「超過準備に対しての付利と債券相場への影響」
「日本銀行は、金融市場の安定確保のため、年末および年度末に向けて積極的な資金供給を行っていく方針である。このような積極的な資金供給の下では、日本銀行の政策金利である無担保コールレートがその誘導目標から大きく下方に乖離する可能性がある。」
「本制度の導入によって、コールレートを目標水準に適切に誘導しつつ、積極的な資金供給を一層円滑に行い得るようになり、金融調節面での対応力の強化につながるものと考えている。」
この中で、「積極的な資金供給」や「無担保コールレートがその誘導目標から大きく下方に乖離する可能性」などの文面が意識されたのか、市場の一部では付利が実施されたことで、日銀が大量の資金供給を実施し、無担保コール翌日物金利の低下を促すのではないかとの見方が出ていた。
しかし、17日の短期金融市場における無担保コール翌日物金利は誘導目標値である0.3%近辺での推移となり、大きく金利が低下するようなことはなかった。
すでに超過準備に付利を実施している米国では、政策金利であるFF金利が誘導目標を大きく下回って推移しているが、これは大きな資金の出し手の存在や、FRBが日銀の手形売出オペのような機動的に資金を吸収する手段を持っていないことでの技術的な要因などによるものと見られる。
日本では政策金利が変更されるか、もしくは「なお書き」対応で一時的な低下も容認することがない限り、無担保コール翌日物金利が誘導目標値を大きく下回っての誘導は考えづらい。
日銀はここにきてツイストオペを実施して、特にターム物の金利の跳ね上がりを押さえ込もうとしており、これでややレポレートの低下もみられた。しかし日銀がどれだけ資金供給を行なっても、特にターム物と呼ばれる長めの金利の本格的な低下を促すには、金融機関同士の信用の回復が不可欠となる。
大量の資金供給に加え、利下げなども行なうなど日銀は積極的な金融危機対応を行なってきているが、債券市場では投資家、業者ともにリスク許容度は低下したままとなっている。超過準備に付利が実施されても、相場のマインドを変化させるまでには至らないとみられ、これによる債券相場への影響は限定的と見ざるを得ない。