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2011年 11月 05日 ( 3 )

自らIMFの視察団受け入れを申し出たイタリア政府

 NHKの報道などによると、4日にイタリア政府は緊縮財政を確実に進めるため、IMFの監視を受けることで合意したと伝えられた。1997年11月、韓国政府はIMFに200億ドルの緊急支援を要請し、これにより韓国はIMFの管理下に入った。この際もIMFは韓国に監視団を送り、緊急融資を行うのと引き換えに厳しい緊縮財政などを求めた経緯がある。しかし、今回は、イタリア政府による自発的な申し出に基づくものであり、融資などを伴うものではなく、財政再建策の進捗状況を点検するためのものだとしている。

 以前にこのコラムでも書いたが、イタリアのベルルスコーニ首相は、11月15日までに経済行動計画を提示することを確約し、2013年までに財政の均衡化を目指す一連の措置を提示した。ここには2026年までに年金の支給開始年齢を67歳に引き上げる方針が盛り込まれた。ただし、この年金制度改革をめぐっては、今年初めから女性の年金受給開始年齢について国内で連立を組む北部同盟と対立し、その北部連盟は経済改革の柱となる年金制度の改革で大きな譲歩をすることを拒んでおり、ベルルスコーニ首相は難しい立場に追い込まれている。

 イタリアに対しては、ユーロ圏の他の加盟国から追加の財政再建策を求める圧力が高まっている。イタリアの経済規模はギリシャなどに比べて格段に大きく、もし仮にイタリアの債務問題が深刻化すれば、ギリシャの債務問題の比ではない。イタリアはドイツ、フランスに次ぐユーロ圏で第3位の経済規模となっており、世界の中でも第7位の規模である。公的債務は1.8兆億ユーロとなっている。

 イタリアの10年国債の利回りは、今年6%台に乗せたあとECBによるイタリア国債の購入により5%以下まで低下したが、その後再び上昇基調となり、現在は6.4%近辺にまで上昇しており、このまま分岐点ともされる7%に向けて上昇する可能性も出てきた。

 ギリシャの動向はまだまだ予断を許さない状況ながら、欧州の信用不安はイタリアにまで及ぼうとしている。イタリア政府としては、積極的な財政再建策を進める以外に手はないものの、ギリシャ同様に国民の犠牲を強いる政策に対しては、反対する声も強い。これに対してIMFという外部機関の意見を聞く格好で、国民に対して財政再建に向けた協力を求めることが目的であろう。

 イタリアは過去も財政再建に向けて手を打ってきたことがある。1990年代前半までイタリアは巨額の財政赤字となっていた。このため、イタリア政府は欧州通貨統合への参加に向けて強力な財政改革1992年より実施した 。財政改革開始前の1991年における財政赤字の対GDP比は11.5%であり、これを1998年までに3%以下にしようというのが改革のスケジュールであった。欧州通貨統合への参加がイタリアにとり経済発展の必須条件との見方が多くになり、そのためには財政健全化等の通貨統合参加基準の遵守が重要であるとの認識が国民の間で強まったことがあげられる。

 このため、イタリア政府は増税とともに、歳出削減も強力に実施したのである。イタリアは当時の日本と同様に公共事業投資が多くも利益誘導型の古い政治体制となっていたが、それが崩壊し、新しい勢力が政治をリードしたことも要因と言われる。さらに年金改革も進められ、支給開始年齢の引き上げ、適格要件の厳格化などにより、大幅な支出削減が行われた。

 このように過去を振り返るならば、イタリアは財政再建に向けた努力を行い、財政赤字をGDPの3%以下に押さえ込むことに成功した事例が存在する。「スペインやポルトガルがユーロに参加し、イタリアだけが取り残されるのは、イタリア人のプライドが許さなかった」というイタリア人の国民感情を利用したといった指摘もあったが、今回もギリシャの事例を見せられているだけに、イタリアは自発的な努力で信用不安を封じ込める可能性はあると思われる。


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by nihonkokusai | 2011-11-05 19:42 | 国際情勢 | Comments(0)

ギリシャでは何が起きているのか

 ギリシャ議会では5日未明、パパンドレウ内閣に対する信任投票が行われ、信任案は153対145の賛成多数で可決された。与党議員のうち1人が信任投票に反対する方針だと伝えられており、そうなれば与党の全ギリシャ社会運動(PASOK)の議席は300議席中152議席と過半数ぎりぎりとなっていたはずだが、信任投票に反対する方針議員も賛成に回ったようである(棄権が2票)。パパンドレウ首相は、自らの辞任とベニゼロス財務相が新首相として野党側と連立協議を始めると報じられている。

 31日にギリシャのパパンドレウ首相は突然、ヨーロッパ連合が合意したギリシャの債務削減などを柱とする信用不安への包括戦略について、それを受け入れるかどうか国民投票を行うという考えを示した。これによりギリシャの政局が一気に混迷を極めたが、そもそもなぜパパンドレウ首相は極めて危険なカードと言える国民投票を持ち出してきたのか。

 欧州の首脳会議を経て包括戦略はまとまったものの、パパンドレウ首相としては、4日の内閣の信任投票を控え、海外からの反対を覚悟の上で国民投票で国民から賛同を得ない限り、国民に負担を強いる包括戦略を実行に移すことが困難との認識を持ったものと考えられる。ここには野党で二大政党の一翼でもある新民主主義党が大きく関与しているとみられる。パパンドレウ首相は、「ギリシャの政党間で広い合意が必要で、もし合意できるのなら投票は必要ないし、合意ができないのであれば国民との間で合意が必要だ」と述べ、野党と合意できていないことが国民投票に踏み切る理由であることを明らかにしていた(NHK)。

