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2011年 11月 16日 ( 2 )

牛熊ゼミナール金融の歴史第35回 J・P・モルガンと米国中銀の設立

 ジョン・ピアモント・モルガン(J・P・モルガン)は、J・P・モルガン個人銀行の最高責任者であり、1890年代以降はニューヨーク・ファースト・ナショナル銀行の中心人物であり、さらにまた1907年以降はナショナル・シティ銀行の主要株主でした。これらを拠り所としてアンドリュー・カーネギーほか米国内の鉄鋼会社を買収し、USスチール社を設立し、この結果、世界初の時価総額10億ドル企業が誕生しました。

 1895年にアメリカの金準備が大きく落ち込み、これ対して銀行シンジケート団を動かしてアメリカからの金流出を阻止したのもJ・P・モルガンです。また、銅に対する大規模な投機の失敗が銀行取り付けを誘発し、それによって迎えた1907年の金融危機に際してもきわめて重要な働きをしています。この危機に際してJ・P・モルガンが出した提案が1913年の連邦準備制度設立のきっかけのひとつとなりました。

 米国は連邦制を採用し、さらに東部と西部、北部と南部といった地域的な対立などがあったことで、中央銀行の設立には大きな抵抗があったのです。しかし、19世紀から20世紀にかけて幾度も恐慌が発生し、銀行の倒産や企業の倒産などにより深刻な不況が生じました。このため「金融システムの安定化」が求められ、中央銀行の設立の機運が高まったのです。

 1913年に12の地区連邦準備銀行と、これを監督する連邦準備委員会がワシントンに設立されました。中央銀行の設立には引き続き反対意見も多かったことから、全米の12地区に地区連邦準備銀行を設立し、それぞれの地区で銀行券である連邦準備券が発行され、各行ごとに公定歩合が設定されることとなったのです。


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by nihonkokusai | 2011-11-16 16:00 | 金融の歴史 | Comments(0)

欧州の信用危機に学べ

 2010年1月に欧州委員会がギリシャの財政に関して統計上の不備を指摘し、ギリシャの財政状況の悪化が表面化した。ギリシャは2009年10月に政権交代が行われたが、パパンドレウ新政権に変わったことにより前政権が行ってきた財政赤字の隠蔽が明らかになったのである。これを受けて格付会社は、相次いでギリシャ国債の格付けを引き下げ、ギリシャ国債は暴落した。

 ギリシャ危機が生じたのは、その債務そのものの大きさよりも、政府がそれを隠蔽していたことで政府への信認が失墜したことが大きかった。しかし、市場はギリシャの財政問題をクローズアップしたことにより、同様に不動産バブルの後遺症により債務状態が悪化したアイルランド、さらにポルトガルにも飛び火したのである。

 金融危機後の銀行の救済で深刻な財政危機に陥ったアイルランドは、2010年11月末に欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)との間で総額850億ユーロ規模の緊急支援を受けることで合意した。欧州最大の独立系中央清算機関であるLCHクリアネットが、アイルランド国債に対する証拠金を11月10日に引き上げ、それがひとつのきっかけとなり、アイルランド国債の利回りが上昇した結果、支援を仰ぐこととなった。

 2011年4月にポルトガルのソクラテス首相はテレビ演説において、ポルトガル政府が欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会に金融支援を要請することを決めたと述べた。支援要請はこれにより、ギリシャとアイルランドに次いで3か国目となった。この際にも、 LCHクリアネットによる証拠金の引き上げがあった。

 そして、今度は巨額の債務残高抱えるイタリアにも信用不安が及んだ。政権基盤が脆弱であった分、財政再建が遅れがちとなっていたことが懸念材料となった。2011年11月8日のイタリア下院での2010年度会計報告に関する法案の採決は可決されたものの、ベルルスコーニ政権が下院で絶対多数を維持するための票数を割り込んだことで、首相は財政緊縮法案が来週議会で可決され次第、辞任する意向を表明した。

 ベルルスコーニ首相の辞任表明でイタリアに対する信用不安はいった後退するかに思われたが、11月9日に欧州の証券決済機関のLCHクリアネットが、イタリア国債の取引に必要な証拠金を引き上げたことをきっかけに、イタリアの10年債利回りが7%台に上昇し、アイルランドやポルトガルが金融支援を余儀なくされた水準であるところの長期金利7%という分岐点を突破した。

 昨年のギリシャを皮切りに、債務問題がアイルランドやポルトガルにも飛び火し、ついにユーロ圏でドイツ、フランスに次ぐユーロ圏で第3位の経済規模となっているイタリアにも飛び火した。イタリアの経済規模はギリシャなどに比べて格段に大きく、仮にイタリアの債務問題が深刻化すれば、ギリシャの債務問題の比ではない。

 しかし、イタリアは債務残高こそ巨額なものとなっているが、ユーロ圏内ではドイツとともにプライマリー・バランスは黒字となっており、2011年の財政赤字はGDP比で4.1%と、これはフランスの5.8%よりも低い数値である。イタリアの足下の財政についてはむしろ健全とも言える。決して財政状態がそれほど悪くない国でも、このように政治の不安定さや財政再建の遅れ、そして巨額の債務残高を背景に信用不安は起こりうることをイタリアが示している。

 つまり、決して盤石とはいえない日本の野田政権は、財政再建を目指してはいるが消費税増税にしても民主党内での反発も強い。TPP問題も今後の動向によっては党内の分裂を招きかねない。さらに日本の債務残高はイタリアの比ではない。日本の2011年の財政赤字はGDP比で10.5%もあり、債務残高のGDP比ではイタリアの120.6%に対して日本は233.2%と非常に大きく(IMF調べ)、もしも何かのきっかけで日本に対する信用不安が起きれば、現在イタリアで起きている同様のことが、日本でも起きうる。

 イタリアの長期金利と日本の長期金利を比べると1995年あたりからの動きは非常に似通っていたことがわかる。1998年にイタリアの長期金利は6%を割り込んでから、この6%が天井となっており、日本は1999年2月に一時長期金利が2%を超えたが、その後はこの2%が天井となり長期金利は低位安定していた。

 イタリアがその6%を超えてきてから利回り上昇が加速したように、日本でも信用不安が生じれば2%をあっさり超えてくることが予想される。しかも1999年あたりに比べて国債残高は大幅に増加しており、日本の長期金利の上昇により国内金融機関に大きな打撃を与える上に、利払い費用の増加により財政をさらに悪化させる。

 日本の場合には国内資金で日本国債が賄われなくなったときに、このような長期金利の上昇を引き起こす可能性がある。これが潜在的な不安要素になっており、何かのきっかけ次第では日本の債務問題がクローズアップされ、急激な長期金利の上昇を招き、世界経済に大きなショックを与えかねない。これを防ぐためには、財政再建を急ぐほかはない。それを欧州の信用危機は教えてくれている。


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by nihonkokusai | 2011-11-16 14:19 | 財政 | Comments(0)
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