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2009年 06月 09日 ( 2 )

「中央銀行による国債買入の目的とその効果」

 日銀の水野審議委員は講演「最近の経済情勢と中央銀行の政策対応」の中で、主要中央銀行が行なっている国債買い入れの狙いについて述べている。

 BOEの国債買入の目的は3月5日のMPC声明文によると、中期的なインフレ率目標を達成するためにマネーと信用の供給量の拡大を通じて名目支出を拡大させることとしている。また、FRBについては、国債買入れは信用緩和政策の一環と位置付け、モーゲージ金利の低位安定を期待したエージェンシーMBSの購入等を補完することが目的とみられる。

 ただし、ECBに関してはユーロ圏諸国の国債買入れに慎重である。これはユーロ圏には、財政規律の重要性等が明記された「成長安定協定」が存在し、財政政策との役割分担を明確にしているためと水野委員は指摘している。それとともに、ひとつの国の中銀ではないことで、個別の国債を購入しにくい面もあるとみられる。

 2001年3月~2006年3月まで、国債買入を含めた量的緩和政策を採用した日銀の事例からは、ベースマネーは膨張したもののBOEの目的としたマネーサプライ(マネーストック)の供給量の拡大への影響という面では限定的であった。効果という観点からは、景気刺激効果よりも金融システム対策として機能したという印象が強いと水野委員は指摘している。

 FRBの米国債買入れの目的は「民間クレジット市場の改善を企図」したとしている。確かにFRBによる国債買入のアナウンスにより、クレジット・スプレッドは全体的に縮小した。しかし、その縮小の反動が起きたことでモーゲージ金利が乱高下し、それが米長期金利の上昇を招いた。FRBによる米国債購入は必ずしもモーゲージ金利とともに米長期金利そのものの低位安定にはつながっていない。

 現在のBOEやFRBは日銀に比べ大規模な国債購入を行なっているが、日銀のように限度額に対してルールを設けていない。水野委員は米英が日本に比べてインフレ期待が高いことで、現在低下傾向にあるインフレ率に、将来何らかの影響を与えるリスクにも注目したいとしている。

 また、「中央銀行は財政面からの景気刺激策による長期金利の上昇圧力を意識せざるを得ないだろう」との見方があることを水野委員は指摘している。

 今後の国債増発に絡んでの長期金利上昇懸念から、中央銀行への国債買入れ増額の期待感が強まることが考えられる。しかし、それに関与すればするほど市場が依存するようになり、マーケットの価格形成機能を大きく歪め、長期金利の低下を促すどころか、急上昇を招く要因にもなりかねないことも考慮する必要がありそうである。
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by nihonkokusai | 2009-06-09 13:46 | 日銀 | Comments(0)

「量的緩和政策と信用緩和政策」

 日銀のホームページに5月28日の水野審議委員による講演「最近の経済情勢と中央銀行の政策対応」の要旨が公表された。たいへん興味深い内容となっているが、この中から、現在、主要中央銀行が行なっている政策対応の違いについて見てみたい。

 FRB(米国連邦準備制度理事会)、ECB(欧州中央銀行)、BOE(イングランド銀行)、そしてBOJ(日本銀行)ともにすでに政策金利は大幅に引き下げている。事実上の「ゼロ金利クラブ」が形成されているが、実はそれぞれ現実には完全なゼロ金利としていない点も共通である。

 これに対し水野審議委員は、日本におけるゼロ金利政策や量的緩和政策の経験から、政策金利をゼロにしてしまうと短期金融市場の機能を失うという副作用について指摘している。欧米の中央銀行は今回の政策対応に関して、かなり日銀の政策を研究・分析していたことは間違いないと思われる。

 非伝統的な金融政策としては政策金利の大幅な引き下げに加え、潤沢な流動性供給を通じた金融市場の安定維持と、クレジット市場などの機能回復を促す措置も挙げられる。

 また非伝統的な金融政策の分類について、水野委員はバランスシートにおけるリスクと超過準備の取り扱いに基づく概念的な分類を挙げている。そのひとつが、バランスシート上にクレジット・リスクのある金融資産を計上すると同時に、超過準備は全て吸収するという「信用緩和政策(Credit Easing Policy)」である。また、バランスシート上にクレジット・リスクのない国債等の安全な金融資産を計上し、超過準備を供給することを「量的緩和政策(Quantitative Easing Policy)」と分けている。

 これによれば、BOEはこれまで買い入れた資産の大半が国債であり・リスクを限定的にしか取っていないため「量的緩和政策」としているが、ECBとFRBは「信用緩和政策」であると主張している。ただし、この分類から言えば、特にFRBは3月に米国債の買い入れを発表したことで、「量的緩和政策」と「信用緩和政策」のハイブリッド型の非伝統的金融政策にシフトしたと考えられると水野委員は指摘している。

 日銀については、必要なところに必要な資金を供給しており、結果としてはこの分類からはハイブリッド型と言えるが、積極的に超過準備を供給しているわけではないことで、かなり信用緩和政策に近いものといえよう。
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by nihonkokusai | 2009-06-09 10:44 | 日銀 | Comments(0)
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