 新民主主義党のサマラス党首は、これまで政府の緊縮策を批判し、ユーロ離脱も辞さないとの姿勢を示していた。しかし、パパンドレウ首相が賭に出ようとした国民投票に対する内外からの批判をみて窮地に陥るとみると、踵を返すように「我々はEUとユーロ圏にとどまる」「追加支援策を無にしてはならない」と表明したのである。

 たしかにパパンドレウ首相が世界を振り回す格好ではあったが、パパンドレウ首相そのものはサマラス党首に振り回された格好とも言える。また、その間に現れたのがベニゼロス財務相である。ベニゼロス財務相はパパンドレウ首相が宣言した国民投票に反対の方針を示し、与党内の有力議員がパパンドレウ首相に対して辞任を要求するような事態となっていた。このため、野党新民主主義党の方針転換とともに、パパンドレウ首相が退陣を示唆したことで、内閣の信任投票において与党内で内閣信任に反対していた議員らも賛成に回ったものとみられる。

 ユーロ圏諸国に対し国民投票の断念を正式に伝えたのはパパンドレウ首相ではなく、ベニゼロス財務相であった。ベニゼロス財務相は火中の栗を拾ったのか、それとも漁夫の利を得たのかはわからない。連立協議の行方も、サマラス党首が与党全ギリシャ社会運動との対決姿勢を鮮明にしているため先行きは不透明である。国民投票という危険な博打は取り下げたことで、ギリシャは支援策を受け入れ、ユーロ離脱という最悪シナリオはいったん回避された格好であるが、新首相となるであろうベニゼロス財務相にとり、今後の政権運営はこれまで以上に困難を極める可能性もある。


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by nihonkokusai | 2011-11-05 16:44 | 国際情勢 | Comments(0)

FRBとECBのスタンスの変化

 ギリシャ問題で揺れ動く中、1日から2日にかけて米国ではFOMCが開かれ、3日にはECB理事会が開催された。

 2日のFOMCでは、金融政策については賛成多数で現状維持を決定した。ただし、最新の経済見通しで、経済成長率や失業率の見通しを大幅に下方修正し、バーナンキFRB議長の会見では、「景気回復の継続を確かなものにするために適切な行動を取る用意がある」と発言し、追加緩和に含みを持たせた。その追加緩和としては、住宅ローン担保証券(MBS)の追加購入は「現実的な選択肢」だと述べたそうである。

 今回反対票を投じたのは、シカゴ地区連銀のエバンズ総裁で、反対理由は追加緩和を求めてのものであった。エバンズ総裁はMBS購入拡大を主張しているとみられる。また、9月のFOMCで反対票を投じたフィッシャー、コチャラコタ、プロッサーの各委員は今回、賛成票を投じた。 

 FOMCの前にタルーロFRB理事が、「MBS購入は選択肢の上位に入れるべきだ」と発言したり、イエレンFRB副議長も経済状況が追加緩和を正当化するなら、量的緩和第3弾は適切な措置になるかもしれないとの認識を示すなど、FRBの執行部もQE3について前向きの姿勢を示していた。それが今回の金融政策の票決にも現れていた。ただし、追加緩和というカードそのものは今回温存された。欧州の信用不安の行方など非常に不透明感が強く、タイミングを見計らってそのカードを切るつもりであろうか。次回のFOMCは12月13日に開催される。

 そして、3日のECB理事会においては、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.25%引き下げ1.25%とした。

 10月31日に発表された10月のユーロ圏の消費者物価指数速報値が、前年同月比3.0%の上昇となり、今回は利下げは行わないとの見方が出ていた。このため、市場では今回の利下げには意外感も出て、3日の欧米の株式市場などではこれを好感し上昇した。

 11月1日に就任したばかりのマリオ・ドラギ新総裁は、理事会後の就任後初めてとなる会見で、景気の下振れリスクが増しており、そのため物価上昇率は2012年中に2%未満となるとの見通しを示し、消費者物価指数が上昇する中にあっての利下げの理由を説明した。

 今回の利下げは景気そのものへの配慮したこともあろうが、ギリシャの信用不安で市場心理が悪化している中、少しでもそれを改善することが意識された結果、追加緩和を決定した可能性がある。ただし、ドイツなどが反対していたECBによる国債買入拡大には踏み込まなかった。

 今回の決定は全会一致ともドラギ総裁は語ったようで、ドイツ出身者からの反対はなかった模様である。本来であればECBは採決の結果については明らかにしないが、あえて反対者がいなかったことを強調した格好と言える。また、ドラギ総裁からは、「私はドイツ連銀の伝統に敬服している」との発言もあったようである。ドラギ総裁はイタリア出身ではあるが、ブンデスバンクを中心とした欧州の中銀の伝統を受け継いでいるとみられている。

 このように今回のFOMCとECBでは、これまでと明らかに変化が出てきている。FOMCではフィッシャー、コチャラコタ、プロッサーのいわゆるタカ派が影を潜め、エバンズ総裁のようなハト派の意向が強く意識されるようになってきた。

 そしてECBでは深刻な問題となりつつあったドイツ出身者などとの意見の対立を回避し、その上で欧州の危機対応に向けた姿勢をとった。ドイツやフランスという大国の板挟みとなる中での、マリオ・ドラギ新総裁がどの程度の手腕を発揮できるか注目されていたが、ただのマリオではなく意外にもスーパーマリオであった可能性もある。もちろんそれが明らかとなるのは、今後のECBでの舵取り次第となるわけではあるが。


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by nihonkokusai | 2011-11-05 09:14 | 中央銀行 | Comments(1)
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