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2010年 10月 05日 ( 2 )

「包括緩和策の意味」

日銀は今回、量的緩和や信用緩和ではなく時間軸効果も取り入れて包括的な緩和策である「包括緩和」を実施した。この最大の目玉となるのは強力な時間軸効果かとみられる。実質的なゼロ金利に戻したがこの利下げ効果は限定的である。それよりも2001年3月から2006年3月にかけて実施された量的緩和政策の解除条件かが、CPIが安定的に0%以上となることであったのに対して、今回は中期的な物価安定の理解に基づいていることでそれが1%となり、解除に向けてのハードルを上げてきている。これは擬似的なインフレターゲット政策ともとれるが、この1%というのはデフレ下にある現状からみてそう簡単に達成できるものではない。これはこの先、少なくとも2~3年は今回のゼロ金利政策を実施することになる可能性がある。

そして、すでに政策金利の目標値をゼロ近辺としてしまったことで、今後の追加緩和については量的緩和政策の際にターゲットとなった日銀の当座預金残高といったような別な数値目標が必要となる。それが今回の新たに設けられた35兆円規模の基金であろう。このうちの買入資産5兆円は国債とCP、社債、ETF、J-REITで構成される。もし今後、追加緩和を行う際にはこの基金の量、もしくは期間の延長を行ってくることが予想される。信用緩和策の強化が必要とされるとなれば、CP、社債、ETF、J-REITの買入規模を増額させてこよう。

問題は日銀券ルールに縛られない実質的な国債買入の増額である。今回は残存期間期間が1~2年、長期国債と国庫短期証券と合わせて合計3.5兆円程度としているが、今後はその期間、規模ともに増加してくる可能性が高い、問題はこれ幸いと政府がこれをもって財政拡大を実施してきてしまうリスクである。

今後先々の国債需給を考えれば、国民の金融資産で購入できる国債はいずれ限界を迎える。この際に海外に頼ることはある程度の金利上昇を伴なう可能性があり、またギリシヤ国債を購入するとした中国との関係などのように、政治的な配慮も必要になる。海外に頼るよりも先に日銀の国債購入増額に期待が向かいやすいはずである。財政法で禁じられている直接引き受けも想定され、それはむしろ国債への信認失墜により長期金利の急上昇を招き兼ねない。それよりも早めに日銀が国債買入を増やすことでそのときのリスクを少しでも緩和させることが可能なのではないかと個人的に考えていた。ただし、それには政府による財政拡大は回避させなければならない。このあたりは日銀総裁も釘を指す必要もある。

いずれにせよ、今回の日銀は2001年3月には当時の速水日銀が実施した量的緩和策と同様に、日銀の金融政策の大きな変換を意味しよう。速水元総裁はこのとき、政府との遺恨も残るゼロ金利政策に戻すことをせずに一気に量的緩和政策に持っていった。そして今回の白川日銀は、自ら効果には疑問を投げかけていたリサーブターゲットによる量的緩和策を取らずに、ゼロ金利政策を含めての包括緩和策を実施してきた。実施の仕方はまったく異なるものの、それぞれ開き直っての歴史的な政策変更であったかと思う。
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by nihonkokusai | 2010-10-05 19:17 | 日銀 | Comments(0)

「日銀の包括的な金融緩和策の実施による影響」

日銀は10月4日から5日にかけて開催された金融政策決定会合において、8月30日の臨時会合に続いて追加の緩和策を決定した。金融緩和を一段と強力に推進するために、包括的な金融緩和策を実施することとなった。

政策金利である無担保コールレート翌日物金利をこれまでの0.1%から0~0.1%前後に促すこととし、実質的なゼロ金利政策を再開することとなった。ゼロ金利政策が前回解除されたのは2006年7月であり、4年ぶりのゼロ金利政策となる。

また、「中期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していくとし、時間軸を明確化した。これによりより長い金利低下を促そうとするものである。ただし、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、問題が生じていないことを条件とするとしている。

さらに、国債、CP、社債、ETF、J-REITなど多様な金融資産の買入と固定金利方式・共通担保資金供給オペを行うため、臨時の措置として、バランスシート上に基金を創設することを検討することとした。議長は執行部に対して、資産買入等の基金創立についての検討を行うように指示を出した。基金の規模は買入資産については5兆円程度となる。買入開始から1年後を目処に、長期国債と国庫短期証券は合計3.5兆円程度。CP、ABCPと社債は合計1兆円程度となる。買い入れる長期国債と社債は残存期間1~2年程度を対象とする

この基金による長期国債の買入は、現行の長期国債買入とは異なる目的のもとで臨時の措置として行うものとし、これにより買入れて保有する長期国債は、銀行券発行残高を上限に買い入れる長期国債と区分のうえ、異なる取り扱いとするとし、日銀券ルールには縛られないかたちでの国債買入を実施することとなる。

金融誘導目標値の変更については全員一致となったものの、須田委員は資産買入等の基金創立に際して、国債を検討対象することに対して反対した。

今回の包括的な金融緩和策を決定した理由として、成長率が下振れて推移する可能性が高く、米国経済を中心に不確実性の強い状況が続き、景気の下振れリスクにはなお注意が必要であり、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復する時期は、後ずれする可能性が強まったことを要因としている。

事前予想では新型オペの拡充策を検討かとの観測が強まったが、市場予想を良い意味で裏切り、現時点で可能な限り打てる手を打ってきた。国債買入増額や量的緩和政策については白川総裁が講演などで否定的な発言をしていたが、基金を利用しさらに中短期債に限定することで、財政ファイナンスとの認識を避けようとしたものとみられる。

さらに時間軸効果を利用することも明確にした。この影響は前回の量的緩和時の時間軸効果よりも影響は大きいと思われる。前回の量的緩和の際には、消費者物価指数がゼロ%以上で推移するまでとしていたが、今回は中期的な物価安定の理解に基づいたものとしている。その、中長期的にみて物価が安定していると理解する物価上昇率の中心は1%程度となっているため、ゼロ金利解除のハードルは前回の量的緩和解除の際のハードルよりもさらに高くなっている。

これにより、より長めの金利低下を促すことになるとみられ、特に債券市場への影響も大きくなりそうである。すでに5年債利回は2003年6月の水準にまで低下していることを考えると、債券バブルを加速させる可能性もありうる。
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by nihonkokusai | 2010-10-05 14:53 | 日銀 | Comments(0)
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