前回12月における1.7%から1.1%に大きく下方修正した。さらに中国の2月の貿易統計で、人民元建て輸出が急減するなど、世界経済が減速している兆候があらためて現れている。

 これが米国にも波及しているのか。昨年12月の米国の小売売上高は市場予想に反し減少しており、減少率は過去9年で最大となった。これは米政府機関の一部閉鎖も影響していたとみられるものの、消費が低迷しつつある可能性がある。2月の小売業の就業者数も減少していた。ただし、11日に発表された1月の米小売売上高は前月比0.2%増となり、予想を上回っていた。

 たしかに欧州や中国の景気減速による影響を米国はさほど受けずに一人勝ちかとの見方がある。しかし、循環的な景気サイクルによる影響なども考慮すれば、米国景気もスローダウンするとの見方もできるのではなかろうか。米大統領選挙も控え、景気の落ち込みというか株価の下落はなんとか避けたいトランプ政権が対策を講じるとの期待もある。しかし、米国の財政悪化も意識されるなか手段は限られるのではなかろうか。


# by nihonkokusai | 2019-03-12 10:10 | 景気物価動向 | Comments(0)

ECBは正常化にブレーキ、景気減速を警戒

 欧州中央銀行(ECB)は7日の金融政策等を決める理事会において、政策金利そのものは据え置いた。しかし、金融政策の先行き指針を示すガイダンスにおいて、ゼロ%の主要政策金利などの水準を、前回までの「少なくとも2019年夏まで」維持するとしていたものから、今回は「少なくとも年末まで」と修正してきた。つまり年内に利上げをすね予定しないとの意志表示となる。

 ECBが今回公表したユーロ圏の新しい経済見通しでは2019年の成長率を前回12月における1.7%から1.1%に大きく下方修正し、消費者物価上昇率についても1.6%から1.2%に下方修正した。

 景気の減速とともに物価の低迷が意識されたことで、このタイミングで利上げに向けたガイダンスを変更した。市場ではECBの年内利上げは困難との見方が強まっていたことで、これに対する意外感はなかったものの、はっきりとガイダンスで打ち出してきたことがややサプライズとなった。

 そして市場ではこちらが注目されていた新たな資金供給制度、条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO3)についても、2019年9月に開始することも決定した。

 ECBは2016年から2017年にかけて資金供給策(TLTRO2)で7000億ユーロ超を銀行に貸し出していたが、2020年6月以降に満期を迎える。このため、その第三弾を講じることによって、同様の政策の効果をさらに持続させる。2021年3月までの期間限定ながら、償還期限2年の低利資金を銀行に供給する。

 TLTRO3の発表があるかもしれないとの観測はあったが、これも不透明感が強く、市場はどのような発表があるのかを気にしていた。内容はTLTRO3だけでなく、年内利上げなしとの意志表示、それの要因ともなるユーロ圏の経済見通しの大幅下方修正があり、ややサプライズとなった、

 これらを受けて7日の欧州の国債は買い進まれ、米債も買われた。欧米の株式市場は欧州含めた世界経済の減速懸念から下落した。外為市場ではユーロがドルや円に対して下落した。

 7日のドイツの10年債利回りは0.06%に低下し、再びゼロ%を伺うような動きとなってきている。日本の国債利回りもさらなる低下余地を探るような動きとなることも予想される。


# by nihonkokusai | 2019-03-09 07:22 | 中央銀行 | Comments(0)

日銀は実質的に長期ゾーンの国債買入を減額

 3月6日に日銀は予定通りに国債買入をオファーした。注目されていたのはそのオファー額となっていた。

 2月28日に日銀が公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」では、残存5年超10年以下のいわゆる長期債の買入の部分に修正が入っていた。2月のオファー金額は3000~6000億円程度が5回であったものが、3月の予定はオファー金額が3000~6500億円程度に修正された上で、回数が4回に減らされていた。

 このような修正においては、修正された金額の中値あたりが実際のオファー額となっていた。つまり3000~6500億円の中値は4750億円となる。しかし、50億円刻みということはなかったので、この場合4700億円、もしくは4800億円となる。

 ただし、年度が替わる4月以降の国債発行額はカレンダーベースで減額されることもあり、それに応じた減額を想定すると4500億円程度に買入額を引き下げてくる可能性もあった。

 6日に提示された残存5年超10年以下の買入のオファー額は4800億円となった。前回までの5年超10年以下のオファー額は4300億円となっていたことで、2月の4300億円の5回分の2兆1500億円から、3月は4800億円の4回の1兆9200億円となることが予想され、実質的に減額となる(途中での金額修正の可能性はゼロではない)。

 どうやら、この4800億円がコンセンサスともなっていたようで、このオファー額を確認後、6日の債券先物は買い戻しの動きを強めた。

 5日の債券市場では引け後に10年国債カレントの利回りがプラスに転じるなど、やや仕掛け的な動きがあり、ナイトセッションの先物も米債安などもあって出来高を伴って売られていた。その買い戻し的な動きが6日に起きたものともみられる。

 残存5年超10年以下の買入についてはいずれ再度の減額修正も予想される。


# by nihonkokusai | 2019-03-08 09:54 | 国債 | Comments(0)
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